特許第6061880号(P6061880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061880非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061880
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/50 20060101AFI20170106BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20170106BHJP
   D21H 17/67 20060101ALI20170106BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20170106BHJP
   D21H 21/16 20060101ALI20170106BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B41M5/50 120
   B41M5/00 110
   D21H17/67
   D21H27/00 Z
   D21H21/16
   B41J2/01 501
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-28496(P2014-28496)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-150839(P2015-150839A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡風呂 兼一
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−110702(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/015323(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/059358(WO,A1)
【文献】 特開2008−088612(JP,A)
【文献】 特開2003−285552(JP,A)
【文献】 特開2006−299498(JP,A)
【文献】 特開2011−132649(JP,A)
【文献】 特開2011−132648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 − 5/52
D21H 17/00 − 17/70
D21H 21/00 − 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ、填料およびインク定着向上剤を含有する非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙であって、産業用インクジェット記録用紙の、総パルプ含有量の10質量%以上がアカシア材由来のパルプであり、灰分が産業用インクジェット記録用紙に対して5質量%以上30質量%以下でありおよびインク定着向上剤の含有量が産業用インクジェット記録用紙に対して1.5g/m以上4.0g/m以下であり、且つJIS P8140に準拠して求められる10秒コッブサイズ度が10g/m以上100g/m以下であることを特徴とする非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙。
【請求項2】
産業用インクジェット記録用紙の、総パルプ含有量の30質量%以上70質量%以下がアカシア材由来のパルプであり、且つ灰分が産業用インクジェット記録用紙に対して15質量%以上25質量%以下である請求項1に記載の非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙。
【請求項3】
填料が、平均短径が0.20μm以上0.40μm以下且つ平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)が3.0以上6.0以下である紡錘状軽質炭酸カルシウムである請求項1または請求項2に記載の非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙。
【請求項4】
産業用インクジェット記録用紙のJIS P8140に準拠して求められる10秒コッブサイズ度が20g/m以上60g/m以下である請求項1〜3のいずれかに記載の非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙。
【請求項5】
産業用インクジェット記録用紙の総パルプ含有量の10質量%以上20質量%以下が、JIS P8121に準拠して求められるカナダ標準ろ水度300ml以上480ml以下且つJIS P8226に準拠して求められる長さ加重平均繊維長1.3mm以上1.9mm以下である針葉樹パルプである請求項1〜4のいずれかに記載の非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用インクジェット印刷機に使用するための非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙に関するものである。特に、オフセット印刷機にも適用することができる非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式の技術が急速に進歩し、多数枚の商業印刷物を製造するための産業用または商業用の印刷機に、インクジェット記録方式を使用する産業用インクジェット印刷機が公知である(例えば、特許文献1および2、非特許文献1および2参照)。産業用インクジェット印刷機は、例えば、大日本スクリーン製造社のTruepressJet、ミヤコシ社のMJPシリーズ、コダック社のProsperおよびVERSAMARK、富士フイルム社のJetPressなどの名称で販売されている。
【0003】
このような産業用インクジェット印刷機は、印刷諸条件に依存するものの一般家庭向けおよびSOHO向けインクジェットプリンター、並びに大判インクジェットプリンターに比べてカラー印刷速度が10倍〜数十倍と速く、印刷速度が15m/分以上、より高速では60m/分を超える。このため、産業用インクジェット印刷機は、一般家庭向けおよびSOHO向けインクジェットプリンターおよび大判インクジェットプリンターと区別される。
【0004】
産業用インクジェット印刷機は、可変情報を取り扱うことができるためにオンデマンド印刷に適応することができる。例えば、特に、輪転方式の産業用インクジェット印刷機は、宛名書き印刷・顧客情報印刷・ナンバリング印刷・バーコード印刷などのオンデマンド印刷に利用される。印刷業者は、固定情報をグラビア印刷機、オフセット印刷機、活版印刷機、フレキソ印刷機、熱転写印刷機またはトナー印刷機など従来からの印刷機で印刷し、可変情報を産業用インクジェット印刷機で印刷する形態を採用する場合が多い。特に、印刷画質や製造コストの点からオフセット印刷機の使用が多い。
【0005】
オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷機に使用できる非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙として、カチオン性樹脂を含有する塗料を塗布してなるインクジェット記録シートにおいて、繊維配向角の絶対値が2.0度以上20.0度以下、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51に規定されるブリストー法による液体転移量が5.0ml/m以上で、JIS P 8122に準拠するステキヒトサイズ度が10秒以上50秒以下に調整してなるインクジェット記録シートが公知である(例えば、特許文献3参照)。また、支持体に分子量が20000以下であるアルキルアミン・エピハロヒドリン重縮合物および/またはアルキルアミン・アンモニア・エピハロヒドリン重縮合物を両面あたり1.0〜2.0g/m付着させ、且つJIS P8140に準拠する10秒コッブサイズを10〜30g/mとするインクジェット記録シートが公知である(例えば、特許文献4参照)。また、セルロースパルプと填料を主成分とし、灰分が10〜30質量%である支持体にカチオン性樹脂を両面あたり2.0g/m以上付着させてなり、且つブリストー法によるぬれ時間0.2秒での吸水量が30ml/m以上であるインクジェット記録シートが公知である(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−251231号公報
【特許文献2】特開2005−088525号公報
【特許文献3】特開2007−090709号公報
【特許文献4】特開2000−247016号公報
【特許文献5】特開2009−184261号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】徳増路子著「B2判印刷本紙対応インクジェット印刷機」(「印刷雑誌」、印刷学会出版部発行、2010年8月号(Vol.93)、21頁〜24頁)
【非特許文献2】宮城安利著「オフセット品質のインクジェット印刷機」(「印刷雑誌」、印刷学会出版部発行、2010年8月号(Vol.93)、25頁〜29頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
産業用インクジェット記録は、高速印刷でありながらカラー化、高画質化および高精細化に対応するために、インクの多色化、インクの色材の低濃度化およびインクの吐出量増加の傾向にある。特許文献3〜5に記載されるが如くのインクジェット記録シートでは、この傾向に十分対応できない場合があり、さらなる適性向上が求められている。特に、オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷機の両方に適性を有する用紙が望まれている。
【0009】
ここで、本発明の「オフセット印刷機の適性を有する」とは、印刷画像の画像濃度が高く(発色性)、印刷された画像が印刷された面の反対面から視認される程度が小さく(インク裏抜け抑制性)、ブランケットパイリングの発生が抑制され(耐ブランケットパイリング性)、枚葉機の場合はジャムが少ないまた輪転機の場合は紙切れが少ない(操業性)、という点に優れていることである。また、本発明の「産業用インクジェット印刷機の適性を有する」とは、印刷画像の画像濃度が高く(発色性)、印刷された画像が印刷された面の反対面から視認される程度が小さく(インク裏抜け抑制性)、印刷画像が水分に強く(耐水性)、印刷されたバーコードの読み取りエラーが少なく(バーコード読取性)、インク吸収性やインク定着性が良好となって印刷機のロール汚れや印刷面の汚れが少なく(耐汚れ性)、枚葉機の場合はジャムが少ないまた輪転機の場合は紙切れが少ない(操業性)、という点に優れていることである。
【0010】
本発明の目的は、オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷機の両方に適性を有する非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、本発明の上記目的は、パルプ、填料およびインク定着向上剤を含有する非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙であって、産業用インクジェット記録用紙の、総パルプ含有量の10質量%以上がアカシア材由来のパルプであり、灰分が産業用インクジェット記録用紙に対して5質量%以上30質量%以下でありおよびインク定着向上剤の含有量が産業用インクジェット記録用紙に対して1.5g/m以上4.0g/m以下であり、且つJIS P8140に準拠して求められる10秒コッブサイズ度が10g/m以上100g/m以下であることを特徴とする非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙によって基本的に達成される。
【0012】
また好ましくは、産業用インクジェット記録用紙の、総パルプ含有量30質量%以上70質量%以下がアカシア材由来のパルプであり、且つ灰分が産業用インクジェット記録用紙に対して15質量%以上25質量%以下である。
【0013】
また好ましくは、填料が、平均短径が0.20μm以上0.40μm以下且つ平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)が3.0以上6.0以下である紡錘状軽質炭酸カルシウムである。
【0014】
また好ましくは、産業用インクジェット記録用紙のJIS P8140に準拠して求められる10秒コッブサイズ度が20g/m以上60g/m以下である。
【0015】
また好ましくは、産業用インクジェット記録用紙の総パルプ含有量の10質量%以上20質量%以下が、JIS P8121に準拠して求められるカナダ標準ろ水度300ml以上480ml以下且つJIS P8226に準拠して求められる長さ加重平均繊維長1.3mm以上1.9mm以下である針葉樹パルプである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷機の両方に適性を有する非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の非塗工紙タイプの産業用インクジェット記録用紙(以下、単に「記録用紙」と記載する。)について詳細に説明する。本明細書中で使用される場合、「インクジェット印刷」とは、産業用インクジェット印刷機を使用して印刷することをいう。また、「非塗工紙タイプ」とは、印刷用紙の断面を電子顕微鏡によって拡大観察した際に、明確な塗工層を有しない記録用紙を指す。
【0018】
産業用インクジェット印刷機には、用紙搬送の違いによって枚葉機と輪転機とがある。また搭載するインク種には、色材が染料である水性染料インクと色材が顔料である水性顔料インクとがある。本発明において、産業用インクジェット印刷機の用紙搬送またはインク種についてはいずれでも構わない。特に、本発明は、輪転機の産業用インクジェット印刷機に好適である。
【0019】
本発明において、産業用インクジェット印刷機の印刷速度は、60m/分以上である。これ未満の印刷速度であってもインクジェット印刷が可能であるが、本発明の効果が顕著に認められる印刷速度は60m/分以上である。また、産業用という観点から生産性が重視され、生産性として60m/分以上が望まれる。枚葉機の場合は、印刷速度は、毎分当たりの印刷される用紙サイズから算出する。
【0020】
印刷する画像に可変情報と固定情報が存在する場合は、固定情報の一部または全部をグラビア印刷機、オフセット印刷機、活版印刷機、フレキソ印刷機、熱転写印刷機またはトナー印刷機など従来からの印刷機を使用して印刷することが好ましい。特に、印刷画質や製造コストの点でオフセット印刷機が好ましい。従来からの印刷機は、産業用インクジェット印刷機を使用して印刷する前であっても後であっても構わない。
【0021】
本発明において、従来からの印刷機は、例えば、グラビア印刷機、オフセット印刷機、活版印刷機、フレキソ印刷機、熱転写印刷機またはトナー印刷機である。グラビア印刷機は、画像が彫り込まれたロール状の版胴を介してインクを被印刷体に転写する方式の印刷機である。オフセット印刷機は、インクを一度ブランケットに移してから被印刷体に再び転移する間接印刷方式の印刷機である。活版印刷機は、凸版に付与されたインクを被印刷体に押しつけるように圧をかけて印刷する凸版印刷方式の印刷機である。フレキソ印刷機は、柔軟な弾性のある樹脂版を使用する凸版印刷方式の印刷機である。熱転写印刷機は、各色のインクリボンを使用する印刷機であって、熱によってインクリボンから色材を被印刷体に転写する方式の印刷機である。トナー印刷機は、帯電ドラムに付着したトナーを、静電気を利用して被印刷体にトナーを転写させる電子写真方式の印刷機である。
【0022】
本発明の記録用紙は、パルプ、填料およびインク定着向上剤を含有する。
本発明において、記録用紙の総パルプ含有量の10質量%以上がアカシア材由来のパルプである。アカシア材由来のパルプが10質量%未満である場合は、オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷機におけるインク裏抜け抑制性に劣る。
【0023】
本発明において、記録用紙は、パルプの原材料としてアカシア材を有する。アカシア材の例としては、A.aulacocarpa、A.auriculiformis、A.crassicarpa、A.decurrens、A.holosericea、A.leptocarpa、A.maidenii,A.mangium、A.melanoxylon、A.neriifolia、A.silvestris等やこれらの交雑種を挙げることができる。アカシア材由来のパルプによってインク裏抜け抑制性を得られる理由は定かではないが、アカシア材由来のパルプは繊維長が短く且つ繊維幅が小さいため、単位面積当たりのパルプ繊維本数が多くなって記録用紙の不透明度が増し、結果、インクが裏抜け抑制性が得られると考えられる。
【0024】
本発明において、記録用紙は、アカシア材由来のパルプ以外に、ユーカリ材、ブナ材およびパイン材など由来の木材パルプ、さらにバガス、ケナフ、竹、麻、コットン、楮、三椏および雁皮など由来の非木材パルプを有することができる。木材パルプの例としては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプ、砕木パルプ(GP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、晒ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ、古紙パルプ(DIP)を挙げることができる。これらのパルプは適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明において、好ましくは、記録用紙の総パルプ含有量の30質量%以上70質量%以下がアカシア材由来のパルプである。この範囲であることによって、オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷機における発色性が良化する。また、好ましくは、アカシア材由来のパルプに加えて、総パルプ含有量に対して10質量%以上20質量%以下が、JIS P8121に準拠して求められるカナダ標準ろ水度300ml以上480ml以下且つJIS P8226に準拠して求められる長さ加重平均繊維長1.3mm以上1.9mm以下である針葉樹パルプである。これによって、オフセット印刷機における発色性、インク裏抜け抑制性、並びに産業用インクジェット印刷機における発色性、インク裏抜け抑制性、耐水性および耐汚れ性を損なうことなく、オフセット印刷機における耐ブランケットパイリング性および操業性、並びに産業用インクジェット印刷機における操業性が良化する。このような針葉樹パルプは従来公知の各種叩解装置を制御することによって得ることができる。
【0026】
本発明の10秒コッブサイズ度は、JIS P8140に準拠し、記録用紙と測定溶媒との接触時間を10秒とした吸水度試験方法(コッブ法)による測定値である。本発明において、記録用紙の10秒コッブサイズ度は10g/m以上100g/m以下である。10秒コッブサイズ度が10g/m未満の場合は、産業用インクジェット印刷機におけるバーコード読取性や耐汚れ性に主に劣る。10秒コッブサイズ度が100g/mを超える場合は、産業用インクジェット印刷機におけるインク裏抜け抑制性やバーコード読取性に主に劣る。産業用インクジェット印刷機における耐水性、耐汚れ性およびバーコード読取性の点で、10秒コッブサイズ度は20g/m以上60g/m以下が、より好ましい。10秒コッブサイズ度は、製紙分野で従来公知の方法によって制御することができる。例えば、内添サイズ剤を添加する方法、表面サイズ剤を付与する方法などを挙げることができる。15質量%以上の高灰分時には、ポリアルキレンポリアミン・脂肪酸・エピクロルヒドリン重縮合物を成分とする嵩高剤を内添サイズ剤として、単独あるいは従来公知の内添サイズ剤と併用することで、10秒コッブサイズ度が調整しやすくなる。
【0027】
本発明において、灰分はJIS P8251に規定された方法を用いて測定される値である。記録用紙の灰分は記録用紙に対して5質量%以上30質量%以下である。灰分は填料の含有量の増減によりコントロールすることができる。灰分が5質量%未満の場合は、オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷における発色性やインク裏抜け抑制性に劣る。また、灰分が30質量%を超える場合は、オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷機における操業性に主に劣る。灰分は、主に発色性の点で、記録用紙に対して15質量%以上25質量%以下が好ましい。
【0028】
本発明において、填料は、従来公知の顔料である。顔料の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料を挙げることができる。さらに、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料を挙げることができる。また、これらを複数種組み合わせて含有することができる。
【0029】
本発明において、填料は、平均短径が0.20μm以上0.40μm以下且つ平均短径に対する平均長径の比(平均長径/平均短径)が3.0以上6.0以下である紡錘状軽質炭酸カルシウムが好ましい。このような形状を満足する紡錘状軽質炭酸カルシウムを填料に用いることによって、記録用紙の不透明度がさらに向上し、より優れたインク裏抜け抑制性を得ることができる。なお、紡錘状軽質炭酸カルシウムとは一次粒子径の形状が紡錘状であることを意味する。また、かかる紡錘状軽質炭酸カルシウムは、凝集粒子の有無または形状について特に限定されない。
【0030】
軽質炭酸カルシウムの製造方法の例としては、炭酸ガス化合法または可溶性塩反応法などが挙げられる。炭酸ガス化合法とは、石灰石を焼成して得られる生石灰を水に溶かして石灰乳とし、石灰乳に炭酸ガスを反応させて軽質炭酸カルシウムを生成する方法である。可溶性塩反応法とは、石灰乳に塩化カルシウム溶液と炭酸ソーダとを反応させ軽質炭酸カルシウムを生成する方法である。反応条件等によって、軽質炭酸カルシウムの結晶系・大きさ・形状を調整することができる。軽質炭酸カルシウムの結晶系としては、カルサイト系結晶またはアラゴナイト系結晶などがある。カルサイト系結晶は、形状が通常、紡錘状または立方状(キュービック状または団子状)である。アラゴナイト系結晶は、形状が通常、柱状あるいは針状である。紡錘状とは、円柱状粒子から両端に行くに従って次第に細くなり中央部分が太くなっている形状である。紡錘状は、例えば、ラグビーボールのような形をなしている。ここで、長径は、次第に細くなっている両端間の長さである。短径は、最も太くなっている部分の外周を円周としたときの円の直径である。
【0031】
本発明において、軽質炭酸カルシウムの一次粒子の形状、平均短径および平均長径は、走査型電子顕微鏡写真から画像解析することによって求めることができる。一次粒子の平均短径および平均長径は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影される電子顕微鏡写真から、撮影された画像から確認できる任意の100個の一次粒子を実測し算出することができる。
【0032】
本発明において、記録用紙はインク定着向上剤を含有する。インク定着向上剤は、水に溶解したとき解離してカチオン性を呈する1級〜3級アミン若しくは4級アンモニウム塩、または多価陽イオン塩である。
【0033】
水に溶解したとき解離してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩の例としては、ジメチルアミン・エピブロモヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・エピヨードヒドリン重縮合物、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジエチルアミン・エピブロモヒドリン重縮合物、ジエチルアミン・エピヨードヒドリン重縮合物、ジエチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物等のようなアミン類とエピハロヒドリン類とを重縮合させて得られる樹脂、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類、ポリビニルアミン共重合物、ジアリルアミン・アクリルアミド共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド樹脂、ポリエチレンイミンの4級アンモニウム塩誘導体を挙げることができる。また、これらを複数種組み合わせて含有することができる。本発明の効果の点で、アミン類とエピハロヒドリン類とを重縮合させて得られる樹脂が好ましく、商業的入手し易さからジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物が最も好ましい。
【0034】
多価陽イオン塩は水溶性の多価陽イオン塩であり、具体的には20℃の水に1質量%以上溶解することができる多価陽イオン塩をいう。多価陽イオンの例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、亜鉛、銅、鉄、コバルト、スズ、マンガンなどの二価陽イオン、アルミニウムイオン、鉄、クロムなどの三価陽イオン、またはチタン、ジルコニウムなどの四価陽イオン、並びにそれらの錯イオンを挙げることができる。多価陽イオンと塩を形成する陰イオンは、無機酸および有機酸のいずれでもよく、特に限定されない。無機酸の例としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸などを挙げることができる。有機酸の例として、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、有機スルホン酸などが挙げることができる。また、これらを複数種組み合わせて含有することができる。但し、サイズ剤の定着剤として製紙分野で従来から使用される硫酸バンドは除く。本発明の効果の点で、カルシウム塩が好ましい。
【0035】
記録用紙中のインク定着向上剤の含有量は、記録用紙に対して1.5g/m以上4.0g/m以下である。インク定着向上剤の含有量が1.5g/m未満の場合は、水性染料インクを用いる産業用インクジェット印刷機における耐水性およびバーコード読取性、並びに水性顔料インクを用いる産業用インクジェット印刷機における発色性およびバーコード読取性に劣る。また、インク定着向上剤の含有量が4.0g/mを超える場合は、主にバーコード読取性に劣る。
【0036】
本発明において、記録用紙は、パルプ、填料およびインク定着向上剤以外に、その他の材料として従来公知の添加剤を有することができる。添加剤の例としては、紙力増強剤、顔料分散剤、増粘剤、サイズ剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤等を挙げることができる。
【0037】
本発明において、記録用紙を製造する方法としては、(1)パルプ、填料およびインク定着向上剤、さらに必要に応じて各種添加剤を有する紙料を抄造して製造する方法、(2)パルプおよび填料、さらに必要に応じて各種添加剤を有する紙料を抄造し、得られる抄造紙に、サイズプレス等の従来公知の塗工装置によってインク定着向上剤を付与して製造する方法、などを挙げることができる。抄造には従来公知の抄紙機を用いることができる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。本発明において、インク定着向上剤のより少ない含有量で効果が得られ易い点から(2)の方法が好ましい。
【0038】
上記(2)の方法における従来公知の塗工装置の例としては、サイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター等を挙げることができる。製造コストの点から、特に、抄紙機に設置されているサイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーターを用いてオンマシンでインク定着向上剤を抄造紙に付与する方法が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量および付着量に関する数値は乾燥固形分量あるいは実質成分量を表す。
【0040】
(パルプ原料1の調製)
ユーカリ材チップ90質量%/アカシア材チップ10質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料1を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.74mmであった。
【0041】
(パルプ原料2の調製)
ユーカリ材チップ72質量%/アカシア材チップ28質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料2を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.73mmであった。
【0042】
(パルプ原料3の調製)
ユーカリ材チップ70質量%/アカシア材チップ30質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料3を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.72mmであった。
【0043】
(パルプ原料4の調製)
ユーカリ材チップ30質量%/アカシア材チップ70質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料4を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.69mmであった。
【0044】
(パルプ原料5の調製)
ユーカリ材チップ28質量%/アカシア材チップ72質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料5を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.68mmであった。
【0045】
(パルプ原料6の調製)
ユーカリ材チップ67.4質量%/アカシア材チップ32.6質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料6を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.71mmであった。
【0046】
(パルプ原料7の調製)
ユーカリ材チップ67質量%/アカシア材チップ33質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料7を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.71mmであった。
【0047】
(パルプ原料8の調製)
ユーカリ材チップ62.5質量%/アカシア材チップ37.5質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料8を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.69mmであった。
【0048】
(パルプ原料9の調製)
ユーカリ材チップ61.5質量%/アカシア材チップ38.5質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料9を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.68mmであった。
【0049】
(パルプ原料10の調製)
ユーカリ材チップ100質量%からなる広葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.0mm、溝幅2.0mm、刃高4.0mm)にて処理を行い、カナダ標準ろ水度が400mlのパルプ原料10を得た。このときの、長さ加重平均繊維長は0.76mmであった。
【0050】
(パルプ原料11の調製)
パイン材チップ100質量%からなる針葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.8mm、溝幅5.0mm、刃高5.0mm)にて処理を行い、長さ加重平均繊維長を1.3mmに調整したパルプ原料11を得た。このときのカナダ標準ろ水度は300mlであった。
【0051】
(パルプ原料12の調製)
パイン材チップ100質量%からなる針葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅3mm、溝幅3.5mm、刃高6.0mm)にて処理を行い、長さ加重平均繊維長を2.1mmに調整したパルプ原料12を得た。このときのカナダ標準ろ水度は480mlであった。
【0052】
(パルプ原料13の調製)
パイン材チップ100質量%からなる針葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.8mm、溝幅5.0mm、刃高5.0mm)にて処理を行い、長さ加重平均繊維長を1.9mmに調整したパルプ原料13を得た。このときのカナダ標準ろ水度は480mlであった。
【0053】
(パルプ原料14の調製)
パイン材チップ100質量%からなる針葉樹チップをクラフト蒸解した漂白クラフトパルプをダブルディスクリファイナー(刃幅1.8mm、溝幅5.0mm、刃高5.0mm)にて処理を行い、長さ加重平均繊維長を1.2mmに調整したパルプ原料14を得た。このときのカナダ標準ろ水度は280mlであった。
【0054】
(実施例1)
パルプ原料1の100質量部からなるパルプスラリーに、填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)19質量部、両性澱粉0.8質量部、硫酸バンド0.8質量部、内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー型サイズ剤、商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.12質量部、歩留まり剤(両性アクリル樹脂、商品名:ポリテンション1001、荒川化学工業社製)0.008質量部を添加して、長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で両面あたり、リン酸エステル化澱粉を2.7g/mおよびインク定着向上剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、商品名:ジェットフィックス36N、里田化工社製)を1.8g/m付着させ、乾燥し、マシンカレンダー処理をして坪量80g/m、密度0.8g/cmの実施例1の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は15g/m、灰分は10質量%であった。
【0055】
(実施例2)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)10質量部、インク定着向上剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、商品名:ジェットフィックス36N、里田化工社製)を両面あたり1.5g/m付着とする以外は実施例1と同様にして、実施例2の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は10g/m、灰分は5質量%であった。
【0056】
(実施例3)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)50質量部、内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー型サイズ剤、商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.33質量部、インク定着向上剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、商品名:ジェットフィックス36N、里田化工社製)を両面あたり4.0g/m付着とする以外は実施例1と同様にして、実施例3の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は100g/m、灰分は30質量%であった。
【0057】
(実施例4)
パルプ原料2とする以外は実施例1と同様にして、実施例4の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は15g/m、灰分は10質量%であった。
【0058】
(実施例5)
パルプ原料3とする以外は実施例1と同様にして、実施例5の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は16g/m、灰分は10質量%であった。
【0059】
(実施例6)
パルプ原料4とする以外は実施例1と同様にして、実施例6の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は15g/m、灰分は10質量%であった。
【0060】
(実施例7)
パルプ原料5とする以外は実施例1と同様にして、実施例7の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は17g/m、灰分は10質量%であった。
【0061】
(実施例8)
パルプ原料3の100質量部からなるパルプスラリーに、填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)27質量部とする以外は実施例1と同様にして、実施例8の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は62g/m、灰分は14質量%であった。
【0062】
(実施例9)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)を30質量部とする以外は実施例8と同様にして、実施例9の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は65g/m、灰分は15質量%であった。
【0063】
(実施例10)
パルプ原料4、填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)44質量部、内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー型サイズ剤、商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.25質量部とする以外は実施例1と同様にして、実施例10の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は94g/m、灰分は25質量%であった。
【0064】
(実施例11)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)を46質量部、内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー型サイズ剤、商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.3質量部とする以外は実施例10と同様にして、実施例11の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は98g/m、灰分は26質量%であった。
【0065】
(実施例12)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.15μmおよび平均長径/平均短径が4.0)とする以外は実施例9と同様にして、実施例12の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は70g/m、灰分は15質量%であった。
【0066】
(実施例13)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.20μmおよび平均長径/平均短径が6.5)とする以外は実施例9と同様にして、実施例13の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は64g/m、灰分は15質量%であった。
【0067】
(実施例14)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.20μmおよび平均長径/平均短径が6.0)とする以外は実施例9と同様にして、実施例14の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は68g/m、灰分は15質量%であった。
【0068】
(実施例15)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.20μmおよび平均長径/平均短径が3.0)とする以外は実施例9と同様にして、実施例15の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は71g/m、灰分は15質量%であった。
【0069】
(実施例16)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.40μmおよび平均長径/平均短径が3.0)とする以外は実施例9と同様にして、実施例16の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は68g/m、灰分は15質量%であった。
【0070】
(実施例17)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.40μmおよび平均長径/平均短径が6.0)とする以外は実施例9と同様にして、実施例17の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は63g/m、灰分は15質量%であった。
【0071】
(実施例18)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.45μmおよび平均長径/平均短径が5.5)とする以外は実施例9と同様にして、実施例18の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は66g/m、灰分は15質量%であった。
【0072】
(実施例19)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.40μmおよび平均長径/平均短径が2.7)とする以外は実施例9と同様にして、実施例19の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は69g/m、灰分は15質量%であった。
【0073】
(実施例20)
填料として柱状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.30μmおよび平均長径/平均短径が5.5)とする以外は実施例9と同様にして、実施例20の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は70g/m、灰分は15質量%であった。
【0074】
(実施例21)
填料として立方状軽質炭酸カルシウム(平均粒子径0.30μm)とする以外は実施例9と同様にして、実施例21の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は70g/m、灰分は15質量%であった。
【0075】
(実施例22)
填料として重質炭酸カルシウム(平均粒子径0.30μm)とする以外は実施例9と同様にして、実施例22の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は75g/m、灰分は15質量%であった。
【0076】
(実施例23)
パルプ原料3の100質量部からなるパルプスラリーに、填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.30μmおよび平均長径/平均短径が4.5)38質量部、嵩高剤(商品名:サイズパインDL−15、荒川化学工業社製)0.3質量部、両性澱粉0.8質量部、硫酸バンド0.8質量部、内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー型サイズ剤、商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.12質量部、歩留まり剤(両性アクリル樹脂、商品名:ポリテンション1001、荒川化学工業社製)0.008質量部を添加して、長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で両面あたり、リン酸エステル化澱粉を2.7g/mおよびインク定着向上剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、商品名:ジェットフィックス36N、里田化工社製)を1.8g/m付着させ、マシンカレンダー処理をして坪量80g/m、密度0.8g/cmの実施例23の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は18g/m、灰分は20質量%であった。
【0077】
(実施例24)
嵩高剤(商品名:サイズパインDL−15、荒川化学工業社製)0.27質量部とする以外は、実施例23と同様にして、実施例24の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は20g/m、灰分は20質量%であった。
【0078】
(実施例25)
嵩高剤(商品名:サイズパインDL−15、荒川化学工業社製)0.1質量部とする以外は、実施例23と同様にして、実施例25の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は60g/m、灰分は20質量%であった。
【0079】
(実施例26)
嵩高剤(商品名:サイズパインDL−15、荒川化学工業社製)0.05質量部とする以外は、実施例23と同様にして、実施例26の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は62g/m、灰分は20質量%であった。
【0080】
(実施例27)
パルプ原料6:92質量%/パルプ原料11:8質量%の100質量部からなるパルプスラリーに、填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.30μmおよび平均長径/平均短径が4.5)38質量部、嵩高剤(商品名:サイズパインDL−15、荒川化学工業社製)0.15質量部、両性澱粉0.8質量部、硫酸バンド0.8質量部、内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー型サイズ剤、商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.12質量部、歩留まり剤(両性アクリル樹脂、商品名:ポリテンション1001、荒川化学工業社製)0.008質量部を添加して、長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で、リン酸エステル化澱粉を固形分として2.7g/mおよびインク定着向上剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、商品名:ジェットフィックス36N、里田化工社製)を1.8g/m付着させ、マシンカレンダー処理をして坪量80g/m、密度0.8g/cmの実施例27の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は40g/m、灰分は20質量%であった。
【0081】
(実施例28)
パルプ原料7:90質量%/パルプ原料12:10質量%の100質量部からなるパルプスラリーとする以外は、実施例27と同様にして、実施例28の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は50g/m、灰分は20質量%であった。
【0082】
(実施例29)
パルプ原料7:90質量%/パルプ原料11:10質量%の100質量部からなるパルプスラリーとする以外は、実施例27と同様にして、実施例29の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は41g/m、灰分は20質量%であった。
【0083】
(実施例30)
パルプ原料7:90質量%/パルプ原料13:10質量%の100質量部からなるパルプスラリーとする以外は、実施例27と同様にして、実施例30の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は49g/m、灰分は20質量%であった。
【0084】
(実施例31)
パルプ原料8:80質量%/パルプ原料11:20質量%の100質量部からなるパルプスラリーとする以外は、実施例27と同様にして、実施例31の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は41g/m、灰分は20質量%であった。
【0085】
(実施例32)
パルプ原料8:80質量%/パルプ原料13:20質量%の100質量部からなるパルプスラリーとする以外は、実施例27と同様にして、実施例32の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は45g/m、灰分は20質量%であった。
【0086】
(実施例33)
パルプ原料8:80質量%/パルプ原料14:20質量%の100質量部からなるパルプスラリーとする以外は、実施例27と同様にして、実施例33の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は39g/m、灰分は20質量%であった。
【0087】
(実施例34)
パルプ原料9:78質量%/パルプ原料13:22質量%の100質量部からなるパルプスラリーとする以外は、実施例27と同様にして、実施例34の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は48g/m、灰分は20質量%であった。
【0088】
(比較例1)
パルプ原料10の100質量部からなるパルプスラリーとする以外は、実施例1と同様にして、比較例1の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は17g/m、灰分は10質量%であった。
【0089】
(比較例2)
インク定着向上剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、商品名:ジェットフィックス36N、里田化工社製)を両面あたり1.3g/m付着させる以外は、実施例1と同様にして、比較例2の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は15g/m、灰分は10質量%であった。
【0090】
(比較例3)
インク定着向上剤(ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、商品名:ジェットフィックス36N、里田化工社製)を両面あたり4.3g/mとすること以外は、実施例1と同様にして、比較例3の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は19g/m、灰分は10質量%であった。
【0091】
(比較例4)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)を8質量部とすること以外は、実施例1と同様にして、比較例4の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は12g/m、灰分は3質量%であった。
【0092】
(比較例5)
填料として紡錘状軽質炭酸カルシウム(平均短径0.50μmおよび平均長径/平均短径が4.5)を58質量部とすること以外は、実施例1と同様にして、比較例5の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は90g/m、灰分は33質量%であった。
【0093】
(比較例6)
内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー型サイズ剤、商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.02質量部とすること以外は、実施例1と同様にして、比較例6の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は105g/m、灰分は10質量%であった。
【0094】
(比較例7)
内添サイズ剤(アルキルケテンダイマー型サイズ剤、商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.15質量部とすること以外は、実施例1と同様にして、比較例7の記録用紙を作製した。このとき、10秒コッブサイズ度は8g/m、灰分は10質量%であった。
【0095】
<オフセット印刷機における発色性、インク裏抜け抑制性および耐ブランケットパイリング性の評価>
ミヤコシ社製オフセットフォーム輪転機で、印刷速度:150m/分、使用インク:T&K TOKA UVベストキュア墨および金赤、UV照射量:8kW2基の条件で6000mの印刷を行い、印刷サンプルの印刷画像部の色濃度、印刷画像のインク裏抜け状態および印刷後ブランケットパイリングの発生状況について各々目視により官能評価した。本発明において、オフセット印刷機に対する発色性、インク裏抜け抑制性および耐ブランケットパイリング性が良好である記録用紙は、△〜◎の評価である。
◎:極めて良好。
○:良好。
△:実用上問題ない範囲。
×:不良。
【0096】
<オフセット印刷機における操業性の評価>
オフセット印刷機において、ミヤコシ社製オフセットフォーム輪転機で、印刷速度150m/分、使用インク:T&K TOKA UVベストキュア墨および金赤、UV照射量:8kW2基の条件で、巻き長さ6000mのロールに印刷を行った。10ロール印刷を行い、紙切れ回数によって評価した。本発明において、オフセット印刷機における操業性が良好である記録用紙は、△〜◎の評価である。
◎:10ロールとも紙切れがなく操業性に極めて優れる。
○:10ロール中、紙切れが1回であり、操業性に優れる。
△:10ロール中、紙切れが2回であり、操業性に問題ない。
×:10ロール中、紙切れが3回以上あり、操業性に問題あり。
【0097】
<産業用インクジェット印刷機における発色性の評価>
水性染料インクについては、ミヤコシ社製産業用インクジェット印刷機MJP20Cを用い、評価画像を150m/分で6000m印刷した。水性顔料インクについては、コダック社製産業用インクジェット印刷機Prosper 5000XL Pressを用い、評価画像を75m/分で6000m印刷した。ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各単色およびブラックを除く他の3色インクでの2重色(レッド、グリーン、ブルー)の計7色のベタパターンを、2cm×2cm四方で横一列に隙間なく並べて記録するという方法で印刷を行った。各色ベタ印刷画像部分の色濃度を目視により官能評価した。本発明において、発色性に優れる記録用紙は、△〜◎の評価である。
◎:色濃度および色鮮やかさが共に良好である。
○:色濃度または色鮮やかさのいずれかが「◎」より劣るが、良好である。
△:色濃度および色鮮やかさが実用的に問題ないレベルである。
×:色濃度または色鮮やかさのいずれかが「△」より劣り、実用上問題である。
【0098】
<産業用インクジェット印刷機におけるインク裏抜け抑制性の評価>
水性染料インクについては、ミヤコシ社製産業用インクジェット印刷機MJP20Cを用い、評価画像を150m/分で6000m印刷した。水性顔料インクについては、コダック社製産業用インクジェット印刷機Prosper 5000XL Pressを用い、評価画像を75m/分で6000m印刷した。ブラックのベタ印刷パターンを10cm×10cm四方で記録するという方法で印刷を行った。印刷画像のインク裏抜け状態について、目視により官能評価した。本発明において、産業用インクジェット印刷機に対するインク裏抜け抑制性が良好である記録用紙は、△〜◎の評価である。
◎:極めて良好。
○:良好。
△:実用上問題ない範囲。
×:不良。
【0099】
<産業用インクジェット印刷機における耐水性の評価>
水性染料インクについてはミヤコシ社製産業用インクジェット印刷機MJP20Cを用い、印刷速度150m/分で、水性顔料インクについてはコダック社産業用インクジェット印刷機Prospaer 5000XL Pressを用い、印刷速度75m/分で、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、各単色の50面積%網点パターンおよび文字の印刷を行った。24時間放置後の印刷部分を水中に30秒間浸け、余分な水分を濾紙で拭き取った後、自然乾燥を行い、印刷部分の滲み具合を目視により官能評価した。本発明において、良好な画像耐水性を有する記録用紙は、△〜◎の評価である。
◎:滲みがまったくない。
○:僅かに滲みがあるが、ほとんど気にならない。
△:滲みはあるものの、網点ドットおよび文字がはっきり識別できる。
×:滲みがあり、網点ドットおよび文字がはっきりせず、ぼやけて見える。
【0100】
<産業用インクジェット印刷機における耐汚れ性の評価>
水性染料インクについてはミヤコシ社製産業用インクジェット印刷機MJP20Cを用い、印刷速度150m/分で、水性顔料インクについてはコダック社製産業用インクジェット印刷機Prosper 5000XL Pressを用い、印刷速度75m/分で、それぞれ巻き長さ6000mのロールに印刷後、インクジェット印刷機の各ロールの汚れ状態および印刷物の汚れ状態を目視により官能評価した。本発明において、産業用インクジェット印刷機における耐汚れ性が良好である記録用紙は、△〜◎の評価である。
◎:汚れが認められない。
○:極僅かに汚れが認められるが概ね良好である。
△:汚れが認められるが、実用上影響しない程度である。
×:汚れが認められ、実用上問題となる程度である。
【0101】
<産業用インクジェット印刷機における操業性の評価>
水性染料インクについてはミヤコシ社製産業用インクジェット印刷機MJP20Cを用い、印刷速度150m/分で、水性顔料インクについてはコダック社製産業用インクジェット印刷機Prosper 5000XL Pressを用い、印刷速度75m/分で、それぞれ巻き長さ6000mのロールに印刷を行った。10ロール印刷を行い、紙切れ回数によって評価した。本発明において、産業用インクジェット印刷機における操業性が良好である記録用紙は、△〜◎の評価である。
◎:10ロールとも紙切れがなく操業性に極めて優れる。
○:10ロール中、紙切れが1回であり、操業性に優れる。
△:10ロール中、紙切れが2回であり、操業性に問題ない。
×:10ロール中、紙切れが3回以上あり、操業性に問題あり。
【0102】
<産業用インクジェット印刷機におけるバーコード読取性の評価>
水性染料インクについてはミヤコシ社製産業用インクジェット印刷機MJP20Cを用い印刷速度150m/分で、また水性顔料インクについてはコダック社製産業用インクジェット印刷機Prosper 5000XL Pressを用い印刷速度75m/分で、(財)流通システム開発センターが作成した「UCC/EAN128による標準料金代理収納ガイドライン」に従い、「UCC/EAN128コード」のバーコードを印刷した。
【0103】
印刷されたバーコードについて、「UCC/EAN128による標準料金代理収納ガイドライン」に従い、ANSI X3.182に準拠してバーコード検証を行った。バーコード検証器は、HHP社製の「Quick Check PC600」を用い、測定部開口径が3mil(0.075mm)のリーダーでバーコードを50回走査し評価した。ランク判定基準は以下の通りである。本発明において、バーコード読取性に優れる記録用紙は、D〜Aの評価である。
A:バーコードリーダーの50回の走査のうち、50回とも読み取れるレベル。
B:バーコードリーダーの50回の走査のうち、45〜49回読み取れるレベル。
C:バーコードリーダーの50回の走査のうち、40〜44回読み取れるレベル。
D:バーコードリーダーの50回の走査のうち、35〜39回読み取れるレベル。
F:バーコードリーダーの50回の走査のうち、読み取れる回数が35回未満。
【0104】
オフセット印刷機および産業用インクジェット印刷機における各評価結果を表1に示した。
【0105】
【表1】
【0106】
表1より、本発明に相当する各実施例の記録用紙は、オフセット印刷における発色性、インク裏抜け抑制性、耐ブランケットパイリング性および操業性が良好であり、且つ水生染料インクおよび水性顔料インクを使用した産業用インクジェット印刷機における発色性、インク裏抜け抑制性、耐水性、耐汚れ性、操業性およびバーコード読取性に優れることが分かる。
【0107】
一方、表1より、本発明の条件を満足しない各比較例では本発明の効果は得られないと分かる。