(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサを含むヘッドトランスデューサ配置の単純化された側面図である。
【
図2】さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサの構造を示す図である。
【
図3】他の実施形態に従う抵抗温度センサの構造を示す図である。
【
図4】他の実施形態に従う抵抗温度センサの構造を示す図である。
【
図5】他の実施形態に従う抵抗温度センサの構造を示す図である。
【
図6】他の実施形態に従う抵抗温度センサの構造を示す図である。
【
図7】さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサを製造するためのさまざまなプロセスを示す図である。
【
図8】他の実施形態に従う抵抗温度センサを製造するためのさまざまなプロセスを示す図である。
【
図9】他の実施形態に従う抵抗温度センサを製造するためのさまざまなプロセスを示す図である。
【
図10A】さまざまな実施形態に従う、導電層としてのNi膜と、Ni層の上下の鏡面層またはシード層としてのTa、RuもしくはPt薄膜とで構成される三層膜に対応するTCRデータを示す図である。
【
図10B】さまざまな実施形態に従う、導電層としてのNi膜と、Ni層の上下の鏡面層またはシード層としてのTa、RuもしくはPt薄膜とで構成される三層膜に対応するTCRデータを示す図である。
【
図11A】さまざまな実施形態に従う、導電層としてのNi
96Fe
4膜と、NiFe層の上下の鏡面層またはシード層としてのTaもしくはRu薄膜とで構成される三層膜に対応するTCRデータを示す図である。
【
図11B】さまざまな実施形態に従う、導電層としてのNi
96Fe
4膜と、NiFe層の上下の鏡面層またはシード層としてのTaもしくはRu薄膜とで構成される三層膜に対応するTCRデータを示す図である。
【
図12】さまざまな実施形態に従う、Taシード層の厚みについてのNi膜のTCRの依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
十分な抵抗温度係数を有する金属薄膜は、温度センサに使用され得る。特に、十分に高いTCRを有する金属薄膜は、ハードディスクドライブおよび他の磁気記録装置において、ヘッド−メディア接触および温度アスペリティを検出用の温度センサを製造するために用いられ得る。接触検出(CD)および温度アスペリティ(TA)検出信号に関連する信号ノイズ比(SNR)は、CDおよび/またはTA検出センサを製造するために用いられる材料のTCRに依存する。
【0007】
十分に高いSNRを得るために、より大きなTCRを有する材料が一般的に望ましい。典型的なCDまたはTA検出センサは、数十ナノメートルの厚みを有する金属薄膜からなる。そのような典型的な検出センサにおいては、電子の平均自由行程は、膜の厚みにほぼ等しいか、もしくはより大きい。したがって、薄膜材料のTCRは、過度の表面散乱および界面散乱のために、同じ材料の多くのTCRよりも小さくなり得る。そのため、所望の大きなTCRを達成するためには、意図的に設計された材料および製造方法が必要とされる。
【0008】
開示の実施形態は、温度検知用途用の大きなTCRを達成するための積層された金属および金属/酸化物薄膜、ならぶにそれを製造する方法に向けられる。さまざまな実施形態に従う積層薄膜構造は、好ましくは、導電金属層、金属鏡面層、酸化物鏡面層、またはシード層のいずれかであり得る他の層とを備える。導電金属層はTCRを有する。積層薄膜構造におけるさまざまな層の厚みは、好ましくは、数十ナノメートルの範囲内である。意図的に最適化された多層薄膜構造と、そのような薄膜の昇温状態での製造方法との結合にむけられるさまざまな実施形態が、大きなTCRを得るために、本明細書に開示される。
【0009】
所与の材料のTCRは、以下の式によって規定される。
【0010】
【数1】
ここで、R
0は室温における抵抗値であり、dR/dTは温度の関数とした抵抗変化を示す。TCRがR
0に対して反比例であることが与えられると、R
0の低下がより大きなTCRを産することが予測される。同様に、dR/dTの増加がより大きなTCRを導く。
【0011】
R
0は多くの要因によって影響される抵抗値を説明する。たとえば、表面散乱および界面散乱が、構造的および化学的欠陥散乱とともになって材料抵抗R
0に追加されるが、TCRに対する寄与はほとんどない。dR/dTは、材料の温度的に活性化された抵抗であり、その大部分は材料の固有特性であるので、開示される実施形態は、CDおよびTA検出センサのような温度検知装置のTCRを増加するために、薄膜のR
0の低減を目標とする。
【0012】
さまざまな実施形態に従えば、
図1を参照して、回転する磁気記憶ディスク150に近接するサスペンション101によって指示されたスライダ100が示される。スライダ100は、記録ヘッドトランスデューサ103を支持する。ヘッドトランスデューサ103上に、抵抗温度センサ105が示される。抵抗温度センサ105は、磁気記録媒体150の近接点に位置付けられる。近接点は、概して、ヘッドトランスデューサ103と磁気記録媒体150との間における最接近接触点と理解される。抵抗温度センサ105は、好ましくは、媒体150のアスペリティおよびヘッドと媒体との接触を検知するために、熱流の変化を検知するように構成される。
【0013】
図2を参照して、
図1に示される抵抗温度センサ105の構造は、さまざまな実施形態に従って説明される。
図2に示されるセンサ構造は、導電材料を含むとともにTCRを有する第1の層210と、鏡面層およびシード層のうちの少なくとも1つを含む第2の層220とを含む。いくつかの実施形態においては、
図2に示されるセンサ構造は、第1の層と210、鏡面層を備える第2の層220を含む。他の実施形態においては、
図2に示されるセンサ構造は、第1の層210と、シード層を備える第2の層220とを含む。第1の層210の導電材料は、好ましくは、Cu、Co、Ni、Ru、Pt,Au、Fe、またはNi
XFe
1-X、あるいはそれらの金属を含む。第1の層210は、好ましくは、第1の層210の導電材料における電子の平均自由行程にほぼ等しい厚み、あるいはより小さい厚みを有する。
【0014】
図3は、さまざまな実施形態に従う、
図1に示された抵抗温度センサ105の詳細構成を示す。
図3に一致する実施形態によれば、抵抗温度センサの第1の層は、導電材料およびTCRを有する導電層310を備える。導電層310の下方に示される第2の層は、鏡面層320を備える。抵抗温度センサ105は、第1の層310の上方にキャップ層305を備える。
【0015】
キャップ層は、好ましくは、Ta、Ru、Cr、NiCr、またはNiRu、あるいはそれらの合金を含む。鏡面層320は、好ましくは、金属薄膜または酸化物薄膜で作られる。1つの代表的な実施形態においては、
図3に示される鏡面層320は、SiO
2、NiO、Al
2O
3、FeO
X、HfO
2、Y
2O
3、MgO、TiO
X、CuO
X、SrTiO
3、またはZrOを含む絶縁層を含む。他の代表的な実施形態においては、鏡面層320は、Au、Ag、Cu、Py、またはRu、あるいはそれらの合金を含む金属層を含む。
【0016】
鏡面効果(specular effect)は、発明者によって多くの場合において観測され、かつ測定された。たとえば、
図3における鏡面層320としてSiO
2およびNiOを用いた場合、Ag、NiFe、CuおよびTaについての鏡面ファクタは、それぞれ、およそ0.8、0.5、0.4および0であることが見出された。反射層320は、導電層310内の電子を制限し、表面散乱および界面散乱を低減する。したがって、導電層310の抵抗は低減される。結果として得られる薄膜抵抗温度センサ105のTCRは、したがって、トータル抵抗R
0を低減することによって増加される。鏡面層320は、約0.2から約1までの好ましい鏡面反射率(specularity)を有し、より好ましくは約0.5から約0.8、さらに好ましくは約0.8から約1である。完全な鏡面層320は1の鏡面反射率を与え、界面散乱を完全に排除する。そのため、1の鏡面反射率を有する鏡面層320は、最大のTCRゲインを与えるために理想的に望ましい。しかしながら、界面の不完全性および電子バンドアライメントが、1の鏡面反射率の実現を妨げる。実際、その場(in situ)での真空堆積および/または酸化を含む入念な界面材料および電子バンド工学によって、約0.5から約0.8の鏡面反射率が得られる。
【0017】
図3に示されるように、
図1のセンサ105は、第1の層310と鏡面層320との間に、少なくとも1つのフラッシュ金属層315をさらに備え得る。金属導電層310と鏡面層320との間の非常に薄い金属層315のフラッシングは、鏡面効果の増加を提供し、それによってTCRを増加する。フラッシュ層315は、好ましくは、Cu,Ag、またはAu、あるいはそれらの合金を含む。
【0018】
図4は、さまざまな実施形態に従う、複数の第1の導電層410および導電層410に隣接する複数の鏡面層420を備える、
図1の抵抗温度センサ105の積層構造の概略を示す。
図5は、他の実施形態に従う、複数の第1の導電層510、導電層510に隣接する複数の鏡面層520、および、導電層510と鏡面層520との間の複数のフラッシュ金属層515を備える、
図1の抵抗温度センサ105の積層構造の概略を示す。個々の層厚みは、好ましくは、数オングストロームまたは数十ナノメートルの範囲である。導電層510の厚みは、約5nmから約100nmの範囲であり、好ましい厚みは約5nmから30nmの範囲である。鏡面層520の厚みは、約1nmから約20nmの範囲であり、好ましい厚みは約2nmから約5nmの範囲である。フラッシュ金属層515の厚みは、約0.5nmから約5nmの範囲であり、好ましい厚みは約0.5nmから約2nmである。鏡面反射層の製造は、スパッタリング、CVD、MOCVD、IBD、MBE、電子ビーム蒸着、自然酸化、プラズマ酸化、およびレチクル酸化を含む。
【0019】
さまざまな実施形態によれば、
図1の抵抗温度センサ105の他の代表的な構造が、
図6に示される。
図6における構造は、第1の層としての導電層610と、第2の層としてのシード層とを備える。シード層620は、導電層610の下方に示される。シード層620は、好ましくは、Ta、Ru、Cr、NiCr、またはNiRu、あるいはそれらの合金を含む。
図6に示される抵抗温度センサ105は、導電層610の上方に示されるキャップ層605をさらに備える。シード層620のシーディング効果は、センサ105のTCRを増加するための手段として、薄膜抵抗温度センサ105のシート抵抗R
0を低減する。
図6に示されるものと同じ構造に基づいて、キャップ層605およびシード層620も、(個別にまたは組合せにより)鏡面効果を提供する。キャップ層605およびシード層620は、したがって、鏡面層として機能する。
【0020】
図7は、さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサを製造するためのさまざまなプロセスを示す。
図7に示される手順は、ヘッドトランスデューサを形成するステップ710と、TCRを有する導電材料を備える第1の層をヘッドトランスデューサ上に形成するステップ720とを含む。第1の層は、第1の層の導電材料における電子の平均自由行程とほぼ等しいか、またはより小さい厚みに形成される。導電材料は、好ましくは、Cu、Co、Ni、Ru、Pt,Au、Fe、またはNi
XFe
1-X、あるいはそれらの金属を含む。
図7に示される手順は、ヘッドトランスデューサ上に、鏡面層およびシード層のうちの少なくとも1つを備える第2の層を形成するステップ730をさらに含む。いくつかの実施形態においては、
図7に示される手順は、鏡面層を備える第2の層をヘッドトランスデューサ上に形成するステップ730をさらに含む。他の実施形態においては、シード層を備える第2の層をヘッドトランスデューサ上に形成するステップ730をさらに含む。
【0021】
図8は、他の実施形態に従う抵抗温度センサを製造するためのさまざまなプロセスを示す。
図8に示される実施形態によれば、ヘッドトランスデューサが形成されるとともに(710)、形成されたヘッドトランスデューサ上に、TCRを有する導電材料を備える第1の層が形成される(820)。
図8における方法は、ヘッドトランスデューサ上に、フラッシュ金属層を形成するステップ832をさらに含む。フラッシ金属層は、好ましくは、Cu,Ag、またはAu、あるいはそれらの合金を含む。
図8に示される方法は、フラッシュ金属層が第1の層と鏡面層との間になるように、鏡面層を形成するステップ834も含む。鏡面層は、SiO
2、NiO、Al
2O
3、FeO
X、HfO
2、Y
2O
3、MgO、TiO
X、CuO
X、SrTiO
3、またはZrOを含み得る。鏡面層は、Au、Ag、Cu、Pt、またはRu、あるいはそれらの合金を含み得る。金属導電層と鏡面層との間の非常に薄い金属層のフラッシングは、鏡面層の鏡面効果をさらに増加し、それによって抵抗温度センサのTCRを増加する。
【0022】
図9を参照して、さまざまな実施形態に従う抵抗温度センサを製造するためのさまざまなプロセスが示される。ヘッドトランスデューサを形成するステップ710の後、
図9に示される方法は、Ta、Ru、Cr,NiCr、またはNiRu、あるいはそれらの合金を含むシード層を形成するステップ915と、ヘッドトランスデューサ上に第1の層を形成するステップ920とを含む。第1の層は、導電材料およびTCRを有する導電層を備える。シード層は、第1の層の下方に形成されてシーディング効果を提供し、それは、センサのTCRを増加するための手段として、薄膜センサのシート抵抗を低減する。シード層および導電層は、室温に対して高められた温度で高真空環境においてその場(in situ)で形成される。
図9における方法は、第1の層の上にキャップ層を形成するステップ925も含む。キャップ層は、好ましくは、Ta、Ru、Cr、NiCr、またはNiRu、あるいはそれらの合金を含む。
【0023】
図10Aおよび
図10Bは、
図6に示される三層構造に対応するTCRデータを示す(
図10Aにけるグラフ1010、および
図10Bにおけるデータ表1020に示される)。
図10Aに示される具体的な三層膜は、導電層としてのNi膜(30nm)と、Ni層の上下にある鏡面層および/またはシード層としてのTa(1020)、Ru(1016)、またはPt(1018)薄膜(5nm)である。三層金属層は、単一層Ni膜(1014)よりも若干高いTCRを示すことが示される。
図10に示される同じ膜のシート膜抵抗1020が、
図10Bの表1に示される。三層薄膜のシート抵抗が単一層Ni膜のものよりも低いことがわかる。
【0024】
図11Aおよび
図11Bに示されるTCRデータ(
図11Aにおけるグラフ1110および
図11Bにおけるデータ表1120に示される)は、導電層としてのNi
96Fe
4膜(30nm)と、鏡面層および/またはシード層としてのTa(1112)またはRu(1114)薄膜(5nm)とで構成される三層膜に対応する。同じ膜のシート抵抗が、
図11Bの表2に示される。三層薄膜は、高真空環境(5*10
-9トール)においてその場(in situ)で作られ、それは異なる層間の界面不純物を最小化した。三層薄膜のTCRは単一層膜よりも若干大きいことが見出された。さらに、三層薄膜の
図11Bに示されるシート抵抗1120は単一層膜よりも低いことが見出された。
【0025】
室温に対して高められた温度における多層薄膜構造の製造は、薄膜材料のより大きな粒サイズをもたらし、それによって欠陥散乱からもたらされる残留抵抗の低減をもたらす。TCRを強化するようなR
0の低下が予測される。250℃および350℃で製造された5nm Ta/30nm Ni/5nm Taの三層薄膜の調整は、〜0.38%/℃のTCRを生み出し、室温で調整された同じ三層薄膜において観測される〜0.32%/℃と比較される。
【0026】
さらに、三層薄膜構造のTCRの増加は、シード層の厚みの強化(たとえば、最適化)によって達成され得る。
図12は、Taシード層の厚みに対する、Ni膜のTCRの依存性1210を示す。トータルの二層厚み(Ni+Ta)は45nmに維持され、調整温度は250℃であった。〜0.43%/℃の強化された(たとえば、最適化された)TCRは、2nmのTaシード層で達成された。この大きなTCRは、室温において調整されたNi単一層膜のTCRを超える、約0.43%の増加を表わす。
【0027】
導電層の材料およびトータル厚みに応じて、三層膜のTCRは、約0.2%/℃から約0.5%/℃であり、約3Ωから約8Ωのシート抵抗を有する。最適化されたシード層厚みは、シード層の材料および導電層の材料に応じて、約1nmから約5nmである。下層シード層および上層(導電層の上の層)の双方が同じ厚みである場合には、最適化されたシード層厚みが三層構造に適用可能である。さらに、下層シード層および上層は、装置用途のための特定のシート抵抗を提供するために、異なる厚みで用いることができる。シード層厚みは、最大TCRゲインを達成するように最適化される。
【0028】
堆積速度およびプロセスガス流量を含む他の処理パラメータも、より大きいTCRを達成するように最適化され得るファクタである。たとえば、スパッタリング、温度蒸着および分子線エピタキシーを含む他の物理蒸着プロセス、ならびに化学蒸着などのさまざまな製造方法が企図される。
【0029】
本明細書に開示されたさまざまな実施形態の多くの特性および利点が、さまざまな実施形態の構造および機能の詳細とともに上記の説明に記載されたが、この詳細な説明は例示的に過ぎず、添付の特許請求の範囲に表現された用語の広い一般的な意味によって示される全範囲に対して、詳細、特に現在開示された主題の原理内の部分の構造および配置の点における変更がなされてもよい。