(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記パッケージ部材上に設けられたスクリーンを備え、前記パッケージ部材と前記スクリーンの間に、或いは、前記スクリーンの上に、前記遮光層が設けられている
請求項1又は請求項2に記載のディスプレイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施形態に係る発光素子、及び、それを備えるディスプレイ装置の一例を、図面を参照しながら下記の順で説明する。ただし、本開示は下記の例に限定されない。
1.第1の実施形態:発光素子の構成
2.第2の実施形態:ディスプレイ装置の構成
【0013】
<1.第1の実施形態:発光素子の構成>
まず、第1の実施形態に係る発光素子の構成について説明する前に、LEDを用いた従来のLEDディスプレイにおいて、LEDディスプレイの小型化を図る際に発生し得る課題について具体的に説明する。
【0014】
LEDディスプレイにおいて、各LEDを従来のようにレンズ状に造形された樹脂カプセルで封止した場合、LEDのパッケージ全体が大きくなる傾向があり、これにより、LEDディスプレイの小型化が制限される。この課題を解消してLEDディスプレイの小型化を図る手法としては、光出射面の形状が平坦なパッケージ部材でLEDを封止する手法が考えられる。すなわち、光出射面がレンズ構造を有さない平坦面であるパッケージ部材でLEDを封止することによりLEDディスプレイの小型化が可能になる。
【0015】
しかしながら、この手法では、光取り出し効率が低下するという課題が発生する。この課題を、
図1を参照しながら、具体的に説明する。なお、
図1は、LEDを光出射面の形状が平坦な樹脂部材(パッケージ部材)で封止した場合(比較例1のパッケージ形態)における光取り出し動作の様子を示す図である。
【0016】
LED10から射出された光(黒矢印)のうち、樹脂部材20の光出射面20aに対して、光が全反射する臨界角(後述の
図2中のθ0)より大きい角度θ1で入射する光成分は、光出射面20aから外部に取り出すことができる。一方、樹脂部材20の光出射面20aに対して、全反射の臨界角より小さい角度θ2で入射する光成分は、光出射面20aで全反射され、外部に取り出すことができない。それゆえ、
図1に示す比較例1のLED10のパッケージ形態では、光取り出し効率が低下する。
【0017】
そこで、本実施形態では、光出射面20aの形状が平坦である樹脂部材20でLED10を封止した際にも優れた光取り出し効率が得られる発光素子の構成を提案する。
【0018】
[発光素子の構成及びパッケージ形態]
図2は、第1の実施形態に係る発光素子の断面構成、パッケージ形態、及び、光取り出し動作の様子を示す図である。なお、
図2に示す本実施形態の発光素子1の構成及び樹脂部材20(パッケージ部材)の構成において、
図1に示す比較例1のそれらと同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0019】
発光素子1は、LED10(発光素子本体)と、LED10の光出射面上に設けられた低屈折率層部11とを備える。なお、LED10は、例えば、従来市販されている任意のLEDで構成することができる。
【0020】
低屈折率層部11は、発光素子1を封止する樹脂部材20の屈折率(第2の屈折率)より小さな屈折率(第1の屈折率)を有する。なお、低屈折率層部11は、樹脂部材20の屈折率より小さい屈折率を有する材料であれば、任意の材料で形成することができる。例えば、低屈折率層部11をSiO
2やエアロジェルなどで形成してもよいし、低屈折率層部11をエアギャップで形成してもよい。低屈折率層部11をSiO
2で形成する場合には、例えば、SiO
2の蒸着角度により、その屈折率を制御することができ、1.08程度の屈折率を得ることができる。また、低屈折率層部11をエアロジェルで形成した場合には、例えば1.01程度の屈折率を得ることができる。
【0021】
また、低屈折率層部11の厚さは、任意に設定することができ、例えば、1μm程度の厚さに設定することができる。なお、低屈折率層部11の屈折率及び厚さは、例えば、後述するLEDディスプレイで必要とする光取り出し開口部の寸法等の条件に応じて適宜設定することができる。
【0022】
そして、本実施形態のパッケージ形態では、
図2に示すように、光出射面20aが平坦面である樹脂部材20により、上記構成の発光素子1の低屈折率層部11側の表面(発光素子1の光出射面)を封止する。
【0023】
なお、樹脂部材20は、低屈折率層部11の屈折率より大きい屈折率を有する樹脂材料であれば任意の樹脂材料で形成することができる。また、後述の第2の実施形態のLEDディスプレイのように、樹脂部材20上にブラック樹脂層やスクリーンを設ける場合には、これらの構成部材と屈折率マッチングがとれるような材料で樹脂部材20を形成することが好ましい。
【0024】
[発光素子の光取り出し動作]
次に、
図2に示す本実施形態の発光素子1のパッケージ形態における光の取り出し動作を説明する。まず、LED10から射出された光は、低屈折率層部11を介して、樹脂部材20に入射される。この際、低屈折率層部11と樹脂部材20との界面では、両者の屈折率差により、光の進行方向が変化する。具体的には、低屈折率層部11の屈折率が樹脂部材20のそれより小さいので、光の進路が、低屈折率層部11と樹脂部材20との界面において、
図2に示すように、樹脂部材20の厚さ方向に近づく方向に変化する。すなわち、本実施形態では、低屈折率層部11から射出される光の角度範囲は、低屈折率層部11を設けない場合(比較例1)に比べて狭くなる(絞り込まれる)。
【0025】
この際、LED10から射出された光(黒矢印)のうち、樹脂部材20の光出射面20aに対して、全反射の臨界角θ0より小さな角度で射出された光成分の進路も同様に低屈折率層部11と樹脂部材20との界面で変更される。この結果、これらの光成分の一部は、低屈折率層部11を通過した後、その光の光出射面20aに対する進行方向の角度が、全反射の臨界角θ0より大きくなり、光出射面20aから外部に取り出せるようになる。
【0026】
すなわち、
図1に示す比較例1のパッケージ形態では外部に取り出すことのできなかった光成分の一部を、本実施形態の発光素子1を用いることにより、外部に取り出すことができる。この動作を、
図3A及び3Bを参照しながら具体的に説明する。
【0027】
図3Aは、
図1に示す比較例1のパッケージ形態において、光線追跡シミュレーションにより計算された、LED10からの出射光の光路を示す図である。また、
図3Bは、
図2に示す本実施形態のパッケージ形態において、光線追跡シミュレーションにより計算された、発光素子1からの出射光の光路を示す図である。なお、
図3A中の白線で込まれた長方形領域は、LED10の配置領域であり、
図3B中の白線で込まれた長方形領域は、発光素子1の配置領域である。
【0028】
図3A及び3Bの比較から明らかなように、本実施形態の発光素子1を用いた場合には、比較例1の場合に比べて、発光素子1からの光の出射範囲が絞り込まれる(出射角度の範囲が狭くなる)。また、
図3A及び3Bの比較から明らかなように、本実施形態の発光素子1のパッケージ形態(光取り出し形態)では、比較例1に比べて、光出射面20aから外部に取り出される光の量が増加することが分かる。これは、LED10の光出射面に低屈折率層部11を設けたことにより、樹脂部材20の光出射面20aに全反射の臨界角θ0より大きな角度で入射される光成分(全反射しない光成分)が、比較例1のそれより増加するためである。
【0029】
上述のように、本実施形態の発光素子1を用いることにより、比較例1の構成では外部に取り出すことのできなかった光成分の一部を、外部に取り出すことができる。それゆえ、本実施形態の発光素子1を用いた場合には、比較例1(
図1)のパッケージ形態に比べて、光取り出し効率を向上させることができる。
【0030】
[比較例2及び3のパッケージ形態]
ここで、さらに、本実施形態のパッケージ形態(光取り出し形態)を、LED10を上記従来技術のようにレンズ状に造形された樹脂カプセルで封止した場合のパッケージ形態(光取り出し形態)と比較する。
図4A及び4Bに、そのパッケージ形態を示す。
【0031】
図4Aは、低屈折率層部を設けない発光素子(LEDのみ)をレンズ状に造形された樹脂カプセルで封止した場合(比較例2のパッケージ形態)における光の取り出し動作の様子を示す図である。一方、
図4Bは、低屈折率層部を備える発光素子をレンズ状に造形された樹脂カプセルで封止した場合(比較例3のパッケージ形態)における光の取り出し動作の様子を示す図である。なお、
図4A及び4Bにそれぞれ示す比較例2及び3のパッケージ形態において、
図2に示す本実施形態のパッケージ形態と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0032】
図4Aと、
図1との比較から明らかなように、比較例2のパッケージ形態は、
図1に示す比較例1のパッケージ形態において、LED10のパッケージ部材として、光出射面30aがレンズ状に造形された樹脂部材30を用いた構成である。また、
図4Bと、
図2との比較から明らかなように、比較例3のパッケージ形態は、
図2に示す本実施形態のパッケージ形態において、LED10のパッケージ部材として、光出射面30aがレンズ状に造形された樹脂部材30を用いた構成である。
【0033】
また、
図5A及び5Bに、それぞれ比較例2及び3のパッケージ形態において、光線追跡シミュレーションにより計算された、LED10(発光素子1)からの出射光の光路を示す。なお、
図5A及び5B中の白線で込まれた半円領域は、樹脂部材30の配置領域である。
【0034】
図5A及び5Bの比較から明らかなように、比較例3ではLED10の発光面上に、低屈折率層部11を設けているので、比較例2の場合に比べて、発光素子1からの光の出射範囲が絞り込まれ、光の出射角度の範囲が狭くなることが分かる。
【0035】
[光取り出し効率の評価]
ここで、上述した第1の実施形態、比較例1〜3の各種パッケージ形態(光取り出し形態)において、樹脂部材から射出される光の輝度をシミュレーションにより算出し比較した。なお、このシミュレーション解析では、低屈折率層部11の屈折率nを1.07〜1.2の範囲内の所定の値(1.10)とし、樹脂部材の屈折率は1.48とした。下記表1にその評価結果を示す。なお、下記表1では、比較例1のパッケージ形態(
図1)における出射光の輝度を1(基準)とし、それに対する相対的な輝度を示す。
【0037】
表1から明らかなように、本実施形態のパッケージ形態では、比較例1のパッケージ形態に比べて、約29%程度、輝度が向上することが分かる。すなわち、LED10(発光素子1)を光出射面20aが平坦面である樹脂部材20でパッケージする場合、LED10の光出射面上に低屈折率層部11を設けることにより、光取り出し効率が改善されることが分かる。
【0038】
なお、表1から明らかなように、本実施形態のパッケージ形態では、LED10(発光素子1)を光出射面30aがレンズ状の樹脂部材30でパッケージする場合(比較例2及び3)に比べて輝度が劣ることが分かる。しかしながら、比較例2及び3のパッケージ形態では、パッケージ部材として、光出射面30aがレンズ状に造形された樹脂部材30を用いるので、上述のように、LEDディスプレイの小型化が制限される。それに対して、本実施形態では光出射面20aが平坦面である樹脂部材20で発光素子1をパッケージするので、LEDディスプレイの小型化の観点では、本実施形態の構成は、比較例2及び3より優位である。
【0039】
また、ここでは、さらに、本実施形態のパッケージ形態(光取り出し形態)における、低屈折率層部11の厚さ及び屈折率と、輝度の改善率との関係をシミュレーションにより評価した。その評価結果を、
図6及び7に示す。
【0040】
図6は、低屈折率層部11の屈折率nを1.0(エアギャップ)とした場合の低屈折率層部11の厚さと、輝度改善率との関係を示す特性図であり、横軸が低屈折率層部11の厚さであり、縦軸が輝度改善率である。また、
図7は、低屈折率層部11の厚さを1.0μmとした場合の低屈折率層部11の屈折率nと、輝度改善率との関係を示す特性図であり、横軸が低屈折率層部11の屈折率nであり、縦軸が輝度改善率である。
【0041】
また、このシミュレーション解析では、樹脂部材の屈折率を1.48とし、樹脂部材の厚さを17μmとし、全反射の臨界角θ0は42度とした。さらに、このシミュレーション解析において、輝度改善率は、
図1に示す比較例1のパッケージ形態の輝度を基準とした。
【0042】
図6から明らかなように、評価した低屈折率層部11の膜厚の範囲内では、LED10上に低屈折率層部11を設けることにより輝度(光取り出し効率)が改善されることが分かる。また、
図7から明らかなように、低屈折率層部11の屈折率nを樹脂部材の屈折率(1.48)より低くすることにより、輝度(光取り出し効率)が改善されることが分かる。
【0043】
以上のことから、本実施形態の発光素子1をLEDディスプレイの発光素子として用い、かつ、光出射面20aが平坦面である樹脂部材20で発光素子1を封止することにより、LEDディスプレイの小型化を図りつつ、優れた光取り出し効率を得ることができる。
【0044】
<2.第2の実施形態:ディスプレイ装置の構成>
次に、本開示の第2の実施形態に係るディスプレイ装置の構成例を説明する。なお、本実施形態では、ディスプレイ装置として、LEDディスプレイを例に挙げて説明する。
【0045】
[LEDディスプレイの構成]
図8に、第2の実施形態に係るLEDディスプレイの概略構成を示す。
図8は、本実施形態のLEDディスプレイの概略構成断面図である。なお、
図8に示す本実施形態のLEDディスプレイ40において、
図2に示す上記第1の実施形態の発光素子1のパッケージ形態と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0046】
LEDディスプレイ40は、発光素子1と、樹脂部材20(パッケージ部材)と、実装基板41と、配線42と、ブラック樹脂層43(遮光層)と、スクリーン44とを備える。そして、本実施形態では、実装基板41の一方の表面上に、配線42、発光素子1、樹脂部材20、ブラック樹脂層43、及び、スクリーン44が、この順で積層される。なお、
図8には、説明を簡略化するため、一つの発光素子1付近の概略構成を示すが、実際には、LEDディスプレイ40は、複数の発光素子1を備え、該複数の発光素子1が、実装基板41上に、2次元状に配置される。
【0047】
発光素子1は、上記第1の実施形態と同様に、LED10と、該LED10の光出射面上に形成された低屈折率層部11とで構成される。また、樹脂部材20もまた、上記第1の実施形態と同様に、光出射面20aが平坦面である封止部材(パッケージ部材)で構成される。
【0048】
なお、本実施形態では、樹脂部材20上にスクリーン44及びブラック樹脂層43を設けるので、後述する外光反射の影響を低減するために、スクリーン44及びブラック樹脂層43と屈折率マッチングした樹脂で樹脂部材20を形成する。また、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、発光素子1の低屈折率層部11の屈折率は、樹脂部材20の屈折率より小さくする。
【0049】
実装基板41は、発光素子1を実装可能な基板であれば、任意の基板で構成することができ、例えば、ガラス基板等で構成することができる。配線42は、LED10と電気的に接続されており、LED10に電力を供給する。
【0050】
ブラック樹脂層43は、樹脂部材20のスクリーン44側表面の所定領域に埋め込むように形成される。なお、ブラック樹脂層43は、従来市販されているブラック樹脂材を用いて形成することができる。
【0051】
また、ブラック樹脂層43の発光素子1の光出射面1aと対向する領域(光出射面1aの直上領域)には、開口部43a(光取り出し開口部)が設けられる。そして、開口部43aの寸法は、開口部43aの端部をスクリーン44の光出射面44aに投影した位置と発光素子1の光出射面1aの端部位置とを結ぶ直線(
図8中の点線)と、光出射面20aとの間の角度が全反射の臨界角θ0となるように、設定される。すなわち、発光素子1の光出射面1aの上部には、光出射面20aに対する側部の傾きが全反射の臨界角θ0となるコーン状(錘体状)の光抽出領域40aが形成される。
【0052】
本実施形態の発光素子1では、上記第1の実施形態で説明したように、低屈折率層部11により、LED10から射出された光の出射範囲を絞り込むことができるので、ブラック樹脂層43の開口部43aを介して効率よく光を外部に射出することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、
図8に示すように、樹脂部材20の光出射面20aにおけるコーン状(錘体状)の光抽出領域40aの面積を、ブラック樹脂層43の開口部43aの面積より小さくする例を説明するが、本開示はこれに限定されない。開口部43aの面積が樹脂部材20の光出射面20aにおける光抽出領域40aの面積以上となる範囲であれば、ブラック樹脂層43の開口部43aの構成(面積、形状等)を任意に設定することができる。ただし、開口部43aの面積を大きくしすぎると、後述する配線42での外光反射の影響を低減する効果が小さくなる。それゆえ、本実施形態では、ブラック樹脂層43の開口部43aの面積が、樹脂部材20の光出射面20aにおける光抽出領域40aの面積により近くなるように、開口部43aを構成することが好ましい。
【0054】
スクリーン44は、樹脂部材20及びブラック樹脂層43上に、設けられ、光透過性を有する材料(例えばガラス等)で形成される。
【0055】
[ブラック樹脂層の機能及び効果]
次に、本実施形態のLEDディスプレイ40において、ブラック樹脂層43を設けることにより得られる効果を、
図9〜11を参照しながら説明する。
【0056】
なお、
図9は、低屈折率層部を備えない発光素子(LEDのみ)を光出射面が平坦面である樹脂部材で封止した場合のLEDディスプレイ(比較例4)の概略構成断面図である。また、
図10A及び10Bは、低屈折率層部を備えない発光素子を用いたLEDディスプレイにおいて、さらにブラック樹脂層43を設けたLEDディスプレイ(比較例5及び6)の概略構成断面図である。そして、
図11は、本実施形態のLEDディスプレイ40における光取り出し動作の様子を示す図である。なお、
図9、並びに、
図10A及び10Bに示す各種比較例のLEDディスプレイにおいて、
図8に示す本実施形態のLEDディスプレイ40と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
【0057】
比較例4のLEDディスプレイ100は、
図9に示すように、実装基板41の一方の表面上に、配線42、LED10、樹脂部材101、及び、スクリーン44が、この順で積層して設けられた構成を有する。また、LEDディスプレイ100では、樹脂部材101は、低屈折率樹脂材料で形成される。なお、樹脂部材101には、ボイドが含まれていてもよい。
【0058】
比較例4のLEDディスプレイ100の構成では、LEDディスプレイ100の周囲からLEDディスプレイ100に入射される外光L0は、スクリーン44及び配線42等で反射される(
図9中の白抜き矢印L1及びL2参照)。この場合、スクリーン44及び配線42からの反射光の影響により、LEDディスプレイ100のコントラスト特性が低下する可能性がある。この課題を解消する手法としては、次の2つの手法が考えられる。
【0059】
まず、配線42からの反射光を抑制する手法として、
図10Aに示すLEDディスプレイ110(比較例5)のように、配線42の表面上にブラック樹脂層43を設ける手法が考えられる。しかしながら、この手法では、スクリーン44で反射される外光成分(
図10A中の白抜き矢印L1)の影響を抑制することができない。
【0060】
また、上記課題を解消する別の手法としては、LEDディスプレイを、
図10Bに示すLEDディスプレイ120(比較例6)のように構成する手法が考えられる。比較例6のLEDディスプレイ120では、ブラック樹脂層43をスクリーン44と樹脂部材20との間に設け、LED10上の光抽出領域40aに対応するブラック樹脂層43の領域に開口部43aを設ける。さらに、比較例6のLEDディスプレイ120では、LED10を封止する樹脂部材20を、本実施形態と同様に、ブラック樹脂層43及びスクリーン44と屈折率マッチングする樹脂材料で形成する。
【0061】
この場合には、スクリーン44での外光反射を抑制することができる。また、この構成では、外光L0の入射側から見て、配線42はブラック樹脂層43に隠れた状態となるので、配線42での外光反射も抑制することができる。しかしながら、比較例6のLEDディスプレイ120では、LED10上に低屈折率層部を設けないので、全反射の臨界角θ0より小さな角度でLED10からスクリーン44に入射される光成分は、ブラック樹脂層43に吸収され外部に取り出すことができない。それゆえ、比較例6のLEDディスプレイ120では、外光反射の影響(コントラストの低下)を抑制することはできるが、光取り出し効率が低下する。
【0062】
上記比較例5及び6の構成に対して、本実施形態のLEDディスプレイ40では、ブラック樹脂層43をスクリーン44と樹脂部材20との間に設けるので、比較例6と同様に、外光反射の影響(コントラストの低下)を抑制することができる。また、本実施形態のLEDディスプレイ40では、LED10上に低屈折率層部11を設けるので、
図11に示すように、全反射の臨界角θ0より小さな角度で発光素子1からスクリーン44に入射する光成分を増大させることができる。すなわち、本実施形態では、発光素子1で発光された光の大部分が、ブラック樹脂層43の開口部43a(コーン状の光抽出領域40a)を介して外部に射出され、これにより、光取り出し効率を向上させることができる。
【0063】
以上のことから、本実施形態では、光取り出し効率及びコントラスト特性の両方に優れたLEDディスプレイ40を提供することができる。さらに、本実施形態では、発光素子1を光出射面が平坦面である樹脂部材20で封止(パッケージ)するので、小フットプリントのLEDディスプレイ40(フラットパネルディスプレイ)を提供することができる。
【0064】
なお、上記第2の実施形態では、外光L0の影響を除去するための遮光層として、ブラック樹脂材で形成された層を用いた例を説明したが、本開示はこれに限定されない。上記第2の実施形態では、ブラック樹脂層43と同様の遮光機能を有する膜であれば、任意の膜で遮光層を構成することができる。
【0065】
また、上記第2の実施形態では、ブラック樹脂層43をスクリーン44と樹脂部材20との間に設ける構成例を説明したが、本開示はこれに限定されない。ブラック樹脂層43の配置位置は、上記第2の実施形態と同様に、高い光取り出し効率を維持しつつ、ブラック樹脂層43を設けない場合に比べて、LEDディスプレイのコントラスト特性を改善することができる位置であれば任意である。その各種変形例(変形例1〜3)を、
図12A〜12Cに示す。
図12A〜12Cは、それぞれ変形例1〜3のLEDディスプレイの概略構成断面図である。なお、
図12A〜12Cのそれぞれに示す各変形例のLEDディスプレイにおいて、
図8に示す上記第2の実施形態のLEDディスプレイ40と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
【0066】
変形例1のLEDディスプレイ51では、
図12Aに示すように、ブラック樹脂層43が配線42上で且つ発光素子1の配置領域と重ならない位置に設けられる。
【0067】
また、変形例2のLEDディスプレイ52では、
図12Bに示すように、ブラック樹脂層43がスクリーン44の光出射面上に設けられる。なお、この例においても、上記第2の実施形態と同様に、発光素子1の光出射面1aの上部に形成されるコーン状(錘体状)の光抽出領域40aと重ならない領域に、ブラック樹脂層43が形成される。
【0068】
さらに、変形例3のLEDディスプレイ53では、
図12Cに示すように、2つのブラック樹脂層(第1ブラック樹脂層54及び第2ブラック樹脂層55)が設けられる。そして、変形例3では、第1ブラック樹脂層54が、上記第2の実施形態と同様に、樹脂部材20の光出射面に埋め込むようにして設けられ、第2ブラック樹脂層55が、上記変形例1と同様に、配線42上に設けられる。
【0069】
上記変形例1〜3のLEDディスプレイにおいても、ブラック樹脂層43を設けない場合に比べて、スクリーン44及び/又は配線42での外光の反射の影響を低減することができ、LEDディスプレイのコントラスト特性を改善することができる。
【0070】
さらに、上記第2の実施形態では、ブラック樹脂層43及びスクリーン44を備えるLEDディスプレイ40について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、ブラック樹脂層43及びスクリーン44を設けずに樹脂部材20がスクリーンを兼ねる構成にしてもよい。
【0071】
なお、本発明のディスプレイ装置(LEDディスプレイ)では、比較例1に対して、光取り出し効率を向上させることで、樹脂部材20の平面内に導波する光の成分を減少させることができる。これにより、本発明では、次のような効果も得られる。
【0072】
樹脂部材20内に導波した光は、最終的には、樹脂部材20や周辺部材に吸収されるが、この場合、LED10から射出される強力な光によって樹脂部材20や周辺部材が劣化する可能性がある。具体的には、例えばエポキシ、アクリル、シリコーン等のLEDディスプレイで一般に用いられる封止樹脂は、例えば光の吸収による着色や収縮、又は、ガス発生などの劣化の問題を有する。
【0073】
しかしながら、本発明のLEDディスプレイでは、上述のように、樹脂部材20内を導波する光の成分を減少させることができるので、このような問題を軽減することができ、LEDディスプレイの寿命を向上させることができる。また、上記第2の実施形態のように、ブラック樹脂層43を設けた場合には、樹脂部材20内を導波する光の成分をさらに低減することができる。それゆえ、本発明では、LED10(発光素子1)を封止する領域に光可塑性樹脂や光硬化性樹脂などの光によって変質しやすい樹脂を用いることができる。すなわち、樹脂部材20を光可塑性樹脂や光硬化性樹脂などの樹脂を用いて形成することができる。
【0074】
また、本発明のディスプレイ装置では、LED10(発光素子1)と隣接してLED駆動用のTFT(Thin Film Transistor)やIC(Integrated Circuit)チップなどの回路(発光素子駆動回路)を配置することもできる。
【0075】
樹脂部材20で封止される領域内にこのようなTFTやICチップを設けた場合、LED10から射出される光によって励起されるキャリアが、TFTやICチップを誤動作させる可能性がある。しかしながら、本発明のLEDディスプレイでは、上述のように、樹脂部材20内を導波する光の成分を減少させることができ、ブラック樹脂層43を設けても光取り出し効率が低下しない。それゆえ、本発明のディスプレイ装置において、LED10(発光素子1)と隣接してLED駆動用のTFTやICチップを配置しても、輝度とコントラスト比を低下させずに、安定した駆動が可能となる。
【0076】
また、上記第1及び第2の実施形態では、光源としてLEDを用いる例を説明したが、本開示は、これに限定されない。光源として、例えば有機EL(Electroluminescence)、無機EL等の自発光方式の光源を用いてもよい。また、光源として、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)ディスプレイの各画素を構成する光透過部等のように、微小開口部を通過する光を利用する疑似光源を用いてもよい。
【0077】
なお、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
(1)
発光素子本体部と、
前記発光素子本体部の光出射面上に設けられ、第1の屈折率を有する低屈折率層部と、
前記発光素子本体部及び前記低屈折率層部を内部に封止するように設けられ、光出射面が平坦面であり、かつ、前記第1の屈折率より大きい第2の屈折率を有するパッケージ部材と
を備えるディスプレイ装置。
(2)
さらに、前記発光素子本体部から前記低屈折率層部を介して射出される光の抽出領域と重ならない領域に設けられた遮光層を備える
(1)に記載のディスプレイ装置。
(3)
前記遮光層が、前記発光素子本体部の光出射面側の所定位置に設けられている
(2)に記載のディスプレイ装置。
(4)
前記遮光層が、ブラック樹脂で形成されている
(2)又は(3)に記載のディスプレイ装置。
(5)
さらに、前記パッケージ部材上に設けられたスクリーンを備え、
前記パッケージ部材が、前記スクリーンと屈折率マッチングした部材で構成されている
(1)〜(4)のいずれか一項に記載のディスプレイ装置。
(6)
前記パッケージ部材が、光可塑性樹脂又は光硬化性樹脂で形成された樹脂部材を含む
(1)〜(5)のいずれか一項に記載のディスプレイ装置。
(7)
さらに、前記パッケージ部材内に設けられ、前記発光素子本体を駆動する発光素子駆動回路を備える
(1)〜(6)のいずれか一項に記載のディスプレイ装置。
(8)
発光素子本体部と、
光出射面が平坦面でありかつ前記発光素子本体部を内部に封止するパッケージ部材の屈折率よりも小さい屈折率を有し、前記発光素子本体部の光出射面上に設けられた低屈折率層部と
を備える発光素子。