【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
[繊維マトリクス1の作製]
以下の短繊維の構成で、湿式法により目付量12g/m
2の繊維マトリクスを作製した。この時の乾燥温度は130℃であった。
【0031】
延伸PET繊維(0.06dtex、3mm) 40質量部
延伸PET繊維(0.1dtex、3mm) 35質量部
未延伸PET繊維(0.2dtex、3mm) 25質量部
【0032】
次に、200℃で熱カレンダー処理を施し、厚み17μmの繊維マトリクス1を作製した。次に、繊維マトリクス1にポリオレフィンラテックス(ユニチカ製、アローベース(登録商標)SE−1205J2)を、固形分で1.0g/m
2塗工して、105℃で熱処理を施し、繊維マトリクス1をポリオレフィン膜層で被覆した。
【0033】
以下の構成の塗液1を作製した。
【0034】
α−アルミナ微粒子(住友化学製、商品名:AA07) 100質量部
ピロリン酸ナトリウム 0.1質量部
ポリアクリル酸ナトリウム(花王製、商品名:ポアズ520) 0.2質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム(日本製紙ケミカル製、商品名:MAC500LC) 0.9質量部
ポリオレフィンラテックス(ユニチカ製、商品名:アローベース(登録商標)SD−1205J2) 15質量部
水 180質量部
【0035】
塗液1をポリオレフィン膜層で被覆した繊維マトリクス1に含浸させて、80℃で乾燥後、105℃で熱処理を施し、厚み25μmの電池用セパレータ1を作製した。
【0036】
次に、電池用セパレータ1を60℃に加熱した0.2Nの水酸化カリウム水溶液中に72時間浸漬させ、水洗した後、乾燥し、これを電池用セパレータ2とした。
【0037】
(比較例1)
実施例1で得られた繊維マトリクス1に塗液1を含浸させて、厚み25μmの比較電池用セパレータ1を作製した。得られた比較電池用セパレータ1を60℃に加熱した0.2Nの水酸化カリウム水溶液中に72時間浸漬させて、水洗した後、乾燥し、これを比較電池用セパレータ2とした。
【0038】
(実施例2)
以下の構成で微粒子の含有した繊維マトリクスを得た。この時の乾燥温度は130℃であった。
【0039】
延伸PET繊維(0.06dtex、3mm) 40質量部
延伸PET繊維(0.1dtex、3mm) 35質量部
未延伸PET繊維(0.2dtex、3mm) 25質量部
ベーマイト微粒子(大明化学製、商品名:C20) 50質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬、商品名:セロゲン(登録商標)BSH−12) 0.2質量部
カチオン化セルロース(花王製、ポイズC−150L) 0.1質量部
【0040】
次に、200℃で熱カレンダー処理を施し、厚み27μmの繊維マトリクス2を作製した。次に、繊維マトリクス2にポリオレフィンラテックス(ユニチカ製、アローベース(登録商標)SE−1205J2)を、固形分で2.5g/m
2塗工して、105℃で熱処理を施し、ポリオレフィン膜層で被覆して、厚み27μmの電池用セパレータ3を作製しした。次に、電池用セパレータ3を60℃に加熱した0.2Nの水酸化カリウム水溶液中に72時間浸漬させ、水洗した後、乾燥し、これを電池用セパレータ4とした。
【0041】
(実施例3)
以下の構成で、ホモジナイザー(PRIMI社製、商品名:T.K.HOMODISPER model 2.5)を使用して、3000rpmで2時間撹拌し、微細セルロース分散液を作製した。
【0042】
濃度10質量%微細セルロース繊維(ダイセルファインケム製、セリッシュ(登録商標)KY−100G) 100質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム(日本製紙ケミカル製、商品名:MAC800LC) 2.0質量部
水 400質量部
【0043】
この分散液を実施例1で作製した繊維マトリクス1上に流延して、目付量1.2g/m
2相当の微細セルロース繊維を含有してなる繊維マトリクスを付与した。次に、200℃で熱カレンダー処理を施し、厚み18μmの繊維マトリクス3を作製した。この繊維マトリクス3にポリオレフィンラテックス(ユニチカ製、アローベース(登録商標)SE−1205J2)を、固形分で2.5g/m
2塗工して、105℃で熱処理を施し、厚み18μmの電池用セパレータ5を作製した。次に、電池用セパレータ5を60℃に加熱した0.2Nの水酸化カリウム水溶液中に72時間浸漬させ、水洗した後、乾燥し、これを電池用セパレータ6とした。
【0044】
[セパレータの強度物性]
各セパレータを横5cm×縦20cmに裁断して、JIS P 8113に規定された方法で、引っ張り強度を卓上型材料試験機(ORIENTEC製、商品名:STA−1150)を用いて測定した(試料ツカミ間隔は10cm、速度100mm/min)。最大荷重を計測し、これを引っ張り強度とし、結果を表1に与えた。
【0045】
[セパレータの平均細孔径の測定]
セパレータの平均細孔径をポロメーター(PMI社製、商品名:Cappilary Flow Porometer CEP−1500−A)を用いて測定し、結果を表1に与えた。
【0046】
[セパレータの透気度の測定]
各セパレータのガーレー透気度を、ガーレー形通気性試験機(東洋精機製作所製、デンソメーター)で測定し、結果を表1に与えた。
【0047】
[電池特性の評価]
アルミニウム箔上に、マンガン酸リチウム、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを100/5/3の質量比で、200g/m
2を塗工し、溶剤を乾燥してさらにプレスをかけて正極を作製した。一方、銅箔上に球状人造黒鉛、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを85/15/5の質量比で、100g/m
2を塗工し、乾燥後プレスをかけて負極を作製した。
【0048】
得られた両電極間に各セパレータを挟み込み、宇部興産製のリチウム二次電池用電解液(溶媒:EC/DEC/DME=1/1/1(体積比)、支持電解質:六フッ化リン酸リチウム、1mol/l)を滴下し、減圧下でアルミニウム箔ラミネートフィルム中に封止して、リチウム二次電池を作製した。次に作製したリチウム二次電池を4.2Vで充放電を行い、充電容量と放電容量の比率(%)を一回目(初期)と500回目で求めた。結果を表1に与える。
【0049】
【表1】
【0050】
表1より、繊維マトリクスがポリオレフィン膜層で被覆されている電池用セパレータ1、3及び5では、アルカリ処理後(電池用セパレータ2、4及び6)においても、強度物性、平均細孔径、ガーレー透気度、充放電容量比率の評価において大差はなかった。しかしながら、繊維マトリクスがポリオレフィン膜層で被覆されていない比較電池用セパレータ1では、500回後の充放電容量比率の低下率が大きいだけでなく、アルカリ処理後(比較電池用セパレータ2)では、各評価における特性も崩れてしまった。アルカリ処理で特性が崩れる比較電池用セパレータ1及び2では、過酷な条件で使用されるリチウム二次電池で使用するのが難しいだけでなく、リチウム空気電池などのアルカリ水溶液を電解液に用いる電池での使用にも適さない。