(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061805
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】波長がシフトする複合蓄光粉体およびその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20170106BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20170106BHJP
D01F 6/90 20060101ALI20170106BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C09K11/08 A
C09K11/64CPM
D01F6/90 301
D01F6/92 303B
D01F6/92 301M
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-154604(P2013-154604)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-214309(P2014-214309A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】102115123
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】504427651
【氏名又は名称】財團法人紡織産業綜合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】林聲仁
(72)【発明者】
【氏名】蕭瑛綉
【審査官】
仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】
台湾特許第200927883(TW,B)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0024686(US,A1)
【文献】
特開平08−127937(JP,A)
【文献】
特開2002−194623(JP,A)
【文献】
特開平11−323785(JP,A)
【文献】
特開平05−168895(JP,A)
【文献】
特開2014−031471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/08
C09K 11/64
D01F 6/90
D01F 6/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素を含有する蓄光原料を0.1〜5重量%、および
高速気流で−100〜−196℃の極低温環境において、前記希土類元素を含有する蓄光原料表面に形成ならびに融合される、無機金属酸化物を0.3〜0.8重量%含み、
前記希土類元素を含有する蓄光原料はSrAl2O4:Eu、Tbであり、
前記無機金属酸化物は酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムおよび酸化ストロンチウムにより構成されるグループから選ばれた1の物質またはその組み合せであることを特徴とする、
複合蓄光粉体。
【請求項2】
前記複合蓄光粉体は蓄光母粒を生成するのに応用され、前記蓄光母粒の組成は、複数の前記複合蓄光粉体を1〜30重量%、熱可塑性高分子を50〜95重量%、ジアリルまたはトリアリル官能基の環状構造試剤を0.05〜5重量%、架橋剤を0.01〜5重量%および分散剤を0.01〜5重量%を含有することを特徴とする、請求項1に記載の複合蓄光粉体。
【請求項3】
前記熱可塑性高分子はポリエステルパウダー、ナイロンパウダー、ポリエステル顆粒またはナイロン顆粒であることを特徴とする、請求項2に記載の複合蓄光粉体。
【請求項4】
前記ポリエステルパウダーの固有粘度(I.V.)は0.2〜2.0であり、ナイロンパウダーの相対粘度(R.V.)は2.0〜5.0であることを特徴とする、請求項3に記載の複合蓄光粉体。
【請求項5】
前記ジアリルまたはトリアリル官能基の環状構造試剤はフタル酸ジアリル(diallyl phthalate)、ジアリルスクシナート(diallyl succinate)、ジアリル酒石酸アミド(diallyl tartramide)、トリアリルアミン(triallyl amine)、トリメシン酸トリアリル(triallyl trimesate)、2,2−チオビス(p−t−オクチルフェノレート)ニッケル(2,2−thiobis(p−tert−octylphenolate)nickel)、シアヌル酸トリアリル(triallyl cyanurate)、イソシアヌル酸トリアリル(triallyl isocynaurate)、4−[[4−(アミノカルボニル)フェニル]アゾ]−N−(2−エトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボアミド(4−[[4−(aminocarbonyl)phenyl]azo]−N−(2−ethoxyphenyl)−3−hydroxynaphthalene−2−carboxamide)またはトリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(triacryloylhexahydro−1,3,5−triazine)であることを特徴とする、請求項2に記載の複合蓄光粉体。
【請求項6】
前記架橋剤はペルオキソ二硫酸ジカリウム(Potassium persulfate)、アゾビスイソブチロニトリル(Azobisisbutyronitrile)またはベンジルジメチルケタール(Benzildimethylketal)であることを特徴とする、請求項2に記載の複合蓄光粉体。
【請求項7】
前記分散剤は長炭素鎖のアルキル基の分散剤であることを特徴とする、請求項2に記載の複合蓄光粉体。
【請求項8】
希土類元素を含有する蓄光原料と無機金属酸化物を提供するステップであって、前記前記希土類元素を含有する蓄光原料の含有量は0.1〜5重量%であり、前記無機金属酸化物の含有量は0.3〜0.8重量%であるステップと、
高速気流を導入し、−100〜−196℃の極低温環境において、前記希土類元素を含有する蓄光原料と前記無機金属酸化物を高速衝突させ、前記希土類元素を含有する蓄光原料の表面に前記無機金属酸化物を形成ならびに融合させることにより、前記複合蓄光粉体を得るステップであって、前記希土類元素を含有する蓄光原料はSrAl2O4:Eu、Tbであり、前記無機金属酸化物は酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムおよび酸化ストロンチウムにより構成されるグループから選ばれた1の物質またはその組み合せであるステップと、を含むことを特徴とする、
複合蓄光粉体の製造方法。
【請求項9】
前記高速気流は窒素を用いたものであることを特徴とする、請求項8に記載の複合蓄光粉体の製造方法。
【請求項10】
複数の請求項1に記載の複合蓄光粉体を1〜30重量%、熱可塑性高分子を50〜95重量%、ジアリルまたはトリアリル官能基の環状構造試剤を0.05〜5重量%、架橋剤を0.01〜5重量%および分散剤を0.01〜5重量%を混合し、混合粉体を形成するステップと、
前記混合粉体を混練し、前記熱可塑性高分子を溶融状態にするとともに、前記架橋剤により前記溶融状態になった熱可塑性高分子の架橋を行い、前記複合蓄光粉体を前記架橋を経た熱可塑性高分子中に分散させるステップと、
前記架橋を経て分散した前記複合蓄光粉体を含有する熱可塑性高分子を加熱乾燥し、蓄光母粒を得るステップと、
前記蓄光母粒に対し溶融紡糸を行うステップと、
蓄光繊維を巻き取るステップと、を含むことを特徴とする、
蓄光繊維の製造方法。
【請求項11】
前記混練ステップの温度は180〜260℃であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項12】
前記熱乾燥ステップの温度は85℃であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項13】
前記熱可塑性高分子はポリエステルパウダー、ナイロンパウダー、ポリエステル顆粒またはナイロン顆粒であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項14】
前記ポリエステルパウダーの固有粘度(I.V.)は0.2〜2.0であり、ナイロンパウダーの相対粘度(R.V.)は2.0〜5.0であることを特徴とする、請求項13に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項15】
前記ジアリルまたはトリアリル官能基の環状構造試剤はフタル酸ジアリル(diallyl phthalate)、ジアリルスクシナート(diallyl succinate)、ジアリル酒石酸アミド(diallyl tartramide)、トリアリルアミン(triallyl amine)、トリメシン酸トリアリル(triallyl trimesate)、2,2−チオビス(p−t−オクチルフェノレート)ニッケル(2,2−thiobis(p−tert−octylphenolate)nickel)、シアヌル酸トリアリル(triallyl cyanurate)、イソシアヌル酸トリアリル(triallyl isocynaurate)、4−[[4−(アミノカルボニル)フェニル]アゾ]−N−(2−エトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボアミド(4−[[4−(aminocarbonyl)phenyl]azo]−N−(2−ethoxyphenyl)−3−hydroxynaphthalene−2−carboxamide)またはトリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(triacryloylhexahydro−1,3,5−triazine)であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項16】
前記架橋剤はペルオキソ二硫酸ジカリウム(Potassium persulfate)、アゾビスイソブチロニトリル(Azobisisbutyronitrile)またはベンジルジメチルケタール(Benzildimethylketal)であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項17】
前記分散剤は長炭素鎖のアルキル基の分散剤であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項18】
前記紡糸ステップの温度は230〜290℃であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項19】
前記蓄光繊維の細さは20〜30マイクロメートル(μm)であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【請求項20】
前記蓄光繊維は1成分形原抽出繊維または2成分形コアシェル構造繊維であり、かつ、前記複合蓄光粉体は前記2成分形コアシェル構造繊維のシェル層またはコア層であることを特徴とする、請求項10に記載の蓄光繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄光材料に関するものであり、特に、無機金属酸化物を利用して得られる波長がシフトする複合蓄光粉体およびその製造方法と応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
20世紀初頭に長残光現象が発見されて以来、蓄光材料の発展は急速な進展を遂げてきた。各種蓄光材料は蓄光物体の製造に広く用いられている。蓄光材料は紫外線やその他光線を吸収した後に光線を発し、このような光線はリン光または残光(afterglow)と呼ばれる。
蓄光材料を利用すれば、昼間に可視光または太陽光、紫外線光を吸収し、光エネルギーに変換して保存し、夜間または暗闇で様々な色彩の光を発する蓄光繊維を作製でき、蓄光繊維からは、華やかで多彩な色光を有するだけでなく染色不要な衣服も作製できる。このような蓄光材料は、環境を汚染せず、無毒無害であり、放射性物質を含まず、紡織および環境保護のニーズを満たすものである。
【0003】
これまでの特許資料の中で、特許文献1が開示する「高輝度夜光性繊維およびその製造方法」の発明が提供するは、人体への悪影響が無く、長時間の高輝度で多色な発光特性を有し、刺繍糸や衣料用品等の各種分野で使用される高輝度夜光性繊維である。
この繊維は、焼成体から得た夜光性顔料のポリエステル樹脂またはポリオレフィン樹脂をコア成分とし、夜光性顔料を含まないポリエステル樹脂をシェル成分としたコアシェル型の複合繊維であり、繊維全体に対し、含まれる夜光性顔料は7〜25重量%であり、励起停止から1分後の残光輝度は500mcd/m
2以上であり、単繊維の太さは40μm以下である。
【0004】
また、特許文献2の発明が提供する「耐水性蓄光母粒および繊維およびその製造方法」は、疎水性材料の使用に焦点を当てたものであり、希土類元素のアルミン酸塩類の発光材料と混合し、蓄光母粒を生成し、溶融紡糸実験を経てコアシェル型発光繊維を作製する。疎水性材料は、蓄光繊維中の蓄光材料の湿気による加水分解の問題を回避できる。
【0005】
しかし、従来の蓄光繊維は通常蓄光粉の含有量が多いものを使用する必要があり、その含有量は約30重量%(w/w)であり、コストが高く、発光色が単調であり、大量生産できず、紡糸と仮撚工程では耐熱性不足の問題が生じやすく、ファイバーコーティング工程では水洗いや加工糸処理等に耐えられない。
【0006】
したがって、理想的な蓄光繊維または織物を作り、応用範囲を広げ、商業価値を高めるために、高い耐熱性および耐水洗性を有し、かつ発光色が多様で、大量生産が容易な蓄光材料を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許公告第564268号公報
【特許文献2】台湾特許公開第200927883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の問題に鑑みて、本発明の主な目的は、高速衝突および極低温環境を作ることにより、無機金属酸化物の金属イオンを蓄光原料の構造欠陥部分に嵌入し、光子エネルギーの飛躍的な変化を引き起こし、寒色系発光波長を有する複合蓄光粉体を製造することで、蓄光原料の単一波長発光を本発明の複合蓄光粉体の多重波長発光に進化させられ、蓄光材料の応用性を広げるだけでなく、製品の付加価値をさらに高められる、波長がシフトする複合蓄光粉体およびその製造方法と応用を提供することである。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、従来材料よりも多様な発光色を有するという特性を蓄光母粒と蓄光繊維に付与するだけでなく、蓄光繊維の耐水洗性および耐熱性を高め、蓄光繊維のデニール数および使用量を低減できる、波長がシフトする複合蓄光粉体およびその製造方法と応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明が提供する波長がシフトする複合蓄光粉体の組成は、希土類元素を含有する蓄光原料および無機金属酸化物を含む。無機金属酸化物は、高速気流と−100〜−196℃の極低温環境で、希土類元素を含有する蓄光原料の表面に形成ならびに融合され、エネルギー変化が起こり、発光波長がシフトする現象が生じる。そして本発明の波長がシフトする複合蓄光粉体は、多重発光色を有し、発光時間が変化するにつれて、異なる波長の発光を生じさせる。
【0011】
また、本発明が提供する波長がシフトする複合蓄光粉体の製造方法のステップによれば、まず、希土類元素を含有する蓄光原料と無機金属酸化物を提供し、次に、高速気流を導入し、−100〜−196℃の極低温環境で、希土類元素を含有する蓄光原料と無機金属酸化物を高速衝突させ、衝突により生じた瞬間的な高温と極低温環境の影響により、無機金属酸化物の金属イオンが融合反応を起こし、希土類元素を含有する蓄光原料の結晶格子構造を変化させることで、波長がシフトする複合蓄光粉体が得られる。
【0012】
本発明がさらに提供する蓄光繊維の製造方法のステップによれば、前述の波長がシフトする複合蓄光粉体を1〜30重量%、熱可塑性高分子を50〜95重量%、ジアリルまたはトリアリル官能基の環状構造試剤を0.05〜5重量%、架橋剤を0.01〜5重量%および分散剤を0.01〜5重量%混合して混合粉体を得た後、前述の混合粉体を高温で混練し、熱可塑性高分子を溶融状態にし、溶融状態の熱可塑性高分子を架橋し、複合蓄光粉体を架橋した熱可塑性高分子中で均一に分散させた後、架橋済みであり均一に分散した複合蓄光粉体を含有する熱可塑性高分子を加熱乾燥し、蓄光母粒を得る。
そして、蓄光母粒に対し溶融紡糸を行い、蓄光繊維を巻き取る。この製造過程により蓄光繊維の耐熱効果を高め、細い蓄光加工糸繊維を生成することができ、水洗いを50回繰り返しても蓄光繊維の発光輝度を維持することができる。本発明により製造される蓄光繊維は、民生用製品、工業用製品、紡織産業、インテリア製品、安全用品等の分野で広く応用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、蓄光原料の使用量を低減しても製品の発光輝度を高められるだけでなく、多色系発光と耐水洗性効果の持続を達成でき、当該産業の未来の発展のために、民生用製品、工業用製品、電子産業、紡織産業、インテリア製品および安全用品等のような各種分野の加工産業で応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明が提供する波長がシフトする複合蓄光粉体の製造方法のフローチャート。
【
図2】本発明が提供する蓄光母粒の製造方法のフローチャート。
【
図3】本発明が提供する蓄光繊維の製造方法のフローチャート。
【
図4】本発明が提供する比較例および実施例1、2の蓄光繊維の分光エネルギー分布曲線図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的、特徴および達成される効果の更なる理解のため、図面を参照しながら以下に詳細説明する。
【実施例】
【0016】
本発明により作製および提供される波長がシフトする複合蓄光粉体は、蓄光材料の元の単一波長発光を多重波長発光に変換し、蓄光母粒の混練および紡糸技術を経ることにより、多様な発光波長を有する蓄光繊維を製造することができる。
本発明によりいかにこの波長がシフトする複合蓄光粉体を得て、それを加工し蓄光母粒および蓄光繊維を製造するかを詳細に説明するため、
図1〜
図3を順に参照されたい。
【0017】
まず
図1は、本発明が提供する波長がシフトする複合蓄光粉体の製造方法のフローチャートであり、次のステップを含む。
【0018】
ステップS10では、0.1〜5重量%の希土類元素を含有する蓄光原料と0.01〜5重量%の無機金属酸化物を提供する。希土類元素(rare earth)を含有する蓄光原料にはSrAl
2O
4:Eu、
Tbを選んで用いることができ、無機金属酸化物には酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムおよび酸化ストロンチウムにより構成されるグループから選ばれた1の物質またはその組み合せを選んで用いることができる。
【0019】
ステップS20では、たとえば100%の窒素のような高速気流を導入し、−100〜−196℃の極低温環境を作り、希土類元素を含有する蓄光原料と無機金属酸化物を高速衝突させる。
この衝突で瞬間的に生じた高温の衝突エネルギーにより、無機金属酸化物の金属イオンは高温のために融合反応(fusion reaction)を起こし、蓄光原料の結晶格子構造は欠陥が補われたことで変化し、励起停止後に光子がずれる現象(photon shift)が起きる。光子はエネルギーを得て、波長が短くなり、極低温環境の影響により生じた瞬間冷却を経て、融合反応は蓄光原料の表層だけに発生し、発光輝度の低下に大幅に影響することはない。
そして、このエネルギーがもたらした変化と嵌入方式で構造欠陥補うことにより、励起停止後に欠陥が減少し光子散乱が低減され、自由電子が元の状態に戻る時間が遅れ、発光時間が増加する。
【0020】
本発明により得られた波長がシフトする複合蓄光粉体は、結晶格子構造の変化により、多重色光を発し、発光波長の主な発光ピークは、蓄光原料SrAl
2O
4:Eu、
Tbの565ナノメートルの緑色発光波長から505ナノメートルおよび485ナノメートルの青−緑色系発光波長へとシフトする。
【0021】
続いて
図2で示す本発明が提供する蓄光母粒の製造方法のフローチャートについて説明する。含まれるステップは次のとおりである。
【0022】
ステップS30では、前述の波長がシフトする複合蓄光粉体1〜30重量%を乾燥した熱可塑性高分子に混合する。使用される熱可塑性高分子の含有量は50〜95重量%であり、ポリエステルパウダー、ナイロンパウダー、ポリエステル顆粒またはナイロン顆粒を選択して用いることができる。
ポリエステルパウダーの固有粘度(I.V.)は0.2〜2.0であり、ナイロンパウダーの相対粘度(R.V.)は2.0〜5.0である。そしてジアリルまたはトリアリル官能基の環状構造試剤を0.05〜5重量%、架橋剤を0.01〜5重量%および分散剤を0.01〜5重量%をさらに添加し、上述の成分を均一に混合して混合粉体を得る。
【0023】
ジアリルまたはトリアリル官能基の環状構造試剤はフタル酸ジアリル(diallyl phthalate)、ジアリルスクシナート(diallyl succinate)、ジアリル酒石酸アミド(diallyl tartramide)、トリアリルアミン(triallyl amine)、トリメシン酸トリアリル(triallyl trimesate)、2,2−チオビス(p−t−オクチルフェノレート)ニッケル(2,2−thiobis(p−tert−octylphenolate)nickel)、シアヌル酸トリアリル(triallyl cyanurate)、イソシアヌル酸トリアリル(triallyl isocynaurate)、4−[[4−(アミノカルボニル)フェニル]アゾ]−N−(2−エトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボアミド(4−[[4−(aminocarbonyl)phenyl]azo]−N−(2−ethoxyphenyl)−3−hydroxynaphthalene−2−carboxamide)またはトリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(triacryloylhexahydro−1,3,5−triazine)である。分散剤は長炭素鎖のアルキル基の分散剤であり、たとえばパラフィンを含む。
【0024】
ステップS40では、混練温度180〜260℃で、前述の混合粉体を混練し、熱可塑性高分子を溶融状態にし、架橋剤と熱可塑性高分子の架橋反応を起こすことで、複合蓄光粉体が架橋した熱可塑性高分子中に均一に分散される効果が得られる。
【0025】
ステップS50では、85℃の温度で加熱乾燥を行い、蓄光母粒を得る。
【0026】
次に、
図3で示す本発明が提供する蓄光繊維の製造方法のフローチャートについて説明する。含まれるステップは次のとおりである。
【0027】
ステップS60では、紡糸温度230〜290℃、紡糸巻き取り速度1000〜3000メートル毎分(m/min)という条件下で、蓄光母粒に対し溶融紡糸を行う。
【0028】
ステップS70では、最後に蓄光繊維を巻き取る。蓄光繊維の細さは20〜30マイクロメートル(μm)であり、また蓄光繊維は1成分形原抽出繊維または2成分形コアシェル構造繊維であり、複合蓄光粉体は2成分形コアシェル構造繊維のシェル層またはコア層を構成できる。
【0029】
波長がシフトする複合蓄光粉体の製造ならびに蓄光母粒および蓄光繊維への加工のいくつかの具体的実施例(実施例1、2)と、本発明の目的、効果および原理の説明のための比較例を以下に例示する。
【0030】
(1)波長がシフトする複合蓄光粉体
【0031】
希土類元素を含有する蓄光原料(SrAl
2O
4:Eu、
Tb)粉体と無機金属酸化物(酸化亜鉛および酸化アルミニウム)粉体に、持続的に液体窒素を導入し、極低温環境下(−100〜−196℃)で、上述の粉体に高速気流を導入した状態で、100〜500キログラム毎時(kg/h)の処理量で、粉体と粉体を衝突させ、極低温度の環境により、粉体は衝突して瞬間的に粉砕され、粉体粒子の粒径は50マイクロメートルから1〜5マイクロメートル以下まで小さくなる。
粉体と粉体の間の衝突により生じた瞬間熱エネルギーに、外界の極低温環境の影響がさらに加わることで、蓄光原料と無機金属酸化物は一時的または永久的に融合し、波長がシフトする複合蓄光粉体が得られる。この波長がシフトする複合蓄光粉体はその結晶格子構造の変化により発光波長が変化する。本発明により作製および提供される波長がシフトする複合蓄光粉体は、元の蓄光材料が発する緑色発光波長を、たとえばスカイブルーやオーシャンブルーのような青−緑色系発光波長といった寒色系発光波長に変換できる。
【0032】
尚、ここで特に説明すべきは、酸化亜鉛と酸化アルミニウムはそれ自体は発光効果を有するものではなく、単純にそのまま混合しただけでは、発光光子がこれらの粉体の影響を受けて深刻な散乱ならびに発光抑制作用をもたらし、光子のずれは生じないという点である。
本発明では、粉体は高速衝突により融合する。融合反応が起こらない場合は、発光色の変化も起こらず、発光輝度も顕著に低下する。したがって、発光結果により直接融合が成功したか否かを判定することができる。
【0033】
(2)蓄光母粒
【0034】
上述の工程に続き、10〜25重量%の複合蓄光粉体とポリエステル(PBT)粉末を取り、0.05〜5重量%のジアリルまたはトリアリル官能基の環状構造試剤および0.5〜1.5重量%の長炭素鎖のアルキル基の分散剤を添加して混合し、0〜3.0重量%の三官能基の感光性架橋剤を添加する(表1を参照)。
混練温度は180〜260℃で二軸混練機により蓄光母粒を生成する。三官能基の感光性架橋剤を添加したため、もとの高い結晶度を有するポリエステル母粒は、高温混練環境下でラジカルが架橋反応を起こし相互貫入高分子網目構造(interpenetrating polymer network structure,IPN)が発生し、無定形領域即ち非結晶領域が増加する。続いて、得られた蓄光母粒を乾燥させるとともに、蓄光母粒の発光輝度を測定する。
表2に測定結果を示す。架橋構造の増加に伴い、非結晶領域構造も増加し、複合蓄光粉体はポリエステル構造内で、結晶領域による光散乱現象の低減を促し、架橋構造の増加により蓄光母粒の発光輝度が増し、蓄光母粒の粘度も0.6から0.9に増加する。蓄光母粒の粘度が低すぎると糸を生成できないので、これは未来の加工紡糸の大きな助けとなる。この発光輝度の増加により将来的に製品への応用性が広がるだけでなく、複合蓄光粉体の使用量が減少しコスト削減が可能になる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
(3)蓄光繊維
【0038】
上述の工程に続き、複合式紡糸機と巻取機を利用して蓄光母粒の紡糸を行う。紡糸温度は230〜290℃である。本発明の蓄光母粒は相互貫入高分子網目の架橋構造を有するため、蓄光母粒の粘度は0.8以上に達し、耐熱性が高くなる。したがって、紡糸工程で紡糸温度を上げることができ、温度が高くなるほど流動性が増し、生産速度の増加が促されることでコストを低減できる。
蓄光母粒の流動性の増加により、紡糸巻き取り速度は、1000〜3000メートル毎分(m/min)に達する。繊維の細さは6DPF(DPFはdenier per filament、即ち繊維1本の太さを表す単位)から約3DPF(120デニール/36フィラメント)まで細くすることができる。
図3の測定結果が示すように、本発明は多様な発光波長を有する蓄光繊維の製造に確かに成功しており、水洗いを50回繰り返すテスト(AATCC135テスト方法)を経ても繊維発光輝度を維持できる(80〜120mcd/m
2)。
また、
図4を参照されたい。曲線(a)、(b)、(c)、はそれぞれ比較例および実施例1、2の蓄光繊維の分光エネルギー分布曲線を示す。本発明の実施例で作製された波長がシフトする複合蓄光粉体から発せられた発光波長の主な発光ピークは、565ナノメートルの緑色発光波長(曲線(a))から505ナノメートルのオーシャンブルー発光波長(曲線(b))と6480ナノメートルのスカイブルー発光波長(曲線(c))へとシフトする。
【0039】
【表3】
【0040】
つまり、本発明が提供する波長がシフトする複合蓄光粉体およびその製造方法と応用は、無機金属酸化物と希土類元素を含有する蓄光原料を利用し、極低温環境と高温気流により、金属イオンを融合させて蓄光原料の構造欠陥に嵌入し、光子の経路を変更させるとともに、エネルギー変化を引き起こし、励起停止後の光子の元の状態と励起状態のずれによりエネルギーが変化し、これにより蓄光原料の発光特性を変えられ波長がシフトする複合蓄光粉体が得られる。この波長がシフトする複合蓄光粉体は異なる発光時間により異なる発光波長を生成する。
【0041】
また、本発明により製造される波長がシフトする複合蓄光粉体は、ラジカルの架橋反応を経て、ジアリルまたはトリアリル官能基の化学反応試剤を添加することで、効果的に大量の無定形領域を発生させる。
このため、熱可塑性高分子との結合反応が増加するので、熱可塑性高分子の熱によるクラックは低減され、複合蓄光粉体は熱可塑性高分子中で均一に分散される。また、蓄光母粒生成工程では、希土類元素を含有する蓄光原料の使用量は僅か8〜20%であり、生産コストの顕著な削減が可能である。
【0042】
したがって、本発明の蓄光母粒の紡糸工程を経て製造された蓄光繊維は、多様な色光の発光波長を有するだけでなく、耐熱性、繊維強度、靱性が高められ、輝度が大幅に増すので蓄光材料の使用量を減らすことができ、蓄光繊維のデニール数および使用量も低減でき、肉眼で認識できる輝度3mcd/m
2を3時間以上維持できる。
【0043】
本発明の実施例を上述とおり開示したが、これは本発明を限定するために用いられるものではない。本発明の精神と領域を脱しない範囲内で加えた各種の変更や潤色は全て、本発明の特許請求の範囲内に含まれる。本発明の保護範囲については特許請求の範囲を参照されたい。