特許第6061722号(P6061722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061722
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】壁紙糊付機
(51)【国際特許分類】
   B44C 7/04 20060101AFI20170106BHJP
   B05C 1/08 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B44C7/04
   B05C1/08
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-31665(P2013-31665)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-159148(P2014-159148A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591012738
【氏名又は名称】ヤヨイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】宮木 完志
(72)【発明者】
【氏名】新川 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】前川 賢一
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−284982(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3035899(JP,U)
【文献】 特開2001−062365(JP,A)
【文献】 特開2003−334482(JP,A)
【文献】 特開平11−348500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 7/04
B05C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより連動して回転駆動される複数のローラの内、シート状壁装材を表裏面よりピンチする一対のピンチローラにより本体後面より所定の経路に沿って移動させつつ、同じく回転駆動される糊上げローラによって糊付けローラに塗布された糊桶内の糊液をドクターローラとの隙間分の糊厚に絞られた後に前記壁装材の裏面に連続的に塗布して、本体前面に排出する壁紙糊付機において、
前記糊上げローラには、該ローラのローラ周面から外方へ突設された複数のフィンを備え、
前記糊上げローラと糊付けローラとが、前記複数のフィンの先端が糊付けローラの周面に接触しない隙間距離となるように離されていることを特徴とする壁紙糊付機。
【請求項2】
前記糊上げローラの複数のフィンが、ローラ軸方向に平行にローラ周面に均等角度に配されていることを特徴とする請求項1に記載の壁紙糊付機。
【請求項3】
前記糊上げローラの複数のフィンが、ローラ周面に6本配されていることを特徴とする請求項2に記載の壁紙糊付機。
【請求項4】
前記ドクターローラの回転が、糊付けローラの回転の周速よりも遅いことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の壁紙糊付機。
【請求項5】
前記ドクターローラの回転が、糊付けローラの回転の周速よりも6割遅いことを特徴とする請求項4に記載の壁紙糊付機。
【請求項6】
前記ドクターローラの一端に配されたギアとして、糊付けローラの回転を下ピンチローラのギアに伝達するフリー回転ギアと、糊付けローラの回転の周速を遅くしてドクターローラを回転させる回転ギアとの2系統のギアを備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載の壁紙糊付機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内壁面等に貼付されるシート状壁装材の裏面に連続的に糊を塗布する壁紙糊付機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、建築物の内装施工における壁装材の室内壁面への貼付は、内装作業現場で専用の壁紙糊付機を用いてシート状の壁装材に連続的に糊を塗布しながら行うのが一般的となっている。この壁紙糊付機の一般的な構成としては、内部に複数のローラが配置された上部構体及び下部構体から主に構成される糊付機本体を脚部に支持された台座上に載置し、上下構体の間に挟み込んだシート状壁装材(以下、クロスとも記す)をローラで搬送しながら糊タンク内に軸支されている糊掻上げローラで糊タンクから糊をすくい上げて糊付けローラに転写し、この糊付けローラによりクロス裏面に塗付するものである。
【0003】
壁紙糊付機には作業者がクロスを引き出す手動式と、モータで糊付けローラ等を駆動してクロスを引き出す自動式がある。具体的な構成の一例としては、下部構体上に原反ロールから繰り出したクロスを先端部が本体前面に垂れる状態で載置して上部構体を閉じ、下部構体及び上部構体の所定ローラ間にクロスを挟み込んだ状態としておく。手動式装置ではクロス先端を作業者が手で持って前方へ引っ張ることによりローラの一部を追従回転させると共に他のローラをギアを介して連動回転させる。
【0004】
自動式装置では所定のローラの軸を電動モータ等の駆動源に連結して回転させることによって他のローラもギアを介して連動回転するものが一般的である。何れの糊付機もローラの回転でクロスを糊付機本体の後面から前面側へ搬送させる途中で糊タンク内から引き上げられて転写された糊を、糊付けローラの頂点近傍にて該ローラからクロス裏面に糊が転写され、糊塗布済み状態でクロスが前面から送り出されてくるという構成である。
【0005】
従来の壁紙糊付機においては、高機能でありながら、軽量化・コンパクト化を達成するため、複数のローラのローラ部有効幅長さを従来の糊付機よりも短くし、尚且つ、スリッター部が糊付機本体から飛び出すのを抑えるため、糊付機本体後面に本体幅方向に形成された凹状の装着開口部を備え、この凹状の装着開口部にスリッター部の前方部が陥入して取付け可能な形状とした糊付機も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
壁紙糊付機においては、糊付けされるクロスは、その後ドライブローラと均しローラとによって張力を与えられた状態で牽引され、均しローラによる糊面の均しが行われ、裏面に糊付けされたクロスが本体前面に送り出されてくる。作業者によってクロスの糊付された裏面側を上向きにしつつ、クロスの先端部をU字状に曲折させてクロス受け板の上部領域に載置する。これにより、以降のクロスはクロス受け板上への排出に伴い、折り畳まれながら積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−10241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、壁紙糊付機において用いる糊液は、市販の濃度の高い糊液を希釈したり、粉末状の糊を水で希釈して糊液調整を行うのが主流であるが、水道設備がない又は水道設備が未だ開設されていない現場もある。このため、最近の内装工事現場においては、現場での希釈作業等の糊液調整工程を省略するため、予め糊付け可能な濃度にした糊液を用いて糊付けをすることがあり、希釈しないでも使用可能な糊液が既に市販されている。
【0009】
この場合、糊付け可能な濃度にした糊液についても均一にクロスに塗布することが求められている。しかしながら、市販されている糊液は、長期間、静置状態で放置されているため、「締まった状態」であり、同じ濃度の糊液を混合装置等で作成した直後の糊液と比べて、流動性が低い。
【0010】
流動性が低い糊液では、糊付けスピードをある程度速く設定すると、糊付けローラに糊液が部分的に帯状に多く付く部分が発生し、これを転写されたクロスの塗布糊層の厚みが相違した帯状となる現象が生じることがあった。この帯状に多く付く部分が発生した原因としては、次の現象による結果であると推察された。
【0011】
即ち、糊上げローラと糊付けローラとの隙間である程度まで絞られた糊は糊付けローラに転写され、糊付けローラの回転に伴いドクターローラで付着された糊液を均一の厚さに調整される。その際には、糊付けローラとドクターローラとを均等な隙間で配置し、この隙間分を通過しない糊液が糊桶に戻される。
【0012】
糊付けローラと糊上げローラとの隙間が大きい場合、糊付けローラに転写された糊が多いため、ドクターローラとの隙間で通過しない糊液は自重により糊桶に滝状に落ちる。しかし、糊上げローラと糊付けローラとの隙間が小さい場合、糊付けローラとドクターローラとの隙間で通過しない糊液が少ないため、糊液が全体的に糊付けローラ面に均一な滝状に落ちず、部分的に糊付けローラ面を伝って下方に落ちようとする。
【0013】
しかしながら、糊付けローラの高速な回転により再び糊付けローラ面を落下しようとする糊液がドクターローラと糊付けローラとの隙間に到着し、糊付けローラとドクターローラとの隙間には糊液が多く溜った部分が発生し、流動性が低い糊は糊付けローラとドクターローラとの回転により隙間へ押し出す力が発生し、部分的に糊付けローラに多く付いた糊の付着部分が発生し、パテ施工時のふくれ塗りのような畝状の糊液が多く付く部分が発生したものと推察された。
【0014】
糊液は濃度の濃い糊液だけを使用するのではなく、例えば、加工紙のように再剥離性の必要のある壁装材では、濃度の薄い糊液を塗布する必要がある。濃度の薄い糊液を使用するためには、糊付けローラと糊上げローラとの隙間を小さくしないと糊付けローラに糊液を転写できない。
【0015】
本発明は、濃い糊液でも薄い糊液でも使用することができ、濃い糊液を薄い糊厚で塗布する場合でも転写された塗布糊層の厚みが不均一となる現象が生じない壁紙糊付機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載された発明に係る壁紙糊付機は、モータにより連動して回転駆動される複数のローラの内、シート状壁装材を表裏面よりピンチする一対のピンチローラにより本体後面より所定の経路に沿って移動させつつ、同じく回転駆動される糊上げローラによって糊付けローラに塗布された糊桶内の糊液をドクターローラとの隙間分の糊厚に絞られた後に前記壁装材の裏面に連続的に塗布して、本体前面に排出する壁紙糊付機において、
前記糊上げローラには、該ローラのローラ周面から外方へ突設された複数のフィンを備え、
前記糊上げローラと糊付けローラとが、前記複数のフィンの先端が糊付けローラの周面に接触しない隙間距離となるように離されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2に記載された発明に係る壁紙糊付機は、請求項1に記載の糊上げローラの複数のフィンが、ローラ軸方向に平行にローラ周面に均等角度に配されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3に記載された発明に係る壁紙糊付機は、請求項2に記載の糊上げローラの複数のフィンが、ローラ周面に6本配されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4に記載された発明に係る壁紙糊付機は、請求項1〜3の何れかに記載のドクターローラの回転が、糊付けローラの回転の周速よりも遅いことを特徴とするものである。
【0020】
請求項5に記載された発明に係る壁紙糊付機は、請求項4に記載のドクターローラの回転が、糊付けローラの回転の周速よりも6割遅いことを特徴とするものである。
【0021】
請求項6に記載された発明に係る壁紙糊付機は、請求項4又は5に記載のドクターローラの一端に配されたギアとして、糊付けローラの回転を下ピンチローラのギアに伝達するフリー回転ギアと、糊付けローラの回転の周速を遅くしてドクターローラを回転させる回転ギアとの2系統のギアを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、濃い糊液でも薄い糊液でも使用することができ、濃い糊液を薄い糊厚で塗布する場合でも転写された塗布糊層の厚みが不均一となる現象が生じない壁紙糊付機を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の壁紙糊付機の一実施例の構成を示す斜視図である。
図2図1の壁紙糊付機の側面図である。
図3図1の壁紙糊付機の側方断面図である。
図4図1の壁紙糊付機の下部構体のギアの状態を示す側方図である。
図5図4の下部構体のギアの状態を示す斜視図である。
図6図1の壁紙糊付機の糊上げローラの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明においては、モータにより連動して回転駆動される複数のローラの内、シート状壁装材を表裏面よりピンチする一対のピンチローラにより本体後面より所定の経路に沿って移動させつつ、同じく回転駆動される糊上げローラによって糊付けローラに塗布された糊桶内の糊液をドクターローラとの隙間分の糊厚に絞られた後に前記壁装材の裏面に連続的に塗布して、本体前面に排出する壁紙糊付機において、前記糊上げローラには、該ローラのローラ周面から外方へ突設された複数のフィンが形成され、前記糊上げローラと糊付けローラとが、前記複数のフィンの先端が糊付けローラの周面に接触しない隙間距離となるように離されている。これにより、濃い糊液でも薄い糊液でも使用することができ、濃い糊液を薄い糊厚で塗布する場合でも転写された塗布糊層の厚みが不均一となる現象が生じない。
【0025】
具体的には、前述の通り、パテ施工時のふくれ塗りのような畝(うね)状の糊液が多く付く部分が発生する現象は、濃度の濃い糊液を高速で糊付けローラに付着する場合に、糊付けローラとドクターローラとの隙間で通過しない糊液が少ないため、糊液が全体に糊付けローラのドクターローラの手前面に均一な滝状に落ちず、部分的に糊付けローラを伝って糊桶に落ちようとする。しかしながら、糊付けローラの高速な回転により再びドクターローラと糊付けローラとの隙間に到着し、糊付けローラとドクターローラとの隙間には糊液が多く溜った部分が発生し、流動性が低い糊は糊付けローラとドクターローラとの回転により隙間へ押し出す力が発生し、部分的に糊付けローラに多く付いた糊の付着部分が発生したからであると推察された。
【0026】
そこで、糊付状態の改善に糊付けローラに付着させる糊液量を増やし、糊付けローラとドクターローラとの隙間を通過しない糊液を増やし、糊付けローラのドクターローラの手前面に均一な滝状に落とすようにした。このため、糊上げローラと糊付けローラの隙間距離を従来の隙間距離よりも大きくして、ドクターローラとの隙間に入る手前の糊付けローラ面に多くの糊液を付着させるようにした。
【0027】
好ましい糊上げローラと糊付けローラとの隙間距離としては、糊液の濃度にもよるが、その隙間距離を大きくすると大量の糊液を糊付けローラに供給できる。例えば、0.5mm〜2mm程度、より好ましくは1.5mm程度確保すればよい。しかしながら、この1.5mmの隙間距離では従来よりも糊上げローラと糊付けローラとの隙間距離が大きくなり、多くの糊液を供給することができるが、加工紙などの濃度の薄い糊液を使用する場合に、糊付けローラに付着させた糊液量を多くすることができない。このため、糊上げローラの形状を円筒形ではなく、異形状にし、隙間距離の大きい部分と隙間距離の小さい部分を作って、濃度の薄い糊でも糊付けローラに糊を上げることができるようにする。
【0028】
具体的な例としては、糊上げローラには、該ローラのローラ周面から外方へ突設された複数のフィンが形成され、前記糊上げローラと糊付けローラとが、前記複数のフィンの先端が糊付けローラの周面に接触しない隙間距離となるように離されているようにするため、糊付けローラに付着させる糊液量を増やし、糊付けローラとドクターローラとの隙間を通過しない糊液を増やし、糊付けローラ面のに均一な滝状に落とすようにした。
【0029】
具体的には、フィンの高さを1mmとして、糊付けローラとの隙間を0.5mm程度になる部分を作って薄い糊でも糊付けローラに糊を上げる事ができるようにすればよい。また、具体的なフィンの構成は、複数のフィンを、糊上げローラのローラ軸方向に平行にそのローラ周面に均等角度に配されれば良い。より具体的には、糊上げローラの複数のフィンが、ローラ周面に6本配されていれば通常の薄い糊液でも十分に対応可能であり、更により薄い糊液でも対応を可能とするのであれば、6本以上とすればよい。
【0030】
更に別の発明においては、ドクターローラの回転が、糊付けローラの回転の周速よりも遅くすることにより、糊付けローラを伝って落ちた糊液が再びドクターローラと糊付けローラの隙間に到着してもパテ施工時のふくれ塗りのような畝状の糊厚の不均一な状態を起こり難くすることができる。
【0031】
具体的な周速としては、ドクターローラの回転が、糊付けローラの回転の周速よりも6割程度遅くすることで、畝状の糊厚の不均一な状態を起こり難くすることが確認された。
【0032】
一般的な壁紙糊付機は糊付けローラの駆動に連動して他のローラを回転駆動するため、周速をドクターローラのみ遅くするためには、一例としては今のドクターローラのギアを2系統に分け、1つの系統のギアはフリー回転ギアとし、従来の糊付機のように糊付けローラの回転を下ピンチローラのギアを回転させる系統とする。
【0033】
もう1つの系統のギアは、ドクターローラを回動させるギアであり、このギアは糊付けローラの回転の周速をほぼ6割としたギア比とすればよい。
【実施例】
【0034】
1.全体構成
図1は本発明の壁紙糊付機の一実施例の構成を示す斜視図である。図2図1の壁紙糊付機の側面図である。図3図1の壁紙糊付機の側方断面図である。図1及び2に示す通り、本実施例の壁紙糊付機は、糊付機本体1と、この糊付機本体1を載置する台座部15と、糊付機本体1を所定高さで支持するために台座部15の左右両端下部にそれぞれ前後に二本一対で配される前脚21と後脚22とで構成される脚部2とを備える。また、本体1と台座部15とは、糊付機本体1の両側壁下方の2箇所のフックに各々掛止されるパチン錠16で固定される。
【0035】
台座部15と一対の脚部2とには、左右の脚部2同士が対向するように折りたたみ可能な折りたたみ機構が備わっており、台座部15と脚部2との折りたたみ部位にはカバー23が形成されている。尚、このカバー23の最下部は折りたたみ時に接地する接地部24が形成されている。
【0036】
図3に示す通り、糊付機本体1は、糊桶5を主とする下部構体3とその上に開閉可能に載置される上部構体4とによって構成される。下部構体3の一方の側板11にはコントローラ6が装着され、下部構体3の後面側には着脱可能なスリッター7が配され、上部構体4はこの下部構体3の上部を覆うように配されている。上部構体4と下部構体3とは糊付機本体1の一対の側板11の後方に配された構体パチン錠12の開錠で開放され、側板11の前方に配されたヒンジ(図示せず)で後方側が開閉可能となっている。
【0037】
コントローラ6内の駆動源(図示せず)の駆動軸による糊付けローラ31の回転に伴って、ギアを介して回転運動が伝達された他のローラも回転し、上下部構体3,4間に挟み込まれている原反ロールRから一端が解けたクロスCを後方から前方へ搬送し、その途中で糊付けローラ31上を搬送される際に糊桶5から引き上げられた糊がクロス裏面に転写塗布される。
【0038】
この糊付けローラ31は、下部構体3の左右両側壁面の軸支板に軸支され、できるだけ糊桶5内に沈む下方位置の配置となるように構成されている。また、糊桶5内の糊は糊付けローラ31に当接する糊上げローラ51によって糊液の転写が行われ、糊上げローラ51は糊桶5の両側側面に中心より後面側寄りの位置で軸支され、糊桶5内の糊を回転によって掻き上げて糊付けローラ31に転写する。
【0039】
糊付けローラ31は、糊付機本体1に着脱自在に取付けられる駆動源である電動モータを備えたコントローラ6の駆動軸にギアで連結されている。糊付けローラ31の回転軸は、下部構体3に配置される下ピンチローラ32、ドクターローラ33、均しローラ34及び上部構体4に配置されるドライブローラ43のうちの所定ローラの回転軸とギアを介して連動される。
【0040】
均しローラ34には、図3に示す通り、均しローラ34を介して送られて来る糊付済みのクロスCを糊付機本体1の前面に案内するための複数個のツメ53が長手方向にほぼ均等間隔に装着されたツメステー54が、両端に配された装着具(図示せず)を介して取付けられている。
【0041】
尚、壁紙糊付機の両側部には、ドクターローラ33の回動軸に偏心して固定された偏心ギアを駆動するレバー39を備え、このレバー39により偏心ギアによって保持されたドクターローラ33の軸端が糊付けローラ31と相対移動され、ドクターローラ33と糊付けローラ31との相対間隔が変化して、糊付けローラ31に付着する糊量を調整できるようになっている。
【0042】
左右一対の脚部2には、クロス受けブラケット26が回動自在に配されており、クロス受けブラケット26の先端部には、原反ロールRの中心に通されたクロス芯棒27が軸支されている。
【0043】
図2に示す通り、原反ロールRから繰り出される壁装材(クロス)Cは、一対の後脚22のカバー23の接地部24裏面位置に横架された脚部テンションバー25に当接して引き込み荷重が与えられる。更に、スリッター7の下方に設置された第1テンションバー61と第2テンションバー62とを備えたテンションバー群63で曲折されながら更に引き込み荷重が与えられ、スリッター7に搬送され、クロスの両側部が切断される。
【0044】
2.下部構体ギア
図4図1の壁紙糊付機の下部構体のギアの状態を示す側方図である。図5図4の下部構体のギアの状態を示す斜視図である。図1のコントローラ6内の駆動源(図示せず)の駆動軸のギアと糊付けローラ31のギアの噛み合い駆動によって糊付けローラ31が駆動され、図4のコントローラ側でない側の糊付けローラ31の回動軸の端部に固定されたギア31g1が回動する。図5に示す通り、糊付けローラギア31g1は大小の2段のギアであり、各々ドクターローラ33の駆動軸に固定された2つのギア33g1、33g2に各々連結される。
【0045】
ドクターローラ33の2つのギア33g1、33g2のうち、糊付けローラギア31g1の大きいギアに歯合されているギア33g1は、ドクターローラ33の駆動軸にギア33g2の固定用ボスを介して固定されたフリー回転ギアであり、糊付けローラの駆動を下ピンチローラ32に伝達するための下ピンチローラギア32gと、スリッター7の回転刃を回転駆動するためのスリッター回転軸に回転を伝達するための連結ギア群7g1、7g2とに各々歯合されている。
【0046】
ドクターローラ33の2つのギア33g1、33g2のうち、糊付けローラギア31g1の小さいギアに歯合されているギア33g2は、ドクターローラ33の駆動軸を回動させる。このドクターローラ33のギア33g2は糊付けローラ31の回転の周速よりも6割程度遅くするように糊付けローラギア31g1の小さいギアと、ギア33g2とが歯合されている。
【0047】
以上のように、ドクターローラのギアを2つの系統に分け、1つの系統のギアはフリー回転ギアとし、従来の糊付機と同様に糊付けローラの回転を下ピンチローラのギアに伝達する系統とし、もう1つの系統のギアにより、糊付けローラの回転の周速をほぼ6割としたギア比としてドクターローラを回動させるギアとすることにより、ドクターローラを糊付けローラよりも遅く回動させることにより、畝状の糊厚の不均一な状態となってもドクターローラによって均一に掻き取ることができるため、不均一な状態が解消される効果を奏する。具体的には、糊液の粘度を90000CPSに上げる迄は、糊の付きの良くない部分が発生しなかった。
【0048】
3.糊上げローラ
図6図1の壁紙糊付機の糊上げローラの構成を示す斜視図である。図5及び図6に示す通り、糊桶5の内部に配置された糊上げローラ51の周面には、外方へ突設された6数のフィン52が均等な角度間隔に、各々ローラ幅全長に亘って形成されている。従来の壁紙糊付機では糊上げローラは円筒形であり、糊付けローラとの隙間は一定の隙間で回動し、糊桶5内部の糊液を糊付けローラに転写させていた。
【0049】
しかしながら、本実施例の糊上げローラ51のローラ面は、糊付けローラ31のローラ面とは、1.5mmの隙間距離としている。この隙間距離では濃度が濃く、粘性の高い糊液は糊付けローラ31に供給できるが、濃度の薄い糊液では糊上げローラ51に付着した糊液の膜厚自体が薄くなり、糊付けローラ31に糊液の膜が接触しない。
【0050】
そのため、フィン52によって糊上げローラ51に付着した糊液が、回動されて糊付けローラ位置まで上昇した際に、糊上げローラの下方に移動することを阻止するようにした。このフィン52によって糊上げローラ51に付着した糊液の膜厚が薄くなることを阻害し、糊付けローラ31に濃度の薄い糊液でも糊液を供給することができる。
【0051】
このフィン52の枚数は本実施例では6枚としたが、より濃度の薄い糊液を使用することが想定されている場合には、この枚数を増やせばよく、濃度の薄い糊液を想定しなければ、その枚数を減らしても良い。また、フィン52の高さについては、糊上げローラ51と糊付けローラ31との隙間距離に応じて決定されればよい。
【0052】
本実施例では糊上げローラ51と糊付けローラ31との隙間距離が1.5mmとしたために、フィンの先端が糊付けローラの周面に接触しない隙間距離となるように、フィンの高さを1mmとして、最短でも0.5mmの隙間距離を確保している。
【0053】
尚、糊付けローラ31の回動に伴って糊上げローラ51を回動させるため、ギアで連結している。図5に示す通り、糊付けローラ51の端縁部に糊付けローラギア31g2が配設されている。このギア31g2に連結するように糊上げローラ51の端縁部に糊上げローラギア51gが配設されている。
【0054】
このように、高い濃度の糊液を糊上げローラ51と糊付けローラ31との隙間距離が1.5mmとした場合には、多くの糊液を糊付けローラに付着させることができ、これをドクターローラで絞り込むことができるため、転写された塗布糊層の厚みが不均一となる現象が解消される。また、糊上げローラにフィンを備えるため、濃度の薄い糊液でも良好に糊付けローラに糊液を供給することができる。
【符号の説明】
【0055】
R …原反ロール、
C …クロス、
1 …糊付機本体、
11 …側板、
12 …構体パチン錠、
15 …台座部、
16 …パチン錠、
2 …脚部、
21 …前脚、
22 …後脚、
23 …カバー、
24 …接地部、
25 …脚部テンションバー、
26 …クロス受けブラケット、
27 …クロス芯棒、
3 …下部構体、
31 …糊付けローラ、
31g1…糊付けローラギア、
31g2…糊付けローラギア、
32 …下ピンチローラ、
32g …下ピンチローラギア、
33 …ドクターローラ、
33g1…ドクターローラギア(フリー)、
33g2…ドクターローラギア、
34 …均しローラ、
39 …レバー、
4 …上部構体、
41 …上ピンチローラ(検尺ローラ)
42 …押さえローラ、
43 …ドライブローラ、
5 …糊桶、
51 …糊上げローラ、
51g …糊上げローラ、
52 …フィン、
53 …ツメ、
54 …ツメステー、
6 …コントローラ、
61 …第1テンションバー、
62 …第2テンションバー、
63 …テンションバー群、
7 …スリッター、
7g1…連結ギア、
7g2…連結ギア、
図1
図2
図3
図4
図5
図6