特許第6061837号(P6061837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6061837-構造用接着剤組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061837
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】構造用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20170106BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C09J11/08
【請求項の数】1
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-251738(P2013-251738)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-108077(P2015-108077A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100780
【氏名又は名称】アイシン化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】特許業務法人 Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 和男
(72)【発明者】
【氏名】脇井 友之
(72)【発明者】
【氏名】新田 正喜
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−078280(JP,A)
【文献】 特表2009−545656(JP,A)
【文献】 特表2015−501853(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/070415(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0294057(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0115442(US,A1)
【文献】 特表2009−506169(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0188609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 163/00
C09J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエポキシ樹脂と、コアシェル型ゴム粒子と、硬化剤とを含有する構造用接着剤組成物であって、
前記コアシェル型ゴム粒子は、平均粒径が100nm〜500nmの範囲内である一次粒子と平均粒径が0.5μm〜1000μmの範囲内である二次凝集体とが混在する分散形態をなし、
前記コアシェル型ゴム粒子の配合量は、前記エポキシ樹脂100重量部に対して、25重量部〜45重量部の範囲内であり、
前記コアシェル型ゴム粒子は、一次粒子と二次凝集体の配合重量比が、2:3〜3:2の範囲内であることを特徴とする構造用接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、産業用車両の車体パネル等の構造接着に使用する構造用接着剤組成物に関するものであり、特に、耐流水圧性に優れる構造用接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス成形された鋼板から車体を組立てる車体組立工程において、ドア、フード、トランクリッド等の開きもの(蓋もの)と呼ばれるヘミング部やホイールアーチ部の組立に使用する接着剤組成物としては、油面鋼板への接着強度、接着剤組成物塗布後の電着塗装工程における塗膜の焼付乾燥炉での硬化性、防錆性及び柔軟性等に優れている点から、エポキシ樹脂を主剤とする熱硬化型の組成物が一般に使用されている。このエポキシ系接着剤組成物は、一般に、エポキシ樹脂と、ジシアンジアミド等の加熱活性形の硬化剤と、炭酸カルシウム等の充填剤とを基本成分とし、更に、チキソ剤等により適度な粘度或いは稠度に調製される。そして、これらヘミング部やホイールアーチ部の組立に使用されているエポキシ系接着剤組成物においては、車体組立工程で塗布され、電着塗装工程を経た後の塗装乾燥炉での電着塗膜の焼き付けと同時に、硬化反応が進行して、接着強度が発現されるよう構成されている。
【0003】
一方、自動車のルーフレール、各種ピラー等の構造部位の鋼板接合においても、近年、車体の剛性や強度の確保等を目的とし、溶接や、ボルトとナットや、リベット等の従来の接合技術に代わって、またはそれを補強するために、接着剤(正確には、構造用接着剤)とスポット溶接を併用した技術(ウェルドボンド工法)が注目され、かかる接着剤(構造用接着剤)の需要が高まっている。なお、「構造用接着剤」とは、長時間大きな荷重がかかっても接着特性の低下が少なく、信頼性の高い接着剤(JIS K6800)をいう。
ここで、ヘミング部やホイールアーチ部の組立に使用されているエポキシ系接着剤組成物においては、一般的に、塗布作業性を考慮して材料粘度が低く設定されていることから、この既存のエポキシ系接着剤組成物をルーフレール、各種ピラー等の構造部位の鋼板接合に使用した場合、鋼板の接合部位から食み出た接着剤組成物が、電着塗装工程内において電着塗装の前処理で施される洗浄処理に使用される水流の力(流水圧)によって破壊され、脱落・飛散・流出等することで、外板付着や電着液汚染等の問題が生じる。
【0004】
そこで、洗浄処理の流水圧による接着剤組成物の破壊(脱落・飛散・流出等)の対応として、組成物粘度の高設定化が有効であるが、例えば、高粘度樹脂の多量添加により高粘度化した場合には、塗布作業性に悪影響を及ぼし、また、コロイダル炭酸カルシウムやシリカゲル等のチキソ性(チキソトロピー)を付与する充填剤の多量添加等により高粘度化した場合には、接着強度に悪影響を及ぼすことが予想される。
【0005】
ここで、特許文献1や特許文献2には、被接着体に接着剤組成物を塗布したのち、電着塗装工程前に、短時間で加熱を行う疑似硬化を行うことにより、接着剤組成物の破壊(脱落・飛散・流出等)を防止するとして、疑似硬化性が付与された接着剤組成物が開示されている。
具体的には、特許文献1において、1分子当たり平均で1より多いエポキシ基を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂と、昇温することによって活性化される少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤と、100℃〜145℃の融点を有し、脂肪酸アミドまたはポリアミドである少なくとも1種のアミドAMと、ブロックポリウレタンポリマー、液状ゴム、エポキシ樹脂変性液状ゴム、コア/シェルポリマー等の靭性改良剤とを含有する1成分形熱硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されており、アミドAMを含有することにより125℃×12分の予備加熱後に60℃ジェットスプレー洗浄を行っても接着力が失われず耐洗浄性を有することが記載されている。
また、特許文献2において、エポキシ樹脂と、ガラス転移温度−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から成るコア及びガラス転移温度70℃以上の架橋性単量体単位を含有するアクリレート系重合体から成るシェルから構成された重量平均粒子径が0.1〜3.0μmのコアを用いて得られるコアシェル型粉末状重合体と、エポキシ樹脂用潜在型硬化剤とを含有したエポキシ樹脂系接着強度組成物が開示されており、(メタ)アクリレート系重合体から成るコアシェル型粉末状重合体を配合することにより疑似硬化性が付与されると記載されている。
【0006】
更に、特許文献3には、架橋可能な二重結合を有する合成ゴムと、コアシェル型アクリル樹脂と、エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤等からなる接着付与剤と、可塑剤と、充填剤と、希釈剤とを含む硬化性組成物が開示されており、合成ゴムを主成分とする組成物にアクリルゾルで実用化されたコアシェル型アクリル樹脂を適用することで、未硬化状態において、電着塗装の前処理工程での洗浄シャワーに対する形状保持性が発揮される旨が記載されている。
【0007】
また、組成物粘度の高設定化に関し、靭性強化等の樹脂改質を図るとして、例えば、特許文献4や特許文献5に開示されているように、エポキシ樹脂組成物にコアシェル型ゴム粒子を配合する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2011−514394号公報
【特許文献2】特開平05−065391号公報
【特許文献3】特開2005−272712号公報
【特許文献4】特開2010−270204号公報
【特許文献5】特表2013−510225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1や特許文献2の技術においては、高い温度での短時間の予備加熱によって疑似硬化させることで、耐洗浄性を発揮させるものであり、予備加熱作業及び加熱後の冷却作業等の煩雑な工程が必要で時間と手間を要する。加えて、エポキシ系接着剤組成物は、反応性が高く加熱によって発泡し易い傾向があることから、短時間で高温まで急激に加熱させる予備加熱によって疑似硬化させた場合、組成物の層の内部に発泡が生じやすく、それによって接着強度が低下する問題がある。
また、特許文献3においては、実施例の耐シャワー性の試験条件が緩く、チキソ性を付与する充填剤の添加等により容易に達成し得るものであり、洗浄処理における耐流水圧性は不十分であることが予想される。また、合成ゴムを配合していることによって、硬化後のエポキシ樹脂相にゴム成分が一部溶解して残存しやすく、それによって、硬化物の弾性率が低下する等の問題点もある。
更に、特許文献4や特許文献5においては、ゴム成分がコアシェル型ゴム粒子の形態で配合されているため硬化後のエポキシ樹脂相に溶解することがなく品質の低下を抑制できると思われるものの、靭性強化等を十分に発揮させるためにコアシェル型ゴム粒子は一次粒子の状態で分散させていると考えられる。そして、本発明者らの実験研究によれば、コアシェル型ゴム粒子が一次粒子の分散形態である場合、塗布作業時に強い剪断応力がかかった際、レオロジーが変化して物性が変化しやすく、洗浄処理水と同等の流水圧によっては接着剤組成物が破壊することが確認されている。
【0010】
そこで、本発明は、かかる不具合を解決するためになされたものであって、塗布作業性、接着強度等の物性を損なうことなく、洗浄処理水の流水圧によって接着剤組成物が破壊しない耐流水圧性に優れた構造用接着剤組成物の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明の構造用接着剤組成物は、少なくともエポキシ樹脂と、コアシェル型ゴム粒子と、硬化剤とを含有する構造用接着剤組成物であって、前記コアシェル型ゴム粒子が、一次粒子と二次凝集体とが混在する分散形態をなすものである。
【0012】
ここで、上記コアシェル型ゴム粒子(CSR粒子)は、ゴム状コア層、及びこのゴム状コア層を覆うシェル層を有する粒状材料であり、コア層がゴム成分を有し、かつ、そのゴム状コア層の外側を覆うシェル層がゴム弾性を示さない非弾性ポリマー材料から構成されるものであれば、それらを形成する物質は特に問われない。
これらコア層またはシェル層、もしくはコア層とシェル層はともに架橋されていてもよく(例えば、イオン的または共有結合的に)、シェル層はコア層にグラフトされていてもよい。
【0013】
そして、上記コアシェル型ゴム粒子は、一次粒子と二次凝集体とが混在する分散形態をなすものである。
ここで、上記一次粒子と二次凝集体とが混在する分散形態をなすとは、組成物中において、一次粒子状態にあるコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態にあるコアシェル型ゴム粒子がそれぞれ分散して混在化している状態を示す。
また、上記コアシェル型ゴム粒子における一次粒子とは、単体状態にある粒子を指し、二次凝集体とは、単体の粒子(一次粒子)が繋がって凝集状態にある集合体を指す。
なお、組成物中において、一次粒子のコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体のコアシェル型ゴム粒子とを混在化させる手段は、特に問われるものではないが、配合バランスの制御が容易で、安定した物性の確保が可能であることから、一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子を併用的に配合することによって、一次粒子と二次凝集体を混在化させるのが好ましい。
【0014】
本発明の構造用接着剤組成物は、前記コアシェル型ゴム粒子の配合量が、25重量部〜45重量部の範囲内、好ましくは、30重量部〜40重量部の範囲内であるものである。
上記コアシェル型ゴム粒子の配合量は、一次粒子または二次凝集体を問わず、組成物中に配合させるコアシェル型ゴム粒子の全体量を示す。
【0015】
本発明の構造用接着剤組成物は、前記コアシェル型ゴム粒子の一次粒子と二次凝集体の配合重量比が2:3〜3:2の範囲内、好ましくは、その中間の1:1の等量であるものである。
【0016】
本発明の構造用接着剤組成物は、前記コアシェル型ゴム粒子において、一次粒子の平均粒径が100nm〜500nmの範囲内であるものである。
なお、上記数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明にかかる構造用接着剤組成物は、少なくともエポキシ樹脂と、コアシェル型ゴム粒子と、硬化剤とを含有する構造用接着剤組成物であって、前記コアシェル型ゴム粒子が、一次粒子と二次凝集体が混在する分散形態をなすものである。
【0018】
ここで、本発明者らは、電着塗装工程内における洗浄処理の流水圧による接着剤組成物(正確には、接着部位から食み出た部位の接着剤組成物)の破壊(脱落・飛散・流出等)を抑制するために、樹脂マトリクスにおけるコアシェル型ゴム粒子の分散形態に注目し、鋭意実験研究を重ねた結果、組成物において、一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子とを混在させることで、塗布作業性や接着強度等の物性を損なうことなく、耐流水圧性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0019】
これは、コアシェル型ゴム粒子のゴム成分によって構造用接着剤組成物の粘性抵抗が高まることに加え、コアシェル型ゴム粒子の二次凝集体を一つの粒子とみなしたとき、エポキシマトリクス中にコアシェル型ゴム粒子の一次粒子状態と二次凝集体状態による不均一な粒子が混在することで、更に構造粘性抵抗が高まり、流水圧による衝撃を抑制する効果が発揮されたためと推測される。
【0020】
そして、コアシェル型ゴム粒子を用いることで、組成物において適度な粘度特性が付与されるため塗布作業性も損なわれることなく、また、硬化後の硬化物において強靭性が発揮され良好な接着強度が得られる。なお、ゴム粒子がコアシェル型であるため、ゴム粒子のゴム成分が硬化後のエポキシ樹脂相に溶解残存することはなく、このためゴム成分がエポキシ樹脂相に溶解残存することで生じる弾性率の低下等の問題も起き難い。
【0021】
こうして、本発明の構造用接着剤組成物によれば、塗布作業性、接着強度等の物性を損なうことなく、優れた耐流水圧性を得ることができる。
【0022】
本発明にかかる構造用接着剤組成物によれば、エポキシ樹脂100重量部に対して、コアシェル型ゴム粒子の配合量は、25重量部〜45重量部の範囲内である。
本発明者らは、鋭意実験研究の結果、コアシェル型ゴム粒子の配合量をかかる範囲内としたときに、塗布作業性や接着強度が良好で、かつ、最も良い耐流水圧性の向上効果が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0023】
即ち、コアシェル型ゴム粒子の配合量がエポキシ樹脂100重量部に対して25重量部未満である場合、組成物において耐流水圧性の向上効果が余り得られず、一方で、45重量部を超えると、材料の粘度上昇が大きくなり塗布作業性が低下する。これに対して、コアシェル型ゴム粒子の配合量を25重量部〜45重量部の範囲内とすることによって、塗布作業性や接着強度が良好で、かつ、一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子及び二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子による高い耐流水圧性効果が得られる。
【0024】
本発明にかかる構造用接着剤組成物によれば、前記コアシェル型ゴム粒子の一次粒子と二次凝集体が配合重量比において2:3〜3:2の範囲内である。
ここで、一次粒子の方が多いほど、塗布作業時において組成物がポンプを通過する際にかかる強い剪断応力によりレオロジーが変化して塗布作業直後の耐流水圧性が低下し、また、二次凝集体の方が多いほど、流水圧に対する構造用接着剤組成物としての構造粘性抵抗の発現が弱くなり耐流水圧性が低下する。
したがって、一次粒子と二次凝集体の重量比が、1:1の等量を中間にした2:3〜3:2の範囲内であることで、一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子及び二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子による最も顕著な耐流水圧性効果が得られる。
【0025】
本発明にかかる構造用接着剤組成物によれば、前記コアシェル型ゴム粒子の一次粒子の平均粒径が100nm〜500nmの範囲内のものである。
一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子の平均粒径が100nm未満であるものは、製造が困難であるうえ、一次粒子が不安定で凝集しやすく耐流水圧性が低下する可能性がある。一方で、500nmを超えるものは、硬化後の硬化物において十分な靭性が得られず、剥離強度が低下する恐れがある。したがって、前記コアシェル型ゴム粒子の一次粒子の平均粒径が100nm〜500nmの範囲内であれば、接着強度、耐流水圧性等の物性が安定的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は耐流水圧性の評価試験方法を説明する際の模式図の側面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態にかかる構造用接着剤組成物は、少なくともエポキシ樹脂と、コアシェル型ゴム粒子と、硬化剤とを含有する構造用接着剤組成物であって、コアシェル型ゴム粒子が、一次粒子と二次凝集体が混在する分散形態をなすもの、即ち、一次粒子状態にあるコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態にあるコアシェル型ゴム粒子が混在化してなるものである。
【0028】
ここで、エポキシ樹脂としては、一般にエポキシ基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型等のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、多官能グリシジルエーテル、テトラフェニロールエタン型等の多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリシクロデカン環を有するエポキシ化合物(例えば、ジシクロペンタジエンとm−クレゾールのようなクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる製造方法によって得られるエポキシ化合物)、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ソルビトール型エポキシ樹脂、ポリグリセロール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ペンタエリスリトール型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂等が挙げられ、組成物の使途等に応じて選択される。これらの中でもビスフェノールA型、ビスフェノールF型が好ましい。組成物の粘度調整が容易となるからである。なお、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの重縮合化合物であり、ビスフェノールA骨格は、耐熱性を高め、また、靭性を向上させて引張剪断接着強さを高め、更に、その中のエーテル基は耐薬品性を向上させ、メチレン鎖は可撓性を高める。このビスフェノールA型エポキシ樹脂は、分子量に応じて液状のものから固形のものまでのものが使用できるが、常温で液状〜半固形状のものが好ましく、特に液状のものが好ましい。取扱い性や組成物の塗布作業性が容易となるからである。また、そのエポキシ当量は、180〜300g/eqの範囲内であるものが好適である。なお、エポキシ当量は1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数を意味する(単位:g/eq)。
【0029】
更に、エポキシ樹脂として、ウレタン変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性等の変性エポキシ樹脂を用いることも可能である。ウレタン変性エポキシ樹脂としては、分子中にウレタン結合と2個以上のエポキシ基とを有する樹脂であれば、その構造が特に限定されるものではないが、ウレタン結合とエポキシ基とを効率的に1分子中に導入することができる点から、イソシアネート基を有するウレタン結合含有化合物とヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
これらエポキシ樹脂はそれぞれを単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することが可能である。
【0030】
コアシェル型ゴム粒子とは、ゴム状コア層、及びシェル層の少なくとも2層を有する構造からなる粒状材料である。
ここで、コアシェル型ゴム粒子のコア層は、コアシェル型ゴム粒子の内側部分を意味し、コアシェル型ゴム粒子の内部のドメインを形成し得るものである。このコア層としては、ゴム状物質であればよく、典型的には、エラストマーであり、例えば、共役ジエン及び/または低級アルキルアクリレートが重合してなるポリマーや、これらと共重合可能なモノマーとが共重合したコポリマーや、ポリシロキサンゴム等からなることが好ましく、更に、エポキシ樹脂に不溶であることが好ましい。
共役ジエンとしてはブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができ、中でも、安価に入手でき、得られる重合体のゴムとしての性質が良好で重合が容易である点から、ブタジエンが特に好ましい。
低級アルキルアクリレートとしては、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を挙げることができ、中でも、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートは、得られる重合体のゴムとしての性質が良好で、重合が容易である点から、特に好ましい。
【0031】
共役ジエンまたはアルキルアクリレートと共重合可能なモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル・シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルメタアクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
また、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を持ったモノマーを共重合させることもできる。例えば、エポキシ基を持つモノマーとしては、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、カルボキシル基を持つモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられ、水酸基を持つモノマーとしては、2−ヒドロキシメタクリレート、2−ヒドロキシアクリレート等が挙げられる。
更に、コアを構成する成分として、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(イソ)シアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリル、フタル酸ジアリル等の架橋性モノマー(多官能性モノマー)や、マレイン酸ジアリル、フマール酸モノアリル、メタクリル酸アリル等の反応性の等しくない2つ以上の不飽和部位を有し反応部位の少なくとも1つは非共役であるグラフト用モノマーを用いることもできる。このような架橋性モノマーまたはグラフト用モノマーを少量、好ましくは、コアシェル型ゴム粒子全体の10重量%以下で用いた場合には、層間の結合が得られ、加熱時においても粒子が変形し難いものとなる。更に、共役ジエンまたはアルキルアクリレートと共重合可能なモノマーとして、シリコーンゴムを用いることも可能である。
加えて、このような共役ジエンまたはアルキルアクリレートと共重合可能なモノマーに代えて、または、それらモノマーと併用して、ジメチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ等のアルキル或いはアリル2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサンゴムを使用することもできる。このようなポリシロキサンゴムを使用する場合には、必要に応じて、重合時に多官能性のアルコキシシラン化合物を一部併用するか、ビニル反応性基を持ったシラン化合物をラジカル反応させること等により、予めポリシロキサンに架橋構造を導入しておくことが好ましい。
【0032】
なお、ゴム状のコア層は、ガラス転移点(Tg)が−20℃以下の物質であることが好ましい。低温での弾性率を下げ、剥離強度を上げることができるからである。因みに、ガラス転移点(Tg)とは、動的な粘弾性測定におけるtanδのピーク値の温度をいう。
【0033】
一方、コアシェル型ゴム粒子のシェル層は、コアシェル型ゴム粒子の外側部分を形成するものであり、通常は、コアシェル型ゴム粒子の最外部を形成し、エポキシ樹脂に対する親和性(相容性)を有している。このシェル層を構成する物質はゴム弾性を示さない材料であれば特に限定されないが、メチルメタクリレートおよび/またはスチレンのモノマーが重合してなるポリマー、またはこれらと共重合可能なモノマーとが共重合したコポリマーからなることが好ましい。これらは、安価に入手でき、また、良好なグラフト重合性とエポキシ樹脂に対する親和性の双方を可能にでき、広範囲の温度で接着強度が良好である。
【0034】
メチルメタクリレートまたはスチレンと共重合可能なモノマーとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ブロモスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン等のビニル重合性モノマーを挙げることができる。中でもエチルアクリレートまたはアクリロニトリルが好ましい。
【0035】
更に、メチルメタクリレートまたはスチレンと共重合可能なモノマーとして、エポキシ基および/またはエポキシ基と反応する官能基、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等の官能基を持ったモノマーを共重合させることによって、シェル層表面をエポキシ基および/またはエポキシ基と反応する官能基で修飾することも可能である。例えば、エポキシ基を持つモノマーとしては、グリシジルメタクリレート等が挙げられ、カルボキシル基を持つモノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられ、水酸基を持つモノマーとしては、2−ヒドロキシメタクリレート、2−ヒドロキシアクリレート等が挙げられる。
【0036】
なお、シェル層のエポキシ樹脂硬化時における化学反応性を求める場合には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エポキシアルキル(メタ)アクリレート等の反応性側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類、エポキシアルキルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド(N−置換物を含む)、α,β−不飽和酸、α,β−不飽和酸無水物、及びマレイミド誘導体等からなるモノマー群より選ばれる1種以上の成分を共重合して得られる共重合体がより好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸無水物、マレイン酸イミド等をそれぞれ例示することができる。また、エポキシ樹脂や硬化剤と反応する反応基、例えば、グリシジルメタクリレート等のモノマーによって提供されるグリシジル基等をシェル層中に含有させることによって反応性を高めることも可能である。
【0037】
更に、シェル層は、コア層にグラフト及び/または架橋されていることが好ましく、メチルメタクリレートまたはスチレンと共重合可能なモノマーとして、架橋性モノマーまたはグラフト用モノマーを10重量%以下で用いることも可能である。層間の結合が得られ、加熱時においても粒子が変形し難いからである。この架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物、ヘキサンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ノルボルネンジメチロールジメタクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレート等を挙げることができ、グラフト用モノマーとしては、例えば、アリルメタクリレート等の不飽和カルボン酸アリルエステル等を挙げることができる。
【0038】
なお、シェル層は、ガラス転移点(Tg)が50℃以上の物質であることが好ましい。高温下で高い接着強度が得られるからである。
【0039】
このようなコアシェル型ゴム粒子は、その製造方法について特に問われるものではなく、市販の製品を使用することが可能である。
なお、コアシェル型ゴム粒子の好ましいコア/シェルの比率(重量比)は、50/50〜95/5の範囲であり、より好ましくは60/40〜90/10の範囲内である。コア/シェルの比率(重量比)が50/50を越えてコア層の比率が低下すると、組成物中の粘性が低下し塗布作業性が低下する可能性があり、一方で、95/5を越えてシェル層の比率が低下すると、一次粒子が得られ難くなり取扱性や操作性に支障を来たし易く、安定的な物性が得られない可能性がある。
【0040】
本発明を実施する場合においては、コアシェル型ゴム粒子が、ゴム弾性を示すコア層を、ゴム弾性を示さないシェル層で被覆した構造であれば、2層より多い層数で構成されていてもよい。例えば、1つのゴム状材料から成る中心コア層は、その内側に非弾性材料からなる別の層を設けてもよく、また、異なるゴム状材料からなる第2のコア層で囲まれていてもよい。また、ゴム状コア層は異なる化学組成および/または特性を有する2つ以上のシェル層によって囲まれていてもよく、例えば、軟質コア層、硬質シェル層、軟質シェル層、硬質シェル層の構造等とすることも可能である。
【0041】
そして、本実施の形態においては、このコアシェル型ゴム粒子として、粒子単体として一次粒子状態のものと、単体の粒子が集まって不定形の凝集状態となった二次凝集体状態のものを併用的に配合する。即ち、一次粒子状態のコアシェル型粒子と二次凝集体状態のコアシェル型粒子の2種をエポキシ樹脂中に混合分散することによって、コアシェル型粒子の一次粒子とコアシェル型粒子の二次凝集体とがエポキシ樹脂中に分散して混在している分散形態をなす組成物とする。
特に、市販品のニ次凝集体状態のコアシェル型粒子を使用する場合は、後述するように、ニ次凝集体状態のコアシェル型粒子をエポキシ樹脂に混錬機等を使用して混練することによって、エポキシ樹脂中にコアシェル型粒子をニ次凝集体の凝集を一次粒子の状態まで解きほぐして分散させることが可能である。このようにして作製した一次粒子状態で分散するコアシェル型粒子を含有するエポキシ樹脂と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子とを、これらコアシェル型ゴム粒子を含有していないエポキシ樹脂中に混合することで、エポキシ樹脂中に一次粒子状態とニ次凝集体状態のコアシェル型粒子とがバランスした状態で混在する分散形態を安定的に確保することができる。即ち、組成物中において一次粒子と二次凝集体を混在化させる手段として、エポキシ樹脂中で一次粒子状態に分散されたコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子を併用的に配合することで、一次粒子と二次凝集体の配合量の制御操作や配合バランスの制御を容易にできる。
【0042】
ここで、コアシェル型ゴム粒子の一次粒子の平均粒径、即ち、コアシェル型ゴム粒子の一次平均粒径は、100nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。100nm未満であるものは、製造が困難であるうえ、一次粒子が不安定で凝集しやすく耐流水圧性が低下する可能性がある。一方で、500nmを超える場合は、硬化後の硬化物において十分な靭性が得られず、剥離強度が低下する恐れがある。
そして、本発明の構造用接着組成物には、この一次粒子のコアシェル型ゴム粒子以外に二次凝集体のコアシェル型ゴム粒子が必須成分である。この二次凝集体のコアシェル型ゴム粒子については二次凝集体形状を有していれば良く、通常の市販のものが使用できる。このため、平均粒径としては0.1μm〜2000μmのものが使用できるが、総合的に良好な特性が得られ易いことから0.5μm〜1000μmが好ましい。
このように、構造用接着組成物に、一次粒子と二次凝集体のコアシェル型ゴム粒子が分散して含有され、一次粒子の平均粒径が100nm〜500nmの範囲内とすることで、安定した耐流水圧性、接着強度等の物性を確保することができる。
【0043】
なお、このコアシェル型ゴム粒子の平均粒径の数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0044】
一次粒子状態及び二次凝集体状態の分散形態として配合させるコアシェル型ゴム粒子の全体の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、25重量部〜45重量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、30重量部〜40重量部の範囲内である。
コアシェル型ゴム粒子の配合量が25重量部未満では、組成物において耐流水圧性の向上効果が余り得られず、また、靭性が小さくて剥離強度が低下し、一方で、45重量部を超えると、材料の粘度上昇が大きくなり塗布作業性が低下するためである。
【0045】
また、コアシェル型ゴム粒子における一次粒子と二次凝集体の配合重量比は、1:1の等量を中間にした2:3〜3:2の範囲内が好適である。一次粒子および二次凝集体がこの範囲外では、一次粒子の方が多いほど、塗布作業時において組成物がポンプを通過する際にかかる強い剪断応力によりレオロジーが変化して塗布作業直後の耐流水圧性が低下し、また、二次凝集体の方が多いほど、流水に対する構造用接着剤組成物としての構造粘性抵抗の発現が弱くなり耐流水圧性が低下するためである。このため一次粒子と二次凝集体の重量比が、1:1の等量を中間にした2:3〜3:2の範囲内であることで、最も顕著な耐流水圧性効果が得られる。
このように、一次粒子状態に分散されたコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子をエポキシ樹脂中に混在化させ、これらの配合バランスを制御することで耐流水圧性、塗布作業性、接着強度等の物性を安定的に得ることができる。
特に耐流水圧性が向上する理由については、粒子形状の1次粒子と不定形状の2次凝集体が形状的に互いに補完し合う形状効果が影響しているものと推定している。
【0046】
なお、一次粒子及び二次凝集体の分散形態として配合させるコアシェル型ゴム粒子は、1種を単独で用いてもよいし、コア層やシェル層の化学組成や官能基、さらにガラス転移温度等の特性や粒径等において異なった2種以上のものを混合して用いることも可能である。例えば、一次粒子の形態で分散させるコアシェル型ゴム粒子には、エポキシ樹脂に対して十分な親和性を有するシェル層で形成されるコアシェル型ゴム粒子を使用することで、一次粒子の形態で安定して分散させることができ、二次粒子の形態で分散させるコアシェル型ゴム粒子には、エポキシ樹脂に対する親和性に乏しいシェル層で形成されるコアシェル型ゴム粒子を使用することで、二次凝集体の形態で安定して分散させることができる。
【0047】
また、本実施の形態の構造用接着剤組成物に含有される硬化剤は、通常、エポキシ樹脂の硬化剤に用いられるもの、即ち、エポキシ基と反応しうる活性基を有するものであればよく、例えば、ジシアンジアミド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、2−n−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、アジピン酸ジヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、二塩基酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等の有機酸ヒドラジド系化合物、N,N−ジアルキル尿素誘導体やN,N−ジアルキルチオ尿素誘導体等の尿素系化合物、テトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物、セミカルバジド、シアノアセトアミド、ジアミノジフェニルメタン、3級アミン、ポリアミン、イソホロンジアミン、m−フェニレンジアミン等のアミン系化合物、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等のアミノトリアゾール、N−アミノエチルピペラジン、メラミン類、アセトグアナミンやベンゾグアナミン等のグアナミン類、グアニジン類、ジメチルウレア類、三フッ化ホウ素錯化合物、三塩化ホウ素錯化合物、トリスジメチルアミノメチルフェノール等の液状フェノール、ポリチオール、トリフェニルホスフィン、ケチミン化合物、スルホニウム塩、オニウム塩、フェノールノボラック樹脂等を用いることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、組成物の接着強度、保存安定性、ポットライフ等の観点から、ジシアンジアミドが好適である。
【0048】
なお、硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、5重量部〜30重量部の範囲内であることが好ましい。硬化剤の配合量が5重量部未満であると、組成物の硬化速度が遅くなってまたは硬化が不十分となって接着強度等の物性が低下する傾向があり、一方、30重量部を超えると、構造用接着剤組成物に要求される所望の物性が得られ難くなる。そのため、より好ましい硬化剤の配合量は7重量部〜30重量部の範囲内である。
また、硬化剤は、レーザ回折・散乱法によって測定した平均粒径が3μm〜15μmの範囲内にある固体粒子を用いることが好ましい。この平均粒径が3μm未満では、組成物の保存安定性が低下する恐れがあり、一方、15μmを超えた場合、硬化速度が遅くなり、実用的でなくなる。
【0049】
更に、本実施の形態においては、取扱い性向上等のために、チキソ剤を配合することも可能である。このようなチキソ剤としては、例えば、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、シリカ、微粒炭酸カルシウム、セピオライト等を用いることができる。これらのチキソ剤は1種または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
なお、チキソ剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、10重量部以下とするのが好適である。チキソ剤の配合量が10重量部を超えると、塗布作業性や接着強度が低下するためである。特に、本実施の形態においては、チキソ剤を多量に配合しなくてもコアシェル型ゴム粒子によって適度な粘度特性を有する。
また、チキソ剤は、レーザ回折・散乱法によって測定した平均粒径が0.01μm〜0.1μmの範囲内にある固体粒子を用いること好ましい。この平均粒径が0.01μm未満では、粘度が高くなり取り扱い性が悪くなる恐れがあり、一方、0.1μmを超えた場合、塗布作業性や接着強度が低下する恐れがあるためである。
【0050】
加えて、組成物の粘性の調整や機械特性の向上等のために、充填剤を配合することもできる。このような充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、マグネシア、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、ジルコン、グラファイト、硫酸バリウム、クレー、マイカ、カオリン、ウォラストナイト、雲母、長石、閃長石(シエナイト)、緑泥石(クロライト)、タルク、ベントナイト、モンモリロナイト、バライト、ドロマイト、石英、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、織物繊維、ガラス繊維、アラミドパルプ、ホウ素繊維、炭素繊維、リン酸塩、結晶シリカ、非晶シリカ、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕(微粉末)シリカ等のシリカ、ろう石、ケイ砂、クリストバライト、セルロース、セメント、ポリエチレン等の樹脂粉末、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、二酸化チタン、中空セラミックビーズ、中空ガラスビーズ等の中空無機ビーズ、ポリエステル樹脂等による中空有機ビーズ、ガラスビーズ、金属粉末、瀝青物質等が例示できる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、分散性等の点から炭酸カルシウムが好適である。
なお、充填剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、80重量部以下とするのが好適である。充填剤の配合量が80重量部を超えると、塗布作業性や接着強度が低下するためである。
また、充填剤が粒子状である場合、レーザ回折・散乱法によって測定した平均粒径が0.05μm〜500μmの範囲内であることが好ましい。平均粒径が0.05μm未満であると、粘度が高くなり取り扱い性が悪くなる恐れがあり、500μmを超えると、充填剤が沈降しやすく均一性が低下する可能性がある。
【0051】
そして、本実施の形態にかかる構造用接着剤組成物は、これら配合成分を公知の混合分散機、例えば、プラネタリーミキサー、ディスパー、ヘンシェルミキサー、ニーダー等で均質に混合攪拌することによって調製される。
特に、市販品のニ次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子(粉末状)を使用する場合、例えば、エポキシ樹脂に二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子(粉末状)を添加して、50℃〜200℃の温度で加熱攪拌または高速剪断攪拌したのち、熱ロール、インターミキサー、ニーダー、3本ロール等の混錬機で混練することにより、エポキシ樹脂中にコアシェル型ゴム粒子をニ次凝集体の凝集を解離させた一次粒子として分散させることが可能である。そして、この一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子が分散されたエポキシ樹脂と、二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子と、硬化剤等とを、これらを含有しないエポキシ樹脂中に混合することによって、一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態コアシェル型ゴム粒子とが混在した分散形態をなす構造用接着剤組成物とすることができる。
【0052】
このように、エポキシ中で一次粒子状態に分散させたコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子を併用的に配合し、組成物中において一次粒子と二次凝集体を混在化させることで、一次粒子と二次凝集体の配合量の制御操作や配合バランスの制御を容易し、耐流水圧性、塗布作業性、接着強度等の物性を安定的に得ることができ、大量生産にも適し、安定的な品質を得ることが可能である。
しかし、本発明を実施する場合には、コアシェル型ゴム粒子を配合し、一次粒子と二次とを混在させる手段は、特に上記のように限定されるものではない。
【0053】
このようにして調製した本実施の形態にかかる構造用接着剤組成物は、公知の方法、例えば、スプレー、ガン、刷毛塗り等の方法で被接着体に塗布される。特に、本実施の形態の構造用接着剤組成物においては、コアシェル型ゴム粒子によって適度な粘度特性を有するため、ポンプ等による塗布の際の吐出性も良く、良好な塗布作業性が得られる。更に塗布後も垂れにくい耐タレ性を有して、未硬化状態での被接着体へ定着性や形状保持性も良好である。
また、塗布時に35℃〜40℃でのウオームアプライも可能である。加えて、塗布後にスポット溶接を併用して(ウェルドボンド工法)、被接着体の接合性を高めることも可能である。
そして、被接着体が車体の部品等の場合には、車体組立工程で塗布された後、電着塗装工程にて洗浄処理にさらされる。
【0054】
このとき、本実施の形態の構造用接着剤組成物においては、一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子とが混在する分散形態をなすことにより、コアシェル型ゴム粒子の一次粒子と二次凝集体による形状効果等によって発現する構造粘性抵抗(粒子抵抗)や、コアシェル型ゴム粒子のゴム成分による粘性抵抗等によって、優れた耐流水圧性が発揮されて、電着塗装工程内での洗浄処理の流水圧による組成物の破壊(脱落・飛散・流出等)が防止される。
【0055】
電着塗装工程で洗浄処理が施された後は、電着塗装が施され、その後、塗装乾燥炉での電着塗膜の焼き付けと同時に加熱硬化(例えば、約180℃〜約215℃の温度で約20分〜約60分間)される。
そして、本実施の形態の構造用接着剤組成物においては、コアシェル型ゴム粒子によって、硬化後の硬化物において強靭性が発揮され良好な接着強度が得られる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、ゴム粒子がコアシェル型であるため、ゴム粒子のゴム成分が硬化後のエポキシ樹脂相に溶解残存することはなく、ゴム成分がエポキシ樹脂相に溶解残存することで生じる弾性率等の物性の低下もない。また、高粘度化のために塗布作業性や接着強度の低下を招く高粘度樹脂(例えば、高分子量の半固形〜固形状のビスA型エポキシ樹脂等)の多量添加や、更に、接着強度の低下を招く可能性のある予備加熱も省略可能である。
【0057】
このように、本実施の形態の構造用接着剤組成物によれば、塗布作業性、接着強度等の物性を損なうことなく、優れた耐流水圧性が得られる。
【0058】
なお、本発明においては、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、触媒、硬化促進剤、可塑剤、反応性希釈剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、着色剤、カップリング剤、レベリング剤、揺変性付与剤、接着付与剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、潤滑剤、摺動性付与剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、分散剤、分散安定剤、消泡剤、脱水剤、架橋剤、防錆剤、溶剤等を配合することができる。
【0059】
また、このように塗布作業性、接着強度等の物性を損なうことなく、高い耐流水圧性を有する本実施の形態の構造用接着剤組成物は、例えば、自動車や車両(新幹線、電車)、土木、建築、エレクトロニクス、船舶、航空機、宇宙産業分野等の構造部材の接着剤として用いることができる。このとき、電極等を使用したスポット溶接等の併用(ウェルドボンド工法)により、構造部位への高い接合強度を確保することができる。他にも、一般事務用、医療用、電子材料用の接着剤としても用いることができるが、優れた耐流水圧性を有することから、特に、被接着体への塗布後に流水にさらされる部材の接着に有用である。
【0060】
次に、本発明の実施の形態にかかる構造用接着剤組成物の実施例を具体的に説明する。
本実施例の構造用接着剤組成物においては、エポキシ樹脂として、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(ADEKA(株)社製:「アデカレジンEP−4100」;エポキシ当量:190)、または、ウレタン変性エポキシ樹脂(ADEKA(株)社製:「アデカレジンEPU−7812A」;ポリオール成分:ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリイソシアネート成分:トリレンジイソシアネート(TDI))を用い、チキソ剤として、カーボンブラック(ケッチェンブラック:「カーボンECP」)を用い、充填剤として、重質炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)社製;平均粒径2μm〜4μm)を用い、硬化剤としてジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン(株)社製:「jerキュアDICY15」)を用いた。
そして、コアシェル型ゴム粒子の二次凝集体としては、ゴム状ポリマー(n−ブチルアクリレートの重合体)からなるコア層をガラス状ポリマー(メチルメタクリレートの重合体)からなるシェル層で被覆した2層構造のもの(アイカ工業(株)社製:「ZEFIAC F−351」;二次凝集体の平均粒径=1μm;シェル層のガラス転移温度:100℃〜120℃、コア層のガラス転移温度:−50℃〜−60℃)を使用した。
【0061】
この二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子(粉末状)をエポキシ樹脂に添加して、80℃で加熱攪拌を行った後、3本ロールの混錬機で混合することにより、エポキシ樹脂中にコアシェル型ゴム粒子をニ次凝集体の凝集が解かれた100nm〜500nmの一次粒子状態として分散させた。そして、何も混合されていないエポキシ樹脂中に、この一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子が分散されたエポキシ樹脂と、二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子と、チキソ剤と、充填剤と、硬化剤とを加えて高速ミキサを用いて混合して、表1に示すように配合調製し、各種構造用接着剤組成物(実施例1乃至実施例3)を作製した。
【0062】
より具体的には、実施例1として、エポキシ樹脂として液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部のうちの一部と、アイカ工業(株)社製の「ZEFIAC F−351」のコアシェル型ゴム粒子(二次凝集体状態)15重量部とを混合して80℃で加熱攪拌を行った後、3本ロールの混錬機によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂中にコアシェル型ゴム粒子を一次粒子の状態に分散させた。なお、この場合の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂の配合量は、3本ロールの混練によってコアシェル型ゴム粒子を二次凝集体状態から一次粒子まで解離させるために高粘性が好ましく、この高粘性を得るためには、配合量が少ない方が有利であり、例えば50重量部以下とすることができる。
そして、その一次粒子のコアシェル型ゴム粒子が分散されたエポキシ樹脂と、二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子15重量部と、チキソ剤としてのケッチェンブラック4重量部と、充填剤としての重質炭酸カルシウム60重量部と、硬化剤としてのジシアンジアミド8重量部と液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部のうちの残量とを高速ミキサを用いて混合し配合調製した。
【0063】
実施例2としては、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂中にて一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子の配合量、及び二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子の配合量を共に20重量部とした以外は実施例1と同様にして、各種材料を配合量調製した。
【0064】
実施例3としては、エポキシ樹脂としてウレタン変性したものを用いた以外は実施例1と同様にし、各種材料を配合量調製した。
【0065】
また、比較のために、表1に示す配合組成で各種材料を配合調製して、比較例1乃至比較例5にかかる接着剤組成物を作製した。
比較例1としては、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂中における、一次粒子状態コアシェル型ゴム粒子の配合量、及び二次凝集体状態コアシェル型ゴム粒子の配合量を共に10重量部とした以外は実施例1と同様にして、各種材料を配合調製した。
【0066】
比較例2としては、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂中における、一次粒子状態コアシェル型ゴム粒子の配合量、及び二次凝集体状態コアシェル型ゴム粒子の配合量を共に25重量部とした以外は実施例1と同様にして、各種材料を混合して配合調製した。
【0067】
比較例3としては、組成物中のコアシェル型ゴム粒子は全て一次粒子状態とした。即ち、エポキシ樹脂として液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部のうちの一部と、アイカ工業(株)社製の「ZEFIAC F−351」のコアシェル型ゴム粒子(二次凝集体状態)30重量部とを混合して80℃で加熱攪拌を行った後、3本ロールの混錬機によって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂中にコアシェル型ゴム粒子を一次粒子の状態に分散させた。そして、その一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子が分散されたエポキシ樹脂と、チキソ剤としてのケッチェンブラック4重量部と、充填剤としての重質炭酸カルシウム60重量部と、硬化剤としてのジシアンジアミド8重量部と、液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部のうちの残量を混合して配合調製した。
【0068】
比較例4としては、組成物中のコアシェル型ゴム粒子は全て二次凝集体状態とした。即ち、エポキシ樹脂として液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部と、二次凝集体状態として用いるアイカ工業(株)製の「ZEFIAC F−351」のコアシェル型ゴム粒子30重量部と、チキソ剤としてのケッチェンブラック4重量部と、充填剤としての重質炭酸カルシウム60重量部と、硬化剤としてのジシアンジアミド8重量部とを混合して配合調製した。
【0069】
比較例5としては、コアシェル型ゴム粒子を配合せずに、エポキシ樹脂として液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部と、チキソ剤としてのケッチェンブラック4重量部と、充填剤としての重質炭酸カルシウム120重量部と、硬化剤としてのジシアンジアミド8重量部とを混合して配合調製した。
【0070】
そして、これら各配合にかかる接着剤組成物について、耐流水圧性、塗布作業性、及び接着強度の評価試験を行った。
耐流水圧性の評価試験については、実際の接着剤組成物を塗布した部品の車体本体への組付後の電着塗装工程における洗浄処理状況を想定して、その試験設定を行った。具体的には、厚さ1mmの鋼板(SCGA鋼板)a上に、上述した実施例、及び比較例の接着剤組成物を、ポンプ及びハンドガンを用いて2mm幅でビード状に長さ45mmで塗付した。このポンプを用いて塗布した状態で評価した結果を表1では「塗布作業後」とし、ポンプを使用せずにハンドガンにて塗布した状態のもので評価した結果を表1では「初期」とした。
その後、構造用接着剤組成物の表面に縦15mm、横70mm、厚み1.0mmの鋼板bを、鋼板bの横方向を構造用接着剤組成物の幅方向に合わせて、つまりビード状に沿って鋼板bの長手方向の中央に構造用接着剤組成物が位置し、構造用接着剤組成物の一部が食み出した状態で接合する。このとき、接合部位から食み出た接着剤組成物をAで表すとする。
そして、構造用接着剤組成物が塗布された鋼板a,bをテストパネルc上に固定する。 このとき、テストパネルcは水平に対し45度に傾けた状態で、構造用接着剤組成物Aが食み出した方向が上方になっている。そして鋼板aの構造用接着剤組成物Aが食み出した方向の端面から水平方向に50mm離れた位置に対する鋼板a上から上方に、400mm離れた高さに設定された直径12mmのホースdから40℃の温水を20L/minの流速で5秒間流出させ、この流出させた温水によって、構造用接着剤組成物Aの飛散と、構造用接着剤組成物Aに接合した鋼板bの変位を観測する。飛散および変位がない状態を○とし、飛散はないが、変位が観られた状態を△とし、飛散と変位が観られた状態を×とした。
【0071】
また、塗布作業性の評価については、SOD粘度計によって、測定温度40℃、剪断速度15.5s−1における構造用接着剤組成物の粘度を測定し500(Pa・s)以上を不合格とした。
【0072】
更に、接着強度については、JIS K6854−3に準じて90°剥離試験による剥離強度を測定した。試験品は、200mm×25mm×0.8mmのSPCC−SD鋼板を、長さ150mmで90°に折り曲げて脱脂を施したものを2枚用いて、長さ50mmの部位の間に実施例および比較例の構造用接着剤組成物を塗布し接合し、170℃で20分間加熱し構造用接着剤組成物を硬化させることで作製した。なお、試験品の構造用接着剤組成物の厚みは0.15mmである。
このように作製した試験品を引張試験機(島津製作所製オートグラフ)にセットし、温度20℃、引張速度200mm/minの条件で引張り、剥離強度(N)を測定した。この剥離強度は100N以上であれば構造用接着剤に求められる剥離強度としては十分な強さである。
【0073】
各々の実施例、比較例における配合組成及び各成分の配合量(重量部)を表1の上段に示し、各々の耐流水圧性、塗布作業性、及び接着強度の評価試験結果を表1の下段に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、エポキシ樹脂100重量部に対して、コアシェル型ゴム粒子の分散形態を一次粒子と二次凝集体(配合重量比1:1)の混在状態として合計30重量部配合した実施例1及び実施例3、並びに合計40重量部配合した実施例2においては塗布作業性が良好であるうえに、良好な耐流水圧性が得られ、硬化後の硬化物における剥離強度も130N〜150Nと高く、接着強度も良好であった。
【0076】
これに対し、コアシェル型ゴム粒子を配合して、その分散形態を一次粒子と二次凝集体(配合重量比1:1)の混在状態とするものの、その配合量がエポキシ樹脂100重量部に対して20重量部であった比較例1においては、塗布作業性及び接着強度は良好であったが、耐流水圧性は不足していた。
また、コアシェル型ゴム粒子を配合して、その分散形態を一次粒子と二次凝集体(配合重量比1:1)の混在状態とするものの、その配合量がエポキシ樹脂100重量部に対して50重量部であった比較例2においては、耐流水圧性が良好であり、接着強度も良好であった。しかしながら、構造用接着剤組成物の粘度が上昇し塗布作業性に劣っていた。
【0077】
次に、コアシェル型ゴム粒子をエポキシ樹脂100重量部に対して、一次粒子のみ30重量部配合する比較例3においては、塗布装置にかける前の初期状態での耐流水圧性は良好であったが、ポンプによる塗布作業後では耐流水圧性は悪化し、一次粒子のみではレオロジー変化が大きいことが判明した。
【0078】
また、コアシェル型ゴム粒子をエポキシ樹脂100重量部に対して二次凝集体のみ30重量部配合する比較例4においては、塗布作業性及び接着強度は良好であったが、耐流水圧性は不足していた。
これら比較例3及び比較例4の結果から、一次粒子状態、または二次凝集体の配合量が多くなるとポンプ塗布によるレオロジーの変化が大きく変化するためと考えられる。したがって一次粒子と二次凝集体の配合重量比が2:3〜3:2の範囲内にすることが好ましい。
【0079】
そして、コアシェル型ゴム粒子を配合しなかった比較例5においては、充填剤の多量配合により構造用接着剤組成物の粘度を高めて耐流水圧性の向上を図ってはいるが、塗布作業性が劣るまで粘度上昇を図っても充分な耐流水圧性が得られず、また、接着強度も十分とは言えない。
【0080】
このように、上記実施例において、良好な耐流水圧性が得られたのは、一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子が混在する分散形態をなしていることよって達成できたものであり、コアシェル型ゴム粒子のゴム成分による粘性抵抗が付与されたことに加え、コアシェル型ゴム粒子の二次凝集体を一つの粒子とみなしたとき、エポキシマトリクス中にコアシェル型ゴム粒子の一次粒子状態及び二次凝集体状態による不均一な粒子が混在することで、更に構造粘性抵抗が高まって流水圧による衝撃を抑制する効果が発揮されたためと推測される。
【0081】
加えて、実施例1乃至実施例3においては、その硬化物において、剥離強度が100N以上と高く、高い接着強度を示している。これは、コアシェル型ゴム粒子のゴム成分によって、靭性が付与され、それによって、曲げ応力、引張応力、衝撃応力等の応力の吸収緩和が向上されたことが一因として考えられる。
【0082】
以上の結果から、一次粒子状態及び二次凝集体状態の分散形態として配合させるコアシェル型ゴム粒子の全体の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、25重量部〜45重量部の範囲内であることが好ましい。コアシェル型ゴム粒子の配合量が25重量部未満の比較例1では、構造用接着剤組成物において耐流水圧性の向上効果が余り得られず、また、靭性が小さく剥離強度が僅かに低下している。一方、45重量部を超える比較例2では、構造用接着剤組成物の粘度上昇が大きくなり塗布作業性が低下している。このためコアシェル型ゴム粒子の全体の配合量を、エポキシ樹脂100重量部に対して、25重量部〜45重量部の範囲内とすることで、塗布作業性や接着強度が良好で、かつ、一次粒子状態のコアシェル型ゴム粒子及び二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子による良好な耐流水圧性効果が得られる。
更に、実施例1乃至実施例3においは、コアシェル型ゴム粒子の一次粒子と二次凝集体の配合重量比が、1:1であることで、最も顕著な耐流水圧性効果が得られている。
【0083】
また、本発明者らの実験研究によれば、実施例1乃至実施例3の構造用接着剤組成物は、ガラス転移点を高く保持していて耐熱性も高く、更に、高温時、例えば、80℃においても、剪断強度及び剥離強度に優れて、高い接着強度を示すことが確認されている。
加えて、ガラス転移点の低下も少なく、耐食性も有し、更に、車体組立工程の冬場を想定した低温下、例えば、−5℃の条件下においても、スポット溶接を併用して高い接合強度を確保することが可能である。
【0084】
そして、実施例1乃至実施例3の構造用接着剤組成物は、ゴム粒子がコアシェル型の形態で配合されていることによって、貯蔵中にゴム成分がエポキシ樹脂に溶解することによる粘度上昇が抑制されて貯蔵安定性が高く、また、その硬化物においても、コアシェル型ゴム粒子のゴム成分がエポキシ樹脂相に溶解残存することなく、高い硬化物弾性率を有する。
このため、構造用接着剤として広い分野に適用可能である。
【0085】
以上説明してきたたように、本発明の実施例の構造用接着剤組成物は、エポキシ樹脂と、コアシェル型ゴム粒子と、硬化剤、チキソ剤、充填剤とを含有する構造用接着剤組成物であって、コアシェル型ゴム粒子が、一次粒子と二次凝集体とが混在する分散形態をなすものである。
【0086】
したがって、本発明の実施例の構造用接着剤組成物によれば、コアシェル型ゴム粒子のゴム成分によって粘性抵抗が高まることに加え、コアシェル型ゴム粒子が一次粒子と二次凝集体とが混在する分散形態をなしていることによって、エポキシマトリクス中にコアシェル型ゴム粒子の一次粒子状態と二次凝集体状態粒子が混在して構造粘性抵抗が高くなり、高い耐流水圧性を有する。
また、コアシェル型ゴム粒子を用いることで、材料粘度の上昇が適度で塗布作業性も良好であり、また、硬化後の硬化物において靭性が発揮され良好な接着強度が得られる。なお、ゴム粒子がコアシェル型であるため、ゴム粒子のゴム成分が硬化後のエポキシ樹脂相に溶解残存することはなく、このためゴム成分がエポキシ樹脂相に溶解することで生じる弾性率や耐熱性の低下(ガラス転移温度の低下)もない。
【0087】
こうして、本発明の実施例の構造用接着剤組成物によれば、塗布作業性、接着強度等の物性を損なうことなく、優れた耐流水圧性を得ることができる。
【0088】
特に、本発明の実施例においては、二次凝集体状態にあるコアシェル型ゴム粒子をエポキシ樹脂と混合して攪拌を行った後、混錬機で混錬することによって、エポキシ樹脂中にコアシェル型粒子をニ次凝集体の凝集が解かれた一次粒子として安定的に分散させることが可能であり、この一次粒子状態として分散させたコアシェル型粒子を含有するエポキシ樹脂とニ次凝集体状態にあるコアシェル型粒子を、これらコアシェル型粒子を含有していないエポキシ樹脂中に混合させることで、コアシェル型粒子の一次粒子状態及び二次凝集体状態の分散形態のバランスを安定的に確保することができる。
そして、このように、二次凝集体状態にあるコアシェル型ゴム粒子を用いて、エポキシ中で一次粒子状態にまで分散させ、かかる一次粒子が分散したコアシェル型ゴム粒子を含有するエポキシ樹脂と二次凝集体状態のコアシェル型ゴム粒子とを何も混合していない単一のエポキシ樹脂中に混合することによって、組成物中において一次粒子と二次凝集体を混在させる場合は、一次粒子と二次凝集体の配合量の制御操作が容易であり、一次粒子と二次凝集体の配合バランスの制御を容易にできる。よって、大量生産にも適し、耐流水圧性等の物性を安定的に得ることができる。
【0089】
しかし、本発明を実施する場合には、構造用接着剤組成物中において一次粒子と二次凝集体を混在させる手段は上記に限定されるものではなく、また、一次粒子と二次凝集体を同種に限定するものではない。本発明の主眼は形状効果によって構造粘性が増大されることによる耐流水圧性の向上にあり、この効果は一次粒子と二次凝集体を異種材料としても同様に発揮されると考えられる。さらに、上記実施例においては、充填剤(炭酸カルシウム)、チキソ剤(カーボンブラック)を用いているが、必ずしも用いなくても良く、更にエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、可塑剤等を適宜加えても良い。
そして、構造用接着剤組成物のその他の部分の組成、成分、配合量についても、上記実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0090】
A 構造用接着剤組成物
a,b 鋼板
c テストパネル
d ホース
図1