【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例等を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
実 施 例 1
エッチング液:
水100mlに、プロトカテク酸1.54gおよび水酸化ナトリウム1.2gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0038】
実 施 例 2
エッチング液:
水100mlに、クエン酸1.92gおよび水酸化ナトリウム1.2gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0039】
実 施 例 3
エッチング液:
水100mlに、サリチル酸1.38g、過酸化水素(30%)1mlおよび水酸化ナトリウム0.8gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0040】
実 施 例 4
エッチング液:
水100mlに、酒石酸1.50g、過酸化水素(30%)1mlおよび水酸化ナトリウム1.2gを溶解させた。このエッチング液のpHは14あった。
【0041】
実 施 例 5
エッチング液:
水100mlに、クエン酸1.92g、過酸化水素(30%)1mlおよび水酸化ナトリウム1.6gを溶解させた。このエッチング液のpH14であった。
【0042】
実 施 例 6
エッチング液:
水300mlに、サリチル酸1.38g、酒石酸1.50g、クエン酸1.92g、過酸化水素(30%)3mlおよび水酸化ナトリウム3.6gを溶解させた。このエッチング液のpH14であった。
【0043】
比 較 例 1
エッチング液:
水100mlに、過酸化水素(30%)1mlおよび水酸化ナトリウム1.2gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0044】
比 較 例 2
エッチング液:
水100mlに、EDTA・4Na4.16g、過酸化水素(30%)1mlおよび水酸化ナトリウム0.4gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0045】
比 較 例 3
エッチング液:
水100mlにサリチル酸1.38g、過酸化水素(30%)1mlおよび水酸化ナトリウム0.4gを溶解させた。このエッチング液のpHは5であった。
【0046】
比 較 例 4
エッチング液:
水100mlにエチルマルトール1.4gおよび水酸化ナトリウム0.8gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0047】
比 較 例 5
エッチング液:
水100mlにアセチルアセトン1.0gおよび水酸化ナトリウム0.8gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0048】
比 較 例 6
エッチング液:
水100mlにグリコール0.6gおよび水酸化ナトリウム0.8gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0049】
比 較 例 7
エッチング液:
水100mlにアスコルビン酸1.76g、過酸化水素(30%)1mlおよび水酸化ナトリウム1.2gを溶解させた。このエッチング液のpHは14であった。
【0050】
比 較 例 8
エッチング液
水100mlにプロトカテク酸1.54gを溶解させた。このエッチング液のpHは5であった。
【0051】
試 験 例 1
エッチング試験:
ガラスの円筒の内面にスパッタリングでチタンを100nmの厚さで析出させたものを試料とした。実施例1〜6および比較例1〜8で調製したエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、これに表1に記載の条件で試料を浸漬し、エッチング試験を行った。エッチング試験後の試料の外観を以下の評価基準で評価した。この結果も表1に示した。また、実施例6のエッチング液を用い、80℃、30秒のエッチング条件でエッチングした後の試料の外観写真を
図1に示した。
【0052】
<チタンの溶解評価基準>
(評価) (内容)
◎ : チタンが完全に溶解した。
○ : チタンがほとんど溶解した。
△ : チタンがほとんど溶解しなかった。
× : チタンが全く溶解しなかった。
<ガラスの溶解評価基準>
(評価) (内容)
+ : ガラスは溶解しなかった。
− : ガラスは溶解した。
【0053】
【表1】
【0054】
以上の結果より、本発明のエッチング液に錯化剤だけで過酸化水素を入れない場合には、プロトカテク酸が最も良いことが分かった。また、錯化剤と過酸化水素を組み合わせた場合には、エッチング速度が向上し、EDTAを用いた場合よりも早くなることが分かった。更に、エッチングには高いpHが必要であることが分かった。また更に、1,2−ジオール類のうち、一般的なものはエッチングが全く行われないか、ほとんど行われないものであったが、式(II)に含まれる1,2−ベンゼンジオール類は有効であることが分かった。更にまた、一般的なチタンの錯化剤のβ−ジケトン類とα−ヒドロキシケトン類ではエッチングが全く行われないことが分かった。また、還元力ある錯化剤ではエッチングが全く行われないことが分かった。
【0055】
試 験 例 2
エッチング試験:
ヘアライン加工された真鍮製のリングの両面にニッケルめっきを施したものに、スパッタで10nmの酸化チタン、70nmのチタン、45nmの窒化シリコン、85nmの窒化チタン、80nmの窒化シリコンおよび10nmの窒化チタンをこの順で析出させたものを試料とした。実施例1、3〜6および比較例1〜3、6〜8で調製したエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、これに表2に記載の条件で試料を浸漬し、エッチング試験を行った。エッチング試験後の試料の外観を以下の評価基準で評価した。この結果も表2に示した。また、実施例6のエッチング液を用い、80℃、5分のエッチング条件でエッチングした後の試料については、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による分析をした。
【0056】
<酸化チタン、チタン、窒化シリコン、窒化チタンの溶解評価基準>
(評価) (内容)
◎ : 酸化チタン、チタン、窒化シリコン、窒化チタンが完全に
溶解した。
○ : 酸化チタン、チタン、窒化シリコン、窒化チタンがほとん
ど溶解した。
△ : 酸化チタン、チタン、窒化シリコン、窒化チタンがほとん
ど溶解しなかった。
× : 酸化チタン、チタン、窒化シリコン、窒化チタンが全く溶
解しなかった。
<ニッケルの溶解評価基準>
(評価) (内容)
+ : ニッケルは溶解しなかった。
− : ニッケルは溶解した。
【0057】
【表2】
【0058】
以上の結果より、本発明のエッチング液は下地のニッケルよりも優先的に酸化チタン、チタン、窒化シリコン、窒化チタンを溶解するので、下地のニッケルからこれらを選択的に除去できることがわかった。また、EPMAによる分析の結果、エッチング前後で、ニッケルが64.0mol%から74.2mol%、銅が6.0mol%から16.4mol%、亜鉛が3.4mol%から9.4mol%、チタンが11.6mol%から0mol%、シリコンが15.0mol%から0mol%となり、エッチングによりチタンとシリコンが全て除去されていたことが分かった。
【0059】
試 験 例 3
エッチング試験:
シリコンウエハーの片面にスパッタで窒化タンタルを50μm析出させたものを試料とした。実施例1、3〜6および比較例1〜3で調製したエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、これに表3に記載の条件で試料を浸漬し、エッチング試験を行った。エッチング試験後の試料の外観を以下の評価基準で評価した。この結果も表3に示した。
【0060】
<窒化タンタルの溶解評価基準>
(評価) (内容)
◎ : 窒化タンタルが完全に溶解した。
○ : 窒化タンタルがほとんど溶解した。
△ : 窒化タンタルがほとんど溶解しなかった。
× : 窒化タンタルが全く溶解しなかった。
<シリコンの溶解評価基準>
(評価) (内容)
+ : シリコンは溶解しなかった。
− : シリコンは溶解した。
【0061】
【表3】
【0062】
以上の結果より、本発明のエッチング液は、下地のシリコンよりも優先的に窒化タンタルを溶解するので、下地のシリコンからこれらを選択的に除去できることがわかった。
【0063】
試 験 例 4
エッチング試験:
真鍮板の片面にニッケルめっきを施したものを試料A、これにスパッタリングで10nmの酸化チタン、70nmのチタン、45nmの窒化シリコン、85nmの窒化チタン、80nmの窒化シリコンおよび10nmの窒化チタンをこの順で析出させたものを試料Bとした。試料Aおよび試料Bを、実施例6で調製したエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃、5分の条件で浸漬し、エッチング試験を行った。エッチング試験前後の試料について走査型プローブ顕微鏡(SPM)による表面形状および表面荒さ(Ra値)の観察をした。その結果を
図2に示した。
【0064】
SPM観察およびRa測定の結果から、本発明のエッチング液は、下地のニッケルよりも優先的に酸化チタン、チタン、窒化シリコン、窒化チタンを溶解するので、下地のニッケルからこれらを選択的に除去できることが分かった。
【0065】
試 験 例 5
エッチング試験:
シリコンウエハ(試料A)の片面にスパッタで窒化タンタルを50μm析出させたものを試料Bとした。試料Bを、実施例6で調製したエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃、40分の条件で浸漬し、エッチング試験を行ったものを試料Cとした。これらの試料について走査型電子顕微鏡(SEM)およびSPMによる観察をした。その結果を
図3に示した。
【0066】
SEM観察およびSPM観察の結果から、本発明のエッチング液は、下地のシリコンよりも優先的に窒化タンタルを溶解するので、下地のシリコンからこれらを選択的に除去できることが分かった。
【0067】
試 験 例 6
エッチング試験:
シリコンウエハ(試料A)の片面にスパッタで窒化チタンおよび酸化チタンをこの順でそれぞれ50μm析出させたものを試料Bとした。試料Bを、実施例6で調製したエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃、25秒の条件で浸漬し、エッチング試験を行ったものを試料Cとした。これらの試料についてSEMおよびSPMによる観察をした。その結果を
図4に示した。
【0068】
SEM観察およびSPM観察の結果から、本発明のエッチング液は、下地のシリコンよりも優先的に窒化チタンおよび酸化チタンを溶解するので、下地のシリコンからこれらを選択的に除去できることが分かった。
【0069】
試 験 例 7
エッチング条件の選定:
エッチング液は、サリチル酸0.334mol/L、酒石酸0.333mol/L、クエン酸0.333mol/Lおよび過酸化水素1mol/Lを含み、pHを水酸化ナトリウムにより11以上に調整したエッチング液を基本組成として、これを以下の表4に記載の通りに薄めてエッチング液を調製した。これらのエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、これを用いて表4に記載の条件で試験例1で用いたのと同様の試料(ガラス円筒)および試験例2で用いたのと同様の試料(リング)をエッチングした。なお、エッチング終了時間は、目視によりスパッタ膜が除去されるまでの時間である。
【0070】
【表4】
【0071】
以上の結果より、エッチング速度に対する錯化剤の濃度と浴温度の関連を確認した。錯化剤の濃度と浴温度が高くなるとエッチング速度が高くなることが分かった。
【0072】
試 験 例 8
使用後のエッチング液の元素分析:
実施例6のエッチング液を用い、試験例1で用いたのと同様の試料(ガラス円筒)を80℃で30秒、試験例2で用いたのと同様の試料(リング)を80℃で5分、試験例6で用いたのと同様の試料(シリコンウエハに窒化チタンおよび酸化チタンを析出させたもの(試料B))を80℃で25秒のエッチング後のエッチング液についてICP―AESで元素分析を行った。また、比較として比較例2のエッチング液を用い、同様の試料をエッチング後のエッチング液についても元素分析を行った。これらの分析の結果を表5に示した。
【0073】
【表5】
【0074】
以上の結果より、本発明のエッチング液は、従来のものに比べ、チタンがニッケルおよびシリコンより優先的に溶解することがわかった。本発明のエッチング液はチタンが5mg/Lであるのに対してシリコンが36.1mg/Lおよびニッケルが検出せずであった。一方、従来のものではチタンが1mg/Lであるのに対してシリコンが23.5mg/Lおよびニッケルが8.5mg/Lであった。従来のもののチタンの量と比較し、過剰なシリコンはシリコンウエハ基板およびニッケルはニッケルめっき基板から溶解したものと考えられる。本発明で使用する錯化剤はチタンおよび窒化物の溶解に選択性を示すことがわかった。
【0075】
試 験 例 9
エッチング速度の測定:
(1)チタンのエッチング速度の測定
チタンのエッチング速度は、ガラス上にスパッタでチタンを100nm析出させ、表6に記載のエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃にしたものに浸漬し、エッチング時間、溶解したチタンの量、エッチング液への接触面積から算出した。その結果を表6に示した。
【0076】
【表6】
【0077】
(2)酸化チタン/窒化チタンのエッチング速度の測定
酸化チタン/窒化チタンのエッチング速度は、シリコンウエハ上にスパッタで酸化チタンおよび窒化チタンをこの順でそれぞれ50nmずつ析出させ、表7に記載のエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃にしたものに浸漬し、エッチング時間、溶解した酸化チタン/窒化チタンの量、エッチング液への接触面積から算出した。その結果を表7に示した。
【0078】
【表7】
【0079】
(3)ニオブのエッチング速度の測定
ニオブのエッチング速度は、ガラス上にスパッタでニオブを200nm析出させ、表8に記載のエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃にしたものに浸漬し、エッチング時間、溶解したニオブの量、エッチング液への接触面積から算出した。その結果を表8に示した。
【0080】
【表8】
【0081】
(4)窒化タンタルのエッチング速度の測定
窒化タンタルのエッチング速度は、シリコンウエハ上にスパッタで窒化タンタルを50nm析出させ、表9に記載のエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃にしたものに浸漬し、エッチング時間、溶解した窒化タンタルの量、エッチング液への接触面積から算出した。その結果を表9に示した。
【0082】
【表9】
【0083】
試 験 例 10
エッチング速度の測定:
(1)ガラスのエッチング速度の測定
ガラスのエッチング速度は、表10に記載のエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃にしたものに浸漬し、エッチング時間、溶解したガラスの量、板ガラスのエッチング液への接触面積に対してエッチング前後の重量差から算出した。その結果を表10に示した。
【0084】
【表10】
【0085】
(2)シリコンのエッチング速度の測定
シリコンのエッチング速度は、表11に記載のエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃にしたものに浸漬し、エッチング時間、溶解したシリコンの量、シリコンウエハのエッチング液への接触面積に対してエッチング前後の重量差から算出した。その結果を表11に示した。
【0086】
【表11】
【0087】
(3)ニッケルのエッチング速度の測定
ニッケルのエッチング速度は、表12に記載のエッチング液を撹拌子で撹拌しつつ、80℃にしたものに浸漬し、エッチング時間、溶解したニッケルの量、真鍮製板の前面にニッケルめっきを施したもののエッチング液への接触面積に対してエッチング前後の重量差から算出した。その結果を表12に示した。
【0088】
【表12】
【0089】
以上の結果より、本発明のエッチング液は、下地基材となるガラス、シリコンおよびニッケルのエッチング速度が、チタン、酸化チタン、窒化チタン、ニオブ、窒化タンタルのエッチング速度よりも遅いことが示された。これにより、本発明のエッチング液はチタン、酸化チタン、窒化チタン、ニオブ、窒化タンタルを下地基材よりも優先的に溶解することが示された。一方、EDTAを用いたエッチング液は、本発明のエッチング液よりも下地基材のエッチング速度が圧倒的に速いことが示された。
【0090】
試 験 例 11
エッチング試験:
実施例6で調製したエッチング液を80℃にしたものに、砒化ガリウムウエハの細片を浸漬したところ、ほどなく砒化ガリウム片が溶解した。この結果から、本発明のエッチング液はチタン等と同様に砒素、ガリウムおよび砒化ガリウムも選択的にエッチングできることが分かった。
【0091】
試 験 例 12
エッチング試験:
実施例6で調製したエッチング液を80℃にしたものに、タングステン、モリブデン、ルテニウムまたはロジウムの試験片を浸漬すると、ほどなく溶解する。これから、本発明のエッチング液はチタン等と同様にタングステン、モリブデン、ルテニウムまたはロジウムも選択的にエッチングし得る。
【0092】
試 験 例 13
再利用試験:
ヘアライン加工された真鍮製のリングの両面にニッケルめっきを施したものに、スパッタで10nmの酸化チタン、70nmのチタン、45nmの窒化シリコン、85nmの窒化チタン、80nmの窒化シリコンおよび10nmの窒化チタンをこの順で析出させたものを試料とした。実施例6で調製したエッチング液を80℃にしたものに試料を5分間浸漬し、スパッタで析出させた酸化チタン、チタン、窒化シリコンおよび窒化チタンを完全にエッチングした。その後、この試料を乾燥させ、更に上記と同様のスパッタを再度行ったところ、エッチング前の試料と同様の外観が得られた。この試験により、試料の再利用が可能なことが示された。
【0093】
実 施 例 7
エッチング液:
水1000mlに、サリチル酸23g、ロッシェル塩47g、クエン酸ナトリウム43g、PEG−200
1ml、過酸化水素(34%)50mlおよび水酸化ナトリウム10gを溶解させた。このエッチング液のpHは12.7であった。
【0094】
試 験 例 14
エッチング試験:
実施例7で調製したエッチング液のpHを水酸化ナトリウムまたは硫酸を用いて表13に記載のpHに調整した。試験例1で用いたのと同様の試料(ガラス円筒)および試験例2で用いたのと同様の試料(リング)を、それぞれのエッチング液を50℃にしたものに浸漬し、目視によりスパッタ膜が完全に除去されるまでの時間を測定した。それらの結果を表13に示した。
【0095】
【表13】
【0096】
この試験によりエッチング液のpHが高いほどエッチング速度が向上することが分かった。特に、pH11以上、pH12以上、pH13〜14ではそれぞれのpH未満の場合と比べてエッチング速度がおおむね2倍以上向上することがわかった。
【0097】
実 施 例 8
エッチング液:
水1000mlに、クエン酸ナトリウム129g、PEG−2000.1ml、過酸化水素(34%)50mlを溶解させた。このエッチング液のpHは13であった。
【0098】
試 験 例 15
エッチング試験:
実施例8で調整したエッチング液を50℃にしたものに、5×5×0.1cmのアルミ板または銅板を浸漬し、試験例10と同様にしてエッチング速度を測定した。アルミ板のエッチング速度は130nm/s、銅板のエッチング速度は0.142nm/sであることがわかった。
【0099】
試 験 例 16
エッチング試験:
実施例8で調製したエッチング液を60℃にしたものに、酸化アルミニウムの試験片を浸漬したところ、ほどなく溶解した。この結果から、本発明のエッチング液はチタン等と同様に酸化アルミニウムも選択的にエッチングできることがわかった。
【0100】
試 験 例 17
エッチング試験:
実施例8で調製したエッチング液を60℃にしたものに、シリコンウエハに窒化アルミニウムと窒化ガリウムをこの順でスパッタして積層した試験片を浸漬したところ、窒化アルミニウムと窒化ガリウムの層がほどなく溶解した。この結果から、本発明のエッチング液はチタン等と同様に窒化アルミニウムまたは窒化ガリウムも選択的にエッチングできることがわかった。
【0101】
以上説明した本発明方法におけるエッチングの原理は以下のように推定される。
(1)錯化剤の役割:
選択された錯化剤は表面の金属にキレートすることにより、表面の金属を(a)求核攻撃されやすくし、(b)生成された金属錯体をエッチング液に溶解されやすくしている。即ち、選定された錯化剤の配位子が被エッチング金属原子の形状、軌道配列、電子特性と適合した金属(例:チタン、ニオブ等)に選択的にキレートすることで特定の金属のみがエッチング可能となる。しかし、一般的に使用される錯化剤であるEDTA等を使用すると、その錯化剤は多数の金属と強くキレートするため選択性が低い。即ち、本発明で選択された錯化剤は、被エッチング金属の選択性を特定している一つの要因となる。
錯化剤の錯化能力や選択性は、その錯化剤の配位数、配位種(窒素(例:アミン、ニトリルに含まれる窒素)、酸素(例:ヒドロキシ、カルボン酸、カルボニルに含まれる酸素)、燐、硫黄(例:メルカプト、チオカルボニルに含まれる硫黄))、配位特性、電子特性、多配位数の場合の配位子−配位子間の距離/配列により決定される。本発明では三つの炭素で隔離されている2つか3つの酸素配位を持つ分子で、1つはヒドロキシ、1つはカルボン酸またはベンゼンジオールを有するものが最適と考えられる。(3つの場合のもう一つの配位種も酸素系のものが良い。)例えば配位種に窒素が存在すると、チタンやニオブをエッチングすべきところがニッケルもエッチングされてしまい本発明の目的と合致しなくなる。
(2)塩基の役割:
キレートされた金属に求核攻撃する(例:ヒドロキシド)。
(3)酸化剤の役割:
金属酸化物、金属窒化物、金属錯体内の各々の金属(M)との結合の場合、金属との結合を酸化分解し、格子状・非格子上の結合を破壊させる。
(例:M−O−M→M−O−O−M→2M=O)
金属エッチングの場合、金属または金属錯体を酸化させる。
(例:M→Mn
+または配位子−Mn
−→配位子−M)