特許第6061759号(P6061759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061759
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】トランスエステル化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/45 20060101AFI20170106BHJP
   A01N 53/04 20060101ALI20170106BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20170106BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20170106BHJP
   C07D 333/16 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C07D307/45CSP
   A01N53/00 504A
   A01P7/04
   A01P7/02
   C07D333/16
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-77384(P2013-77384)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-201536(P2014-201536A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松尾 憲忠
(72)【発明者】
【氏名】神崎 務
(72)【発明者】
【氏名】勝田 純郎
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−025205(JP,A)
【文献】 特公昭54−003933(JP,B1)
【文献】 特公昭55−016561(JP,B1)
【文献】 特開昭50−035332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D307/00−307/94
C07D327/00−347/00
A01N 1/00− 65/48
A01P 1/00− 23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[化1]
【化1】
〔式中、Xは酸素原子、または硫黄原子のいずれかを表し、Yはメチル基または塩素原子を表し、Yがメチル基の時、Zは水素原子またはメチル基を表し、Yが塩素原子の時、Zは塩素原子を表す。〕
で示されるトランスエステル化合物。
【請求項2】
前記一般式[化1]において、Xが酸素原子である請求項1に記載のトランスエステル化合物。
【請求項3】
前記一般式[化1]において、Xが硫黄原子である請求項1に記載のトランスエステル化合物。
【請求項4】
前記一般式[化1]において、Xが酸素原子、YおよびZがメチル基である請求項1に記載のトランスエステル化合物。
【請求項5】
前記一般式[化1]において、Xが酸素原子、YおよびZが塩素原子である請求項1に記載のトランスエステル化合物。
【請求項6】
前記一般式[化1]において、Xが酸素原子、Yがメチル基、Zが水素原子である請求項1に記載のトランスエステル化合物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のトランスエステル化合物を有効成分として含有する有害生物防除剤。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のトランスエステル化合物の有効量を有害生物又は有害生物の生息場所に施用する有害生物の防除方法、ただし人体への使用は除く
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスエステル化合物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害生物を防除するために種々の化合物が合成されている(非特許文献1参照)。また、特許文献1には、ある種のエステル化合物が記載されている。しかしながら、これらの有害生物防除効力は必ずしも満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−25205号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「続医薬品の開発 第18巻 農薬の開発III」、廣川書店、1993年、p.493
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明らは、優れた有害生物防除効力を有する新規なエステル化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、下記一般式[化1]で示されるトランスエステル化合物が優れた有害生物防除効力を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の発明に係るものである。
(1)一般式[化1]
[化1]
〔式中、Xは酸素原子、または硫黄原子のいずれかを表し、Yはメチル基または塩素原子を表し、Yがメチル基の時、Zは水素原子またはメチル基を表し、Yが塩素原子の時、Zは塩素原子を表す。〕
で示されるトランスエステル化合物(以下、本発明化合物と記す。)。
(2)前記一般式[化1]において、Xが酸素原子である(1)に記載のトランスエステル化合物。
(3)前記一般式[化1]において、Xが硫黄原子である(1)に記載のトランスエステル化合物。
(4)前記一般式[化1]において、Xが酸素原子、YおよびZがメチル基である(1)に記載のトランスエステル化合物。
(5)前記一般式[化1]において、Xが酸素原子、YおよびZが塩素原子である(1)に記載のトランスエステル化合物。
(6)前記一般式[化1]において、Xが酸素原子、Yがメチル基、Zが水素原子である(1)に記載のトランスエステル化合物。
(7)(1)ないし(6)のいずれか1に記載のトランスエステル化合物を有効成分として含有する有害生物防除剤。
(8)(1)ないし(6)のいずれか1に記載のトランスエステル化合物の有効量を有害生物又は有害生物の生息場所に施用する有害生物の防除方法、ただし人体への使用は除く
【発明の効果】
【0008】
本発明化合物は優れた有害生物防除効力を有することから、有害生物防除剤の有効成分として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明化合物には、シクロプロパン環上の1位および3位に存在する2個の不斉炭素原子に由来する光学異性体、並びに、シクロプロパン環3位の置換基に存在する1’位の二重結合に由来する異性体が存在するが、本発明には有害生物防除活性を有する各異性体および任意の比率の異性体混合物が含まれる。
【0010】
即ち、一般式[化2]
【化2】



において、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置である化合物;
一般式[化2]において、シクロプロパン環1位の絶対立体配置がR配置であり、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置である化合物;
一般式[化2]において、Yがメチル基、Zが水素原子を表す時、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置であり、シクロプロパン環3位の置換基に存在する1’位の二重結合の相対配置がZ配置である化合物;
一般式[化2]において、Yがメチル基、Zが水素原子を表す時、シクロプロパン環1位の絶対立体配置がR配置であり、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置であり、シクロプロパン環3位の置換基に存在する1’位の二重結合の相対配置がE配置である化合物;
【0011】
一般式[化2]において、Xが酸素原子である化合物。
一般式[化2]において、Xが硫黄原子である化合物。
【0012】
次に本発明化合物の製造法について説明する。
本発明化合物は、例えば以下に示す方法により製造することができる。
(製造法1)
一般式[化3]
【化3】


〔式中、Xは前記と同じ意味を表す。〕で示されるアルコール化合物と、

一般式[化4]
【化4】



〔式中、YおよびZは前記と同じ意味を表す。〕で示されるカルボン酸化合物又はその反応性誘導体とを反応させる方法。
【0013】
該反応性誘導体としては、一般式[化4]で示されるカルボン酸化合物の酸ハロゲン化物、該カルボン酸化合物の酸無水物および該カルボン酸化合物のエステル等が挙げられる。該酸ハロゲン化物としては、酸クロライド化合物が挙げられ、エステルとしてはメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。
該反応は、通常、縮合剤又は塩基の存在下、溶媒中で行なわれる。
縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ハイドロクロライドが挙げられ、また、
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
溶媒としては、例えばトルエン及びヘキサン等の炭化水素、テトラヒドロフラン等のエ−テル、エチルアセテートなどのエステル、並びに、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0014】
反応時間は、通常、5分間〜72時間の範囲である。
反応温度は、通常、−20℃〜100℃(但し、使用する溶媒の沸点が100℃未満の場合には、−20℃〜溶媒の沸点)の範囲である。
該反応において、一般式[化3]で示されるアルコ−ル化合物と、一般式[化4]で示されるカルボン酸化合物又はその反応性誘導体の使用モル比は任意に設定できるが、好ましくは、等モル又はそれに近い比である。
縮合剤又は塩基は、一般式[化3]で示されるアルコ−ル化合物1モルに対して、通常は0.25モルから過剰量まで任意の割合で使用することができ、好ましくは0.5モル〜2モルである。これらの縮合剤又は塩基は、一般式[化4]で示されるカルボン酸化合物又はその反応性誘導体の種類により適宜選択される。
反応終了後の反応混合物は、これを濾過して濾液を濃縮する、又は、これを水に注加した後に有機溶媒抽出、濃縮する等の通常の後処理操作を施すことにより、本発明化合物を得ることができる。得られた本発明化合物はクロマトグラフィ−、蒸留等の操作によって精製することができる。
【0015】
一般式[化3]で示されるアルコール化合物(X=酸素原子)は、特開平6−25205号公報記載の公知化合物であり、該特許に記載の方法で製造することができる。また、一般式[化3]で示されるアルコール化合物(X=硫黄原子)は、新規化合物であり、下記に示した方法により市販の2,5−チオフェンジカルバルデヒドより2工程で合成することが出来る。
【化5】

一方、一般式[化4]で示されるカルボン酸化合物又はその反応性誘導体は市販品またはSynthetic
Communications(2004) 34巻1001-10に記載の公知化合物であり、市販品を購入、または該文献に記載の方法で製造することができる。
【0016】
本発明の有害生物防除剤は本発明化合物そのものでもよいが、通常は下記のような製剤として使用する。その製剤としては、例えば、蚊取線香、蚊取マットや蚊取リキッドのような加熱蒸散剤、ファン式蚊取、油剤、乳剤、エアゾール剤、炭酸ガス製剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、ピエゾ式殺虫製剤、加熱燻煙剤(自己燃焼型燻煙剤、化学反応型燻煙剤、多孔セラミック板燻煙剤等)、非加熱蒸散剤(樹脂蒸散剤、紙蒸散剤、不織布蒸散剤、編織物蒸散剤、昇華性錠剤等)、煙霧剤(フォッギング等)、直接接触剤(シート状接触剤、テープ状接触剤、ネット状接触剤等)、ULV剤及び毒餌などが挙げられる。
【0017】
製剤化の方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)本発明化合物を、固体担体、液体担体、ガス状担体、餌等と混合し、必要に応じて界面活性剤その他の製剤用補助剤を添加・加工する方法。
(2)本発明化合物を、有効成分を含有していない基材に含浸する方法。
(3)本発明化合物及び基材を混合した後に成形加工する方法。
これらの製剤には、製剤形態にもよるが、通常、本発明化合物を重量比で0.001〜98%含有する。
【0018】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、活性炭、炭酸カルシウム、シリカ等)等の微粉末及び粒状物、常温で固体の物質(2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン、ナフタリン、p−ジクロロベンゼン、樟脳、アダマンタン等)、並びに羊毛、絹、綿、麻、パルプ、合成樹脂(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−ビニルカルボン酸共重合体;ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリブタジエン、ポリスチレン;アクリロニトリル−スチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレエート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡エチレン等の多孔質樹脂)、ガラス、金属、セラミック等の1種または2種以上からなるフェルト、繊維、布、編物、シート、紙、糸、発泡体、多孔質体及びマルチフィラメントが挙げられる。
【0019】
液体担体としては、例えば芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−ピロリドン等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。
【0020】
ガス状担体としては、例えばブタンガス、フロンガス、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、及び炭酸ガス等の圧縮ガスが挙げられる。
【0021】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類及び糖アルコール誘導体が挙げられる。
【0022】
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤及び安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)、ポリアクリル酸等、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、及びBHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。更に、必要に応じて着色剤や香料等が適宜配合されても構わない。
【0023】
蚊取線香の基材としては、例えば木粉、除虫菊抽出粕粉等の植物性粉末とタブ粉、澱粉、カルボキシメチルセルロース、グルテン等の結合剤との混合物が挙げられる。
蚊取マットの基材としては、例えばコットンリンターを板状に固めたもの、及びコットンリンターとパルプとの混合物のフィリブルを板状に固めたものが挙げられる。
自己燃焼型燻煙剤の基材としては、例えば、硝酸塩、亜硝酸塩、グアニジン塩、塩素酸カリウム、ニトロセルロース、エチルセルロース、木粉等の燃焼発熱剤、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩の熱分解刺激剤、硝酸カリウム等の酸素供給剤、メラミン、小麦デンプン等の支燃剤、珪藻土等の増量剤及び合成糊料等の結合剤が挙げられる。
【0024】
化学反応型燻煙剤の基材としては、例えば、アルカリ金属の硫化物、多硫化物、水硫化物、酸化カルシウム等の発熱剤、炭化鉄、活性白土等の触媒剤、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、ポリスチレン、ポリウレタン等の有機発泡剤、及び、天然繊維片、合成繊維片等の充填剤が挙げられる。
【0025】
樹脂蒸散剤等の基材に用いられる樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−ビニルカルボン酸共重合体;ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル酸樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン等が挙げられ、これらの基材は、単独で用いても2種以上の混合物として用いても良く、これらの基材には必要によりフタル酸エステル類(フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル等)、アジピン酸エステル類、ステアリン酸等の可塑剤が添加されていてもよい。樹脂蒸散剤は、本発明化合物を上記基材中に混練した後、射出成型、押出成型、プレス成型等により成型することにより得ることができる。得られた樹脂製剤は、必要により更に成型、裁断等の工程を経て、板状、フィルム状、テープ状、網状、ひも状等の形状に加工することもできる。これらの樹脂製剤は、例えば、非加熱蒸散剤、動物用首輪、動物用イヤータッグ、シート製剤、誘引テープ、誘引紐、園芸用支柱として加工される。
【0026】
毒餌の基材としては、例えば、穀物粉、植物油、糖、結晶セルロース等の餌成分、BHT、ノルジヒドログアイアレチン酸等の酸化防止剤、デヒドロ酢酸等の保存料、トウガラシ粉末等の子どもやペットによる誤食防止剤、及びチーズ香料、タマネギ香料、ピーナッツオイル等の害虫誘引性香料があげられる。
【0027】
本発明化合物は他の殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、除草剤、忌避剤、共力剤、肥料、土壌改良剤と混用または併用して用いることもできる。
【0028】
かかる殺虫剤、殺ダニ剤の有効成分としては、例えば、
(1)合成ピレスロイド系化合物
ピレトリン(pyrethrins)、アレスリン(allethrin)、プラレトリン(prallethrin)、フラメトリン(furamethrin)、レスメトリン(resmethrin)、テトラメトリン(tetramethrin)、イミプロトリン(imiprothrin)、エンペントリン(empenthrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、メトフルトリン(metofluthrin)、プロフルトリン(profluthrin)、フェノトリン(phenothrin)、シフェノトリン(cyphenothrin)、ペルメトリン(permethrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ベータ−シフルトリン(beta−cyfluthrin)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、ビフェントリン(bifenthrin)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、フルメトリン(flumethrin)、アクリナトリン(acrinathrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、ラムダシハロトリン(lambda−cyhalothrin)、テフルトリン(tefluthrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルバリネート(fluvalinate)、エトフェンプロックス(ethofenprox)、シラフルオフェン(silafluofen)、ジメフルトリン(dimefluthrin)、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル=2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート等;
(2)有機リン系化合物
アセフェート(acephate)、ブタチオホス(butathiofos)、ダイアジノン(diazinon)、ジクロルボス(dichlorvos:DDVP)、ジメトエート(dimethoate)、フェンチオン(fenthion:MPP)、フエニトロチオン(fenitrothion:MEP)、マラチオン(malathion)、ピリダフェンチオン(pyridafenthion)、プロパホス(propaphos)、トリクロルホン(trichlorphon:DEP)等;
(3)カーバメート系化合物
カルバリル(carbary1)、カルボフラン(carbofuran)、フェノブカルブ(fenobucarb)、イソプロカルブ(isoprocarb:MIPC)、メソミル(methomyl)、NAC、プロポクスル(propoxur:PHC)等;
(4)ネライストキシン系化合物
カルタップ(cartap)、ベンスルタップ(bensu1tap)等;
(5)ネオニコチノイド系化合物
イミダクロプリド(imidac1oprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、アセタミプリド(acetamiprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、チアクロプリド(thiacloprid)、ジノテフラン(dinotefuran)、クロチアニジン(clothianidin)等;
(6)ベンゾイル尿素系化合物
クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、ビストリフルロン(bistrifluron)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、トリフルムロン(triflumuron)等;
(7)フェニルピラゾール系化合物
フィプロニル(fiproni1)、ピリプロール(pyriprole)、ピラフルプロール(pyrafluprole)等;
(8)ヒドラジン系化合物
クロマフェノジド(chromafenozide)、ハロフェノジド(halofenozide)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)等;
(9)天然系殺虫剤
マシン油(machine oil)、硫酸ニコチン(nicotine−sulfate);
(10)その他の殺虫剤
アベルメクチン(avermectin−B)、ブプロフェジン(buprofezin)、クロルフェナピル(chlorphenapyr)、ハイドロプレン(hydroprene)、メトプレン(methoprene)、インドキサカルブ(indoxacarb)、メトキサジアゾン(metoxadiazone)、ミルベマイシンA(milbemycin−A)、ピリダリル(pyridalyl)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、スピノサッド(spinosad)、スルフラミド(sulfluramid)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)、トリアゼメイト(triazamate)、フルベンジアミド(flubendiamide)、臭化メチル(Methyl bromide)、オレイン酸カリウム(Potassium oleate)等が挙げられる。
【0029】
忌避剤の有効成分としては、例えばN,N−ジエチル−m−トルアミド、リモネン、リナロール、シトロネラール、メントール、メントン、ヒノキチオール、ゲラニオール、ユーカリプトール、カラン−3,4−ジオール、IR−3535、MGK−R−326、MGK−R−874及びBAY−KBR−3023が挙げられる。
【0030】
共力剤の有効成分としては、例えば5−〔2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシメチル〕−6−プロピル−1,3−ベンゾジオキソール、N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、オクタクロロジプロピルエーテル、チオシアノ酢酸イソボルニル、N−(2−エチルへキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0031】
本発明化合物が効力を有する有害生物としては、例えば有害昆虫や有害ダニ等の有害節足動物が挙げられ、具体的には以下のものが挙げられる。
双翅目害虫:アカイエカ、コガタアカイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、シナハマダラカ等のハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、タネバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、ミバエ類、ハモグリバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ノミバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類、ヌカカ類等;
網翅目害虫:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等;
膜翅目害虫:アリ類、スズメバチ類、アリガタバチ類、カブラハバチ等のハバチ類等;
隠翅目害虫:イヌノミ、ネコノミ、ヒトノミ等;
シラミ目害虫:ヒトジラミ、ケジラミ、アタマジラミ、コロモジラミ等;
等翅目害虫:ヤマトシロアリ、イエシロアリ等;
半翅目害虫:ヒメトビウンカ、トビイロウンカ等のウンカ類、ツマグロヨコバイ等のヨコバイ類、ワタアブラムシ等のアブラムシ類、カメムシ類、トコジラミ等のトコジラミ類等;
鱗翅目害虫:ニカメイガ、コブノメイガ等のメイガ類、ハスモンヨトウ、アワヨトウ、ヨトウガ等のヨトウ類、シンクイガ類、ハモグリガ類、ドクガ類、コナガ、イチモンジセセリ、イガ、コイガ等;
鞘翅目害虫:ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、コクゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ、コクヌストモドキ等のゴミムシダマシ類、シバンムシ類、ヒラタキクイムシ類等;
ダニ類:コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ、ムギコナダニ等のコナダニ類、チリニクダニ、イエニクダニ、サナアシニクダニ等のニクダニ類、クワガタツメダニ、フトツメダニ等のツメダニ類、ホコリダニ類、マルニクダニ類、イエササラダニ類、フタトゲチマダニ等のマダニ類、トリサシダニ、ワクモ等のワクモ類。
【0032】
本発明の有害生物の防除方法は、本発明化合物の有効量を、通常本発明の有害生物防除剤の形態にて、有害生物又は有害生物の生息場所に施用することにより行われる。
本発明の有害生物防除剤の施用方法としては、例えば以下の方法が挙げられ、本発明の有害生物防除剤の形態、使用場所等に応じて適宜選択できる。
(1)本発明の有害生物防除剤をそのまま有害生物又は有害生物の生息場所に処理する方法。
(2)本発明の有害生物防除剤を水等の溶媒で希釈した後に、有害生物又は有害生物の生息場所に散布処理する方法。
この場合には、通常、乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル製剤等に製剤化された本発明の有害生物防除剤を本発明化合物の濃度が0.1〜10000ppmとなるように希釈する。
(3)本発明の有害生物防除剤を有害生物の生息場所で、加熱等の手段により有効成分を揮散させる方法。
この場合、本発明化合物の施用量、施用濃度はいずれも本発明の有害生物防除剤の形態、施用時期、施用場所、施用方法、有害生物の種類、被害状況等に応じて適宜定めることができる。
【0033】
本発明化合物を害虫防除用として用いる場合は、その施用量は空間に適用するときは、本発明化合物の量として通常0.001〜100mg/m3であり、平面に適用するときは0.001〜100mg/m2である。蚊取線香、蚊取マット等はその製剤形態に応じて加熱により有効成分を揮散させて施用する。樹脂蒸散剤、紙蒸散剤、不織布蒸散剤、編織物蒸散剤、昇華性錠剤等は例えば施用する空間にそのまま放置する、および、該製剤に送風下に設置することにより使用できる。
本発明の有害生物防除組成物を害虫防除用として施用する空間としては、例えば、リビングルーム、食堂、寝室、クローゼット、押入れ、和ダンス、食器棚、トイレ、浴場、物置、倉庫、車内等が挙げられ、さらに野外の開放空間で施用することもできる。
【0034】
本発明の有害生物防除組成物をウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ、ラット、マウス等の小動物の外部寄生虫防除に用いる場合は、獣医学的に公知の方法で動物に使用することができる。具体的な使用方法としては、全身抑制(systemic control)を目的にする場合には、例えば錠剤、飼料混入、坐薬、注射(筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内等)により投与され、非全身的抑制(non-systemic
control)を目的とする場合には、例えば油剤若しくは水性液剤を噴霧する、ポアオン(pour-on)処理若しくはスポットオン(spot-on)処理する、シャンプー製剤で動物を洗う又は樹脂蒸散剤を首輪や耳札にして動物に付ける等の方法により用いられる。動物体に投与する場合の本発明化合物の量は、通常動物の体重1kgに対して、0.01〜100mgの範囲である。
【0035】
【実施例】
【0036】
以下、製造例、参考製造例、製剤例及び試験例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0037】
まず、本発明化合物の製造例を示す。
製造例1
5−エチニル−2−フランメタノール(145mg,1.19mmol)及び(1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸(202mg,1.20mmol)のクロロホルム溶液(4mL)に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ハイドロクロライド(306mg、1.6mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(20mg)を加えた。室温で12時間攪拌した後、反応液に水を注加し、これを酢酸エチルで抽出した。該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式[化6]
【化6】


で示される5−エチニル−2−フリルメチル=(1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(1)と記す。)247mgを得た。
【0038】
無色液体:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm): 1.13(s,3H)、1.26(s,3H)、1.43(d,1H)、1.70(m、6H)、2.07(dd,1H)、3.40(s,1H)、4.86(dm,1H)、5.02(dd,2H)、6.37(d,1H)、6.60(d,1H)
【0039】
製造例2
5−エチニル−2−チオフェンメタノール(100mg,0.72mmol)をトルエン(3mL)に溶かし、ピリジン0.10mLを加えた。ここに氷冷下で、(1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸クロリド(135mg,0.72mmol)のトルエン溶液(1mL)を加えた。室温で12時間攪拌した後、反応液に水を注加し、これを酢酸エチルで抽出した。該有機層を5%塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧条件下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式[化7]
【化7】



で示される5−エチニル−2−テニルメチル=(1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(2)と記す。)168mgを得た。
【0040】
淡黄色液体:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm):1.13(s,3H)、1.26(s,3H)、1.41(d,1H)、1.70(m、6H)、2.09(dd,1H)、3.35(s,1H)、4.87(d,1H)、5.20(s,2H)、6.93(d、1H)、7.14(d,1H)
【0041】
製造例3
製造例1において、(1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸の代わりに、(1R)−トランス−3−(2,2−ジクロロエテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸を用いて同様に操作を行い、下記式[化8]
【化8】



で示される5−エチニル−2−フリルメチル=(1R)−トランス−3−(2,2−ジクロロエテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(3)と記す。)を得た。
【0042】
無色液体:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm):1.18(s,3H)、1.28(s,3H)、1.63(d,1H)、2.25(dd,1H)、3.40(s,1H)、5.04(dd,2H)、5.59(d、1H)、6.39(d,1H)、6.61(d,1H)
【0043】
製造例4
製造例1において、(1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸の代わりに、(1R)−トランス−3−[(1Z)−1−プロペニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸を用いて、同様に操作を行って、下記式[化9]
【化9】



で示される5−エチニル−2−フリルメチル=(1R)−トランス−3−[(1Z)−1−プロペニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物(4)と記す。)を得た。
【0044】
無色液体:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm):1.14(s,3H)、1.27(s,3H)、1.49(d,1H)、1.70(dm,3H)、2.17(dd,1H)、3.40(s,1H)、5.03(dd,2H)、5.11(m、1H)、5.57(m、1H)、6.38(d,1H)、6.61(d,1H)
【0045】
次に、一般式[化3]で示されるアルコール化合物(X=硫黄原子)の参考製造例を示す。
参考製造例
2,5−チオフェンジカルバルデヒド(200mg,1.43mmol)及びジメチル(1−ジアゾ−2−オキソプロピル)フォスフォネート(250mg,1.30mmol)のメタノール溶液(5mL)に炭酸カリウム(200mg、1.45mmol)を氷冷下で加えた。室温で12時間攪拌した後、反応液に水を注加し、これを酢酸エチルで2回抽出した。該有機層を食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮した。残渣をさらに精製することなく、2−プロパノール4mLを加えた後、氷冷下でテトラヒドロほう酸ナトリウム50mgを加え2時間室温で攪拌した。反応液を氷水(10mL)に注加し、これを酢酸エチルで2回抽出した。該有機層を食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式で示される5−エチニル−2−チオフェンメタノール102mgを得た。
【化10】


【0046】
淡黄色液体:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm):3.34(s,1H)、4.80(s,2H)、6.87(d、1H)、7.15(d,1H)
【0047】
次に、製剤例を示す。なお、部は質量部を示す。
【0048】
製剤例1
本発明化合物(1)〜(4)の各々0.1部をキシレン 10部に溶解し、これを脱臭灯油 89.9部に混合して、油剤を得る。
【0049】
製剤例2
本発明化合物(1)〜(4)の各々0.1部及び脱臭灯油 39.9部を混合溶解したものをエアゾール容器に充填し、バルブ部分を取付けた後、該バルブ部分を通じて噴射剤(液化石油ガス)
60部を加圧充填して、油性エアゾールを得る。
【0050】
製剤例3
本発明化合物(1)〜(4)の各々0.6部、キシレン 5部、脱臭灯油 3.4部及びレオドールMO−60 (乳化剤、花王株式会社登録商標)
1部を混合溶解したものと、水 50部とをエアゾール容器に充填し、バルブ部分を通じて噴射剤(液化石油ガス) 40部を加圧充填して、水性エアゾールを得る。
【0051】
製剤例4
本発明化合物(1)〜(4)の各々0.3g及びBHT0.5gを、蚊取線香用基材(除虫菊抽出粕粉、木粉、タブ粉、及び澱粉を混合したもの)
99.2gに均一に攪拌混合した後、着色剤としてマラカイトグリーンを含む水 100mLを加え、十分混練したものを成型乾燥し、蚊取線香を得る。
【0052】
製剤例5
本発明化合物(1)〜(4)の各々0.8g、ピペロニルブトキシド 0.4g、及び染料に脱臭灯油を加えて溶解し、全部で10mLとする。この溶液
0.5mLを22mm×35mm、厚さ2.8mmの蚊取マット用基材(コットンリンターとパルプの混合物のフィリブルを板状に固めたもの)に均一に含浸させて、蚊取マット剤を得る。
【0053】
製剤例6
本発明化合物(1)〜(4)の各々0.7部及びBHT0.3部を、界面活性剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)50部と精製水49部に溶解して得られる液剤をポリエステル製容器に入れ、上部をヒーターで加熱できるようにした吸液芯(無機粉体を焼成したもの)を挿入することにより、加熱蒸散装置に用いる水性蚊取リキッド剤を得る。
【0054】
製剤例7
本発明化合物(1)〜(4)の各々100mgを適量のアセトンに溶解し、4cm×4cm、厚さ1.2cmの多孔セラミック板に含浸させて、加熱燻煙剤を得る。
【0055】
製剤例8
本発明化合物(1)〜(4)の各々10mgを適量のアセトンに溶解し、5cm×5cm、厚さ0.3mmの不織布に均一に塗布した後、アセトンを風乾して、常温揮散剤を得る。
【0056】
製剤例9
本発明化合物(1)〜(4)の各々10部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩50部を含むホワイトカーボン35部、及び水55部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、10%フロアブル剤を得る。
【0057】
次に、本発明化合物が有害生物防除剤の有効成分として有効であることを試験例として示す。
【0058】
試験例1
供試化合物0.3gと蚊取線香用基材(除虫菊抽出粕粉、木粉、タブ粉、及び澱粉を混合したもの) 99.7gに均一に攪拌混合した後、水
100mLを加え、十分混練したものを成型乾燥し、蚊取線香を調製した。
アカイエカ成虫20頭(雌)を入れた密閉された円筒(直径20cm、高さ43cm)内の下部で、上記に従って調製した線香(本発明化合物、比較化合物およびアレスリン)を1分間燃やし15分間暴露させた。暴露から一定時間後(5分後)にノックダウンした虫数をカウントした(2反復平均)。
また、比較対照として下記式[化11]
【化11】




で示される5−エチニル−2−フリルメチル=(1R)−シス−3− (2−クロル−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(特開平6−25205号公報に記載の化合物。以下、比較化合物と記す。)およびアレスリン:(RS)−2−メチル−3−(2−プロペニル)−シクロペント−2−エン−4−オン−1−イル=(1RS)−トランス、シス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート
を用い、同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
試験例2
直径28mm、内高13mm、底面積6.15cmであるシャーレに本発明化合物(1)、(3)、およびペルメトリン[3−フェノキシベンジル=(1RS)−トランス、シス−3−(2、2−ジクロルエテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート]0.1mgを含む0.2%アセトン溶液0.05mLを滴下し、底面に均一になるよう拡げた後、2連球でアセトンを除去する。各試料が底面に保持されたシャーレに、アカイエカの雌3匹を入れ、穴あきフィルムで上側をカバーした後、5分毎にノックダウン数を記録し、KT50(50%ノックダウンする時間)と24時間後の致死率を測定しかつ記録する。ノックダウン率につき所定以上の数値を示す試料については、前記0.2%アセトン溶液に更にアセトンを加えて10倍に希釈し、0.02%アセトン溶液とし、前記の各器具(シャーレ)、試験方法を順次繰り返した。
以下、同様に処理し、各化合物として0.001mgまで希釈した試料の効力を表2に示す。
【0061】
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明化合物は優れた有害生物防除効力を有することから、有害生物防除剤の有効成分として有用である。