(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061577
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20170106BHJP
B29D 30/60 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B60C11/00 Z
B29D30/60
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-200587(P2012-200587)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2013-147243(P2013-147243A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2015年6月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-277608(P2011-277608)
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄二
【審査官】
細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−062196(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0042737(US,A1)
【文献】
特開2009−126291(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0258227(US,A1)
【文献】
特開2001−001718(JP,A)
【文献】
米国特許第06510881(US,B1)
【文献】
特開2004−224268(JP,A)
【文献】
特開2008−284815(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0283166(US,A1)
【文献】
特開2001−038822(JP,A)
【文献】
特開2004−025535(JP,A)
【文献】
特開2010−115935(JP,A)
【文献】
特開2007−181930(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0151642(US,A1)
【文献】
特開平05−177738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B29D 30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けられたリボンゴムによりトレッドゴムが形成される空気入りタイヤであって、
前記リボンゴムは、タイヤ子午線断面においてトレッド端よりも中央側に位置する始点からタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付けられ、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向の他方側に折り返して、前記始点を越えて他方側のトレッド端に向けて巻き付けられ、次いで他方側のトレッド端でタイヤ幅方向の一方側に折り返し、トレッド端よりも中央側に位置する終点に向けて巻き付けられており、
前記リボンゴムは、トレッド端及びトレッド中央部を避けたトレッド端近傍部に、巻き付け始端及び巻き付け終端を有し、
前記トレッド端近傍部は、トレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、
前記トレッドゴムは、トレッド端よりも中央側の部位において、タイヤ幅方向一方側に向かって巻き付けられたリボンゴムを折り返して、タイヤ幅方向他方側に向けて巻き付けた後、再度折り返してタイヤ幅方向一方側に向けて巻き付けた三層構造部を有する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けられたリボンゴムによりトレッドゴムが形成される空気入りタイヤであって、
前記リボンゴムは、タイヤ子午線断面においてトレッド端よりも中央側に位置する始点からタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付けられ、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向の他方側に折り返して、前記始点を越えて他方側のトレッド端に向けて巻き付けられ、次いで他方側のトレッド端でタイヤ幅方向の一方側に折り返し、トレッド端よりも中央側に位置する終点に向けて巻き付けられており、
前記リボンゴムは、トレッド端及びトレッド中央部を避けたトレッド端近傍部に、巻き付け始端及び巻き付け終端を有し、
前記トレッド端近傍部は、トレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、
前記リボンゴムは、対をなすトレッド端近傍部のうちタイヤ幅方向の一方側のトレッド端近傍部を始点としてタイヤ幅方向他方側のトレッド端に至る第一層を形成し、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返して前記始点を越えて一方側のトレッド端に至る第二層を形成し、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部を終点とする第三層を形成している、空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けられたリボンゴムによりトレッドゴムが形成される空気入りタイヤであって、
前記リボンゴムは、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部を巻き付け始点としてタイヤ幅方向一方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返して前記始点を越えてタイヤ幅方向他方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返してタイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部を巻き付け終点としており、 前記タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向一方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、前記タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部に、前記巻き付け始点及び巻き付け終点が共にある、空気入りタイヤ。
【請求項4】
タイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けられたリボンゴムによりトレッドゴムが形成される空気入りタイヤであって、
前記リボンゴムは、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部を巻き付け始点としてタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部に至り、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部でタイヤ幅方向一方側に折り返して前記始点を越えてタイヤ幅方向一方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部を巻き付け終点としており、
前記タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向一方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、 前記タイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向他方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲である、空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けられたリボンゴムによりトレッドゴムが形成される空気入りタイヤであって、
前記リボンゴムは、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部を巻き付け始点としてタイヤ幅方向一方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返して前記始点を越えてタイヤ幅方向他方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部を巻き付け終点としており、
前記タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向一方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、
前記タイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向他方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲である、空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記巻き付け始点及び前記巻き付け終点は、タイヤ周方向に180°離れている、請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
リボンゴムをタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けることによりトレッドゴムを形成するトレッドゴム成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法であって、
前記トレッドゴム成形工程は、前記リボンゴムを、タイヤ子午線断面においてトレッド端よりも中央側に位置する始点からタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付け、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向の他方側に折り返して、前記始点を越えて他方側のトレッド端に向けて巻き付け、次いで他方側のトレッド端でタイヤ幅方向の一方側に折り返し、トレッド端よりも中央側に位置する終点に向けて巻き付ける段階を含み、
前記リボンゴムは、トレッド端及びトレッド中央部を避けたトレッド端近傍部に、巻き付け始端及び巻き付け終端を有し、
前記トレッド端近傍部は、トレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、
トレッド端よりも中央側の部位において、タイヤ幅方向の一方側に向かって巻き付けたリボンゴムを折り返して、タイヤ幅方向の他方側に向けて巻き付けた後、再度折り返してタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付けて、三層構造部を形成する、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
リボンゴムをタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けることによりトレッドゴムを形成するトレッドゴム成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法であって、
前記トレッドゴム成形工程は、前記リボンゴムを、タイヤ子午線断面においてトレッド端よりも中央側に位置する始点からタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付け、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向の他方側に折り返して、前記始点を越えて他方側のトレッド端に向けて巻き付け、次いで他方側のトレッド端でタイヤ幅方向の一方側に折り返し、トレッド端よりも中央側に位置する終点に向けて巻き付ける段階を含み、
前記リボンゴムは、トレッド端及びトレッド中央部を避けたトレッド端近傍部に、巻き付け始端及び巻き付け終端を有し、
前記トレッド端近傍部は、トレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、
前記リボンゴムの巻き付け位置を、対をなすトレッド端近傍部のうちタイヤ幅方向の一方側のトレッド端近傍部を始点としてタイヤ幅方向他方側のトレッド端に移動させて第一層を形成し、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返して前記始点を越えて一方側のトレッド端に移動させて第二層を形成し、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部を終点として第三層を形成する、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項9】
リボンゴムをタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けることによりトレッドゴムを形成するトレッドゴム成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法であって、
前記トレッドゴム成形工程は、前記リボンゴムを、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部を巻き付け始点としてタイヤ幅方向一方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返して前記始点を越えてタイヤ幅方向他方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返してタイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部を巻き付け終点として、巻き付ける段階を含み、
前記タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向一方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、前記タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部に、前記巻き付け始点及び巻き付け終点が共にある、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項10】
リボンゴムをタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けることによりトレッドゴムを形成するトレッドゴム成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法であって、
前記トレッドゴム成形工程は、前記リボンゴムを、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部を巻き付け始点としてタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部に至り、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部でタイヤ幅方向一方側に折り返して前記始点を越えてタイヤ幅方向一方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部を巻き付け終点として、巻き付ける段階を含み、
前記タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向一方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、 前記タイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向他方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲である、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項11】
リボンゴムをタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けることによりトレッドゴムを形成するトレッドゴム成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法であって、
前記トレッドゴム成形工程は、前記リボンゴムを、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部を巻き付け始点としてタイヤ幅方向一方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返して前記始点を越えてタイヤ幅方向他方側のトレッド端に至り、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部を巻き付け終点として、巻き付ける段階を含み、
前記タイヤ幅方向一方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向一方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲であり、
前記タイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部は、タイヤ幅方向他方側のトレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5%以上25%以下の範囲である、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項12】
前記巻き付け始点及び前記巻き付け終点は、タイヤ周方向に180°離れている、請求項7〜11のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッドゴムを有する空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、略円筒状の回転支持体の外周面に、未加硫のリボンゴムをその側縁を重ねながらタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けることによってトレッドゴムを形成する、いわゆるリボン巻き工法が提案されている。
【0003】
リボン巻き工法でトレッドゴムが形成される空気入りタイヤの一例として、例えば特許文献1には、リボンゴムが、タイヤ子午線断面においてトレッド中央部に位置する始点からタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付けられ、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向の他方側に折り返して、前記始点を越えて他方側のトレッド端に向けて巻き付けられており、リボンゴムの巻き付け始端及び巻き付け終端が、トレッドゴムの中央部(タイヤ赤道付近)に配置されている空気入りタイヤが開示されている。
【0004】
リボン巻き工法で製造される空気入りタイヤの他の一例として、特許文献2には、リボンゴムが、タイヤ幅方向の一方側のトレッド端を始点として他方側のトレッド端に向けて巻き付けられ、次いで他方側のトレッド端でタイヤ幅方向の一方側に折り返して、一方側のトレッド端に向けて巻き付けられ、リボンゴムの巻き付け始端及び巻き付け終端がトレッド端に配置されている空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−130880号公報
【特許文献2】特開2002−46194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような空気入りタイヤでは、リボンゴムの巻き付け始端及び巻き付け終端がトレッド中央部に配置されており、トレッドゴム中央部は、トレッド端に比して大きな遠心力が作用するので、巻き付け始点及び巻き付け終端がトレッド端にある場合に比べて、巻き付け終端が起点となる故障が発生しやすく、高速耐久性能が悪化してしまう。
【0007】
一方、上記特許文献2のような空気入りタイヤでは、リボンゴムの巻き付け始点及び巻き付け終端がトレッド端に配置されており、トレッド端は一般的に先細り状をなしているので、リボンゴム巻き付け工程において、トレッド端となる部位に巻き付けたリボンゴムを後追いローラ(ステチャー)で適切に押さえることが難しく、不良が生じやすい。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、高速耐久性能を向上させると共に、不良を抑制した空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0010】
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けられたリボンゴムによりトレッドゴムが形成される空気入りタイヤであって、前記リボンゴムは、タイヤ子午線断面においてトレッド端よりも中央側に位置する始点からタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付けられ、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向の他方側に折り返して、前記始点を越えて他方側のトレッド端に向けて巻き付けられ、次いで他方側のトレッド端でタイヤ幅方向の一方側に折り返し、トレッド端よりも中央側に位置する終点に向けて巻き付けられており、前記リボンゴムは、トレッド端及びトレッド中央部を避けたトレッド端近傍部に、巻き付け始端及び巻き付け終端を有することを特徴とする。
【0011】
トレッド端近傍部は、トレッド端から中央側に向けてトレッドゴム最大幅の5〜25%の範囲内を意味する。
【0012】
このように、リボンゴムの巻き付け始端及び巻き付け終端が、トレッド中央部を避けたトレッド端近傍部に配置されているので、巻き付け始端及び巻き付け終端がトレッド中央部に配置されている場合に比べて、遠心力の影響が低減し、高速耐久性能を向上させることが可能となる。それでいて、巻き付け始端及び巻き付け終端が、トレッド端を避けたトレッド端近傍部に配置されているので、巻き付け時にリボンゴムを適切に押えることができ、不良を抑制することが可能となる。
【0013】
発熱に起因する故障を抑制して、高速耐久性能を更に向上させるためには、リボンゴムの巻き付け終端は、タイヤ周方向に延びる主溝の形成箇所に配置されていることが効果的である。このようにすれば、主溝の形成箇所は、ゴムの厚みが薄くなり、それに伴い高速回転時の発熱が抑えられる。したがって、発熱に起因する故障を抑制して、高速耐久性能を向上させることが可能となる。
【0014】
トラック用タイヤやバス用タイヤ等、トレッドゴムが分厚いタイヤをリボン巻き工法で製造する場合には、リボンゴムの巻き付けピッチを狭くしてリボンゴムを立てた状態にすることが多い。ところが、リボンゴムが起立するほど、巻き付けのコントロールが難しくなってしまうので、トレッドゴムの厚みを確保するのは難しい作業となる。
【0015】
そこで、トレッドゴムの厚みを容易に確保するためには、前記トレッドゴムは、トレッド端よりも中央側の部位において、タイヤ幅方向一方側に向かって巻き付けられたリボンゴムを折り返して、タイヤ幅方向他方側に向けて巻き付けた後、再度折り返してタイヤ幅方向一方側に向けて巻き付けた三層構造部を有することが好ましい。このような三層構造部を有するタイヤは、リボンゴムの巻き付けピッチを狭くしてリボンゴムを立てなくても、逆に言えば、リボンゴムの巻き付けピッチを広くしてリボンゴムを寝かせた状態にしても、製造できるため、トレッドゴムの厚みを容易に確保することが可能となる。
【0016】
トレッドゴムの厚み確保と、リボンゴムの巻き付けコントロール性とを両立させるためには、前記リボンゴムは、対をなすトレッド端近傍部のうちタイヤ幅方向の一方側のトレッド端近傍部を始点としてタイヤ幅方向他方側のトレッド端に至る第一層を形成し、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返して前記始点を越えて一方側のトレッド端に至る第二層を形成し、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部を終点とする第三層を形成していることが好ましい。
【0017】
上記の空気入りタイヤは、下記の製造方法によって製造される。すなわち、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、リボンゴムをタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けることによりトレッドゴムを形成するトレッドゴム成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法であって、前記トレッドゴム成形工程は、前記リボンゴムを、タイヤ子午線断面においてトレッド端よりも中央側に位置する始点からタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付け、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向の他方側に折り返して、前記始点を越えて他方側のトレッド端に向けて巻き付け、次いで他方側のトレッド端でタイヤ幅方向の一方側に折り返し、トレッド端よりも中央側に位置する終点に向けて巻き付ける段階を含み、前記リボンゴムは、トレッド端及びトレッド中央部を避けたトレッド端近傍部に、巻き付け始端及び巻き付け終端を有することを特徴とする。
【0018】
この製造方法であれば、始点から終点に至るまでの間にリボンゴムを切断することなく、一度の巻き付けによってトレッドゴムを成形できるので、トレッドゴムの成形効率を向上させることが可能となる。しかも、上記の通り、高速耐久性能を向上させることができ、さらには、不良を抑制することが可能となる。
【0019】
高速耐久性能を更に向上させるためには、前記巻き付け終端を、タイヤ周方向に延びる主溝の形成箇所に配置するのが好ましい。
【0020】
トレッドゴムの厚みを容易に確保するためには、トレッド端よりも中央側の部位において、タイヤ幅方向の一方側に向かって巻き付けたリボンゴムを折り返して、タイヤ幅方向の他方側に向けて巻き付けた後、再度折り返してタイヤ幅方向の一方側に向けて巻き付けて、三層構造部を形成するのが望ましい。
【0021】
トレッドゴムの厚み確保と、リボンゴムの巻き付けコントロール性とを両立させるためには、前記リボンゴムの巻き付け位置を、対をなすトレッド端近傍部のうちタイヤ幅方向の一方側のトレッド端近傍部を始点としてタイヤ幅方向他方側のトレッド端に移動させて第一層を形成し、次いでタイヤ幅方向他方側のトレッド端でタイヤ幅方向一方側に折り返して前記始点を越えて一方側のトレッド端に移動させて第二層を形成し、次いで一方側のトレッド端でタイヤ幅方向他方側に折り返してタイヤ幅方向他方側のトレッド端近傍部を終点として第三層を形成するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤを示すタイヤ子午線断面図。
【
図2】トレッドゴムの成形工程で用いられる製造設備を示す図。
【
図4】トレッドゴムの成形工程を概略的に示す断面図。
【
図6】リボン巻き付け位置の移動経路を示す概念図。
【
図8】リボン巻き付け位置の他の移動経路を示す概念図。
【
図9】リボン巻き付け位置の上記以外の移動経路を示す概念図。
【
図10】リボン巻き付け位置の上記以外の移動経路を示す概念図。
【
図11】リボン巻き付け位置の上記以外の移動経路を示す概念図。
【
図12】リボン巻き付け位置の上記以外の移動経路を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本発明の空気入りタイヤの構成を説明し、次いで、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法について説明する。
【0024】
[空気入りタイヤの構成]
図1に示した空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備えている。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
【0025】
一対のビード部1の間にはトロイド状のカーカス層7が配され、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層7は、少なくとも1枚(本実施形態では2枚)のカーカスプライにより構成され、該カーカスプライは、タイヤ周方向に対して略90°の角度で延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層7の内周には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム5が配されている。
【0026】
ビード部1では、カーカス層7の外側に、リム装着時にリム(不図示)と接するリムストリップゴム4が設けられている。また、サイドウォール部2では、カーカス層7の外側にサイドウォールゴム9が設けられている。本実施形態では、リムストリップゴム4及びサイドウォールゴム9が、それぞれ導電性ゴムにより形成されている。
【0027】
トレッド部3では、カーカス層7の外側に、複数枚(本実施形態では2枚)のベルトプライにより構成されたベルト層6が配されている。各ベルトプライは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成され、該コードがプライ間で互いに逆向きに交差するように積層されている。ベルト層6の外周には、実質的にタイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆してなるベルト補強層8を配しているが、必要に応じて省略しても構わない。
【0028】
トレッド部3では、ベルト層6の外周にトレッドゴム10が設けられている。トレッドゴム10は、接地面を構成するキャップ部12と、キャップ部12のタイヤ径方向内側に設けられたベース部11とを有する。ベース11は、キャップ12とは異種のゴムからなる。
【0029】
上述したゴム層等の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。また、これらのゴムはカーボンブラックやシリカ等の充填材で補強されると共に、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等が適宜配合される。
【0030】
トレッドゴム10、特にキャップ部12は、いわゆるリボン巻き工法により成形される。リボン巻き工法は、
図3に示す小幅で未加硫のリボンゴム20をタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けて(
図2及び
図5参照)、所望の断面形状を有するゴム部材を成形する工法である。リボン巻き工法で成形されたトレッドゴム10は、
図7(c)に示すように、リボンゴム20の巻き付け始端S1及び巻き付け終端E1を有する。これら巻き付け始端S1及び巻き付け終端E1、巻き付け位置の移動経路は、タイヤ子午線断面において確認することができる。詳細は後述する。
【0031】
また、トレッドゴム10の表面には、加硫処理が施されることにより、タイヤ周方向に延びる主溝15が形成されている。加硫処理に使用されるタイヤモールドには突起が設けられており、その突起をトレッドゴム10に押し付けることで主溝15が形成される。図示しないが、トレッドゴム10には、主溝15に交差する方向に延びる横溝なども適宜に設けられる。
【0032】
[空気入りタイヤの製造方法]
次に、空気入りタイヤTを製造する方法について説明する。空気入りタイヤTは、トレッドゴム10に関する点を除けば、従来のタイヤ製造工程と同様して製造できるため、トレッドゴム10の成形工程を中心に説明する。
【0033】
図1に示すトレッドゴム10は、上記リボン巻き工法によって成形される。トレッドゴム10の成形工程は、
図2に示すように、回転支持体31を回転させながら、リボンゴム成形装置30から供給されたリボンゴム20を回転支持体31に巻き付ける段階を含む。ゴムリボン20は、
図3に示すように、非導電性ゴムにより形成されている。巻き付け時には、
図3の下側が、回転支持体31に対向する内周側となる。リボンゴム(ゴムストリップともいう)の幅、厚みは特に限定されないが、好ましくは、幅が15〜40mm、厚みが0.5〜3.0mmであることが望ましい。
【0034】
図2に示すように、リボンゴム成形装置30は、ゴムを押出してリボンゴム20を成形可能に構成されている。回転支持体31は、軸31aを中心としたR方向の回転と、軸方向への移動とが可能に構成されている。制御装置32は、リボンゴム成形装置30及び回転支持体31の作動制御を行う。本実施形態では、リボンゴム20の断面は三角形状であるが、これに限られず、楕円形や四角形などの他の形状でも構わない。また、回転支持体31は軸方向へ移動可能に構成されているが、回転支持体31に対しリボンゴム成形装置30を移動させてもよい。すなわち、回転支持体31が、リボンゴム成形装置30に対して軸方向に沿って相対移動可能に構成されていればよい。
【0035】
トレッドゴム10の成形工程では、まず、
図4(a)に示すように、回転支持体31の外周面にベース部11を形成する。図示を省略しているが、回転支持体31の外周面には予めベルト層6とベルト補強層8とが設けられ(
図1参照)、それらの上にベース部11が形成される。ベース部11は、いわゆる押出成形法とリボン巻き工法のいずれで形成しても構わない。押出成形法は、所望の断面形状を有する未加硫の帯状ゴム部材を押出成形し、その端部同士をジョイントして環状に成形する工法である。
【0036】
次に、
図4(b)〜(d)に順次示すように、ベース11の外周面にキャップ部12を形成し、
図1に示したトレッドゴム10を成形する。ここでは、
図5に示すように、リボンゴム20の巻き付けピッチP20は、リボンゴム20のリボン幅W20よりも小さく設定されている。これにより、隣り合うリボンゴム20・20同士が相互に接する状態で螺旋状に巻き付けられる。矢印Dは、リボン巻き付け位置の移動方向を示し、この方向に沿って隣り合うリボンゴム20が相互に縁部を重ねている。
【0037】
図6は、
図4に示したトレッドゴムの成形工程における、リボンゴム20の巻き付け位置の移動経路を概念的に示している。説明の便宜上、タイヤ子午線断面においてタイヤ幅方向WDの一方側(図では右方)をWD1とし、他方側をWD2(図では左方)とする。リボンゴムは、タイヤ子午線断面においてトレッド端P1・P2よりも中央側に位置する始点S1からタイヤ幅方向WD1側に向けて巻き付けられる。次いでリボンゴムは、WD1側のトレッド端P2でタイヤ幅方向WD2側に折り返して、前記始点S1を越えてWD2側のトレッド端P1に向けて巻き付けられる。次いでリボンゴムは、WD2側のトレッド端P1でタイヤ幅方向X1側に折り返し、トレッド端P1・P2よりも中央側に位置する終点E1に向けて巻き付けられる。また、同図に示すように、トレッド端P1・P2から中央側に向けてトレッドゴム最大幅Wの5〜25%の範囲内をトレッド端近傍部Ar1・Ar2とした場合に、リボンゴムは、トレッド端近傍部Ar1・Ar2に、巻き付け始S1及び巻き付け終端E1を有する。トレッド端近傍部の定義において5%以上としているのは、先細り状のトレッド端を避ける意味である。また、25%以下としているのはトレッド中央部を避ける意味であるが、高速耐久性能の向上を追求するには20%以下であるのが好ましい。
【0038】
具体的には、
図7(a)〜(c)に順次示すように、リボンゴム20を巻き付ける。なお、
図7は概念的に描かれており、トレッドゴム10に対する各リボンゴム20の断面積比は、もっと小さくて構わない。
【0039】
図7(a)は、
図4(b)の段階に相当し、リボンゴムの巻き付け位置が、対をなすトレッド端近傍部Ar1・Ar2のうちタイヤ幅方向WD2側(左方)のトレッド端近傍部Ar1を始点S1としてタイヤ幅方向WD1側(右方)に移動し、タイヤ幅方向WD1側(右方)のトレッド端P2に至る。これにより、リボンゴム20の第一層L1が形成される。
【0040】
図7(b)は、
図4(c)の段階に相当し、リボンゴムの巻き付け位置が、タイヤ幅方向WD1側(右方)のトレッド端P2でタイヤ幅方向WD2側(左方)に折り返して始点S1を越えてタイヤ幅方向WD2側(左方)のトレッド端P1に至る。これにより、リボンゴム20の第二層L2が形成される。
【0041】
図7(c)は、
図4(d)の段階に相当し、リボンゴムの巻き付け位置が、タイヤ幅方向WD2側(左方)のトレッド端P1でタイヤ幅方向WD1側(右方)に折り返してタイヤ幅方向WD1側(右方)のトレッド端近傍部Ar2に至り、ここを終点E1とする。これにより、リボンゴム20の第三層L3が形成される。
【0042】
以上のように本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けられたリボンゴム20によりトレッドゴム10が形成される空気入りタイヤTであって、リボンゴム20は、タイヤ子午線断面においてトレッド端P1・P2よりも中央側に位置する始点S1からタイヤ幅方向WDの一方側(WD1)に向けて巻き付けられ、次いで一方側(WD1)のトレッド端P2でタイヤ幅方向WDの他方側(WD2)に折り返して、始点S1を越えて他方側(WD2)のトレッド端P1に向けて巻き付けられ、次いで他方側(WD2)のトレッド端P1でタイヤ幅方向WDの一方側(WD1)に折り返し、トレッド端P1・P2よりも中央側に位置する終点E1に向けて巻き付けられ、リボンゴム20は、トレッド端P1・P2及びトレッド中央部を避けたトレッド端近傍部Ar1・Ar2に、巻き付け始端S1及び巻き付け終端E1を有する。
【0043】
また、本実施形態の空気入りタイヤは、次の製造方法により生産される。すなわち、本実施形態の空気入りタイヤの製造方法は、リボンゴム20をタイヤ回転軸回りに螺旋状に巻き付けることによりトレッドゴム10を形成するトレッドゴム成形工程を備える空気入りタイヤの製造方法であって、トレッドゴム成形工程は、リボンゴム20を、タイヤ子午線断面においてトレッド端P1・P2よりも中央側に位置する始点S1からタイヤ幅方向WDの一方側(WD1)に向けて巻き付け、次いで一方側(WD1)のトレッド端P2でタイヤ幅方向WDの他方側(WD2)に折り返して、始点S1を越えて他方側(WD2)のトレッド端P1に向けて巻き付け、次いで他方側(WD2)のトレッド端P1でタイヤ幅方向WDの一方側(WD1)に折り返し、トレッド端P1・P2よりも中央側に位置する終点E1に向けて巻き付ける段階を含み、リボンゴム20は、トレッド端P1・P2及びトレッド中央部を避けたトレッド端近傍部Ar1・Ar2に、巻き付け始端S1及び巻き付け終端E1を有する。
【0044】
トレッド端近傍部Ar1・Ar2は、トレッド端P1・P2から中央側に向けてトレッドゴム最大幅Wの5〜25%の範囲内を意味する。
【0045】
このような製法によれば、始点S1から終点E1に至るまでの間にリボンゴム20を切断することなく、一度の巻き付けによってトレッドゴム10を成形できるので、トレッドゴム10の成形効率を向上させることが可能となる。しかも、リボンゴム20の巻き付け始端S1及び巻き付け終端E1が、トレッド中央部を避けたトレッド端近傍部Ar1・Ar2に配置されているので、巻き付け始端S1及び巻き付け終端E1がトレッド中央部に配置されている場合に比べて、遠心力の影響を低減し、高速耐久性能を向上させることが可能となる。それでいて、巻き付け始端S1及び巻き付け終端E1が、トレッド端P1・P2を避けたトレッド端近傍部Ar1・Ar2に配置されているので、リボンゴム20を適切に押させることができ、不良を抑制することが可能となる。
【0046】
特に、本実施形態の空気入りタイヤ及びその製造方法では、リボンゴム20は、対をなすトレッド端近傍部Ar1・Ar2のうちタイヤ幅方向WDの一方側(WD2)のトレッド端近傍部Ar1を始点S1としてタイヤ幅方向他方側(WD1)のトレッド端P2に至る第一層L1を形成し、次いでタイヤ幅方向他方側(WD1)のトレッド端P2でタイヤ幅方向一方側(WD2)に折り返して始点S1を越えて一方側(WD2)のトレッド端P1に至る第二層L2を形成し、次いで一方側(WD2)のトレッド端P1でタイヤ幅方向他方側(WD1)に折り返してタイヤ幅方向他方側(WD1)のトレッド端近傍部Ar2を終点E1とする第三層L3を形成している。
【0047】
このようにすれば、リボンゴム20の巻き付けピッチP20を狭くしてリボンゴム20を起立させなくても、トレッドゴム10の厚みを確保できるので、厚みの確保とリボンゴムの巻き付けコントロール性の両方を向上させることが可能となる。特に、トラック、バスなどの厚みを必要とするタイヤを成形する上で有用である。
【0048】
[他の実施形態]
(1)本発明は、リボンゴム20を途中で切断することなく巻き付け、且つ、巻き付け始端及び終端がトレッド端近傍部にあれば、本実施形態に限定されるものではない。例えば、
図8に示す巻き方が挙げられる。すなわち、リボンゴム20の巻き付け位置は、一方側(WD2)のトレッド端近傍部Ar1を始点S2としてタイヤ幅方向一方側(WD2)のトレッド端P1に至り、このトレッド端P1でタイヤ幅方向他方側(WD1)に折り返して始点S2を越えてタイヤ幅方向他方側(WD1)のトレッド端P2に至り、このトレッド端P2でタイヤ幅方向一方側(WD2)に折り返して、他方側(WD1)のトレッド端近傍部Ar2に至り、このトレッド端近傍部Ar2を終点E2とする。この例では、
図8に示すように、リボンゴム20の巻き付け終端E2は、タイヤ周方向に延びる主溝15の形成箇所に配置されている。主溝15の形成箇所は、ゴムの厚みが薄くなり、それに伴い高速回転時の発熱が抑えられるので、発熱に起因する故障を抑制でき、高速耐久性能を更に向上させることが可能となる。
【0049】
(2)上記以外の巻き方として、
図9に示すように、対をなすトレッド端近傍部Ar1・Ar2のうち一方のトレッド端近傍部Ar1のみに、リボンゴム20の巻き付け始端S及び巻き付け終端E3を配置してもよい。
【0050】
(3)上記以外の巻き方として、
図10に示すように、トレッドゴムは、トレッド端P1・P2よりも中央側の部位において、タイヤ幅方向一方側(WD1)に向かって巻き付けられたリボンゴムを位置P3で折り返して、タイヤ幅方向他方側(WD2)に向けて巻き付けた後、位置P4で再度折り返して、タイヤ幅方向一方側(WD1)に向けて巻き付け、三層構造部D3を有することが挙げられる。このようにすれば、リボンゴム20の巻き付けピッチP20を狭くしてリボンゴム20を立てなくてもトレッドゴム10の厚みを容易に確保することができる。
図11に示す例は、三層構造部D3を複数形成したものである。
【0051】
(4)上記以外の巻き方として、
図12に示す巻き方が挙げられる。すなわち、リボンゴムは、一方側(WD2)のトレッド端近傍部Ar1を始点S2としてタイヤ幅方向他方側(WD1)に向けて巻き付けられる。次いでリボンゴムは、位置P3で折り返してタイヤ幅方向一方側(WD2)に向けて前記始点S2を越えて巻き付けられ、一方側(WD2)のトレッド端P1でタイヤ幅方向他方側(WD1)に折り返して、前記始点S2を越えて他方側(WD1)のトレッド端P2に向けて巻き付けられる。次いでリボンゴムは、他方側(WD1)のトレッド端P2で折り返し、トレッド端P2よりも中央側に位置する終点E2まで巻き付けられる。このようにすれば、巻き付け終端E2を折り返すことにより、トレッド端P2と巻き付け終端E2とを遠ざけることができるので、巻き付け終端E2がトレッド端P2に近づくことによる不具合をより一層低減することが可能となる。不具合の一例として、例えば、後追いローラ(ステチャー)によるリボンゴムの押さえ不足に起因する不良などが挙げられる。
【0052】
また、巻き付け始端S1と巻き付け終端E1は、タイヤ周方向に180°離れているのが好ましい。すなわち、巻き付け始端S1と巻き付け終端E1がタイヤ回転軸を中心として対称となる位置関係にあると、RFV(ラジアルフォースバリエーション)が向上し、周上の接地圧分布が均一になるので、高速耐久性能を向上することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の構成と効果を効果的に示す実施例等について説明する。ここでは、タイヤサイズ215/45R17のテストタイヤを用いて、高速耐久性能を評価した。高速耐久性能は、欧州経済委員会規則第30(Regulation No30 Uniform Provisions Concerning the Approval of Pneumatic Tires for Motor Vehicles and Their Trailers)の付則7で、荷重/速度性能試験手順として定められた速度記号H(210km/h)のタイヤについての条件に準拠してテストを行なった。高速耐久性能は、走行速度を10分毎に10km/h増分させる方式で、タイヤが故障するまでドラム試験機にて高速走行させて評価した。従って、速度が大きいほど高速耐久性能に優れていることを示す。
【0054】
比較例
リボン巻き工法でトレッドゴムを形成するにあたり、リボンゴムの巻き付け始端をタイヤ幅方向中央部に配置し、横8の字状にリボンゴムを巻き付け、巻き付け終端をタイヤ幅方向中央部(赤道部)に配置したタイヤを作製した(特許文献1参照)。
【0055】
実施例1
図6に示す経路でリボンゴムを巻き付けてトレッドゴムを形成した。リボンゴム20の巻き付け始端S1及び巻き付け終端E1は、それぞれトレッド端P1・P2から中央側に向かってトレッドゴム最大幅Wの12.5%の位置に配置した。それ以外は、比較例と同じとした。
【0056】
実施例2
図8に示す経路でリボンゴムを巻き付けてトレッドゴムを形成した。リボンゴム20の巻き付け始端S2及び巻き付け終端E2は、それぞれトレッド端P1・P2から中央側に向かってトレッドゴム最大幅Wの20%の位置に配置した。それ以外は、比較例と同じとした。
【0057】
実施例3
図9に示す経路でリボンゴムを巻き付けてトレッドゴムを形成した。リボンゴム20の巻き付け始端S2及び巻き付け終端E3は、それぞれトレッド端P1から中央側に向かってトレッドゴム最大幅Wの24.1%の位置に配置した。それ以外は、比較例と同じとした。
【0058】
実施例4
図10に示す経路でリボンゴムを巻き付けてトレッドゴムを形成した。リボンゴム20の巻き付け始端S2及び巻き付け終端E2は、それぞれトレッド端P1・P2から中央側に向かってトレッドゴム最大幅Wの23.2%の位置に配置した。それ以外は、比較例と同じとした。
【0059】
実施例5
図12に示す経路でリボンゴムを巻き付けてトレッドゴムを形成した。リボンゴム20の巻き付け始端S2及び巻き付け終端E2は、それぞれトレッド端P1・P2から中央側に向かってトレッドゴム最大幅Wの20%の位置に配置した。それ以外は、比較例と同じとした。
【0060】
【表1】
【0061】
比較例では280km/hで故障が発生したのに対し、実施例1〜5のいずれも故障が発生した速度が比較例を上回っているので、高速耐久性能が向上していることが分かる。なお、実施例4が実施例1〜3に対して高速耐久性能が低いのは、対をなすトレッド端近傍部Ar1・Ar2の間のトレッド中間部に、リボンゴム20の折り返し端が存在するためと考えられる。したがって、高速耐久性能を追求する観点では、上記トレッド中間部(タイヤ赤道を含む)に折り返し端がないのが好ましいと考えられる。
【符号の説明】
【0062】
10…トレッドゴム
15…主溝
20…リボンゴム
P1、P2…トレッド端
S1、S2…始点(巻き付け始端)
E1、E2、E3…終点(巻き付け終端)
Ar1、Ar2…トレッド端近傍部
D3…三層構造部
L1…第一層
L2…第二層
L3…第三層