(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒反応を促進するためには触媒を効率的に加熱することが必要である。触媒が作動適正温度下において維持されることにより、十分な触媒活性(揮発性有機化合物の分解能)を発揮することができる。一方、触媒活性が十分でないと、触媒との接触時間を長くする必要があるため、流路内で反応させる場合には流路長が長くなる。これは、触媒装置の小型化を困難にする原因の一つとなる。例えば特許文献1の装置においても触媒の加熱効率が高いとは言えず小型化に限界がある。また、特許文献2の構成では装置の構成が複雑であるが故に小型化に限界があり、また、製造コストがかかる。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成により効率的に触媒に熱を供給することができ、小型化および低コストを実現することができる触媒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る第一の触媒装置は、気体に含有する揮発性有機化合物を触媒によって分解する触媒装置であって、上記気体が内部を流通する筒状の外壁体と、上記外壁体の上記内部において担持されている上記触媒と、上記筒状の外壁体の長手方向に沿って当該筒状の外壁体の中心部分に延設される、上記筒状の外壁体の内径よりも小さい外径を有する棒状の加熱手段と、上記棒状の加熱手段の表面と、上記筒状の外壁体の内面との間に配置され、当該加熱手段の表面と接触している熱伝導性を有する隔壁であって、上記気体が通過する通過部が設けられている当該隔壁と、を備えており、上記隔壁は、上記筒状の外壁体の長手方向に沿って、互いに離間して複数設けられており、上記触媒は、上記複数の隔壁の少なくとも1つに担持されていることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、簡易な構成により効率的に触媒に熱を供給することができる。そのため、触媒装置を、低コストで実現することができ、且つ、装置の小型化を実現することができる。
【0009】
ここで、一般的に、筒状の構造体の内部を気体が流通する場合、その流速は、筒状の構造体の中心部において最も大きくなり、流通する気体によって奪われる熱量も最も多くなる。一方で、気体に含有される揮発性有機化合物が触媒によって分解される際に発生する熱量も筒状の構造体の中心部において最も大きくなる。そのため、筒状の構造体において触媒の温度をムラなく一定に保つことが難しく、部分的に触媒反応の低下に陥ることがあった。この場合、必要な触媒反応を実現するためには流路の長さを長く、つまり、筒状の構造体の全長を増加する必要があり、装置の大型化が避けられない。
【0010】
しかしながら、本発明に係る触媒装置によれば、触媒の温度のムラを低減し、触媒を効率的に加熱することができる。
【0011】
具体的には、まず、上記のように、棒状の加熱手段を、筒状の外壁体の長手方向に沿って当該筒状の外壁体の中心部分に延設していることから、流速が大きい中心部の温度変動を加熱手段によって抑えることができる。
【0012】
次に、本発明に係る触媒装置によれば、熱伝導性を有した隔壁であって、触媒を担持した隔壁を、上記棒状の加熱手段の表面と、上記筒状の外壁体の内面との間に、加熱手段に接触させて配置している。すなわち、隔壁は、流路において気流を遮るかたちで配置されている。これにより、加熱手段から熱を伝い受けた隔壁によって、筒状の構造体の中心部以外の触媒を効果的に加熱することが可能である。
【0013】
また、隔壁の通過部を通過する気体についても、加熱手段および隔壁から熱を得て、温度上昇するか、あるいは温度低下が抑制されることから、触媒の効率的な加熱に寄与することができる。
【0014】
そして、本発明に係る触媒装置によれば、その隔壁に触媒を担持させていることから、触媒は、気流の流速が最も大きくなる筒状の外壁体の中心部から外れた位置において担持されている。これにより、気流による隔壁の温度変動を効果的に抑えることができる。そして、このように温度変動が効果的に抑えられた隔壁が加熱手段と熱的に結合しており、その隔壁に触媒が担持されていることから、加熱手段から触媒への効果的な熱伝達を実現することができる。
【0015】
これにより、触媒反応が効果的に活性化するため、筒状の外壁体が短くても所望の触媒活性を実現することができる。よって、触媒装置の小型化に寄与することができる。
【0016】
また、本発明に係る触媒装置によれば、隔壁の数を調整することができるため、求める分解性能に応じて容易に内部の部品を組み替えることができる。
【0017】
また、上記のように、筒状の外壁体の長手方向に沿って、互いに離間して複数設けられた隔壁の少なくとも1つに触媒が担持されていることから、触媒を担持する担体を別途配設する必要がなく、装置の軽量化に寄与することができる。
【0018】
また、触媒装置の全体構成として、外壁体と、棒状の加熱手段と、その周囲に配設される隔壁とによって実現することができるため、従来構成に比べて簡素な構成によって効率的な触媒反応を実現することができる。そのため、低コストで装置を実現することができる。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係る第二の触媒装置は、気体に含有する揮発性有機化合物を触媒によって分解する触媒装置であって、上記気体が内部を流通する筒状の外壁体と、上記外壁体の上記内部において担持されている上記触媒と、上記筒状の外壁体の長手方向に沿って当該筒状の外壁体の中心部分に延設される、上記筒状の外壁体の内径よりも小さい外径を有する棒状の加熱手段と、上記棒状の加熱手段の表面と、上記筒状の外壁体の内面との間に配置され、当該加熱手段の表面と接触している熱伝導性を有する隔壁であって、上記気体が通過する通過部が設けられている当該隔壁と、を備えており、上記隔壁は、上記筒状の外壁体の長手方向に沿って、互いに離間して複数設けられており、上記触媒は、上記隔壁と熱的に結合された担体に担持されていることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、簡易な構成により効率的に触媒に熱を供給することができる。そのため、触媒装置を、低コストで実現することができ、且つ、装置の小型化を実現することができる。
【0021】
ここで、一般的に、筒状の構造体の内部を気体が流通する場合、その流速は、筒状の構造体の中心部において最も大きくなり、流通する気体によって奪われる熱量も最も多くなる。一方で、気体に含有される揮発性有機化合物が触媒によって分解される際に発生する熱量も筒状の構造体の中心部において最も大きくなる。そのため、筒状の構造体において触媒の温度をムラなく一定に保つことが難しく、部分的に触媒反応の低下に陥ることがあった。この場合、必要な触媒反応を実現するためには流路の長さを長く、つまり、筒状の構造体の全長を増加する必要があり、装置の大型化が避けられない。
【0022】
しかしながら、本発明に係る触媒装置によれば、触媒の温度のムラを低減し、触媒を効率的に加熱することができる。
【0023】
具体的には、まず、上記のように、棒状の加熱手段を、筒状の外壁体の長手方向に沿って当該筒状の外壁体の中心部分に延設していることから、流速が大きい中心部の温度変動を加熱手段によって抑えることができる。
【0024】
次に、本発明に係る触媒装置によれば、熱伝導性を有した隔壁であって、触媒を担持した隔壁を、上記棒状の加熱手段の表面と、上記筒状の外壁体の内面との間に、加熱手段に接触させて配置している。すなわち、隔壁は、流路において気流を遮るかたちで配置されている。これにより、加熱手段から熱を伝い受けた隔壁によって、筒状の構造体の中心部以外の触媒を効果的に加熱することが可能である。
【0025】
また、隔壁の通過部を通過する気体についても、加熱手段および隔壁から熱を得て、温度上昇するか、あるいは温度低下が抑制されることから、触媒の効率的な加熱に寄与することができる。
【0026】
そして、本発明に係る触媒装置によれば、その隔壁と熱的に結合された担体に触媒を担持させていることから、触媒は、気流の流速が最も大きくなる筒状の外壁体の中心部から外れた位置において担持されている。これにより、気流による隔壁の温度変動を効果的に抑えることができる。そして、このように温度変動が効果的に抑えられた隔壁が加熱手段と熱的に結合しており、その隔壁と熱的に結合された担体を介して、加熱手段から触媒への効果的な熱伝達を実現することができる。
【0027】
これにより、触媒反応が効果的に活性化するため、筒状の外壁体が短くても所望の触媒活性を実現することができる。よって、触媒装置の小型化に寄与することができる。
【0028】
また、本発明に係る触媒装置によれば、隔壁の数、担体の量を調整することができるため、求める分解性能に応じて容易に内部の部品を組み替えることができる。
【0029】
また、触媒装置の全体構成として、外壁体と、棒状の加熱手段と、その周囲に配設される隔壁と、担体とによって実現することができるため、従来構成に比べて簡素な構成によって効率的な触媒反応を実現することができる。そのため、低コストで装置を実現することができる。
【0030】
また、本発明に係る第一および第二の触媒装置の一形態は、上記構成に加えて、上記複数の隔壁は、上記外壁体の上記内部において上記加熱手段を支持する支持手段であることが好ましい。
【0031】
上記の構成によれば、上記複数の隔壁は上記支持手段としても機能することから、加熱手段を支持する部材を別途配設する必要がなく、触媒装置を簡素に実現することができ、低コスト化に寄与することができる。
【0032】
また、本発明に係る第一および第二の触媒装置の一形態は、上記構成に加えて、上記隔壁は、上記加熱手段の周囲を囲んで当該加熱手段を中心軸として放射状に拡がる板部と、上記隔壁における上記加熱手段の表面と接触している部分において、当該加熱手段の表面に沿って延びた、当該加熱手段の周囲を囲む筒部と、を有しており、上記筒部は、上記板部における中心部分が隆起して形成されている部分であることが好ましい。
【0033】
上記の構成によれば、隔壁は、中心部に形成されている筒部に加熱手段を貫通させて加熱手段を保持(支持)することができる。隔壁を弾性変形可能な材料から構成する場合には、筒部の内径を加熱手段の外径よりも小さく設計しておくことにより、筒部に加熱手段を貫通させることにより、筒部が加熱手段を保持しつつ、加熱手段から隔壁への確実な熱伝導を実現することができる。
【0034】
また、本発明に係る第二の触媒装置の一形態は、上記構成に加えて、上記触媒は、上記複数の隔壁の少なくとも1つにも担持されていることが好ましい。
【0035】
上記の構成によれば、加熱手段の熱が伝わる隔壁にも触媒を担持することができるため、触媒反応をより一層効率的に実現することができ、装置の小型化にも寄与することができる。
【0036】
また、本発明に係る第二の触媒装置の一形態は、上記構成に加えて、上記隔壁と上記隔壁との間に上記担体が配設されていることが好ましい。
【0037】
上記の構成によれば、担体が隔壁に挟まれる態様になることから、担体への効率的な熱の供給を実現し、触媒反応を向上させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、簡易な構成により効率的に触媒に熱を供給することができる触媒装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔実施形態1〕
以下に、本発明に係る触媒装置の一実施形態について、
図1〜
図4を用いて説明する。
【0041】
本発明に係る触媒装置は、気体に含有する揮発性有機化合物を触媒によって分解する機能を有しており、この機能を付加したいあらゆる機器、装置に搭載することができる。例えば、内燃機関の排気ガスの浄化装置の一部として、内燃機関を具備する機器に搭載することができる。また、印刷物のインクから揮発する揮発性有機化合物を分解するために印刷装置に搭載することもできる。
【0042】
(1)触媒装置の構成
本実施形態の触媒装置(第一の触媒装置)の構成を、
図1に示す。
図1は、触媒装置の透視図である。触媒装置1は、
図1に示すように、外壁管2(外壁体)と、触媒を担持した複数のバッフル4(隔壁)と、シースヒータ管6(加熱手段)と、ヒータホルダ8と、気体導入部10と、冷却部12とを備えている。
【0043】
外壁管2は、一端側に接続されている気体導入部10から気体を内部に流して、他端側に接続されている冷却部12に流す円筒状の外壁体である。外壁管2の内部に、複数のバッフル4と、シースヒータ管6と、ヒータホルダ8とが配設されている。なお、外壁管2は、気体を流通させる内部空間を提供し、且つ、バッフル4と、シースヒータ管6と、ヒータホルダ8とを収容する内部空間を提供することができれば、その構成は特に限定されない。例えば、外壁管2の外周に断熱層が形成されていてもよい。なお、外壁管2が触媒装置の最外層を構成している必要はない。
【0044】
シースヒータ管6は、外壁管2の導通方向である長手方向に沿って外壁管2の中心部分に延設される、外壁管2の内径よりも小さい外径を有する棒状で円柱状の加熱手段であり、バッフル4に担持された触媒を直接的または間接的に加熱するための加熱手段である。シースヒータ管6自体の構成は特に限定されるものではなく、従来周知のものを使用することができる。
【0045】
なお、シースヒータ管6において、加熱(発熱)温度を局所的に調節することができるのであれば、外壁管2の上流部において発熱量が多くなるように調節されていることが好ましい。上流部にある触媒において熱量が多く必要となるからである。これは、外壁管2の下流部ではVOCの分解によって発生する熱によって触媒の活性状態を維持することができる一方、上流部では当該分解熱が十分に発生していないためである。
【0046】
シースヒータ管6は、ヒータホルダ8によって、外壁管2の内部の所定位置に配設されている。なお、バッフル4もシースヒータ管6を支持する支持手段として機能することから、ヒータホルダ8を設けずにバッフル4のみによってシースヒータ管6を外壁管2の内部の所定位置に配設することも可能である。シースヒータ管6には、外部にある電源に接続された給電線66が接続されており、給電線66は
図1に示すように、気体導入部10の内部を伝って配設される。
【0047】
複数のバッフル4は、外壁管2の管内に配設されており、シースヒータ管6を支持するとともに、シースヒータ管6が発する熱を受け取り、外壁管2の管内の加温、および、バッフル4に担持されている触媒の加熱をおこなう。
【0048】
バッフル4の構造について、
図2を用いて説明する。
図2は、バッフル4の斜視図である。バッフル4は、外壁管2の内径とほぼ同じ大きさか当該内径よりも小さい外径(直径)を有したディスク様の構造物であり、その表側の面が、気体が流れてくる方向(気流の上流)を向いており、裏側の面が、気体が流れていく方向(気体の下流)に向いている。すなわち、バッフル4は、その表裏面が、外壁管2の延伸方向に対して垂直方向に広がっている。換言すれば、バッフル4は、気流を遮るように外壁管2の管内に配設されている。
【0049】
図2に示すように、バッフル4には、その中心部に、表側の面から裏側の面に通じるヒータ保持用貫通部40が設けられており、このヒータ保持用貫通部40にシースヒータ管6を挿入することにより、シースヒータ管6を外壁管2の管内に位置決めし支持することができる。ヒータ保持用貫通部40は、シースヒータ管6を挿入していない状態において、その内径がシースヒータ管6の外径よりも僅かに小さく構成されている。そして、シースヒータ管6を挿入することによって、ヒータ保持用貫通部40が押し広げられてシースヒータ管6の外周に密着した状態で、シースヒータ管6にバッフル4を組み付けることができる。すなわち、バッフル4は弾性変形可能な材料から構成されることが好ましい。バッフル4の直径は、外壁管2の内径と同じである。
【0050】
また、バッフル4は外壁管2の長手方向に沿って複数個配設されていることから、シースヒータ管6を各バッフル4の中心部に貫通させることによって、外壁管2の中心軸に沿ってシースヒータ管6を配設することが可能となる。
【0051】
バッフル4におけるヒータ保持用貫通部40の周囲は、
図2に示すように隆起して円筒形状をなした筒部41を構成している。ヒータ保持用貫通部40にシースヒータ管6を挿入した状態で、この筒部41の内壁はシースヒータ管6の外周面と接触する。これにより、仮に筒部41を設けていないディスク様のバッブルにシースヒータ管を貫通させる構成と比較して、シースヒータ管6との接触面積を大きくとることができ、シースヒータ管6が発する熱を効果的に受け取ることができる。
【0052】
また、この筒部41には、ヒータ保持用貫通部40の周囲に
図2に示すようにスリット43が複数設けられている。各スリット43は、筒部41の突出端部において切り欠いており、シースヒータ管6の延伸方向に沿って延びている。各スリット43は、ヒータ保持用貫通部40にシースヒータ管6が挿入される際の差し込み応力によって弾性変形し、バッフル4の筒部41にシースヒータ管6を確実に支持させることを可能にしている。なお、スリット43の配設数は、
図2に示す四方に各1箇所ずつ設けてもよいが、特に数や箇所に制限はない。
【0053】
筒部41は、バッフル4における中心部を中心軸として放射状に拡がる板部42の中心部を隆起させる、つまり曲げ起こすことによって形成することができる。つまり、例えば1枚の金属板をプレス加工することによって筒部41と板部42とを一体的に形成することができる。金属板としては、耐熱性および伝熱性を有する従来周知の金属を使用することができ、セラミクスよりも安価で加工性の優れた金属材料を使用することも可能である。具体例としては、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、銅などを挙げることができる。
【0054】
なお、バッフル4を構成する材料、より具体的には筒部41を構成する材料が、延性を有していて、シースヒータ管6の挿入によって塑性変形するような材料であれば、必ずしもスリット43を設けなくてもよい。スリットを設けていないバッフルの変形例を
図3に示す。
図3は、
図2と同じくバッフルの斜視図であり、筒部41´にはスリットが設けられていない点で
図2のバッフルと相違する。
【0055】
次に、板部42は、バッフル4が外壁管2の管内に配設された状態において、気流を遮るように外壁管2の延伸方向に垂直に広がる面(上述の表側の面および裏側の面)を有している。
【0056】
この板部42には、
図2に示すように、気体を通過させる通過部としての空気孔44が複数個設けられている。空気孔44は、板部42の表側の面から裏側の面に貫通する貫通孔であり、板部42の全面に渡って散在している。空気孔は、例えばパンチング加工により形成することが可能である。
【0057】
各空気孔44は、
図2に示すように円筒形状を有している。なお、空気孔はこれに限定されるものではなく、例えば、ハニカム形状としてもよい。各空気孔44の直径は、例えば2〜5mm程度とすることができる。
【0058】
また、
図3の変形例に示すように、空気孔44aの形成密度を、中心部分において疎となるように設けてもよい。
図3の態様とすることにより、VOC分解時の温度分布が均一になるようにすることが可能となる。
【0059】
更に別の変形例としては、
図4に示すようなバッフル4の中心軸を中心にして放射状に形成されている楕円形の空気孔44bであってもよく、同じく
図4に示すように板部42の一部を曲げ起こして空気孔44cを設けてもよい。
【0060】
以上の構造を有するバッフル4は、シースヒータ管6によって、少なくとも100℃以上、望ましくは200℃以上600℃以下の温度になるように加熱される。
【0061】
また、このバッフル4は、気体に含有する揮発性有機化合物を分解する触媒を担持している。担持方法としては、特に制限はなく、触媒からなる膜をバッフル4の外面に形成してもよく、あるいは、触媒と他の添加剤とを混合した混合物の膜をバッフル4の外面に形成してもよい。更に別の手法としては、バッフルを構成する材料に触媒を混合して一体成型されていてもよい。上述した膜に関しても、その形成方法の一例として塗布を挙げることができるが、ほかにも含浸法、溶射法などの従来周知の手法を用いることができる。
【0062】
触媒としては、揮発性有機化合物を触媒反応によって分解することができる触媒であれば、採用することが可能であるが、本実施形態の触媒装置は、効率的に触媒を加熱することができることから、触媒のなかでも、プラチナ、パラジウム等の貴金属の他、クロム、ニッケル、鉄、チタン、コバルト、セリウム、銅等の酸化物を好適に使用することができる。これらの触媒を用いた場合、触媒の温度が200℃以上、500℃以下になるように加熱して熱活性することが好ましいため、本実施形態の触媒装置には好適である。
【0063】
なお、担持させる触媒は1種類に限らない。複数種の触媒を担持させてもよい。また、バッフルごとに異なる種類の触媒を担持させてもよい。例えば、揮発性有機化合物の分解時に発生した中間生成物の分解に優れた特性を示す触媒を採用することが考えられる。
【0064】
ここで、揮発性有機化合物とは、常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質であり、例えば、炭化水素系溶剤に含まれるヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、また、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコール、テトラリン、N−メチル−2−ピロリドン及びエチレングリコールモノメチルエーテル等の有機化学物質が挙げられる。ここで、本実施形態の触媒装置を印刷装置に搭載可能であることを先に説明したが、水性インク、溶剤インク、熱硬化型インク、紫外線硬化型インク等のインクにもこれら揮発性有機化合物が含まれており、印刷物を乾燥させる工程等において揮発することが知られている。本実施形態の触媒装置は、バッフル4に担持させた触媒によって、この揮発性有機化合物を分解することが可能である。
【0065】
なお、触媒は、複数のバッフル4のうちの少なくとも1枚に担持されていればよいが、全てのバッフル4に担持されているほうが効率的な触媒反応を実現することができるため好ましい。
【0066】
気体導入部10から、連続的に、外壁管2に導入される揮発性有機化合物を含有する気体は、バッフル4に担持された触媒による触媒反応によって水蒸気、炭酸ガスなどに分解され、冷却部12に至るまでには揮発性有機化合物を含有していないか、揮発性有機化合物の含有率が低下した排気ガスとなる。
【0067】
冷却部12は、外壁管2から排出される気体を冷却するための構成である。外壁管2では、上述のように気体自体が例えば500℃まで加熱されているため、冷却部12ではその高熱ガスを冷却する。冷却方法としては、冷却部12の上流部にある導入口12aから外気(揮発性有機化合物を含有せず、加熱していない比較的冷たい気体)を取り入れて外壁管2からの気体と混合する方法がある。
【0068】
(2)触媒装置の組み立て方法
本実施形態の
図1に示す触媒装置1の組み立て方法としては、(i)触媒を担持したバッフル4を準備する工程と、(ii)シースヒータ管6をバッフル4のヒータ保持用貫通部40に挿入して、各バッフル4がシースヒータ管6の長手方向に沿った所定の箇所に配設されるまでシースヒータ管6を挿し込む工程と、(iii)バッフル4とシースヒータ管6とが一体になった後にヒータホルダ8を組み付ける工程と、(iv)バッフル4とシースヒータ管6とヒータホルダ8とが一体になったものを外壁管2に導入する工程とを含んでいる。ここで上記(ii)においては、
図2に示すバッフル4のヒータ保持用貫通部40の紙面奥側から、シースヒータ管6を紙面手前に向けて挿入することが好ましい。この挿入により、筒部41のスリット43が開いて、筒部41が適当な圧力でシースヒータ管6を支持することができる。
【0069】
そして、バッフル4とシースヒータ管6とヒータホルダ8と外壁管2とが一体となったものを、冷却部12の上流部に連結し、また、気体導入部10に給電線66を通して連結することによって、
図1に示す触媒装置1の組み立てが完了する。
【0070】
(3)変形例
(3−1)変形例[1]
上述した本実施形態では、
図2から
図4に示したように、バッフル4の板部42に空気孔44、44´、44´aを設けた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バッフルを金網から構成し、金線に上述した方法を用いて触媒を担持させてもよい。金網には金線と金線との間に隙間が形成されており、これが先述した空気孔44、44a、44b、44cと同様の役割を果たす。また、金網の中心部にヒータ保持用貫通部を設けることにより、シースヒータ管を貫通させることができ、貫通により、ヒータ保持用貫通部の周囲の金網がシースヒータ管の外周に沿うように変形するため、この部分が先述した筒部41と同様の役割を果たす。
【0071】
(3−2)変形例[2]
上述した本実施形態では、中心部にシースヒータ管挿入孔を設けたディスク状のバッフル4(
図2〜
図4)を用いる態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シースヒータ管を貫通させることができる貫通孔を有し、且つ、当該貫通孔を中心として放射状に拡がる扇型の部分壁を用いて、これを複数個組み合わせて
図2に示す環形のバッフル4を構成してもよい。また、この扇型の部分壁を組み合わせる環状のバッフルの形状を構成する場合に互いの部分壁の間に間隙を設けておくことにより、その間隙を気体が通過する通過部としてもよい。この通過部は、
図2〜
図4に示したバッフルの空気孔にあたるため、部分壁内に空気孔を別途形成する必要はない。
【0072】
〔実施形態2〕
以下に、本発明に係る触媒装置の他の実施形態について、
図5を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の部材については、共通の番号を付し、その説明を省略する。
【0073】
(1)触媒装置の構成
図5は、本実施形態の触媒装置(第二の触媒装置)の一部を示した斜視図である。
図5は、上述の実施形態1の触媒装置1における外壁管2および外壁管2の内部に配設された構成を示している。なお、本実施形態2においても上述の実施形態1で説明した冷却部12および気体導入部10を有しているが、
図5ではこれらの図示を省略する。
【0074】
本実施形態の触媒装置1´と、
図1に示す実施形態1の触媒装置1との相違点は、触媒が担持される箇所にある。具体的には、本実施形態の触媒装置1´では、バッフル4´に触媒を担持させるのではなく、隣り合うバッフル4´の間に担体20を配設し、その担体20に触媒を担持させている。
【0075】
担体20は、中心に貫通孔を有した環状構造を有しており、この貫通孔にシースヒータ管6が貫通する。また、担体20は、多孔質材料から構成されており、その孔を気体が通過する構成となっている。一例としては、担体20は、ポーラスセラミクスなどの多孔質材料を用いることができる。他にも、ポーラスに形成されたシリカ、SiCなどが多孔質材料として用いることができる。
【0076】
なお、一般に多孔質材料と称されるもの以外でも、空気が通過する孔を何らかの方法を用いて設けた部材を、担体20として採用してもよい。
【0077】
担体20は、隣り合うバッフル4´に接して挟持されており、これにより、シースヒータ管6からバッフル4´に伝わった熱が効率的に担体20に伝わり、触媒を作動適正温度にすることができる。すなわち、担体20は、隣り合うバッフル4´と熱的に結合している。同様に、担体20におけるシースヒータ管6からシースヒータ管6の熱を伝え受ける。なお、担体20への触媒の担持方法は、上述の実施形態1において説明したバッフル4への触媒の担持方法と同様である。
【0078】
なお、バッフル4´は、構造上は
図2〜
図4に示すバッフル4と同一である。
【0079】
(2)触媒装置の組み立て方法
本実施形態の触媒装置1´の
図5に示す部分の組み立て方法は、予め担体20に触媒を担持させておき、シースヒータ管6を、バッフル4´と担体20とに交互に挿入した後、これらをヒータホルダ8によって固定して、外壁管2の内部の所定位置に配設することによって組み立てを完了することができる。バッフル4´とシースヒータ管6との組み立て方法は、上述の実施形態1において説明した方法を採用すればよい。
【0080】
(3)変形例
(3−1)変形例[1]
本実施形態では、担体20が多孔質材料によって構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、多孔質材料に代えて、バッフル4´とバッフル4´との間に粒状体を充填して、これを担体20として触媒を担持させてもよい。粒状体としては、炭化ケイ素あるいはシリカなどから構成することができ、例えば粒径を1mm〜5mmとすることができる。この場合、触媒の担持方法としては、粒状体に塗布することによって担持させる方法があるが、これに限定されるものではない。
【0081】
(3−2)変形例[2]
本実施形態では、担体20のみに触媒を担持させているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、担体20およびバッフル4´の双方に触媒を担持させてもよい。バッフル4´に触媒を担持させる構成については上述の実施形態1において説明している。
【0082】
[付記事項]
本発明の一実施形態に係る触媒装置1は、気体に含有する揮発性有機化合物を触媒によって分解する触媒装置であって、気体が内部を流通する筒状の外壁管2と、外壁管2内部において担持されている触媒と、外壁管2の長手方向に沿って外壁管2の中心部分に延設される、筒状の外壁管2の内径よりも小さい外径を有する棒状のシースヒータ管6と、棒状のシースヒータ管6の表面と、筒状の外壁管2の内面との間に配置され、当該シースヒータ管6の表面と接触している熱伝導性を有するバッフル4であって、上記気体が通過する空気孔44が設けられているバッフル4と、を備えており、バッフル4は、上記筒状の外壁管2の長手方向に沿って、互いに離間して複数設けられており、上記触媒は、複数のバッフル4の少なくとも1つに担持されている。
【0083】
上記の構成によれば、簡易な構成により効率的に触媒に熱を供給することができる。そのため、触媒装置1を、低コストで実現することができ、且つ、触媒装置1の小型化を実現することができる。
【0084】
ここで、一般的には、筒状の構造体の内部を気体が流通する場合、その流速は、筒状の構造体の中心部において最も大きくなる。そのため、仮に触媒をその中心部に配置したならば、触媒から奪われる熱量が多くなって触媒反応の低下に陥り、よって、必要な触媒反応を実現するために筒状の構造体の全長の増加に迫られる。
【0085】
しかしながら、本発明の一実施形態に係る触媒装置1によれば、筒状の外壁管2の長手方向に沿って当該筒状の外壁管2の中心部分に棒状のシースヒータ管6を延設し、このシースヒータ管6と外壁管2の内面との間に配置した、外壁管2の内部を複数の空間に隔てるバッフル4に触媒を担持させている。バッフル4は、熱伝導性を有し、且つ、シースヒータ管6と接触していることから、シースヒータ管6が発熱すると、その熱を得て温度上昇することができる。本発明は、このようなバッフル4に触媒を担持させている。そのため、触媒の温度低下を抑え、触媒反応の低下を抑えることができる。これにより、所望の触媒反応を実現するために筒状の外壁管2の全長を増加させる必要はなく、触媒装置1の小型化に寄与することができる。
【0086】
また、このバッフル4をシースヒータ管6に接触させていることから、バッフル4を介してシースヒータ管6から触媒へ熱を効果的に伝達することができる。更に、バッフル4の空気孔44を通過する気体は、バッフル4およびシースヒータ管6から熱を得て、温度上昇するか、あるいは温度低下が抑制される。これにより、バッフル4に担持された触媒への気体の熱の伝達が実現され、触媒が効率よく加熱される。
【0087】
また、上記のように、筒状の外壁管2の長手方向に沿って、互いに離間して複数設けられたバッフル4の少なくとも1つに触媒が担持されていることから、触媒を担持する担体を別途配設する必要がなく、触媒装置1の軽量化に寄与することができる。
【0088】
また、触媒装置1の全体構成として、外壁管2と、棒状のシースヒータ管6と、その周囲に配設されるバッフル4とによって実現することができるため、従来構成に比べて簡素な構成によって効率的な触媒反応を実現することができる。そのため、低コストで触媒装置1を実現することができる。
【0089】
また、本発明に係る他の実施形態に係る触媒装置1´は、気体に含有する揮発性有機化合物を触媒によって分解する触媒装置1´であって、上記気体が内部を流通する筒状の外壁管2と、上記外壁管2内部において担持されている上記触媒と、筒状の外壁管2の長手方向に沿って当該筒状の外壁管2の中心部分に延設される、上記筒状の外壁管2の内径よりも小さい外径を有する棒状のシースヒータ管6と、上記棒状のシースヒータ管6の表面と、上記筒状の外壁管2の内面との間に配置され、当該シースヒータ管6の表面と接触している熱伝導性を有するバッフル4´であって、上記気体が通過する空気孔44が設けられている当該バッフル4´と、を備えており、上記バッフル4´は、上記筒状の外壁管2の長手方向に沿って、互いに離間して複数設けられており、上記触媒は、上記バッフル4´と熱的に結合された担体20に担持されていることが好ましい。
【0090】
上記の構成によれば、簡易な構成により効率的に触媒に熱を供給することができる。そのため、触媒装置1´を、低コストで実現することができ、且つ、触媒装置1´の小型化を実現することができる。
【0091】
ここで、一般的には、筒状の構造体の内部を気体が流通する場合、その流速は、筒状の構造体の中心部において最も大きくなる。そのため、仮に触媒をその中心部に配置したならば、触媒から奪われる熱量が多くなって触媒反応の低下に陥り、よって、必要な触媒反応を実現するために筒状の構造体の全長の増加に迫られる。
【0092】
しかしながら、本発明の他の実施形態に係る触媒装置1´によれば、筒状の外壁管2の長手方向に沿って当該筒状の外壁管2の中心部分に棒状のシースヒータ管6を延設し、このシースヒータ管6に接触しているバッフル4´から担体20の触媒に熱が伝わる構成となっている。そのため、触媒の温度低下を抑え、触媒反応の低下を抑えることができる。これにより、所望の触媒反応を実現するために筒状の外壁管2の全長を増加させる必要はなく、触媒装置1´の小型化に寄与することができる。
【0093】
更に、バッフル4´の空気孔44を通過する気体は、バッフル4´およびシースヒータ管6から熱を得て、温度上昇するか、あるいは温度低下が抑制される。これにより、担体20に担持された触媒への気体の熱の伝達が実現され、触媒が効率よく加熱される。
【0094】
また、触媒装置1´の全体構成として、外壁管2と、棒状のシースヒータ管6と、その周囲に配設されるバッフル4´と、担体20とによって実現することができるため、従来構成に比べて簡素な構成によって効率的な触媒反応を実現することができる。そのため、低コストで装置を実現することができる。
【0095】
また、本発明に係る一形態の触媒装置1,1´は、上記構成に加えて、上記複数のバッフル4,4´は、上記外壁管2の内部においてシースヒータ管6を支持する支持手段であることが好ましい。
【0096】
上記の構成によれば、上記複数のバッフル4,4´は上記支持手段としても機能することから、シースヒータ管6を支持する部材を別途配設する必要がなく、触媒装置を簡素に実現することができ、コスト抑制に寄与することができる。
【0097】
また、本発明に係る一形態の触媒装置1,1´は、上記構成に加えて、上記バッフル4,4´は、シースヒータ管6の周囲を囲んで当該シースヒータ管6を中心軸として放射状に拡がる板部42と、バッフル4,4´におけるシースヒータ管6の表面と接触している部分において、シースヒータ管6の表面に沿って延びた、シースヒータ管6の周囲を囲む筒部41と、を有しており、筒部41は、板部42における中心部分が隆起して形成されている部分であることが好ましい。
【0098】
上記の構成によれば、バッフル4,4´は、中心部に形成されている筒部41にシースヒータ管6を貫通させてシースヒータ管6を保持(支持)することができる。バッフル4,4´を弾性変形可能な材料から構成する場合には、筒部41の内径をシースヒータ管6の外径よりも小さく設計しておくことにより、筒部41にシースヒータ管6を貫通させることにより、筒部41がシースヒータ管6を保持しつつ、シースヒータ管6からバッフル4,4´への確実な熱伝導を実現することができる。
【0099】
また、本発明に係る一形態の触媒装置1´は、上記構成に加えて、上記触媒は、上記複数のバッフル4´の少なくとも1つにも担持されていてもよい。
【0100】
上記の構成によれば、シースヒータ管6の熱が伝わるバッフル4´にも触媒を担持することができるため、触媒反応をより一層効率的に実現することができ、触媒装置1´の小型化にも寄与することができる。
【0101】
また、本発明に係る一形態の触媒装置1´は、上記構成に加えて、上記バッフル4´と上記バッフル4´との間に上記担体20が配設されていることが好ましい。
【0102】
上記の構成によれば、担体20が隔壁に挟まれる態様になることから、担体20への効率的な熱の供給を実現し、触媒反応を向上させることができる。
【0103】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。