(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
レーダ装置において、STCの調整によってクラッタとともに物標のエコー像が消えてしまっては、重要な物標をレーダ映像で確認できないおそれがある。このため、STCを調整する際には、クラッタのみを消して、必要な物標のエコー像を適切に残すような調整が要求される。
【0011】
しかし、特許文献4の構成では、STC処理によってクラッタのみが消えている(物標のエコー像は適切に残っている)ことを確認する手段がない。このため、STCの調整が適切に行われているか否かを即座に評価できない。
【0012】
結局、特許文献4のようにCRTに表示されたレーダ映像を見ながらSTCの調整ができる構成であっても、クラッタのみを消して物標のエコー像を残すようにレーダ映像を表示させるためには、STCの調整に試行錯誤が必要となる。このように、特許文献4の構成では、STCの調整を容易に行うことができるとは言い難い。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、STCの調整を容易に行うことができるレーダ装置を提供することにある。
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の観点によれば、以下の構成のレーダ受信装置が提供される。即ち、このレーダ受信装置は、受信信号取得部と、信号処理部と、PPIスコープ生成部と、Aスコープ生成部と、表示出力部と、
操作部と、を備える。前記受信信号取得部は、所定周期で回転するアンテナが受信した受信信号をRθ座標系で取得する。前記信号処理部は、前記Rθ座標系の受信信号に対して距離に応じた信号処理を行い、Rθ座標系の処理済信号を出力する
とともに、前記受信信号の信号レベルに対して、距離に応じて設定された閾値を適用することにより前記信号処理を行う。前記PPIスコープ生成部は、前記Rθ座標系の処理済信号をXY直交座標系に変換してPPIスコープ形式のレーダ映像を生成する。前記Aスコープ生成部は、前記信号処理部によって信号処理される前の前記受信信号をAスコープ形式で示す
受信信号に、前記閾値と距離の関係を示す閾値カーブを重畳させたレーダ映像を生成する。
前記操作部は、前記閾値カーブを表示装置に表示させた状態で、当該閾値カーブの上下位置、傾き、及び曲率を調整又は変更する操作を行うことが可能である。前記表示出力部は、前記PPIスコープ形式のレーダ映像と、前記Aスコープ形式のレーダ映像と、を
前記表示装置に同時に表示させる。
前記Aスコープ生成部は、前記操作部による前記調整又は変更を反映させた前記閾値カーブを含む前記レーダ映像を生成する。
【0016】
このように、信号処理されていない受信信号に基づくAスコープと、信号処理済の受信信号に基づくPPIスコープと、を同時に表示することにより、信号処理の前と後を見比べることができる。これにより、信号処理が適切に行われたか否かを容易に判断できる。
また、信号処理部で信号処理に用いられる閾値と、信号処理の対象となる受信信号の信号レベルと、の関係を容易に把握できる。従って、信号処理部の信号処理に用いられる閾値が適切に設定されているか否かを、容易に判断できる。また、このように、Aスコープに閾値カーブを重畳表示した状態で、当該閾値カーブを調整(又は変更)できるので、閾値カーブの調整(又は変更)を容易かつ的確に行うことができる。そして、閾値カーブを調整(又は変更)した結果が表示装置に反映されるので、当該調整(又は変更)の効果を即座に確認することができる。
【0021】
上記のレーダ受信装置は、以下のように構成することができる。即ち、前記Aスコープ生成部は、前記Aスコープ形式で示す受信信号に、複数の閾値カーブを重畳させて前記レーダ映像を生成する。前記操作部は、前記複数の閾値カーブのうち何れか1つを選択する操作が可能に構成されている。そして、前記信号処理部は、前記操作部によって選択された閾値カーブを用いて前記信号処理を行う。
【0022】
このように、閾値カーブの選択肢を複数用意しておけば、何れかのカーブを選択することで閾値カーブを設定できるので、閾値カーブの設定が簡単になる。そして、選択可能な複数の閾値カーブをAスコープに重畳させて表示することにより、どの閾値カーブを選択すれば良いかを直感的に把握できる。
【0023】
上記のレーダ受信装置において、前記Aスコープ生成部は、現在選択中の閾値カーブと、それ以外の閾値カーブで、表示態様を異ならせることが好ましい。
【0024】
これによれば、複数の閾値カーブの中から最適な閾値カーブを選択することが容易になる。
【0025】
上記のレーダ受信装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このレーダ受信装置は、前記信号処理部によって信号処理される前の前記受信信号の信号レベルが前記閾値を超えているか否かを判定する閾値判定部を備える。前記Aスコープ生成部は、前記閾値判定部の判定結果に基づいて、信号レベルが前記閾値を超えた受信信号と、超えていない受信信号で、表示態様を異ならせて前記レーダ映像を生成する。
【0026】
これによれば、受信信号の信号レベルが閾値を超えている部分を把握し易くなるので、閾値カーブの調整をより直感的に行うことができる。
【0027】
上記のレーダ受信装置においては、前記Aスコープ形式で示される受信信号のうち信号レベルが前記閾値を超えた受信信号と、前記PPIスコープ形式のレーダ映像に含まれるエコー像と、で対応するもの同士の表示態様を一致させることが好ましい。
【0028】
これによれば、PPIスコープに表示されたエコー像と、Aスコープに表示された受信信号との対応関係がわかり易くなり、閾値カーブの調整が一層容易になる。
【0029】
上記のレーダ受信装置において、前記Aスコープ生成部は、所定のAスコープ表示方向についての受信信号をAスコープ形式で示すレーダ映像を生成することが好ましい。
【0030】
これにより、特定の方向の受信信号をAスコープで表示できるので、AスコープとPPIスコープを見比べることが容易になる。
【0031】
上記のレーダ受信装置においては、前記表示装置に表示された前記PPIスコープ形式のレーダ映像上で、前記Aスコープ表示方向を指定可能であることが好ましい。
【0032】
これによれば、どの方向の受信データをAスコープに表示するかを直感的に指定できるとともに、AスコープとPPIスコープとの関係を容易に把握できるので、閾値カーブの調整をより一層容易に行うことができる。
【0033】
本発明の別の観点によれば、上記のレーダ受信装置と、前記アンテナと、前記アンテナに対して送信信号を印加する送信部と、を備えたレーダ装置が提供される。
【0034】
本発明の更に別の観点によれば、以下のレーダ受信信号表示方法が提供される。即ち、このレーダ受信信号表示方法は、受信信号取得工程と、信号処理工程と、PPIスコープ生成工程と、Aスコープ生成工程と、表示出力工程と、を含む。前記受信信号取得工程では、所定周期で回転するアンテナが受信した受信信号をRθ座標系で取得する。前記信号処理工程では、前記Rθ座標系の受信信号に対して距離に応じた信号処理を行い、Rθ座標系の処理済信号を出力する
とともに、前記受信信号の信号レベルに対して、距離に応じて設定された閾値を適用することにより前記信号処理を行う。前記PPIスコープ生成工程では、前記Rθ座標系の処理済信号をXY直交座標系に変換してPPIスコープ形式のレーダ映像を生成する。前記Aスコープ生成工程では、前記信号処理工程によって信号処理される前の前記受信信号をAスコープ形式で示す
受信信号に、前記閾値と距離の関係を示す閾値カーブを重畳させたレーダ映像を生成する。前記表示出力工程では、前記PPIスコープ形式のレーダ映像と、前記Aスコープ形式のレーダ映像と、を表示装置に同時に表示させる。
前記閾値カーブを前記表示装置に表示させた状態で、当該閾値カーブの上下位置、傾き、及び曲率を調整又は変更する操作を受け付けた場合、当該操作による前記調整又は変更を反映させた前記閾値カーブを含む前記レーダ映像を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態に係るレーダ装置1は、船舶に搭載される舶用のパルスレーダ装置である。レーダ装置1は、アンテナ2と、送信部3と、受信部(レーダ受信装置)4と、を主に備えている。
【0038】
アンテナ2は、サーキュレータ5を介して、送信部3及び受信部4に接続されている。アンテナ2は、所定の回転周期で水平面内を360度回転駆動する周知の構成である。
【0039】
送信部3は、発振器(例えばマグネトロン)を備えており、パルス状に変調された高周波信号を、所定の周期でアンテナ2に印加するように構成されている。これにより、パルス状に変調された高周波信号が、回転するアンテナ2から所定の周期で送信される。以下の説明では、アンテナ2から送信される信号を送信信号と呼ぶ。
【0040】
また、アンテナ2は、送信信号を送信した後、次の送信信号を送信するまでの間、周囲からの高周波信号を受信する。アンテナ2が受信する信号を、以下の説明では受信信号と呼ぶ。なお、アンテナ2に受信された受信信号には、前記送信信号が物標で反射して返ってきた「反射信号」と、ノイズやクラッタなどの「不要信号」と、が含まれている。受信信号は、受信部4に入力される。
【0041】
本実施形態の受信部(レーダ受信装置)4は、前処理部(受信信号取得部)6と、A/D変換部7と、スイープメモリ8と、信号処理部9と、PPIスコープ生成部10と、Aスコープ生成部11と、操作部12と、表示出力部13と、表示装置16を備えている。
【0042】
アンテナ2で受信された受信信号は、前処理部6に入力される。周知のように、パルスレーダ装置のアンテナ2で受信された信号に基づいて、当該アンテナ2が向いている方向に存在している物標までの距離Rを取得できる。そこで、アンテナ2が向いている方向をθとすれば、前処理部6が取得する受信信号は、Rθ座標系の受信信号である。前処理部6は、取得したRθ座標系の受信信号に対して、増幅、フィルタリング、ダウンコンバート等の処理を施したのち、A/D変換部7へ出力する。
【0043】
A/D変換部7は、前処理部6から入力されたRθ座標系の受信信号を、所定のサンプリング周期でサンプリングしてデジタルのデータに変換し、順次スイープメモリ8に出力する。これにより、Rθ座標系の受信信号の信号レベルを示すデータの時系列が得られる。このようにして得られたデータの時系列を、受信データと呼ぶ。なお、本明細書では、アナログの受信信号と、デジタルの受信データを特に区別せずに、単に「受信信号」と呼ぶことがある。
【0044】
スイープメモリ8は、1スイープ分の受信データを記憶可能なメモリ領域である。なお、「1スイープ分の受信データ」とは、アンテナ2から送信信号を送信した後、次の送信信号を送信するまでの間に取得された受信データをいう。スイープメモリ8はバッファメモリとして機能しており、新しい受信データが入力されると、古い受信データが順次書き換えられていく。スイープメモリ8に記憶されている受信データを、特にスイープデータと言うことがある。
【0045】
信号処理部9は、スイープメモリ8に記憶されているRθ座標系の受信データ(スイープデータ)を順次読み出して、当該受信データに対して、距離に応じた信号処理を行い、処理済データ(処理済信号)を出力する。
【0046】
「距離に応じた信号処理」としては様々な処理が考えられるが、本実施形態の信号処理部9は、一般的なSTC(Sensitivity Time Control)処理を行う。以下、本実施形態のSTC処理について、
図2を参照して簡単に説明する。
【0047】
図2(a)に示すのは、スイープメモリ8に記憶されている1スイープ分の受信データ(スイープデータ)を模式的に示したグラフである。
図2の横軸は、送信信号を送信してからA/D変換部7においてデータが取得されるまでにかかった時間を示しており、信号を反射した物標までの距離Rに対応している。
図2の縦軸は、各データの信号レベルを示している。
【0048】
アンテナ2が信号の送受信を行った際、当該アンテナ2が向く方向θに物標が存在していると、当該物標からの反射信号がアンテナ2で受信される。このようにして受信された物標からの反射信号(物標エコー)は、
図2(a)に示すように、信号レベルのピークとして受信データに現われる。
【0049】
図2(a)に示すように、近距離の受信データは信号レベルが高く、遠距離の受信データは信号レベルが低くなっている。そこで、受信データの信号レベルが距離にかかわらず同じ程度になるように調整を行うのがSTC処理である。
【0050】
具体的には、信号処理部9は、
図2(b)に示すようなSTCカーブを設定するSTCカーブ設定部14を備えている。このSTCカーブは、STCの処理のための閾値と、距離Rと、の関係を設定するカーブ(閾値カーブ)である。
【0051】
このSTCカーブは、原理的には、任意の直線又は曲線とすることができる。ただし、例えばSTCカーブが複雑な曲線からなっていると、当該STCカーブの設定が煩雑になるうえ、そのような複雑なSTCカーブはSTCの処理にとって不適切な場合がある。本実施形態では、設定の簡便さ等を考慮し、STCカーブを、いくつかのパラメータで表現できる単一の曲線としている。STCカーブのパラメータは、STCカーブ設定部14に記憶されている。STCカーブ設定部14は、記憶されているパラメータに基づいてSTCカーブを生成し、距離に応じた閾値を出力するように構成されている。
【0052】
図2(b)に示すように、STCカーブは、近距離ほど閾値の値が大きく、遠距離ほど閾値の値が小さくなるように設定されている。信号処理部9は、スイープメモリ8からRθ座標系の受信データを読み出すと、当該受信データの距離Rに対応する閾値をSTCカーブ設定部14から取得する。そして、信号処理部9は、Rθ座標系の受信データの信号レベルと閾値とを比較して、受信データの信号レベルが閾値を超えている場合のみ、当該受信データの信号レベルから閾値を差し引いて、Rθ座標系の処理済データとして出力する。つまり、受信データのうち、STCカーブよりも上の部分のみが処理済データとして信号処理部9から出力される。信号処理部9から出力される処理済データの例を、
図2(c)に示す。
【0053】
STCカーブが適切に設定されていれば、距離による信号レベルの大小をSTC処理によって補正できるので、
図2(c)に示すように、近距離の物標からの反射信号と、遠距離の物標からの反射信号を、ともに同じ程度の信号レベルに揃えることができる。また、STCカーブをノイズやクラッタのレベルよりも上に設定することで、ノイズやクラッタなどの不要信号を除去し、物標からの反射信号のみを残した処理済データを得ることができる。
【0054】
信号処理部9が出力するRθ座標系の処理済データは、PPIスコープ生成部(画像生成部)10に入力される。PPIスコープ生成部10は、入力された処理済データのRθ座標系をXY直交座標系に座標変換することにより、PPIスコープ形式のレーダ映像を生成する。なお、Rθ座標系のデータをXY直交座標系に座標変換してPPIスコープ形式のレーダ映像を生成する構成は公知であるため、説明は省略する。
【0055】
PPIスコープ生成部10が生成したPPIスコープ形式のレーダ映像は、表示出力部13に出力される。表示出力部13は、入力されたレーダ映像を、表示装置16に表示させる。表示装置16は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置であり、ラスタ形式のカラー画像を表示可能に構成されている。
【0056】
図3に、表示装置16の画面表示例を示す。
図3に示すように、表示装置16の表示画面には、PPIスコープ生成部10が生成したPPIスコープ形式のレーダ映像を表示するPPIスコープ表示領域20が含まれている。レーダ装置1のユーザは、PPIスコープ表示領域20に表示されたPPIスコープ形式のレーダ映像を確認することで、周囲の物標の様子を知ることができる。
【0057】
なお、PPIスコープ表示領域20に表示されるPPIスコープ形式のレーダ映像は、STC処理が施された後のデータに基づいて生成されている。従って、STCカーブを適切に設定することにより、PPIスコープ表示領域20のレーダ映像を見易く表示させることができる。
【0058】
レーダ装置1は、STCカーブ設定部14に記憶されている各種パラメータを調整するための操作部12を備えている。この操作部12は、例えばダイヤル、ボタン、キーボードなど、物理的に操作可能な構成であっても良いし、例えばタッチパネル式のディスプレイに表示されたメニューなどであっても良い。ユーザは、操作部12を操作して前記パラメータを適宜調整することにより、
図2(b)のSTCカーブの上下位置、傾き、曲率などを変更できる。
【0059】
ユーザが操作部12を操作してSTCカーブのパラメータを変更した場合、変更後のパラメータは即座にSTCカーブ設定部14に反映され、以後、信号処理部9は、変更後のSTCカーブに基づいてSTC処理を行う。従って、ユーザがSTCカーブのパラメータを変更した場合は、それ以降、PPIスコープ表示領域20に表示されているレーダ映像は、変更後のSTCカーブに基づくレーダ映像で更新される。このように、ユーザによるSTCカーブの調整がPPIスコープ表示領域20に反映されるので、ユーザは、PPIスコープ表示領域20を見ながらSTCカーブを調整できる。
【0060】
続いて、本実施形態の特徴的な構成について説明する。
【0061】
図3に示すように、本実施形態の表示装置16の表示画面には、PPIスコープ表示領域20と同時に、Aスコープ表示領域21を並べて表示するように構成されている。Aスコープ表示領域21には、受信データをAスコープ形式で示したレーダ映像が表示される。これにより、ユーザは、AスコープとPPIスコープを見比べることができる。
【0062】
以下、具体的に説明する。本実施形態のレーダ装置1の受信部4は、Aスコープ生成部11を備えている。Aスコープ生成部11は、スイープメモリ8に記憶されている受信データ(スイープデータ)を読み出し、当該受信データの信号レベルと、アンテナ2からの距離Rと、の関係を示すAスコープ形式のレーダ映像を生成する。Aスコープ生成部11が生成したAスコープ形式のレーダ映像は、表示出力部13に出力される。
【0063】
表示出力部13は、PPIスコープ生成部10から入力されたPPIスコープ形式のレーダ映像と、Aスコープ生成部11から入力されたAスコープ形式のレーダ映像を、ともに表示装置16に出力する。表示装置16は、PPIスコープ形式のレーダ映像はPPIスコープ表示領域20に、Aスコープ形式のレーダ映像はAスコープ表示領域21に、それぞれ表示する。前述のように、PPIスコープ表示領域20と、Aスコープ表示領域21は、同時に並べて表示される。
【0064】
以上の構成により、PPIスコープ形式のレーダ映像と、Aスコープ形式のレーダ映像を、同時に並べて表示装置16に表示させることができる。
【0065】
スイープメモリ8は、信号処理部9の前段に配置されているので、当該スイープメモリ8に記憶されている受信データ(スイープデータ)は、信号処理部9によってSTC処理される前の受信データである。従って、Aスコープ生成部11が生成するレーダ映像は、信号処理部9によってSTC処理される前の受信データをAスコープ形式で示すものである。
【0066】
このようにして、信号処理部9による信号処理が行われる前の受信データ(スイープデータ)を、Aスコープ形式のレーダ映像としてAスコープ表示領域21に表示できる。一方、前述のように、PPIスコープ表示領域20に表示されるPPIスコープ形式のレーダ映像は、信号処理部9による信号処理が施された後の処理済データに基づいて生成されている。
【0067】
従って、ユーザは、表示装置16の画面表示を見ることにより、信号処理部9によるSTC処理前の受信データ(Aスコープ)と、当該STC処理後の受信データ(PPIスコープ)と、を見比べることができる。
【0068】
前述のように、本実施形態のレーダ装置1においては、ユーザは、操作部12を操作することによってSTCカーブの調整を行うことができる。操作部12の操作は、PPIスコープ表示領域20及びAスコープ表示領域21を表示装置16の表示画面に表示させた状態で行うことができるように構成されている。従って、ユーザは、PPIスコープ及びAスコープを見比べながら、STCカーブの調整を行うことができる。
【0069】
これに対し、従来のレーダ装置(例えば特許文献4)でのSTCカーブの調整は、もっぱらSTC処理後のPPIスコープを見ながら行っており、STC処理前の受信データ(スイープデータ)を見ながら行うということはされていなかった。しかし、STC処理の対象となるのはあくまでスイープデータであるため、当該スイープデータを見ることができなければ、STCカーブを直接的に調整することはできない。
【0070】
本実施形態のレーダ装置1では、STC処理の「処理対象」であるスイープデータ(Aスコープ)と、STC処理の「処理結果」である処理済データ(PPIスコープ)を見比べることが可能となっている。これにより、STCカーブが適切に設定されているか否かを容易に判断できるので、従来に比べて、STCカーブをより直接的に調整することが可能となっている。
【0071】
なお、本実施形態のAスコープ生成部11は、最新の1スイープ分の受信データを全て表示するように、Aスコープ形式のレーダ映像を生成する。言いかえると、本実施形態のAスコープ表示領域21には、距離方向のレンジ全域の受信データがAスコープ形式で表示される。これにより、ユーザは、Aスコープ表示領域21を見ることにより、1スイープ分の受信データを一度に確認できるので、STCカーブの調整をより効率的に行うことができる。
【0072】
ところで、レーダ装置において、Aスコープ形式のレーダ映像といった場合、アンテナで受信した信号をリアルタイムで表示するものであることが多い。ところが、本実施形態のようにアンテナ2が所定周期で回転するレーダ装置1の場合、仮にアンテナ2で受信した信号をそのままリアルタイムにAスコープ形式で表示すると、当該Aスコープ形式で表示される方向θが刻々と変化してしまう。このため、AスコープとPPIスコープを見比べることが難しくなる。
【0073】
そこで、本実施形態のレーダ装置1では、取得した受信データをそのままリアルタイムにAスコープ形式で表示するのではなく、特定の方向θについての受信データのみを取り出してAスコープ形式で表示するように構成している。以下では、Aスコープ形式で表示する方向θを、Aスコープ表示方向と呼ぶ。
【0074】
本実施形態のレーダ装置1では、PPIスコープ表示領域20に表示されたレーダ映像上に、方位指示線22(EBL:Electronic Bearning Line)を表示するように構成されている。この方位指示線22は、PPIスコープ形式のレーダ映像上で、中心座標(アンテナ2の位置)を起点としてAスコープ表示方向を指し示すように表示された直線である。この方位指示線22により、PPIスコープ上でAスコープ表示方向を指定できる。
【0075】
方位指示線22が指定する方向(Aスコープ表示方向)は、ユーザが操作部12を適宜操作することにより変更できるように構成されている。これにより、ユーザは、PPIスコープ表示領域20に表示された方位指示線22を見ながら、所望のAスコープ表示方向を直感的に指定することができる。
【0076】
Aスコープ生成部11は、方位指示線22によって指定されたAスコープ表示方向にアンテナ2が向いたときに、スイープメモリ8に記憶されている最新の1スイープ分の受信データ(スイープデータ)を読み出して取得する。そして、Aスコープ生成部11は、取得した受信データをAスコープ形式で示すレーダ映像を生成する。
【0077】
以上により、ユーザが指定したAスコープ表示方向についての受信データが、Aスコープ形式でAスコープ表示領域21に表示される。このように、特定の方向の受信データをAスコープ形式で表示することにより、ユーザは、AスコープとPPIスコープを見比べて、STC処理の妥当性を判断できる。
【0078】
例えば
図3の場合、Aスコープ表示領域21に表示された受信データ(スイープデータ)には3つのピークがあることが分かる。これにより、Aスコープ表示方向に3つの物標が存在しており、当該3つの物標それぞれからの反射信号が受信されたことが分かる。ここで、
図3における3つの物標からの反射信号を、アンテナ2に近い側から順に、第1物標エコー31、第2物標エコー32、第3物標エコー33とする。
【0079】
一方、
図3のPPIスコープ表示領域20を見ると、Aスコープ表示方向を示す方位指示線22上には、3つのエコー像が存在している。従って、PPIスコープでの3つのエコー像は、中心座標(アンテナ2の位置)に近い側から順に、前述の第1物標エコー31、第2物標エコー32、第3物標エコー33にそれぞれ対応していると考えられる。この場合、3つの物標からの反射信号がSTC処理によって消えていないことが分かるので、STCカーブは適切に設定されていると評価できる。
【0080】
これに対し、例えば
図4の場合、Aスコープ表示領域21に表示された受信データには3つのピークがあるにもかかわらず、PPIスコープ表示領域20においては、Aスコープ表示方向を示す方位指示線22上には2つのエコー像しか存在しない。より具体的には、
図4のPPIスコープ表示領域20に表示された方位指示線22上には、第1物標エコー31と第2物標エコー32に対応するエコー像は表示されているものの、第3物標エコー33に対応したエコー像が表示されていない。この場合、第3物標エコー33がSTC処理によって消えてしまっていることが分かるので、STCカーブが適切に設定されていないと評価できる。
【0081】
また例えば
図5の場合、Aスコープ表示領域21に表示された受信データには3つのピークがあるにもかかわらず、PPIスコープ表示領域20においては、Aスコープ表示方向を示す方位指示線22上に3つ以上の多数のエコー像が表示されている。この場合、ノイズやクラッタ等の不要信号がSTC処理によって適切に除去できていないことが分かるので、STCカーブが適切に設定されていないと評価できる。
【0082】
以上で説明したように、本実施形態のレーダ装置1が備える受信部4は、前処理部6と、信号処理部9と、PPIスコープ生成部10と、Aスコープ生成部11と、表示出力部13と、を備えている。前処理部6は、所定周期で回転するアンテナ2が受信した受信信号をRθ座標系で取得する。信号処理部9は、Rθ座標系の受信信号に対して距離に応じた信号処理を行い、Rθ座標系の処理済信号を出力する。PPIスコープ生成部10は、Rθ座標系の処理済信号をXY直交座標系に変換してPPIスコープ形式のレーダ映像を生成する。Aスコープ生成部11は、信号処理部9によって信号処理される前の受信信号をAスコープ形式で示すレーダ映像を生成する。表示出力部13は、PPIスコープ形式のレーダ映像と、Aスコープ形式のレーダ映像と、を表示装置16に同時に表示させる。
【0083】
従って、本実施形態のレーダ装置1の受信部4によるレーダ受信信号表示方法は、以下のようにして行う。即ち、このレーダ受信信号表示方法は、受信信号取得工程と、信号処理工程と、PPIスコープ生成工程と、Aスコープ生成工程と、表示出力工程と、を含む。受信信号取得工程では、前処理部6が、所定周期で回転するアンテナ2が受信した受信信号をRθ座標系で取得する。前記信号処理工程では、信号処理部9が、Rθ座標系の受信信号に対して距離に応じた信号処理を行い、Rθ座標系の処理済信号を出力する。PPIスコープ生成工程では、PPIスコープ生成部10が、Rθ座標系の処理済信号をXY直交座標系に変換してPPIスコープ形式のレーダ映像を生成する。Aスコープ生成工程では、Aスコープ生成部11が、信号処理工程によって信号処理される前の受信信号をAスコープ形式で示すレーダ映像を生成する。表示出力工程では、表示出力部13が、前記PPIスコープ形式のレーダ映像と、前記Aスコープ形式のレーダ映像と、を表示装置16に同時に表示させる。
【0084】
このように、STC処理されていない受信信号に基づくAスコープと、STC処理済の受信信号に基づくPPIスコープと、を同時に表示することにより、STC処理の前と後を見比べることができる。これにより、STC処理が適切に行われたか否かを容易に判断できる。
【0085】
続いて、本実施形態のレーダ装置1の更なる特徴について説明する。
【0086】
本実施形態のレーダ装置1では、
図3、
図4、
図5に示すように、Aスコープ形式で表示された受信データに、STCカーブ23を重畳して表示するように構成している。
【0087】
具体的には、以下のとおりである。Aスコープ生成部11には、STCカーブ設定部14から、STCカーブに関する情報が入力されている。Aスコープ生成部11は、STCカーブ設定部14から入力された情報に基づいて、STCカーブ23を画像として生成する。そして、Aスコープ生成部11は、生成したSTCカーブ23の画像を、Aスコープ形式で示す受信データに重畳させたレーダ映像を生成する。なお、Aスコープ生成部11は、Aスコープ形式で示された受信データと、STCカーブ23の画像と、を重畳させる際に、STCカーブ23の縦軸と横軸を、Aスコープ形式で示される受信データの縦軸と横軸に一致させる。そして、このようにしてAスコープ生成部11によって生成されたレーダ映像が、表示装置16のAスコープ表示領域21に表示される。
【0088】
以上の構成によれば、ユーザは、Aスコープ表示領域21を見ることにより、STCカーブ23を視覚的に確認でき、しかも、当該STCカーブ23と受信データとの関係を把握できる。これにより、ユーザは、受信データに対してSTCカーブが適切に設定されているかどうかを把握できる。
【0089】
例えば
図4のAスコープ表示領域21を見れば、ユーザは、3つの物標エコー31,32,33のうち、第3物標エコー33に対してSTCカーブ23が高すぎることを容易に把握できる。
【0090】
また例えば
図5のAスコープ表示領域21を見れば、ユーザは、受信データの不要信号(ノイズやクラッタ)のレベルに対してSTCカーブ23が低すぎることを容易に把握できる。
【0091】
以上のように、本実施形態の構成によれば、ユーザは、Aスコープ表示領域21の表示を見ることで、STCカーブ23をどのように調整すれば良いかを容易に判断できる。従って、ユーザは、Aスコープ表示領域21の表示を見ながら操作部12を操作することにより、STCカーブ23のパラメータを簡単に調整できる。
【0092】
本実施形態のAスコープ生成部11は、ユーザが操作部12を操作してSTCカーブ23のパラメータを変更した場合、前記変更を反映させたレーダ映像を生成するように構成されている。これにより、ユーザが操作部12を操作してSTCカーブ23のパラメータを変更したときには、当該変更が即座にAスコープ表示領域21に反映される。つまり、ユーザが操作部12を操作して前記パラメータを変更すると、これに応じて、Aスコープ表示領域21に表示されているSTCカーブ23の上下位置、傾き、曲率などが即座に変化する。
【0093】
従って、ユーザは、STCカーブ23のパラメータを調整して、その結果STCカーブ23の上下位置、傾き、曲率などがどのように変化するかを、Aスコープ表示領域21でリアルタイムに確認できる。これにより、STCカーブ23が所望の特性を有するようにパラメータを調整することが容易になる。
【0094】
また、本実施形態のAスコープ表示領域21では、
図3から
図5に示すように、STCカーブ23よりも上の受信データ(信号レベルが閾値を超えている受信データ)と、STCカーブ23よりも下の受信データ(信号レベルが閾値を超えていいない受信データ)で、表示態様を異ならせている。例えば、
図3から
図5では、STCカーブ23よりも上の受信データのみを特定の色で塗り潰した例を示している。これによれば、ユーザは、Aスコープ表示領域21の表示を見ることで、受信データの信号レベルがSTC処理の閾値を超えている部分を容易に把握できる。
【0095】
このような表示を実現するために、本実施形態のAスコープ生成部11は、閾値判定部17を備えている。閾値判定部17は、受信データの信号レベルが、STCカーブによって設定されている閾値を超えているか否かを判定すように構成されている。Aスコープ生成部11は、閾値判定部17の判定結果に基づいて、信号レベルが閾値を超えた受信データと、超えていない受信データで、表示態様を異ならせてレーダ映像を生成する。
【0096】
続いて、上記第1実施形態の変形例について、
図6を参照して説明する。
【0097】
上記第1実施形態のAスコープ生成部11は、STCカーブ23よりも上の部分と下の部分で受信データの表示態様を異ならせてレーダ映像を生成する構成とした。本変形例では、これを発展させて、STCカーブ23よりも上の部分(受信データの信号レベルが閾値を超えた部分)において、異なる物標からの反射信号を示す受信データは、互いに表示態様を異ならせて表示するように構成している。
【0098】
異なる物標からの反射信号か否かは、STCカーブ23よりも上の部分において、信号レベルのピーク同士が分離しているか否かによって判断できる。例えば
図6の場合、STCカーブ23よりも上の部分において、第1物標エコー31、第2物標エコー32、及び第3物標エコー33のピークはそれぞれ分離している(互いに繋がっていない)ので、これらはそれぞれ異なる物標からの反射信号を示していると見なせる。
【0099】
このような場合、本変形例におけるAスコープ生成部11は、物標エコー31,32,33のSTCカーブ23よりも上の部分の表示態様を互いに異ならせてレーダ映像を生成する。例えば、本変形例のAスコープ生成部11は、STCカーブ23よりも上の部分で、物標エコー31,32,33に対応するピークを、互いに異なる色で塗り潰したレーダ映像を生成する。なお、
図6では、物標エコー31,32,33のピークに対してそれぞれ異なるパターンのハッチングを施すことにより、色の違いを表現している。
【0100】
STCカーブ23よりも上の部分でピークの色分けをする効果について説明すると、以下のとおりである。
【0101】
例えば、2つ以上の物標からの反射信号を示すピークがSTCカーブ23よりも上の部分で繋がっていると、PPIスコープ形式のレーダ映像を生成したときに、上記2つ以上の物標のエコー像同士が繋がって表示される。この場合、2つ以上の物標のエコー像が、あたかも1つの物標エコーのように見えてしまう。従って、個々のピークを適切に分離できるようにSTCカーブ23を調整することが好ましい。
【0102】
この点、本変形例では上記のように、STCカーブ23よりも上の部分で独立している(繋がっていない)ピークは色分けする構成としたので、仮に隣接するピーク同士が同じ色で表示されていれば、当該隣接するピーク同士を適切に分離できていないことが容易に認識できる。これにより、個々のピークを適切に分離できるようにSTCカーブ23を調整することが容易になる。
【0103】
そして、本変形例では、Aスコープ形式で示される受信信号のうち信号レベルが閾値を超えた受信信号と、PPIスコープ形式のレーダ映像に含まれるエコー像と、で対応するもの同士の表示態様を一致させるように構成されている。
【0104】
例えば
図6に示すように、Aスコープ表示領域21においてSTCカーブ23よりも上の部分で独立した(繋っていない)3つのピーク31,32,33がある場合、本変形例のレーダ装置1では、当該ピーク31,32,33を塗り潰した色と、PPIスコープ表示領域20において方位指示線22上にある3つのエコー像31,32,33の表示色とを、対応するもの同士で一致させる。なお、
図6では、PPIスコープ表示領域20のエコー像に対して異なるパターンのハッチングを施すことにより、エコー像の表示色の違いを表現している。
【0105】
これによれば、Aスコープ表示領域21に表示された受信データのピークと、PPIスコープ表示領域20に表示されたエコー像と、の対応関係がわかり易くなり、STCカーブ23の調整が一層容易になる。
【0106】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と共通又は類似する構成については、図面に同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0107】
上記第1実施形態では、ユーザが操作部12を操作することによりSTCカーブ23のパラメータを調整する構成とした。しかし、状況が変化するたびにSTCカーブ23のパラメータの調整を行わなければならないとすると、ユーザにとって負担が大きい。
【0108】
そこで、この第2実施形態のレーダ装置は、STCカーブ設定部14に対して、パラメータの設定を互いに異ならせた複数のSTCカーブをプリセットしておくことができるようにしたものである。
【0109】
この第2実施形態のレーダ装置は、ユーザが操作部12を適宜操作することにより、プリセットされた複数のSTCカーブのうち1つを選択できるように構成されている。信号処理部9は、選択されたSTCカーブを用いて、STC処理を行う。
【0110】
このように、予め複数のSTCカーブをプリセットしておくことにより、ユーザは、複数のSTCカーブの中から適切なカーブを1つ選ぶだけで、STCカーブを設定できる。これによれば、STCカーブのパラメータを毎回調整する場合に比べて、STCカーブの設定を簡便に行うことができる。
【0111】
そして、この第2実施形態のレーダ装置において、Aスコープ生成部11は、プリセットされている複数のSTCカーブを、それぞれ、Aスコープ形式で示された受信データに重畳させてレーダ映像を生成するように構成されている。このようにして生成されたレーダ映像を表示装置16に表示した様子を、
図7に示す。
【0112】
例えば
図7のAスコープ表示領域21には、上から順に、第1STCカーブ23a、第2STCカーブ23b、第3STCカーブ23cが、Aスコープ形式で示された受信データに重畳して表示されている。このように、プリセットされている複数のSTCカーブを、それぞれAスコープ形式で示す受信データに重畳して表示することにより、ユーザは、どのSTCカーブを選択すれば良いかを直感的に把握できる。
【0113】
そして、第2実施形態のレーダ装置において、Aスコープ生成部11は、現在選択中のSTCカーブと、それ以外のSTCカーブで表示態様を異ならせている。例えば、
図7の例では、現在選択中のSTCカーブは太線で表示し、選択されていないSTCカーブは細線の二点鎖線で表示する、というように、選択中か否かによってSTCカーブの線種を異ならせている。なお、
図7の例では、第2STCカーブ23bが選択されている様子を示している。
【0114】
これにより、ユーザは、Aスコープ表示領域21を見ることにより、どのSTCカーブが選択中であるかを容易に把握できるので、プリセットされている複数のSTCカーブの中から最適なSTCカーブを選択することが容易になる。
【0115】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0116】
上記実施形態では、Aスコープ生成部11は、アンテナ2が所定の方向を向いたときに、受信データを取得してAスコープ形式のレーダ映像を生成する構成としている。アンテナ2は所定周期で水平面内を回転しているので、Aスコープ生成部11は、アンテナ2の回転周期で、Aスコープ形式のレーダ映像を生成する。従って、Aスコープ表示領域21に表示されるレーダ映像は、アンテナ2の回転周期で更新されることになる。しかしこれに限らず、例えばユーザによる明示の指示があるまではAスコープ表示領域21のレーダ映像を更新しない構成としても良い。
【0117】
Aスコープ生成部11は、全方位の受信データをメモリに蓄えておいても良い。この場合、Aスコープ生成部11は、ユーザによってAスコープ表示方向が指定されたときに、指定された方向の受信データを前記メモリから読み出してAスコープ形式のレーダ映像を生成できる。これによれば、アンテナ2の回転周期に依存することなく、指定された方向の受信データをAスコープ形式で瞬時に表示できる。
【0118】
上記実施形態では、指定された方向の受信データをAスコープ形式で表示する構成としているが、これに限らない。例えば、アンテナ2が受信した受信データをリアルタイムにAスコープ形式で表示する構成であっても良い。つまりこの場合、アンテナ2が現在向いている方向についての受信データが、Aスコープ表示領域21に表示される。
【0119】
Aスコープ形式で表示する受信データは、必ずしも特定方向の受信データに限らない。例えば、全ての方向について得られた受信データを距離ごとに平均化し、当該平均化した受信データをAスコープ形式で表示しても良い。このように平均化した受信データをAスコープ形式で表示することにより、受信データの全体的な傾向を把握できる。
【0120】
また、閾値カーブは、STCカーブに限られず、受信データ(スイープデータ)のゲイン制御を行うための閾値と、距離と、の関係を示すカーブであれば良い。例えば、受信信号の信号レベルの移動平均をとったカーブを閾値カーブとして表示しても良い。これにより、ユーザは、閾値カーブとして移動平均カーブを用いた場合の結果を確認することができる。
【0121】
上記実施形態では、1つの表示画面内にPPIスコープ表示領域20とAスコープ表示領域21とを並べて表示しているが、これに限らない。例えば、複数の表示装置を備えた(いわゆるマルチディスプレイの)レーダ装置にも、本発明の構成を適用できる。この場合、PPIスコープ表示領域20とAスコープ表示領域21を、それぞれ異なる表示装置に(異なる表示画面に)表示しても良い。この場合であっても、PPIスコープ表示領域20とAスコープ表示領域21を見比べることができるように、両者が並べて同時に表示されていれば本願発明の効果を得ることができる。
【0122】
説明に用いた図面では、PPIスコープ表示領域20とAスコープ表示領域21を左右に並べて表示した例を示しているが、これに限らず、上下に並べて表示しても良いし、斜めに並べて表示しても良い。また、例えばPPIスコープ表示領域20とAスコープ表示領域21の間が離れていたとしても、PPIスコープ表示領域20とAスコープ表示領域21を見比べることが妨げられない程度であれば問題ない。
【0123】
上記実施形態の信号処理部9は、受信信号をAD変換した後のデータに対して信号処理(STC処理)を行っているが、これに限らず、AD変換を行う前のアナログの受信信号に対して信号処理を行う構成であっても本発明を適用できる。このような変形例を、
図8に示す。この場合、A/D変換部7は、信号処理部9の後段に設けられ、信号処理部9から出力されるアナログの処理済信号をデジタルデータに変換して、スイープメモリ8に出力する。PPIスコープ生成部は、スイープメモリ8に記憶された信号処理済みのデータを読み出して、PPIスコープ形式のレーダ映像を生成する。また、この変形例では、信号処理部9で信号処理される前のアナログの受信信号をA/D変換するために、第2A/D変換部18を別途設けている。Aスコープ生成部11は、第2A/D変換部18が出力するデータ(信号処理部9によって信号処理される前の受信データ)に基づいて、Aスコープ形式のレーダ映像を生成する。なお、A/D変換部7と第2A/D変換部18を別々に設ける構成に変えて、1つのA/D変換部を時分割処理することにより、A/D変換部7と第2A/D変換部18の機能を実現しても良い。