(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークの下側に位置するダイを複数備えると共にワークの上側に位置し前記ダイに対応するパンチを複数備え、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた前記パンチとダイによりワークを加工するパンチプレスにおいて、
前記打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされたダイを、ワークの移動時にワークのパスラインよりも下方位置に下降させて保持すると共に、加工時にワークのパスラインまで押し上げるダイ昇降機構と、
前記ダイ昇降機構によって押し上げたダイに対し、前記パンチに向かって更に上方へ押圧変位する力を与えることで、前記ダイによってワークを成形させる押圧機構と、
をそれぞれ独立して作動し得る別々の作動機構として備えることを特徴とするパンチプレス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワークの裏面がダイの上端面に干渉して傷付くのを避けるために、あらかじめダイを上端面がワークのパスラインよりも低い位置となるように設定しておき、加工時に必要とするダイのみをダイ上昇機構によってパスラインまで上昇させる機構を備える前記特許文献1に記載のパンチプレスにおいては、ワークの下側のダイによる上向き成形機能は備わっていなかった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、ワークの下側のダイによる上向き成形機能を備えたパンチプレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明のパンチプレスは、ワークの下側に位置するダイを複数備えると共にワークの上側に位置し前記ダイに対応するパンチを複数備え、打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた前記パンチとダイによりワークを加工するパンチプレスにおいて、前記打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされたダイを、ワークの移動時にワークのパスラインよりも下方位置に下降させて保持すると共に、加工時にワークのパスラインまで押し上げるダイ昇降機構と、前記ダイ昇降機構によって押し上げたダイに対し、前記パンチに向かって更に上方へ押圧変位する力を与えることで、前記ダイによってワークを成形させる押圧機構と、をそれぞれ独立して作動し得る別々の作動機構として備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のパンチプレスであって、前記割り出し位置決めされたダイに応じて選択されて前記ダイ昇降機構の昇降ラムの上端と前記ダイとの間に着脱自在に配置される複数のアタッチメントを備えており、それらアタッチメントの1つとして、前記押圧機構の少なくとも主要素が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のパンチプレスであって、前記アタッチメントの1つとして、前記押圧機構に相当する油圧シリンダ機構が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2に記載のパンチプレスであって、前記押圧機構が、上面に斜面を有し前記昇降ラムの上端に載る第1のクサビと、下面に斜面を有しその斜面を前記第1のクサビの上面の斜面に摺動自在に重ねる第2のクサビと、該第2のクサビを水平方向に移動させることで、前記斜面同士の摺動により前記第2のクサビを第1のクサビに対して昇降させるスライド機構と、を具備しており、前記第1のクサビが、前記アタッチメントの1つとして設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、ダイ昇降機構を有するパンチプレスに対して、押圧機構によりダイによる上向きの成形機能を持たせることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、ダイ昇降機構の昇降ラムの上端に選択的に配置されるアタッチメントの1つとして、前記押圧機構の少なくとも主要素が設けられているので、必要な場合にだけ、ダイによる上向きの成形機能を持たせることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、シリンダ機構を作動させることで、ダイによる上向きの成形機能を発揮することができる。また、シリンダ機構がストローク制御のできない定量移動タイプのものであっても、ダイ昇降機構の昇降量を調整してシリンダ機構の位置自体を高さ方向に制御することによって、パスラインから上方へのダイのストロークを任意に変更することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、アタッチメントの中から第1のクサビを選択して昇降ラムの上端に載せ、その第1のクサビの上に第2のクサビを載せ、ダイ昇降機構の動作により両クサビの高さを調整した上で、第1のクサビに対して第2のクサビをスライド機構によってスライドさせることにより、ダイを昇降させることができ、それにより、ダイによる上向きの成形機能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は第1実施形態のパンチプレスとしてのタレットパンチプレスの全体構成図、
図2〜
図6はその要部の断面図である。
【0017】
図1に示すように、このタレットパンチプレスは、本体フレーム1の中央に空隙3を備えている。この空隙3の上側にある上部フレーム5には、複数のパンチPを装着した上タレット7が回転軸9により回転可能に支持されている。また、空隙3の下側にある下部フレーム11には、複数のダイDを装着した下タレット13が回転軸15により回転可能に支持されている。これら上タレット7および下タレット13は、図示しない回転割出し機構により同期して回転割り出し自在となっている。
【0018】
また、上部フレーム5には上下シリンダ17が設けられており、この上下シリンダ17のピストンロッド19の下端には、加工位置に割り出されたパンチPに打ち抜き加工のための押圧力を加えるためのラム21が取り付けられている。このラム21の下側には、加工位置に割り出されたパンチPを打圧して打ち抜き加工を行うためのストライカ(図示略)や、上タレット7の径方向に並んで設けられているパンチPのうち、実際に打ち抜き加工に使用するパンチPのみを打圧するためにストライカを移動させるストライカシフトシリンダ(図示略)が設けられている。
【0019】
一方、下部フレーム11における加工位置、すなわち前述のパンチPとの協働で打ち抜き加工を行うべく割り出されたダイDの下方には、パンチPに対応してダイDを持ち上げるためのダイ押し上げ機構(ダイ昇降機構)27が設けられている。
【0020】
また、上下のタレット7、13の側方には、被加工材であるワークWを加工位置に移動・位置決めするワーク位置決め装置29が設けられている。このワーク位置決め装置29は、表面に例えばブラシを備える加工テーブル33と、Y軸方向(
図1中で左右方向)に移動するキャリッジベース35と、キャリッジベース35上をX軸方向(
図2において紙面に対して直交する方向)に移動するX軸キャリッジ45とを有している。
【0021】
加工テーブル33は、固定テーブル31と、固定テーブル31の両側に位置する可動テーブルとからなる。キャリッジベース35は、固定テーブル31を跨いで配置されており、可動テーブルと一体的にY軸方向に移動・位置決めできるようになっている。キャリッジベース35は、Y軸モータ37と軸受39とにより回転可能に支持されたY軸ボールネジ41の回転により移動・位置決めされる。X軸キャリッジ45は、ワークWをクランプするクランパ43を有しており、図示略のX軸移動機構によりX軸方向に移動・位置決めされる。
【0022】
上記の構成により、キャリッジベース35及びX軸キャリッジ45を移動させることによって、クランパ43によりクランプされたワークWの加工すべき位置を、タレットパンチプレスのパンチPとダイDによる加工位置に位置決めすることができる。
【0023】
一方、上下のタレット7、13は同期して回転し、加工に使用するパンチP及びダイDを加工位置に割り出して、上下シリンダ17によりラム21がストライカを介してパンチPを打撃することにより、ワークWの所望位置にプレス加工を行う。
【0024】
下タレット13の外周側の上面には、円周方向に沿って複数のダイホルダ47が着脱可能に取り付けられており、各ダイホルダ47にダイDが着脱可能に装着されている。
図2に示すように、ダイDは、円筒形状のリフタパイプ53の上端開口部にそれぞれ装着されており、リフタパイプ53は、下タレット13の貫通孔及びダイホルダ47の貫通孔に対して上下方向移動可能に収容されている。また、リフタパイプ53は、下タレット13に対して、図示略のスプリングにより下方に押し付けられており、ダイ押し上げ機構27によってスプリングの弾性力に抗して上方に押し上げられるようになっている。
【0025】
また、下タレット13のダイホルダ47の取付位置に対応する位置には、下タレット13の回転中心を中心とする同心円状の3つのトラックが、内周側から外周側に向けて順に設定されており、これら3つのトラックのいずれかに対応して各ダイホルダ47上にダイDが配置されている。
ダイ押し上げ機構27には、台形ねじ式ダイ上下移動機構が採用されている。すなわち、下部フレーム11には、内周面に雌ねじを備える大略円筒形状の雌ねじ部材63が固定されており、この雌ねじに螺合する雄ねじを下端に備える円筒形状の昇降ラム65が、雌ねじ部材63に対して回転可能に収容されている。
【0026】
図2は昇降ラム65が最上端に位置している状態を示している。この状態では、後述するダイ保持手段としてのアタッチメント101〜103、110を介してリフタパイプ53を上昇させ、このリフタパイプ53に対応するダイDの上端面を、ワークWの搬送経路となるパスラインPLの位置まで上昇させている。
【0027】
雌ねじ部材63の上端には、昇降ラム65と共に回転する回転駆動リング69が回転可能に配置されている。回転駆動リング69は、昇降ラム65の雄ねじより上部の部分に対してスプライン結合されており、これにより昇降ラム65は、回転駆動リング69に対し一体的に回転可能であると同時に、相対的に昇降可能となっている。
【0028】
回転駆動リング69の外周にはギヤ部が形成されており、このギヤ部に歯付きベルト71が噛合している。歯付きベルト71は、下部フレーム11に取り付けられた駆動モータ73の駆動軸に取り付けられたギヤ部に噛合している。そして、駆動モータ73の駆動により、歯付きベルト71を介して回転駆動リング69が回転し、これと共に回転する昇降ラム65が、雌ねじ部材63によるねじ作用によって昇降するようになっている。
【0029】
上記した昇降ラム65と下タレット13との間には、ダイDの種類によって選択される4つのアタッチメント101〜103、110が着脱自在に配置されるようになっている。そのうち3つのアタッチメント101〜103は、外周側〜内周側の3つのトラック上にそれぞれ位置するダイDを下降位置からパスラインPLまで押し上げるために用意されている。また、残る1つのアタッチメント110は、通常のパンチPによる下向き成形に使用されるものではなく、上向き成形に使用されるダイDをパンチPに向けて上向きに押圧変位させるための押圧機構として用意されており、油圧シリンダ機構により構成されている。
【0030】
この油圧シリンダ機構により構成されたアタッチメント(以下「アタッチメントシリンダ」ともいう)110は、ダイDを上向きに押圧変位させるために、昇降ラム65の上に載るシリンダ本体111と、シリンダ本体111の内部に上下方向摺動自在に嵌合しその上面にリフタパイプ53が載るピストン112と、ピストン112とシリンダ本体111との間に設けられ、油圧が導入されることでピストン112をシリンダ本体111に対して相対的に押し上げるシリンダ室113と、を有している。
【0031】
図3に示すように、これら各アタッチメント101〜103、110は、X軸方向に延設されたアタッチメントベース79に沿って移動可能に設けられている。加工位置に割り出し位置決めされたダイDに対応する位置にあるアタッチメント101〜103、110は、左右一対のフック81によって昇降ラム65と共に上下方向に移動できるように拘束される。
【0032】
フック81は、アタッチメント101〜103、110の端縁部を上下から挟持固定することでアタッチメント101〜103、110と一体化されており、アタッチメント101〜103、110のいずれか1つが加工位置に移動した際に、当該アタッチメント101〜103、110と一体化されたフック81が昇降ラム65の上端に係合することで、アタッチメント101〜103、110を昇降ラム65と共に上下方向に移動できるように拘束する。また、
図4に示すように、フック81の上部は、アタッチメント101〜103、110から離れる方向に突出しており、その突出した先端に、アタッチメント101〜103、110の回転を規制する回転規制シャフト83の上端が連結されている。
【0033】
図3に示すように、各アタッチメント101〜103、110は、ガイド85によって案内されながら、アタッチメント移動機構90により移動させられて、選択した1つのアタッチメント101〜103、110が加工位置に位置決めされるようになっている。
【0034】
なお、アタッチメント101、103には、エア供給源94より延ばした成形カスの噴出のためのエアブロー用のエア供給配管95が接続されている。また、アタッチメントシリンダ110には、油圧供給源96に繋がる油圧配管97が接続されている。
【0036】
上タレット7及び下タレット13を適宜回転させることで、加工に必要なパンチP及びダイDを加工位置に位置決めする。これとともに、ワーク位置決め装置29の移動・位置決め機能により、ワークWを下タレット13上の加工位置に位置決めする。この際、昇降ラム65が下降限位置にあることにより、ダイDはパスラインPLの下側に保持されており、ワークWをダイDに干渉することなく移動することができる。
【0037】
また、加工位置に位置決めしたダイDに対応するアタッチメントをアタッチメント101〜103、110の中から選び、選んだアタッチメント101〜103、110を昇降ラム65の上方に移動させて、昇降ラム65の上端面に載せる。そして、アタッチメント75と一体となって移動するフック81を昇降ラム65の上端に係合させることで、アタッチメント101〜103、110を昇降ラム65と一体に上下方向に移動できるようにすると共に、アタッチメント101〜103、110を回転規制する。
【0038】
この状態から、駆動モータ73を駆動して昇降ラム65を回転させると、昇降ラム65はねじ作用によって上昇し、昇降ラム65と一緒にアタッチメント101〜103、110もフック81とともに上昇する。そして、アタッチメント101〜103、110がリフタパイプ53の下端に当接し、リフタパイプ53をスプリングの下方付勢力に抗して上昇させ、打ち抜き加工位置にあるダイDの上端面をワークWのパスラインPLまで上昇させる。
【0039】
この状態で、下向き加工用のパンチPとダイDとアタッチメント101〜103を選択して加工位置に位置決めしている場合は、加工位置にあるパンチPを打圧してワークWに対して下向きに打ち抜き加工や成形加工を行う。
【0040】
また、上向き加工用のパンチPとダイDとアタッチメントシリンダ110を選択して加工位置に位置決めしている場合は、
図5に示すように、ダイ昇降機構27によってダイDがパスラインPLまで押し上げられた状態で、
図6に示すように、アタッチメントシリンダ110を作動させることで、ダイDの上端をパスラインPLより上側まで押圧変位させることができ、この動きによって、ダイDによりワークWを上向き成形することができる。
【0041】
この場合、油圧シリンダ機構として設けられたアタッチメントシリンダ110がストローク制御のできない定量移動タイプのものであっても、ダイ昇降機構27の昇降量を調整してアタッチメントシリンダ110の位置自体を高さ方向に制御することによって、パスラインPLから上方へのダイDのストロークを任意に変更することができる。
【0042】
ここで、下向き加工に対し上向き加工を行う場合のメリットについて簡単に述べる。
【0043】
通常のパンチPによる下向き加工の場合は、ダイDがパスラインPLに上昇し、ワークWの下面をダイDの上端で支持した状態で、パンチPが下降して下向き加工を行い、その結果としてワークWの下面に凸型の成形部ができる。そこで、下向き加工後にワークを移動させる際には、ワークWとダイDの干渉を避けるために、上述のようにダイDを下方位置に退避させる操作をワークの搬送の都度行う必要がある。また、下向き加工の場合は、ワークWを支持するブラシテーブルに成形部が擦れたり、ブラシによって成形部が持ち上げられることでワークWの姿勢が安定しなくなったりする問題があり、その対策が必要となる。また、それらの問題により、成形部の高さもあまり高くできない。
【0044】
それに反し、ダイDによる上向き加工の場合は、パンチPが下降してワークWを支持した状態で、ダイDが上昇して上向き加工を行うので、成形部がワークWの上側にできる。従って、もともと上側に退避動作を行うパンチと成形部との干渉の問題や、成形部がブラシテーブルと干渉する問題を考慮する必要がない。また、上タレットと干渉しない範囲で成形部を高く設定することができる。
【0045】
以上の説明のように、本実施形態によれば、ワークWをパスラインPLに沿って移動させて下タレット13上の加工位置に位置決めする際には、ダイDを、パスラインPLや固定テーブル31より下方に待機させてあるので、パスラインPLに沿って移動する際のワークWの裏面がダイDの上端面に干渉して傷付くことを防ぐことができる。そして、加工時には、必要とする加工に使用するダイDのみを、パスラインPLまで上昇させるので、上記したようにワークWの損傷を抑えつつ、加工に必要なダイDを使用して打ち抜き加工を実施することができる。
【0046】
また、ダイ昇降機構27の昇降ラム65の上端に選択的に配置されるアタッチメントの1つとしてアタッチメントシリンダ(押圧機構)110を備えているので、必要な場合にだけ、ダイDによる上向きの成形機能を発揮することができる。
【0047】
この場合、本発明のパンチプレスは、ダイ昇降機構であるダイ押し上げ機構27と、押圧機構であるアタッチメントシリンダ110とを、それぞれ独立して別々に作動し得る作動機構として備えているので、性能や特性を違えて使い分けることができる。すなわち、ダイ押し上げ機構27は、ワーク搬送時にダイDを下降位置へ退避させ、ワーク加工時にダイDをパスラインPLの高さに上昇させてその位置に保持するためのものであり、ダイDの位置決めを主眼とするものであるから、上昇時の推力はあまり必要ではなく、成形時の大きな圧力を受け止めながらダイDを定位置に位置決め保持できる機能(逆駆動されない機能)だけ備えていれば十分である。従って本実施形態のように、台形ねじ式の機構をあまり大きくない駆動モータ73で駆動する作動機構を採用する程度で要求性能を満たせる。
【0048】
一方、押圧機構は、ダイDに対して上向き成形のための押圧力を与えことを主眼とするものであり、上昇時に大きな推力を発揮できる。従って、本実施形態のアタッチメントシリンダ110のような油圧シリンダ機構などの大きな推力を発生し得る機構を採用した。
【0049】
また、本発明のパンチプレスでは、ダイ昇降機構(ダイ押し上げ機構27)と押圧機構(アタッチメントシリンダ110)とを別々の作動機構として備えるので、性能を分けて機構を採用することができ、それらの機構を必要な性能に応じて使い分けることで、無理なくスムーズに能力を発揮させることができる。
【0050】
また、本発明のパンチプレスでは、ダイ昇降機構(ダイ押し上げ機構27)と押圧機構(アタッチメントシリンダ110)とが独立して作動する構成になっているから、パンチPによる下向きプレスのときは、ダイ昇降機構だけを常時使用することにし、ダイDによる上向きプレスのときだけ、押圧機構をダイ昇降機構に加えて使用するように使い分けることができる。つまり、上記実施形態のように、押圧機構(アタッチメントシリンダ110)を選択的に使用する機構として装備しておくことにより、必要なときだけ使用することで、ダイDによる上向きプレスが可能なパンチプレスとして機能させることができる。
【0051】
言い換えると、押圧機構は、ダイDによる上向き成形を行うときだけ必要なものであって、パンチPによる下向き成形時には不要なものであるから、通常のパンチPによる下向き成形時には、邪魔にならないように取り外しできるように装備しておくのがよく、上述のようにアタッチメントシリンダ110という形で装備することにより、そのことが適うようになる。
【0052】
因みに、台形ねじ式のダイ押し上げ機構27は、駆動モータ73により歯付きベルト71を介して昇降ラム65を回転させ、雌ねじとの関係でダイDを昇降させる構造であるから、推力はせいぜい数kNあれば十分であるが、押圧機構(上記実施形態のアタッチメントシリンダ110)の推力は、プレス成形に必要な推力であるから、数百kN程度が条件となる。ダイ押し上げ機構27の駆動モータ73を大きくして、ベルト構成を変えるなどすれば、成形加工のための大きな推力を生じさせることも不可能ではないが、まったく現実的ではないと言うことができる。
【0053】
なお、上記第1の実施形態では、ダイDによる上向き成形機能を発揮するための押圧機構として、アタッチメントシリンダ110を用いた場合を説明したが、
図7の第2実施形態に示すように、クサビを用いてダイDを押圧変位させる押圧機構200を採用することもできる。
【0054】
この実施形態では、ダイDによる上向き成形機能を発揮するための押圧機構200として、上面に斜面201aを有し昇降ラム65の上端に載る第1のクサビ201と、下面に斜面202aを有しその斜面202aを第1のクサビ201の上面の斜面201aに摺動自在に重ねる第2のクサビ202と、第2のクサビ202を水平方向に移動させることで、前記斜面201a、202a同士の摺動により第2のクサビ202を第1のクサビ201に対して昇降させるスライド機構210と、が設けられている。
【0055】
スライド機構210は、流体圧シリンダ機構よりなり、アタッチメント101〜103(
図2参照)と反対側の下タレット13の内側に配置され、X軸方向に第2のクサビ202を前進・後退(加工位置と退避位置の間で移動)させることで、ダイDを昇降させることができるようになっており、昇降ラム65や第2のクサビ202と一緒に上下することができる。そして、第1のクサビ201が、前述したアタッチメントの1つとして装備され、必要時に加工位置に移動して昇降ラム65の上端にセットできるようになっている。
【0056】
この押圧機構を使用する場合は、アタッチメントとして用意された第1のクサビ201を加工位置に移動して昇降ラム65の上端に装着し、その状態でスライド機構210を作動させて第2のクサビ202を第1のクサビ201の上に重ねる。そして、昇降ラム65を上昇させてダイDをパスラインPLまで押し上げ、その状態で、スライド機構210により第2のクサビ202を前進させる(矢印Fの動き)。そうすると、クサビ201、202の協働作用により、ダイDが上方に向けて押圧変位し(矢印Gの動き)、ダイDによるプレス打ち抜き加工が行われる。
【0057】
このように、クサビ201、202を用いることによって、ダイDによる上向き成形機能を発揮することができる。