(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホスファイト系化合物の配合量が、臭素化ブタジエン系重合体100重量部に対して2〜20重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
前記難燃剤が、臭素化ブタジエン系重合体に前記ホスファイト系化合物を配合して混練してなる溶融混練物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、ポリスチレン系樹脂と難燃剤と発泡剤を混練して得られる発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡する押出発泡体の製法が採用される。具体例としては、ポリスチレン系樹脂、難燃剤、必要に応じて気泡調整剤やその他の添加剤、再生ポリスチレン系樹脂組成物などを押出機に供給して、加熱、混練し、更に発泡剤を該押出機中に圧入して供給し、混練して得られた発泡性溶融樹脂組成物を、フラットダイを通して高圧の押出機内より低圧域(通常は大気中)に押出して発泡させ、該ダイの出口に配置された成形型〔平行あるいは入口から出口に向かって緩やかに拡大するよう設置された上下2枚のポリテトラフルオロエチレン樹脂等からなる板で構成されるもの(以下、ガイダーとも言う。)〕や成形ロール等の成形具を通過させることによって板状に成形して、ポリスチレン系樹脂押出発泡体(以下、単に押出発泡体ともいう。)を製造する方法が挙げられる。本発明の製造方法においては、後述する特定の難燃剤を用いる以外の基本的な製造方法は、従来公知の押出発泡体の製造方法を利用できる。
【0015】
本発明において押出機に供給されるポリスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレンやスチレンを主成分とするスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ジメチルスチレン共重合体、スチレン−エチルスチレン共重合体、スチレン−ジエチルスチレン共重合体等が挙げられる。上記スチレン系共重合体におけるスチレン単位成分含有量は50モル%以上が好ましく、特に好ましくは80モル%以上である。
【0016】
上記ポリスチレン系樹脂としては、本発明の目的、効果が達成される範囲内において、その他の重合体を混合したものであってもよい。その他の重合体としては、ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂(エチレン単独重合体及びエチレン単位成分含有量が50モル%以上のエチレン共重合体の群から選択される1種、或いは2種以上の混合物)、ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体及びプロピレン単位成分含有量が50モル%以上のプロピレン共重合体の群から選択される1種、或いは2種以上の混合物)、ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−エチレン共重合体等が挙げられ、これらの他の重合体は、ポリスチレン系樹脂中で50重量%未満となるように、好ましくは30重量%以下となるように、更に好ましくは10重量%以下となるように、目的に応じて混合することができる。
【0017】
本発明においては、発泡剤として、物理発泡剤を用いる。
物理発泡剤としては、(A)炭素数3〜5の飽和炭化水素と以下に示す(B)他の物理発泡剤とを含有する複合発泡剤を用いることが、背景技術に記載した観点から好ましい。
【0018】
(A)炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンなどが挙げられる。
この飽和脂肪族炭化水素は、単独又は2種以上併用して使用することができる。
(A)飽和炭化水素の中では、発泡性の点からプロパン、n−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましい。また、発泡体の断熱性能の点からn−ブタン、i−ブタンあるいはこれらの混合物が好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
【0019】
(B)他の物理発泡剤としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチルなどの蟻酸エステル類、塩化メチル、塩化エチルなどの塩化アルキル類、二酸化炭素、窒素、水などが挙げられる。また、オゾン破壊係数が0、かつ地球温暖化係数の小さいトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,2−テトラフルオロプロペンなどのフッ化不飽和炭化水素を用いることもできる。これらは、単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0020】
前記複合発泡剤においては、(A)飽和炭化水素の配合割合が10〜80モル%であり、(B)他の物理発泡剤の配合割合が90〜20モル%〔但し、(A)発泡剤と(B)発泡剤との合計量は100モル%〕であることが好ましい。配合割合がこの範囲内の複合発泡剤を使用することにより、安定的に高発泡倍率の押出発泡体の製造することができるようになると共に断熱性、難燃性に優れた押出発泡体を製造する上で好ましい。かかる観点から、(A)飽和炭化水素30〜70モル%と(B)他の発泡剤70〜30モル%〔但し、(A)発泡剤と(B)発泡剤との合計量は100モル%〕とを含有する複合発泡剤がより好ましい。
本発明における発泡剤の添加量は、発泡性溶融樹脂組成物1kg中に、0.5〜2.5モルとなるように添加することが好ましく、0.8〜2.0モルがより好ましい。
【0021】
本発明においては、前記したように、難燃剤として、臭素化ポリブタジエン系重合体と、特定のホスファイト系化合物を用いることを特徴とする。
臭素化ブタジエン系重合体は、ポリスチレン系樹脂の難燃剤として用いる場合に、優れた難燃性付与効果を示すものである。しかしながら、溶融加工時の熱安定性に劣るため、溶融加工条件によっては重合体から臭素が遊離しやすく、この臭素の遊離により難燃性付与効果を低下させる恐れや熱可塑性樹脂を分解させる恐れがある。さらに、臭素化ブタジエン系重合体はポリマーであるため、臭素の遊離によって該重合体中で炭素−炭素不飽和結合が形成されると、該重合体自体又はポリスチレン系樹脂が着色される恐れや、不飽和結合の架橋により臭素化ブタジエン系重合体のゲル化や黒点の発生の原因となり得るといった種々の問題点があった。難燃剤溶融混練物として押出機に供給することにより、押出時の押出発泡体の変色や黒点の発生、又は該押出発泡体を溶融再生した際の再生原料の変色や黒点の発生をより効果的に抑制することができる。
【0022】
一般に、溶融加工時に臭素の遊離を抑制するためには、熱安定剤を配合する方法が考えられ、代表的な熱安定剤としてホスファイト系化合物が挙げられる。本発明者等は臭素化ブタジエン系重合体に種々のホスファイト系化合物を配合した難燃剤を用いてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造することを試みたところ、前記した特定のホスファイト化合物を用いた場合には、意外にも、押出時の押出発泡体の黒点の発生や押出発泡体の変色を効果的に抑制できることを知見した。また、該特定のホスファイト系化合物を用いることで、押出発泡体又はその端材やスクラップを加熱溶融しリサイクル原料(再生樹脂)として再利用する際にも再生樹脂の分子量の低下や黒点・変色が抑制でき、更には、かかる再生樹脂の製造条件(溶融再生温度)を幅広く設定することが可能となるので、該再生原料を効率良く製造できることを知見した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
【0023】
本発明において、難燃剤として用いる前記臭素化ブタジエン系重合体それ自体は従来公知のものであり、たとえば特許文献1や2で開示されるものがそのまま使用できる。
【0024】
一般に、難燃剤として使用される臭素化ブタジエン系重合体は、ポリブタジエン換算で、重量平均分子量1000〜200,000程度、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは5,000〜100,000、さらに好ましくは50,000〜100,000のブタジエン系重合体を臭素化することにより製造される。
【0025】
臭素化ブタジエン系重合体は、ポリスチレン系樹脂との相溶性の観点から、スチレン系単量体成分単位を含むブロック共重合体、ランダム共重合体又はグラフト共重合体であることが好ましく(以下、これらを併せてポリスチレン−臭素化ポリブタジエン共重合体とも言う。)、ポリスチレン系重合体ブロックと臭素化ポリブタジエンブロックとのブロック共重合体であることがより好ましい。
また、スチレン系単量体としては、スチレン、臭素化スチレン、塩素化スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレンなどが例示でき、これらの中でも、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン又はこれらの混合物が好ましく、より好ましくはスチレンである。
【0026】
難燃性付与効果の観点から、臭素化ブタジエン系重合体中の臭素含有率は、60重量%以上であることが好ましく、より好ましくは63重量%以上である。なお、上記臭素含有率は、JIS K7392:2009に準じて測定される値である。
【0027】
ポリスチレン系樹脂中への分散性などを考慮すると、臭素化ブタジエン系重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、好ましくは100,000〜200,000程度であり、その200℃、剪断速度100sec
−1における溶融粘度は、4000〜8000Pa・s程度である。
【0028】
一般に、代表的な臭素化ブタジエン系重合体であるポリスチレン−臭素化ポリブタジエンブロック共重合体は下記一般式で表すことができる。
【0029】
【化1】
(式中、X、Y及びZは、正の整数である。)
【0030】
このようなポリスチレン−臭素化ポリブタジエン共重合体は、たとえばポリスチレン−ポリブタジエン共重合体を臭素化することにより製造される。
【0031】
本発明で好ましく用いられるポリスチレン−臭素化ポリブタジエン共重合体としては、Chemtura社のEmerald3000、ICL−IP社のFR122Pなどの市販品を挙げられる。
臭素化ポリブタジエン系重合体の配合量は、所望の難燃性により適宜決定されるものであるが、通常は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して、1〜10重量部程度配合され、好ましくは1.5〜7重量部である。
【0032】
本発明においては、臭素化ブタジエン系重合体の熱安定剤として、下記(1)及び(2)から選択される1種以上の特定なホスファイト化合物を用いる。
(1)2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト
(2)水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー
【0033】
上記(2)の水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマーは下記一般式で表される。
【0034】
【化2】
(式中、nは正の整数であり、好ましくは5〜15程度である。)
【0035】
これらのホスファイト系化合は、発泡性や成形性を阻害せず、臭素化ブタジエン系重合体の優れた難燃性付与効果を実現すると共に該臭素化ブタジエン系重合体による黒点の発生や変色を効果的に抑制することができる。また、製造された押出発泡体又はその端材やスクラップを加熱溶融しリサイクル原料(再生樹脂)として再利用する際にも再生樹脂の分子量の低下や黒点・変色が抑制できる効果を有する。更には、再生樹脂として用いた場合にもその製造条件(溶融再生温度)を幅広く設定でき、再生原料を効率良く製造することを可能とする。
【0036】
上記ホスファイト系化合物の配合割合としては、臭素化ブタジエン系重合体100重量部に対して、概ね2〜20重量部、更に3〜10重量部の範囲が好ましい。
【0037】
本発明において、前記臭素化ブタジエン系重合体と特定のホスファイト化合物は、臭素化ブタジエン系重合体に上記ホスファイト系化合物を配合して混練してなる溶融混練物として、押出機に供給して、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造することが好ましい。溶融混練物として押出機に供給することにより、より確実に黒点の発生や押出発泡体の変色を抑制できる。
【0038】
溶融混練時の溶融加工温度は、臭素化ブタジエン系重合体からの臭素の遊離を効果的に抑制するためには溶融混練時の樹脂温度は低いほど好ましく、概ね190℃以下、好ましくは185℃以下とする。一方、上記観点からは、溶融混練時の樹脂温度の下限は特に制限されることはないが、臭素化ブタジエン系重合体と熱安定剤とを安定して溶融混練するためには概ね140℃以上とすることが好ましく、150℃以上とすることが好ましい。
また、難燃剤溶融混練物は、計量性、取扱の容易性等から押出機からストランド状に押出した後、カットするなどしてペレット化しておくことが好ましい。
【0039】
本発明において、熱安定剤として特定のホスファイト系化合物が用いられるが、その他の熱安定剤として、ビスフェノール型エポキシ系化合物、ノボラック型エポキシ系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物から選択される1又は2以上の熱安定剤を用いることができる。
【0040】
ビスフェノール型エポキシ系化合物やノボラック型エポキシ系化合物としては、たとえばICL−IP製F2200HM、DIC製EPICLONシリーズ、HUNTUMAN製Araldaite ECN1280等を挙げることができる。
【0041】
ヒンダードフェノール系熱化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、押出安定性、難燃性の点から、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0042】
前記ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、または4−ヒドロキシ−1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの脂肪族または芳香族カルボン酸エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでも、押出安定性、難燃性の点から、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、又はビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケートが好ましい。
【0043】
効率よくかつ安定して上記溶融混練物を得るためには臭素化ブタジエン系重合体と特定のホスファイト化合物のほかに、さらに、臭素化ブタジエン系重合体に対する可塑化効果が高く臭素化ブタジエン系重合体の流動性を高める流動性向上剤として、リン酸エステル及びリン酸塩から選択される1以上のリン系化合物を用いることが好ましい。上記リン系化合物は、臭素化ブタジエン系重合体が有する優れた難燃性を阻害することがなく、溶融加工時あるいは押出加工時においても熱安定性に優れる。
【0044】
流動性向上剤を配合してなる溶融混練物のJIS K7210:1990の条件Hにおけるメルトフローレイト(MFR)は2〜30g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは5〜20g/10分である。
【0045】
上記臭素化ブタジエン系重合体に対するリン系化合物からなる流動性向上剤の配合量は、溶融混練物の流動性を向上させる機能が発揮され、かつ難燃性付与効果を阻害しない範囲であれば特に制約はないが、流動性向上剤が上記臭素化ブタジエン系重合体100質量部に対して3〜15質量部配合されていることが好ましく、更に5〜10質量部配合されていることがより好ましい。
【0046】
リン酸エステルの具体例としては、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシリルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシレニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)−2,3−ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル等が挙げられる。
また、リン酸塩の具体例としては、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等が挙げられる。
これらの中でも、取扱い性や、効果の発現性がより顕著なことから、トリフェニルホスフェート(TPP)などの芳香族リン酸エステルが好ましい。
【0047】
本発明においては、前記臭素化ブタジエン系重合体のほかに、本発明の目的、効果を妨げない範囲において、他の難燃剤を混合して使用することができる。他の難燃剤として、例えば、テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール−S−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール−F−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル))に代表される2,3−ジブロモ−2−メチルプロピル基を有する有機化合物、テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール−S−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール−F−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートおよびトリス(2,3−ジブロモプロピル)シアヌレートに代表される2,3−ジブロモプロピル基を有する有機化合物、モノ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、ジ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレートに代表される臭素化イソシアヌレート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、スズ酸亜鉛、シアヌル酸、ペンタブロモトルエン、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛などの無機化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0048】
さらに、上記臭素化ブタジエン系重合体と特定のホスファイト化合物の混合物には、本発明の目的、効果を妨げない範囲において、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂を配合することができる。その配合量は、上記溶融混練物中に20重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは5重量%である。また、着色剤を配合しても良い。
【0049】
本発明においては、上記難燃剤とともに、さらにジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ポリアルキルベンゼンから選ばれる少なくとも1種の難燃助剤を配合することで、得られる発泡体の酸素指数を向上させることができる。該添加剤は上記難燃剤100重量部に対して、1〜20重量部配合されることが好ましく、2〜15重量部配合されることがより好ましい。
【0050】
前記ジフェエニルアルカンとしては具体的には、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、3,4−ジエチル−3,4−ジフェニルヘキサンが挙げられる。ジフェニルアルケンは具体的には、例えば、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ペンテン、ポリアルキレンベンゼンは具体的には、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン(CCPIB)が例示される。これらの中でもポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン(CCPIB)が好ましい。
【0051】
本発明の製造方法において、発泡性溶融樹脂組成物には、難燃剤以外に、押出発泡体の平均気泡径を調整するために気泡調整剤を添加することができる。気泡調整剤としては、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物が例示される。また、本発明において該気泡調整剤は2種以上組合せて用いることもできる。前記各種の気泡調整剤の中で、得られる発泡体の気泡径の調整が容易で気泡径を小さくし易い等の理由でタルクが好適に用いられ、特に、粒子径の細かい平均粒径(光透過遠心沈降法による50%粒径)が0.5〜75μmのタルクが好ましい。
【0052】
該気泡調整剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対して0.01〜7.5重量部、更に0.1〜5重量部の割合で添加されることが好ましい。
【0053】
本発明の製造方法においては、前記気泡調整剤、難燃剤以外にも、本発明の目的、効果を妨げない範囲において、グラファイト、ハイドロタルサイト、カーボンブラックやアルミニウム等の断熱性向上剤、着色剤、充填剤、滑剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。尚、上記気泡調整剤等の各種添加剤は、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を基材とするマスターバッチとして添加しても良い。
【0054】
本発明の方法により得られる押出発泡体の密度は、優れた断熱性と機械的強度の観点から、20〜60kg/m
3、更に22〜50kg/m
3であることが好ましく、厚みは、5〜150mm、更に15〜100mmであることが好ましい。
【0055】
本発明の方法によって製造されるポリスチレン系樹脂押出発泡体において、厚み方向の平均気泡径は、より高い断熱性を有する発泡体とする上で0.8mm以下、更に0.5mm以下であることが好ましい。尚、該気泡径が小さすぎる場合は、厚みが厚く、低見掛け密度の板状の押出発泡体を得ること自体が難しい。かかる観点から、厚み方向の平均気泡径は0.05mm以上、更に0.06mm以上、特に0.07mm以上であることが好ましい。
【0056】
上記厚み方向の平均気泡径の測定方法は次のとおりである。まず、押出発泡体を幅方向に3等分し、分割した各測定用サンプルの幅方向中央部付近の幅方向垂直断面(押出発泡体の押出方向と直交する垂直断面)の顕微鏡拡大写真を得る。次いで、該拡大写真上において発泡体の厚み方向に沿って押出発泡体の全厚みに亘る直線を引き、その直線と交差する気泡の数を計数し、直線の長さ(当然のことながら、この長さは拡大写真上の直線の長さではなく、写真の拡大率を考慮した直線の長さを指す。)を計数された気泡の数で割ることによって、各直線上に存在する気泡の平均径Tn(直線の長さ/該直線と交差する気泡の数)を求め、求められた3箇所の平均径Tnの算術平均値を厚み方向の平均気泡径T(mm)とする。なお、押出発泡体の全厚みが1枚の顕微鏡拡大写真に納まらない場合には、数枚に分けて撮影すればよい。
【0057】
本発明においては、前記押出発泡体又はその端材やスクラップを加熱融解して得られる再生ポリスチレン系樹脂組成物を、バージン原料のポリスチレン系樹脂、難燃性溶融混練物と共に押出機中にて加熱、混練し、更に発泡剤を該押出機中に圧入して添加し、混練して得られる発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡することにより、押出発泡体を製造することができる。本発明の押出発泡体は、前記難燃性溶融混練物を難燃剤として用いて製造されたものであり、押出時加工時の熱安定性に優れているものであることから、その再生原料(再生ポリスチレン系樹脂組成物)は回収時における分子量低下、着色の程度、黒点の発生が少ないものである。従って、該回収原料を用いることにより、前記押出発泡体を低コストで製造することができる。
【実施例】
【0058】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0059】
実施例1〜6 比較例1〜2
(難燃剤溶融混練物の製造)
臭素化ブタジエン系重合体としては、下記表1に示すものを、ホスファイト系化合物としては下記表2に示すものを用い、二軸押出機(内径47mm、L/D=41)にて、臭素化ブタジエン系重合体にホスファイト系化合物を配合して溶融混練し、樹脂温度180℃で吐出60kg/hrでストランド状に押出し、さらにペレット状にカットすることにより、表3に示す配合の難燃剤溶融混練物を製造した。なお、難燃剤溶融混練物には、上記臭素化ブタジエン系重合体とホスファイト系化合物のほかに、その他の熱安定剤として、ノボラック型エポキシ系化合物(製品名EPICLON N680、DIC製)及びフェノール系化合物(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]:製品名Irganox1010、BASF製)を臭素化ブタジエン系重合体100重量部に対してそれぞれ10重量部、5重量部配合し、流動性向上剤として、トリフェニルホスフェート(製品名TPP、大八化学製)を臭素化ブタジエン系重合体100重量部に対して6重量部配合した。
【0060】
【表1】
*臭素化SBS:ポリスチレン−臭素化ポリブタジエンブロック共重合体
【0061】
【表2】
HP−10:2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト
*JPH−3800:水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー
*Ultranox626:ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
*Irgafos168:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
【0062】
【表3】
【0063】
(ポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造)
実施例1〜6及び比較例1〜2の押出発泡体を得るために、以下に示す装置及び材料を用いた。
【0064】
[押出装置]
内径65mmの第1押出機と内径90mmの第2押出機が直列に連結されており、発泡剤注入口が第1押出機の終端付近に設けられており、横断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイが第2押出機の出口に連結され、第2押出機の樹脂出口にはこれと平行するように設置された上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板により構成された賦形装置(ガイダー)が付設された装置を用いた。
【0065】
[ポリスチレン系樹脂]
重量平均分子量27万のポリスチレン(PS1)を用いた。
【0066】
[難燃剤]
難燃剤としては、上記表3記載の難燃剤溶融混練物を用いた。
【0067】
[難燃助剤]
難燃助剤としては、CCPIB(ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン)を用いた。
【0068】
[気泡調整剤]
タルク(松村産業製、ハイフィラー#12)
【0069】
実施例1
前記第1押出機に、表4に示す配合量となるように、上記したポリスチレン系樹脂(PS1)、難燃剤(臭素化ブタジエン系重合体、ホスファイト系熱安定剤(HP−10))、及び気泡調整剤(タルク)を供給し、第1押出機内で220℃まで加熱して、これらを混練し、第1押出機の先端付近に設けられた物理発泡剤注入口から、表4に示す配合組成の物理発泡剤の所要量を供給した。
【0070】
そして、第1押出機内でさらに混練した発泡性溶融樹脂組成物を、続く第2押出機に供給して樹脂温度を、表4に示すような発泡適性温度(表4では発泡樹脂温度と表記した。この発泡樹脂温度は押出機とダイとの接合部の位置で測定された発泡性溶融樹脂組成物の温度である)に調整した後、吐出量70kg/hrでダイリップから50mmの間隙で平行に配置されたガイダー内に押出し、発泡させながらガイダー内を通過させることにより板状に成形(賦形)し、ポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0071】
実施例2
実施例1において、ホスファイト系熱安定剤(HP−10)をホスファイト系熱安定剤(JPH-3800)に代えた以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0072】
実施例3
実施例3において、ホスファイト系熱安定剤(JPH-3800)の配合量を0.2重量部とした以外は実施例3と同様にしてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0073】
実施例4
実施例1において、臭素化ブタジエン系重合体およびホスファイト系熱安定剤(HP−10)の配合量を表4に記載したものに代えると共に難燃助剤としてCCPIBを添加した以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0074】
実施例5
実施例4において、ホスファイト系熱安定剤(HP−10)をホスファイト系熱安定剤(JPH−3800)に代えた以外は実施例4と同様にしてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0075】
実施例6
実施例5において、ホスファイト系熱安定剤(JPH−3800)の配合量を0.05重量部とした以外は実施例5と同様にしてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0076】
比較例1
実施例1において、ホスファイト系熱安定剤(PEP36)をホスファイト系熱安定剤(Ultranox626)に代えた以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0077】
比較例2
実施例1において、ホスファイト系熱安定剤(PEP36)をホスファイト系熱安定剤(Irgafos168)に代えた以外は実施例1と同様にしてポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造した。
【0078】
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた樹脂押出発泡体の、見掛け密度、厚み、独立気泡率、難燃性、外観、黒点の発生状況、発泡体の色調評価、再生樹脂の着色性および黒点の有無を表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
なお、表4に示す押出発泡体の各種物性の測定方法と評価方法は以下のとおりである。
【0081】
(見掛け密度)
押出発泡体の見掛け密度は、次のようにして求めた。得られた押出発泡体の幅方向の中央部付近から40×50×50mmの直方体の試料を各々切り出して重量を測定し、該重量を体積で割算することにより見掛け密度を求めた。
【0082】
(厚み)
押出発泡体の幅方向中央部付近において、等間隔に5点の厚みを測定し、それらの測定値の算術平均値を押出発泡体の厚み(mm)とした。
【0083】
(独立気泡率)
押出発泡体の独立気泡率は、次のようにして求めた。まず、押出発泡体を幅方向に5等分し、それらの中央部付近から25mm×25mm×20mmのサイズに成形表皮を持たないカットサンプル(計5個)を切り出した。次に、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、各カットサンプルの真の体積Vxを測定し、下記(1)式により独立気泡率S(%)を計算し、それら計算値の算術平均値を押出発泡体の独立気泡率とした。なお、測定装置として東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用した。
【0084】
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (1)
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm
3)(押出発泡体のカットサンプルを構成する樹脂組成物の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
Va:測定に使用されたカットサンプルの外形寸法から算出されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm3)
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:押出発泡体を構成する樹脂組成物の密度(g/cm
3)
【0085】
(難燃性評価−JIS A9511)
製造直後の押出発泡体を気温23℃、相対湿度50%の部屋に移し、その部屋で4週間放置した後、押出発泡体から試験片を無作為に5個切り出して(N=5)、JIS A9511(2006R)の5.13.1「測定方法A」に基づいて燃焼性を測定し、5個の試験片の平均燃焼時間により、押出発泡体の難燃性を評価した。
【0086】
(外観)
製品表面の平滑性について目視にて評価を行った。
○:凹凸がなく平滑な表面である
×:発泡剤の分離等により表面が平滑ではない
【0087】
(黒点の有無)
得られた発泡体の押出方向に対し垂直に切断した断面部において、黒点の数を数えた。断面部の観察は任意に5箇所で測定し、その合計数を黒点の個数とした。
○:黒点0〜2個であるもの
×:黒点が3個以上あるもの
【0088】
(発泡体の色調)
押し出された発泡体の色合いを評価した。
○:着色なし(白色)、又はわずかに黄色味がかっているものの製品上問題とならないレベル
×:黄色くなったもの
【0089】
(溶融再生した樹脂の着色度合い及び黒点発生状況)
それぞれの実施例、比較例にて得られた発泡体をリサイクル用の押出機にて溶融してリペレット化し、その着色度合い、黒点発生状況を評価した。リペレットは、得られた発泡体を押出機に供給可能な大きさに破砕し、その破砕物を内径90mm、L/D=50の単軸押出機に供給して最高温度220℃、又は240℃で溶融混練し、吐出量250kg/hrでストランド状に押出し、ペレット状にカットすることによって行なった。再生樹脂の着色度合い及び黒点の発生状況を下記基準により評価した。
【0090】
(着色度合い)
再生樹脂ペレットの着色度合いを外観により測定した。
◎:着色していない
○:ほとんど着色していない
△:わずかに黄色味がかっている
×:黄色もしくは褐色となり着色度合いが大きい
【0091】
(黒点発生状況)
180℃に加熱したヒートプレス機を用いて、再生樹脂ペレットをプレス加工して、縦×横×厚み=40×40×2mmの板を作製した。次に、作製した板に含まれる黒点の数計測し、下記の基準で評価した。
○:黒点数0個
△:黒点数1〜19個
×:黒点数20個以上
【0092】
実施例1〜6の結果は、本発明方法によれば、発泡剤として有機系物理発泡剤を用いる際に、難燃剤として、臭素化ポリブタジエン系重合体と共に、(1)2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(HP-10)及び(2)水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー(JPH-3800)から選ばれる少なくとも一種のホスファイト系化合物を併せて用いたことから、高度な難燃性を有する発泡体を得ることができ、しかも該難燃剤が押出時には熱安定性に優れるため、基材樹脂であるポリスチレン系樹脂の分解による分子量の低下や変色が抑制された、外観の不具合のないポリスチレン系樹脂押出発泡体を製造できることが分かる。
また、該難燃剤を用いることで、押出発泡体を溶融再生しリサイクル原料として再利用する際に、加熱溶融温度の幅を広範囲に設定することができ、たとえば押出発泡体を240℃の高温で溶融再生しても変色や黒点の発生のない良好な再生樹脂が得られることが分かる。
【0093】
比較例1は、ホスファイト化合物として、特許文献2で具体的に開示されているビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Ultranox626)を用いたものである。この比較例1では、製造された押出発泡体には、黒点の発生や変色は少ないもの、この押出発泡体をリサイクル原料として再利用した場合に、溶融再生温度が220℃付近では良好な再生樹脂が得られるものの、240℃では黒点や変色が著しく、再生樹脂として使用に耐えうるものではなかった。
【0094】
比較例2は、ホスファイト化合物として、特許文献2で具体的に開示されているビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Irgafos168)を用いたものである。この比較例2では、製造された押出発泡体には、黒点の発生や変色が著しかった。また、この押出発泡体は熱安定性が悪いため、リサイクル原料として再利用した場合に、溶融再生温度が220℃と比較的低い温度でも、得られる再生樹脂には黒点が数多く発生し、また変色が著しかった。240℃と高い温度下では、当然のことながら黒点の発生や変色が著しく、いずれの場合も再生樹脂として使用できるものではなかった。