特許第6061566号(P6061566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6061566-逆流防止部材 図000002
  • 特許6061566-逆流防止部材 図000003
  • 特許6061566-逆流防止部材 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061566
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】逆流防止部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/38 20060101AFI20170106BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20170106BHJP
   F16K 15/14 20060101ALI20170106BHJP
   F16K 15/20 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B65D25/38
   B65D83/00 G
   F16K15/14 C
   F16K15/20 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-191407(P2012-191407)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46946(P2014-46946A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228408
【氏名又は名称】日本キム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】石井 幸夫
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−203605(JP,A)
【文献】 米国特許第03822720(US,A)
【文献】 特開2004−149215(JP,A)
【文献】 特開2004−291968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/38
B65D 83/00
F16K 15/14
F16K 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容体に収容された収容物を注出可能な流路を備えた断面円形状の筒部に設置される逆流防止部材であって、
前記筒部に嵌入される円筒形状の嵌入部と、前記流路と連通する空洞部を有すると共に、前記収容体と反対側の流路側に面し、前記空洞部と連通する開口部が形成されたドーム状の注出側表面部と、前記嵌入部の上端部に周方向に沿って形成された段部と、を有する筒状本体部と、
前記段部に当て付けられて固定される下端開口縁を具備し、前記注出側表面部に被着されて前記開口部を閉塞すると共に、前記段部に当て付けられて固定された際、表面が前記嵌入部と面一状になって被着される略半球形状の弾性被着部と、
を有し、
前記弾性被着部は、前記収容体と反対側の流路内に開口可能な切り込みが形成されており、前記収容物の非注出状態で、前記開口部側が前記注出側表面部と密着して開口部をシールすると共に収容物の注出状態で、前記開口部を開口し、かつ、前記切り込み側が前記注出側表面部から離間した空間を有するように前記注出側表面部に被着されていることを特徴とする逆流防止部材。
【請求項2】
前記開口部は、前記注出側表面部の円周方向に沿って、一定間隔で複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆流防止部材。
【請求項3】
前記弾性被着部の切り込みは、頂部領域に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆流防止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の収容体の内部に収容されている収容物を吸引して注出するにあたり、吸引後に収容物が収容体に逆流することを防止する機能を備えた逆流防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収容体内に収容されている収容物を注出するに際し、収容体を押圧して圧力を加え、ノズル等の注出路から収容物を注出する構成が知られている。このような収容体では、一度、収容物を注出した後、外気に触れてしまった収容物を収容体側に戻さないようにしたい、という要請がある。例えば、特許文献1には、薬剤や食品等の収容物を収容体に収容しておき、収容体を押圧して注出した後、注出した収容物を収容体に戻さないように構成した容器(収容体)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている収容体は、容器から突出すると共に先端が閉塞されたノズルの側面に複数の開口部を形成しておき、そのノズルに弾性スリーブを被着した逆流防止部材を備えている。この逆流防止部材は、収容体に押圧力を作用させることで収容物に圧力を加え、その圧力によって開口部を通じて弾性スリーブを押し広げ、ノズルの表面と弾性スリーブの内面との間に収容物が通過可能な流路を形成して収容物を注出できる構成となっている。そして、収容体に対する押圧力を解除すると、弾性スリーブは、その弾性力によってノズル表面に密着して開口部を閉塞し、収容物が収容体側に戻ることを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−60468号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、収容物を注出するに際しては、収容体に対して押圧力を作用させるだけではなく、吸引力を作用させて収容物を注出することがある。上記した構成の逆流防止部材では、吸引力を作用させて収容物を注出しようとしても、ノズルに弾性スリーブが全面に亘って密着された状態にあるため、吸引操作して収容物を注出することはできない。また、そのような吸引操作して内容物を注出するに際しても、内容物を収容体側に逆流させないように構成することが好ましいことがある。さらに、上記したような弾性変形可能な弾性部材を用いて収容物の逆流を防止する構成では、弾性部材の構成そのものを簡易にすることがコストの面から好ましい。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、収容体に収容された収容物を吸引操作又は押圧操作して注出するに際し、注出した収容物が収容体側に逆流することを防止する機能を備えた逆流防止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る逆流防止部材は、収容体に収容された収容物を注出可能な流路を備えた断面円形状の筒部に設置されるように構成されており、前記筒部に嵌入される円筒形状の嵌入部と、前記流路と連通する空洞部を有すると共に、前記収容体と反対側の流路側に面し、前記空洞部と連通する開口部が形成されたドーム状の注出側表面部と、前記嵌入部の上端部に周方向に沿って形成された段部と、を有する筒状本体部と、前記段部に当て付けられて固定される下端開口縁を具備し、前記注出側表面部に被着されて前記開口部を閉塞すると共に、前記段部に当て付けられて固定された際、表面が前記嵌入部と面一状になって被着される略半球形状の弾性被着部と、を有し、前記弾性被着部は、前記収容体と反対側の流路内に開口可能な切り込みが形成されており、前記収容物の非注出状態で、前記開口部側が前記注出側表面部と密着して開口部をシールすると共に収容物の注出状態で、前記開口部を開口し、かつ、前記切り込み側が前記注出側表面部から離間した空間を有するように前記注出側表面部に被着されていることを特徴とする。
【0008】
上記した構造の逆流防止部材では、収容体に繋がる筒部に対して、収容物を注出すべく吸引力を作用させると、収容体と反対側の流路内の空気が吸引されて負圧状態となり、収容体側の空洞部内(流路内)の空気の内圧が高まり、この内圧が高まった空気が前記開口部から流出し、弾性被着部とのシール部分を開放して、弾性被着部と注出側表面部との間に注出流路が形成される。さらに吸引力を作用させると、収容体側の空洞部(流路)内の空気が吸引されて真空状態となり、収容体内の収容物が吸引されるようになる。吸引された収容物は、前記空洞部から開口部を通じて開放された注出流路に流れ込み、前記切り込みを開口して注出される。そして、吸引操作を停止すると、弾性被着部は、再び開口部側の注出側表面部と密着して開口部側をシールし開口部を閉塞すると共に開口していた切り込みを閉じる。これにより、注出した収容物が、収容体側に逆流することが防止され、収容体内に入り込むことがなくなる。
【0009】
なお、上記した構成の逆流防止部材では、収容体を押圧操作して収容物を注出する場合においても、弾性被着部が、上記した吸引操作の場合と同様に作用することができ、注出後の収容物が収容体内へ逆流することが防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収容体に収容された収容物を吸引操作又は押圧操作して注出するに際し、注出した収容物が収容体側に逆流することを防止する機能を備えた逆流防止部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る逆流防止部材の一実施形態を示す図であり、(a)は全体構成を示す斜視図、(b)は分解斜視図、(c)は弾性被着部の平面図。
図2図1に示す逆流防止部材を収容体の筒部に設置した状態を示す斜視図。
図3】(a)から(d)を含み、図2に示すように設置された逆流防止部材の作用を順に説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る逆流防止部材について具体的に説明する。
図1及び図2は、本発明に係る逆流防止部材の一実施形態を示す図であり、図1(a)は全体構成を示す斜視図、図1(b)は分解斜視図、図1(c)は弾性被着部の平面図、そして、図2は、図1に示す逆流防止部材を収容体の筒部に設置した状態を示す斜視図である。
【0013】
本実施形態に係る逆流防止部材1は、収容体50(図3参照)に収容された収容物60を吸引して注出可能な流路52を備えた筒部55内に設置されるよう構成されている。前記収容体50については、注出が可能な各種の流動体が収容される、いわゆる容器であり、その形状、構成材料等、特に限定されることはないが、収容体50と連結される筒部55の流路52を介して収容物60が注出できる構成となっていれば良い。また、前記筒部55については、例えば、樹脂や金属で構成されており、本実施形態の筒部55は、断面円形状に形成されている。
【0014】
前記筒部55の流路52には、逆流防止部材1が嵌入される。この場合、逆流防止部材1は、筒部55と一体化されていても良いし、図1(a)に示す構造体を嵌入する構成であっても良く、流路52に嵌入される筒状本体部10と、この筒状本体部10に被着される弾性被着部20と、を有している。
【0015】
前記筒状本体部10は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって一体形成されており、前記筒部55の流路52(収容体側の流路52A)と連通する空洞部11と、収容体と反対側の流路52B内に面し、空洞部11と連通する開口部12が形成された注出側表面部13とを有している。この場合、注出側表面部13は、中心領域が排出側に向けて突出(膨出)するドーム状に形成されている(その表面は、平坦面であっても良いが、中央に向けて膨出する湾曲形状であることが好ましい)。
【0016】
また、前記弾性被着部20は、注出側表面部13に対して、後述するようなシール領域と空間を形成した状態で被着可能なキャップ状に形成されており、例えば、ゴム等、それ自体変形可能な材料で構成されている。この弾性被着部20は、その表面が面一状になっており、前記注出側表面部13の表面形状に対応するように、略半球形状(厳密な半球形状であっても良い)に形成されている。
【0017】
前記筒状本体部10の注出側表面部13は、筒状本体部10が流路52に嵌入された際、流路52B内に面する部分であり、このような注出側表面部13には、前記開口部12が形成されており、本実施形態では、円周方向に沿って、一定間隔で複数(略90°間隔で4箇所)の開口部12が形成されている。
【0018】
前記筒状本体部10の嵌入部分10Aは円筒形状に形成されており、その上端部には、円周方向に沿って段部10Bが形成されている。そして、この段部10Bには、前記キャップ状に形成された弾性被着部20の下端開口縁20Aが当て付けられた状態で固定される。このため、弾性被着部20を前記注出側表面部13に被着すると、弾性被着部20は、図1(a)に示すように、筒状本体部10の表面(側面)と面一状になる領域20Bを有する構成となっている。
【0019】
これにより、弾性被着部20を被着した筒状本体部10を流路52に嵌入した状態で吸引操作をしたり、押圧操作をしても、注出側表面部13に被着した弾性被着部20が流路方向に移動することが防止される。
【0020】
前記弾性被着部20には、切り込み22が形成されている。この切り込み22は、単に、弾性被着部20の表面に、カッター等によって裏面まで達する切れ目を入れることで形成され、本実施形態では、図1(c)に示すように、頂部領域において1つの筋として形成されている。すなわち、切り込み22は、弾性被着部20を注出側表面部13に被着した際、効率的な注出効果が得られるように、注出側表面部13の頂部領域に形成されており、収容物に対して吸引又は押圧を加えた際、その部分が拡がって収容物が通過する排出口となる。このように、キャップ状に形成された弾性部材に対して切り込み22を形成するだけであるため、弾性被着部20を容易に形成することができる。
【0021】
また、キャップ状の弾性被着部20は、注出側表面部13に被着した際、切り込み側表面部との間で離間する空間S(図3参照)が生じると共に、開口部12側が注出側表面部13と密着するシール領域Pを有するように形成されている。すなわち、弾性被着部20を注出側表面部13に被着すると、切り込み22を中心として360°に亘って注出側表面部13から離間する空間Sが形成され、かつ、開口部12側が注出側表面部13と密着するシール領域Pが形成される。
【0022】
このため、図3(a)及び図3(d)に示すように、初期状態(収容物の非注出状態)では、排出口22を中心として360°に亘って、開口部12側が注出側表面部13と密着して開口部側をシールし、かつ、切り込み22側が注出側表面部13から離間した状態となっており、前記複数の開口部12は、弾性被着部20の弾性力によって全て閉塞された状態となっている。この場合、複数の開口部12は、上記したように、周方向に沿って一定間隔で形成され、切り込み22を頂部領域に形成したことにより、安定したシール機能が発揮される。
【0023】
以上のように構成される逆流防止部材1の作用を、図3を参照して説明する。
なお、図3では、逆流防止部材1の作用を分かり易く説明するため、収容体50に比べて、逆流防止部材1を拡大して示してある。
【0024】
最初、図3(a)に示す初期状態において、収容物60が収容された収容体50に繋がる筒部55に対して吸引力を作用させると、収容体と反対側の流路52B内の空気が吸引されて負圧状態となる。このとき、弾性被着部20は、吸引方向に引き伸ばされるようになり、切り込み22の部分は、上方に引き上げられて開口するようになる。切り込み22が開口すると、収容体50側の空洞部11内(流路52A内)の空気の内圧は流路52A側と比較して高い状態になっていることから、流路52A内の空気は、開口部12に押圧力を作用させて開口部12を押し広げて開口させる。開口部12に空気が流入すると、弾性被着部20の切り込み22側には、注出側表面部13との間に空間Sが形成されていることから、開口部12に流入した空気の圧力によって、前記シール領域Pは、注出側表面部13から離れるようになる。すなわち、図3(b)の矢印で示すように、空洞部11内の空気は、シール領域Pを開放する(持ち上げる)ように作用し、弾性被着部20と注出側表面部13との間に注出流路SPを形成するようになる。この際、空洞部11内の空気は、吸引作用によって注出流路SPを介して、前記引き伸ばされて開口した切り込み22を通過し、この部分から効率的に吸引される。
【0025】
さらに吸引力を作用させると、収容体50側の空洞部11(流路52A)内の空気が吸引されて真空状態となり、収容体50内の収容物60は、図3(c)の矢印で示すように吸引されるようになる。吸引された収容物60は、矢印で示すように、空洞部11から、開口状態にある開口部12を通じて、前記注出流路SPに流れ込み、頂部領域に形成された切り込み22を介して注出されるようになる。
【0026】
そして、吸引操作を停止すると、弾性被着部20は、図3(d)に示すように、再び開口部12側の注出側表面部13と密着して開口部12側をシールし開口部12を閉塞すると共に、引き伸ばされていた切り込み22を閉じる。これにより、注出した収容物が、収容体側に逆流することが防止され、収容体50内に入り込むことがなくなる。すなわち、注出後の収容物の一部は流路52Bに貯留される可能性はあるものの、これが収容体50側に入り込むこと(逆流すること)が確実に防止され、収容体内の収容物60に影響を及ぼすことがなくなる。
【0027】
なお、上記した説明では、収容体50の収容物を吸引して収容物を注出する例について説明したが、収容体50に押圧力を作用させて収容物を注出する際にも同様な作用効果を得ることが可能である。すなわち、上記した逆流防止部材の構成によれば、吸引操作、押圧操作のいずれの場合に用いても、注出操作後に、収容物を収容体に逆流することを防止できる構成が得られる。
【0028】
また、上記したような開閉する切り込み22を形成した弾性被着部20は、その吸引力や押圧力によって、その肉厚を適宜変形することが可能であるが、0.02MPa〜0.04MPa程度の吸引力を作用させる構成であれば、その肉厚は、0.5mm以下であれば、十分に上記したような作用、効果を発揮することが可能である。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。
例えば、逆流防止部材1の全体形状については、対応する筒部55の形状に応じて適宜変形することが可能であり、注出側表面部13の形状(膨出形状)、及び、そこに形成される開口部12の形成個数、位置、形状等については、適宜変形することが可能である。また、弾性被着部20については、開口部との関係で、空間Sとシール領域Pが形成されれば良く、その形状についても適宜変形することが可能であり、切り込みの形成については、複数本を平行に設けたり、複数本の切り込みをクロスするように形成しても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 逆流防止部材
10 筒状本体部
11 開口部
12 開口部
13 注出側表面部
20 弾性被着部
22 切り込み
50 収容体
52 流路
55 筒部
S 空間
P シール領域
図1
図2
図3