【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
<絶縁性樹脂組成物の製造>
(
参考例1)
絶縁性樹脂組成物の製造には以下の原料を用いた。
(A)エポキシ樹脂:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、DIC社製、「EPICLON 850CRP」
(B)エポキシ樹脂硬化剤:芳香族アミン、日本合成化工社製、「H−48B」
(C)ビスアリルナジイミド:丸善石油化学社製、「BANI−M」(化1のRが4,4’−ジフェニルメチル基である)
(D)無機フィラー粗粉:窒化アルミ(電気化学工業社製、平均粒子径16μm、最大粒子径70μm、1〜20μmの粒子含有量65体積%)
(D)無機フィラー微粉:窒化ケイ素(電気化学工業社製、平均粒子径1.0μm、2.0μm以下の粒子含有量94体積%)
(D)無機フィラー微粉:酸化アルミ(住友化学社製、「AA05」、平均粒子径0.5μm、2.0μm以下の粒子含有量99体積%)
(その他)シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング社製、「z−6040」)
【0029】
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂19質量部に、芳香族アミン6質量部、ビスアリルナジイミド75質量部、シランカプリング剤1.0質量部を加えた。次に絶縁性樹脂組成物中の添加量がそれぞれ54体積%、8体積%、12体積%となるよう、窒化アルミ、窒化ケイ素および酸化アルミニウムを加え、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR−250」、回転数2000rpm)にて混練し、絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0030】
参考例1で用いた原料および得られた絶縁性樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表3に示す。
[平均粒子径および粒度分布]
無機フィラーの平均粒子径は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−200」を用いて測定を行った。試料は、ガラスビーカーに50ccの純水と無機フィラーを5g添加して、スパチュラを用いて撹拌し、その後超音波洗浄機で10分間、分散処理を行った。分散処理を行った無機フィラーの分散積をスポイドで装置のサンプラ部に一滴ずつ添加して、吸光度が測定可能になるまで安定するのを待った。吸光度が安定になった時点で測定を行った。レーザー回折式粒度分布測定装置では、センサで検出した粒子による回折/散乱光の光強度分布のデータから粒度分布を計算した。平均粒子径は測定される粒子径の値に相対粒子量(差分%)を乗じて、相対粒子量の合計(100%)で割って求めた。平均粒子径は粒子の平均直径を示す。
【0031】
[粘度比]
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂19質量部と芳香族アミン6質量部を、ホモミキサーにて1分間混合した。得られた試料を、レオメーター(日本シイベルヘグナー社製「MCR−301」)を用い下記条件にて粘度を測定した。
プレート形状:円形平板25mmφ
試料厚み:0.1mm
ノーマルフォーカス:ON
温度:100±1℃
剪断速度:0.1S
−1
ビスアリルナジイミド単体についても、温度:100±1℃、剪断速度:0.1S
−1での粘度測定を実施し、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤の混合物に対する、ビスアリルナジイミドの粘度比を求めた。
【0032】
[反応ピーク温度]
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂19質量部と芳香族アミン6質量部を、ホモミキサーにて1分間混合した。得られた試料を、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q2000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温〜400℃まで昇温させ、得られた曲線のピークトップ温度を反応ピーク温度とした。
ビスアリルナジイミド単体についても、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分にて室温〜400℃まで昇温し、反応ピーク温度を求めた。
【0033】
[質量減少率]
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂19質量部、芳香族アミン6質量部およびビスアリルナジイミド(BANI−M)を、ホモミキサーにて1分間混合した。得られた試料を、示差熱天秤(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q5000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温〜400℃まで昇温させ、室温に対する400℃における質量減少率を測定した。
【0034】
[熱伝導率]
熱伝導率は、得られた絶縁性樹脂組成物の硬化体を作成し、熱拡散率、比重、比熱を全て乗じて算出した。熱拡散率は、試料を幅10mm×10mm×厚み1mmに加工し、レーザーフラッシュ法により求めた。測定装置はキセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製LFA447 NanoFlash)を用いた。比重はアルキメデス法を用いて求めた。比熱は、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q2000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温〜400℃まで昇温させて求めた。結果を表3に示す。
【0035】
[ピール強度]
2枚の厚さ0.6mmの銅箔を、厚さ0.1mmの絶縁性樹脂組成物で接着し硬化体を作製した。硬化条件は、200℃で8時間とした。接着した銅箔を10mm×100mmに切り出し、JIS C 6481に規定された方法に従い、23±2℃、相対湿度50%の条件で銅箔と絶縁性樹脂組成物とのピール強度を測定した。なお、測定は5回繰り返し、その算術平均値をピール強度とした。
【0036】
[耐電圧]
絶縁性樹脂組成物を用い、厚さ35μmの銅箔と厚さ1.5mmのAl板を接着し金属ベース基板を得た。さらに銅箔の所定の位置をエッチングレジストでマスキングした後、エッチングレジストを除去して金属ベース回路基板を形成した。得られた金属ベース回路基板を用い、JIS C 2110に規定された方法に従い、耐電圧を測定した。
【0037】
(実施例2〜5)
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、芳香族アミンおよびビスアリルナジイミドの配合量を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0038】
(実施例6)
微粉として窒化ケイ素20体積%を絶縁性樹脂組成物に配合した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0039】
(実施例7)
微粉として酸化アルミ20体積%を絶縁性樹脂組成物に配合した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0040】
(実施例8)
微粉として窒化アルミ(トクヤマ社製、「トクヤマH」、平均粒子径1.0μm、2.0μm以下の粒子含有量90体積%)20体積%を絶縁性樹脂組成物に配合した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0041】
(実施例9)
絶縁性樹脂組成物中の粗粉として窒化アルミ36.1体積%、微粉として窒化ケイ素5.3体積%、酸化アルミ8.6体積%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0042】
(実施例10)
絶縁性樹脂組成物中の粗粉として窒化アルミ57.7体積%、微粉として窒化ケイ素8.5体積%、酸化アルミ13.8体積%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0043】
(実施例11)
絶縁性樹脂組成物中のビスアリルナジイミドを、丸善石油化学社製、「BANI−X」(化1に示すRの構造がメタ−キシリル基である)へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0044】
(実施例12)
絶縁性樹脂組成物中のエポキシ樹脂を53質量%、エポキシ樹脂硬化剤として、イミダゾール系硬化剤:四国化成社製、「2E4MZ」4質量%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0045】
(実施例13)
絶縁性樹脂組成物中のエポキシ樹脂を38質量%、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノールノボラック系硬化剤:DIC社製、「TD−2131」19質量%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0046】
(比較例1)
絶縁性樹脂組成物中のエポキシ樹脂硬化剤として、フェノールノボラック系硬化剤21質量%へ、ビスアリルナジイミドを「BANI−X」へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0047】
(比較例2)
絶縁性樹脂組成物中のエポキシ樹脂を38質量%、エポキシ樹脂硬化剤として、脂肪族アミン:三井化学ファイン社製、「D400」19質量%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0048】
(比較例3)
ビスアリルナジイミドを使用せず、樹脂成分としてエポキシ樹脂75質量%、芳香族アミン25質量%とした以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0049】
(比較例4)
エポキシ樹脂、および硬化剤を使用せず、樹脂成分としてビスアリルナジイミドのみを用いた以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0050】
(比較例5)
微粉を使用しなかった以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。なお、微粉を使用しなかった分は、粗粉を増量し、実施例3の無機フィラー量と同じ74体積%にそろえた。
【0051】
(比較例6)
粗粉を使用しなかった以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。なお、粗粉を使用しなかった分は、微粉を増量し、実施例3の無機フィラー量と同じ74体積%にそろえた。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
表3および表4の結果から、本発明の絶縁性樹脂組成物は加熱時の質量減少が低いことが示される。また、
表1〜表4の結果から、実施例の絶縁性樹脂組成物を用いた硬化体は、熱伝導性およびピール強度に優れることが分かった。さらに、実施例の絶縁性樹脂組成物により作製した金属ベース回路基板は、耐電圧特性に優れることが分かった。
【0057】
以上の結果は、実施例で用いた金属ベース回路基板の他、混成集積回路に関しても同様であった。