特許第6061892号(P6061892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061892
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】燃料電池発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20170106BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20170106BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20170106BHJP
【FI】
   H01M8/04 J
   H01M8/06 G
   H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-77765(P2014-77765)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-201266(P2015-201266A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年1月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】染川 貴亮
(72)【発明者】
【氏名】松崎 良雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英樹
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−031989(JP,A)
【文献】 特表2012−531719(JP,A)
【文献】 特開2003−142140(JP,A)
【文献】 特開2011−181489(JP,A)
【文献】 特開2013−258004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
C01B 3/00−6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第1の燃料電池スタックと、
固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備え、前記第1の燃料電池スタックよりも下流に配置されている第2の燃料電池スタックと、
前記第1の燃料電池スタック及び前記第2の燃料電池スタックに接続され、前記第1の燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガスを前記第2の燃料電池スタックに供給する第1の排出ガス供給管と、
前記第1の排出ガス供給管に接続されており、前記第1の排出ガス供給管を介して、炭化水素燃料を前記第2の燃料電池スタックに供給する第1の炭化水素燃料供給管と、
前記第1の排出ガス供給管に接続され、前記第2の燃料電池スタックに供給される少なくとも前記排出ガス中の二酸化炭素を除去する第1の二酸化炭素除去装置と、
を備え、
前記第1の炭化水素燃料供給管は、前記第1の二酸化炭素除去装置よりも上流にて前記第1の排出ガス供給管と接続しており、
前記第1の排出ガス供給管に接続され、かつ、前記第1の排出ガス供給管と前記第1の炭化水素燃料供給管との接続部分、又は該接続部分よりも下流に配置された、前記第1の炭化水素燃料供給管より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質する第2の改質器をさらに備える燃料電池発電システム。
【請求項2】
固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第1の燃料電池スタックと、
固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備え、前記第1の燃料電池スタックよりも下流に配置されている第2の燃料電池スタックと、
前記第1の燃料電池スタック及び前記第2の燃料電池スタックに接続され、前記第1の燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガスを前記第2の燃料電池スタックに供給する第1の排出ガス供給管と、
前記第1の排出ガス供給管に接続されており、前記第1の排出ガス供給管を介して、炭化水素燃料を前記第2の燃料電池スタックに供給する第1の炭化水素燃料供給管と、
前記第1の排出ガス供給管に接続され、前記第2の燃料電池スタックに供給される少なくとも前記排出ガス中の二酸化炭素を除去する第1の二酸化炭素除去装置と、
を備え、
前記第1の炭化水素燃料供給管は、前記第1の二酸化炭素除去装置よりも下流にて前記第1の排出ガス供給管と接続しており、
前記第1の排出ガス供給管に接続され、かつ、前記第1の排出ガス供給管と前記第1の炭化水素燃料供給管との接続部分、又は該接続部分よりも下流に配置された、前記第1の炭化水素燃料供給管より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質する第2の改質器をさらに備える燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記第1の燃料電池スタックの上流に配置され、炭化水素燃料を水蒸気改質して改質ガスを生成する第1の改質器と、
前記第1の改質器と前記第1の燃料電池スタックとを連通し、前記改質ガスを前記第1の燃料電池スタックに供給する改質ガス供給管と、
をさらに備える請求項1又は請求項2に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記改質ガス供給管に接続され、前記改質ガス中の二酸化炭素を除去する第2の二酸化炭素除去装置をさらに備える請求項3に記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第(n−1)の燃料電池スタック(nは3以上の整数)よりも下流に配置され、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第nの燃料電池スタックと、
前記第(n−1)の燃料電池スタック及び前記第nの燃料電池スタックに接続され、前記第(n−1)の燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガスを前記第nの燃料電池スタックに供給する第(n−1)の排出ガス供給管と、
前記第(n−1)の排出ガス供給管に接続されており、前記第(n−1)の排出ガス供給管を介して、炭化水素燃料を前記第nの燃料電池スタックに供給する第(n−1)の炭化水素燃料供給管と、
前記第(n−1)の排出ガス供給管に接続され、前記第nの燃料電池スタックに供給される少なくとも前記排出ガス中の二酸化炭素を除去する第nの二酸化炭素除去装置と、
をさらに備える請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
前記第(n−1)の排出ガス供給管に接続され、かつ、前記第(n−1)の排出ガス供給管と前記第(n−1)の炭化水素燃料供給管との接続部分、又は該接続部分よりも下流に配置された、前記第(n−1)の炭化水素燃料供給管より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質する第nの改質器をさらに備える請求項に記載の燃料電池発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たなエネルギー源として、燃料電池発電システムに対する注目が大きくなってきている。燃料電池発電システムに備えられる燃料電池としては、様々なタイプが存在するが中でも、固体酸化物を電解質として利用する固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)は、最も発電効率が高い燃料電池であり有望であることが知られている。
【0003】
SOFCとして、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極から構成されている単電池を複数備える燃料電池スタックが用いられる。SOFCを用いた発電方法では、例えば、燃料となるメタン(CH)及び水蒸気を、SOFC外部の改質器に供給して水蒸気改質を行なうことで生成した水素(H)及び一酸化炭素(CO)を、空気極に導入された空気中の酸素が電解質との界面で解離して発生する酸素イオン(O2−)と、電解質と燃料極との界面で電気化学的に反応させる。この電気化学的な反応により、水及び二酸化炭素が生成され、そのときに放出された電子によって発電する。SOFCを用いた発電方法では、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーへ直接変換するため、エネルギー変換ロスが小さく、高効率な発電が可能である。
【0004】
特許文献1には、水蒸気改質方式によるSOFCの発電効率向上に適した燃料電池システムが開示されており、具体的には、燃料の一部を改質器に供給し残りの一部を第二セルスタックに供給することで、従来の水蒸気改質方式と比較して改質器に供給する水量を削減し、発電効率を向上させることが可能な燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−258004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている燃料電池システムよりも、発電効率を向上させたシステムが望まれている。
【0007】
本発明の課題は、発電効率向上に適した燃料電池発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の手段により解決される。
<1> 固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第1の燃料電池スタックと、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備え、前記第1の燃料電池スタックよりも下流に配置されている第2の燃料電池スタックと、前記第1の燃料電池スタック及び前記第2の燃料電池スタックに接続され、前記第1の燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガスを前記第2の燃料電池スタックに供給する第1の排出ガス供給管と、前記第1の排出ガス供給管に接続されており、前記第1の排出ガス供給管を介して、炭化水素燃料を前記第2の燃料電池スタックに供給する第1の炭化水素燃料供給管と、前記第1の排出ガス供給管に接続され、前記第2の燃料電池スタックに供給される少なくとも前記排出ガス中の二酸化炭素を除去する第1の二酸化炭素除去装置と、を備える燃料電池発電システムである。
【0009】
第1の燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガスには、電気化学的な反応により生成した水蒸気及び二酸化炭素が含まれている。その排出ガスを第1の炭化水素燃料供給管から供給される炭化水素燃料とともに第2の燃料電池スタックに供給することで発電を行なうため、外部から水蒸気を供給する場合よりも必要とする水蒸気(改質水)の量を減らすことができる。これにより、第2の燃料電池スタックに供給されるガス中の酸素濃度を小さくすることができる。
【0010】
そして、上記構成では、排出ガス中の二酸化炭素を除去する第1の二酸化炭素除去装置が設けられているため、第2の燃料電池スタックに供給されるガス中の酸素濃度をより小さくすることができる。その結果、第2の燃料電池スタックにて燃料極側と空気極側とでより大きな酸素分圧差を生じさせることができ、燃料電池発電システムでの起電力を向上させることができる。
【0011】
<2> 前記第1の燃料電池スタックの上流に配置され、炭化水素燃料を水蒸気改質して改質ガスを生成する第1の改質器と、前記第1の改質器と前記第1の燃料電池スタックとを連通し、前記改質ガスを前記第1の燃料電池スタックに供給する改質ガス供給管と、をさらに備える<1>に記載の燃料電池発電システムである。
【0012】
第1の改質器に、炭化水素燃料及び水蒸気を供給することにより、炭化水素燃料を水蒸気改質して、改質ガスが生成される。生成された改質ガスは、改質ガス供給管を介して、第1の燃料電池スタックに供給される。これにより、第1の燃料電池スタックにて効率的な発電が可能となる。
【0013】
<3>前記改質ガス供給管に接続され、前記改質ガス中の二酸化炭素を除去する第2の二酸化炭素除去装置をさらに備える<2>に記載の燃料電池発電システムである。
【0014】
第2の二酸化炭素除去装置を改質ガス供給管に接続することにより、改質ガスが第1の燃料電池スタックに供給される前に、改質ガス中の二酸化炭素が除去される。よって、炭化水素燃料の水蒸気改質で二酸化炭素が生じた場合であっても、二酸化炭素を好適に除去することができ、第1の燃料電池スタックに供給される改質ガス中の酸素濃度を小さくすることができる。その結果、第1の燃料電池スタックにて燃料極側の酸素分圧を小さくして、燃料極側と空気極側との酸素分圧差を大きくすることができ、燃料電池発電システムでの起電力をより向上させることができる。
【0015】
<4>前記第1の炭化水素燃料供給管は、前記第1の二酸化炭素除去装置よりも上流にて前記第1の排出ガス供給管と接続している、又は、前記第1の二酸化炭素除去装置よりも下流にて前記第1の排出ガス供給管と接続している<1>〜<3>のいずれか1つに記載の燃料電池システムである。
【0016】
第1の炭化水素燃料供給管が第1の二酸化炭素除去装置よりも上流にて第1の排出ガス供給管と接続していることにより、炭化水素燃料中の二酸化炭素や炭化水素燃料を水蒸気改質したことにより生成された二酸化炭素を除去することができる。その結果、第2の燃料電池スタックに供給されるガス中の酸素濃度をより小さくすることができる。
【0017】
第1の炭化水素燃料供給管が第1の二酸化炭素除去装置よりも下流にて第1の排出ガス供給管と接続していることにより、第1の排出ガス供給管に炭素が析出する炭素析出を抑制することができる。その結果、第1の排出ガス供給管の詰まりを抑制することができる。
【0018】
<5> 前記第1の排出ガス供給管に接続され、かつ、前記第1の排出ガス供給管と前記第1の炭化水素燃料供給管との接続部分、又は該接続部分よりも下流に配置された、前記第1の炭化水素燃料供給管より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質する第2の改質器をさらに備える<1>〜<4>のいずれか1つに記載の燃料電池発電システムである。
【0019】
上記構成によれば、接続部分、又は接続部分よりも下流に配置された第2の改質器にて、第1の炭化水素燃料供給管より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質する。これにより、第2の燃料電池スタックにて効率的な発電が可能となる。
【0020】
<6> 固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第(n−1)の燃料電池スタック(nは3以上の整数)よりも下流に配置され、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第nの燃料電池スタックと、前記第(n−1)の燃料電池スタック及び前記第nの燃料電池スタックに接続され、前記第(n−1)の燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガスを前記第nの燃料電池スタックに供給する第(n−1)の排出ガス供給管と、前記第(n−1)の排出ガス供給管に接続されており、前記第(n−1)の排出ガス供給管を介して、炭化水素燃料を前記第nの燃料電池スタックに供給する第(n−1)の炭化水素燃料供給管と、前記第(n−1)の排出ガス供給管に接続され、前記第nの燃料電池スタックに供給される少なくとも前記排出ガス中の二酸化炭素を除去する第nの二酸化炭素除去装置と、をさらに備える<1>〜<5>のいずれか1つに記載の燃料電池発電システムである。
【0021】
第(n−1)の燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガスを、第(n−1)の炭化水素燃料供給管から供給される炭化水素燃料とともに、第(n−1)の排出ガス供給管を介して第nの燃料電池スタックに供給する。したがって、第(n−1)の燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガス中の水蒸気を使用し、第(n−1)の炭化水素燃料供給管から供給される炭化水素燃料を改質することができるため、システム全体として燃料極側の酸素濃度を減少させることができる。したがって、発電効率をより向上させることができる。
【0022】
さらに、排出ガスを第nの燃料電池スタックに供給する前に、当該排出ガス中に含まれる二酸化炭素が第nの二酸化炭素除去装置で除去されるため、第nの燃料電池スタックの燃料極に供給される排出ガス中の酸素濃度は、より少なくなる。よって、第nの燃料電池スタックにて燃料極側と空気極側とでより大きな酸素分圧差が生じる。したがって、燃料電池発電システムでの起電力を向上させることができ、さらに発電効率を向上させることができる。
【0023】
<7> 前記第(n−1)の排出ガス供給管に接続され、かつ、前記第(n−1)の排出ガス供給管と前記第(n−1)の炭化水素燃料供給管との接続部分、又は該接続部分よりも下流に配置された、前記第(n−1)の炭化水素燃料供給管より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質する第nの改質器をさらに備える<6>に記載の燃料電池発電システムである。
【0024】
上記構成によれば、接続部分、又は接続部分よりも下流に配置された第nの改質器にて、第(n−1)の炭化水素燃料供給管より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質する。これにより、水蒸気改質反応を促進することができ、第nの燃料電池スタックにて効率的な発電が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、発電効率向上に適した燃料電池発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る燃料電池発電システムを示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る燃料電池発電システムの燃料電池スタックを示す概略分解斜視図である。
図3】他の形態に係る燃料電池発電システムを示す概略構成図である。
図4】本実施形態に係る燃料電池発電システムのシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1を参照しながら、本発明の一例である実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る燃料電池発電システムを示す概略構成図である。
【0028】
〔燃料電池発電システム〕
本発明の一実施形態に係る燃料電池発電システム1は、改質器5(第1の改質器)と、二酸化炭素除去装置6(第2の二酸化炭素除去装置)と、第1の燃料電池スタック7と、改質器8(第2の改質器)と、二酸化炭素除去装置9(第1の二酸化炭素除去装置)と、第2の燃料電池スタック10とを上流側からこの順番になるように備えている。これら各構成は、図1に示すように、炭化水素燃料主供給管2、炭化水素燃料副供給管3(第1の炭化水素燃料供給管)、改質水供給管4、改質ガス供給管11、及び排出ガス供給管12(第1の排出ガス供給管)を介して接続されている。
【0029】
本発明の一実施形態に係る燃料電池発電システム1で用いる炭化水素燃料としては、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、石炭改質ガスや、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられる。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスを含む天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。
【0030】
炭化水素燃料主供給管2は、炭化水素燃料を供給する炭化水素供給手段(図示せず)と、改質器5とを連通しており、炭化水素燃料を改質器5に供給するための配管である。また、炭化水素燃料主供給管2には、炭化水素供給手段と改質器5との間で分岐した炭化水素燃料副供給管3が接続されている。炭化水素燃料副供給管3は、炭化水素燃料主供給管2から分岐するとともに、改質器8と下流側にて接続している。
【0031】
炭化水素燃料主供給管2及び炭化水素燃料副供給管3には、炭化水素燃料の流量を制御する流量制御バルブV1、V2がそれぞれ設けられている。
【0032】
改質器5は、供給された炭化水素燃料を水蒸気改質することによって、一酸化炭素及び水素を含む改質ガスを生成するためのものである。また、改質器5は、第1の燃料電池スタック7の上流に配置され、炭化水素燃料主供給管2及び改質水供給管4と接続されている。
【0033】
改質水供給管4は、改質器5と接続しており、改質水を改質器5に供給するための配管である。また、改質水供給管4には、改質水の流量を制御する流量制御バルブV3が設けられている。
【0034】
改質器5は、例えば、バーナあるいは燃焼触媒を配置した燃焼部と改質用触媒を充填した改質部とにより構成される。改質部には、例えばアルミナ等の担体にNi、Ru等の金属を担持した改質用触媒が充填される。
【0035】
改質部で起こる水蒸気改質は大きな吸熱を伴うので、反応の進行のためには外部から熱の供給が必要であり、600℃以上、特に700〜800℃程度の温度を供給することが好ましい。そのため、燃焼部で発生する燃焼熱により改質部を加熱することが好ましい。あるいは、燃料電池スタックから放出される熱を用いて加熱してもよい。
【0036】
炭化水素燃料の一例であるメタンを水蒸気改質させた場合、改質器5の内部において、以下の式(1)の反応により、主に一酸化炭素及び水素が生成される。
【0037】
(式1)
CH+HO→CO+3H・・・・(1)
【0038】
また、上記式(1)に従い生成された一酸化炭素は、改質水とさらに反応することで、以下の式(2)に示すように、二酸化炭素及び水素が生成される。
【0039】
(式2)
CO+HO→CO+H・・・・(2)
【0040】
改質ガス供給管11は、改質器5と第1の燃料電池スタック7とを連通し、改質器5で生成される改質ガスを第1の燃料電池スタック7に供給するための配管である。
【0041】
二酸化炭素除去装置6は、改質ガス供給管11(改質器5と第1の燃料電池スタック7との間)に配置され、改質ガス中の二酸化炭素を除去するための装置である。
【0042】
二酸化炭素除去装置6を改質ガス供給管11に接続することにより、改質ガスが第1の燃料電池スタック7に供給される前に、改質ガス中の二酸化炭素が除去される。よって、炭化水素燃料の水蒸気改質で二酸化炭素が生じた場合であっても、二酸化炭素を好適に除去することができ、第1の燃料電池スタック7に供給される改質ガス中の酸素濃度を小さくすることができる。その結果、第1の燃料電池スタック7にて燃料極側の酸素分圧を小さくして、燃料極側と空気極側との酸素分圧差を大きくすることができ、燃料電池発電システム1での起電力をより向上させることができる。
【0043】
二酸化炭素除去装置6としては、改質ガス中の二酸化炭素を分離、除去することができれば限定されないが、例えば、二酸化炭素を吸着、吸収するフィルターや二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収剤、二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去材などを含んでいるものが挙げられる。二酸化炭素を吸着、吸収するフィルターや二酸化炭素吸収剤、二酸化炭素除去材としては、例えば、化学吸着剤、物理吸着剤、多孔質セラミックフィルターなどが挙げられる。より具体的には、活性炭、ゼオライト、チタン酸二バリウム、珪酸リチウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物、リチウム化ジルコニアやリチウムシリケートなどが挙げられ、これらの材料を組み合わせたり、混合したりして用いてもよい。また、多孔質セラミックフィルターに対してより緻密な細孔を有する材料をコーティングしてもよい。コーティングの具体例としては、多孔質セラミックフィルターの細孔表面に対して、アミノ基系シランカップリング剤で修飾されたメソポーラスシリカやゼオライトなどをコーティングする方法が挙げられる。これにより、二酸化炭素の高い選択性を実現でき、好適に二酸化炭素を分離、除去することができる。二酸化炭素除去装置6としては、市販のものを用いてもよく、例えば、日本碍子社製のサブナノセラミック膜フィルターを用いることができる。
【0044】
第1の燃料電池スタック7は、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備え、改質ガス供給管11及び排出ガス供給管12と接続している。第1の燃料電池スタック7は、改質ガス供給管11から供給された改質ガスと、空気極側に供給された酸素に由来する酸素イオンとを電気化学的に反応させて発電し、反応後の改質ガスは、排出ガスとして排出ガス供給管12に排出される。なお、燃料電池スタックの構成、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極の具体的な構成については、後に説明する。
【0045】
排出ガス供給管12は、第1の燃料電池スタック7及び第2の燃料電池スタック10に接続され、第1の燃料電池スタック7の燃料極側から排出される排出ガスを第2の燃料電池スタック10に供給するための配管である。さらに、排出ガス供給管12は、炭化水素燃料副供給管3と接続しており、その接続部分には、炭化水素燃料副供給管3より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質する改質器8が設けられている。
【0046】
改質器8は、炭化水素燃料副供給管3より供給される炭化水素燃料を、排出ガス供給管12を通じて送られる排出ガス中の水蒸気を用いて水蒸気改質するためのものである。改質器8の構成としては、前述した改質器5と同様であり、水蒸気改質に好ましい温度条件及び反応条件についても改質器5と同様である。なお、改質器8は、排出ガス供給管12と炭化水素燃料副供給管3との接続部分よりも下流に設けられていてもよい。
【0047】
二酸化炭素除去装置9は、排出ガス供給管12に接続され、第2の燃料電池スタック10に供給されるガス、すなわち、第1の燃料電池スタック7からの排出ガスを用いて改質器8で生成された改質ガス中の二酸化炭素を除去するための装置である。
【0048】
二酸化炭素除去装置9は、排出ガス供給管12と炭化水素燃料副供給管3との接続部分及び改質器8よりも下流に配置されている。これにより、第1の燃料電池スタック7からの排出ガスに含まれていた二酸化炭素、炭化水素燃料副供給管3より供給される炭化水素燃料中の二酸化炭素、及び改質器8での水蒸気改質により生じた二酸化炭素を除去することができる。二酸化炭素を除去することにより、第2の燃料電池スタック10に供給されるガス中の酸素濃度を小さくし、その結果、燃料極側の酸素分圧を下げることができる。よって、第2の燃料電池スタック10にて燃料極側と空気極側との酸素分圧差を大きくすることができ、燃料電池発電システム1での起電力を向上させる。
【0049】
二酸化炭素除去装置9としては、改質ガス中の二酸化炭素を分離、除去することができれば限定されず、例えば、二酸化炭素除去装置6と同様の構成であってもよい。
【0050】
第2の燃料電池スタック10は、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備え、排出ガス供給管12と接続している。第2の燃料電池スタック10は、排出ガス供給管12から供給された排出ガスと、空気極側から供給された酸素に由来する酸素イオンとを電気化学的に反応させて発電する。反応後の排出ガスは、第2の燃料電池スタック10外に排気してもよく、あるいは、後述するように、別の燃料電池スタックに供給して発電を行なってもよい。
【0051】
以下、第1の燃料電池スタック7の構造について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る燃料電池発電システム1の第1の燃料電池スタック7を示す概略分解斜視図である。第1の燃料電池スタック7は、固体酸化物電解質202、燃料極204、及び空気極206を有する単電池208を複数備えている。なお、第2の燃料電池スタック10の構造についても第1の燃料電池スタック7と同様であるため、その説明は省略する。
【0052】
第1の燃料電池スタック7は、複数の単電池208を有するスタック本体と共に、第1の燃料電池スタック7内部において、各単電池208の燃料極204と改質ガス供給管11(図示せず)とが接続しており、各単電池208の燃料極204と排出ガス供給管12(図示せず)とが接続している。また、第1の燃料電池スタック7では、各単電池208の空気極と酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給管(図示せず)とが接続しており、空気極側の排気ガスを排出する排出口(図示せず)が設けられている。
【0053】
第1の燃料電池スタック7の単電池208は、図2に示すように、層状の固体酸化物電解質202と、層状の固体酸化物電解質202の一方の面に接合された層状の燃料極204と、層状の固体酸化物電解質202の一方の面に接合された層状の空気極206と、の積層体で構成されている。そして、複数の単電池208は、インターコネクタ210を介して積層されている。つまり、複数の単電池208は、各々、一対のインターコネクタ210により挟まれた構造を有している。なお、図示しないが、各単電池208とインターコネクタ210とは外周縁部においてガスシール体を挟持した状態となっている。
【0054】
固体酸化物電解質202は、例えば、酸化物イオン電導性の固体酸化物の緻密体で構成されている。固体酸化物としては、例えば、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア等が挙げられる。安定化ジルコニアの具体例としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等が挙げられる。部分安定化ジルコニアの具体例としては、イットリア部分安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア部分安定化ジルコニア(ScSZ)等が挙げられる。また、固体酸化物としては、例えば、Sm、Gd等がドープされたセリア系酸化物;LaGaOを母体とし、LaとGaとの一部をそれぞれSr及びMgで置換したLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2(3−δ)等のペロブスカイト型酸化物;なども挙げられる。
【0055】
燃料極204は、アノードである。燃料極204では、酸素イオンと改質ガスの燃料とが反応して電子を放出する。燃料極204は、例えば、多孔質で、イオン伝導性が高く、かつ、高温において固体酸化物電解質202等と固体間反応を起こしにくいものであることが好ましい。燃料極204は、例えば、Ni、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)・ニッケル金属の多孔質サーメット、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)・ニッケル金属の多孔質サーメット等により構成されることが好ましい。燃料極204は、上記材料の2種以上を混合した混合材料により構成されていてもよい。
【0056】
空気極206は、カソードである。空気極206では、酸化剤ガスの酸素が電子を取り込んで、酸素イオンが形成される。空気極206は、例えば、多孔質で、電子伝導率が高く、かつ、高温において固体酸化物電解質202等と固体間反応を起こしにくいものであることが好ましい。空気極206は、例えば、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、Snをドープした酸化インジウム、PrCoO系酸化物、LaCoO系酸化物、LaMnO系酸化物等により構成されることが好ましい。LaMnO系酸化物の具体例としては、例えば、La0.8Sr0.2MnO(LSM)、La0.6Ca0.4MnO(LCM)等が挙げられる。空気極206は、上記材料の2種以上を混合した混合材料で構成されてもよい。
【0057】
インターコネクタ210には、燃料極204又は空気極206に対して電子の授受を行うため、電子伝導性の部材で構成されている。そして、インターコネクタ210は、燃料極204と対向する側の面側に改質ガスを供給するための改質ガス流路形成溝210Aと、空気極206と対向する面側に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路形成溝210Bと、が形成されている。改質ガス流路形成溝210Aと酸化剤ガス流路形成溝210Bとは、例えば、互いに交差する方向に沿って形成されている。改質ガス流路形成溝210Aは、インターコネクタ210が燃料極204に密着配置することで、燃料極204に改質ガスを供給するための改質ガス流路として機能する。一方、酸化剤ガス流路形成溝210Bは、インターコネクタ210が空気極206に密着配置することで、空気極206に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路として機能する。
【0058】
インターコネクタ210の構成材料は、特に限定されない。インターコネクタ210は、一般的には合金を用いる。例えば、SUS310S、ZMG232(日立金属株式会社製)が挙げられる。インターコネクタ210の構成材料としては、電子伝導性を持つ酸化物でもよく、具体的には、LaCrO系酸化物の緻密体でもよい。
【0059】
次に、単電池208で起こる電気化学反応について説明する。まず、単電池208の空気極206には、酸素を含む酸化剤ガスが供給されることにより、以下の式(3)に示す反応が起こり、その際、酸素イオンが固体酸化物電解質202の内部を移動する。
【0060】
(式3)
+4e→2O2−・・・・(3)
【0061】
また、燃料極204には、一酸化炭素及び水素を含む改質ガスが供給され、固体酸化物電解質202の内部を移動する酸素イオンから燃料極204と固体酸化物電解質202との界面にて電子を受け取ることにより、以下の式(4)に示す反応が起こる。
【0062】
(式4)
CO+3H+4O2−→CO+3HO+8e・・・・(4)
【0063】
上記式(4)に示すような、単電池での改質ガスの電気化学的な反応により、主に二酸化炭素及び水蒸気が生成され、発電が行なわれる。
【0064】
(発電方法)
本発明の燃料電池発電システムを用いた発電方法の一実施形態について、以下に説明する。まず、本実施形態に係る燃料電池発電システム1では、炭化水素燃料主供給管2に改質前の炭化水素燃料(例えば、メタンガスなど)が供給される。また、改質水供給管4に改質水(例えば、水道水など)が供給される。そして、改質器5に炭化水素燃料及び改質水が供給される。なお、炭化水素燃料主供給管2と改質水供給管4とを接続させて、改質器5に炭化水素燃料及び改質水を供給してもよい。この場合、気化器で改質水を気化して水蒸気とした後、炭化水素燃料と水蒸気とを混合し、この混合ガスを改質器5に供給することが好ましい。
【0065】
改質器5では、炭化水素燃料が水蒸気改質により、水素、一酸化炭素等を含む改質ガスが生成される。改質ガスには、改質反応の結果生じた二酸化炭素も含まれる。生成した改質ガスは、改質ガス供給管11を通じて二酸化炭素除去装置6へ供給される。
【0066】
二酸化炭素除去装置6では、改質ガス中の二酸化炭素が分離、除去されるため、改質ガス中の酸素濃度が減少する。そして、二酸化炭素が分離、除去された改質ガスは、改質ガス供給管11を通じて第1の燃料電池スタック7の燃料極へ供給される。
【0067】
また、酸化剤ガスとして空気などの酸素含有ガスは、酸化剤ガス供給管(図示せず)を通じて第1の燃料電池スタック7の空気極へ供給される。酸化剤ガスは、熱交換器により、例えば650℃以上1000℃以下まで昇温されている。
【0068】
第1の燃料電池スタック7では、供給された改質ガスと酸化剤ガスとにより発電が行われる。具体的には、酸化剤ガスが空気極に到達すると、上記式(3)に示すように、酸化剤ガスの酸素が電子を取り込んで酸素イオンが生成する。そして、生成した酸素イオンは固体酸化物電解質を通じて燃料極側へ移動する。一方、改質ガスが燃料極へ到達すると、上記式(4)に示すように、改質ガス中の一酸化炭素及び水素が固体酸化物電解質を通じて移動した酸素イオンと反応して電子を放出する。
【0069】
発電に使用された改質ガスは、排出ガスとして第1の燃料電池スタック7の燃料極側から排出され、排出ガス供給管12に供給される。排出ガスには、発電により生じた二酸化炭素及び水蒸気が含まれている。一方、発電に使用された酸化剤ガスは、排出ガスとして第1の燃料電池スタック7から排出され、熱交換器により新たに供給される酸化剤ガスに熱交換される。
【0070】
次に、排出ガス供給管12を通じて改質器8に水蒸気を含む排出ガスが供給される。また、流量制御バルブV2を開くことにより、炭化水素燃料副供給管3を通じて改質器8に炭化水素燃料(例えば、メタンガスなど)が供給される。
【0071】
改質器8では、炭化水素燃料が水蒸気改質により、水素、一酸化炭素等を含むガスが生成される。生成されたガスには、第1の燃料電池スタック7から排出された二酸化炭素、及び、改質反応の結果生じた二酸化炭素も含まれる。生成されたガスは、排出ガス供給管12を通じて二酸化炭素除去装置9へ供給される。
【0072】
ここでは、第1の燃料電池スタック7から排出された排出ガス中の水蒸気を使用して水蒸気改質を行なっているため、改質水を外部より改質器8へ供給する必要がない。これにより、第2の燃料電池スタック10に供給されるガス中の酸素濃度を下げることができる。
【0073】
二酸化炭素除去装置9では、生成されたガス中の二酸化炭素が分離、除去される。これにより、ガス中の酸素濃度がさらに減少する。二酸化炭素が分離、除去されたガスは、排出ガス供給管12を通じて第2の燃料電池スタック10の燃料極へ供給される。そして、第1の燃料電池スタック7と同様、供給されたガスと酸化剤ガスとにより発電が行われる。
【0074】
発電に使用されたガスは、排出ガスとして第2の燃料電池スタック10から排出されるが、この排出ガスは排出ガス供給管に供給して別の燃料電池スタックでの発電に再度使用してもよく、外部に排出してもよい。
【0075】
(発明の作用及び効果)
燃料電池発電システム1は、供給された炭化水素燃料を改質器5にて水蒸気改質を行ない、主に一酸化炭素及び水素を含有する改質ガスに改質した後、水蒸気改質により生成される二酸化炭素、及び、第1の燃料電池スタック7からの排出ガス中の二酸化炭素を二酸化炭素除去装置6にて除去する。そして、二酸化炭素を除去した改質ガスを第1の燃料電池スタック7に供給し、発電を行なう。これにより、第1の燃料電池スタック7に供給される改質ガス中の酸素濃度を小さくすることができ、第1の燃料電池スタック7にて燃料極側と空気極側とでより大きな酸素分圧差が生じる。その結果、燃料電池発電システム1での起電力を向上させることができ、より発電効率を向上させることができる。
【0076】
次に、炭化水素燃料副供給管3より炭化水素燃料を供給し、第1の燃料電池スタック7から排出された排出ガス中の水蒸気を用いて、改質器8にて水蒸気改質を行ない、一酸化炭素及び水素を生成する。一酸化炭素及び水素を含むガスを第2の燃料電池スタック10に供給し、発電を行なう。これにより、第1の燃料電池スタック7から排出された排出ガス中の水蒸気を用いて改質し、改質により生成された一酸化炭素及び水素を第2の燃料電池スタック10での発電に用いているため、燃料電池発電システム1に供給する改質水の量を削減することができる。そして、燃料を分配せずに供給する場合よりも、第2の燃料電池スタック10に供給されるガスに含まれる酸素濃度を小さくすることができる。
【0077】
また、第1の燃料電池スタック7から排出された排出ガスに含まれる二酸化炭素、及び、改質器8での水蒸気改質により生じた二酸化炭素を二酸化炭素除去装置9にて除去した後、一酸化炭素及び水素を含むガスを第2の燃料電池スタック10に供給する。これにより、第2の燃料電池スタック10に供給されるガスに含まれる酸素濃度を小さくすることができるため、第2の燃料電池スタック10にて燃料極側と空気極側とでより大きな酸素分圧差が生じる。その結果、燃料電池発電システム1での起電力を向上させることができ、さらに発電効率を向上させることができる。
【0078】
〔他の形態1〕
本発明に係る燃料電池発電システムは、上述した燃料電池発電システム1の構成に限定されず、他の形態であってもよい。例えば、本発明に係る燃料電池発電システムでは、改質器が第1の燃料電池スタック又は第2の燃料電池スタックの外部に取り付けられている必要はなく、各燃料電池スタックの内部で水蒸気改質(内部改質)を行なう構成であってもよい。燃料電池スタック内部での反応温度は700℃〜1000℃と高温であるため、燃料極を構成するニッケルの触媒作用によって、電池内で水蒸気改質を行なうことが可能である。
【0079】
〔他の形態2〕
本発明に係る燃料電池発電システムでは、二酸化炭素除去装置9(第1の二酸化炭素除去装置)が改質器8(第2の改質器)よりも下流に配置されている上記構成に限定されず、第1の二酸化炭素除去装置が第2の改質器よりも上流に配置されていてもよい。これにより、第2の改質器の後段における第1の排出ガス供給管に炭素が析出する炭素析出を抑制することができ、その結果、第1の排出ガス供給管の詰まりを抑制することができる。第1の二酸化炭素除去装置を第2の改質器の前に配置した場合であっても、第1の燃料電池スタックからの排出ガス中の二酸化炭素を除去するため、第2の燃料電池スタックに供給されるガス中の酸素濃度を好適に小さくすることができ、燃料電池発電システムの起電力向上に寄与する。
【0080】
また、第1の排出ガス供給管と第1の炭化水素燃料供給管との接続部分に第2の改質器が設けられている必要はなく、第2の改質器は接続部分よりも下流に設けられていてもよい。このとき、第1の排出ガス供給管と第1の炭化水素燃料供給管との接続部分よりも上流に第1の二酸化炭素除去装置を設置するか、あるいは、接続部分よりも下流に第1の二酸化炭素除去装置を設置するかは、第1の二酸化炭素除去装置内の二酸化炭素を吸着するフィルターや二酸化炭素吸収剤の性質によって適宜定めればよい。メタン及び二酸化炭素を吸着する材料、例えば、リチウム化ジルコニアなどの二酸化炭素吸収剤を第1の二酸化炭素除去装置にて採用する場合、接続部分よりも上流に第1の二酸化炭素除去装置を設けることが好ましい。
【0081】
〔他の形態3〕
本発明に係る燃料電池発電システムが備える燃料電池スタックは、第1の燃料電池スタック及び第2の燃料電池スタックの二つに限定されず、図3に示すように、三つ以上であってもよい。図3は、他の形態に係る燃料電池発電システムを示す概略構成図である。
【0082】
他の形態に係る燃料電池発電システム100では、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第(n−1)の燃料電池スタック17(nは3以上の整数)よりも下流に配置され、固体酸化物電解質、燃料極、及び空気極を備える第nの燃料電池スタック20と、第(n−1)の燃料電池スタック17及び第nの燃料電池スタック20に接続され、第(n−1)の燃料電池スタック17の燃料極側から排出される排出ガスを第nの燃料電池スタック20に供給する排出ガス供給管22と、排出ガス供給管22に接続されており、排出ガス供給管22を介して、炭化水素燃料を第nの燃料電池スタック20に供給する炭化水素燃料副供給管13と、排出ガス供給管22に接続され、第nの燃料電池スタック20に供給される少なくとも排出ガス中の二酸化炭素を除去する第nの二酸化炭素除去装置19と、をさらに備える。炭化水素燃料副供給管13には、炭化水素燃料の流量を調整する流量制御バルブVが設けられている。
【0083】
この燃料電池発電システム100では、第(n−1)の燃料電池スタック17の燃料極側から排出される排出ガスを、炭化水素燃料副供給管13から供給される炭化水素燃料とともに、排出ガス供給管22を介して第nの燃料電池スタック20に供給する。したがって、第(n−1)の燃料電池スタック17の燃料極側から排出される排出ガス中の水蒸気を使用し、炭化水素燃料副供給管13から供給される炭化水素燃料を改質することができるため、システム全体として燃料極側の酸素濃度を減少させることができる。したがって、発電効率をより向上させることができる。
【0084】
さらに、第(n−1)の燃料電池スタック17の燃料極側から排出される排出ガスを第nの燃料電池スタック20に供給する前に、当該排出ガス中に含まれる二酸化炭素は第nの二酸化炭素除去装置19で除去されるため、第nの燃料電池スタック20の燃料極に供給される排出ガス中の酸素濃度は少なくなる。よって、第nの燃料電池スタック20にて燃料極側と空気極側とでより大きな酸素分圧差が生じるため、燃料電池発電システム100での起電力を向上させることができ、さらに発電効率を向上させることができる。
【0085】
さらに、燃料電池発電システム100には、排出ガス供給管22に接続され、かつ、排出ガス供給管22と炭化水素燃料副供給管13との接続部分に、改質器18(第nの改質器)が設けられている。これにより、炭化水素燃料副供給管13より供給される炭化水素燃料を水蒸気改質して水蒸気改質反応を促進することができ、第nの燃料電池スタック20にて効率的な発電が可能となる。なお、改質器は、接続部分よりも下流に配置されていてもよい。
【0086】
例えば、n=5の場合、図1の構成に加えて、第2の燃料電池スタック10よりも下流に、第3の改質器、第3の二酸化炭素除去装置、第3の燃料電池スタックがこの順番に配置され、これらは第2の排出ガス供給管でそれぞれ接続され、第3の改質器に炭化水素燃料を供給する第2の炭化水素燃料供給管が接続されている。さらに、第3の燃料電池スタックよりも下流では、第4の改質器、第4の二酸化炭素除去装置、第4の燃料電池スタック、第5の改質器、第5の二酸化炭素除去装置、第5の燃料電池スタックがこの順番に配置され、第3の燃料電池スタックから第4の燃料電池スタックまでは第3の炭化水素燃料供給管で接続され、第4の燃料電池スタックから第5の燃料電池スタックまでは第4の炭化水素燃料供給管で接続されている。また、第4の改質器に炭化水素燃料を供給する第3の炭化水素燃料供給管が接続され、第5の改質器に炭化水素燃料を供給する第4の炭化水素燃料供給管が接続されている。
【0087】
上記n=5の場合、燃料電池スタックが5つ設けられることになり、より上流に配置された燃料電池スタックの燃料極側から排出される排出ガス及び各炭化水素燃料供給管から供給される炭化水素燃料を用いて発電を行なっている。これにより、排出ガス中に含まれる水蒸気を用いた効率的な発電が可能となる。
【0088】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0089】
〔シミュレーション結果〕
以下、図4を用いて、本実施形態に係る燃料電池発電システムのシミュレーション結果を説明する。図4は、n=2とし、第1の燃料電池スタックに対して、S/C(スチームカーボン比)=2.5と固定し、第1、2の燃料電池スタックの燃料利用率をそれぞれ75%とした場合の第2の燃料電池スタックにおける開回路電圧(OCV)上昇を計算した結果を示したものである。なお、図4では、二酸化炭素除去装置がない場合のOCVと、二酸化炭素除去装置がある場合のOCV(OCV w COfilter)とを比較している。また、このシミュレーションでは、理想的な環境として二酸化炭素除去装置にてすべての二酸化炭素が除去されたものと仮定している。シミュレーション結果では、炭素析出が発生しない条件で、第1の燃料電池スタックにできるだけ少ない燃料を流した場合に最も出力が大きくなった。そのときの発電効率は1ポイント上昇した。
【符号の説明】
【0090】
1、100 燃料電池発電システム
2 炭化水素燃料主供給管
3、13 炭化水素燃料副供給管(第1の炭化水素燃料供給管、第(n−1)の炭化水素燃料供給管)
4 改質水供給管
5 改質器(第1の改質器)
6 二酸化炭素除去装置(第2の二酸化炭素除去装置)
7 第1の燃料電池スタック
8 改質器(第2の改質器)
9 二酸化炭素除去装置(第1の二酸化炭素除去装置)
10 第2の燃料電池スタック
11 改質ガス供給管
12、22 排出ガス供給管(第1の排出ガス供給管、第(n−1)の排出供給管)
17 第(n−1)の燃料電池スタック
18 改質器(第nの改質器)
19 二酸化炭素除去装置(第nの二酸化炭素除去装置)
20 第nの燃料電池スタック
V1、V2、V3、V 流量制御バルブ
202 固体酸化物電解質
204 燃料極
206 空気極
208 単電池
210 インターコネクタ
210A 改質ガス流路形成溝
210B 酸化剤ガス流路形成溝
図1
図2
図3
図4