特許第6061638号(P6061638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特許6061638-車両用灯具 図000003
  • 特許6061638-車両用灯具 図000004
  • 特許6061638-車両用灯具 図000005
  • 特許6061638-車両用灯具 図000006
  • 特許6061638-車両用灯具 図000007
  • 特許6061638-車両用灯具 図000008
  • 特許6061638-車両用灯具 図000009
  • 特許6061638-車両用灯具 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061638
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170106BHJP
   F21V 29/505 20150101ALI20170106BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20170106BHJP
   F21V 29/76 20150101ALI20170106BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170106BHJP
【FI】
   F21S8/10 532
   F21S8/10 352
   F21S8/10 531
   F21V29/505
   F21V29/67 100
   F21V29/76
   F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-254311(P2012-254311)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-102988(P2014-102988A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛貴
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−262903(JP,A)
【文献】 特開2012−074218(JP,A)
【文献】 特開2008−103195(JP,A)
【文献】 特開2006−332052(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0091632(US,A1)
【文献】 特開2012−212521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21V 29/505
F21V 29/67
F21V 29/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を反射する光学部材と、
前記光源から発生する熱を放熱する放熱部材と、
前記放熱部材を空冷するファンと、
前記ファンから送風された空気を前記光学部材の反射面に導く送風機構と、を備え
前記放熱部材は前記光源が搭載される搭載面を有し、
前記ファンは、前記放熱部材に対し、前記搭載面と反対側に設けられ、
前記送風機構は、前記ファン側から前記搭載面側に前記放熱部材を貫通する通気孔を含み、
前記通気孔は、前記搭載面側の開口端が前記反射面と対向するよう形成されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記光学部材は、前記光源に対向するよう配置され、光源からの光を路面に配光制御可能に反射面が形成されており、前記反射面の一端は前記光源よりも後側に位置し、他端は前記一端よりも前側に位置し、
前記通気孔は、前記開口端が前記光源と前記反射面の一端との間に位置するよう形成されることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関し、特に、光源からの熱を放熱する放熱部材と放熱部材を空冷するファンを備えた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明用の灯具として蛍光灯や電球が多く用いられてきた。近年、このような灯具の代替として、消費電力や寿命の観点から発光ダイオード(以下、「LED」と呼ぶ)を用いた発光装置が種々開発されている。例えば、特許文献1には、自動車のヘッドランプにLEDを採用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−74218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドランプでは、コスト低減のためLEDの数を減らすことが求められており、LED1個あたりが出射する光のエネルギーが増大する傾向にある。LEDが発する光の大半は反射面で反射されるが、僅かな光が反射面で吸収され、光学部品の温度上昇を招くおそれがある。そのため、リフレクタや投影レンズなどの光学部材がLEDからの熱の影響を受けて変形しうる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学部材を効率よく冷却することのできる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、光源からの光を反射する光学部材と、光源から発生する熱を放熱する放熱部材と、光学部材の反射面に空気を送る送風機構と、を備えることを特徴とした。
【0007】
この態様によると、光学部材の反射面に空気を送ることができる。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学部材を効率よく冷却することのできる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係る車両用灯具の構成を示す鉛直断面図である。
図2図1の灯具ユニットの拡大断面図である。
図3図2の灯具ユニットに含まれる発光モジュールの構成を示す斜視図である。
図4】第2の実施の形態に係る車両用灯具の灯具ユニットの拡大断面図である。
図5】第3の実施の形態に係る車両用灯具の灯具ユニットの拡大断面図である。
図6図5の灯具ユニットに含まれる発光モジュールの構成を示す斜視図である。
図7図5のヒートシンクの下面図である。
図8】第2の実施の形態の変形例に係る車両用灯具の灯具ユニットの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(第1の実施の形態)
本実施の形態に係る車両用灯具の概要は以下のとおりである。
本灯具は、光源に対向するよう配置されたリフレクタと、光源から発生する熱を放熱する放熱部材と、放熱部材を空冷するファンと、を備える。放熱部材は光源が搭載される搭載面を有し、その反対側にファンが設けられる。放熱部材にはファン側から搭載面側に貫通する通気孔が形成される。ファンからの空気の一部がこの通気孔を通って搭載面側、すなわちリフレクタ側に導かれる。これにより、リフレクタが冷却される。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る車両用灯具10の構成を示す鉛直断面図である。車両用灯具10は、ランプボディ12、アウターカバー14、および灯具ユニット16を有する。
以降、アウターカバー14側を前側、ランプボディ12側を後側として説明する。
【0014】
ランプボディ12は開口を有する箱状に形成される。アウターカバー14は透光性を有する樹脂またはガラスによって椀状に形成される。アウターカバー14は、ランプボディ12に、その開口を覆うように取り付けられる。こうして、ランプボディ12とアウターカバー14とによって灯室18が形成される。灯室18内には灯具ユニット16が配置される。灯具ユニット16からの光をアウターカバー14が透過し、灯具前方に光が照射される。
【0015】
図2は灯具ユニット16の拡大断面図である。図3は灯具ユニット16に含まれる発光モジュール22の構成を示す斜視図である。灯具ユニット16は、投影レンズ20、発光モジュール22、リフレクタ24、およびシェード26を有する。投影レンズ20は、前方側が凸面で後方側が平面の平凸非球面レンズからなり、その後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方に投影する。
【0016】
リフレクタ24は発光素子28(後述)が発した光を反射して集光する反射面24aを有する。リフレクタ24は反射面24aが発光素子28に対向するよう発光素子28の上方に配置される。具体的には、反射面24aの前側の端部24bが発光素子28より前側に位置し、後側の端部24cが発光素子28より後側に位置するよう配置される。リフレクタ24は発光素子28からの光を反射して、投影レンズ20の後方焦点面に光源像を形成する。このようにリフレクタ24および投影レンズ20は、発光素子28が発した光を灯具前方に向けて集光する光学部材として機能する。
【0017】
シェード26は、シェード部26aおよびダミー部26bを有する。シェード部26aは灯具光軸Ax1を含む平面を有し、ロービーム用配光パターンの水平線付近のカットオフラインを形成する。なお、シェード部26aの形状は公知であるため説明を省略する。ダミー部26bは外部から認識可能な意匠面を構成する意匠部材として機能する。
【0018】
発光モジュール22は、パッケージ30、ヒートシンク32、アタッチメント34、ファン36、および制御回路基板38を有する。パッケージ30は、発光素子28を有する。発光素子28は、半導体発光素子であるLEDによって構成される。なお、発光素子28がLED以外の発光素子によって構成されてもよく、また、発光素子28に代えて放電灯や白熱灯など他の光源が用いられてもよい。
【0019】
制御回路基板38は発光素子28の点灯を制御する。本実施形態では、制御回路基板38は、プリント配線基板(不図示)と、当該プリント配線基板に実装される電気部品や素子(不図示)と、によって構成される。
【0020】
アタッチメント34はパッケージ固定部34aおよび回路収容部34bを有する。パッケージ固定部34aはヒートシンク32に装着される。パッケージ固定部34aとヒートシンク32との間にパッケージ30が挟持され、パッケージ30が装着される。回路収容部34bはヒートシンク32に装着される。回路収容部34bは箱状に形成され、その中に制御回路基板38を収容される。
【0021】
ヒートシンク32はアルミニウムなど放熱性の高い材料によって形成される。ヒートシンク32の上面32cは、パッケージ30に含まれる発光素子28が搭載される搭載面として機能する。ヒートシンク32は発光素子28および制御回路基板38が発する熱を放散させる。なお、ヒートシンク32は発光素子28の熱を放散させる第1ヒートシンクと、制御回路基板38の熱を放散させる第2ヒートシンクとに分離されていてもよい。
【0022】
ヒートシンク32は本体部32aと、本体部32aの下部に設けられる放熱フィン32bとを有する。放熱フィン32bは灯具光軸Ax1と直交する方向に延在するよう設けられる。このため放熱フィン32bは、ヒートシンク32に吹き付けられた空気を灯具光軸Ax1と直交する方向に案内するガイドとしても機能する。ファン36は、放熱フィン32bに空気を吹き付けて発光素子28および制御回路基板38が発する熱を放散させることができるよう、放熱フィン32bの下方においてヒートシンク32に取り付けられる。
【0023】
ヒートシンク32には、ファン36側から搭載面側(上面32c側)に貫通する通気孔40が形成される。より具体的には、通気孔40は、搭載面側の開口端40aが、発光素子28と反射面24aの後側の端部24cとの間に位置するよう形成される。また、通気孔40は、開口端40aから流れ出た空気が、反射面24aの後側の端部24cに到達するよう形成される。一例としては、通気孔40は、ヒートシンク32を、主光軸Ax2に平行に貫通するよう形成される。なお、主光軸Ax2とは、発光素子28の上面である主発光面の中心を通過する主発光面と垂直な軸をいう。
【0024】
ファン36からの空気の一部は通気孔40を通ってリフレクタ24の反射面24aの後側の端部24cに導かれ、反射面24aを沿うようにして前側の端部24bに向けて流れる。このとき、リフレクタ24と空気との間で熱交換が行われ、リフレクタ24が冷却される。このように、反射面24aの後側の端部24cにファン36からの空気を導くことで、リフレクタ24全体を冷却することができる。
【0025】
また、通気孔40を通って送られてきた空気の流れにより、灯具ユニット16内の空気、すなわち投影レンズ20、シェード26、発光素子28、およびリフレクタ24によって囲まれた空間内の空気が、投影レンズ20とリフレクタ24との隙間から灯具ユニット16外に流れ出る。つまり、発光素子28によって熱せられた空気が灯具ユニット16内に籠もりにくくなる。そのため、リフレクタ24、投影レンズ20、および発光素子28は、比較的低い温度に保たれる。
【0026】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る車両用灯具200と第1の実施の形態に係る車両用灯具10との主な違いはヒートシンクの形状である。
図4は第2の実施の形態に係る車両用灯具200の灯具ユニット216の拡大断面図である。図4図2と対応する。ヒートシンク232は、図2のヒートシンク32と異なり通気孔を有しない。
【0027】
ファン236は、ヒートシンク232の後方に設けられ、ヒートシンク232に向かって空気を吹き付ける。そのため、放熱フィン232bは、灯具光軸Ax1と平行な方向に延在するよう設けられる。
【0028】
ヒートシンク232の後端には、前方に所定角度傾いた傾斜面232dが形成されている。これにより、ファン236からの空気がファン236からの空気がリフレクタ24の反射面24aに導かれる。つまり、傾斜面232dは、空気をリフレクタ24の反射面24aに導く送風ガイドとして機能する。本実施の形態によれば、第1の実施の形態に係る車両用灯具10と同様の作用効果が奏される。
【0029】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る車両用灯具300と第1の実施の形態に係る車両用灯具10との主な違いはヒートシンクとリフレクタの形状である。
図5は第3の実施の形態に係る車両用灯具300の灯具ユニット316の拡大断面図である。図6は灯具ユニット316に含まれる発光モジュール322の構成を示す斜視図である。図7はヒートシンクの下面図である。図5図6図2図3にそれぞれ対応する。
【0030】
発光素子28はヒートシンク332の中心より後方に位置している。ヒートシンク332は、灯具光軸Ax1と直交する方向に延在するよう設けられた放熱フィン332bに加え、灯具光軸Ax1と平行な方向に延在するよう設けられた放熱フィン332eを有する。具体的には、ヒートシンク332の中心より後方に位置する発光素子28の直下部分にだけ、灯具光軸Ax1と平行な方向に延在するよう設けられた放熱フィン332eを有する。
【0031】
つまり、放熱フィン332eは、発光素子28直下の空気を後側に案内するよう設けられている。別の言い方をすると、側面までの距離が最も短い方向に、発光素子28直下の空気を案内するよう放熱フィン332e設けられている。放熱フィン332eにより後側に案内された空気は後方側面に設けられた通気孔332fからヒートシンク332外に排出される。これにより、温度が比較的高くなる傾向にある発光素子28直下部分を効率的に冷却することができ、その結果、発光素子28をより効率的に冷やすことができる。
【0032】
リフレクタ224は、後側の端部224cが、通気孔332fの少なくとも一部と灯具光軸Ax1方向で対向するよう形成される。このため、放熱フィン332eに案内されて通気孔332fから排出された空気の一部はリフレクタ224の後側の端部224cに吹き付けられ、リフレクタ224の反射面224aに沿ってLED直上の高温部位に導かれる。つまり、本実施の形態によれば、通気孔40に加え、通気孔332fからもリフレクタ224の反射面224aに空気を導くことができ、リフレクタ24を冷却することができる。なお、ヒートシンク332の後方側面にはパッケージ30の構成部品等は取り付けられないため、通気孔332fは比較的大きく形成できる。そのため、通気孔40よりもより大量の空気を通気孔332fからリフレクタ224に導くことができる。
【0033】
本発明者は、本実施の形態の冷却効果を確かめるため実験を行った。具体的には、灯具光軸Ax1と直交する方向に延在するフィンだけを有するヒートシンクを備える比較例に係る車両用灯具と本実施の形態に係る車両用灯具300それぞれの発光素子28の温度(ジャンクション温度(Tj))を計測した。表1はその実験結果を示す。表1のごとく、本実施の形態に係る車両用灯具300のジャンクション温度は、比較例に係る車両用灯具のジャンクション温度に比べ、低くなることが分かる。
【0034】
【表1】
【0035】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0036】
(変形例1)
図8は第2の実施の形態の変形例に係る車両用灯具400の灯具ユニット416の拡大断面図である。本変形例ではヒートシンク432は、傾斜面を有しない。代わりに、灯具ユニット416はダクト442を有する。ダクト442は、ファン236からヒートシンク232の放熱フィン232bに向けて吹き付けられた空気の一部を、リフレクタ24とヒートシンク32との隙間に案内する。これにより、ファン236からの空気の一部がリフレクタ24の反射面24aに導かれる。つまり、ダクト442は、空気をリフレクタ24の反射面24aに導く送風ガイドとして機能する。本変形例によれば、第2の実施の形態に係る車両用灯具200と同様の作用効果が奏される。なお、本変形例では、ファン236は、ヒートシンク432の後方に限らず、他の位置に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 車両用灯具、 12 ランプボディ、 14 アウターカバー、 16 灯具ユニット、 18 灯室、 20 投影レンズ、 22 発光モジュール、 24 リフレクタ、 24a 反射面、 26 シェード、 28 発光素子、 30 パッケージ、 32 ヒートシンク、 32a 本体部、 32b 放熱フィン、 34 アタッチメント、 36 ファン、 38 制御回路基板、 40 通気孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8