特許第6061904号(P6061904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061904絶縁性樹脂組成物、その硬化体及びそれを用いた混成集積回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061904
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】絶縁性樹脂組成物、その硬化体及びそれを用いた混成集積回路
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/18 20060101AFI20170106BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20170106BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170106BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C08G59/18
   C08L63/00 C
   C08K3/00
   C08K5/3417
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-189664(P2014-189664)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-60822(P2016-60822A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2015年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮田 建治
(72)【発明者】
【氏名】本間 紗央
(72)【発明者】
【氏名】木元 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 和幸
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−082626(JP,A)
【文献】 特開2009−164093(JP,A)
【文献】 特開平09−100394(JP,A)
【文献】 特開2011−241279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 63/00−63/10
C08K 3/00−3/40
C08K 5/16−5/357
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ樹脂硬化剤と、(C)化1で示されるビスアリルナジイミドと、(D)無機フィラーを含有する絶縁性樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂硬化剤と(C)ビスアリルナジイミドの添加量の和に対し、(C)ビスアリルナジイミドが15〜64質量%であり、
(A)エポキシ樹脂と(C)ビスアリルナジイミドの反応ピーク温度の差が85〜205℃であり、
(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂硬化剤の混合物に対する、(C)ビスアリルナジイミドの100℃、ずり速度0.1s−1における粘度比が15〜270であり、
(D)無機フィラーが平均粒子径の異なる2種類以上の無機フィラーであり、
(D)無機フィラーが(D−1)平均粒子径が5〜50μmの粗粉と、(D−2)平均粒子径が0.2〜1.5μmの1種類以上の微粉を含有し、
(D−1)粗粉の最大粒子径が100μm以下で、且つ粒子径1〜20μmの粒子を粗粉中に50体積%以上含有し、
(D−2)微粉の2.0μm以下の粒子が微粉中に70体積%以上であり、
さらに、絶縁性樹脂組成物中の(D−1)粗粉の体積分率が35〜70体積%、(D−2)微粉の体積分率が5〜25体積%である、絶縁性樹脂組成物。
【化1】

化1で表される構造単位において、Rは4,4’−ジフェニルメチル基、メタ−キシリル基およびヘキサメチレン基から選択される1種を示す。
【請求項2】
(D−1)粗粉が窒化アルミである、請求項に記載の絶縁性樹脂組成物。
【請求項3】
(D−2)微粉が、窒化アルミ、窒化ケイ素および酸化アルミニウムから選択される1種以上である、請求項1または2に記載の絶縁性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂組成物を硬化させてなる絶縁性樹脂硬化体。
【請求項5】
熱伝導率が1.5〜8W/mKである、請求項に記載の絶縁性樹脂硬化体。
【請求項6】
金属基板上に、請求項またはに記載の絶縁性樹脂硬化体を介して金属箔を配置した、混成集積回路用の基板。
【請求項7】
請求項に記載の金属箔を加工して回路を形成した、混成集積回路基板。
【請求項8】
請求項に記載の混成集積回路基板に電子部品を搭載した、混成集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性樹脂組成物、その硬化体及びそれを用いた混成集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型化や実装時の省力化などを可能にする表面実装を実現するために、各種の回路基板が用いられており、これらの回路基板に各種の表面実装電子部品を搭載した混成集積回路が用いられている。特に、高発熱性電子部品を実装する回路基板として、金属板上に無機充填材を充填したエポキシ樹脂等からなる絶縁層を設け、該絶縁層上に回路を設けた混成集積回路が用いられている。
【0003】
しかし、近年、混成集積回路の小型化が要求され、高密度実装化および高性能化が要求され、更には、混成集積回路の小型化、ハイパワー化により、狭いスペースの中で、混成集積回路から発生した熱を如何に放熱するかが問題となっている。
【0004】
そこで、特許文献1には、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機フィラーが必須成分とする絶縁接着フィルムが開示されている。しかし、本方法では、樹脂が何れも固形、もしくは高粘度であるため、無機フィラーの高充填化が難しく、高熱伝導化が課題であった。
【0005】
特許文献2には、有機溶剤可溶性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、無機フィラーを必須成分とする樹脂組成物の発明が開示されている。しかし、本方法では、ブレンドする樹脂の硬化物性が近い為、大きな熱伝導率が得られないとの課題があった。また、ポリイミド樹脂を用いた樹脂組成物は、回路箔に対する接着性に乏しく、且つ高温での加熱硬化を必要とし、その際に逆反応(逆Diels−Alder反応)による揮発成分が生じる課題が有った。さらに、耐熱性を高めるためのエポキシ樹脂を用いる場合、殆どが室温で固形であることから高温させる必要があり、絶縁強度や、ピール強度が低下する課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−319823号公報
【特許文献2】特開2008−94870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題と実状に鑑み、硬化時の耐熱性、熱電導性、耐電圧特性および接着性に優れた絶縁性樹脂組成物を提供することを目的とする。さらに、この絶縁性樹脂組成物を用いて製造される、混成集積回路基板、混成集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ樹脂硬化剤と、(C)化1で示されるビスアリルナジイミドと、(D)無機フィラーを含有する絶縁性樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂硬化剤と(C)ビスアリルナジイミドの添加量の和に対し、(C)ビスアリルナジイミドが15〜64質量%であり、
(A)エポキシ樹脂と(C)ビスアリルナジイミドの反応ピーク温度の差が85〜205℃であり、
(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂硬化剤の混合物に対する、(C)ビスアリルナジイミドの100℃、ずり速度0.1s−1における粘度比が15〜270であり、
(D)無機フィラーが平均粒子径の異なる2種類以上の無機フィラーであり、
(D)無機フィラーが(D−1)平均粒子径が5〜50μmの粗粉と、(D−2)平均粒子径が0.2〜1.5μmの1種類以上の微粉を含有し、
(D−1)粗粉の最大粒子径が100μm以下で、且つ粒子径1〜20μmの粒子を粗粉中に50体積%以上含有し、
(D−2)微粉の2.0μm以下の粒子が微粉中に70体積%以上であり、
さらに、絶縁性樹脂組成物中の(D−1)粗粉の体積分率が35〜70体積%、(D−2)微粉の体積分率が5〜25体積%である、絶縁性樹脂組成物。
【化1】

化1で表される構造単位において、Rは4,4’−ジフェニルメチル基、メタ−キシリル基およびヘキサメチレン基から選択される1種を示す。
)(D−1)粗粉が窒化アルミである、請求項に記載の絶縁性樹脂組成物。
)(D−2)微粉が、窒化アルミ、窒化ケイ素および酸化アルミニウムから選択される1種以上である、請求項1または2に記載の絶縁性樹脂組成物。
)請求項1〜のいずれか一項に記載の絶縁性樹脂組成物を硬化させてなる絶縁性樹脂硬化体。
)熱伝導率が1.5〜8W/mKである、請求項に記載の絶縁性樹脂硬化体。
)金属基板上に、請求項またはに記載の絶縁性樹脂硬化体を介して金属箔を配置した、混成集積回路用の基板。
)請求項に記載の金属箔を加工して回路を形成した、混成集積回路基板。
)請求項に記載の混成集積回路基板に電子部品を搭載した、混成集積回路。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、(A)エポキシ樹脂と(C)ビスアリルナジイミドの反応ピーク温度の差、(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂硬化剤の混合物に対する(C)ビスアリルナジイミドの粘度比が特定範囲にあり、かつ平均粒子径の異なる2種類以上の無機フィラーを用いることで、絶縁性樹脂組成物中の無機フィラーを高充填できることを見出し、熱伝導性および耐電圧特性を両立することができた。また、硬化時の耐熱性に優れるため硬化過程で熱分解した揮発分による絶縁性の低下を低減することができる。さらに、金属箔との接着性が良好であるため、本絶縁性樹脂組成物を用いた混成集積回路は長期耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<絶縁性樹脂組成物>
本発明の絶縁性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ樹脂硬化剤と、(C)化1で示されるビスアリルナジイミド樹脂と、(D)無機フィラーを含有する絶縁性樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂と(C)ビスアリルナジイミドの反応ピーク温度の差が85〜205℃であり、(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂硬化剤の混合物に対する、(C)ビスアリルナジイミドの100℃、ずり速度0.1s−1における粘度比が15〜270であり、(D)無機フィラーが平均粒子径の異なる2種類以上の無機フィラーである、絶縁性樹脂組成物である。
【化1】


化1で表される構造単位において、Rは4,4’−ジフェニルメチル基、メタ−キシリル基およびヘキサメチレン基から選択される1種を示す。
【0011】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂(クレゾールのボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等)、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中では、密着性および耐熱性に優れる、ビスフェノールA又はF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0012】
(B)硬化剤
エポキシ樹脂は硬化剤と反応させることで、硬化することができる。硬化剤としてはフェノール系樹脂、酸無水物系樹脂、芳香族アミン系樹脂、ジシアンジアミノからなる群から選ばれる1種類以上を用いることができる。これらの中では、基板を作製した際のピール強度および耐電圧の点で、芳香族アミンが好ましい。
【0013】
エポキシ樹脂に対する硬化剤の添加量は、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対して、硬化剤の活性水素当量(又は酸無水物当量)が0.01〜1.25になるように配合することが好ましい。
【0014】
(C)ビスアリルナジイミド
ビスアリルナジイミドは、化1に示す構造単位においてRは、4,4’−ジフェニルメチル基、メタ−キシリル基およびヘキサメチレン基から選択される1種を示である。これらの中では、Rはエポキシ樹脂との相溶性が良好な、化2に示す4,4’−ジフェニルメチル基であることが好ましい。
【化1】


【化2】

【0015】
ビスアリルナジイミドは、分子中のアリル基およびノルボルネン骨格の二重結合の付加反応で進行し、三次元架橋構造を形成する。絶縁樹脂組成物中のビスアリルナジイミドは、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、ビスアリルナジイミドの添加量の和に対し、15〜75質量%であることが好ましく、25〜64質量%であることがより好ましい。ビスアリルナジイミドの添加量が15質量%未満であると熱伝導性が低下する場合があり、75質量%を超えると加熱時の質量減少量が増加する場合がある。
【0016】
エポキシ樹脂とビスアリルナジイミドの反応ピークの温度差は、85〜205℃であり、115〜155℃であることがより好ましい。反応ピークの温度差が85℃未満の場合、熱伝導性が低下する場合がある。また、205℃を超えると、熱伝導性が低下する場合がある。なお、反応ピーク温度は、窒素雰囲気下、10℃/分で昇温した際の、示差走査熱量計(DSC)のピーク温度により求めることができる。
【0017】
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の混合物に対する、ビスアリルナジイミドの100℃、ずり速度0.1s−1における粘度比は15〜270であり、100〜267であることがより好ましい。粘度比が15未満の場合、熱伝導性が低下する場合がある。また、270を超えると銅箔と樹脂の接合強度(ピール強度)が低下する場合がある。なお、ずり速度は動的粘弾性測定装置により求めることができる。
【0018】
(D)無機フィラー
本発明の無機フィラーは平均粒子径の異なる2種類以上の無機フィラーを使用する。無機フィラーとしては、電気絶縁性に優れかつ熱伝導率の高いものが用いられ、例えば酸化アルミ、シリカ、窒化アルミ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの中では、熱伝導性の点で、窒化アルミ、窒化ケイ素、酸化アルミが好ましい。
【0019】
無機フィラーは、(D−1)平均粒子径が5〜50μm、より好ましくは10〜20μmの粗粉と、(D−2)平均粒子径が0.2〜1.5μm、より好ましくは0.5〜1.0μmの1種類以上の微粉を含有するのが好ましい。粗粉の平均粒子径が5μm未満の場合は、熱伝導性が低下する場合があり、平均粒子径が50μmを超えると、絶縁性が低下する場合がある。また、微粉の平均粒子径が0.2μm未満の場合は、絶縁性が低下する場合があり、1.5μmを超えると、絶縁性が低下する場合がある。無機フィラーとしては、粗粉が窒化アルミで、微粉が窒化アルミ、窒化ケイ素および酸化アルミニウムから選択される1種以上であることが好ましい。
【0020】
粗粉の最大粒子径は100μm以下で、かつ粒子径1〜20μmの粒子を粗粉中に50体積%以上含有することが好ましい。また、微粉の2.0μm以下の粒子が微粉中に70体積%以上であることが好ましい。
粗粉の最大粒子径が100μm以上であると絶縁性が低下する場合があり、微粉の2.0μm以下の粒子が70体積%未満であると、絶縁性が低下する場合がある。
【0021】
絶縁性樹脂組成物中の粗粉と微粉の体積分率は、粗粉が35〜70体積%、より好ましくは粗粉が35〜60体積%、微粉が5〜25体積%、より好ましくは微粉が10〜20体積%であることが好ましい。粗粉が35体積%未満であると、熱伝導性が低下する場合があり、70体積%を超えると絶縁性が低下する場合がある。また、微粉が5体積%未満であると、熱伝導性が低下する場合があり、25体積%を超えると絶縁性が低下する場合がある。
【0022】
<絶縁性樹脂組成物の硬化>
絶縁性樹脂組成物は、無機フィラーを除いた(A)エポキシ樹脂と、(B)エポキシ樹脂硬化剤と、(C)ビスアリルナジイミドの総和に対し、400℃に加熱した際の質量減少率が3質量%以下であることが好ましい。3質量%を超えると揮発成分が絶縁層内部の欠陥となり、絶縁性の低下を引き起こす場合がある。なお、質量減少率は、TG−DTA(示差熱天秤)により、試料を室温から400℃まで窒素雰囲気下で加熱したときの質量減少率を意味する。
【0023】
絶縁性樹脂組成物は、厚さ0.1〜5mmの金属基板上に塗布し、回路を形成する金属箔と重ね合わせた後、150〜240℃で5〜8時間加熱し硬化体を得ることができる。塗布は、ダイコーター、コンマコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビヤコーター、カーテンコーター、ドクターブレードコーター、スプレーコーターおよびスクリーン印刷等の方法を使用し塗布することができる。または、金属基板上に絶縁性樹脂組成物を塗布した後に加熱により半硬化させた後、絶縁性樹脂組成物の表面に金属箔とラミネートまたは熱プレスする方法が採用できる。さらには、絶縁性接着剤組成物をシート状に半硬化後、金属基板と金属箔を貼り合わせて硬化体を得ることもできる。
【0024】
硬化体の厚みは20〜150μmであることが好ましく、40〜125μmであることがより好ましい。厚みを20μm以上とすることで、耐電圧特性が良好となり、150μm以下とすることで、熱抵抗が低くなる。金属基板としてはアルミニウム、鉄、銅およびこれらの合金、もしくはこれらのクラッド材が熱伝導性の点で好ましい。また、金属箔としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、スズ、金、銀、モリブデン、チタニウム、ステンレス等が使用できる。
【0025】
<回路の形成>
絶縁性接着剤組成物を用いて貼り合わせた金属箔上に、エッチングにより回路を形成する。具体的には、まず、スクリーン印刷法又は写真現像法により、金属箔上にエッチングレジストを形成し、金属箔の表面の所定の位置をマスクする。その状態で、金属箔の一部を、塩化第二鉄エッチング液、塩化第二銅エッチング、過酸化水素/硫酸エッチング液、アルカリエッチャント等で腐食溶解した後、エッチングレジストを剥離する。これにより回路が形成される。
【0026】
<混成集積回路の作製>
回路面に半導体素子や抵抗チップなどの電子部品を実装するには、所望の位置にハンダ等を用いて電子部品を接合すればよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
<絶縁性樹脂組成物の製造>
参考例1)
絶縁性樹脂組成物の製造には以下の原料を用いた。
(A)エポキシ樹脂:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、DIC社製、「EPICLON 850CRP」
(B)エポキシ樹脂硬化剤:芳香族アミン、日本合成化工社製、「H−48B」
(C)ビスアリルナジイミド:丸善石油化学社製、「BANI−M」(化1のRが4,4’−ジフェニルメチル基である)
(D)無機フィラー粗粉:窒化アルミ(電気化学工業社製、平均粒子径16μm、最大粒子径70μm、1〜20μmの粒子含有量65体積%)
(D)無機フィラー微粉:窒化ケイ素(電気化学工業社製、平均粒子径1.0μm、2.0μm以下の粒子含有量94体積%)
(D)無機フィラー微粉:酸化アルミ(住友化学社製、「AA05」、平均粒子径0.5μm、2.0μm以下の粒子含有量99体積%)
(その他)シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング社製、「z−6040」)
【0029】
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂19質量部に、芳香族アミン6質量部、ビスアリルナジイミド75質量部、シランカプリング剤1.0質量部を加えた。次に絶縁性樹脂組成物中の添加量がそれぞれ54体積%、8体積%、12体積%となるよう、窒化アルミ、窒化ケイ素および酸化アルミニウムを加え、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR−250」、回転数2000rpm)にて混練し、絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0030】
参考例1で用いた原料および得られた絶縁性樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表3に示す。
[平均粒子径および粒度分布]
無機フィラーの平均粒子径は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−200」を用いて測定を行った。試料は、ガラスビーカーに50ccの純水と無機フィラーを5g添加して、スパチュラを用いて撹拌し、その後超音波洗浄機で10分間、分散処理を行った。分散処理を行った無機フィラーの分散積をスポイドで装置のサンプラ部に一滴ずつ添加して、吸光度が測定可能になるまで安定するのを待った。吸光度が安定になった時点で測定を行った。レーザー回折式粒度分布測定装置では、センサで検出した粒子による回折/散乱光の光強度分布のデータから粒度分布を計算した。平均粒子径は測定される粒子径の値に相対粒子量(差分%)を乗じて、相対粒子量の合計(100%)で割って求めた。平均粒子径は粒子の平均直径を示す。
【0031】
[粘度比]
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂19質量部と芳香族アミン6質量部を、ホモミキサーにて1分間混合した。得られた試料を、レオメーター(日本シイベルヘグナー社製「MCR−301」)を用い下記条件にて粘度を測定した。
プレート形状:円形平板25mmφ
試料厚み:0.1mm
ノーマルフォーカス:ON
温度:100±1℃
剪断速度:0.1S−1
ビスアリルナジイミド単体についても、温度:100±1℃、剪断速度:0.1S−1での粘度測定を実施し、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤の混合物に対する、ビスアリルナジイミドの粘度比を求めた。
【0032】
[反応ピーク温度]
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂19質量部と芳香族アミン6質量部を、ホモミキサーにて1分間混合した。得られた試料を、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q2000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温〜400℃まで昇温させ、得られた曲線のピークトップ温度を反応ピーク温度とした。
ビスアリルナジイミド単体についても、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分にて室温〜400℃まで昇温し、反応ピーク温度を求めた。
【0033】
[質量減少率]
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂19質量部、芳香族アミン6質量部およびビスアリルナジイミド(BANI−M)を、ホモミキサーにて1分間混合した。得られた試料を、示差熱天秤(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q5000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温〜400℃まで昇温させ、室温に対する400℃における質量減少率を測定した。
【0034】
[熱伝導率]
熱伝導率は、得られた絶縁性樹脂組成物の硬化体を作成し、熱拡散率、比重、比熱を全て乗じて算出した。熱拡散率は、試料を幅10mm×10mm×厚み1mmに加工し、レーザーフラッシュ法により求めた。測定装置はキセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製LFA447 NanoFlash)を用いた。比重はアルキメデス法を用いて求めた。比熱は、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q2000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温〜400℃まで昇温させて求めた。結果を表3に示す。
【0035】
[ピール強度]
2枚の厚さ0.6mmの銅箔を、厚さ0.1mmの絶縁性樹脂組成物で接着し硬化体を作製した。硬化条件は、200℃で8時間とした。接着した銅箔を10mm×100mmに切り出し、JIS C 6481に規定された方法に従い、23±2℃、相対湿度50%の条件で銅箔と絶縁性樹脂組成物とのピール強度を測定した。なお、測定は5回繰り返し、その算術平均値をピール強度とした。
【0036】
[耐電圧]
絶縁性樹脂組成物を用い、厚さ35μmの銅箔と厚さ1.5mmのAl板を接着し金属ベース基板を得た。さらに銅箔の所定の位置をエッチングレジストでマスキングした後、エッチングレジストを除去して金属ベース回路基板を形成した。得られた金属ベース回路基板を用い、JIS C 2110に規定された方法に従い、耐電圧を測定した。
【0037】
(実施例2〜5)
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、芳香族アミンおよびビスアリルナジイミドの配合量を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0038】
(実施例6)
微粉として窒化ケイ素20体積%を絶縁性樹脂組成物に配合した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0039】
(実施例7)
微粉として酸化アルミ20体積%を絶縁性樹脂組成物に配合した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0040】
(実施例8)
微粉として窒化アルミ(トクヤマ社製、「トクヤマH」、平均粒子径1.0μm、2.0μm以下の粒子含有量90体積%)20体積%を絶縁性樹脂組成物に配合した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0041】
(実施例9)
絶縁性樹脂組成物中の粗粉として窒化アルミ36.1体積%、微粉として窒化ケイ素5.3体積%、酸化アルミ8.6体積%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0042】
(実施例10)
絶縁性樹脂組成物中の粗粉として窒化アルミ57.7体積%、微粉として窒化ケイ素8.5体積%、酸化アルミ13.8体積%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0043】
(実施例11)
絶縁性樹脂組成物中のビスアリルナジイミドを、丸善石油化学社製、「BANI−X」(化1に示すRの構造がメタ−キシリル基である)へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0044】
(実施例12)
絶縁性樹脂組成物中のエポキシ樹脂を53質量%、エポキシ樹脂硬化剤として、イミダゾール系硬化剤:四国化成社製、「2E4MZ」4質量%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0045】
(実施例13)
絶縁性樹脂組成物中のエポキシ樹脂を38質量%、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノールノボラック系硬化剤:DIC社製、「TD−2131」19質量%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0046】
(比較例1)
絶縁性樹脂組成物中のエポキシ樹脂硬化剤として、フェノールノボラック系硬化剤21質量%へ、ビスアリルナジイミドを「BANI−X」へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0047】
(比較例2)
絶縁性樹脂組成物中のエポキシ樹脂を38質量%、エポキシ樹脂硬化剤として、脂肪族アミン:三井化学ファイン社製、「D400」19質量%へ変更した以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0048】
(比較例3)
ビスアリルナジイミドを使用せず、樹脂成分としてエポキシ樹脂75質量%、芳香族アミン25質量%とした以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0049】
(比較例4)
エポキシ樹脂、および硬化剤を使用せず、樹脂成分としてビスアリルナジイミドのみを用いた以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。
【0050】
(比較例5)
微粉を使用しなかった以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。なお、微粉を使用しなかった分は、粗粉を増量し、実施例3の無機フィラー量と同じ74体積%にそろえた。
【0051】
(比較例6)
粗粉を使用しなかった以外は、実施例3と同様に絶縁性樹脂組成物を作製した。なお、粗粉を使用しなかった分は、微粉を増量し、実施例3の無機フィラー量と同じ74体積%にそろえた。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】

【0056】
表3および表4の結果から、本発明の絶縁性樹脂組成物は加熱時の質量減少が低いことが示される。また、
表1〜表4の結果から、実施例の絶縁性樹脂組成物を用いた硬化体は、熱伝導性およびピール強度に優れることが分かった。さらに、実施例の絶縁性樹脂組成物により作製した金属ベース回路基板は、耐電圧特性に優れることが分かった。
【0057】
以上の結果は、実施例で用いた金属ベース回路基板の他、混成集積回路に関しても同様であった。