特許第6061803号(P6061803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061803
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】穂先マーカ組立体
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20170106BHJP
   A01K 97/12 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   A01K87/00 620A
   A01K87/00 640A
   A01K97/12 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-150928(P2013-150928)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-19627(P2015-19627A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】辰己 卓司
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−306041(JP,A)
【文献】 特開平10−113111(JP,A)
【文献】 米国特許第6789348(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00
A01K 87/02
A01K 87/08
A01K 97/12
A01G 1/06
F16B 7/00−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿の穂先に取り付けられるマーカと、上記マーカを穂先に取り付ける取り付け治具とを備える穂先マーカ組立体であって、
上記マーカは、蛍光剤を含む樹脂によって可撓性を有する円筒形状に構成されており、周方向の1カ所において軸方向に延びる分断線に沿って分断されており、
上記取り付け治具は、
表面及び上記表面と反対側の裏面を有する板状であって、上記分断線を通じて上記マーカの内外に延在するガイド板と、
上記マーカ及び上記ガイド板を着脱可能に結合する結合部材と、を有する穂先マーカ組立体。
【請求項2】
上記マーカの軸方向の長さは、6mm以上である請求項1に記載の穂先マーカ組立体。
【請求項3】
上記結合部材は、上記マーカの外周面と上記ガイド板の裏面とに亘って貼着されたシールである請求項1又は2に記載の穂先マーカ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿の穂先に装着される穂先マーカ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿を使用する釣りのジャンルは様々であるが、たとえば船からのカワハギ釣りや磯での沈め釣り等では、釣人は、いわゆる魚のアタリを穂先の変化で捉えることがある。魚のアタリが穂先で捉えられるためには、穂先の感度が高くなければならない。この場合の「感度」とは、上記アタリによる振動がどれ程ストレートに穂先の変化となって現れるかどうかの度合いのことである。釣竿、特に穂先の構造については、従来から種々の改良が加えられている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−52093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、穂先の感度が向上したとしても、穂先の微妙な変化を釣人が確実に視認することができなければ、結局魚のアタリを捉えることはできない。穂先の視認性を向上させるために、蛍光剤を含むマーカを穂先に取り付けることが考えられる。しかしながら、高い感度が要求される釣竿の穂先は、外力に対して脆弱である。そのため、マーカを着脱する際に穂先が損傷する可能性がある。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マーカを釣竿に安全且つ確実に取り付けることのできる穂先マーカ組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る穂先マーカ組立体は、釣竿の穂先に取り付けられるマーカと、上記マーカを穂先に取り付ける取り付け治具とを備える。そして、上記マーカは、蛍光剤を含む樹脂によって可撓性を有する円筒形状に構成されており、周方向の1カ所において軸方向に延びる分断線に沿って分断されている。また、上記取り付け治具は、表面及び上記表面と反対側の裏面を有する板状であって、上記分断線を通じて上記マーカの内外に延在するガイド板と、上記マーカ及び上記ガイド板を着脱可能に結合する結合部材とを有する。
【0007】
上記構成の穂先マーカ組立体によれば、ガイド板の表面に載置した穂先をマーカと共に保持した状態でガイド板をマーカから引き離すことによって、穂先は、ガイド板の表面に案内されながら分断線を通じてマーカに進入する。これにより、外力に対して脆弱な穂先にマーカを安全且つ確実に取り付けることができる。
【0008】
(2) 好ましくは、上記マーカの軸方向の長さは、6mm以上である。
【0009】
上記構成によれば、釣竿の穂先に取り付けられたマーカの外周面に入射し且つ端面から放たれる光を、当該釣竿を持つ釣人に明確に視認させることができる。
【0010】
(3) 好ましくは、上記結合部材は、上記マーカの外周面と上記ガイド板の裏面とに亘って貼着されたシールである。
【0011】
上記構成によれば、穂先マーカ組立体を簡単に組み立てることができる。また、上記の方法でマーカを穂先に取り付ける際に、マーカからシールを容易に剥離させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分断線を通じてマーカに進入する穂先がガイド板によって案内されるので、マーカを釣竿に安全且つ確実に取り付けることのできる穂先マーカ組立体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、マーカ20が取り付けられた釣竿10の模式図である。
図2図2は、マーカ20の斜視図であって、(A)は一対の端面24、25が当接した状態、(B)は一対の端面24、25が離間した状態を示す。
図3図3は、本実施形態に係る穂先マーカ組立体40の斜視図であって、(A)はガイド板31の表面32側から見た図、(B)はガイド板31の裏面33側から見た図である。
図4図4は、本実施形態に係る穂先マーカ組立体40によって、マーカ20を穂先部41に取り付ける過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されながら説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る穂先マーカ組立体の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0015】
[釣竿10の全体構成]
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の模式図である。図1は、魚がヒットした状態の釣竿10を示している。釣竿10は、図1に示されるように、複数の節12、13、14と、複数のガイド部材15とを備える。釣竿10は、例えば、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチック等で形成されている。釣竿10は、例えば船釣りに使用される振出式のものである。但し、釣竿10は、船釣り以外に使用されるものであってもよいし、振出式でなく継ぎ式であってもよい。
【0017】
節12〜14は、釣竿10を構成する細長棒状の部材である。節12〜14は、釣竿10の先端側から順に第1番節12、第2番節(図示せず)と呼ばれ、最も後端の節は、特に元節14と呼ばれる。元節14に連続する前節は、特に元上節13と呼ばれる。各節12〜14は筒状に形成されている。各節12〜14は、例えば、カーボン繊維を含侵させた樹脂シート(所謂、カーボンプリプレグ)を螺旋状に巻回して焼成する公知の方法によって製造することができる。
【0018】
ガイド部材15は、各節12〜14に設けられている。各ガイド部材15は、釣用リール11から繰り出される釣糸19が挿通される挿通孔(不図示)を有する。各ガイド部材15は、釣糸19を釣竿10の外周面に沿って長手方向に案内するためのものである。すなわち、図1に示された釣竿10は、所謂アウターガイドタイプの釣竿である。なお、釣竿10は、筒状に形成された各節の内部に釣糸19を通す所謂インナーガイドタイプの釣竿であってもよい。
【0019】
釣竿10の先端部(すなわち、節12の先端部)は、穂先部41と呼ばれる。穂先部41は、釣竿10のユーザが魚のアタリを釣竿10の湾曲の変化で捉える際に、当該ユーザによって視認される部分である。穂先部41は、例えば、金属色で塗装されている。具体的には、穂先部41は、塗装された部材の表面を金属の質感に再現することができる所謂メタリックカラーの塗料で塗装されている。また、穂先部41には、後述するマーカ20が取り付けられている。
【0020】
釣竿10の基端部(すなわち、元節14の基端部)は、バット部44と呼ばれる。バット部44は、元節14の基端近傍に設けられたリアグリップ45と、リアグリップ45よりも先端側に設けられたフロントグリップ46と、リアグリップ45及びフロントグリップ46の間に設けられたリールシート47とを備える。リアグリップ45及びフロントグリップ46は、ゴムなどの高摩擦係数の部材で形成されている。釣竿10が使用される際、リアグリップ45及びフロントグリップ46の少なくとも一方が、釣竿10のユーザによって把持される。
【0021】
リールシート47は、釣用リール11を釣竿10に保持するためのものである。リールシート47は、元節14を覆い且つ元節14の長手方向に沿って摺動可能な可動フード49と、可動フード49よりも釣竿10の基端側に設けられた固定フード48と、可動フード49の摺動をロックするロック部(不図示)とを備える。可動フード49は、釣用リール11に設けられた脚の一方側を保持する。固定フード48は、釣用リール11に設けられた脚の他方側を保持する。可動フード49及び固定フード48の双方が釣用リール11の脚を保持した状態において、ロック部によって可動フード49が摺動不可能な状態とされることにより、固定フード48と可動フード49とが協働して釣用リール11をリールシート47に位置決め固定する。
【0022】
[マーカ20]
【0023】
マーカ20は、穂先部41に外嵌されている。このマーカ20は、図2に示されるように、円筒形状の外形を呈している。マーカ20の内径寸法は、穂先部41の直径と同一か、或いは穂先部41の直径より僅かに大きく設定される。また、マーカ20の軸方向の長さは、例えば、6mm〜15mm、より好ましくは8mm〜10mm程度に設定される。このマーカ20は、例えば、十分に長いマーカ素材を所望の長さに切断することによって、得ることができる。
【0024】
マーカ20は、例えば、蛍光塗料等の蛍光剤を含む樹脂によって構成されている。これにより、円筒形状の外周面に入射した光は、端面22、23から出射される。そのため、図1に示される釣竿10を持つ釣人は、端面23から放たれる光によって穂先部41の位置及び動きを視認することができる。マーカ20を構成する樹脂は、例えば、ポリ塩化ビニル等を採用することができる。これにより、マーカ20は、穂先部41の動きを阻害しない程度の可撓性を有する。
【0025】
円筒形状のマーカ20は、図2(A)に示されるように、周方向の1カ所において軸方向に延びる分断線21に沿って分断されている。分断線21とは、図2(A)に示されるように、周方向において互いに対向する一対の端面24、25を当接させることによって、マーカ20の表面に現れる線を指す。分断線21は、マーカ20の軸方向の全域に形成されている。すなわち、マーカ20は、図2(B)に示されるように、外力が加えられることによって分断線21の両側に位置する一対の端面24、25が離間するように構成されている。なお、分断線21は、周方向に連続した(すなわち、分断線21が形成されていない)マーカ20をナイフ等で分断することによって、事後的に形成されるものであってもよい。
【0026】
[穂先マーカ組立体40]
【0027】
穂先部41に取り付けられる前のマーカ20は、図3に示されるように、取り付け治具30に取り付けられた穂先マーカ組立体40として提供される。すなわち、本実施形態に係る穂先マーカ組立体40は、マーカ20と、取り付け治具30とを備える。また、取り付け治具30は、ガイド板31と、シール35(本発明の結合部材の一例)とで構成されている。
【0028】
ガイド板31は、図3に示されるように、表面32と裏面33とを有する板状の外形を呈している。穂先マーカ組立体40におけるガイド板31は、分断線21を通じて(換言すれば、周方向に離間した一対の端面24、25の間から)マーカ20の内外に延在している。すなわち、図3に示されるガイド板31は、その左端が円筒形状のマーカ20の内部に位置しており、右端(突出端34)がマーカ20の外部に突出している。なお、マーカ20から突出するガイド板31の長さ(ガイド板31の突出長さ)は、穂先部41の直径より長いことが望ましい。また、図3に示されるガイド板31の前後方向の長さは、マーカ20の軸方向の長さと概ね一致しているが、これに限定されることなく、マーカ20の軸方向の長さより長くてもよいし、短くてもよい。ガイド板31を構成する材料は特に限定されないが、例えば、紙であってもよいし、樹脂フィルム等であってもよい。
【0029】
シール35は、マーカ20の外周面とガイド板31の裏面33とに亘って貼着されている。なお、シール35は、外力が加えられることによってマーカ20の外周面から容易に剥離する程度の貼着力によってに貼着されている。すなわち、シール35は、マーカ20とガイド板31とを着脱可能に結合している。但し、本発明の結合部材は、図3に示されるシール35の形態に限定されない。例えば、外力によって容易に剥離する接着剤を、マーカ20の外周面とガイド板31の裏面33とに亘って塗布してもよい。
【0030】
[穂先マーカ組立体40の使用方法]
【0031】
図4を参照して、本実施形態に係る穂先マーカ組立体40を用いて、マーカ20を穂先部41に取り付ける手順を説明する。なお、以下の説明では、穂先マーカ組立体40を取り扱う釣人の手の動きの一例を示すが、具体的な取り扱い方がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0032】
まず、釣人は、ガイド板31の表面32に載置した釣竿10の穂先部41を、マーカ20を把持する左手の親指でマーカ20側に引き寄せる。これにより、穂先部41は、図4(A)に示されるように、分断線21の近傍においてマーカ20の外周面に当接する。また、ガイド板31は、穂先部41よりマーカ20から離れた位置まで延設されている。すなわち、ガイド板31の突出端34は、穂先部41よりマーカ20から離れた位置まで突出している。
【0033】
次に、釣人は、ガイド板31の突出端34側を右手で摘まんで、ガイド板31をマーカ20から引き離す向き(図4(B)の矢印の向き)に引く。このとき、シール35がガイド板31の裏面33から剥離するのを防止するために、ガイド板31とシール35とを纏めて摘まむのが望ましい。これにより、図4(B)に示されるように、分断線21を構成する一対の端面24、25が離間する。
【0034】
ガイド板31をさらに矢印の向きに引くことによって一対の端面24、25の離間距離が穂先部41の直径を超えると、図4(C)に示されるように、円筒形状のマーカ20の内部に穂先部41が進入する。また、シール35がマーカ20の外周面から剥離して、ガイド板31がマーカ20から取り外される。これにより、図1に示されるように、マーカ20が釣竿10の穂先部41に取り付けられる。
【0035】
[本実施形態の作用効果]
【0036】
本実施形態に係るマーカ20は、蛍光剤を含み且つ所定の長さを確保することにより、外周面に入射した光によってマーカの端面22、23が発光するので、釣竿10を持つ釣人に穂先部41の視認性を向上させることができる。また、マーカ20に可撓性を付与することによって、当該マーカ20が取り付けられた穂先部41の感度の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の穂先マーカ組立体40によれば、ガイド板31の表面32に載置した穂先部41をマーカ20と共に保持した状態でガイド板31をマーカ20から引き離すことによって、ガイド板31の表面32に案内された穂先部41を分断線21を通じて(換言すれば、周方向に離間した一対の端面24、25の間から)マーカ20に進入させることができる。これにより、外力に対して脆弱な穂先部41にマーカ20を安全且つ確実に取り付けることができる。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、マーカ20とガイド板31とを結合させる結合部材にシール35を採用したことにより、穂先マーカ組立体40の組み立てが簡単になると共に、取り付け時にマーカ20からシール35を容易に剥離させることができる。
【符号の説明】
【0039】
20・・・マーカ
30・・・取り付け治具
31・・・ガイド板
32・・・表面
33・・・裏面
35・・・シール
40・・・穂先マーカ組立体
図1
図2
図3
図4