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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061787
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】バンパーリインフォースメント
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   B60R19/04 M
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-120353(P2013-120353)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-237358(P2014-237358A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100129067
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 能章
(72)【発明者】
【氏名】寺田 太一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 栄徳
(72)【発明者】
【氏名】望月 祥史
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−088633(JP,A)
【文献】 米国特許第05727826(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0152881(US,A1)
【文献】 特開平06−142754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00−19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形材からなるバンパーリインフォースメントであって、
車体に面する後壁と、
前記後壁の上部から前方に向かって延出する上壁と、
前記後壁の下部から前方に向かって延出する下壁と、
前記上壁から前記下壁に至る前壁と、
前記後壁と前記前壁との間において前記上壁から前記下壁に至る仕切壁と、
前記上壁と前記下壁との間において前記後壁から前記仕切壁に至る上側支持壁および下側支持壁と、
前記上壁と前記下壁との間において前記前壁から前記仕切壁に至る中間支持壁とを備えており、
前記仕切壁と前記上側支持壁との交差部が、前記仕切壁と中間支持壁との交差部の上方に位置しており、
前記仕切壁と前記下側支持壁との交差部が、前記仕切壁と中間支持壁との交差部の下方に位置していることを特徴とするバンパーリインフォースメント。
【請求項2】
前記中空形材の中心軸を法線とする仮想の平面で前記中空形材を切断したときに現れる前記仕切壁の断面形状が、前記前壁側に凸となる円弧状であることを特徴とする請求項1に記載のバンパーリインフォースメント。
【請求項3】
前記上側支持壁および前記下側支持壁が、前記中間支持壁を通る仮想平面を挟んで対向しており、
前記上側支持壁から前記仮想平面までの距離と前記下側支持壁から前記仮想平面までの距離が等しいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバンパーリインフォースメント。
【請求項4】
前記後壁、前記上壁、前記仕切壁および前記上側支持壁で囲まれた空間の断面積は、前記上壁、前記前壁、前記仕切壁および前記中間支持壁で囲まれた空間の断面積の1/2〜2/3であり、
前記後壁、前記下壁、前記仕切壁および前記下側支持壁で囲まれた空間の断面積は、前記下壁、前記前壁、前記仕切壁および前記中間支持壁で囲まれた空間の断面積の1/2〜2/3であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のバンパーリインフォースメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーリインフォースメントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、中空のバンパーリインフォースメントと、これを支持する左右一対のバンパーステイとを備える自動車用のバンパー構造が開示されている。このバンパー構造は、バンパーリインフォースメントに曲げ変形が生じる過程(以下、「ビーム曲げ過程」という。)で衝突エネルギーを吸収するとともに、バンパーステイをバンパーリインフォースメントに減り込ませる過程(以下、「ビーム圧潰過程」という。)で衝突エネルギーを吸収し、さらには、バンパーステイに圧潰が生じる過程(以下、「ステイ圧潰過程」という。)で衝突エネルギーを吸収する。このようなバンパー構造によれば、衝突反力のピークを低く抑えつつ衝突エネルギーの吸収量を大きくすることができるので、軽衝突時における安全装置(例えば、エアーバックなど)の誤作動を防ぎつつ車体に与えるダメージを緩和することができる。なお、屈曲部分または湾曲部分を有するバンパーリインフォースメントにおけるビーム曲げ過程では、屈曲部分または湾曲部分が直線状に伸ばされる過程でも衝突エネルギーが吸収される。
【0003】
特許文献1,2のバンパーリインフォースメントは、角筒状の外殻と、外殻の内部空間を上下に仕切る支持壁とを備えている。支持壁は、外殻の上壁および下壁と平行に設けられていて、外殻の後壁および前壁を繋いでいる。支持壁を設けると、バンパーリインフォースメントの断面剛性が向上するため、衝突エネルギーの吸収量を低下させずに薄肉化・軽量化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/110938号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/110461号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のバンパー構造は、バンパーリインフォースメントの全高にわたって衝突荷重が作用する場合を想定して設計されているので、衝突相手の高さ位置が仕切壁を外れて上下にオフセットすると、バンパーリインフォースメントの上半部または下半部が衝突の初期段階で潰れることがある。バンパーリインフォースメントの上半部または下半部が完全に潰れてしまうと、それ以後は衝突荷重を受け止めることができなくなるので、衝突相手の上にバンパーリインフォースメントが乗り上げる現象や衝突相手の下側にバンパーリインフォースメントが潜り込む現象が発生する虞がある。なお、以下では、衝突荷重の作用位置が上または下にオフセットした状態での衝突を、「オフセット衝突」と称する場合がある。
【0006】
このような観点から、本発明は、オフセット衝突に対応可能な形状を具備したバンパーリインフォースメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、中空形材からなるバンパーリインフォースメントであって、車体に面する後壁と、前記後壁の上部から前方に向かって延出する上壁と、前記後壁の下部から前方に向かって延出する下壁と、前記上壁から前記下壁に至る前壁と、前記後壁と前記前壁との間において前記上壁から前記下壁に至る仕切壁と、前記上壁と前記下壁との間において前記後壁から前記仕切壁に至る上側支持壁および下側支持壁と、前記上壁と前記下壁との間において前記前壁から前記仕切壁に至る中間支持壁とを備えており、前記仕切壁と前記上側支持壁との交差部が、前記仕切壁と中間支持壁との交差部の上方に位置しており、前記仕切壁と前記下側支持壁との交差部が、前記仕切壁と中間支持壁との交差部の下方に位置していることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、車体から離れる方向を「前」とする。したがって、本発明に係るバンパーリインフォースメントをフロントバンパーに適用する場合には、車両の前進方向が「前」となり、リアバンパーに適用する場合には、車両の後進方向が「前」となる。
【0009】
本発明に係るバンパーリインフォースメントは、上壁、前壁、仕切壁および中間支持壁で囲まれた空間(以下「上圧潰空間」という。)と、下壁、前壁、仕切壁および中間支持壁で囲まれた空間(以下「下圧潰空間」という。)とを有するものである。すなわち、本発明に係るバンパーリインフォースメントにおいては、仕切壁よりも前側に、上下二つの圧潰空間(上圧潰空間および下圧潰空間)が形成されていて、衝突荷重の作用位置が中間支持壁の上側にオフセットした場合には、衝突の初期段階において上壁や前壁の上部に座屈や塑性変形が発生し、上圧潰空間が主に潰れることで衝突エネルギーが吸収され、衝突荷重の作用位置が中間支持壁の下側にオフセットした場合には、衝突の初期段階において下壁や前壁の下部に座屈や塑性変形が発生し、下圧潰空間が主に潰れることで衝突エネルギーが吸収される。
【0010】
また、本発明に係るバンパーリインフォースメントでは、仕切壁の上半部(=仕切壁のうち、中間支持壁よりも上側に位置する部分)が上側支持壁によって支持されており、仕切壁の下半部(=仕切壁のうち、中間支持壁よりも下側に位置する部分)が下側支持壁によって支持されているので、後壁、上壁、下壁および仕切壁で囲まれた空間(以下「支持空間」という。)は、圧潰空間よりも潰れ難くなっている。つまり、本発明に係るバンパーリインフォースメントによれば、上下オフセット衝突によって上圧潰空間又は下圧潰空間が潰れた後も、バンパーリインフォースの後半部(仕切壁よりも車体側に位置する部分)で衝突荷重を受け止めることができ、ひいては、バンパーリインフォースメントが衝突相手の下に潜り込む現象や衝突相手に乗り上がる現象の発生を緩和することが可能になる。
【0011】
前記中空形材の中心軸を法線とする仮想の平面で前記中空形材を切断したときに現れる前記仕切壁の断面形状は、前記前壁側に凸となる円弧状であることが好ましい。このようにすると、仕切壁がアーチとなり、中間支持壁がアーチの頂部で支持されるようになるので、仕切壁を平板状とした場合よりも仕切壁に生じる変形が小さいものとなる。
【0012】
前記上側支持壁および前記下側支持壁を、前記中間支持壁を通る仮想平面を挟んで対向させるととともに、前記上側支持壁から前記仮想平面までの距離と前記下側支持壁から前記仮想平面までの距離を等しくするとよい。このようにすると、上側支持壁、下側支持壁および中間支持壁の位置関係がバランスのとれたものになるので、衝突荷重の作用位置が上下いずれの方向へオフセットした場合でも、衝突エネルギーの吸収量を同程度にすることが可能となる。
また、前記後壁、前記上壁、前記仕切壁および前記上側支持壁で囲まれた空間の断面積は、前記上壁、前記前壁、前記仕切壁および前記中間支持壁で囲まれた空間の断面積の1/2〜2/3であることが好ましく、前記後壁、前記下壁、前記仕切壁および前記下側支持壁で囲まれた空間の断面積は、前記下壁、前記前壁、前記仕切壁および前記中間支持壁で囲まれた空間の断面積の1/2〜2/3であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オフセット衝突にも対応することが可能となる。すなわち、本発明に係るバンパーリインフォースメントによれば、衝突相手の下に潜り込む現象や衝突相手に乗り上がる現象の発生を緩和することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るバンパーリインフォースメントを備えたバンパー構造の斜視図である。
図2図1に示すバンパー構造の平面図である。
図3図2のA−A線端面図である。
図4】フラットバリアに衝突した際の変形モードを示す模式図であって、(a)はビーム曲げ過程の始期の様子を示す平面図、(b)はビーム曲げ過程の中期の様子を示す平面図、(c)はビーム曲げ過程の終期およびビーム圧潰過程の始期の様子を示す平面図、(d)はビーム圧潰過程の中期およびステイ圧潰過程の始期の様子を示す平面図、(e)はビーム圧潰過程およびステイ圧潰過程の中期の様子を示す平面図、(f)はビーム圧潰過程およびステイ圧潰過程の終期の様子を示す平面図である。
図5】フラットバリアに衝突した際の衝突反力−変位曲線である。
図6】上下オフセット衝突をした際の変形モードを示す模式図であって、(a)〜(c)は本発明の実施形態に係るバンパーリインフォースメントの車幅方向中央における端面図、(d)〜(f)は比較例に係るバンパーリインフォースメントの車幅方向中央における端面図である。
図7】上下オフセット衝突をした際の衝突反力−変位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るバンパーリインフォースメントRは、自動車用のフロントバンパーを構成するための横架材であり、図1に示すように、左右一対のバンパーステイS,Sに支持されている。バンパーステイS,Sは、サイドメンバ(車体)M,Mの前端部に固定されている。
【0016】
本実施形態において、「左右」、「前後」、「上下」は、バンパーリインフォースメントRをバンパーステイS,Sに取り付けた状態を基準にする。つまり、「左右方向」は、「車両幅方向」と同義であり、サイドメンバM,Mの前端同士を結ぶ仮想の横軸Xに沿う方向と一致する。また、「前後方向」は、「車両直進方向」と同義であり、横軸Xに直交する仮想の縦軸Yに沿う方向と一致する。
【0017】
バンパーリインフォースメントRは、図2にも示すように、前側に凸となる平面形状を具備していて、バンパーリインフォースメントRの端部は、車体後方に向けて傾斜している。なお、本実施形態では、バンパーリインフォースメントRの平面形状(線形)が弧状である場合を例示するが、直線状としてもよい。
【0018】
バンパーリインフォースメントRは、アルミニウム合金製の中空押出形材からなる。バンパーリインフォースメントRの湾曲部分は、例えば、バンパーリインフォースメントRの素となる直線状の中空押出形材の両端部を把持した状態で、当該中空押出形材の後面に曲げ型を押圧することで形成する。
【0019】
図1に示すように、バンパーリインフォースメントRは、サイドメンバM(車体)に面する後壁1と、後壁1の上部から前方に向かって延出する上壁2と、後壁1の下部から前方に向かって延出する下壁3と、上壁2から下壁3に至る前壁4と、後壁1と前壁4との間において上壁2から下壁3に至る仕切壁5と、上壁2と下壁3との間において後壁1から仕切壁5に至る上側支持壁6および下側支持壁7と、上壁2と下壁3との間において前壁4から仕切壁5に至る中間支持壁8とを備えている。
【0020】
すなわち、バンパーリインフォースメントRは、閉断面形状の外殻(後壁1、上壁2、下壁3および前壁4)と、この外殻の内部空間を前後に分ける仕切壁5と、後壁1と仕切壁5との間に介設された上側支持壁6および下側支持壁7と、前壁4と仕切壁5との間に介設された中間支持壁8とを備えている。外殻、仕切壁5および各支持壁6,7,8は、バンパーリインフォースメントRの全長に亘って連続して形成されている。また、外殻、仕切壁5および各支持壁6,7,8の肉厚は、同一である。
【0021】
図3を参照して、バンパーリインフォースメントRの構成をより詳細に説明する。図3は、図2のA−A線端面図(中空押出形材の中心軸を法線とする仮想の平面で切断したときに現れる図)である。なお、図3中の一点鎖線L1は、中間支持壁8を通る仮想の平面(以下「仮想平面L1」という。)である。また、一点鎖線L2は、仮想平面L1と前壁4の前面との交差位置において前壁4の前面に接する仮想の鉛直線(以下「接線L2」という。)であり、一点鎖線L3は、仮想平面L1と仕切壁5の前面との交差位置において仕切壁5の前面に接する仮想の鉛直線(以下「接線L3」という。)である。
【0022】
後壁1は、折れ曲がりの無い断面形状(鉛直線に平行な直線状)を呈している。後壁1の後面には、バンパーステイS(図1参照)の前端が固定される。なお、図示は省略するが、後壁1の上端部を上壁2との交差部よりも上方に延出させるとともに、後壁1の下端部を下壁3との交差部よりも下方に延出させてもよい。すなわち、後壁1の上端部を上壁2から上方へ張り出すフランジとして活用し、後壁1の下端部を下壁3から下方へ張り出すフランジとして活用してもよい。
【0023】
上壁2は、後壁1の上縁から上斜め前方に向かって延出する上壁後部2aと、上壁後部2aの前縁から水平面に沿って延出する上壁中間部2bと、上壁中間部2bの前縁から前壁4に至る上壁前部2cとを備えている。
【0024】
上壁後部2a、上壁中間部2bおよび上壁前部2cは、それぞれ平板状を呈している。水平面に対する上壁後部2aの傾斜角度θ1は、45度以下であり、水平面に対する上壁前部2cの傾斜角度θ2は、45度以下である。
【0025】
下壁3は、後壁1の下縁から下斜め前方に向かって延出する下壁後部3aと、下壁後部3aの前縁から水平面に沿って延出する下壁中間部3bと、下壁中間部3bの前縁から前壁4に至る下壁前部3cとを備えている。下壁3の断面形状は、上壁2の上下を反転させた形状と同一である。
【0026】
前壁4は、仕切壁5の前方に位置している。前壁4の断面形状は、前側に凸となる円弧状を呈していて、前壁4の高さ方向の中央部に接する接線L2は、後壁1に平行である。
【0027】
なお、図示は省略するが、前壁4の上端部を上壁2との交差部よりも上方に延出させるとともに、前壁4の下端部を下壁3との交差部よりも下方に延出させてもよい。すなわち、前壁4の上端部を上壁2の上方に張り出すフランジとし、前壁4の下端部を下壁3の下方に張り出すフランジとしてもよい。
【0028】
仕切壁5は、後壁1と前壁4との間に位置していて、上壁中間部2bと下壁中間部3bとを繋いでいる。仕切壁5の断面形状は、前側に凸となる円弧状であり、仕切壁5の高さ方向の中央部に接する接線L3は、後壁1に平行である。
【0029】
上側支持壁6は、後壁1の上半部(仮想平面L1よりも上の部分)から上斜め前方に向かって延出していて、仕切壁5の上半部(仮想平面L1よりも上の部分)の高さ方向中央部を支持している。
【0030】
下側支持壁7は、後壁1の下半部(仮想平面L1よりも下の部分)から下斜め前方に向かって延出していて、仕切壁5の下半部(仮想平面L1よりも下の部分)の高さ方向中央部を支持している。
【0031】
本実施形態の上側支持壁6および下側支持壁7は、いずれも平板状を呈していて、仮想平面L1を挟んで対向している。上側支持壁6および下側支持壁7は、仮想平面L1を対称面とする面対称の関係にあり、上側支持壁6から仮想平面L1までの距離と下側支持壁7から仮想平面L1までの距離は、等しくなっている。なお、上壁支持壁6と下側支持壁7の離隔距離は、後壁1から仕切壁5に向かうに従って漸増している。
【0032】
仕切壁5と上側支持壁6との交差部P1は、仕切壁5と中間支持壁8との交差部P3の上方に位置しており、仕切壁5と下側支持壁7との交差部P2は、交差部P3の下方に位置している。交差部P1,P3の離隔距離は、交差部P2,P3の離隔距離と等しく、交差部P1,P2の離隔距離は、上壁中間部2bと下壁中間部3bの離隔距離(=上壁2と下壁3の最大離隔距離)の1/3以上1/2未満である。
【0033】
中間支持壁8は、仕切壁5の高さ方向の中央部から前方に向かって延出していて、前壁4の高さ方向の中央部を支持している。本実施形態の中間支持壁8は、水平面に沿う平板状を呈している。
【0034】
前壁4と仕切壁5との間には、上下二つの空間V1,V2が形成されている。
上側の空間V1(以下「上圧潰空間V1」という。)は、上壁2の前半部、前壁4の上半部、仕切壁5の上半部および中間支持壁8で囲まれた空間であり、下側の空間V2(以下「上圧潰空間V2」という。)は、下壁2の前半部、前壁4の下半部、仕切壁5の下半部および中間支持壁8で囲まれた空間である。すなわち、上壁2、下壁3、前壁4および仕切壁5によって囲まれた空間は、中間支持壁8によって上圧潰空間V1と下圧潰空間V2とに分けられている。
【0035】
上圧潰空間V1および下圧潰空間V2は、いずれも、縦長の空間(すなわち、高さ寸法と幅寸法の差が大きい空間)である。上圧潰空間V1の最大高さ寸法(上壁2と中間支持壁8との最大離隔距離)h1は、中間支持壁8の長さ寸法(上圧潰空間V1の最大幅寸法)b1の2倍以上であり、同様に、下圧潰空間V2の最大高さ寸法(下壁3と中間支持壁8との最大離隔距離)は、中間支持壁8の長さ寸法b1の2倍以上である。なお、上圧潰空間V1および下圧潰空間V2の断面形状は、仮想平面L1を対称面とする面対称の関係にある。
【0036】
後壁1と仕切壁5との間には、上下方向に並ぶ三つの空間V3,V4,V5が形成されている。
一番上の空間V3(以下「上支持空間V3」という。)は、後壁1の上部、上壁2の後半部、仕切壁5の上部および上側支持壁6で囲まれた空間であり、一番下の空間V4(以下「下支持空間V4」という。)は、後壁1の下部、下壁3の後半部、仕切壁5の下部および下側支持壁7で囲まれた空間である。中央の空間V5(以下「中央支持空間V5」という。)は、後壁1の中央部、仕切壁5の中央部、上側支持壁6および下側支持壁7で囲まれた空間である。すなわち、後壁1、上壁2、下壁3および仕切壁5によって囲まれた空間は、上側支持壁6および下側支持壁7によって上支持空間V3と下支持空間V4と中央支持空間V5とに分けられている。
【0037】
上支持空間V3および下支持空間V4は、いずれも、縦横の寸法差が小さい空間(すなわち、高さ寸法と幅寸法の差が小さい空間)である。上支持空間V3の最大高さ寸法(上壁2と上側支持壁6との最大離隔距離)h3は、上支持空間V3の最大幅寸法b3の1.2倍以下であり、上支持空間V3の断面積は、上圧潰空間V1の断面積の1/2〜2/3である。同様に、下支持空間V4の最大高さ寸法は、下支持空間V4の最大幅寸法の1.2倍以下であり、下支持空間V4の断面積は、下圧潰空間V2の断面積の1/2〜2/3である。なお、上支持空間V3および下支持空間V4の断面形状は、仮想平面L1を対称面とする面対称の関係にある。
【0038】
中央支持空間V5は、略台形の断面形状を有する空間である。中央支持空間V5の断面積は、上支持空間V3(あるいは下支持空間V4)の断面積よりも大きい。
【0039】
次に、図4,5を参照して、正面衝突時(フラットバリアFBとの衝突時)における衝突エネルギーの吸収過程を説明する。図5は、フラットバリアFBに接触した時点からの車体の前進量を横軸とし、衝突反力を縦軸としたグラフである。なお、比較例に係るバンパーリインフォースメントR’は、図6の(d)に示すように、バンパーリインフォースメントRと同じ外殻と、当該外殻の内部空間を仕切る一つの支持壁とを具備するものである。
【0040】
図4の(a)に示すように、衝突初期段階においては、バンパーリインフォースメントRのスパン中央部にフラットバリアFBが衝突する。その後、図4の(b)および(c)に示すように、バンパーリインフォースメントRの湾曲部分が車体側に曲げられる変形(ビーム曲げ過程)が進行することで、衝突エネルギーが吸収される。衝突開始から図4の(c)の状態となるまでに吸収される衝突エネルギーの吸収量は、図5中の面積α1(衝突反力−変位曲線の積分値)である。
【0041】
ビーム曲げ過程がある程度進行すると、図4の(c)〜(f)に示すように、バンパーリインフォースメントRの端部において、バンパーステイSがバンパーリインフォースメントRに減り込むビーム圧潰過程が進行するようになる。ビーム圧潰過程では、バンパーリインフォースメントRの端部において圧潰空間V1,V2(図3参照)および支持空間V3,V4,V5(図3参照)が潰れることで、衝突エネルギーが吸収される。図4の(c)の状態から図4の(e)の状態となるまでに吸収される衝突エネルギーの吸収量は、図5中の面積α2である。
【0042】
ビーム圧潰過程がある程度進行すると、図4の(d)〜(f)に示すように、バンパーステイSが圧潰するステイ圧潰過程が進行するようになる。図4の(e)の状態から図4の(f)の状態となるまでに吸収される衝突エネルギーの吸収量は、図5中の面積α3である。
【0043】
比較例に係るバンパーリインフォースメントR’でも、ビーム曲げ過程、ビーム圧潰過程およびステイ圧潰過程によって衝突エネルギーが吸収されるが、図5に示されるように、衝突エネルギーの吸収量は、バンパーリインフォースメントRの場合に比べて小さい。これは、バンパーリインフォースメントR’の上下二つの圧潰空間が潰れやすく、ビーム圧潰過程において大きな衝突反力が得られないためである。
【0044】
次に、図6,7を参照して、上下オフセット衝突時における衝突エネルギーの吸収過程を説明する。なお、図6の(d)〜(f)は、比較例に係るバンパーリインフォースメントR’の変形状態を示す図である。また、図7は、衝突相手に接触した時点からの車体の前進量を横軸とし、衝突反力を縦軸としたグラフであり、横軸に付した(a)〜(f)の記号は、図6の(a)〜(f)に示す変形状態に対応している。
【0045】
上下オフセット衝突によりバンパーリインフォースメントRの上部に衝突荷重が作用すると、図6の(a)および(b)に示すように、前壁4の上半部や上壁2の前半部に座屈や塑性変形が発生して上圧潰空間V1が潰れることで、衝突エネルギーが吸収される。上支持空間V3は、上圧潰空間V1よりも潰れ難いので、上圧潰空間V1の圧潰が概ね完了した後でも、概ね元の形状を維持している(図6の(b)および(c)参照)。
【0046】
上圧潰空間V1が圧潰した後は、上側支持壁6によって衝突荷重が受け止められる結果、バンパーリインフォースメントRが車体側に曲げられる変形(ビーム曲げ過程)が進行し、ビーム曲げ過程において衝突エネルギーが吸収される。また、上圧潰空間V1が潰れた後も、バンパーリインフォースRの後半部(仕切壁5よりも車体側に位置する部分)で衝突荷重を受け止めることができので、バンパーリインフォースメントRが衝突相手の下に潜り込む現象や衝突相手に乗り上がる現象の発生を緩和することが可能になる。
【0047】
一方、比較例に係るバンパーリインフォースメントR’の上部に衝突荷重が作用した場合には、図6の(d)〜(f)に示すように、上側の圧潰空間V1’が潰れることで衝突エネルギーが吸収されるが、圧潰空間V1’が潰れた後の「支え」が存在しておらず(図6の(f)参照)、バンパーリインフォースメントR’のねじり剛性が不足するため、バンパーリインフォースメントRの場合と比べて、ビーム曲げ過程での衝突反力が大きくならず、したがって、衝突エネルギーの吸収量が小さくなる。また、圧潰空間V1’が潰れることにより、衝突荷重を受け止めることができなくなるので、バンパーリインフォースメントR’が衝突相手の下に潜り込む現象や衝突相手に乗り上がる現象が発生し易くなる。
【0048】
以上のとおり、本実施形態に係るバンパーリインフォースメントRにおいては、仕切壁5よりも前側に、上圧潰空間V1および下圧潰空間V2が形成されているので、衝突荷重の作用位置が中間支持壁8の上側にオフセットした場合には、衝突の初期段階において上圧潰空間V1が主に潰れることで衝突エネルギーが吸収され、衝突荷重の作用位置が中間支持壁8の下側にオフセットした場合には、衝突の初期段階において下圧潰空間V2が主に潰れることで衝突エネルギーが吸収される。
【0049】
また、バンパーリインフォースメントRでは、仕切壁5の上半部(=仕切壁5のうち、中間支持壁8よりも上側に位置する部分)が上側支持壁6によって支持されており、仕切壁5の下半部(=仕切壁5のうち、中間支持壁8よりも下側に位置する部分)が下側支持壁7によって支持されているので、後壁1、上壁2、下壁3および仕切壁5で囲まれた空間(上支持空間V3、下支持空間V4および中央支持空間V5)は、上圧潰空間V1および下圧潰空間V2よりも潰れ難くなっている。つまり、バンパーリインフォースメントRによれば、上下オフセット衝突によって上圧潰空間V1又は下圧潰空間V2が潰れた後も、バンパーリインフォースRの後半部(仕切壁5よりも車体側に位置する部分)で衝突荷重を受け止めることができ、ひいては、バンパーリインフォースメントRが衝突相手の下に潜り込む現象や衝突相手に乗り上がる現象の発生を緩和することが可能になる。
【0050】
また、バンパーリインフォースメントRでは、仕切壁5の断面形状を、前壁4側に凸となる円弧状としたので、仕切壁5がアーチとなる。つまり、中間支持壁8がアーチの頂部で支持されるようになるので、仕切壁5を平板状とした場合よりも仕切壁5に生じる変形が小さいものとなる。
【0051】
また、バンパーリインフォースメントRでは、上側支持壁6および下側支持壁7を、仮想平面L1を挟んで対向させるととともに、上側支持壁6から仮想平面L1までの距離と下側支持壁7から仮想平面L1までの距離を等しくしているので、上側支持壁6、下側支持壁7および中間支持壁8の位置関係がバランスのとれたものになる。つまり、バンパーリインフォースメントRによれば、衝突荷重の作用位置が上下いずれの方向へオフセットした場合でも、衝突エネルギーの吸収量を同程度にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
R バンパーリインフォースメント
1 後壁
2 上壁
3 下壁
4 前壁
5 仕切壁
6 上側支持壁
7 下側支持壁
8 中間支持壁
L1 仮想平面
P1,P2,P3 交差部
S バンパーステイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7