(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061870
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】極薄積層材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20170106BHJP
B32B 17/04 20060101ALI20170106BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
B32B15/08 J
B32B17/04 A
H05K1/03 610S
H05K1/03 610T
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-555611(P2013-555611)
(86)(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公表番号】特表2014-507316(P2014-507316A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2012026582
(87)【国際公開番号】WO2012116310
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】61/446,458
(32)【優先日】2011年2月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507172576
【氏名又は名称】イソラ・ユーエスエイ・コーポレーシヨン
【氏名又は名称原語表記】Isola USA Corp.
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シユーマツハー,ヨハン・アール
(72)【発明者】
【氏名】シユルツ,スチーブン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,スタンリー・イー
(72)【発明者】
【氏名】アムラ,タラン
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−191377(JP,A)
【文献】
特開2009−126917(JP,A)
【文献】
特開平05−185551(JP,A)
【文献】
特開2004−014636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08
B32B 17/04
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの平面上にb−段階樹脂層を有する第1の銅箔シートを、織物シートの平面が樹脂コーティングと接してレイアップを形成するように、10〜30ミクロンの厚さをもつ織物シートの第1の平面と接して配置する工程と、
該レイアップに圧力および/または熱を適用して該b−段階樹脂を織物シートの中へ浸透させる、ただし該b−段階樹脂は40〜50秒のゲル化時間および15〜25パスカル秒の粘度を有するものである、工程と、そして
b−段階樹脂を硬化させて0.75mil乃至1.5mil(19ミクロン乃至38ミクロン)の誘電厚さを有するc−段階の積層板シートを形成する工程と、
を有することを特徴とする極薄積層材の製造方法。
【請求項2】
方法が連続的方法である、請求項1の方法。
【請求項3】
積層板が0.80mil(20ミクロン)以上の平均最小誘電厚さおよび1.2mil(30ミクロン)以下の平均最大誘電厚さを有する、請求項1の方法。
【請求項4】
織物シートがガラス繊維織物のシートである請求項1の方法。
【請求項5】
第1の銅箔シートが、10〜25ミクロンの厚さを有するb−段階樹脂の層を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
織物シートを樹脂で含浸する前に、織物シートを予備湿潤化する、請求項1の方法。
【請求項7】
樹脂でコートされた銅箔の樹脂層を織物シートの平面と接して配置する前に、織物シートを予備湿潤化させる、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2011年、2月24日に出願された仮出願第61/446,458号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は銅箔の2枚の相対する層の間に積層された薄いガラス繊維織物のシートを含んでなる、印刷回路板の製造に有用な極薄銅張り積層板並びにそれらの製法に関する。
【背景技術】
【0003】
電子装置がより小型になるにつれて、その装置を構成する部品もより小型になる。同時に、部品の性能の要求も増大する。部品サイズと電子装置のサイズが小型化するにつれて、部品を担持する回路板の厚さの同様な縮小の要求が存在する。しかし、回路板の積層板はその厚さを減少するにつれて、その表面積上の積層板の厚さを一定に維持することが一層困難になる。更に、回路板がより薄くなると、回路板産業の電子的要求を恒常的に充たす、印刷回路板中に使用される積層板を製造することがますます困難になる。その結果、極薄回路板の積層材並びに薄い回路板の積層板を恒常的かつ再生可能に製造する方法の、継続的需要が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一つの態様は、第1の平面、第2の平面をもつ樹脂含浸織物シート材(該織物シートは約10〜約30ミクロンの原厚をもつ)を含むベース積層板、および硬化された樹脂により織物シート材の平面に接着された少なくとも1枚の銅箔シート、の組み合わせ物を含んでなる積層板であって、前記ベース積層板の厚さは約1.0〜約1.75mil(25〜45ミクロン)である。
【0005】
場合により使用される実施形態において、積層板は織物シート材の第1面および第2面それぞれに接着された銅箔シートを含むことができる。積層板は更に、場合により、約0.75mil以上の平均最小誘電厚さおよび約1.5mil以下の平均最大誘電厚さ(19〜38ミクロン)、あるいはまた約0.8mil以上の平均最小誘電厚さおよび約1.2mil以下の平均最大誘電厚さ(20〜30ミクロン)をもつことができる。
【0006】
積層板の銅箔は約15〜約40ミクロンの厚さ、あるいはまた約15〜約25ミクロンの厚さをもつことができる。
【0007】
ベース積層板は更なる有用な特性をもつことができる。例えば、ベース積層板の厚さは好適には、18インチ×24インチ(46cm×61cm)の長方形の積層板の中心および各四隅で測定すると20%を超えた相異を示さない。
【0008】
積層板樹脂はまた、幾つかの、場合による特徴を含むことができる。一つの実施形態において、樹脂は本質的にどんな充填剤をも含まない。充填剤を含まないことに加えて、該樹脂は乾燥樹脂の0重量%〜約2重量%の範囲の量で樹脂中に含まれることができる、フェノキシ樹脂のような代用の流れ調整剤を含むことができる。
【0009】
更なる実施形態において、織物材は、場合により約3ミクロン〜約5ミクロンの径、または約4ミクロンのフィラメント径をもつ、上下に積重なった2本以下のガラスフィラメントを有するガラス繊維織物である。
【0010】
本発明の別の態様は、(i)第1の平面、第2の平面をもつ樹脂含浸ガラス繊維織物を
含むベース積層板、および(ii)硬化された樹脂により第1および第2のベース積層板の各平面に接着された銅箔シート:の組み合わせ物を含んでなる積層板であり、ここで該積層板は約80mil以上の平均最小誘電厚さおよび約1.2mil以下の平均最大厚さをもち(20〜30ミクロン)、該ガラス繊維織物は上下に積重なった2本以下のガラスフィラメントを有する。本実施形態、またはすべての実施形態において、樹脂は180〜200℃のT
gをもつことができる。
【0011】
本発明のまだ別の態様は、(i)第1の銅箔シートを10〜約30ミクロンの厚さをもつ織物シートの第1面と接して配置するステップ(ここで該織物シートを樹脂で含浸させるか、または1枚の樹脂層を第1の銅箔シートと織物シートの第1の平面との間に配置するか、またはその双方である)、および(ii)約1.0〜約1.75mil(25〜45ミクロン)のベース積層板の厚さをもつ積層板を形成するように樹脂を本質的に完全に硬化させるのに十分な時間、積重ね材に熱圧をかけるステップ:を含んでなる、極薄積層材を製造する方法である。
【0012】
本発明の態様の一つの実施形態において、積重ね材に熱圧をかける前に、第2の銅シートを織物シートの第2の平面と接して配置し、ここで該織物シートを樹脂で含浸させるか、または1枚の樹脂層を第2の銅箔シートと織物シートの第2平面との間に配置するか、またはその双方である。更に、銅箔はb−段階樹脂層を含むことができ、そのb−段階樹脂は40〜50秒のゲル化時間および15〜25パスカル秒の粘度を有する。
【0013】
他の実施形態において、積層板は約80mil以上の平均最小誘電厚さおよび約1.2mil以下の平均最大誘電厚さ(20〜30ミクロン)を有する。更に、織物シートはガラス繊維織物のシートであることができ、また織物シートは、樹脂含浸織物シートが第1の銅箔シートおよび第2の銅箔シートと接して配置される前に、樹脂で含浸させることができる。更に、織物シートを樹脂で含浸する前に、予備湿潤化することができる。更に別の態様において、本発明は(i)第1の銅箔シートを、10〜約30ミクロンの厚さをもつガラス繊維織物シートの第1の平面と接して配置し(ここで織物シートを樹脂で含浸させるか、または1枚の樹脂層を第1の銅箔シートと織物シートの第1の平面との間に配置するか、またはその双方である)、および(ii)約0.80mil以上の最小誘電厚さおよび約1.2mil以下の平均最大誘電厚さ(20〜30ミクロン)を有する積層板を形成するように樹脂を本質的に完全に硬化するのに十分な時間、積重ね材に熱圧をかける:ステップを含んでなる、極薄積層材を製造する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は積層の前の、本発明の積層板を含んでなる層のスキーム図である。
【
図2A-2B】
図2Aおよび2Bは本発明の極薄積層板の幾つかの限定されない実施形態である。
【
図3】
図3は本発明の極薄積層板の製造に有用なガラス繊維織物材の幾つかの好適な態様を示す図である。
【
図4】
図4は本発明の極薄積層板を調製するための連続プロセスのスキーム図である。
【
図5】
図5は最小のコア誘電厚さを測定する方法を示す。
【0015】
本発明は樹脂でコートされた銅の1枚または2枚の層と結合された薄い繊維織物層を含む極薄銅張り積層板に関する。該積層板は、第1面と第2面をもつ織布のシート層、およ
び樹脂材により第1および第2の織布シートの面の、片方または両方に接着された薄い銅シートを含む。総「ベース積層板の厚さ」―積層板から1枚または複数の銅層を除去後、マイクロメーターのような機械装置で測定された極薄銅張り積層板のコア樹脂含浸織布層の厚さ―は、約1.0〜1.75mil(25〜45ミクロン)、そして好適には約1.3〜約1.75mil(33〜45ミクロン)である。
【0016】
本発明の極薄積層板は、1枚または2枚のb−段階樹脂でコートされた銅および1枚の織布シートを使用して形成される。あるいはまた、積層板は1枚または2枚の銅および1枚の樹脂含浸織布シートを使用して製造される。積層板はバッチ法または連続積層法を使用して製造することができる。本発明の積層板は、b−段階樹脂でコートされた銅シートが使用される時は、樹脂でコートされた各銅シートの樹脂側を、薄い織物シートの相対する平面に対して配置してレイアップを形成し、その後レイアップに熱圧をかけることにより製造される。レイアップにかける熱圧は樹脂でコートされた銅の層と結合した樹脂を柔軟にして、薄い織布シート中に浸透させ、そして同時に、適用した熱圧が樹脂を完全に硬化させて、薄いc−段階の銅張り積層板を形成する。
【0017】
代りのプロセスにおいて、織布シートは樹脂で完全に含浸され、その樹脂をプレプレグまたはb−段階に一部硬化させる。次に銅箔のシートを、一部硬化された樹脂含浸織布シートの片方または両方の平面に適用して、レイアップを形成し、そして該レイアップを、前記のように熱圧にかけることにより完全に硬化させる。
【0018】
織物シートの、樹脂による含浸を補助するために、織物シートを、液体、例えば樹脂溶媒、または未硬化もしくは一部硬化エポキシ樹脂溶液で予備処理または予備湿潤化することができる。織物シートを予備湿潤化するために樹脂溶液を使用する場合は、樹脂溶液は通常、織物シートを含浸するのに使用される樹脂の固形分より少ない固形分を有する。例えば、予備湿潤化樹脂は0%〜約50%以上の固形分を含むことができる。一つの実施形態において、織物シートは約5重量%〜約25重量%の固形分と残りの溶媒とを含むエポキシ樹脂溶液で予備湿潤化される。
【0019】
本発明の極薄積層板は、極薄ベース積層板の両平面に接着された銅箔層を含む銅張り積層板の形態にあることができる。あるいはまた、銅箔層の片方または両方が一部または全体にエッチングされ、あるいは極薄ベース積層板の片方または両方の平面から取り除かれて、極薄誘電積層材の層を形成することができる。
【0020】
今度は
図1に関し、本発明の薄い銅張り積層板の未集成図が示される。銅張り積層板は2枚の樹脂でコートされた銅(20)の間に挟まれた薄い織物の層(10)を含んでなる。樹脂でコートされた各銅シート(20)は銅箔層(22)および、銅箔層(22)の第1の平面(26)に適用された樹脂層(24)を含む。銅箔層(22)の第2の平面(28)はコートされてもまたはコートされなくてもよい。
【0021】
次に未集成の積層材を相互に結合させて、レイアップを形成し、その後、樹脂を流動させ、織物層(10)を含浸させるのに十分な熱圧をかける。
図2Aおよび2Bは本発明の極薄積層板の2つの実施形態を示す。両実施形態は、硬化された樹脂含浸織物材を有するベース積層板層(30)を含む。両方の銅箔層は、エッチングにより、または有用な極薄誘電層を形成するようなその他のあらゆる知られた方法により、積層板から除去することができるが、該実施形態は更に1枚以上の銅箔層(22)を含む。
【0022】
織物層(10)は、好適には約1mil(約25ミクロン)未満の厚さを有するあらゆる織物材であることができる。より好適には、織物層(10)は約1mil(約25ミクロン)未満であるが、約0.5mil(約13ミクロン)を超える厚さをもつ。別の実施
形態において、織物層はガラス繊維織布層である。有用なガラス繊維織布材の幾つかの例は、それに限定はされないが、101、104および106ガラス繊維織布層を含む。更に有用なものは日本、東京のNittoboにより製造されるもののような1000および1017ガラス繊維織布シートまたはロールである。幾つかの有用なガラス繊維織布シート材の特性は以下の表1に報告される。
【0024】
1017ガラス繊維織布は、縦糸および横糸方向の測定単位当りに更なるフィラメントを有する1000ガラス繊維織布の高密度バージョンである。1000および1017ガラス繊維織布は双方、101ガラス繊維織布に比較して積層板に、より大きい機械的安定度を与える。更に、1000および1017ガラス繊維織布は双方、101ガラス繊維織布より約60%平らである。更に、1000および1017ガラス繊維織布双方において、縦糸と横糸の糸は、
図3に示すように最高2本のフィラメントが上下に積重なるように広げられる。これが、前記表1に示したように200を超える空気透過性をもつガラス繊維織物をもたらす。このガラス繊維織物の特性はまた、2本を超えるフィラメントを上下に積重ねたガラス繊維織布に比較すると非常に薄い織物材の層をもたらす。更に、約3ミクロン〜5ミクロン、そしてとりわけ約4ミクロンの径をもつガラスフィラメントから織られたガラス繊維織物は極薄積層板を製造するのに特に有用であることを我々が発見した。
【0025】
本発明の特定の実施形態に使用される樹脂でコートされた銅箔シートは当該技術分野で使用されるあらゆる一部硬化樹脂でコートされた銅シート材であることができる。一つの実施形態において、樹脂でコートされた銅箔はb−段階樹脂でコートされた銅箔シートである。極薄積層板を産生するために、樹脂でコートされた銅箔は極く薄い一部硬化された樹脂層および極く薄い銅箔層をもつことが好適である。従って、一つの実施形態において、樹脂でコートされた銅の樹脂層は約50ミクロン未満で約5ミクロン超の厚さをもつことができる。別の実施形態において、樹脂層は25ミクロン以下で8ミクロン以上の厚さをもつことができる。更に別の実施形態において、樹脂層は約15ミクロンの厚さをもつことができる。
【0026】
本発明の極薄積層板を製造するのに使用される銅箔シートは好適には、薄い銅箔シートまたはロール、例えば2oz(56.6g)以下、そしてより好適には1oz(28.3g)以下の銅である銅箔である。一般に、銅箔は約15〜約40ミクロンの厚さをもつ。より厳密な、かつ有用な銅箔の厚さの範囲は約15〜約25ミクロンである。更に、銅箔
は正常(regular)または逆処理銅箔であることができる。一つの実施形態において、樹脂層と結合された、または樹脂で含浸された織物シートの平面と結合された銅箔の表面は約3〜約5ミクロンの粗さ(roughness)をもつ。あるいはまた、銅は、スパッタリング法により、化学蒸着法により、または基材に金属の極薄層を適用するのに有用であると当該技術分野で知られたあらゆるその他の方法により、プレプレグまたはb−段階の基材に、あるいは極く薄いプレプレグまたはb−段階樹脂のシートに、極く薄い層で適用することができる。
【0027】
本発明の好適な極薄積層板は、約0.75〜1.5mil(19〜38ミクロン)、そしてより好適には約0.8〜1.2mil(20〜30ミクロン)の、平均(18インチ×24インチ(46cm×61cm)の積層板の4以上の地点で測定された)の「誘電厚さ」の範囲をもつ。用語「誘電厚さ」は、積層板の樹脂含浸織布材の一部分の、測定された最小および最大厚さの間の範囲を表し、積層板と結合したどんな銅層の厚さをも含まない。極薄積層板の誘電厚さの範囲は、積層板の微小断面を調製し、次に顕微鏡下で積層板の誘電部分の最小および最大幅を測定することにより測定される。最小誘電厚さの測定は
図5に関連して説明される。最小誘電厚さの測定値は、積層板の一面と結合された銅層(22)からベース積層板(30)中に最大に延伸する銅の歯またはデントライト(50)の先端から、積層板の反対側の面と結合された銅層(23)からベース積層板(30)中に最大に延伸する銅の歯またはデントライト(60)までの距離(X)である。最大誘電厚さは第1の銅の面から、相対する銅の面までの距離の測定値である。
【0028】
重要である可能性がある本発明の極薄積層板の別の特性は、積層板の厚さの分布である。積層板は理想的には、積層板の表面積上のあらゆる点で測定される時に、同一の厚さをもたなければならない。しかし、実際には、均一な分布はほとんど達成不可能である。積層板の表面積上で厚さが片寄るほど、積層板は品質管理試験、例えばHipot試験、剥離試験、等を通過しない可能性が高くなる。従って、一つの実施形態において、本発明の積層板の寸法安定性は、18インチ(46cm)×24インチ(61cm)の長方形の積層材の中央および四隅で測定される時の積層板の「基本厚さ(base thickness)」が約20%を超えて、また、より好適には約10%を超えて変動しないようなものである。
【0029】
本発明の積層板は誘電バリヤーを提供し、そして/または織物材の層を強化するために樹脂を使用する。用語「樹脂」は本出願の関連では、一般的に、印刷回路板および他の電子適用に使用される積層板の生産において今日または将来使用することができるあらゆる硬化性樹脂の組成物を表すために使用される。このような積層板を製造するためには、エポキシ樹脂が最も頻繁に使用される。用語「エポキシ樹脂」は一般的に、C.A. May,Epoxy Resins,2nd Edition,(New York & Basle:Marcel Dekker Inc.),1988中に記載されるオキシラン環含有化合物の硬化性組成物を表す。
【0030】
それから製造される硬化された樹脂と積層板の、所望される基礎的機械的特性および熱特性を与えるために、樹脂組成物に1種以上のエポキシ樹脂が添加される。有用なエポキシ樹脂は、電子複合材料および積層板に有用な樹脂組成物中に有用であることが当業者に知られているものである。
【0031】
エポキシ樹脂の例は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(「ビス−Aエポキシ樹脂」)に基づく、フェノールホルムアルデヒドノボラックもしくはクレゾール・ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテルに基づく、トリス(p−ヒドロキシフェノール)メタンのトリグリシジルエーテルに基づく、またはテトラフェニルエタンのテトラグリシジルエーテルに基づくもののようなフェノールタイプ、あるいはテトラグリシジ
ルメチレンジアニリンに基づくまたは、p−アミノグリコールのトリグリシジルエーテルに基づくもののようなタイプ;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートに基づくもののような脂環式タイプ、を含む。用語「エポキシ樹脂」はまた、その範囲内に、過剰なエポキシを含む化合物(例えば、前記のタイプの)と、芳香族のジヒドロキシ化合物との反応生成物を含む。これらの化合物はハロゲン置換されることができる。
【0032】
樹脂でコートされた銅箔中に使用される樹脂系は、難燃剤のような樹脂積層物を配合する工程の、当業者に知られた添加物および賦形剤を含むことができる。しかし、本発明の積層板に使用される樹脂は、タルク、PTFE等のようなどんな充填剤をも含まないことが好ましい。充填剤は時により、流れ調整剤として樹脂系に添加されるため、それが銅箔層に適用されるか、または織布層を直接含浸するために使用される前に、樹脂に、非充填剤の流れ調整剤を含むことは有用であることができる。流れ調整剤の、一つの有用な群は、固形分の0重量%〜約2重量%の範囲の量で本発明に使用される樹脂系に添加されることができるフェノキシ樹脂である。
【0033】
本発明の積層板の製造に有用なエポキシ樹脂の幾つかの例は、例えば、それぞれの明細が参照することにより本明細書に引用されていることとされる、米国特許第5,464,658号、第6,187,852号、第6,509,414号および第6,322,885号明細書に開示されている。
【0034】
特に有用なエポキシ樹脂は約180〜200℃の硬化T
gをもつであろう。更に、樹脂と銅を合わせて、硬化すると、約4.5lb/in以上の剥離力をもつ極薄積層板をもたらすにちがいない。更に、積層板加工プロセス中に樹脂がガラス繊維織布に浸透し、また急速に硬化するように樹脂のゲル化時間および粘度がマッチするように、織物材の層への樹脂でコートされた銅箔の層の適用前に、銅箔層と結合された樹脂をb−段階化することができる。一つの実施形態において、樹脂は30秒〜90秒のゲル化時間および5〜40パスカル秒の粘度をもつように選択され、b−段階化される。他の実施形態において、樹脂は40〜50秒のゲル化時間および約15〜25パスカル秒の粘度をもつように選択され、b−段階化される。
【0035】
一つの実施形態において、本発明の極薄積層板を製造するために有用な、樹脂でコートされた銅シートは、銅箔シートに未硬化または一部硬化した液体樹脂を適用することにより製造することができ、該樹脂層は約8ミクロン〜約20ミクロンの厚さ、そしてより好適には約10〜15ミクロンの厚さをもつ。約1mil(25ミクロン)以下の厚さをもつ積層板を製造するように樹脂でコートされた銅シートが使用される時は、使用される銅箔は、約18ミクロンの厚さおよび約3ミクロンの表面の粗さをもつ1oz(28.3g)の銅箔であろう。樹脂は約14ミクロンの厚さで銅シートの片面に適用され、次に一部硬化されて、b−段階樹脂でコートされた銅シートを形成する。
【0036】
上記の樹脂、織物および樹脂でコートされた銅箔シートはバッチまたは連続プロセスで本発明の積層板を製造するために使用することができる。本発明の積層板を製造するための代表的連続プロセスにおいては、銅、樹脂プレプレグおよび薄い織物のシートそれぞれの形態の連続シートが一連の駆動ロール中に連続的に巻き出されて、プレプレグシートが銅箔のシートと織物のシートの間に配置されるように、銅箔シートに隣接する樹脂のプレプレグシートに隣接して、織物の層状ウェブを形成する。次に、樹脂を織物材中に移行させ、また樹脂を完全に硬化させるために十分な時間、ウェブを熱圧条件に曝露する。生成される積層板において、前記の組み合わせ層が3層のウェブから単一の積層板に転化する時に、織物中への樹脂材の移行が、樹脂層の厚さ(銅箔材と織物シート材との間の距離)を減少させ、ゼロに近づける。この方法の代替法において、1枚のプレプレグ樹脂のシー
トを、織物材層の片面と2枚の銅層間に挟まれた組み合わせ物とに適用し、その後そのレイアップに熱圧を適用して、樹脂材を流動させ、織物層を完全に含浸させ、そして双方の銅箔層をベース積層板に接着させることができる。
【0037】
代りの実施形態において、2枚の異なる、連続的に移動している銅シートに1枚の樹脂の薄いコーティングを適用し、シートからあらゆる過剰な樹脂を除いて樹脂の厚さを調整し、次に熱圧条件下で樹脂を一部硬化させてb−段階樹脂でコートされた銅のシートを形成することにより積層板を製造することにより、樹脂でコートされた銅シートを同時に製造することができる。次に、1枚または複数のb−段階樹脂でコートされた銅を積層板製造プロセスに直接使用することができる。
【0038】
また別の実施形態において、織物材が樹脂で含浸されるように、織物材―事前の予備処理の有無に関わらず―を樹脂浴中に連続的に送給することができる。樹脂はプロセス中のこの段階で、場合により一部硬化させることができる。次に、1枚または2枚の銅箔の層を樹脂含浸織物シートの第1および/または第2の平面と結合させてウェブを形成し、その後、ウェブに熱および/または圧力を適用して、樹脂を完全に硬化させることができる。
【0039】
本発明の積層板を製造する連続的プロセスの、また別の実施形態が
図4に示され、そこで、第1の樹脂でコートされた銅(110)、織物(120)および第2の樹脂でコートされた銅(130)それぞれの形態の連続シートが一連の駆動ロール(140)中に連続的に巻き出されて、層状化ウェブ−剥離フィルムに隣接する樹脂でコートされた銅シートの樹脂に隣接した織物、を形成する。次にウェブを一定速度で処理ゾーン(150)中に誘導し、樹脂を織物材中に移動させ、またc−段階樹脂に硬化させるのに十分な時間、熱圧条件に曝露する。生成された積層板(160)は処理ゾーン(150)を排出し、積層ロール(160)として回収される。
図4のプロセスは2つの平行な送給装置および取り上げシステムを含み、そこで第1の樹脂コート銅(110’)、織物(120’)および第2の樹脂コート銅(130’)の平行ロールが合わされて、第2のウェブを製造し、第2のウェブは処理ゾーン(150)に誘導され、生成される積層板はロール(160’)の形態で回収される。2種のウェブが同時に処理ゾーン(150)中に誘導される時は、銅またはアルミニウム金属のシートのようなスペーサー材をロール(170)から送給して、第1のウェブ(175)と第2のウェブ(180)との間に誘導して、それらが処理ゾーン(150)を排出する時に2枚の薄い積層材の層の容易な分離を許すことができる。
【0040】
前記に注目されたように、本発明の極薄積層板はバッチプロセスによっても同様に製造することができる。一つのバッチプロセスの実施形態において、織物シートがb−段階樹脂でコートされた銅箔シートの樹脂層に適用され、次に第2のb−段階樹脂でコートされた銅箔シートが、露出された織物シートに対して適用される―樹脂層を下にして。このプロセスは複数の積層板を含む積重ね物(stack)を作製するように1回以上反復することができる。次にこの積重ね物を、レイアップに熱圧をかけるプレス中に入れて、b−段階樹脂を硬化し、またそれが硬化する時に樹脂を織物材中に流入させる。熱圧を外し、積層板を相互から分離させる。
【0041】
本発明の極薄積層板を製造するために使用される積層法およびパラメーターは非常に変化に富み、一般的に当業者には周知である。典型的なバッチの硬化サイクルにおいて、積重ね物は約40psi〜約900psiの圧力および約30in/Hgの真空下に維持される。積重ね物の温度は約180°F(82℃)〜約375°F(190℃)に約20分間の時間をかけて上昇される。積重ね物は75分間約375°Fの温度に留まり、その後積重ね物を375°F(190℃)の温度から75°F(24℃)の温度に20分間にわ
たり冷却する。
【0042】
以下の実施例は本発明の多様な態様を表すが、その範囲を限定する役目はもたない。
【実施例1】
【0043】
本実施例において、本発明の極薄樹脂系を製造するのに有用な樹脂系が示される。該樹脂系は以下のレシピーを有する。
【0044】
【表2】
【0045】
樹脂はプロピレングリコールメチルエーテルを混合容器中に添加し、次に2−フェニルイミダゾールを除くすべての残りの成分を同一混合容器中に添加し、そして成分を30分間混合することにより調製される。2−フェニルイミダゾールをプロピレングリコールメチルエーテル中に溶解し、次に混合物に添加する。混合物を30分間均一化し、樹脂の使用準備ができている。
【実施例2】
【0046】
本発明の極薄積層板の一つの製法は、液圧プレスを使用するバッチ積層プロセスによるものである。本方法に従うと、樹脂コーティングが織物シート材と接してレイアップを形成するように、極薄織物材を2枚の樹脂でコートされた銅の間に配置する。レイアップを15〜20バールの圧力および110℃(230°F)の開始温度で液圧プレス内に入れる。プレスの温度を毎分5〜7℃の速度で190℃(375°F)に上昇させる。レイアップを70分間190℃で保持する。次にレイアップを30分間室温に放置冷却させる。
【0047】
図2Aは1枚の銅層(22)がレイアップからエッチングされたレイアップを表す。レイアッププロセス中に、樹脂でコートされた銅からの樹脂が織物材に浸透してベース積層板(30)を形成する。
【0048】
幾つかの7インチ(17.8cm)×8インチ(20.3cm)の実験室規模のレイアップを、Circuitfoilにより製造されたTRL8およびTRL15樹脂でコートされた銅シート(8または15ミクロンの樹脂厚さをもつ)並びに1000および10
17ガラス布を使用して、前記の方法により調製した。レイアップをエッチングして銅を除去し、エッチング後に、レイアップの厚さをレイアップの各隅(上部右手/上部左手/下部右手/下部左手)と中央で測定した。結果は以下の表2に報告される。
【0049】
【表3】
【0050】
これらの結果はレイアップ上の良好な寸法安定性を示す。