特許第6061760号(P6061760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061760セルロース組成物、Oリング、および非粘着性の被膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061760
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】セルロース組成物、Oリング、および非粘着性の被膜
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20170106BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20170106BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20170106BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20170106BHJP
   B29C 47/00 20060101ALI20170106BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C08L27/12
   C08L1/02
   C08J7/00 301
   C08J7/00CFH
   C08J7/04 ZCEW
   B29C47/00
   B05D7/24 302L
   B05D7/24 302C
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-77577(P2013-77577)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-221151(P2013-221151A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】13/446,227
(32)【優先日】2012年4月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン・ピー・ムーアラグ
(72)【発明者】
【氏名】ユー・チ
(72)【発明者】
【氏名】ブリン・エム・ドゥーリー
(72)【発明者】
【氏名】チー・ツァン
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−222198(JP,A)
【文献】 特開2013−222197(JP,A)
【文献】 特開2013−221153(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031444(WO,A1)
【文献】 特開2011−184816(JP,A)
【文献】 特開2011−148939(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116527(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/116393(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/069641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00
C08L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の固体含量に対して1重量%から30重量%までの量で存在するセルロース材料と、
組成物の固体含量に対して99重量%から70重量%までの量で存在するフルオロポリマーと、
任意の滑沢剤と、
任意の発泡剤と、
任意の界面活性剤と、
任意の相溶剤と、
を含む組成物であって、
前記セルロース材料は、以下に示すβ(C1→C4)結合によって互いに結合するC10D−グルコース単位からなり、
【化1】
式中、nは、150から5000である、組成物
【請求項2】
前記セルロース材料が、繊維、フレーク、ウィスカー、またはフィブリルの形態である、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記セルロース材料が、結晶質形態である、請求項1に記載の組成物
【請求項4】
前記セルロース材料が、非晶質形態である、請求項1に記載の組成物
【請求項5】
前記フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とビニリデンフルオリド(VDFまたはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)とビニリデンフルオリド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー;およびテトラフルオロエチレン(TFE)とビニリデンフルオリド(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)と硬化部位モノマーとのテトラポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物
【請求項6】
請求項1に記載の組成物から形成された被膜を有するOリング。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物から形成された、非粘着性の被膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、フルオロポリマー中に組み込まれて、種々の適用のための被膜として使用され得るセルロース複合物に関する。この適用は、窓、建築パネル、眼鏡、調理器具ならびに機械部品および電気部品(Oリングを含む)、電気機器部品、ならびに乾式複写用部品および相変化インクジェット部品のための、強固且つ粘着せず剥がれる被膜を必要とする。
【背景技術】
【0002】
本出願は、一般に、フルオロポリマーセルロース強化複合物に関し、ここで、このセルロースは、繊維、フレーク、ウィスカー、フィブリルおよび/または他の非晶質形態もしくは結晶質形態であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
強度が高く、重量が軽く、そして製造が容易な複合物が必要とされている。生分解性であり、再生可能な資源から製造される複合物が、必要とされている。このような物質は、種々の産業において利用を見出す。容易に処理され得る複合材料が、必要とされている。
【0004】
フルオロポリマーは、化学的安定性および熱的安定性に優れ、そして摩擦係数が低いため、種々の適用に有益である。フルオロポリマーの機械的特性は、特定の適用に受け入れられ得る傾向があるが、フルオロポリマー材料の強度および処理の改善が、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態にしたがって、約1重量%から約30重量%までの量で存在するセルロース材料、および約99重量%から約70重量%までの量で存在するフルオロポリマーを含む複合物質が、記載される。
【0006】
別の実施形態にしたがって、複合物質を製造する方法が記載される。この方法は、約1重量%から約30重量%までの量で存在するセルロース材料と約99重量%から約70重量%までの量で存在するフルオロポリマーとの混合物を提供することを含む。この方法は、この混合物を、ある形状に押し出し成型し、そしてこの形状の混合物を約170℃から約360℃までの温度まで加熱して、この物質を形成することを含む。
【0007】
別の実施形態にしたがって、複合被膜を製造する方法が、提供される。この方法は、約1重量%から約30重量%までの量で存在するセルロース材料と約99重量%から約70重量%までの量で溶媒中に存在するフルオロポリマーとの混合物を提供することを含む。この方法は、この混合物を、基材上に被覆し、そしてこの混合物を、約170℃から約360℃までの温度まで加熱して、被膜を形成することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中で、フルオロポリマーとセルロースとの複合物が記載される。この複合物は、改善された機械的強度を示す。本開示において、セルロースの繊維または粒子のフルオロポリマーへの分散が、記載される。生じた複合物は、セルロース材料の機械的強度ゆえの、増強された機械的特性を示す。この混合物は、化学的安定性および熱的安定性を維持する。このフルオロポリマーは、高い表面エネルギーを提供し、それにより低摩擦表面が得られる。得られた材料は、広範な適用のために望ましく、これらの適用としては、自動車部品および他の製造用部品、耐久性のある非粘着性の被膜、Oリングおよび電気部品、ならびに乾式複写用部品および相変化インクジェット部品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
セルロースは、豊富な材料であり、植物に由来し、そして天然のポリマーを含み、それが高い強度および靭性を複合材料に付与する。これは、繊維、フレーク、ウィスカー、フィブリルの形態およびまたは他の非晶質形態もしくは結晶質形態であってもよい。高強度のセルロースをフルオロポリマー中に組み込むことによって得られる利点は、引張り強度、剛性、および靭性の改善である。セルロースのフルオロポリマー中への組み込みは、低いエネルギー消費しか必要としない、再生可能且つ、広範に利用可能な生分解性材料を得ることを可能にする。
【0010】
セルロースの繊維および粒子は、セルロース強化材料の供給源として使用されるパルプ繊維(木、他)の入手可能性および再生可能性ゆえに、種々の適用のためのバイオ複合材料の調製用に興味を持たれている。セルロース粒子の幾つかの一般的適用は、特にビタミンの錠剤および丸剤カプセルの、乳化剤、増量剤または調質剤としてである。生物学的適用において、非晶質セルロース粒子は、高強度且つ可撓性であって、非毒性かつ生分解性の材料を生産するために有用である。セルロースは、繊維、フレーク、ウィスカー、フィブリルおよびまたは他の非晶質形態または結晶質形態で、使用され得る。
【0011】
セルロース塩基性化学的組成物は、以下に示すβ(C1→C4)結合によって互いに結合するC10D−グルコース単位から成る。
【化1】
セルロースは、約300から約10,000までの結合したD−グルコース単位の直鎖から成る。天然由来のセルロース(セルロースIと呼ばれる)、または代わりにセルロースの処理形態(例えば、セルロースII、セルロースIIIおよびセルロースIVと呼ばれ、セルロースIに由来する処理セルロース形態)が、本明細書中の開示において、使用され得る。セルロース結晶構造は、β−セルロース鎖の間にありこれらを横切る水素結合の並びに対応する。ここで、セルロースIは、結晶配列IαもしくはIβ、またはIαとIβとの混合物を、含み得る。さらに、種々の形態でセルロースを得るために必要な種々の処理手順ゆえに、セルロース鎖は、残留する官能基を含み得る。セルロース鎖に結合する残留する官能基の1つの例は、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、硝酸エステルおよび硫酸エステルのようなエステル類である。セルロース鎖に結合する残留する官能基の別の例は、メチルエーテル、エチルエーテル、水酸化エチルおよび水酸化プロピルのようなエーテル類である。
【0012】
セルロース材料は、再生可能な、広範に利用可能な供給源から由来し、ほとんどエネルギーがかからず処理され得る。さらに、セルロース粒子は、生分解性である。セルロースの表面の基は、処理、湿潤化、もしくはポリマーマトリックスとの適合性を調整するために、化学的官能性付与、または界面活性剤の添加を可能にする。セルロースの化学的官能性付与の例としては、アルキルもしくはベンジルアミン、イミン、ハライド、アルコキシド、ヒドロキシド、酸ハライド、またはシロキシハライドによる官能性付与が挙げられる。セルロースの表面特性を改善するための化学的界面活性剤の例としては、アンモニウム塩、例えば、アルキルもしくはアリールの第4級アンモニウムハライド塩;アルキルアミンまたはアリールアミン;リン酸塩、リン酸エステル、スルホン酸塩、カルボン酸塩、またはさらなる官能性界面活性剤が挙げられる。セルロース鎖における官能性付与は、約1%から約30%までのグルコース単位、または約5%から約20%までのグルコース単位、または約10%から約15%までのグルコース単位の比で存在し得る。
【0013】
セルロースの粒子サイズは、1000ミクロン長であり得るセルロース鎖から20nmの短さであり得るナノ結晶セルロース鎖までに変動し得る。セルロースの形状および大きさは、生じる特性に大きな影響を及ぼす。1ミクロン未満の小さなサイズ寸法のセルロース粒子は、一般に、機械的特性の所望の改変を達成するために、より低い比重で組み込まれることが必要である。セルロース粒子の分散および粒子安定性のために必要な処理工程の種類および数は、セルロース粒子のサイズ寸法および種類に依存する。
【0014】
セルロースは、結晶質形態であっても、非晶質形態であってもよい。使用される粒子の大きさは、約20nmから約3000nmまで、もしくは約35nmから約1000nmまで、もしくは約50〜700nmのサイズ範囲;または約5ミクロンから約500ミクロンまで、もしくは約10ミクロンから約100ミクロンまで、もしくは約20ミクロンから約50ミクロンまでのサイズ範囲;または約500ミクロンから約5000ミクロンまで、もしくは約700ミクロンから約4000ミクロンまで、もしくは約1000から約3000ミクロンまでのサイズ範囲の、3つの別個のサイズ範囲内であってもよい。セルロース粒子は、長さ対太さの比が10以上の鎖の形態であってもよい。フルオロポリマー中に分散するセルロース粒子の量は、約1重量%から約30重量%まで、もしくは約1重量%から約10重量%まで、もしくは約1重量%から約5重量%までである。
【0015】
高い強度のセルロース粒子または繊維をフルオロポリマー複合物中に分散することによって得られる利点としては、引張り強度、剛性および靭性の改善が挙げられる。セルロースのフルオロポリマー複合物中への組み込みは、低エネルギー消費しか必要としない、再生可能であり、広範に利用可能な生分解性材料である強化材料の入手を可能にする。セルロースはまた、その低い費用に起因して、望ましいフィラー材料でもある。
【0016】
本明細書中で記載される処方物における使用に好適なフルオロポリマーとしては、フッ素含有ポリマーが挙げられる。これらのポリマーとしては、モノマーリピート単位を含むフルオロポリマーが挙げられ、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルおよびこれらの混合物からなる群より選択される。フルオロポリマーは、直鎖状または分枝鎖状のポリマー、および架橋フルオロエラストマーを含み得る。フルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFもしくはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)と硬化部位モノマーとのテトラポリマー;およびこれらの混合物が挙げられる。フルオロポリマーは、化学的安定性および熱的安定性を提供し、低い表面エネルギーを有する。複合物中のフルオロポリマーの量は、約99重量%から約70重量%まで、もしくは約99重量%から約90重量%まで、もしくは約99重量%から約95重量%までである。フルオロポリマーは、約170℃から約360℃までまたは約240℃から約330℃までの硬化温度または融点を有する。これらの粒子は、加熱されて、複合物を形成する。
【0017】
最も広い用語において、この複合材料は、約1重量%から約30重量%までの範囲の量で存在する少なくとも1種のセルロース材料、および約99重量%から約70重量%までの範囲内の量で存在するフルオロポリマーを含む。
【0018】
セルロース材料は、木のパルプ、綿、種の殻、挽いたもみがら、新聞、ケナフ、ココナッツの殻、バガス、トウモロコシの穂軸、ピーナッツの殻、およびこれらの混合物から選択され得る。
【0019】
複合物の調製の前に、セルロース粒子の溶媒中へのデアグロメレーションおよび分散が、溶媒中でのミル粉砕器具内の粉砕によって、実施され得る。使用される製粉ミル粉砕器具は、約0.1mmから5mmのサイズの、ステンレス鋼、セラミック、ポリマーまたは他の球面器具によって実施され得る。分散に使用される溶媒としては、ケトン、アルコール、アセトニトリル、トルエンまたは他の溶媒が挙げられ得る。セルロース粒子は、約5重量%から約30重量%まで、もしくは約10重量%から約20重量%まで、もしくは約12重量%から約15重量%までの間の百分率で、溶媒中に入れられる。デアグロメレーションおよび分散の後、セルロース粒子は、フルオロポリマー溶液または分散液と合わせられ、ここで、溶媒中にこのフルオロポリマーは、約10重量%から約40重量%まで、または約15重量%から約30重量%まで、または約20重量%から約25重量%までの割合で、入れられる。混合に続いて、セルロース/フルオロポリマー分散液は、複合被膜または複合物質を調製するために使用される。
【0020】
この複合物質は、本明細書中で開示される複合物を押し出し成型することによって製造される、押し出し成型物質であってもよい。
【0021】
セルロース複合物を押し出し成型する方法は、本明細書中で記載される。この方法は、以下の工程を含む:(1)フルオロポリマーおよびセルロース粒子を押し出し成型器内に入れる;(2)複合物を上述のように押し出す;(3)この複合物を、充分な時間充分な温度で加熱して硬化させ、固形の押し出し成型物を形成する。他の実施形態において、押し出し成型した複合物は、溶媒系において溶液または分散液を形成するために使用される。溶液または分散液の被覆または鋳造の後、乾燥した組成物を充分な時間充分な温度で加熱して、融解したかまたは硬化した物質を形成する。
【0022】
必要に応じて、熱硬化性材料を加えて、このフルオロポリマーとセルロースとの複合物の湿度吸収性および強度のような特性を改善することができる。使用され得る熱硬化性材料は、アミン、シロキサン、アミノシロキサン、イソシアネート、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂、ならびにこれらの混合物である。
【0023】
プラスチック処理産業において公知の、一般的な市販の滑沢剤(内部および外部の両方)が、使用され得る。使用され得る滑沢剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、エステル類、パラフィン蝋およびアミド蝋が挙げられる。
【0024】
さらなる成分、例えば、発泡剤、界面活性剤および相溶剤が、所望される場合、このフルオロポリマーとセルロースとの複合物に添加され得る。
【0025】
この混合物は、穴を有する錐型双スクリュー異方向押し出し成型器において、処理され得る。この材料を押し出し成型器に入れるには、圧送ホッパー(または「詰め込み器」)が、好ましいが、他の型のホッパーも使用され得る。
【0026】
フルオロポリマーとセルロースとの複合物は、被覆されて、層または表面被膜を形成することができる。セルロース粒子とフルオロポリマー粒子との溶液または分散液が、任意の好適な公知の様式で調製される。溶液のための媒体として使用される液体または溶媒は、水、アルコール、C〜C18脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、ドデカンなど)、C〜C18芳香族炭化水素(例えばトルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンなど)、エーテル、エステル、ケトンおよびアミドを含み得る。液体は、フルオロポリマー粒子とセルロース粒子との分散のための媒体を提供する。フルオロポリマーおよびセルロース粒子の複合材料から物質を形成するための代表的な技術としては、流し塗り、液体スプレーコーティング、浸漬被覆、巻線ロッド被覆、バーコーティング、流動層コーティング、パウダーコーティング、スプレーコーティング静電スプレー、ソニックスプレー、ブレードコーティング、鋳造、積層などが挙げられる。溶液が被覆された後、被膜は加熱されて硬化され、フルオロポリマー粒子を融かす。
【0027】
セルロース粒子強化フルオロポリマー複合材料は、約500psiから約5000psiまで、もしくは約1200psiから約2200psiまで、もしくは約1400psiから約1800psiまでの範囲の引張り強度;約500in・lbs/inから約5000in・lbs/inまで、もしくは約1500in・lbs/inから約4000in・lbs/inまで、もしくは約2400in・lbs/inから約3000in・lbs/inまでの範囲の剛性;および約400psiから約3000psiまで、もしくは約500psiから約2000psiまで、もしくは約600psiから約1000psiまでの範囲の初期弾性率を有し得る。実施形態において、上述の機械的特性は、当該分野で公知のASTM D412方法を用いて測定され得る。
【実施例】
【0028】
実施例1−セルロースのフルオロエラストマー中への分散
フルオロエラストマー複合物を、以下のように調製した:メチルセルロースを、2mmのステンレス鋼ミル粉砕器具を用いて粉砕することにより、メチルイソブチルケトン中にデアグロメレートして分散し、安定的な、乳白色の分散液を得た。メチルセルロースを、約15%の割合でメチルイソブチルケトンに入れた。メチルセルロース分散液を、Viton GF(E.I.du Pont de Nemours,Inc.から入手可能)と合わせ、そしてケトン中に、約20重量%の固体含量で溶解した。その後、分散液は安定し、合計約5%の改変セルロースをViton中に含んだ。
【0029】
実施例2−セルロース/フルオロエラストマートップコート層の調製
実施例1に記載のセルロース/フルオロポリマー分散液を、適切な引き抜きコーティングを介してアルミニウム基材上に被覆し、乾燥させて約30ミクロン厚のフィルムを形成した。この被膜を、その後、177℃まで16時間に亘る段階的処理により、硬化させた。
【0030】
実施例3−NCC/フルオロエラストマー複合物の調製
フルオロエラストマー複合物を、以下のように調製した:約0.5gの約150nmナノ結晶セルロース(NCC)ウィスカーおよび約50gのViton GF(E.I.du Pont de Nemours,Inc.から入手可能)を、約170℃で双スクリュー押し出し成型器を用いて、1分間に約20回転(rpm)の回転速度で約20分間混合し、約1重量%のNCCナノ粒子を含むポリマー複合物を形成した。類似の手順を使用し、2種の他のフルオロエラストマー複合物(それぞれ、3重量%および10重量%のNCCナノ粒子を含む)を調製した。
【0031】
実施例4−NCC/フルオロエラストマートップコート層の調製
実施例3からのNCC複合物を含む3種の被膜組成物を調製し、それぞれ、メチルイソブチルケトン(MIBK)中に溶解した約17重量%のフルオロエラストマー複合物を含み、5重量%のVITON(登録商標)−GFおよびAO700架橋剤(Gelest製のアミノメチルアミノプロピルトリメトキシシラン架橋剤)および24重量%メタノールと合わせられた。被膜組成物を、3枚のアルミニウム基材上にバーコーターで被覆し、そして被膜を、段階的な熱処理により、49℃と177℃との間の温度で約24時間に亘って硬化させた。
【0032】
実施例5−NCCのフルオロプラスチックおよび被膜調製物への分散
被膜処方物を、2−プロパノール中にDuPont製のMP320粉末PFA(粒子サイズは15ミクロンを超える)および約150nmナノ結晶セルロースウィスカーを、総固体含量20重量%で分散させることにより、調製した。NCCの重量%対NCCおよびPFAの総重量は、1、3、および10%である。2−プロパノール中の成分の分散は、音波処理の繰り返しによって補助する。次いで、分散液を、シリコンゴム基材上にPaasheエアブラシを用いてスプレーする。被膜を、350℃で15〜20分間に亘って加熱処理することにより硬化させ、複合フィルムを形成する。
【0033】
強化フルオロポリマーおよびセルロース粒子の利点には、複合材料の生来の高い強度が挙げられる。セルロース粒子は、従来の繊維と比較して有為な強化を提供する。セルロース材料は、再生可能な、広範に利用可能な供給源に由来し、低エネルギー消費を介して処理され得る。セルロース材料は、生分解性である。セルロース粒子の表面の基は、処理、湿潤化、もしくはフルオロポリマーマトリックスとの適合性を調整するために、化学的官能性付与、あるいは界面活性剤の添加を可能にする。