(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ホストコンピュータは、上記プリンタ内に存在するフォントの情報をあらかじめ記憶するとともに、上記プリンタ内に存在するフォントのそれぞれに対応して、文字送り量を文字毎に定めたメトリクス情報を記憶するフォント情報記憶部を更に備え、
上記線画データ送信部は、上記フォント情報記憶部に記憶されているメトリクス情報に基づいて、上記線画データの印字位置を求めてレイアウト調整を行ってから上記線画データを送信することを特徴とする請求項1に記載の印字システム。
ホストコンピュータと、当該ホストコンピュータと双方向通信可能なプリンタとを備えた印字システムにおいて、上記ホストコンピュータにて動作する印字制御用プログラムであって、
印字すべき文字に対して指定されたフォントが上記プリンタ内に存在し、かつ、そのフォントが印字すべき文字のグリフイメージを持つか否かを判定するフォント存否判定手段、
上記フォント存否判定手段により上記指定されたフォントおよび上記グリフイメージが上記プリンタ内に存在すると判定された場合、上記印字すべき文字を表す文字コードを、上記指定されたフォントの識別情報と共に上記プリンタに送信する文字コード送信手段、
上記フォント存否判定手段により上記指定されたフォントおよび上記グリフイメージが上記プリンタ内に存在しないと判定された場合に、上記アウトラインイメージに基づく印字が実行可能か否かを判定するアウトライン判定手段、
上記フォント存否判定手段により上記指定されたフォントおよび上記グリフイメージが上記プリンタ内に存在しないと判定され、かつ、上記アウトライン判定手段により上記アウトラインイメージに基づく印字を実行可能と判定された場合、上記指定されたフォントのアウトラインイメージを上記プリンタに送信するアウトラインイメージ送信手段、および
上記アウトライン判定手段により上記アウトラインイメージに基づく印字を実行不可能と判定された場合、上記印字すべき文字の筆跡線を線画で表した線画データを上記プリンタに送信する線画データ送信手段
として上記ホストコンピュータを機能させ、
上記ホストコンピュータで作成された文書に含まれる各文字の1つ1つに対して、上記フォント存否判定手段、上記文字コード送信手段、上記アウトライン判定手段、上記アウトラインイメージ送信手段および上記線画データ送信手段の処理を実行するようにしたことを特徴とする印字制御用プログラム。
【背景技術】
【0002】
従来、ホストコンピュータとプリンタとを接続し、ホストコンピュータで作成した文書をプリンタで印字させる印字システムがある。この種の印字システムでは、文書を構成する文字列を符号化した文字コードをホストコンピュータからプリンタに出力するともに、使用するフォントを指定して印字を実行するようになされている。
【0003】
近年では、グローバル化に伴い複数言語の文字を混在して扱うコンピュータが増えてきているが、そのようなコンピュータでは文字コードとしてUnicodeが使われるケースが多い。Unicodeは、世界中の言語を対象とした100万超のコードポイントを有している。また、標準の字体と同じ意味・発音を持つが、表記に差異がある文字である異体字を識別するための異体字セレクタ(IVS)を含んだコード表現を加えると、Unicodeが有する文字コードの数は更に膨大なものとなる。しかし、このように膨大な文字コードを有するUnicodeの全ての文字形を網羅するようなフォントは存在しない。
【0004】
ところで、文書作成時はホストコンピュータ内のフォントを用いて文書の編集を実行し、印字時はプリンタ内のフォントを用いて文書の印字を実行するのが、スプールサイズや印字品質の面から望ましい。ただし、プリンタで印字できるフォントの種類は、ホストコンピュータの文書作成に使用できるフォントの種類よりも一般的に少ない。したがって、ホストコンピュータで作成された文書中には、プリンタで印字できない種類のフォントの文字が含まれることがある。このような場合に、ホストコンピュータからプリンタ側に無いフォントを指定して印字を実行すると、印字される文書に文字化けが生じてしまうという問題があった。
【0005】
これに対して、ホストコンピュータで指定されたフォントがプリンタ内に存在しない場合でも印字を可能にする技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、印字すべき文字に対して指定されたホスト内フォントをプリンタが有するか否かを判定し、指定されたホスト内フォントがプリンタ内に存在するフォントでない場合は、プリンタ内のフォントを代替フォントとして指定するようにしている。代替フォントを用いる際に、ホスト内フォントを用いた場合の各文字の位置を算出し、その情報をプリンタに出力する。プリンタでは、この情報に従って各フォントのイメージへの展開位置を決定することにより、文書全体の体裁が保証されるようにしている。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、ホストコンピュータがプリンタと通信をして、プリンタ上で使用可能なプリンタ内フォントを取得する。そして、取得したプリンタ内フォントと、ホストコンピュータ上で使用可能なホスト内フォントとを対照し、ホスト内フォントのうちの少なくとも一部を任意のプリンタ内フォントで代替えして設定するとともに、代替えしたフォントをプリンタにも設定するようにしている。これにより、ホストコンピュータ側でホスト内フォントのデータを展開し、文字列をイメージデータとしてプリンタ側に送って印字を実行する場合に比べて、ホストコンピュータからプリンタに送るデータ量を少なくし、データ転送速度を高めることができるようにしている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による印字システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の印字システムは、ホストコンピュータ100と、当該ホストコンピュータ100と双方向通信可能なプリンタ200とを備えて構成されている。
【0015】
ホストコンピュータ100は、その機能構成として、ホスト側フォント情報記憶部1、プリンタ側フォント情報記憶部2、文書記憶部3、線画データ記憶部4、インタフェース部5、フォント存否判定部6、アウトライン判定部7、文字コード送信部8、アウトラインイメージ送信部9および線画データ送信部10を備えている。また、プリンタ200は、その機能構成として、インタフェース部21、プリンタ側フォント情報記憶部22および印字処理部23を備えている。
【0016】
上記フォント存否判定部6、アウトライン判定部7、文字コード送信部8、アウトラインイメージ送信部9および線画データ送信部10の各機能は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0017】
ホスト側フォント情報記憶部1は、ホストコンピュータ100が内部に備えるフォント(以下、ホスト内フォントという)の情報をあらかじめ記憶している。このホスト側フォント情報記憶部1に記憶されるフォント情報は、ホスト内フォントのフォント名、フォントデータ(フォントの実体データ)、メトリクス情報を含む。メトリクス情報とは、文字のベースライン、ベースラインから文字の上部分までのサイズであるアセント、ベースラインから文字の下部分までのサイズであるディセント、文字の送り量等を文字毎に定めたレイアウト情報である。このメトリクス情報は、ホスト内フォントのそれぞれに対応して記憶されている。
【0018】
ホスト側フォント情報記憶部1に記憶されるホスト内フォントは、文字を所定の体裁でディスプレイ画面に表示するためのスクリーンフォントであり、ホストコンピュータ100で文書を作成する際に使われる。このホスト内フォントは、ビットマップフォント、アウトラインフォント、ベクターフォント等の何れであってもよい。また、これらの各種フォントが混在してホスト側フォント情報記憶部1に記憶されていてもよい。また、ホスト側フォント情報記憶部1に記憶されるホスト内フォントは、等幅フォント、プロポーショナルフォントの何れであってもよいし、これらが混在していてもよい。
【0019】
プリンタ200のプリンタ側フォント情報記憶部22は、プリンタ200が内部に備えるフォント(以下、プリンタ内フォントという)の情報をあらかじめ記憶している。このプリンタ側フォント情報記憶部22に記憶されるフォント情報は、プリンタ内フォントのフォント名、フォントデータ(フォントの実体データ)、メトリクス情報を含む。メトリクス情報は、プリンタ内フォントのそれぞれに対応して記憶されている。
【0020】
プリンタ側フォント情報記憶部22に記憶されるプリンタ内フォントは、文字を所定の体裁で印字するための印字用フォントであり、プリンタ200で印字を実行する際に使われる。このプリンタ内フォントは、ビットマップフォント、アウトラインフォント、ベクターフォント等の何れであってもよい。また、これらの各種フォントが混在してプリンタ側フォント情報記憶部22に記憶されていてもよい。また、プリンタ側フォント情報記憶部22に記憶されるプリンタ内フォントは、等幅フォント、プロポーショナルフォントの何れであってもよいし、これらが混在していてもよい。
【0021】
ホストコンピュータ100のプリンタ側フォント情報記憶部2は、本発明のフォント情報記憶部に相当するものであり、プリンタ200が内部に備えるフォント(プリンタ200のプリンタ側フォント情報記憶部22に実際に記憶されている印字用フォント)の情報をあらかじめ記憶している。このプリンタ側フォント情報記憶部2に記憶されるフォント情報は、プリンタ内フォントのフォント名、プリンタ内フォントが持つグリフイメージおよびメトリクス情報を含む。メトリクス情報は、プリンタ内フォントのそれぞれに対応して記憶されている。
【0022】
プリンタ側フォント情報記憶部2に記憶されるフォント情報は、プリンタ200内にどんな印字用フォントが存在するか、および、存在する印字用フォント毎にどんな文字(異体字セレクタを含めて識別可能なUnicode値)に対応する文字形(グリフイメージ)を持つかを特定するための情報であり、プリンタ200からあらかじめ取得しておいたものである。ここで、フォント名は、プリンタ内フォントの識別情報として機能するものであり、プリンタ側フォント情報記憶部2に記憶しておくことは必須である。ただし、プリンタ内フォントを識別できる識別情報であれば、必ずしもフォント名である必要はない。
【0023】
一方、メトリクス情報については、印字すべき文字が全て等幅な場合には、プリンタ側フォント情報記憶部2に記憶しておくことは必須ではない。これに対し、ホスト内フォントとプリンタ内フォントとで字体が異なるプロポーショナルフォントで相互に可変幅の文字を出力する場合には、各文字を正確な位置に印字するために各文字幅位置は重要となる。この場合は、メトリクス情報をプリンタ側フォント情報記憶部2に記憶しておくのが好ましい。
【0024】
文書記憶部3は、ホストコンピュータ100で作成された文書のデータを記憶するものである。この文書記憶部3に記憶される文書データには、文書を構成する文字列(印字すべき文字列)の各文字コードと、文書中の各文字に対して指定されたフォントの識別情報(フォント名)とが少なくとも含まれている。本実施形態では、文字コードとしてUnicodeを用いるものとする。Unicodeは、異体字セレクタ(IVS)を含んだものであっても含んでいないものであってもよいが、本実施形態では異体字セレクタを含んでいるものとする。
【0025】
線画データ記憶部4は、文字の筆跡線を線画で表した線画データおよびメトリクス情報を文字コード毎にあらかじめ記憶している。この線画データは、フォントが持つ書体デザイン要素(筆跡線の太さや太さの緩急、セリフ飾りといった形のアウトライン表現)を排除してデータ量を抑えたものであり、例えば、文字の筆跡線を表す直線とスプライン曲線との組み合わせで構成されている。
【0026】
この線画データは、Unicodeデータベースで参照できる全コードポイント(異体字が存在するコードポイントでは異体字も含む)のグリフイメージを取得して、それらを細線化したパス(直線およびスプライン曲線)の集合としてあらかじめ作成しておく。そして、Unicodeのコードポイント(異体字が存在するコードポイントでは異体字のセレクタ値情報まで含む)に対応する形で線画データ記憶部4に記憶しておく。
【0027】
ホストコンピュータ100のインタフェース部5は、プリンタ200との間で通信を行うためのものである。また、プリンタ200のインタフェース部21は、ホストコンピュータ100との間で通信を行うためのものである。
【0028】
フォント存否判定部6は、印字すべき文字に対して指定されたフォントがプリンタ200内に存在し、かつ、そのフォントが印字すべき文字のグリフイメージを持つか否かを判定する。具体的には、フォント存否判定部6は、プリンタ側フォント情報記憶部2に記憶されているフォント情報を参照し、文書記憶部3に記憶されている文書データにおいて各文字に対して指定されたフォントの識別情報(フォント名)やグリフイメージが、プリンタ側フォント情報記憶部2に記憶されているか否かを確認することにより、ユーザにより文書中で指定されたフォントがプリンタ200内に存在するか否か、および、存在する印字用フォント毎にどんな文字に対応するグリフイメージを持つかを判定する。フォント存否判定部6は、文書に含まれる各文字の1つ1つに対してこの判定を行い、その判定結果をアウトライン判定部7および文字コード送信部8に通知する。
【0029】
アウトライン判定部7は、文書中で指定されたフォントおよびグリフイメージがプリンタ200内に存在しないとフォント存否判定部6により判定された場合に、アウトラインイメージに基づく印字が実行可能か否かを判定する。アウトラインイメージとは、文字形アウトラインのパス(ベクタイメージ)である。このアウトライン判定部7も、文書に含まれる各文字の1つ1つに対してこの判定を行う。
【0030】
具体的には、アウトライン判定部7は、ホスト側フォント情報記憶部1に記憶されているフォント情報を参照し、フォント存否判定部6によりプリンタ内フォントやグリフイメージが存在しないと判定された文字について、当該文字に対して指定されているフォントがアウトラインイメージを持つか否かを確認することにより、アウトラインイメージに基づく印字が実行可能か否かを判定する。そして、その判定結果をアウトラインイメージ送信部9および線画データ送信部10に通知する。
【0031】
文字コード送信部8は、指定されたフォントおよびグリフイメージがプリンタ200内に存在するとフォント存否判定部6により判定された場合に、印字すべき文字を表す文字コードをプリンタ側フォント情報記憶部2から読み出して、指定されたフォントの識別情報(フォント名)と共にプリンタ200に送信する。
【0032】
アウトラインイメージ送信部9は、指定されたフォントやグリフイメージがプリンタ200内に存在しないとフォント存否判定部6により判定され、かつ、アウトラインイメージに基づく印字を実行可能とアウトライン判定部7により判定された場合に、指定されたフォントのアウトラインイメージをホスト側フォント情報記憶部1から読み出してプリンタ200に送信する。
【0033】
ここで、アウトラインイメージ送信部9は、プリンタ側フォント情報記憶部2に記憶されているメトリクス情報に基づいて、必要に応じて文字の印字位置情報を生成し、当該印字位置情報と共にアウトラインイメージをプリンタ200に送信する。例えば、“ABC”という文字列を印字するときに、前2文字の“AB”だけプリンタ内フォントを使い、3文字目の“C”はアウトラインイメージを使う場合、文字“C”の印字開始位置(文字“AB”の印字後位置)を正確に得るために、アウトラインイメージ送信部9はプリンタ側フォント情報記憶部2に記憶されているメトリクス情報を用いて文字“C”の印字位置情報を生成し、これをアウトラインイメージと共にプリンタ200に送信する。
【0034】
線画データ送信部10は、アウトライン判定部7によりアウトラインイメージに基づく印字を実行不可能と判定された場合に、印字すべき文字に関する線画データを線画データ記憶部4から読み出してプリンタ200に送信する。この線画データ送信部10の処理も、文書に含まれる各文字の1つ1つに対して行う。具体的には、線画データ送信部10は、アウトラインイメージに基づく印字が実行不可能と判定された文字について、当該文字の文字コードに対応して線画データ記憶部4に記憶されている線画データを読み出してプリンタ200に送信する。
【0035】
ここで、線画データ送信部10もアウトラインイメージ送信部9と同様、線画データ記憶部4に記憶されているメトリクス情報に基づいて、必要に応じて印字位置情報を生成し、当該印字位置情報と共に線画データをプリンタ200に送信する。
【0036】
プリンタ200の印字処理部23は、文字コード送信部8により送信された文字コードおよびフォント名と、アウトラインイメージ送信部9により送信されたアウトラインイメージと、線画データ送信部10により送信された線画データとの少なくとも1つに基づいて、文書の各文字に関する印字を実行する。
【0037】
例えば、文書中の全ての文字列について文字コードおよびフォント名のセット(以下、文字コードセットという)が文字コード送信部8により送信されてきた場合、印字処理部23はこの文字コードセットに基づいて印字を実行する。
【0038】
また、文書中の一部の文字についてアウトラインイメージがアウトラインイメージ送信部9により送信されてきた場合、印字処理部23は、その一部の文字についてはアウトラインイメージに基づいて印字を実行する。この場合、印字処理部23は、アウトラインイメージに基づくパス描画によって印字を実行する。
【0039】
さらに、文書中の一部の文字について線画データが線画データ送信部10により送信されてきた場合、印字処理部23は、その一部の文字については線画データに基づいて印字を実行する。線画データ描画時の線の太さは、文字サイズの7%を目安として、文字描画サイズと解像度とにより印字処理部23が決定する。例えば、400dpiの画像出力、18ポイントのフォントサイズの場合、1文字印字範囲のピクセル数は、18/72*400=100ピクセルなので、7%=太さ7ピクセルの太さで線画のパス描画を行う。
【0040】
図2〜
図4は、本実施形態の印字システムによる印字例を示す図である。
図2は、印字すべき文字に対して指定されたフォントおよびグリフイメージがプリンタ200内に存在する場合の印字例を示す図である。
図2の例では、“葛”という文字(艸かんむりに曷、文字コード=U+845B)を印字する例を示している。この場合、ホストコンピュータ100は、印字すべき文字を表す文字コード(U+845B)と、指定されたフォントのフォント名(例えば、明朝体)とをプリンタ200に送信する。プリンタ200は、受信した文字コードおよびフォント名に基づいて、プリンタ側フォント情報記憶部22に記憶されているフォントデータを用いて“葛”の文字を印字する。
【0041】
図3は、印字すべき文字に対して指定されたフォントやグリフイメージがプリンタ200内に存在しないが、アウトラインイメージがホストコンピュータ100に存在する場合の印字例を示す図である。
図3の例では、“葛”の異体字(艸かんむりに日に匂、文字コード=U+845B、異体字のセレクタ値=U+E0100)を印字する例を示している。この場合、ホストコンピュータ100は、印字すべき文字について指定されたフォントのアウトラインイメージをプリンタ200に送信する。プリンタ200は、受信したアウトラインイメージに基づくパス描画によって、“葛”の異体字を印字する。
【0042】
図4は、印字すべき文字に対して指定されたフォントやグリフイメージがプリンタ200内に存在せず、かつ、アウトラインイメージもホストコンピュータ100に存在しない場合の印字例を示す図である。
図4の例では、“葛”の異体字を印字する例を示している。この場合、ホストコンピュータ100は、印字すべき文字についてあらかじめ線画データ記憶部4に記憶されている線画データをプリンタ200に送信する。プリンタ200は、受信した線画データに基づいて“葛”の異体字を印字する。
【0043】
図5は、上記のように構成した本実施形態による印字システムの動作例を示すフローチャートである。なお、
図5に示すフローチャートは、文書記憶部3に記憶された文書について印字の実行がユーザにより指示されたときに開始する。
【0044】
まず、フォント存否判定部6は、文書内から1つの文字を抽出し、当該文字の文字コードと、その文字に対して指定されているフォントを表すフォント名とを取得する(ステップS1)。そして、フォント存否判定部6は、プリンタ側フォント情報記憶部2を参照することにより、ステップS1で取得した文字について指定されているフォントがプリンタ200内に存在し、かつ、そのフォントが印字すべき文字のグリフイメージを持つか否かを判定する(ステップS2)。
【0045】
ここで、指定フォントがプリンタ200内に存在し、かつ、そのフォントが印字すべき文字のグリフイメージを持つ場合、文字コード送信部8は、ステップS1で取得した文字コードとフォント名とをプリンタ200に送信する(ステップS3)。プリンタ200は、ホストコンピュータ100から受信した文字コードおよびフォント名に基づいて、プリンタ側フォント情報記憶部22に記憶されているフォントデータを用いて、ステップS1で抽出した文字を印字する(ステップS4)。
【0046】
その後、フォント存否判定部6は、文書内の全ての文字について処理を終了したか否かを判定する(ステップS5)。まだ残りの文字が残っている場合、処理はステップS1に戻る。そして、文書内の次の文字を1つ抽出して文字コードとフォント名とを取得し、その文字について指定されているフォントがプリンタ200内に存在し、かつ、そのフォントが印字すべき文字のグリフイメージを持つか否かを同様に判定する(ステップS2)。
【0047】
ここで、指定フォントやグリフイメージがプリンタ200内に存在しないと判定された場合、アウトライン判定部7は、ホスト側フォント情報記憶部1に記憶されているフォント情報を参照し、プリンタ200内にフォントやグリフイメージが存在しないと判定された文字について、当該文字に対して指定されているフォントがアウトラインイメージを持つか否かを確認することにより、アウトラインイメージに基づく印字が実行可能か否かを判定する(ステップS6)。
【0048】
アウトラインイメージに基づく印字が実行可能な場合、アウトラインイメージ送信部9は、印字すべき文字について指定されたフォントのアウトラインイメージをプリンタ200に送信する(ステップS7)。プリンタ200は、ホストコンピュータ100から受信したアウトラインイメージに基づくパス描画によって、ステップS1で抽出した文字を印字する(ステップS8)。その後、処理はステップS5に進む。
【0049】
上記ステップS6において、アウトラインイメージに基づく印字が実行不可能とアウトライン判定部7にて判定された場合、線画データ送信部10は、印字すべき文字についてあらかじめ線画データ記憶部4に記憶されている線画データを読み出してプリンタ200に送信する(ステップS9)。プリンタ200は、ホストコンピュータ100から受信した線画データに基づいて、ステップS1で抽出した文字を印字する(ステップS10)。その後、処理はステップS5に進む。このステップS5において、文書内の全ての文字に関する処理を終了したと判定された場合、
図5に示すフローチャートの処理は終了する。
【0050】
以上詳しく説明したように、本実施形態による印字システムでは、ホストコンピュータ100において、印字すべき文字に対して指定されたフォントがプリンタ200内に存在するか否か、フォント存在時は印字すべき文字のグリフイメージがそのフォント内に存在するか否かを判定し、存在すると判定された場合は、印字すべき文字を表す文字コードを指定フォントのフォント名と共にプリンタ200に送信して印字を実行する。一方、指定フォントやグリフイメージがプリンタ200内に存在しないと判定され、かつ、アウトラインイメージに基づく印字を実行可能と判定された場合は、指定フォントのアウトラインイメージをプリンタ200に送信して印字を実行するようにしている。
【0051】
このように構成した本実施形態の印字システムによれば、ホストコンピュータ100で指定されたフォントやグリフイメージがプリンタ200内に存在しない場合であっても、その指定されたフォントが有しているアウトラインイメージがプリンタ200に送信されて印字が実行される。これにより、ユーザによりホストコンピュータ100で指定されたフォント、つまりユーザが意図したフォントに限りなく近い文字体裁で印字を実行することができるようになる。
【0052】
また、本実施形態では、アウトラインイメージに基づく印字が実行不可能と判定された場合には、印字すべき文字の線画データをプリンタ200に送信して印字を実行するようにしている。これにより、ホストコンピュータ100で指定されたフォントがプリンタ200内に存在しない場合であっても、文字化けの発生を確実に防ぐことができる。
【0053】
また、本実施形態では、ホスト内フォント、プリンタ内フォント、線画データの全てのメトリクス情報をホストコンピュータ100に記憶しておくことにより、文字コードにより印字される文字、アウトラインイメージにより印字される文字および線画データにより印字される文字が1つの文書内に混在する場合であっても、文字列の印字位置を正確に求め、レイアウトを高品位に調整して印字することができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、プリンタ内フォントのフォント情報をホストコンピュータ100のプリンタ側フォント情報記憶部2にあらかじめ記憶しておき、このフォント情報に基づいて指定フォントがプリンタ200内に存在するか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0055】
例えば、フォント存否判定部6は、ホストコンピュータ100において印字実行の指示が出されたときに、プリンタ200と通信をすることによってプリンタ200内に存在するフォントの情報を取得し、当該取得したフォント情報に基づいて、指定されたフォントがプリンタ200内に存在するか否かを判定するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、線画データを印字用フォントの代替として用い、ホストコンピュータ100からプリンタ200に線画データを送信して印字する例について説明したが、線画データをスクリーンフォントとして用い、ホストコンピュータ100の画面に表示させるようにしてもよい。
【0057】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。