特許第6061772号(P6061772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミヨシ油脂株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061772
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】油中水型乳化組成物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   A23D7/00 500
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-92922(P2013-92922)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-212733(P2014-212733A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174702
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】小川 優子
(72)【発明者】
【氏名】横山 和明
(72)【発明者】
【氏名】大江 真史
(72)【発明者】
【氏名】小野 敬子
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶
(72)【発明者】
【氏名】彦エ さくら
(72)【発明者】
【氏名】東 杏子
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄己
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−197132(JP,A)
【文献】 特開2011−036227(JP,A)
【文献】 特公昭55−018503(JP,B1)
【文献】 米国特許第03889005(US,A)
【文献】 特開2000−270768(JP,A)
【文献】 特開平05−049398(JP,A)
【文献】 特公昭46−005023(JP,B1)
【文献】 特開昭61−166357(JP,A)
【文献】 特開2005−046139(JP,A)
【文献】 特開2006−333755(JP,A)
【文献】 特開2003−047401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0180113(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイ、および食塩を含有する油中水型乳化組成物。
【請求項2】
タンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.5〜20質量%、食塩を水分に対して3〜15質量%含有する請求項1に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項3】
タンパク質濃縮ホエイを組成物全量に対して0.1〜2.5質量%、食塩を組成物全量に対して0.5〜2質量%含有する請求項1または2に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項4】
乳化剤として、構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する請求項1から3のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。
【請求項5】
乳由来の呈味素材を含有する請求項1から4のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。
【請求項6】
油分を組成物全量に対して70質量%以上含有する請求項1から5のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の油中水型乳化組成物からなるマーガリン類。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の油中水型乳化組成物の製造方法であって、タンパク質濃縮ホエイおよび食塩を含有する水相を調製する工程と、食用油脂および乳化剤を含有する油相を調製する工程と、これらの水相と油相とを加温下で混合し、乳化する工程と、乳化後に冷却し、可塑化した油中水型乳化組成物を得る工程とを含む、油中水型乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーガリン類として使用される油中水型乳化組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マーガリン、ファットスプレッド等のマーガリン類として、塩、乳製品等の呈味成分を水相に溶解し、この水相を油相に混合し乳化した油中水型乳化組成物が用いられている。
【0003】
従来、マーガリン類の風味や食感を改善する技術として、特許文献1、2のような技術が提案されている。
【0004】
特許文献1は、1種類の油相に、少なくとも2種類以上の水相を別々に乳化した後、急冷し、練りを加えることによって油中水型乳化物を得る技術で、風味の改善を図っている。
【0005】
特許文献2は、水相中に脱脂粉乳等の乳タンパク質および乳清ミネラルを含有させることで風味と口溶けの改善を図っている。乳清ミネラルは、乳清から乳清(ホエイ)タンパク質と乳糖を分離除去し、精製して得られたものであるが、乳清ミネラルにはエグ味があるため、乳タンパク質と併用してもコク味が得られにくい。
【0006】
また特許文献3、4には、灰分量が少ないホエイタンパク質を添加することによって油中水型乳化組成物の安定性の改善を図る技術が記載されている。
【0007】
特許文献3は、脂肪分60質量%以下と油分の少ないスプレッドにおいて、比較的多量のホエイタンパク質を熱処理してゲル化させ、カルシウムを低減することによって、低脂肪でありながらエマルションの水相を安定化し、安定性のよいスプレッドを得る技術が記載されている。特許文献3で使用されるホエイタンパク質は、タンパク質濃縮ホエイ(WPC、WPI)と呼ばれるものであり、WPCはホエイから限外濾過によって乳糖とミネラルを除いたもので、タンパク質量が比較的多く、灰分が少ない。WPIはイオン交換膜によってホエイからタンパク質のみを吸着分離したもので、乳糖、乳脂肪をほとんど含まず、タンパク質量が比較的多く、灰分が少ない。
【0008】
特許文献4は、チーズホエイタンパク質またはレンネットホエイタンパク質を添加することによって、乳化剤をこれらのホエイタンパク質で代替し、乳化剤無添加であっても油中水型乳化組成物の乳化状態の安定化を図る技術が提案されている。特許文献4では、乳化状態の安定化を図るために低ゲル化タイプのタンパク質濃縮ホエイが使用されているが、この低ゲル化タイプのタンパク質濃縮ホエイも、ホエイから限外濾過やイオン交換によって乳糖や灰分を除去したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−195161号公報
【特許文献2】特開2007−509619号公報
【特許文献3】特開2010−148478号公報
【特許文献4】特開2010−11800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3、4で使用されているようなタンパク質濃縮ホエイは、灰分量が少ないため、塩味の増強効果がなく、風味を良好にすることはできない。
【0011】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、マーガリン類としての風味、特に塩味、コク味が共に良好で、口溶けの良い油中水型乳化組成物とその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の油中水型乳化組成物は、タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイ、および食塩を含有することを特徴としている。
【0013】
この油中水型乳化組成物において、タンパク質濃縮ホエイを水分に対して0.5〜20質量%、食塩を水分に対して3〜15質量%含有することが好ましい。
【0014】
この油中水型乳化組成物において、タンパク質濃縮ホエイを組成物全量に対して0.1〜2.5質量%、食塩を組成物全量に対して0.5〜2質量%含有することが好ましい。
【0015】
この油中水型乳化組成物において、乳化剤として、構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有することが好ましい。
【0016】
この油中水型乳化組成物において、乳由来の呈味素材を含有することが好ましい。
【0017】
この油中水型乳化組成物において、油分を組成物全量に対して70質量%以上含有することが好ましい。
【0018】
本発明のマーガリン類は、前記の油中水型乳化組成物からなる。
【0019】
本発明の油中水型乳化組成物の製造方法は、前記の油中水型乳化組成物の製造方法であって、タンパク質濃縮ホエイおよび食塩を含有する水相を調製する工程と、食用油脂および乳化剤を含有する油相を調製する工程と、これらの水相と油相とを加温下で混合し、乳化する工程と、乳化後に冷却し、可塑化した油中水型乳化組成物を得る工程とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マーガリン類としての風味、特に塩味、コク味が共に良好で、口溶けも良好である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の油中水型乳化組成物は、タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイ、および食塩を含有することを特徴としている。このタンパク質濃縮ホエイを食塩と併用することで、塩味を増強し、塩味を増強することによりコク味も向上し、低タンパク量かつ低塩分であっても良好な風味の油中水型乳化組成物が得られる。更に口溶けも良好である。
【0023】
このタンパク質濃縮ホエイは、乳を乳酸菌で発酵させ、または乳に酵素もしくは酸を加えてできた乳清(ホエイ)の乳糖を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものである。例えば、チーズ製造や酸カゼイン製造時に副産物として生成する甘性ホエイや酸ホエイを脱乳糖処理することによって製造することができる。このタンパク質濃縮ホエイ(脱乳糖ホエイパウダー)は、分離濃縮のために限外ろ過やイオン交換を行っていないため灰分量が多い。
【0024】
このタンパク質濃縮ホエイのタンパク質量は25〜30質量%、灰分量は15〜20質量%の範囲内である。これよりもタンパク質量が多いものは、分離濃縮時に灰分量も低下する傾向があり、良好な風味の油中水型乳化組成物が得られない。また水への分散性が悪くなるため、乳化安定性も低下する傾向がある。これよりもタンパク質量が少ないものは、タンパク質量が不足で良好な風味の油中水型乳化組成物が得られない。このように、本発明の油中水型乳化組成物は、低タンパク量かつ多灰分のタンパク質濃縮ホエイを食塩と併用したことを特徴としている。
【0025】
このタンパク質濃縮ホエイの組成は、これに限定されるものではないが、例えば、タンパク質25〜30質量%、灰分(Na、K、Ca等を含む)15〜20質量%、水分3質量%以下、脂質3質量%以下、炭水化物50〜55質量%である。
【0026】
本発明の油中水型乳化組成物におけるタンパク質濃縮ホエイと食塩の含有量は、水分に対してタンパク質濃縮ホエイ0.5〜20質量%、食塩3〜15質量%の範囲内が好ましい。また油中水型乳化組成物全量に対してタンパク質濃縮ホエイ0.1〜2.5質量%、食塩0.5〜2質量%の範囲内が好ましい。これらの範囲内であると、風味(塩味、コク味)がいずれも良い。また乳化安定性も良く、長期間の保存時や高温での保管時における離水などを抑制することができる。
【0027】
本発明の油中水型乳化組成物には、乳化剤が配合される。乳化剤を配合することで、乳化安定性はさらに向上し、離水の抑制効果がさらに高まる。乳化剤としては、構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステルが好ましい。構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステルを用いると、口溶けが特に良好になり、更に前記のタンパク質濃縮ホエイとの組み合わせによって塩味も向上する。
【0028】
ここで炭素数18以上の不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの中でも、オレイン酸が好ましい。
【0029】
また構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステルは、HLBが好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0030】
本発明の油中水型乳化組成物において、構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、組成物全量に対して0.01〜1質量%の範囲内が好ましく、0.05〜0.5質量%の範囲内がより好ましい。この範囲内であると、口溶けが特に良好になり、更に塩味も向上し、油中水型乳化組成物の製造時の乳化の点で問題が生じる可能性もない。
【0031】
本発明の油中水型乳化組成物には、前記の構成脂肪酸に不飽和脂肪酸を含むグリセリンモノ脂肪酸エステル以外に、他の乳化剤を併用することができる。
【0032】
他の乳化剤としては、親油性乳化剤が好ましく、中でもHLBが8以下のものが好ましい。具体的には、例えば、レシチン等を用いることができる。
【0033】
乳化剤は、構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステルが乳化剤全量に対して好ましくは55質量%以上を占め、より好ましくは60質量%以上を占め、更に好ましくは65質量%以上を占める。
【0034】
本発明の油中水型乳化組成物は、乳由来の呈味素材を含有することが好ましい。この乳由来の呈味素材をタンパク質濃縮ホエイと併用することで、組成物に重みのある乳感を付与し、コク味が向上する。
【0035】
乳由来の呈味素材としては、発酵乳もしくは乳酸菌飲料、すなわち乳などを乳酸菌もしくは酵母で発酵させたものを加工し、または主要原料としたものを用いることができる。例えば、これに限定されるものではないが、クリームチーズ、クリーム(乳製品)、脱脂粉乳を原料とし、組成が水分40〜45質量%、タンパク質3〜5質量%、脂質45〜50質量%、炭水化物4〜7質量%、灰分1質量%以下のものを使用できる。
【0036】
乳由来の呈味素材の含有量は、前記のタンパク質濃縮ホエイとの比率(呈味素材:タンパク質濃縮ホエイ)が質量比で4:1〜1:10の範囲内が好ましい。この範囲内でタンパク質濃縮ホエイと乳由来の呈味素材を併用すると、組成物に重みのある乳感を付与し、コク味が向上する。
【0037】
中でも、乳由来の呈味素材としては、pHが5以下のものを用いると、コク味が特に向上する。pHが5以下の乳由来の呈味素材の含有量は、油中水型乳化組成物全量に対して0.01〜1質量%の範囲内が好ましく、0.05〜0.5質量%の範囲内がより好ましい。この範囲内であると、コク味が向上し、かつ乳化安定性の低下も抑制することができる。
【0038】
本発明の油中水型乳化組成物に使用される油分としては、食用油脂、バター等が挙げられる。食用油脂は、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、大豆油、菜種油、綿実油、落花生油、米糠油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カボック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、サル脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂および動物油脂が挙げられ、更に、これらの食用油脂の硬化油、分別油、エステル交換油等の物理的または化学的処理を施した油脂を使用することもできる。また、固形油脂と液体油脂とを組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明の油中水型乳化組成物における油分の含有量は、油中水型乳化の安定化等を考慮すると、好ましくは組成物全量に対して70質量%以上である。
【0040】
本発明の油中水型乳化組成物における水分の含有量は、特に制限されるものではないが、好ましくは3〜30質量%である。
【0041】
本発明の油中水型乳化組成物には、以上の各成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、その他の成分を配合することができる。このような他の成分としては、油中水型乳化組成物に通常使用される香料、着色料、食品保存料、酸化防止剤、pH調整剤等の食品素材や食品添加物等が挙げられる。
【0042】
本発明の油中水型乳化組成物は、次の手順で製造することができる。
【0043】
まず、タンパク質濃縮ホエイおよび食塩を含有する水相を調製する。この水相には、油分のうちバター等を添加してもよい。また前記の乳由来の呈味素材を油中水型乳化組成物に配合する場合には、この乳由来の呈味素材を水相に添加する。
【0044】
また、食用油脂と乳化剤を含有する油相を調製する。
【0045】
これらの水相と油相は、好ましくは60℃以上に加温し、添加した成分を完全に溶解しておくことが望ましい。
【0046】
これらの水相と油相を加温下で混合し、乳化する。例えば、加温された油相に加温された水相をゆっくりと添加しながら乳化する。その後、必要に応じて、香料等の他の添加成分を加えてもよい。
【0047】
その後、加温された乳化物を冷却し、可塑化して本発明の油中水型乳化組成物を得ることができる。冷却、可塑化する装置としては、乳化物を急冷し練り合わせることができるものであれば特に限定されず、従来より知られているマーガリン製造機やそれに準じた構成の装置等を用いることができる。
【0048】
本発明の油中水型乳化組成物は、風味、特に塩味、コク味が共に良好で、口溶けも良いことから、ファットスプレッドやマーガリン等のマーガリン類に好適である。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1に示す配合量は質量%を示す。
【0050】
表1の実施例および比較例において、食用油脂は、パーム核油とパーム油のエステル交換油5質量%、豚脂35質量%、パーム分別軟質油10質量%、パーム分別軟質油のエステル交換油30質量%、菜種油20質量%を用いた。
【0051】
乳化剤Aは、炭素数18以上の不飽和脂肪酸量が構成脂肪酸に対して60質量%のグリセリンモノ脂肪酸エステル、乳化剤Bは、炭素数18以上の不飽和脂肪酸量が構成脂肪酸に対して1質量%のグリセリンモノ脂肪酸エステルを用いた。
【0052】
タンパク質濃縮ホエイAは、タンパク質26質量%、灰分17質量%のタンパク質濃縮ホエイ、タンパク質濃縮ホエイBは、タンパク質81質量%、灰分3質量%のタンパク質濃縮ホエイを用いた。
【0053】
呈味素材Aは、pH4.2の乳由来の発酵乳、呈味素材BはpH6.0の乳由来の発酵乳を用いた。
(油中水型乳化組成物の調製)
表1の実施例および比較例の配合の油中水型乳化組成物を次の手順に従って調製した。
1) 水にタンパク質濃縮ホエイ、乳由来の呈味素材、および食塩(比較例3は更に乳清ミネラル)を添加し、70℃に加温、混合して溶解し水相を得た。
2) 食用油脂に乳化剤を添加し、70℃に加温し混合して溶解し油相を得た。
3) 油相に水相をゆっくりと添加しながら乳化した後、香料を添加した。
4) 乳化物を急冷で練り合わせ、可塑性を有する乳化物を得た。
【0054】
実施例および比較例でそれぞれ得られた油中水型の乳化物について、次の評価を行った。
[乳化安定性]
乳化物を30℃で24時間保存した後、離水状態を観察し、次の基準により評価した。
◎:全く離水がなく良好な状態
○:離水が観察されず良好な状態
△:僅かに離水が観察された状態
×:完全に離水した状態
[風味(塩味)]
20℃に調温した乳化物を20名のパネラーにより官能的に評価した。その結果に基づいて次の基準により評価した。
◎:20名中、15名以上が塩味が良好と評価した。
○:20名中、10名以上15名未満が塩味が良好と評価した。
△:20名中、5名以上10名未満が塩味が良好と評価した。
×:20名中、5名未満が塩味が良好と評価した。
[風味(コク味)]
20℃に調温した乳化物を20名のパネラーにより官能的に評価した。その結果に基づいて次の基準により評価した。
◎:20名中、15名以上がコク味が良好と評価した。
○:20名中、10名以上15名未満がコク味が良好と評価した。
△:20名中、5名以上10名未満がコク味が良好と評価した。
×:20名中、5名未満がコク味が良好と評価した。
[食感(口溶け)]
20℃に調温した乳化物を20名のパネラーにより官能的に評価した。その結果に基づいて次の基準により評価した。
◎:20名中、15名以上が口溶けが良好と評価した。
○:20名中、10名以上15名未満が口溶けが良好と評価した。
△:20名中、5名以上10名未満が口溶けが良好と評価した。
×:20名中、5名未満が口溶けが良好と評価した。
【0055】
評価結果を表1に示す。なお、上記の各評価項目の結果(記号)は、換言すれば、◎は特に良好、○は良好、△は最低限でも評価項目の目的達成、×は目的未達である。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果より、タンパク質を25〜30質量%、灰分を15〜20質量%含有するタンパク質濃縮ホエイ、および食塩を含有する油中水型乳化組成物の実施例1〜18は、風味(塩味、コク味)、口溶け、乳化安定性のすべてがいずれも全体的に概ね良好であった。
【0058】
比較例1は、タンパク質濃縮ホエイを配合せず、風味(塩味、コク味)が悪く、特にコク味が悪かった。
【0059】
比較例2は、タンパク質濃縮ホエイとしてタンパク質が多く灰分の少ないものを使用したが、風味(塩味)に向上が見られず、乳化安定性もやや低下した。比較例3は更に乳清ミネラルを併用し塩味の向上は見られたが、乳清ミネラルにエグ味があるため、特にコク味が低下した。
【0060】
比較例4は、食塩を配合せず、乳化安定性は顕著に向上したが、特に口溶けが低下した。
【0061】
実施例1〜18のうち、水分に対してタンパク質濃縮ホエイAを0.5〜20質量%、食塩を3〜15質量%の範囲で配合し、組成物全量に対してタンパク質濃縮ホエイAを0.1〜2.5質量%、食塩を0.5〜2質量%の範囲で配合した油中水型乳化組成物は、風味(塩味、コク味)がいずれも良好であった。
【0062】
また、乳化剤として、構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステル(乳化剤A)を使用すると、風味(塩味、コク味)、口溶けがいずれも良好であった。
【0063】
なお、表1には示していないが、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用した場合と比べても、乳化剤として構成脂肪酸に炭素数18以上の不飽和脂肪酸を60質量%以上含むグリセリンモノ脂肪酸エステルを使用した場合には風味(塩味、コク味)、口溶けがいずれも向上した。
【0064】
また、タンパク質濃縮ホエイと共に乳由来の呈味素材を併用すると、コク味がさらに向上した。中でも、実施例1と実施例10との対比にも見られるように、乳由来の呈味素材としてpHが5以下のもの(呈味素材A)を使用すると、コク味は特に向上した。
【0065】
また、組成物全量に対して油分を70質量%以上含有することで、乳化安定性が良好となった。