(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の導電性粘着テープは、金属箔の片面側に粘着剤層を有する片面粘着テープである。なお、本明細書においては、「導電性粘着テープ」という場合には、シート状のもの、即ち「導電性粘着シート」も含まれるものとする。
【0017】
本発明の導電性粘着テープは、後述のヒートサイクル試験において測定される1サイクル目の抵抗値の最大値が1Ω以下であり、好ましくは0.0001〜0.5Ω、より好ましくは0.0001〜0.05Ωである。上記の1サイクル目の抵抗値の最大値を1Ω以下とすることにより、導電性粘着テープとしての十分な電気伝導性を発揮することができる。なお、上記の1サイクル目の抵抗値の最大値を、「初期抵抗値」と称する場合がある。
【0018】
本発明の導電性粘着テープは、後述のヒートサイクル試験において測定される、200サイクル目の抵抗値の最大値が、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)の5倍以下(例えば、1〜5倍)であり、好ましくは1〜3倍、より好ましくは1〜2倍、さらに好ましくは1〜1.5倍である。なお、本明細書では、1サイクル目の抵抗値の最大値に対する200サイクル目の抵抗値の最大値の値[(200サイクル目の抵抗値の最大値)/(1サイクル目の抵抗値の最大値)](倍)を、「抵抗値倍率」と称する場合がある。
【0019】
上記の抵抗値倍率は、導電性粘着テープを長期間使用した場合や過酷な環境条件下で使用した場合に、当該導電性粘着テープがどれだけ安定した電気伝導性を発揮できるかの指標となる。抵抗値倍率が小さく5倍以下である場合には、導電性粘着テープを貼付した部分の電気伝導性が経時で低下しにくく、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用に対しても安定して電流が流れ続けると考えられるため、当該導電性粘着テープを用いた製品は高い信頼性を発揮することができる。一方、上記抵抗値倍率が大きく5倍を超える場合には、導電性粘着テープを貼付した部分の電気伝導性が経時で低下し、特に、長期間、過酷な環境条件下で使用した場合には、急激に抵抗値が上昇する危険があり、導通不良が発生し得るため、当該導電性粘着テープが用いられた製品の信頼性が低下する。
【0020】
上記ヒートサイクル試験は、銀メッキが施された導体パターンに導電性粘着テープを貼付して形成された電気回路を有する評価用基板において、前記電気回路に定電流を流しながら、前記評価用基板を低温と高温とを周期的に変化させる温度雰囲気条件下に暴露し、導電性粘着テープの金属箔と銀メッキが施された導体パターンの間の抵抗(即ち、導電性粘着テープと銀メッキが施された導体パターンとの貼り合わせ部分(貼付部分)の接触抵抗)を連続的に測定する試験である。
上記の1サイクル目の抵抗値の最大値および200サイクル目の抵抗値の最大値は、次のようにして測定することができる。導電性粘着テープを、貼付部分のサイズが5mm×6mm(面積:30mm
2)となるように銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に貼付し、貼付部分を含む導電性粘着テープと銀メッキ(銀メッキが施された導体パターン)に2Aの定電流を流す。これを、槽内の設定温度(ヒートサイクル条件)を25℃から−40℃まで降温した後−40℃で10分間保持し、次いで、85℃まで昇温した後85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとしてこれを繰り返す設定とした恒温槽内に入れて冷却および加熱し、この間、前記貼付部分の抵抗値(接触抵抗値)を連続的に測定する。より具体的には、下記の[ヒートサイクル試験]に従って測定することができる。
[ヒートサイクル試験]
(評価用基板の作製)
銀メッキが施された導体パターンが形成されたガラスエポキシ基板を用い、前記銀メッキが施された導体パターンに導電性粘着テープを貼り合わせ、さらに、前記銀メッキが施された導体パターンに定電流電源および電位計を接続することによって電気回路を形成して、評価用基板を作製する。
図1には、具体的な評価用基板の構成の一例を示す。ガラスエポキシ基板18a上に、銀メッキが施された導体パターン(以下、単に「導体パターン」と称する場合がある)11a〜dが形成されており、導体パターン11a〜11dに対して、導電性粘着テープ12(幅:6mm)を、5kgのローラーを1往復させることによって貼付(圧着)する。この際、導体パターン11bと導電性粘着テープ12との貼付部分13のサイズが5mm×6mm(面積:30mm
2)となるように貼付する。この貼付部分13により、導体パターン11bと導電性粘着テープ12の金属箔との間の電気的導通(厚み方向の電気的導通)が確保される。
なお、導電性粘着テープの幅が6mmに満たない場合には、トータルで幅が6mmとなるように貼り付ける(例えば、導電性粘着テープが2mm幅の場合には、3枚を貼り付ける)ことによって、評価を実施することができる。
次いで、導体パターン11bと11dを定電流電源14に接続し、導体パターン11aと11bを電位計15に接続して電気回路を形成し、これを評価用基板とする。なお、特に限定されないが、例えば、前記導体パターンと定電流電源、電位計の接続は、リード線の使用やはんだ付け等の通常の接続手段を利用することによって実施することができる。
図2には、
図1に示す評価用基板における電気回路の等価回路を示す。
図2における17は、
図1における貼付部分13の抵抗(接触抵抗)を表している。
(抵抗評価用サンプルの作製)
上記評価用基板における電気回路のうち、少なくとも導体パターンと導電性粘着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)を、ガラスエポキシ基板とガラス板の間でエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)により封止し、抵抗評価用サンプルを作製する。
図3には、抵抗評価用サンプルの模式図(
図1の貼付部分13における断面図)を示す。抵抗評価用サンプルは、少なくとも導体パターン11bと導電性粘着テープ12による貼り合わせ部分(貼付部分)13が、ガラスエポキシ基板18aおよびガラス板18bの間で、EVA(EVAの硬化物)19によって封止された構成を有する。なお、
図1には、EVA(EVAの硬化物)によって封止される領域(封止領域)16の一例を示す。上述のEVAによる封止は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして実施することができる。
図1に示す評価用基板における封止領域16上に、熱硬化性エチレン−酢酸ビニル共重合体のフィルム(EVAフィルム)(例えば、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化性EVAフィルム)を載せ、さらにその上からガラス板を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体とする。前記積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引きを行い、次いで、真空引きをしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後真空プレス機から前記積層体を取り出して、150℃オーブンで40分間加熱し、EVAを熱硬化させる。
このように、少なくとも導体パターンと導電性粘着テープとの貼り合わせ部分(貼付部分)をEVAによって封止することによって、貼付部分が固定されるため、誤差が小さく安定した測定結果を得ることができる。
(チャンバー(恒温槽)内の雰囲気温度設定)
チャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)を下記のようにする。なお、特に限定されないが、下記設定にてチャンバー内の雰囲気温度を変化させる間には、チャンバー内の湿度(相対湿度)の制御は行わなくてもよい。
開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを少なくとも200回繰り返す設定とする。なお、1サイクルに要する時間は170分である。
図4には、上記のチャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)の、2サイクル目までのプロファイルを示す。なお、この設定温度(ヒートサイクル条件)は、IEC規格のIEC61215(第2版)、IEC61646(第2版)に準じたものである。
上記のチャンバー(恒温槽)としては、公知慣用のチャンバーを用いることができ、特に限定されないが、例えば、商品名「PL−3KP」(エスペック(株)製)、商品名「PWL−3KP」(エスペック(株)製)などの市販品を用いることができる。
図5には、後述の(評価)の「(1)抵抗値(ヒートサイクル試験)」で用いたチャンバー(エスペック(株)製、商品名「PL−3KP」)内の温度を上記設定にて制御した場合の、チャンバー(恒温槽)の槽内温度(槽内雰囲気温度)および評価用基板における導電性粘着テープの表面温度プロファイルの一例を示した。チャンバーの槽内温度は設定条件にあわせて変化し、最高温度は設定とほぼ同じ約85℃、最低温度は設定よりもやや高い約−30℃を示した。また、導電性粘着テープの表面温度は、チャンバーの槽内温度とほぼ同様の変化を示した。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルにおける電気回路に対し、定電流電源(
図1における定電流電源14)によって2Aの定電流を流し(即ち、
図1における貼付部分13に2Aの定電流を流し)、抵抗評価用サンプルを槽内の雰囲気温度を25℃としたチャンバー内に入れる。次に、上記の設定温度(ヒートサイクル条件)により、抵抗評価用サンプルの冷却および加熱を繰り返し、この間、電位計15によって電圧を連続的に測定(例えば、サンプリング周期:5〜10回/10分)することにより、貼付部分13の抵抗値を連続的に取得する。これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)、200サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、上記の抵抗値倍率を算出する。
【0021】
従来、導電性粘着テープがどれだけ安定した電気伝導性を発揮するかは、導電性粘着テープを導体(電気伝導体)に貼付して前記導電性粘着テープの金属箔と前記導体の間に電気的導通を確保した状態で、これを高温と低温とを繰り返す雰囲気温度条件に暴露し、暴露前後の導電性粘着テープの貼付部分の電気伝導性(即ち、抵抗(接触抵抗))がどれだけ変化するかによって評価されていた。しかしながら、上記雰囲気温度条件に暴露前後の電気伝導性の変化は、暴露前の常温で測定される抵抗値と、暴露後に常温で測定される抵抗値とを比較することによって評価していたため、高温や低温条件に暴露されている最中にも常に安定した電気伝導性を発揮しているかどうかは不明であった。そこで、本発明者らは、高温や低温条件に暴露する間においても連続的に導電性粘着テープ貼付部分の抵抗(接触抵抗)を測定する上記のヒートサイクル試験を採用し、導電性粘着テープの電気伝導性を評価した。その結果、従来の導電性粘着テープにおいては、常温環境下で測定される抵抗値の経時的な上昇は小さいものの、特に高温環境下での抵抗値が徐々に増大して経時で電気伝導性が低下することが判明した。これに対して、本発明の導電性粘着テープは、上記のヒートサイクル試験において測定される抵抗値倍率が5倍以下であるため、高温環境下で測定される抵抗値の上昇が抑制され、長期の使用や過酷な環境条件下での使用に対しても安定した電気伝導性を発揮できる。
【0022】
(金属箔)
本発明の導電性粘着テープを構成する金属箔としては、自己支持性を有し、かつ電気伝導性を示す金属箔であればよく、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛やこれらの合金などの金属箔を使用することができる。中でも、導電性、コスト、加工性の観点から、アルミニウム箔、銅箔が好ましく、より好ましくは銅箔である。なお、上記金属箔は、錫メッキや銀メッキ、金メッキ等の各種表面処理が施されていてもよい。即ち、腐食による抵抗値上昇を抑制する観点で、錫メッキが施された銅箔が特に好ましい。
【0023】
上記金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、10〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜80μm、さらに好ましくは30〜60μmである。厚みを10μm以上とすることにより、十分な強度を有するため、作業性が向上する。一方、厚みを100μm以下とすることにより、コスト面で有利となる。また、厚みが100μm以下であると、特に、後述の貫通孔を有する導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の場合には貫通孔を形成しやすいため、生産性が向上する。
【0024】
(粘着剤層)
本発明の導電性粘着テープを構成する粘着剤層を形成するための粘着剤の種類としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などの公知の粘着剤を挙げることができる。これらの粘着剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、粘着剤は、いずれの形態を有している粘着剤であってもよく、例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、エマルジョン型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などが使用できる。
【0025】
上記粘着剤層を形成するための粘着剤としては、上記の中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。即ち、上記粘着剤層は、アクリル系粘着剤層であることが好ましい。また、上記アクリル系粘着剤層は、アクリル系ポリマーを必須成分として含む粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)から形成された粘着剤層(アクリル系粘着剤層)であることが好ましい。上記粘着剤層(アクリル系粘着剤層)(100重量%)中のアクリル系ポリマーの含有量は、特に制限されないが、65重量%以上(例えば、65〜100重量%)であることが好ましく、より好ましくは70〜99重量%である。なお、上記粘着剤組成物には、アクリル系ポリマーに加えて、必要に応じて、その他の成分(添加剤)などが含まれていてもよい。
【0026】
上記アクリル系ポリマーは、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成されるアクリル系ポリマーであることが好ましい。また、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分には、さらに、極性基含有単量体、多官能性単量体やその他の共重合性単量体が共重合モノマー成分として含まれていてもよい。これらの共重合モノマー成分を用いることにより、たとえば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤層の凝集力を高めたりすることができる。なお、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0027】
上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する場合がある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記の中でも、アルキル基の炭素数が2〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、より好ましくは、アクリル酸n−ブチルである。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは60〜99.9重量%である。
【0029】
上記の極性基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有単量体も含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。上記の中でも、極性基含有単量体としては、カルボキシル基含有単量体が好ましく、より好ましくは、アクリル酸である。なお、上記の極性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記の極性基含有単量体の含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。極性基含有単量体の含有量を1重量%以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が向上する。一方、極性基含有単量体の含有量を30重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。
【0031】
上記の多官能性単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0032】
上記の多官能性単量体の含有量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)が好ましく、より好ましくは、0〜0.3重量%である。多官能性単量体の含有量を0.5重量%以下とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなり過ぎず、粘着性が向上する。なお、架橋剤を用いる場合には多官能性単量体を用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合には、多官能性単量体の含有量は0.001〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0033】
また、極性基含有単量体や多官能性単量体以外のその他の共重合性単量体としては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0034】
上記アクリル系ポリマーは、上記のモノマー成分を公知乃至慣用の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。上記の中でも透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、より好ましくは溶液重合方法である。
【0035】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記アクリル系ポリマーの重合に際して用いられる重合開始剤などは、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。より具体的には、重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤が好ましく例示される。重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量としては、特に限定されず、従来、重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0037】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、30万〜120万が好ましく、より好ましくは35万〜100万、さらに好ましくは40万〜90万である。アクリル系ポリマーの重量平均分子量を30万以上とすることにより、粘着性が向上する。一方、120万以下とすることにより、塗工性が向上する。アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0038】
本発明の導電性粘着テープを構成する粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることにより、粘着剤層を構成するベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)を架橋させ、粘着剤層の凝集力を一層大きくすることができる。架橋剤としては、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、多官能性メラミン化合物(メラミン系架橋剤)、多官能性エポキシ化合物(エポキシ系架橋剤)、多官能性イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましく使用される。上記の中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。架橋剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0040】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0041】
上記粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤層の場合には、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0〜5重量部が好ましく、より好ましくは0〜3重量部である。
【0042】
上記の粘着剤組成物は、さらに、必要に応じて、架橋促進剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤や溶剤(前述のアクリル系ポリマーの溶液重合の際に使用可能な溶剤など)を含有していてもよい。
【0043】
上記粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(又はアクリル系ポリマー溶液)、架橋剤、溶剤や他の添加剤を混合することにより、調製することができる。
【0044】
本発明の導電性粘着テープを構成する粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば、10〜80μmが好ましく、より好ましくは20〜60μm、さらに好ましくは20〜50μmである。厚みを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすく、剥がれが生じにくくなる。一方、厚みを80μm以下とすることにより、製品の小型化や薄膜化に有利となる。特に、後述の貫通孔を有する導電性粘着テープ(導電性粘着テープa)の場合には、粘着剤層の厚みが厚すぎると、貫通孔を開けて形成した突出部が沈み込んでしまう(即ち、突出部が貫通孔を塞ぐ方向に倒れ込む)ことにより、金属箔が粘着剤層側の表面に露出できず(当該現象を「粘着剤層による侵食」と称する)、端子部の面積を大きくすることが困難となる傾向がある。厚みを80μm以下とすることによって、上述のような粘着剤層による侵食が抑制され、端子部の面積を効率的に大きくすることができるため、安定した電気伝導性を発揮させることができる。
【0045】
上記粘着剤層の形成方法としては、特に限定されないが、前述の粘着剤組成物を、金属箔又はセパレータに塗布(塗工)し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化する方法を挙げることができる。
【0046】
なお、上記粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0047】
本発明の導電性粘着テープは、上記の金属箔、粘着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0048】
本発明の導電性粘着テープの厚みは、特に限定されないが、20〜180μmが好ましく、より好ましくは40〜140μm、さらに好ましくは50〜110μmである。上記厚みを20μm以上とすることにより、十分なテープ強度を有し、作業性が向上する。一方、上記厚みを180μm以下とすることにより、製品の薄膜化や小型化に有利となる。なお、上記「導電性粘着テープの厚み」とは、導電性粘着テープにおける金属箔表面(金属箔表面のうち粘着剤層を有しない側の表面)から粘着面までの厚さを意味する。
【0049】
本発明の導電性粘着テープにおける粘着面には、セパレータ(剥離ライナー)が設けられていてもよい。上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。上記の中でも、セパレータの浮き(セパレータが粘着面から部分的に剥離する現象)を抑制する観点で、ポリエチレン又はポリプロピレンからなるセパレータを用いることが好ましい。なお、セパレータは公知慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚み等も特に限定されない。
【0050】
本発明の導電性粘着テープは、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、上記ヒートサイクル試験において測定される1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)および抵抗値倍率が上記範囲を満たせばよく、特に限定されないが、その具体的態様としては、例えば、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、粘着剤層側の表面に露出した端子部を有する粘着テープであって、粘着剤層(導電性粘着テープにおける粘着剤層側の表面)30mm
2あたりに存在する端子部の総面積が0.15〜5mm
2に制御された導電性粘着テープ(以下、当該具体的態様の導電性粘着テープを「導電性粘着テープA」と称する)を挙げることができる。
【0051】
上記「端子部」とは、導電性粘着テープAの粘着剤層側の表面に露出している金属部分(金属部分の表面が酸化されている場合も含む)であり、かつ、導電性粘着テープAにおける金属箔と電気的に導通する部分である。具体的には、導電性粘着テープAを粘着剤層表面側から観察した時に、露出している金属部分をいう。
【0052】
導電性粘着テープAはこのような端子部を有するため、被着体に貼付する際には上記端子部の少なくとも一部が被着体と接触することによって、被着体と導電性粘着テープAの金属箔との間の電気的導通が確保される。即ち、上記端子部は、導電性粘着テープAにおいて、厚み方向の電気伝導性を発揮させる役割を担う。中でも、上記端子部としては、厚み方向に安定した導電性を発揮させる観点から、導電性粘着テープを構成する金属箔の一部により形成された端子部であること、即ち、導電性粘着テープを構成する金属箔の一部が粘着剤層側の表面に露出することによって形成された端子部であることが好ましい。
【0053】
導電性粘着テープAにおける、上記粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積(粘着剤層側の表面30mm
2あたりに存在する端子部の総面積)(以下、単に「端子部の総面積」と称する場合がある)は、0.15〜5mm
2であり、好ましくは0.3〜5mm
2、より好ましくは0.4〜5mm
2である。上記端子部の総面積を0.15mm
2以上とすることにより、長期の使用や過酷な環境下での使用による、端子部と被着体との接触面積(以下、単に「接触面積」と称する場合がある)の低下に伴う急激な抵抗値上昇を防ぎ、安定した電気伝導性を発揮することができる。一方、上記端子部の総面積を5mm
2以下とすることにより、被着体に対する粘着性が向上する。なお、「端子部の面積」とは、導電性粘着テープAの粘着剤層側の表面を粘着剤層表面に対して垂直方向から観察した時に、露出している金属部分(端子部)の面積をいう。即ち、粘着剤層側の表面を粘着剤層表面に対して垂直方向から観察した時の、端子部の投影面積のことを指す。
【0054】
上記端子部の総面積は、特に限定されないが、例えば、粘着剤層30mm
2あたりに存在する全ての端子部について、それぞれの面積(投影面積)を測定し、これらを合計することによって測定することができる。より具体的には、例えば、下記の方法により測定することができる。
[端子部の総面積の測定方法]
導電性粘着テープを長さ6mm×幅5mm(面積:30mm
2)のサイズに切り出し、これを測定サンプルとする。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズは「VH−Z20」を使用)にて観察し、端子部(粘着剤層側の表面に露出している金属部分)の画像(投影面の画像)を撮影する。次に、計測モードにて、前記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって端子部の面積を測定する。同様に、上記測定サンプルに存在するすべての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積を算出する。
より詳しくは、後述の(評価)の「(2)端子部の面積」に記載の方法により測定することができる。
なお、導電性粘着テープのテープ幅が6mmに満たない場合には、例えば、粘着剤層の面積が30mm
2となるように長さを調整して切り出した測定サンプルを用いて測定してもよいし、粘着剤層の面積が30mm
2よりも小さい測定サンプルを用いて測定して得られた値を粘着剤層30mm
2あたりの値に換算することによって測定してもよい。
【0055】
なお、上記端子部の総面積の測定方法としては、上述の測定方法に限定されず、例えば、任意の面積(例えば、100cm
2など)の粘着剤層あたりに存在する全ての端子部の面積(投影面積)を測定してこれらを合計し、その後、粘着剤層30mm
2あたりの数値に換算する方法を用いることもできる。
【0056】
導電性粘着テープAにおいて、上記端子部を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、金属箔側からエンボス加工を施して前記金属箔の一部を粘着剤層側の表面に露出させ、これを端子部とする方法や、金属箔側から貫通孔を開け、粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方法などが挙げられる。中でも、金属箔側から貫通孔を開け、前記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、これを端子部とする方法が好ましく、さらに安定した電気伝導性を発揮させる観点からは、金属箔側から貫通孔を開け、前記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返してこれを端子部とする方法が好ましい。即ち、導電性粘着テープAにおける端子部としては、金属箔側から貫通孔を開け、前記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部であることが好ましい。端子部を上記方法により形成すると、粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積を、上記範囲に制御することが容易となるため、好ましい。
【0057】
以下では、上述の金属箔側から貫通孔を開け、粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返してこれを端子部とする方法により得られる導電性粘着テープを、「導電性粘着テープa」と称する。即ち、導電性粘着テープaは、端子部が、金属箔側から貫通孔を開け、前記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成し、次いで、該突出部を折り返すことによって形成された端子部である導電性粘着テープである。以下に、導電性粘着テープaについて詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。なお、前記「突出部」とは、前記貫通孔を設けた時に粘着剤層側の表面に突き出した金属箔のことをいい、「バリ」ということもある。また、本明細書において「突出部を折り返す」とは、突出部を構成する金属箔が粘着剤層側の表面に露出するように、前記突出部を折り曲げることを指す。
【0058】
導電性粘着テープaは、金属箔の片面側に粘着剤層を有し、前記金属箔並びに前記粘着剤層を貫通する孔(貫通孔)が設けられ、前記貫通孔を通して金属箔の一部が粘着剤層側の表面に露出し、これを端子部とする構成を有する片面粘着テープである。このような端子部を有することにより、金属箔と被着体に対する貼着面との間で電気伝導性(厚み方向の電気伝導性)が確保される。
図6および
図7は、導電性粘着テープaの構成の一例を示す模式図である。
図6(導電性粘着テープaの模式図(端子部における断面図))において、導電性粘着テープ23は、金属箔21の片面側に粘着剤層22を有しており、金属箔21並びに粘着剤層22には貫通孔25が設けられ、貫通孔25を通して金属箔21の一部が粘着剤層側の表面に露出することによって端子部24が形成されている。このように、導電性粘着テープaにおいては、貫通孔25と端子部24とにより、金属箔21と端子部24との間を通電させる役割を果たす導通部26が形成されている。
図7は、導電性粘着テープaの一例を示す模式図(平面図)である。
図7における貫通孔25の位置パターンは、いわゆる、散点パターンであり、例えば、長手方向の配置間隔がxの列を間隔yで配列し、かつ互いに隣り合う列間において半ピッチずらしたものを使用できる。上記配置間隔xとしては、特に限定されないが、例えば、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、上記間隔yとしては、特に限定されないが、例えば、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。
【0059】
導電性粘着テープaにおける、粘着剤層30mm
2あたりに存在する貫通孔の数(密度)(粘着剤層側の表面30mm
2あたりに存在する貫通孔の数)としては、特に限定されないが、例えば、3〜10個/30mm
2が好ましく、より好ましくは3〜6個/30mm
2である。上記貫通孔の数を3個/30mm
2以上とすることにより、被着体に対する導電性粘着テープの端子部の接触箇所が多くなるため、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用によって端子部それぞれの接触面積が低下した場合であっても、十分な接触箇所を保持することにより電気的導通を確保し、急激な抵抗値上昇を抑えることができる。一方、上記貫通孔の数を10個/30mm
2以下とすることにより、導電性粘着テープが十分な強度を保持することができ、作業性が向上する。
【0060】
上記貫通孔の数(密度)は、特に限定されないが、例えば、任意の面積(例えば、30mm
2、100cm
2など)の粘着剤層あたりに存在する貫通孔の数を、目視又はデジタルマイクロスコープ等を用いて数え、必要に応じて粘着剤層30mm
2あたりの数に換算することにより、測定することができる。
【0061】
導電性粘着テープaにおける、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積(以下、単に「端子部の平均面積」と称する場合がある)は、50,000〜500,000μm
2が好ましく、より好ましくは100,000〜400,000μm
2であり、さらに好ましくは100,000〜300,000μm
2である。端子部の平均面積を50,000μm
2以上とすることにより、被着体に対する端子部の接触面積が大きくなるため、長期間の使用や過酷な環境条件下での使用によって接触面積が低下した場合であっても、電気伝導性の確保には十分な接触面積を保持することができ、安定した電気伝導性を発揮することができる。一方、端子部の平均面積を500,000μm
2以下とすることにより、貫通孔が大きくなり過ぎることがないため、導電性粘着テープが十分な強度を保持することができ、作業性が向上する。
【0062】
上記端子部の平均面積は、特に限定されないが、例えば、粘着剤層30mm
2あたりに存在する全ての端子部について、それぞれの投影面積を測定し、これらを合計した面積(粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積)を、該粘着剤層30mm
2あたりに存在する貫通孔の数で割ることによって求めることができる。より具体的には、例えば、下記の方法により測定することができる。
[端子部の平均面積の測定方法]
導電性粘着テープを長さ6mm×幅5mm(面積:30mm
2)のサイズに切り出し、これを測定サンプルとする。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズは「VH−Z20」を使用)にて観察し、端子部(粘着剤層側の表面に露出している金属部分)の画像(投影面の画像)を撮影する。次に、計測モードにて、前記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって端子部の面積を測定する。同様に、上記測定サンプルに存在する全ての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積を算出する。
上記で計測した端子部の総面積を、上記測定サンプルに存在する貫通孔の数(目視又やデジタルマイクロスコープ等により数えることができる)で割ることによって、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を求めることができる。
なお、導電性粘着テープのテープ幅が6mmに満たない場合には、例えば、粘着剤層の面積が30mm
2となるように長さを調整して切り出した測定サンプルを用いて測定してもよいし、粘着剤層の面積が30mm
2よりも小さい測定サンプルを用いて測定して得られた値を粘着剤層30mm
2あたりの値に換算することによって測定してもよい。
なお、より詳しくは、後述の(評価)の「(2)端子部の面積」に記載の方法により測定することができる。
【0063】
なお、上記端子部の平均面積の測定方法としては、上述の測定方法に限定されず、例えば、任意の面積(例えば、100cm
2など)の粘着剤層あたりに存在する全ての端子部の面積(投影面積)を測定してこれらを合計し、その後、上記の粘着剤層(任意の面積の粘着剤層)あたりに存在する貫通孔の数で割る方法を用いることもできる。
【0064】
導電性粘着テープaを構成する金属箔としては、上記で例示したものを好ましく使用することができる。また、上記金属箔の厚みについても上述の範囲に制御することが好ましい。なお、導電性粘着テープaにおける「金属箔の厚み」とは、導電性粘着テープaにおいて端子部が形成されていない部分の金属箔の厚みのことをいう。
【0065】
導電性粘着テープaを構成する粘着剤層としては、上記で例示したものを好ましく使用することができる。また、上記粘着剤層の厚みについても上述の範囲に制御することが好ましい。なお、導電性粘着テープaにおける「粘着剤層の厚み」とは、導電性粘着テープaにおいて端子部が形成されていない部分の粘着剤層の厚みのことをいう。
【0066】
導電性粘着テープaにおける、上記金属箔の厚みに対する上記粘着剤層の厚みの比[(粘着剤層の厚み)/(金属箔の厚み)]としては、0.1〜10が好ましく、より好ましくは0.2〜9、さらに好ましくは0.3〜8である。上記の金属箔の厚みに対する粘着剤層の厚みの比を0.1以上とすることにより、基材(金属箔)の剛性に対して十分な粘着力を得ることが出来る。一方、上記の金属箔の厚みに対する粘着剤層の厚みの比を10以下とすることにより、上述の粘着剤層による侵食が抑制され、端子部の面積を広くすることができる。
【0067】
導電性粘着テープaの具体的な製造方法としては、特に限定されないが、例えば、金属箔の片面側に粘着剤層を有する積層体に、前記金属箔側から貫通孔を開け、前記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成する工程(当該工程を「工程1」と称する場合がある)、次いで、前記突出部を折り返す工程(当該工程を「工程2」と称する場合がある)を少なくとも含む製造方法が挙げられる。上記工程2の後には、必要に応じて、プレス加工を施す工程(当該工程を「工程3」と称する場合がある)を含んでいてもよい。
図8は、導電性粘着テープaの製造方法の一例を示す模式図である。図中の21は金属箔を、22は粘着剤層を表している。また、25は貫通孔を、27は突出部を表し、24は端子部を表している。
【0068】
上記の金属箔の片面側に粘着剤層を有する積層体は、特に限定されないが、例えば、金属箔の片面側に粘着剤層を形成することによって製造してもよいし、市販品を使用してもよい。なお、前記の金属箔の片面側に粘着剤層を形成する工程は、導電性粘着テープaの製造とは別に実施してもよいし、導電性粘着テープaの製造と一連の工程として(即ち、インラインで)実施してもよい。上記積層体を製造する際の金属箔の片面側への粘着剤層の形成方法としては、公知慣用の粘着剤層の形成方法を用いることができ、特に限定されず、例えば、上述の粘着剤層の形成方法を用いることができる。なお、この際、金属箔の表面に上記粘着剤層を直接形成してもよいし(直写法)、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、これを金属箔に転写する(貼り合わせる)ことにより、金属箔の表面に粘着剤層を設けてもよい(転写法)。
【0069】
[工程1]
工程1では、金属箔の片面側に粘着剤層を有する積層体に、前記金属箔側から貫通孔を開け、前記粘着剤層側の表面に金属箔の突出部を形成する。前記貫通孔を開ける方法としては、公知慣用の穿孔方法を用いることができ、特に限定されない。中でも、均一な貫通孔を形成する観点で、表面に貫通孔を形成するためのピンが設けられたオス型を用いた貫通孔形成方法が好ましい。
【0070】
上記ピンの形状としては、貫通孔を形成可能な突起形状であればよく、特に限定されないが、例えば、円錐、三角錐、四角錐等の角錐(多角錐)、円柱、三角柱、四角柱等の角柱(多角柱)やこれらに類似した形状などを挙げることができる。中でも、上記ピンの形状としては、均一な貫通孔を形成する観点で、角錐形状が好ましい。
【0071】
上記オス型における上記ピンの配置としては、特に限定されず、導電性粘着テープaが有する貫通孔の配置に応じて、適宜選択することができる。例えば、導電性粘着テープaの長手方向(MD)に対応するピンの間隔としては、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、導電性粘着テープの幅方向(TD)に対応するピンの間隔としては、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。上記ピンの位置パターンについても、特に限定されないが、例えば、
図7に示す導電性粘着テープaにおける貫通孔の位置パターンと同様の散点パターンで配置することができる。
【0072】
より具体的には、前記貫通孔を設ける際に用いるオス型としては、例えば、
図9および
図10に示すような菱形四角錐形状のピンを、
図11に示すような位置パターン(長手方向(導電性粘着テープの長手方向)の配置間隔がiの列を間隔hで配列し、かつ互いに隣り合う列間で半ピッチずらした散点パターン)で配置したものを使用することができる。このようなピンの底面形状(菱形)のサイズとしては、例えば、
図9におけるcが0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2mm、
図9におけるdが0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2mmのものを使用することができる。また、
図9における底面の角度eとしては、例えば、30〜120°が好ましく、より好ましくは40〜100°である。
また、
図10におけるf(ピンの高さ)としては、例えば、0.5〜3mmが好ましく、より好ましくは1〜2mmである。
図10におけるgとしては、例えば、0.01〜0.5mmが好ましく、より好ましくは0.02〜0.4mmである。
さらに、
図11における間隔iとしては、例えば、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。また、
図11における間隔hとしては、例えば、1〜4mmが好ましく、より好ましくは2〜3mmである。
【0073】
特に限定されないが、上記オス型を用いて貫通孔を形成する場合には、オス型が有するピンの形状に対応した凹部分を有するメス型を併せて用いることが好ましい。このようなメス型を用いることにより、より折り返しやすい突出部を形成することができ、端子部の面積を大きくできる傾向にある。上記メス型が有する凹部分の形状やサイズは、特に限定されず、オス型が有するピンの形状やサイズによって適宜選択することができる。具体的には、例えば、
図12に示す断面形状の円柱状の穴などを挙げることができる。
図12に示す円柱状の穴のサイズとしては、特に限定されないが、例えば、
図12におけるj(底辺の直径)が0.5〜3mm、
図12におけるk(深さ)が0.5〜3mmのものを使用することができる。
【0074】
図13には、
図9、10に示すピンを有するオス型31と、
図12に示す円柱状の穴を有するメス型32を用いた打ち抜きの際の、ピンと円柱状の穴の配置の一例を示す。
【0075】
図14は、上記で例示した菱形四角錐形状のピンを有するオス型と円柱状の穴を有するメス型を用いた打ち抜き加工によって形成された、貫通孔および突出部の形状の一例を示す模式図である。当該例では、貫通孔の形状は菱形であり、当該貫通孔1個あたりに4つの突出部が形成されている。
【0076】
上述のピンが設けられたオス型を用いた打ち抜きによる、具体的な貫通孔形成方法としては、例えば、金属箔の片面側に粘着剤層を有する積層体を、ピンが所望の配置で表面に形成されたロール(「オス型ロール」と称する場合がある)と、ロール表面に凹部分(穴や溝など)が形成されたロール(「メス型ロール」と称する場合がある)の間を、上記積層体の金属箔側がオス型ロールと接触するようにして通過させる方法を挙げることができる。
【0077】
[工程2]
工程2では、前記突出部(工程1で形成した突出部)を折り返して端子部を形成する。突出部を折り返すことによって、端子部の面積を大きくすることができる。突出部を折り返す方法としては、特に限定されないが、効果的に端子部の面積を大きくできる観点で、スキージを用いる方法が好ましい。スキージを用いることにより、一度に多くの突出部を折り返すことができ、さらにこれらをきれいに折り返すことができる。このため、粘着剤層側の表面に露出する金属箔の面積、即ち、端子部の面積を大きくすることができる。特に、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を大きくすることが容易となるため、効率的に粘着剤層30mm
2あたりの端子部の総面積を大きくすることができる。
【0078】
図15には、導電性粘着テープaの製造方法において、スキージを用いて突出部を折り返し端子部を形成する態様を示す模式図を示す。
図15における「進行方向」とは、工程1にて得られた貫通孔および突出部を有する積層体の進行方向を示し、
図16についても同様である。
図15に示すように、工程1で得られる貫通孔25および突出部27を有する積層体の粘着剤層22の表面と、スキージ41の先端とが対向するように配置し、スキージ41に対して粘着剤層22を移動させることによって、スキージ41の先端によって突出部27が折り返される。この場合、突出部27の中でも、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向側に位置する突出部27aは、通常、貫通孔25を塞ぐ方向に折り曲げられるため、突出部27aの金属箔は粘着剤層側の表面には露出せず、端子部を形成しない。これに対し、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向とは反対側に位置する突出部27bは、貫通孔25を塞ぐ方向とは反対側の方向に折り返されるため、突出部27bの金属箔が粘着剤層側の表面に露出する。即ち、突出部27bによって端子部24が形成される。このように、スキージを用いて突出部を折り返すことによって、貫通孔1個あたりの端子部の面積を効率的に大きくすることができる。
【0079】
図16には、従来の導電性粘着テープにおいて端子部を形成する態様を示す模式図を示す。従来の導電性粘着テープにおける端子部は、例えば、
図16に示すようなプレスロール28を用いて、貫通孔25および突出部27を有する積層体の突出部27を押し潰すことによって形成されていた。この場合、突出部27のうち貫通孔25に対して上記積層体の進行方向側に位置する突出部27aは、通常、粘着剤層によって突出部27aの金属箔が覆われる形で押し潰されるため、突出部27aの金属箔は粘着剤層の表面にはほとんど露出しない。一方、貫通孔25に対して上記積層体の進行方向とは反対側に位置する突出部27bは、プレスロールによって金属箔が粘着剤層側の表面に露出するように折り曲げられるが、同時に押し潰されるため、突出部27bの金属箔の大部分は粘着剤層によって被覆され、結果的に粘着剤層側の表面にはわずかな金属箔しか露出しない。このように、従来の製造方法では、貫通孔1個あたりの端子部の面積を大きくすることができなかったため、かかる方法により得られた導電性粘着テープは、粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積を上述の範囲に制御することができず、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。
【0080】
上記スキージの材質としては、公知慣用のスキージを用いることができ、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス等を挙げることができる。中でも、剛性の観点で、鉄製のスキージが好ましい。
【0081】
上記スキージの形状としては、特に限定されず、例えば、公知慣用の形状のスキージを用いることができる。中でも、突出部を折り返しやすい観点で、
図15に示す、断面が台形形状であり、かつ、先端が尖ったスキージ(いわゆる剣スキージ)を用いることが好ましい。
【0082】
例えば、スキージとして上記の剣スキージを用いる場合、その先端角度としては、特に限定されないが、10〜80°が好ましく、より好ましくは20〜60°である。また、上記スキージの先端半径(先端R)としては、0.1〜1が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8である。なお、上記「先端角度」とは、剣スキージの断面形状における先端の角度のことであり、例えば、
図15においては42で表される角度のことをいう。
【0083】
上記突出部を折り返す際には、特に限定されないが、粘着剤層表面に対してスキージの先端を完全に接触させることが好ましい。粘着剤層表面とスキージの先端を完全に接触させることによって、突出部を根元から折り曲げることができ、端子部の面積を効率的に大きくすることができる。
【0084】
上記突出部を折り返す際の、粘着剤層表面とスキージ先端のなす角度は、特に限定されないが、例えば、30〜80°が好ましく、より好ましくは40〜80°である。なお、上記の粘着剤層表面とスキージ先端のなす角度とは、例えば、
図15において43で表される角度のことをいう。上記角度を30°以上とすることにより、突出部を根元から折り返すことができ、端子部の面積を効率的に大きくすることができる。上記角度を30°未満とすると、スキージの先端が突出部の先端を撫でるように滑ってしまい、折り返しが不十分となって端子部の面積を大きくできない傾向がある。一方、上記角度を80°以下とすることにより、突出部を折り返す際に発生する
導電性粘着テープのやぶれが防止される。
【0085】
上記突出部を折り返す際の、スキージに対して粘着剤層(積層体)を移動させる速度は、特に限定されないが、例えば、1〜20m/分が好ましく、より好ましくは2〜10m/分である。上記速度を1m/分以上とすることにより、生産性が向上する。一方、上記速度を20m/分以下とすることにより、スキージによる突出部の折り返しを安定して行うことができる。なお、上記突出部を折り返す際には、上述のようにスキージに対して粘着剤層(積層体)を移動させてもよいし、粘着剤層(積層体)に対してスキージを移動させてもよい。粘着剤層(積層体)に対してスキージを移動させる速度についても、上記範囲を満たすことが好ましい。
【0086】
[工程3]
工程3では、必要に応じて、上記工程2で折り返した突出部にプレス加工を施す。当該工程3を経ることにより、端子部と粘着剤層表面を平滑とすることができるため、被着体に対して端子部を接触させやすくすることができ、なおかつ、被着体に対する導電性粘着テープの接着性を高めることができる。
【0087】
上記プレス加工の方法としては、公知慣用の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、ロール、単板等を用いたプレス加工方法が挙げられる。中でも、生産性向上の観点で、ロールプレス装置を用いたプレス加工が好ましい。なお、プレス加工の際には、粘着剤層をセパレータにより保護することが好ましい。
【0088】
上記の導電性粘着テープaの製造方法においては、必要に応じて、工程2又は工程3の後に、導電性粘着テープを適切な製品幅にスリットする工程、導電性粘着シートをロール状に巻き取る工程などの各種工程が設けられていてもよい。
【0089】
本発明の導電性粘着テープは、粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積を0.15〜5.0mm
2に制御することによって、上記ヒートサイクル試験において測定される抵抗値倍率が5倍以下に制御され、長期間の使用や過酷な環境下での使用に対して安定した電気伝導性を発揮することができる。これは、主に、以下の(1)(2)の理由によるものと推定される。(1)端子部一つ一つの面積を大きくする、即ち、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を大きくすることにより、長期間の使用や過酷な環境下の使用において接触面積が多少低下した場合であっても、電気的導通を確保するのに十分な接触面積を保持することができる。(2)単位面積の粘着剤層あたりに存在する端子部の数を多くすることにより、長期間の使用や過酷な環境下の使用において接触面積が低下した場合であっても、電気的導通を確保するのに十分な接触箇所を保持することができる。特に、本発明においては、端子部の形成にスキージを用いることによって、従来の製造方法では形成し得ない大きさ(面積)の端子部を形成できる(即ち、上記(1)の効果を得ることができる)ため、端子部の総面積が上述の範囲に制御された導電性粘着テープを効率よく得ることができる。
【0090】
これに対して、従来の導電性粘着テープにおいては、端子部一つ一つの面積を大きくすることができず(具体的には、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を50,000μm
2以上とすることができず)、さらに、端子部の数を増量して端子部の総面積を大きくしようとした場合には非常に多くの貫通孔を設ける必要があり、これによって導電性粘着テープの強度と粘着性とが著しく低下してしまう等の理由によって、粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積を0.15〜5.0mm
2に制御することができなかった。従って、従来の導電性粘着テープは、長期間の使用や過酷な環境下での使用において、導通を妨げる程度まで被着体と端子部との接触面積が低下してしまうことにより、徐々に抵抗値が上昇し、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。このような被着体と端子部との接触面積の低下は、導電性粘着テープの製造時や被着体への貼付の際に微細な気泡が粘着剤層中に発生(又は混入)し、雰囲気温度の変化等によって端子部付近に存在する気泡が膨張や収縮を繰り返し、これによって被着体と端子部との接触面に応力がかかることによって生じる現象であると推定される。
【0091】
本発明の導電性粘着テープは、離隔した2か所間を電気的に導通させる用途や、電気・電子機器やケーブルの電磁波シールド用途等に好適に使用される。特に、様々な環境下での使用や長期間の使用において、抵抗値が上昇することなく、安定な電気伝導性を発揮することが要求される用途、具体的には、例えば、プリント配線基板の接地、電子機器の外装シールドケースの接地、静電気防止用のアース取り、電源装置や電子機器等(例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置、太陽電池など)の内部配線等に使用することができる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0093】
アクリル系ポリマーの製造例
モノマー成分としてアクリル酸n−ブチル(BA)97重量部、アクリル酸(AA)3重量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、および重合溶媒としてトルエン27重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温して10時間反応させ、さらにトルエンを加えて濃度を調整し、固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。前記アクリル系ポリマー溶液におけるアクリル系ポリマーの重量平均分子量は50万であった。
【0094】
粘着剤組成物溶液の調製例
上記で得たアクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」)を固形分換算で2重量部を添加し、これを混合することによって粘着剤組成物溶液を調製した。
【0095】
導電性粘着テープ用タックテープの製造例
シリコーンが塗布された剥離紙に、上記粘着剤組成物溶液を乾燥後の厚さが45μmとなるように塗布し、これを130℃で3分間オーブンで乾燥させた後、得られた粘着剤層表面に錫コート銅箔(錫メッキが施された銅箔、厚み:35μm)を貼り合わせ、続いてこれをロール状に巻き取ることによって、「錫コート銅箔/粘着剤層/剥離紙」の構成を有する導電性粘着テープ用タックテープのロール状巻回体を得た。
【0096】
実施例1
上記で得たロール状巻回体から導電性粘着テープ用タックテープを繰り出し、
図9および
図10に示す形状のピン(c=1.0427mm、d=1.8061mm、e=60°、f=1.2mm、g=0.1mm)が、
図11に示すパターン(h=2.598mm、i=1.5mm)で表面に配置されたオス型ロールと、
図12に示す直径1.6mmφ×深さ1.4mmの円柱状の穴が表面に形成されたメス型ロールとを用い、前記導電性粘着テープ用タックテープの金属箔側がオス型ロールと接触するように前記ロール(オス型ロールおよびメス型ロール)間を通過させて打ち抜き、貫通孔および粘着剤層側の表面に金属箔の突出部(バリ)を形成した。
次いで、剥離紙を剥離し、
図15に示すように、スキージ(材質:鉄(FK4)、先端角度:45°、先端R(先端半径):0.5)を、粘着剤層表面と前記スキージの先端がなす角度(
図15における角度43)が20°となるように、粘着剤層表面と前記スキージの先端が接触するように配置し(即ち、スキージ先端を粘着剤層表面に押し当て)、粘着剤層を1m/分の速度で移動させる(擦る)ことによって、前記突出部を折り返した。
さらに、粘着剤層表面にセパレータを貼り合わせた後、プレスロール間を通過させることにより、セパレータのラミネートを行うと同時に、折り返した突出部と粘着剤層とが平滑となるようにプレス加工を施して、粘着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性粘着テープ(貫通孔を有する導電性粘着テープ)を得た。
【0097】
実施例2
上記で得たロール状巻回体から導電性粘着テープ用タックテープを繰り出し、
図9および
図10に示す形状のピン(c=1.0427mm、d=1.8061mm、e=60°、f=1.2mm、g=0.1mm)が、
図11に示すパターン(h=2.598mm、i=1.5mm)で表面に配置されたオス型ロールと、
図12に示す直径1.6mmφ×深さ1.4mmの円柱状の穴が表面に形成されたメス型ロールとを用い、前記導電性粘着テープ用タックテープの金属箔側がオス型ロールと接触するように前記ロール(オス型ロールおよびメス型ロール)間を通過させて打ち抜き、貫通孔および粘着剤層側の表面に金属箔の突出部(バリ)を形成した。
次いで、剥離紙を剥離し、
図15に示すように、スキージ(材質:鉄(FK4)、先端角度:45°、先端R(先端半径):0.5)を、粘着剤層表面と前記スキージの先端がなす角度(
図15における角度43)が70°となるように、粘着剤層表面と前記スキージの先端が接触するように配置し(即ち、スキージ先端を粘着剤層表面に押し当て)、粘着剤層を1m/分の速度で移動させる(擦る)ことによって、前記突出部を折り返した。
さらに、粘着剤層表面にセパレータを貼り合わせた後、プレスロール間を通過させることにより、セパレータのラミネートを行うと同時に、折り返した突出部と粘着剤層とが平滑となるようにプレス加工を施して、粘着剤層側の表面に端子部(露出した金属部分)を有する導電性粘着テープ(貫通孔を有する導電性粘着テープ)を得た。
【0098】
比較例1
上記で得たロール状巻回体から導電性粘着テープ用タックテープを繰り出し、
図9および
図10に示す形状のピン(c=1.0427mm、d=1.8061mm、e=60°、f=1.2mm、g=0.1mm)が、
図11に示すパターン(h=2.598mm、i=1.5mm)で表面に配置されたオス型ロールと、
図12に示す直径1.6mmφ×深さ1.4mmの円柱状の穴が表面に形成されたメス型ロールとを用い、前記導電性粘着テープ用タックテープの金属箔側がオス型ロールと接触するように前記ロール(オス型ロールおよびメス型ロール)間を通過させて打ち抜き、貫通孔および粘着剤層側の表面に金属箔の突出部(バリ)を形成した。
次いで、粘着剤層表面にセパレータを貼り合わせた後、
図16に示すように、プレスロール間を通過させ、プレス加工により前記突出部を押し潰して端子部を形成し、導電性粘着テープ(貫通孔を有する導電性粘着テープ)を得た。
【0099】
[評価]
実施例及び比較例で得られた導電性粘着テープについて以下の評価を行った。結果は表1に示した。
【0100】
(1)抵抗値(ヒートサイクル試験)
(評価用基板の作製)(
図18参照)
実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを、幅6mm×長さ60mmのサイズに切り出し、セパレータを剥離して導電性粘着テープ片を得た。
銀メッキが施された導体パターン(Cu18μm/Ni3〜7μm/Au0.03μm/Ag5μm)51a〜hが、
図18に示す配置で形成されたガラスエポキシ基板(厚さ:1.6mm)を用い、前記導体パターンへの導電性粘着テープの貼付部分53a〜dのサイズが5mm×6mm(面積:30mm
2)となるように、5kgのローラーを1往復させて、導電性粘着テープ片(52a、52b)を貼付(圧着)した。次いで、前記導体パターン51a〜hに定電流電源(54a、54b)および電位計(55a〜d)を、リード線を用いてはんだ付けによって接続した。
なお、
図18に示す評価用基板における電気回路は、
図1の評価用基板における電気回路を2個配列したものに相当する。
(抵抗評価用サンプルの作製)
図18に示す評価用基板における領域56に、酢酸ビニル含有量28%の熱硬化型EVAフィルム(厚さ:0.6mm)を重ね、さらに上からガラス板(厚さ:3.2mm)を重ねて、「評価用基板/EVAフィルム/ガラス板」の構成を有する積層体を得た。当該積層体を、真空プレス機を使用して、まず150℃の状態でプレスを行わず40秒間真空引きを行い、その後真空引きしたままの状態で150℃にて0.1MPaの圧力で400秒間プレスし(真空引きは引き始めてから400秒間で終了させる)、その後プレス機から前記積層体を取り出して、150℃オーブンで40分間加熱して、EVAを熱硬化させることにより、抵抗評価用サンプルを得た。
(チャンバー内の雰囲気温度設定)
チャンバーとして、商品名「PL−3K」(エスペック(株)製)を用い、チャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)を下記のように設定した。なお、下記条件にて冷却および加熱を繰り返す間、チャンバー内の湿度(相対湿度)については特に制御を行わず、開始時点におけるチャンバー内の相対湿度は50%RHであった。
開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを200回繰り返す設定とした。
図5には、上記設定温度(ヒートサイクル条件)にてチャンバー内の温度を制御した場合の、チャンバー(恒温槽)の槽内温度(雰囲気温度)および導電性粘着テープの表面温度プロファイルの一例を示した。
(抵抗値の測定)
上記抵抗評価用サンプルを、定電流電源(54a、54b)によって2Aの定電流を流した状態(即ち、
図18における貼付部分53a〜dに2Aの定電流を流した状態)で、槽内の雰囲気温度を25℃に調整した上記チャンバー内に入れ、上記ヒートサイクル条件にて冷却および加熱を繰り返した。この間、電位計(55a〜d)によって電圧を連続的に測定し(サンプリング周期:1回/1分)、貼付部分53a〜dの抵抗値(接触抵抗値)を連続的に取得した。これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)および200サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、抵抗値倍率を算出した。表1には、貼付部分53a〜dのそれぞれにおいて測定された、初期抵抗値および抵抗値倍率の平均値(N=4)を示した。また、
図17には、実施例2の導電性粘着テープを用いた場合の抵抗値測定結果の一例を示した。
【0101】
(2)端子部の面積(端子部の総面積、端子部の平均面積)
実施例および比較例で得られた導電性粘着テープを幅5mm×長さ6mmのサイズ(面積:30mm
2)に切り出し、セパレータを剥離して、これを測定サンプルとした。
上記測定サンプルの粘着剤層側の表面を、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、品番「VHX−600」)を用いて、測定倍率200倍(レンズ:VH−Z20)にて端子部の画像(投影面の画像)を観察した。次いで、計測モードにて、前記画像における端子部の領域を指定し、当該領域の面積を計測することによって、端子部の面積を計測した。同様にして、上記測定サンプルに存在する全ての端子部の面積を測定し、これらを合計することによって、粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積を算出した。
また、上記測定サンプルに存在する貫通孔の数を数え、前記で算出した粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積を、前記貫通孔の数で割ることによって、貫通孔1個あたりの端子部の平均面積を算出した。
【0102】
【表1】
【0103】
表1の結果から明らかなように、本発明の導電性粘着テープ(実施例)は、抵抗値倍率が低く、常時安定した電気伝導性を発揮した。一方、端子部の面積(粘着剤層30mm
2あたりに存在する端子部の総面積および貫通孔1個あたりの端子部の平均面積)が小さ過ぎる場合(比較例)には、抵抗値倍率が大きく、安定した電気伝導性を発揮することができなかった。