特許第6061916号(P6061916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6061916トルク制御装置、方法、コンピュータプログラム製品、装置、電子装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061916
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】トルク制御装置、方法、コンピュータプログラム製品、装置、電子装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20170106BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20170106BHJP
【FI】
   H02P29/00
   H02K11/30
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-506937(P2014-506937)
(86)(22)【出願日】2012年4月30日
(65)【公表番号】特表2014-512800(P2014-512800A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】GB2012050952
(87)【国際公開番号】WO2012146945
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年4月30日
(31)【優先権主張番号】1107207.1
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1107185.9
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1107192.5
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1116622.0
(32)【優先日】2011年9月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513271265
【氏名又は名称】セブコン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】ピーター バラス
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー スクワイア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート テイラー
(72)【発明者】
【氏名】ハワード スレーター
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド ホジソン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ イーグルトン
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−125410(JP,A)
【文献】 特開2009−106021(JP,A)
【文献】 特開2007−331646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両のためのトルク制御装置であって、
ルク要求信号と電気モータの角速度の変化率に基づくセンサ信号とを受信するように結合されている制御装置を含み、
前記制御装置は前記センサ信号に基づいて生成され大きさが基準信号レベルを超えないように前記制御装置により制限された減算信号を、前記トルク要求信号から減算することによりトルク要求制御信号を供給し
前記制御装置は、前記トルク要求制御信号と前記トルク要求信号の比較に基づいて代用トルク要求信号を供給する、
トルク制御装置。
【請求項2】
前記トルク要求制御信号を供給することは前記センサ信号に基づく減算信号を前記トルク要求信号から減算することを含む請求項1のトルク制御装置。
【請求項3】
前記センサ信号を処理するフィルタを有し、前記フィルタは前記感知された信号を処理して、前記感知された信号の選択された周波数成分に関連付けられた周波数成分を他の周波数成分に対して強調し、
前記選択された周波数成分は、記車両の駆動装置の特徴的な周波数に関連付けられ、
フィルタリング処理は前記車両の前記駆動装置の前記特徴的な周波数に関連付けられていない周波数成分を減衰させる、請求項1のトルク制御装置。
【請求項4】
前記フィルタは少なくとも1つのノイズ周波数成分を減衰させるノッチフィルタとローパスフィルタの少なくとも1つを含む請求項3のトルク制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、信した命令の1つや前記車両の動作状態に応じて前記フィルタの伝達関数を変える機能を有する請求項1のトルク制御装置。
【請求項6】
前記基準信号レベルは前記モータのための最大トルク要求信号に基づく請求項1のトルク制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は前記基準信号レベルを設定する機能を有する請求項1のトルク制御装置。
【請求項8】
前記比較は、前記受信されたトルク要求信号の符号と前記トルク要求制御信号の符号と比較であり、
前記代用トルク要求信号は、あらかじめ定められたトルク要求信号値の一覧から選択され、
前記制御装置は、前記車両の動作状態に基づいて前記代用トルク要求信号を選択し、
前記動作状態は、前記車両の速度とモータ速度の少なくとも一方を含む、請求項1乃至7のいずれかに記載のトルク制御装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記トルク要求制御信号の符号と前記トルク要求信号の符号を比較し、前記トルク要求制御信号の符号と前記トルク要求信号の符号が異なるときは前記代用トルク要求信号の値をゼロに設定する、請求項1乃至8のいずれかに記載のトルク制御装置。
【請求項10】
電気モータ制御装置に印加されるトルク要求制御信号を車両電気モータのために受け取り、前記電気モータの角速度に基づいて感知された信号を受信し、
トルク要求信号と前記感知された信号に基づいトルク要求制御信号を決定し、
前記感知された信号に基づいて生成され大きさが基準値を超えないように制限された減算信号を、前記トルク要求信号から減算して前トルク要求制御信号を決定し、
前記トルク要求制御信号と前記トルク要求信号の比較に基づいて代用トルク要求信号を供給する、方法。
【請求項11】
前記電気モータの角速度に基づく前記信号は前記モータの角速度の変化率を示す信号を含む請求項10の方法。
【請求項12】
記比較は、記受信されたトルク要求信号の符号を前記変更されたトルク要求信号の符号と比較することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記感知された信号をフィルタにかけることを含み、
前記フィルタにかけることは、記感知された信号をフィルタにかけて前記感知された信号の選択された周波数成分と関連付けられた周波数成分を他の周波数成分に対して強調することを含み、記選択された周波数成分は前記車両の駆動装置の特徴的な周波数と関連付けられている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記比較は、前記トルク要求信号の符号と前記トルク要求制御信号の符号との比較であり、
前記代用トルク要求信号は、あらかじめ定められたトルク要求信号値の一覧から選択され、
前記車両の動作状態に基づいて前記代用トルク要求信号を選択し、
前記動作状態は、前記車両の速度とモータ速度の少なくとも一方を含む請求項10乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記トルク要求制御信号の符号と前記トルク要求信号の符号を比較し、前記トルク要求制御信号の符号と前記トルク要求信号の符号が異なるときは前記代用トルク要求信号の値をゼロに設定する、請求項10乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
プログラム可能なプロセッサをプログラムして請求項10乃至15のいずれかに記載の方法を行なう機能を有するプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
請求項10乃至15のいずれかに記載の方法を行なうようになっている装置。
【請求項18】
請求項1乃至9のいずれかに記載のトルク制御装置を含む電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気モータ用の制御装置、およびモジュール式モータ制御装置組立体に関する。このような制御装置とモータは、電気車両で使用することができる。
【0002】
本発明のいくつかの態様は、電気車両と、電気車両における電気モータ用の制御装置および制御方法とに関する。特に、いくつかの態様は、振動減衰システムを伴うモータ制御装置に関する。
【0003】
また、本発明のいくつかの態様は、DC直巻モータの制御と、DCモータを制御するための制御回路とに関し、本発明のこれらの態様は、特に、DC直巻モータの制御に関連するが、DC直巻モータ以外を排除するものではない。
AC電気モータとモータ制御装置
【背景技術】
【0004】
電気車両では、重量とコストを抑えるために、独立した(別個の)差動ギア式モータを使用して、個々の車輪を駆動することがある。車両からの二酸化炭素排出に関連する環境問題が、よく知られている。車両用の内燃機関エンジンを電気モータに置き換えるという解決策が提案されている。各電気モータは制御装置を必要とする。モータが3相モータである場合、制御装置はモータのためにDC供給をACに変換するためのインバータを有する。この過程で、高電力トランジスタの高速スイッチングと、オン状態における電圧降下とにより熱が発生する。熱は、巻線中の抵抗発熱(IR)によりモータでも発生し、また渦電流と摩擦によっても発生する。各モータと各制御装置は、冷却システムを必要とする。一般に、冷却は、熱エネルギーを吸収するためのヒートシンク、または多岐管を通過して流れる流体冷却剤によって行われる。1つのポンプが使用される場合もあるが、各冷却システムは、流体の循環を可能にする配管システムを含む。そのため、2つのモータと2つのモータ制御装置を有している構成では、4組の冷却装置(ヒートシンク、多岐管、配管を含む)を設けなくてはならない。複数のモータ、制御装置、関連する電気系の構成要素、および冷却のための構成要素が存在するということは、電気車両走行システムの設計と組立てが簡単な仕事ではないということを意味する。
【0005】
さらなる問題として、モータと制御装置が離れていて長い電線によって接続される場合、モータに必要とされる高電流(数百アンペアになる)が電力損失を生じさせるということである。また、このような配線には、事故車両に入り込む必要がある非常時保守要員の感電死の危険等の安全上の問題がある。
【0006】
この場合、発明者らは、電気走行モータとモータ制御装置組立体の重量、容積、複雑さを減らし、安全性を改善する必要を認識してきた。
DC直巻モータとその制御
種々のタイプのDC電気モータが、知られており、それぞれ長所と短所を有している。1つのDCモータのタイプはDC直巻モータで、これを図5に模式的に示す。DC直巻モータでは、等しい電流が各巻線を通過するように、電機子巻線1004とモータ1002の界磁巻線6は直列に接続される。他種のモータに比べ、この構造では界磁巻線は通常よりも非常に高い電流が流れるため、堅牢な電線で作られなければならないことを意味する。
【0007】
巻線に流れる電流量、特に界磁巻き線に流れる電流量で、モータで発生し得るトルクが決定されるので、DC直巻モータは、一般に始動トルクが高く、最初に通電した際、比較的高い軸荷重で動作することができる。この高いトルク特性に依拠するDC直巻モータの一般的な用途の1つが、内燃機関エンジンを始動させるための始動モータとしての使用である。また、直巻モータが高トルク特性を有することから、電力駆動の車両等の走行への応用において、この種のモータが考慮されるに至った。
【0008】
DC直巻モータの特性の1つに、モータに流れる電流の方向を逆にしても、モータの回転方向が変わらないということがある。これは、モータに流れる電流の方向を逆にすると、界磁巻線と電機子巻線の両方で電流が逆になり、両方の磁界が逆転になってしまうからである。DC直巻モータのこの特性により、DCおよびAC電流のいずれを使用しても電力駆動できるため、この種のモータは「万能」モータであるという考えに至っている。
【0009】
直巻モータの回転方向を逆にするために、界磁巻線あるいは電機子巻線の両方ではなく、どちらか一方で電流の流れを逆にすることが必要である。したがって、モータを逆転させるために、走行用途に供されるDC直巻モータには、一般に電圧をモータに印加できるようにするための3つ以上の端子が設けられる。例えば、多くの市販のDC直巻モータに、図5に示す端子S1、S2、A1、A2に対応する4つの端子が設けられている。直巻モータの他の設計では、3つの端子を使用してモータを逆転させる制御を可能にしている。
【0010】
モータ逆転回路(例えば、図6に示されるような)が、一般に採用されており、界磁巻線あるいは電機子巻線のどちらか1つの電流の方向を制御することによって、モータをいずれかの方向に動作させることができる。モータ逆転回路は、DC直巻モータ用に設けられた4つの端子A1、A2、S1、S2に結合される。モータにおける高電流の流れを管理するために、モータ逆転回路では機械スイッチを使用して、必要とされる回転方向に応じて巻線の1つに流れる電流の向きを操作することがある。図2の回路例では、スイッチ1008aと1008bを一緒に動作させて(すなわち、閉じて)、電機子巻線1004に流れる電流の向きを第1の方向に操作することができ、また、スイッチ1010aと1010bを一緒に動作させて、電機子に流れる電流の方向を逆にすることによって、モータの回転方向を逆にすることができる。しかしながら、これらの機械スイッチは信頼性に欠けて、モータ/モータ制御装置組立体の製造コストおよび保守コストを増大させる可能性がある。
【0011】
他の周知のタイプのDCモータは他励モータ、すなわち、SEMである。SEMでは、モータの界磁巻線と電機子巻線に流れる電流は、個別に制御する(励磁を行う)ことができる。DC直巻モータとは対照的に、SEMの界磁巻線は電機子と等しい電流を流すことを想定していないので、界磁巻線、および関連する制御回路は非常に低い電流定格となる。
独立して界磁電流と電機子電流を制御する能力により、SEMの適応性を高めることができ、モータのトルク特性と速度特性に対する高度な制御が可能となる。しかしながら、界磁電流と電機子電流を個々に制御することが要求される回路は、高価であることが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のいくつかの態様と実施例は、少なくとも上記の技術的問題の一部を扱う。
2台の制御装置のクロスチェック
本開示の実施形態が扱うもう1つの技術的課題は、2つ以上の駆動モータと制御装置を有する電気車両での安全性の制御と監視である。
【0013】
電気モータの使用により、車両の設計者は、車両の駆動装置を単純化することができ、例えば、車両の各被駆動輪を、その車輪だけのための専用の電気モータによって、直接、駆動することができる。単純化された構造に加えて、このような車両の車輪の独立した制御により、ある種の他の長所が提供されうることが認識される。特に、車両の操作性は、このような被駆動輪の独立した制御を持たない車両よりは十分により大きいと考えられる。
【0014】
車両の各モータ用に独立した電力供給インバータを設けることが、一般に好ましく、この場合、車両における異なる車輪の独立した制御により、多くの長所が得られると同時に、ある種の課題も引き起こされることを発明者らは認識している。例えば、車両が動いているときに、いくつかの(すべてではないが)車輪に関連する電力供給インバータが故障した場合、その車両は急に向きが変わるか、あるいはスピンさえする可能性がある。本開示の態様と例は、少なくとも、この問題の一部を扱うことを意図している。
振動減衰システムを伴うモータ制御装置
すべての産業形態に関連して、炭素放出を減らす必要があることは、よく知られている。この必要に応じるために、電気車両とハイブリッド車両(駆動のために内燃機関エンジンと電気モータの両方を有している)が提案されている。
【0015】
車両は、エンジンと車両が走行する路面との間に、駆動装置すなわち「パワートレイン」を有する。これは、変速機、駆動軸、差動ギア、および駆動輪あるいはキャタピラを含む。この駆動装置は、必然的に多くの構成要素を含み、各構成要素は、バックラッシュとして知られている、ある程度の遊びを有することができる。結果として、駆動装置の構成要素が噛み合うとき、エンジンによって供給されるトルクの段階的変化により、非常に急激な加速が生じ、これに続いて非常に急激な段階的減速が生じる可能性がある。また、エンジンによるトルクが加わるとき、車両駆動装置システムは駆動装置の構成要素が変形して弾性エネルギーを保存する、ある程度の「ワインドアップ(ネジ巻き)」を示す。この「ワインドアップ」は、駆動シャフトの、ねじり剛性/弾性と、タイヤ、サスペンション、他の構成要素の復元力とに関連する。
【0016】
電気モータは、低い質量と低い慣性モーメントを有する。一般的な内燃機関エンジンは重量が非常に大きく、フライホイールを使用した駆動装置に一般に結合され、そのフライホイール自体は慣性モーメントが大きい。電気走行モータによって駆動される車両では、一般に車両の重量を減らす必要があるので、大きいフライホイールの使用は非実用的である。この場合、バックラッシュ(遊び)および/または「ワインドアップ」を示す「柔軟な」変速機を有する電気車両で起こる問題を、発明者らは認識している。このようなシステムでは、モータによって供給されるトルクの急激な変化があるとき(例えば、車両が停止状態から加速する、あるいはモータから生成されるトルク要求が正から負に変化するとき、例えば、方向を逆にするとき)、変速機でのバックラッシュは、最初にモータがスムーズに加速できることを意味する。その後、駆動装置の構成要素が噛み合うと、車両の慣性はモータに対する負荷の段階的変化を与える駆動装置によってモータに突然結合される。駆動装置での「ワインドアップ」(あるいは復元力)は、関連する衝撃の一部が、駆動装置の構成要素のねじれと変形によって、一時的に吸収されることを意味する。電気車両では、モータの慣性モーメントは車両/駆動装置と比較して低いので、保存されたエネルギーの一部が、モータに戻される。その結果、モータからのトルク出力が、更に段階的に変化し、そのサイクルが繰り返される。システムにおける減衰の不足と慣性比率に対する高いトルクは、このフィードバックループが状況によってモータ速度の揺れを引き起こすことを意味する。換言すれば、トルクの段階的変化と車両駆動装置の復元性の組み合わせによって、揺れ特性が引き起こされることがある。電気車両では、モータの慣性モーメントは低いので、内燃機関エンジンとフライホイールによって与えられる程度の減衰を与えることは不可能である。結果として、電気車両は、減衰が不足した振動子として作用することがあり、車両の応答が加速に応じた激しい揺れ、あるいはがたつきとなることを運転手は経験し、モータ騒音の増大を起こす可能性がある。本発明のいくつかの態様と実施例は、少なくとも上記の技術的問題の一部に対処することを意図している。
AC電気モータとモータ制御装置の態様
一態様では、複数の電子構成要素または電気構成要素を有する電気モータ制御装置を提供し、これら構成要素は制御装置の対称軸に対して対称に配置されている。この構成は1つの制御装置回路基板を製造し、単純に回転させて共用の入力/出力結合部とともに制御装置が後部同士を対向するように一緒に重ねることができるという長所を有する。この場合、多数の熱源を近接させて配置するという認知されている問題に対して複数の電気モータ制御装置を一緒に組み立てることが有利あることと、この対称構造なしでは「右手系」と「左手系」の異なった制御装置を設けることが必要、または制御装置を一緒に組み立てる際に入力/出力結合部を改造することが必要であることを発明者らは理解している。
【0017】
電気モータ制御装置は少なくとも1つの電源入力結合部ともう1つの制御装置の動作パラメータを監視するようになっている監視結合部とを含んでもよく、監視結合部と電源入力結合部は制御装置の対称軸に対して互いに対称の位置に配置される。この構成はコンパクトで短い物理的接続を使用して1つの制御装置の動作の監視(電源から引き出される電流等)を隣接する制御装置基板によって行うことができるという長所を有する。
【0018】
場合によって、電気モータ制御装置は第1、第2、第3のモータ制御出力信号それぞれを供給するための第1、第2、第3の出力結合部を含み、第3の出力結合部に第1のモータ制御出力信号を供給させ、第1と第3のモータ制御出力信号を置き換えた第3のモータ制御出力信号を第1の出力結合部に供給させる機能を有する制御手段を含む。この構成は2つの同一の制御装置を後部同士が対向するように組み立てて制御装置に対して物理的に同じ方向に3相出力を供給することができるという長所を有する。
【0019】
場合によって、複数の構成要素および/または入力結合部と出力結合部の少なくとも一方は制御装置の第1の面に配置され、制御装置は制御装置の第1の面と反対側の第2の面に配置した少なくとも1つの電力トランジスタを含む。この構成は制御装置のトランジスタがヒートシンクに熱的に結合されうるため、1対の電気モータ制御装置を制御装置の間に配置されている1つのヒートシンクに対して組み立てることができるという長所を有する。また、第1および第2の電気モータを提供することができ、第1の電気モータは一方の電気モータ制御装置の第1の面に隣接して配置され、第2の電気モータは他方の電気モータ制御装置の第1の面に隣接して配置されてヒートシンクと電気モータを1つの冷却多岐管に熱的に結合することができる。これにより、多岐管を通る冷却流体の流入用と流出用の1対の流体結合部を1つの冷却システムに設けることができるため、モータと制御装置の構成が更に単純化される。
【0020】
一態様では、少なくとも1つの出力結合部を含み、出力結合部は制御装置の軸に対して対称に配置されている電気モータ制御装置を提供する。この対称構造により、組立体の重量、体積と複雑さを減らして制御装置を他方の制御装置、電気モータ、冷却装置と一緒に組み立てることができる。
【0021】
一実施例では、複数の出力結合部を含み、出力結合部は制御装置の前面にある対称軸に対して対称となるよう、その面に配置されている電気モータ制御装置を提供する。いくつかの実施例では、結合部の少なくとも1つをこの軸に配置しない。別の実施例では、3つの出力結合部を含むモータ制御装置を提供する。出力結合部は制御装置の前面にある軸に対して対称となるようにその面に配置してよく、制御装置のその面は制御装置構成要素が配置されている回路基板の前面とするだけでもよい。好ましくは、結合部の少なくとも1つをこの軸に配置しない。第1および第2の制御装置の両方がこの出力端子の構成を有する実施例では、制御装置を後部同士が対向するように揃えたとき、第1の制御装置の出力端子は第2の制御装置の出力端子に対して鏡像になる。
【0022】
一実施形態では、本明細書で説明されるような複数の制御装置は1つまたはいくつかのモータに結合させずに一緒にハウジング内に重ねてよい。この構成により、1つまたはいくつかのモータを個別に配置することができる状態で制御装置のコンパクトで効率的な実装が可能となる。
【0023】
また、モータ−制御装置組立体を含むモジュール式モータ−制御装置組立体が本明細書で説明され、各モータ−制御装置組立体は電気モータ制御装置、電気モータ制御装置と結合されている電気モータ、モータと制御装置を冷却するようになっている冷却装置を含む。冷却装置はヒートシンクを含む。各制御装置は1つの出力結合部を含み、出力結合部は制御装置の軸に対して対称に配置される場合がある。各制御装置は複数の出力結合部を含む場合もある。出力結合部は制御装置の面にある対称軸に対して対称となるよう、その面に配置されてもよい。いくつかの実施例では、結合部の少なくとも1つをこの軸に配置しない。各制御装置は3つの出力結合部を含み、出力結合部は制御装置の面にある軸に対して対称となるよう、その面に配置され、結合部の少なくとも1つをその軸に配置しない場合もある。制御装置のこの面は外側の面であってよく、または、いくつかの実施例では、この面は制御装置の電子部品を搭載する回路基板の表面であってもよい。制御装置の対称軸に対して対称の位置に配置されている出力結合部を制御装置は有する場合がある。ヒートシンクは制御装置および/またはモータの間に設けてよい。冷却多岐管を設けて制御装置/モータのヒートシンクを冷却してよい。ヒートシンクは冷却多岐管と一体化される場合がある。
【0024】
この構成を使用して、2つのモータ制御装置組立体に1組の冷却装置を設けるだけでよく、その重量、体積、複雑さを減らす効果がある。更なる長所は同一の出力結合部を対称に有している制御装置を設けることにより同じ設計仕様のモータの使用が可能になるということである。更なる長所は、モジュール式組立体を筺体の中に設け、組立体の取り扱いを便利にし、車両あるいは車両エンジン室の中での組立体の組み立てをより容易にすることができるということである。筺体は両方の制御装置および/または両方のモータに使用できるようになっている電気的接続と流体冷却剤結合部を提供し、それによって更に装置の重量、大きさ、複雑さ減らしている。
【0025】
一実施例では、組立体は差動ギア駆動が設けられるようになっている。差動ギア駆動を使用して車両の前輪と後輪を駆動してよい場合がある。差動ギア駆動を使用して車両の左輪と右輪を駆動してよい場合がある。別の実施例では、組立体の制御装置はモータの駆動を調整するために結合してよい。
【0026】
一態様では、複数の出力結合部と少なくとも1つの入力結合部を含む電気モータのための電気モータ制御装置を提供し、複数の出力結合部は制御装置の面の対称軸に対して対称に配置される。場合によって、制御装置は複数の出力結合部を含み、出力結合部は制御装置の面にある軸に対して対称となるよう、その面に配置され、結合部の少なくとも1つをその軸に配置しない。場合によって、制御装置は3つの出力結合部を含み、出力結合部は制御装置の面にある軸に対して対称となるよう、その面に配置され、結合部の少なくとも1つをその軸に配置しない。場合によって、制御装置は電力入力を受けるための少なくとも1つの供給接点とインバータを含み、好ましくは少なくとも1つの供給接点は2つの供給接点を含む。場合によって、制御装置は少なくとも1つの供給接点を含み、出力結合部は制御装置の前面に配置され、インバータは制御装置の後面に配置される。場合によって、制御装置はDC入力を受けるための供給接点、3つの出力接点、DC入力を3相AC出力に変換するインバータを含む。場合によって、インバータはIGBTインバータまたはMOSFETインバータのような半導体装置である。場合によって、制御装置は第1および第2の供給接点を含み、第1の供給接点は電源の第1の端子に結合するようになっていて、第2の接点は電源の第2の端子に結合し、第2の接点に流れる電流フローを監視するために、制御装置の背面に隣接して配置されている互いに同様の制御装置を第2の接点に結合させるようになっている。場合によって、導電片は供給接点と各電源端子の間を結合するように設けられる。場合によって、制御装置は電源に制御装置を接続するための結合部を設けたケースの中に設けられる。場合によって、電源に制御装置を接続する結合部はケースの延長部の中に設けられる。
【0027】
いくつかの実施例では、電気モータ制御装置と電気モータ制御装置に結合されている電気モータを含むモータ−制御装置組立体を提供する。場合によって、組立体は複数の制御装置を含み、各制御装置はモータとモータおよび制御装置を冷却する冷却装置とに結合されている。冷却装置は少なくとも1つのヒートシンクを含んでよく、2つの隣接する制御装置がヒートシンクを共有するように、制御装置は互いに隣接して配置される。好ましくは2つのモータ−制御装置組立体とモータおよび制御装置を冷却する共有の冷却装置とがある。場合によって、冷却装置は制御装置と熱接触しているヒートシンクを含む。場合によって、制御装置は後部同士が対向するように配置され、ヒートシンクは制御装置の間に設けられ、制御装置の後面と熱接触している。場合によって、冷却装置はモータと熱接触している冷却多岐管を含む。場合によって、制御装置は対称で同一である。場合によって、制御装置を後部同士が対向するように配置したとき、制御装置の出力結合部が揃う方向を一方の制御装置は他方に対して有する。場合によって、制御装置を後部同士が対向するように配置したとき、一方の制御装置の構成要素は他方の制御装置の構成要素の幾何学的な鏡像である。場合によって、制御装置はその構成要素とその構成要素の構成に関して同じ設計仕様を有する。場合によって、制御器ケースは回転対称ではなく、制御装置を後部同士が対向するように配置したとき、ケースが一致するように一方の制御装置は他方の制御装置の制御器ケースに対して反転させられる。場合によって、供給結合部を制御器ケースの一致する延長部の中に設けて電源に制御装置を接続する。場合によって、各モータは制御装置それぞれに隣接する。場合によって、モータは同じ設計仕様を有する。場合によって、2つのモータ−制御装置組立体は軸に配置され、モータは軸の端部それぞれに駆動力を供給するように配置される。場合によって、組立体はモータに差動ギア駆動力を発生させるようになっている。場合によって、制御装置はモータの駆動を調整するように結合される。
【0028】
一態様では、前面と後面を有する電気モータ制御装置を提供し、制御装置は複数のDC入力結合部と複数のAC出力結合部とインバータを備え、インバータはDC入力結合部に結合されている入力部とAC出力結合部に結合されている出力部を有し、インバータは受けたDC供給を出力AC供給に変換するようになっていて、AC出力結合部は制御装置の前面にある制御装置の対称軸に対して対称に配置されている。場合によって、少なくとも1つのDC入力結合部が制御装置の前面に制御装置の対称軸に対して対称に配置されている。
【0029】
場合によって、DC入力結合部は対応する電源入力結合部にそれぞれ導電片を介して結合されている。場合によって、3つのDC入力結合部を設け、そのうちの2つのDC入力結合部は対応する電源入力結合部にそれぞれ銅製導電片を介して結合されている。場合によって、制御装置はケースを有し、電源入力結合部はケース延長部に配置されている。
【0030】
一態様では、後面同士が対向するように配置されるようになっている電気モータ制御装置を少なくとも2つ含む装置一式を提供し、例えば電気モータ制御装置はその後面同士が互いに対向するように配置されるようになっていて、制御装置は後部同士が対向するように配置されるとき、延長部を通して導電体を介して電力供給源への制御装置の電源入力結合部の接続が可能となるように電気モータ制御装置のケースは互いに鏡像となる。
【0031】
電気モータ−制御装置組立体は電気モータ制御装置とモータを含んでよく、制御装置とモータは冷却システムを共有してよい。電気モータ制御装置を複数個と電気モータ制御装置それぞれに対するモータとを含むモジュール式モータ組立体を提供し、隣接する電気モータ制御装置は後部同士が対向するように配置され、組立体の冷却システムを共有するように電気モータ制御装置とモータが配置されている。場合によって、冷却システムはヒートシンクと冷却剤循環システムの少なくとも一方を含む。場合によって、冷却システムはモータとヒートシンクに渡って延在する冷却多岐管を含む。一態様では、モータに結合される出力手段を含む電気モータ制御装置を提供し、出力手段は制御装置の対称軸に対して制御装置の面に対称に配置されている。
【0032】
一態様では、本明細書のいずれかに記載の電気モータ制御装置および/または本明細書のいずれかに記載のモータ制御装置組立体を有する車両を提供する。また、複数の電子構成要素または電気構成要素を有する電気モータ制御装置も提供し、これら構成要素は制御装置の対称軸に対して対称に配置されている。好ましくは、電気モータ制御装置は少なくとも1つの電源入力結合部ともう1つの制御装置の動作パラメータを監視するようになっている監視結合部とを含み、監視結合部と電源入力結合部は制御装置の対称軸に対して互いに対称の位置に配置される。場合によって、制御装置は制御装置の対称軸に対して対称に配置されている少なくとも1つのモータ制御装置出力結合部を含む。場合によって、少なくとも1つのモータ制御出力結合部は複数のモータ制御出力結合部を含む。場合によって、複数のモータ制御出力結合部は第1、第2、第3のモータ制御出力信号それぞれを供給するための第1、第2、第3の出力結合部を含み、第3の出力結合部に第1のモータ制御出力信号を供給させ、第1と第3のモータ制御出力信号を置き換えた第3のモータ制御出力信号を第1の出力結合部に供給させる機能を有する制御手段を含む。場合によって、複数の構成要素および/または入力結合部と出力結合部の少なくとも一方は制御装置の第1の面に配置され、制御装置の第1の面と反対側の第2の面に配置した少なくとも1つの電力トランジスタを制御装置は含む。また、制御装置の間に配置されて制御装置のトランジスタをヒートシンクに熱的に結合させるヒートシンクに対して組み立てた1対のこのような電気モータ制御装置を含む装置を提供する。場合によって、各制御装置の監視結合部が他方の制御装置の電源入力結合部と揃えられるように1対の制御装置が配置されている。場合によって、装置は第1および第2の電気モータを含み、第1の電気モータは一方の電気モータ制御装置の第1の面に隣接して配置され、第2の電気モータは他方の電気モータ制御装置の第1の面に隣接して配置されてヒートシンクと電気モータを1つの冷却多岐管に熱的に結合することができる。好ましくは、装置は更に冷却多岐管を含み、冷却多岐管は多岐管を冷却するための冷却流体を流すための流体流路を含んでよく、好ましくは、流体は液体を含む。場合によって、電気モータは電気モータ制御装置の第1の面に隣接して配置されて電気モータと電気モータ制御装置をヒートシンクに対して組み立てることができ、ヒートシンクは電気モータ制御装置の第2の面に隣接して配置されて少なくとも1つのトランジスタをヒートシンクに熱的に結合させることができる。好ましくは、装置はヒートシンクを含む。好ましくは、装置はモータとヒートシンクに結合するようになっている冷却多岐管を含む。
【0033】
一態様では、電気モータと第1の電気モータ制御装置を含む電気モータ組立体を提供し、第1の電気モータ制御装置はヒートシンクに熱的に結合されていて、電気モータとヒートシンクは1つの冷却多岐管に熱的に結合され、好ましくは第2の電気モータと第2の電気モータ制御装置を更に含み、第2の電気モータ制御装置はヒートシンクと第2の電気モータに熱的に結合され、1つの冷却多岐管に熱的に結合される。好ましくは、冷却多岐管は多岐管を冷却するための冷却流体を流すための流体流路を含み、好ましくは流体は液体を含む。場合によって、1つまたはいくつかの電気モータ制御装置と1つまたはいくつか電気モータとヒートシンクは共有のケースに配置される。
【0034】
一実施形態では、電気モータ制御装置は複数の結合手段を備え、各結合手段はインバータへDC供給を行うDC入力結合部、電流変換器を備えるようになっている監視結合部のうちの1つを備えることができ、付加された結合手段の少なくとも2つは制御装置の対称軸に対して対称に配置される。監視結合部は制御装置の回路基板を通る貫通孔を含んでよく、および/または電流変換器を含んでよい。この構成は、2つの制御装置を後部同士が対向するように配置したとき、DC供給が監視結合部を通って一方の制御装置に他方の制御装置で引き出される電流を監視させることができるように、一方のDC供給結合部は他方の監視結合部に隣接して配置されてよいという長所を有する。
DC直巻モータとその制御に関する態様
一態様では、DC直巻モータ、DC直巻モータの電機子に第1の電流を供給するようになっている第1の電流源、DC直巻モータの界磁巻線に第2の電流を供給するようになっている第2の電流源を含む装置を提供し、好ましくは第2の電流源を制御して第1の電流に基づいて第2の電流を供給するようになっている制御手段を更に含む。一実施形態では、第1および第2の電流源は1つの3相インバータ回路から得られ、各電流源はインバータ回路の1つまたはいくつかのレグによって供給される。一実施例では、第1の電流源はインバータ回路の第1のレグによって供給され、第2の電流源はインバータ回路の第2および第3のレグによって供給される。別の実施例では、第1の電流源はインバータ回路の第1および第2のレグによって供給され、第2の電流源はインバータ回路の第3のレグによって供給される。この場合、適切な制御信号を印加することによって、3相インバータ回路を使用して(例えば、標準的な6スイッチインバータ、ACモータに通常、適用される)DCモータを制御することができることを発明者らは認識している。この構成により、既存のDCモータにAC制御装置に取り付けてコストの増加やDC直巻モータを従来のSEMで置き換えるために必要となる手段を要さずに性能を改善することができる。
【0035】
場合によって、第1および第2の電流源は独立して制御されるようになっている。場合によって、第1および第2の電流源は3相インバータ回路を含む。場合によって、電機子は3相インバータの第1のレグと3相インバータの第2のレグの間に結合され、界磁巻線は3相インバータの第3のレグと負電源および正電源のうちの1つの間に結合される。界磁巻線は3相インバータの第1のレグと3相インバータの第2のレグの間に結合され、電機子は3相インバータの第3のレグと負電源および正電源のうちの1つの間に結合される。
【0036】
場合によって、装置は第1の電流源を制御してモータに必要なトルク出力に基づいて第1の電流を供給するようになっている制御装置を含む。場合によって、制御装置は更に第2の電流源を制御して第1の電流に基づいて第2の電流を供給するようになっている。
【0037】
一態様では、DC直巻モータを制御する方法を提供し、その方法は第1の電流源を制御してDC直巻モータの電機子に電機子電流を供給し、第2の電流源を制御してDC直巻モータの界磁巻線に界磁電流を供給する。場合によって、第1の電流源を制御することは第1の電流源を制御してモータに必要なトルク出力に基づいて電機子電流を供給することを更に含む。場合によって、第2の電流源を制御することは第2の電流源を制御して電機子電流に基づいて界磁電流を供給することを更に含む。場合によって、第1の電流源を制御することと第2の電流源を制御することは3相インバータ回路を制御することを更に含む。
【0038】
一態様では、DC直巻モータの回転速度を計算する方法を提供し、その方法はモータに関連付けられた電機子電流値と界磁電流値を得て、電機子電流値と界磁電流値に基づいてモータに対する磁束を推定し、モータに関連付けられた逆起電力値を得て、推定された磁束で逆起電力値を除算してモータの回転速度を計算する。場合によって、磁束を推定することは電機子電流値と関連付けられた第1の磁束成分を判定し、界磁電流値と関連付けられた第2の磁束成分を判定し、第1および第2の磁束成分を合計することを含む。
【0039】
場合によって、第1および第2の磁束成分を判定することは1つまたはいくつかの参照テーブルを使用して電流値と関連付けられた磁束成分を特定することを含む。
【0040】
場合によって、DC直巻モータ組立体は電機子と電機子に直列である界磁巻線を有するDC直巻モータと、DC直巻モータに結合されている3相インバータ回路と、3相インバータ回路のスイッチング素子の切り替えを制御して電機子と界磁巻線のうちの少なくとも一方に流れる電流を3相インバータ回路に制御させる制御装置とを含む。場合によって、制御装置は電機子と界磁巻線に流れる電流を制御する機能を有する。場合によって、制御装置は電機子と界磁巻線の少なくとも一方に流れる電流の大きさと方向の少なくとも一方を制御する機能を有する。場合によって、制御装置は電機子と界磁巻線の一方に流れる電流の方向と電機子と界磁巻線に流れる電流の大きさを制御する機能を有する。場合によって、3相インバータ回路は第1、第2、第3のレグを有し、各レグは組立体の正電圧源ラインと負電圧源ラインの間に結合され、各レグは1つのノードに一緒に結合されている第1および第2のスイッチング素子を含み、スイッチング素子はそれぞれ制御装置によって制御される制御ゲートを有する。場合によって、電機子は第1のレグのノードと正電圧源ラインおよび負電圧源ラインの1つとの間に結合され、界磁巻線は第1のレグのノードと第2のレグのノードの間に結合されている。場合によって、電機子は第1のレグのノードと第2のレグのノードの間に結合され、界磁巻線は第3のレグのノードと正電圧源ラインおよび負電圧源ラインの1つとの間に結合されている。場合によって、電機子は第1のレグのノードと第2のレグのノードの間に結合され、界磁巻線は第2のレグのノードと第3のレグのノードの間に結合されている。場合によって、3相インバータ回路のスイッチング素子は半導体スイッチング素子を含む。場合によって、スイッチング素子は絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、MOSFET、IGFET、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、あるいは接合型電界効果トランジスタのような電圧制御可能なインピーダンスを含む。場合によって、3相インバータ回路はACモータを制御するために設計された3相インバータ回路を含む。
【0041】
一態様では、電機子と電機子に直列である界磁巻線を有するDC直巻モータと、電機子と界磁巻線のうちの少なくとも一方に流れる電流を制御する制御装置とを含み、制御装置はACモータを制御するために設計された3相インバータ回路を含むDC直巻モータ組立体を提供する。
【0042】
本発明の一態様はDC直巻モータの電機子と界磁巻線のうちの少なくとも一方に流れる電流を制御するための、ACモータ制御用に設計された3相インバータ回路の使用に関する。本発明の一態様はDC直巻モータを制御する装置であって、DC直巻モータの電機子とDC直巻モータの界磁巻線のうちの一方に対する第1の電流の供給を制御するようになっている第1の電流制御部と、DC直巻モータの電機子とDC直巻モータの界磁巻線のうちの他方に対する第2の電流の供給を制御するようになっている第2の電流制御部とを含み、第1の電流制御部は第2の電流に基づいて第1の電流を制御するようになっている装置に関する。場合によって、第1の電流制御部はDC直巻モータの電機子への第1の電流の供給を制御するようになっていて、第2の電流制御部はDC直巻モータの界磁巻線への第2の電流の供給を制御するようになっている。場合によって、第1の電流制御部はDC直巻モータの界磁巻線への第1の電流の供給を制御するようになっていて、第2の電流制御部はDC直巻モータの電機子への第2の電流の供給を制御するようになっている。場合によって、第1の電流制御部と第2の電流制御部の少なくとも一方は制御電圧を印加してACモータを制御するためのインバータ回路の少なくとも1つのレグを制御することによって電流を制御する機能を有する。場合によって、インバータ回路は多相インバータ回路を含む。
【0043】
場合によって、インバータ回路は3相インバータ回路を含み、装置は更にインバータ回路を含んでもよい。場合によって、インバータ回路はACモータを制御するために設計されている。場合によって、装置はDC直巻モータおよび/または参照テーブルを保存している記憶部を含んでよく、第2の電流に基づいて第1の電流を制御することは第1の電流と参照テーブルに基づいて第2の電流値を制御することを含む。
【0044】
一態様では、DC直巻モータの制御システムを適合させる方法を提供し、その方法はインバータ回路を設けてDCモータの電機子と界磁巻線に電流を供給し、電機子電流と界磁電流の一方が電機子電流と界磁電流の他方に基づいて制御されるようにインバータを制御するようになっている制御手段を設ける。
【0045】
本発明の実施例はソフトウェア、ミドルウェア、ファームウェア、ハードウェア、あるいはそれらの任意の組み合わせで実施される制御手段を含んでよい。本発明の実施形態はプロセッサをプログラムして本明細書で説明した1つまたはいくつかの方法を実行するためのプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品を含み、このような製品はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として提供してもよく、ネットワーク上で伝送されるコンピュータ読み取り可能な信号として提供してもよい。本発明の実施形態は本明細書のいずれかに従ったデータ構造を備えるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とコンピュータ読み取り可能な信号、媒体によるデータファイル、あるいはデータベースを提供する。
【0046】
装置の態様は方法の態様に適用してもよく、その逆を行ってもよい。装置の実施形態を適合させて方法の実施形態の特徴を実施してよく、本明細書で説明されているいずれかの実施形態の1つまたはいくつかの特徴は本明細書の本文で定義されているか、あるいは請求項で定義されているかにかかわらず、本明細書で説明されている他の実施形態のいずれかと独立して組み合わせてよいことは当業者にとっては当然である。
2台の制御装置のクロスチェックに関する態様
一態様では、出力信号を供給して電力供給器の動作を示す健康表示器と安全装置とを含む電気モータ制御装置であって、安全装置はもう1つの電気モータ制御装置から健康表示器信号を受信するための信号受信手段ともう1つの電気モータ制御装置からの表示器信号に基づいて電力供給器の動作を制御するようになっている制御手段とを含む電気モータ制御装置を提供する。場合によって、安全装置は表示器信号に基づいて電力供給器を作動させるようになっている。場合によって、安全装置は表示器信号が受信されない場合、電力供給器を作動させないようになっている。場合によって、安全装置は表示器信号の受信に応じて電力供給器を作動させるようになっている。
【0047】
場合によって、制御手段は表示器信号の少なくとも1つのパラメータを判定して少なくとも1つのパラメータに基づいて電力供給器を制御するようになっている。場合によって、少なくとも1つのパラメータはDC電圧レベル、周波数、相、振幅波高値、振幅RMS値、デューティサイクルのうちの1つを含む。場合によって、健康表示器は電力供給器の動作を示すための時間変化する出力信号を供給するようになっている。場合によって、時間変化する信号は矩形波のようなパルス状の出力信号を含む。場合によって、電気モータ制御装置が安全に動作していると判定された場合だけ、健康表示器は表示器信号を供給するようになっていて、例えばモータ制御装置の構成要素が機能していて、および/またはもう1つの同様の制御装置からの信号が車両の安全な動作を示しているという判定に基づいている。場合によって、健康表示器は少なくとも1つの動作パラメータの判定に基づいて表示器信号を供給するようになっている。場合によって、モータ制御装置のDC電流の方向、もう1つのモータ制御装置のDC電流の方向、キースイッチ電圧、制御装置の電力トランジスタ(IGBT)の温度、制御装置の論理制御部の温度、制御装置に関するDCリンクトラックの電圧および/または温度、ADC較正電圧、アナログ入力、1つまたはいくつかのプログラム可能またはプログラム不可の供給電圧(Vcc)監視、正弦−余弦エンコーダデータ、レゾルバ測定、速度フィードバック測定、他のデジタル入力、モータPTC入力を含む一覧から少なくとも1つの動作パラメータは選択される。
【0048】
場合によって、判定は少なくとも1つの動作パラメータを閾値と比較することを含む。
【0049】
場合によって、電気モータ制御装置は電力供給器を更に含み、電力供給器は電気走行モータに電源を供給する機能を有する。
【0050】
場合によって、制御装置は制御手段を含み、制御手段は電気モータ制御装置の駆動方向と第2の電気モータ制御装置の駆動方向との比較に基づいて第1の電気走行モータの電源を制御するようになっている。場合によって、制御装置は電気モータ制御装置の駆動方向を第2の電気モータ制御装置の駆動方向と比較する機能を有する比較器を含む。場合によって、制御装置は電気モータ制御装置の駆動方向を感知するためのセンサと第2の電気モータ制御装置の駆動方向を感知するためのセンサの少なくとも一方を含む。場合によって、駆動方向を感知することは電気モータ制御装置の電源電流の方向を感知することを含む。場合によって、制御装置は第1の電気走行モータに電源を供給するための電力供給器を含む。
【0051】
本発明の態様は電気車両のための駆動装置および/または駆動装置を含む車両を含む。
【0052】
一態様では、電気モータ制御装置を動作させる方法を提供し、その方法は本明細書で定義されている方法で、および/または図12〜15のいずれかを参照して十分に説明されているように電気モータを動作させる。コンピュータプログラム製品も提供され、そのコンピュータプログラム製品は電気モータ制御装置のプロセッサをプログラムして第2の電気モータ制御装置の供給電流を監視することで電気モータに駆動信号を供給することによって電気モータを制御する機能を有するプログラム命令を含む。コンピュータプログラム製品も提供され、そのコンピュータプログラム製品は電気モータ制御装置のプロセッサをプログラムして第2の電気モータ制御装置からの制御信号に応じて電気モータに駆動信号を供給することによって電気モータを制御する機能を有するプログラム命令を含む。
モータ振動の減衰の態様
一態様では、電気車両のためのトルク制御装置を提供し、その装置は運転者ユーザインタフェースまたは車両制御装置からのトルク要求信号と電気モータの角速度を示す速度センサ信号とを受信するように結合されている制御装置を含み、制御装置はトルク要求信号と速度センサ信号に基づいて変更されたトルク要求制御信号を供給するようになっている。この構成は、モータの急激なトルク応答を車両が確実に滑らかな動作となるように変更することができるという長所を有する。
【0053】
装置は速度センサ信号を処理するためのフィルタを含む場合がある。フィルタは感知された速度信号をフィルタにかけて感知された速度信号の選択された周波数成分と関連付けられた周波数成分を他の周波数成分に対して強調するようになっている場合があり、場合によって、選択された周波数成分は車両の駆動装置の特徴的な周波数と関連付けられている。
【0054】
この場合、発明者らは、車両駆動装置は特徴的な周波数を有し、例えば、この周波数は車両駆動装置の構成要素のねじり剛性および/またはそれらの慣性モーメントに関連し、選択フィルタを適用してトルクの変化に応答する特徴的な揺れを車両の応答性が悪化することなく選択的に減衰させることができるということを認識している。
【0055】
フィルタをかけることは車両駆動装置の特徴的な周波数と関連付けられていない周波数成分を減衰させることを含む場合があり、例えば少なくとも1つのノイズ周波数成分を減衰させるようになっているノッチフィルタを使用する。この場合、車両システムに特定のノイズ源特性があり、トルク制御を悪化させるおそれがあることを発明者らは認識している。
【0056】
場合によって、制御装置はフィルタの伝達関数を、例えば車両の動作状態に応じて変える機能を有する。この構成は、電気ノイズ源が車両および/またはモータの速度等の動作状態に依存して変化しうる振幅特性および/または周波数特性を有する場合に有利である。
【0057】
制御装置は受信されたトルク要求信号から感知された速度信号に基づく減算信号を減算するようになっていて、例えば減算信号の大きさが基準信号レベルを超えないように、制御装置は減算信号を制限するようになっている場合がある。この構成は、操作者による操縦に対する車両の応答性が振動減衰システムによって過度に抑制されないという長所を有する。好ましくは、減算信号は感知された速度信号の変化率に基づいている。
【0058】
場合によって、基準信号レベルはモータのための最大トルク要求信号に基づき、場合によって、制御装置は基準信号レベルを設定するための機能を有する。この構成は、車両の応答を動作要求に従って、例えば車両の積載量に従って、「調整する」ことができるという長所を有する。本発明のこれらの実施例はモータ制御の減衰/応答性を車両の使用中に調整できるという長所を有する。
【0059】
場合によって、制御装置は変更されたトルク要求信号と受信されたトルク要求信号の比較に基づいて代用トルク要求信号を供給するようになっている。例えば、変更されたトルク要求信号がトルク要求信号と反対の符号の場合、制御装置はゼロトルク要求信号を変更された信号の代わりに用いるようになっていてもよい。この構成は、モータ速度の揺れを減衰させてもモータトルク出力の想定外の、または不要な逆転を引き起こすことがないという長所を有する。
【0060】
いくつかの実施例では、代用トルク要求信号は少なくとも1つのあらかじめ定められたトルク要求信号値を含む一覧から選択され、例えば制御装置は車両および/またはモータの速度のような車両の動作状態に基づいて代用トルク要求信号を選択するようになっていてもよい。この構成は、例えば、車両トルク要求が突然ゼロに固定される必要がなく車両あるいはモータの瞬間速度と合致する低い値に設定されるように代用トルク要求を選択することができるという長所を有する。
【0061】
速度センサ信号は車両の車輪の角速度を感知することによる速度センサ信号を含む場合がある。この構成は、車両の実際の速度を使用してモータトルク要求を制御することができるという長所を有する。場合によって、速度センサ信号は車両のモータ角速度を感知することによる信号と車輪の角速度を感知することによる信号を含む。
【0062】
一態様では、電気モータ制御装置に印加されるトルク要求制御信号を車両電気モータのために受け取り、電気モータの角速度を示す感知された速度信号を受信し、受信されたトルク要求信号と感知された速度信号に基づいて変更されたトルク要求信号を決定する方法を提供する。
【0063】
好ましくは、感知された速度信号は角速度の変化率を含む。場合によって、速度センサ信号は感知されたトルク信号を含む。
【0064】
場合によって、その方法は受信されたトルク要求信号から感知された速度信号に基づく減算信号を減算して変更されたトルク要求信号を決定することを含む。例えば、減算信号の大きさが基準値を超えないように、減算信号を制限してもよい。この構成は、モータの振動を減らすためにトルク要求を調整しても車両の応答性が悪化しないという長所を有する。いくつかの実施例では、最大順方向トルク調整量は第1の基準値を超えず、最大逆方向トルク調整量は第2の基準値を超えないように基準値を選択してもよい。この構成は、車両の挙動を動作モードに合うように適合させることができる長所を有する。
【0065】
本発明の実施例は本明細書のいずれかに記載のトルク制御装置を含む電子装置を提供する。本発明の実施例は電気モータと本明細書のいずれかに記載のトルク制御装置を含む車両を提供する。
【0066】
車両を参照して説明してきたが、モータ速度の揺れの問題は電気モータが使用される他のシステムでも起こるかも知れないので、本発明の実施形態は車両以外のシステムの上記の問題に対処し、例えば場合によって、本方法は油圧システムで電気モータを制御するために適用してもよい。
【0067】
一態様では、電気モータを制御する方法を提供し、その方法はトルク要求を示す制御信号を受信し、モータの速度出力に基づいてセンサ信号を受信し、センサに基づいて制御信号を変更し、変更された制御信号をモータに供給する。
【0068】
一態様では、電気モータ制御システムを提供し、その電気モータ制御システムは制御信号を受信するための制御入力部、モータ速度出力に基づいて感知された信号を受信するための感知入力部、感知された信号に基づいて制御信号を変更して変更された制御信号をモータに供給するように適合された制御手段を含む。好ましくは、感知される信号はモータの角速度の変化率に基づいている。
【0069】
本発明の実施例は(FGPA、ASIC、または他のハードウェアのような)ハードウェアで、またはソフトウェア、ミドルウェア、ファームウェア、あるいはそれらの任意の組み合わせで実施してよい。本発明の実施形態はプロセッサをプログラムして本明細書で説明した1つまたはいくつかの方法を実行するためのプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品を含み、このような製品はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として提供してもよく、ネットワーク上で伝送されるコンピュータ読み取り可能な信号として提供してもよい。本発明の実施形態は本明細書のいずれかに従ったデータ構造を備えるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とコンピュータ読み取り可能な信号、媒体によるデータファイル、あるいはデータベースを提供する。
【0070】
本明細書で説明されているいずれかの実施形態の1つまたはいくつかの特徴のいずれも本明細書の本文で定義されているか、あるいは請求項で定義されているかにかかわらず、本明細書で説明されている他の実施形態のいずれかと独立して組み合わせてよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
ここで、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態をあくまで例として詳細に説明する。
図1図1は電気モータと制御装置を含むシステム示す。
図2図2Aと2Bは本発明による第1および第2の制御装置の前面を示す。
図3図3は2つのモータと2つの制御装置を含むモジュール式モータ−制御装置組立体を示し、ヒートシンクが制御装置と冷却多岐管の両方に使用される。
図4図4は第1および第2の制御装置の外形を示し、各制御装置は他方の制御装置に流れる電流を監視する延在端子を有する。
図5図5は模式的にDC直巻モータを示す。
図6図6はDCモータとモータ逆転回路を模式的に示す。
図7a図7aは4端子DC直巻モータのための電力回路の構成を模式的に示す。
図7b図7bは4端子DC直巻モータのための電力回路の別の構成を模式的に示す。
図8図8は3端子DC直巻モータのための電力回路の構成を模式的に示す。
図9図9は本発明の実施形態による電機子電流と界磁電流を生成する制御アルゴリズムを示す。
図10図10は本発明の一実施形態によるモータ速度を判定する方法を示す。
図11図11は電気車両を非常に模式的に示す。
図12図12はモータ制御装置を示す。
図13図13は外部制御ユニットと共に2つのモータ制御装置の構成を示す。
図14図14は2つの相互接続されたモータ制御装置を示す。
図15図15図13と14の特徴を組み合わせた例を示す。
図16図16は車両を非常に模式的に示す。
図17図17図16の車両で使用された制御システムの機能ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
AC電気モータとモータ制御装置
図1の電気モータシステム10はモータ2とモータの動作を制御する制御装置20を含む。制御装置20はモータ2のための3相交流(AC)供給を直流(DC)電源6(この例ではバッテリー)から得るようになっている。また、電気モータシステム10は冷却装置4を含む。冷却装置4はモータ2と制御装置20の両方に結合され、モータ2と制御装置20の動作によって発生させる熱を除去する。モータの駆動出力により、車両の駆動車軸に結合したドライブプレート8を駆動するためのトルクが発生する。
【0073】
制御装置20は、必要とされるAC電源をモータに供給するため、電源6のDC出力に対しフィルタリング処理と調整処理を実行するようになっている。
【0074】
制御装置20は、DC入力をモータ2で使用するための3相AC出力に変換するインバータ28を含む。任意の適当な形式のインバータを使用してもよい。好ましい例では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)インバータが使用される。場合によっては、MOSFETあるいは他のIGFETを使用することもできる。IGBTインバータの好ましい特性として、高効率と高速スイッチングがあげられる。
【0075】
図2Aはプリント回路基板(PCB)22を含む制御装置20の一例の前面図を示す。図2Aは制御装置を内部に収容する制御装置ケース21も示す。PCB22は供給接点係合部26a、26b、26cを含み、各係合部は係合部に流れる電流を感知する電流変換器を含んでもよい。供給接点係合部26bは図示しないDC供給の第1の端子に結合する供給接点B+を含む。供給接点係合部26cはDC供給の第2の端子(図示せず)に結合する供給接点B−を含む。また、PCB22はAC出力端子24a、24b、24cと、インバータ28(図2Aに点線で示す)を含む。供給接点B+は電源6に接続されるように延びる電線が通るケース21の延長部33に配置されたバッテリー端子32a、32bに、銅製アーム35bによって電気的に結合されている。供給接点B−はケース21の延長部に配置されたバッテリー端子32bに、銅製アーム35aによって電気的に結合されている。
【0076】
DC供給接点26b、26cはインバータ28の入力にそれぞれ結合されている。インバータ28の出力はAC出力端子24a、24b、24cに結合されている。各出力端子はモータ2の相巻線にそれぞれ結合されることができる。
AC出力端子24a、24b、24cはPCB22の軸に対して対称に配置されている。この例では、同様にDC供給接点係合部26a、26b、26cも対称に配置されている。
【0077】
PCB22は、他の機能部30を含でいてもよく、機能部30は、例えば、フィルタリング制御と調整制御を行うように構成されたマイクロプロセッサ、電源、コンデンサ、インダクタを含んでいてもよい。
【0078】
図2BはPCB22’を含む第2の制御装置20’の前面図を示す。図2Bは制御装置20’を内部に収容する制御装置ケース21’も示す。制御装置20’はPCB22’の方向以外は制御装置20と同じである。PCB22および制御装置ケース21と比較して、PCB22’はその制御装置ケース21’に対して180度回転している。制御装置ケース21およびPCB22と比較して、制御装置ケース21’は軸x−xに垂直な軸に関して、PCB22’に対し反転している。
【0079】
PCBを回転させた効果は、制御装置をその縁部23、23’を揃えてその後面が互いに向き合うように配置すると、制御装置20’の出力端子24a’、24b’、24c’が出力端子24a、24b、24cに揃えられることである。制御装置20の供給接点係合部26a、26b、26cは制御装置20’の供給接点係合部26a’、26b’、26c’と揃えられる。ケースを反転させることは、これらの制御装置ケース21,21’の輪郭が一致するという意味を持つ。このようにこれらの制御装置が配置されるとき、ヒートシンクはインバータの電力トランジスタに隣接するこれら2つの制御装置の背面の間に置くことができる(主要な熱源は制御装置である)。ヒートシンクは同時に両方の制御装置を冷却するように動作するので、別個のヒートシンクを各制御装置のために設ける必要がない。図3は第1および第2の制御装置がヒートシンク12のいずれかの側の軸10上に配置される構成を示す。
【0080】
上記の制御装置はモータや関連する制御装置の組からなるモジュール式組立体を形成することができる。単に回転させて、後部同士を対向させた形態で組立てることができる同一のPCB22、22’を設けるという選択をしたので、PCBの製造と、モータと制御装置をモジュールとして重ねたものの組立て要件が単純になる。
【0081】
さらに詳細に図3を参照すると、第1および第2のモータ2、2’と、第1および第2の制御装置の20、20’と、ヒートシンク12および冷却多岐管14を含む共有の冷却装置とを含み、筺体40内に収容されたモジュール式組立体50、バッテリー端子32a、32bを電源6に結合させるように延長部33を通って延在する供給結合部160が示されている。
【0082】
モータと制御装置は軸10に配置されてドライブプレート8に結合されるようになっている。第1のモータ2は軸10の第1の端部に配置される。第1のモータ2は第1の制御装置20の前面34に隣接している。インバータを含む第1の制御装置20の背面36はヒートシンク12に隣接し熱接触している。ヒートシンク12は第2の制御装置20’の背面36’にも隣接し熱接触している。第2の制御装置20’の前面34’は軸10の第2の端部に配置される第2のモータ2’に隣接している。第1および第2のモータと第1および第2の制御装置は筺体40と一体化されてよい冷却多岐管14を共有する。冷却多岐管14は吸込口16と吐出口18を有する。冷却多岐管14はヒートシンク12と物理的および熱的に接触し第1および第2のモータ2、2’と熱接触している。
【0083】
DC供給結合部160は第1および第2の制御装置20、20’に結合されている。第1のモータ2は第1の制御装置20と電気的に接触している。電気的な接触は出力端子24a、24b、24cそれぞれとモータ2の相巻線との間の電気結合部を通して行われる。第2のモータ2’は第2の制御装置20’と電気的に接触している。電気的な接触は出力端子24a’、24b’、24c’それぞれとモータ2’の相巻線との間の電気結合部を通して行われる。
【0084】
DC電力はDC供給結合部160を経由して制御装置20および20’に供給される。第1の制御装置20は供給されたDCを第1のモータ2のために3相ACに変換する。AC信号は第1のモータ2の回転子にトルクを発生させ、これにより軸10の第1の端部に駆動力が発生する。第2の制御装置20’とモータ2’も同様に動作して軸10の第2の端部に駆動力を発生させる。モータ出力は各駆動結合部、例えば、ドライブプレートに結合されて各駆動シャフトを駆動してよい。
【0085】
第1および第2の制御装置20、20’を電気的に接触させる場合がある。すなわち、第1の制御装置20のDC端子B+、B−は第2の制御装置20’の対応する端子B+、B−に電気的に結合される。各制御装置は前面にB+端子を有し(26b、26b’)後面にB−端子を1つ有する(制御装置20用の26aと制御装置20’の26c)。1対の制御装置それぞれが両方の制御装置の性能を監視できるようにしている他のユニットの電流センサをB−端子が通っている。
【0086】
冷却システムは次のように動作する。冷却多岐管14は吸込口16から流体冷却剤を受け入れる。冷却剤は第1および第2のモータ2、2’から熱を吸収する。また、多岐管14はヒートシンク12に流体を供給しヒートシンク12は第1および第2の制御装置20,20’の後面34,34’それぞれに配置されているインバータ28、28’から熱を除去する(図4に示すように)。この例では、ヒートシンクに供給される流体は冷却多岐管に戻って循環する。冷却流体は吐出口18を経由して冷却多岐管から出る。
【0087】
複数のモータと制御装置を1つの制御装置に対して1つのモータという割合で軸10に筺体40内で配置する場合がある。後部同士が対向するように配置された制御装置はヒートシンクを共有することができる。2つまでの制御装置なら所定のヒートシンクを共有することができる。すべてのヒートシンクは冷却多岐管14に物理的および熱的に接触している。一般に、駆動力が軸10の端部に発生するように軸10の端部にモータを重ねる。
【0088】
モジュール式組立体50の長所は、各制御装置に冷却ユニットを設けるのではなく、上記のように第1および第2の制御装置20、20’が冷却ユニットを共有していることである。そのために、2つ以上のモータと制御装置の組合せを有するエンジンであれば、少なくとも1つの冷却ユニット4をなくすことでモジュール式組立体は大幅にエンジンの重量と体積を減らす。
【0089】
筺体40は一体化された電気接続部(例えば、固定子巻線への相入力用、回転子位置エンコーダ用、DC入力用)を有する場合がある。これら接続部は組み合わせた装置の大きさと重量を更に最適化するのに役立つ。
【0090】
第2のPCB22’を相対的に回転させて電気端子が第1のPCB22の電気端子に対し反転する結果になることが分かる。この結果は第1および第2の制御装置20、20’を図3に示すように配置すると、その出力端子24、24’は次のように揃えることを意味する。端子24aは24c’に揃える。端子24bは24b’に揃える。端子24cは24a’に揃える。この例では、端子24aと24a’は第1の電気相を出力し、端子24bと24b’は第2の相を出力し、端子24cと24c’は第3の相を出力する。同一のモータが図3で示されるように制御装置に接続され同一のモータ−制御装置結合部が使用されると、モータ2と2’は反対方向にトルクを発生させる。相などを出力する端子が揃えられるように制御装置の出力端子が並ぶことが望ましい場合がある。すなわち、任意選択で、第1のPCB20または第2のPCB20’にスイッチを設けて端子24aおよび24cと24a’および24c’から出力される相をそれぞれ反転させてもよい。あるいは、回路を設けてそれら端子の相を自動的に切り替えてもよい。多数の制御装置とモータを互いに並べて重ねる場合、そのように自動的に切り替えて制御装置を重ねたもの全体に渡って相出力を調整できるようにしてもよい。
【0091】
PCB22’が回転すると供給接点係合部26’も反転する。未使用の接点係合部を使用して別の制御装置に流れる電流を監視する等の付加機能を実行することができる。図4は電流を監視するための構成を示し、共有のヒートシンク12の両側で後部同士が対向するように配置された第1および第2の制御装置20、20’を示している。ここに示す例では、第1の制御装置20の未使用の接点26cは第2の制御装置20’の電流監視変換器に結合されている。この結合はインバータ22とヒートシンク12を通って延在する端子38を用いて行われる。同様に、第2の制御装置20’の未使用の接点26a’はインバータ28’とヒートシンク12を通って延在する端子38’を経由して第1の制御装置20の電流監視出力に結合されている。
【0092】
あるいは、バッテリー正極端子が供給接点26b、26b’によって各制御装置に設けられるように、かつ制御装置を後部同士が対向するように配置して揃えられた供給接点によってバッテリー負極端子が各制御装置に設けられるように、電源6を第1および第2の制御装置の20、20’の供給接点に接続する場合もある。図2Aと2Bを参照すると、すなわち、供給接点24aが第1の制御装置20のバッテリー負極端子を提供する場合、供給接点24c’が第2の制御装置20’のバッテリー負極端子を提供し、供給接点24cが第1の制御装置20のバッテリー負極端子を提供する場合、第2の制御装置20’の供給接点24a’がバッテリー負極端子を提供する。この構成により制御装置20、20’を並列に電源6に接続することができる。いくつかの例では、前面に26b(B+端子)を備え、後面に26c(B−端子)を備えるが、この場合、26aは端子ではなく電流センサを収容できる開口である。電流センサがこの位置に配置される場合、その開口を通って隣接する制御装置に流れる電流を感知するために使用できる。
【0093】
上記のように、モータは3相モータであり、制御装置20は3相ACを供給する。別の例では、モータを単相モータとし、制御装置は単相ACを供給してもよい。別の例では、モータを2相モータとし、制御装置は2相ACを供給してもよい。モータは単に多相モータであって、複数の相で動作すればよい。上記のように、電源6はバッテリーを含む。他の例では、電源は燃料電池、電気二重層コンデンサ(EDLC)、または他のDC電源であってもよい。
【0094】
上記のインバータにはIGBTを採用したが、MOS−FET、IG−FET、またはBJT等の他種の電圧制御インピーダンスを使用してもよい。
DC直巻モータ制御
本発明のDC直巻モータ制御の実施形態は市販のDC直巻モータを他励モータと同様な方式で動作させることを意図し、DC直巻モータに由来する高始動トルクを発生する能力を維持しながらモータ動作特性のより高度な制御を提供する。図7aと7bは3相インバータに4端子DC直巻モータを接続した2つの構成を示す。3相インバータ回路が知られているが、最近では高電流を管理することができるインバータが適当な価格で市販されるようになり、例えば、Sevcon(RTM)Gen4(RTM)ACモータ制御装置があげられる。インバータの各レグは同じ電流容量を有し、電機子巻線と界磁巻線に等しい電流を供給することができる。図7aの構成で、3相インバータの第1のレグは正電圧源(V+)と負電圧源(V−)の間に直列に結合されたトランジスタ1012aと1012bを含む。DC直巻モータの電機子1004はトランジスタ1012aおよび1012bの間の第1のノードと正電圧源との間に接続される。3相インバータの第2および第3のレグはそれぞれトランジスタ1014aと1014b、1016aと1016bを含み、これらトランジスタは正電圧源と負電圧源の間に直列に結合されている。界磁巻線1006はトランジスタ1014aおよび1014bの間の第2のノードとトランジスタ1016aおよび1016bの間の第3のノードとの間に結合されている。図示されている電機子1004は正電圧源に結合され、同様に負電源ラインに結合されることが分かる。
【0095】
動作時、制御パルス列を含む制御信号はトランジスタ1012aと1012bのゲート結合部に印加されて電機子巻線1004に流れる電流を変調する。3相インバータの各レグで、2つのトランジスタ(aとb)は常にどちらか1つだけが導通するようにコンプリメンタリに制御されることが分かる。したがって、トランジスタ1012aと1012bに印加される制御電圧をパルス幅変調することにより電機子電流lを制御することができる。界磁巻線1006は3相インバータの2つのレグの間に結合されているため、トランジスタ1014a、1014b、1016a、1016bを制御して界磁巻線1006に流れる電流Ifの方向を逆にすることによって、モータの回転方向を制御することができる。同様に、例えばパルス幅変調を使用することによって、界磁電流Ifの大きさをトランジスタ1014a、1014b、1016a、1016bの制御電圧を変調することによって制御することができる。
【0096】
図7bの構成で、電機子1004は第1のノードと第2のノードの間に結合され、界磁巻線1006は第3のノードと正電源の間に結合される。図7bについては、界磁巻線は代わりに第3のノードと負電源の間に結合することもできる。
【0097】
図7bに示す回路の動作時、モータの回転方向を逆にするために、3相インバータのトランジスタのいずれかを適切に切り替えることによって、電機子1004に流れる電流lの向きを変える。
【0098】
当然のことながら、図7aと7bに示すような3相インバータ回路は図を分かりやすくするために省略された部分を更に含む。特に、環流ダイオードがスイッチ1012a、1012b、1014a、1014b、1016a、1016bそれぞれに付随することが考えられる。
【0099】
状況によって、図7bの構成は図7aに示すそれを上回る長所を有する場合がある。特に、界磁巻線は一般に電機子より極めて高いインダクタンスを伴うので、モータの回転方向を逆転させる場合、一般に電機子電流は、より速く逆転する。さらに、図7bの構成では、たとえ逆起電力が負になっても(例えばモータが惰性で動作しているとき)、常に電機子電流Iを制御できることが保証されている。対照的に、図7aの構成では、負の起電力によりトランジスタ1012aに付随する環流ダイオードを経由して電機子の両端が短絡して電機子電流が制御不能になってしまうおそれがある。
【0100】
図8は3相インバータを使用して端子を3つだけ備えるDC直巻モータを制御する構成を示す。図8の構成では、電機子1004は3相インバータの第1のノードと第2のノードの間に結合され、界磁巻線1006は第2および第3のノードの間に結合される。
【0101】
図9はトルク要求(TDemand)に基づいて電機子電流Iと界磁電流Iを供給する制御アルゴリズムを示す。図9のアルゴリズムは図7a、7b、または8で示す構成のいずれとも組み合わせて使用することができる。当然のことながら、各スイッチは異なる例それぞれで異なる制御が行われる。例えば、図7aの場合、スイッチ1012aと1012bを制御して電機子電流を制御するが、図7bでは、スイッチ1012a、1012b、1014a、1014bを制御して電機子電流を制御する。
【0102】
図9を参照した次の説明は図7aに示す回路に関する。
【0103】
図示したアルゴリズムによれば、トルク要求を受信する第1の関数要素1050はトルク要求を制限する(例えば、トルク要求が最大順方向トルクまたは最大逆方向トルクを超えないように制限する)。この制限はあらかじめ定めていてもよいし、モータに関する測定量に基づいて計算してもよく、例えば、モータを過度の加熱から守るために温度を測定してもよいし、あるいは他の基準に基づいてもよい。関数要素1050の出力はモータによって供給されるべきトルク要求(Tlim)である。
【0104】
トルク要求出力(Tlim)は第1の増幅器1052に供給され、第1の増幅器1052は要求されたトルク出力を供給するために必要とされる電流に対応する電機子電流要求を表す信号にトルク要求を変換する。そして、この電流要求信号は第1の減算器1058、第1のPID制御装置1054、第2の増幅器1056からなるフィードバック制御ループに入力される。このフィードバックループの(第2の増幅器1056からの)出力はトランジスタ1012a、1012bをスイッチングして(これは図7aに示す例にも当てはまるが、正確には制御されるスイッチは他の構成では異なる場合があり、例えば、図7bでは電機子制御は1012a、1012b、1014a、1014bで行われる)電機子電流を調節し、第1の増幅器1052からの電流要求信号に基づくモータ電機子電流Iを供給するようになっている。
【0105】
電機子電流Iは第2の関数要素1060にも供給される。第2の関数要素1060はトルク磁束テーブルを含み、これは単に選択肢の1つであり、本技術分野の他の方法も知られている。トルク磁束テーブルは供給される電機子電流値を界磁電流要求値に変換するために第2の関数要素で参照テーブルとして使用される。トルク磁束テーブルは、実験的に得られたモータの特性から生成してもよいし、モータについて計算された性能に基づくものでもよい。そして、出力界磁電流要求値はもう1つのフィードバックループに入力され、このループは第2の減算器1062、第2のPID制御装置1064、第3の増幅器1066を含み、界磁電流要求値に基づいて出力界磁電流Ifを調節する。このフィードバックループの(第3の増幅器1066からの)出力はトランジスタ1016a、1016bをスイッチングして界磁電流を調節し、第3の増幅器1066からの電流要求信号に基づくモータ界磁電流Iを供給するようになっている。
【0106】
当然のことながら、トルク磁束テーブルの使用はIfを得る一つの方法にすぎず、本技術分野で知られる他の方法を使用してIや他のパラメータからIを得てもよい。
【0107】
電機子電流Iに基づいて界磁電流Ifを計算すると、図9の制御アルゴリズムによって界磁は必然的に弱められる。これはモータの逆起電力が増加してしまい、使用できる電圧源がモータに必要な電機子電流を供給することができなくなるからである。しかしながら、界磁電流Iは電機子電流Iに基づいて計算されるので、電機子電流の減少に比例して計算される界磁電流も必然的に減少する。
【0108】
本開示の文脈で当業者には理解されるように、図9は模式図にすぎず、装置に実装する場合、別個の機能構成要素として図示された1つ、または複数の要素を1つの制御要素として設けてもよいし、複数の要素に更に細かく分割してもよい。加えて、モータの界磁電流と電機子電流はトランジスタに印加される制御信号をパルス幅変調(PWM)して調節してもよい。図9のアルゴリズムの要素間に通す信号はPWM信号を表わす単一値または多値パラメータであってもよいし、いくつかの例ではPWM信号を含んでもよい。
【0109】
図10図5のアルゴリズムに従って制御されているDC直巻モータのための速度計算アルゴリズムを示す。多くの応用で、正確にモータの回転速度を判定できることは有用であるが、直接、モータの速度を測定することは難しい可能性がある。図10のアルゴリズムはモータに流れる電機子電流および界磁電流、電機子電圧V、バッテリー電圧/電源電圧Vbat等の容易に測定可能または既知の値に基づいて速度を計算する方法を提供する。
【0110】
速度制御アルゴリズムはモータに対する逆起電力を判定してこれを界磁巻線と電機子巻線によるモータ内の磁束の推定量で除算するという動作をする。界磁電流と電機子電流が独立して制御されるモータでは、磁束の判定はこれらの値の両方を考慮に入れなくてはならず、複雑な問題が更に発生する。
【0111】
逆起電力を計算するために、第1の減算器1068で電機子電圧をバッテリー電圧から減算する。そして、第1の減算器1068の出力は第2の減算器1070に供給される。電機子電流は増幅器1076に供給され、増幅器1076は電機子の抵抗と電機子電流を乗算して電機子でのIR損失(すなわち電機子抵抗による電機子両端の電圧降下)を判定する。そして、この値は第2の減算器1070に入力され、第2の減算器1070で第1の減算器1068の出力から減算されて逆起電力値を判定する。
【0112】
電機子電流値Iは第1の磁束参照テーブル1078にも入力され、第1の磁束参照テーブル1078は電機子電流Iに関連付けられた第1の磁束値を出力する。界磁電流Iは第2の磁束参照テーブル1080に入力され、第2の磁束参照テーブル1080は界磁電流に関連付けられた第2の磁束値を出力する。そして、第1および第2の磁束値は加算器1082に入力されてモータ内の全磁束Ψが計算される。そして、計算された逆起電力値と全磁束は除算器1072に入力され、除算器1072では逆起電力値を全磁束で除算して速度値を生成した後、この速度値を関数要素1074でスケーリングしてモータのために較正された速度値を供給する。
【0113】
したがって、図10のアルゴリズムはモータに供給される電気の容易に測定可能な電気的パラメータに基づいて正確な速度値を計算することができる。インバータについてIGBTトランジスタを参照して説明してきたが、これ単に模範例にすぎず、任意の電圧制御可能なインピーダンス使用してよく、例えば、MOSFET、IG−FET、またはBJTを使用してよい。
【0114】
図11は4つの車輪2102、2104、2106、2108を有する車両2100を示す。車輪2106と2108は車両の前部で互いに反対側にある。車輪2102と2104は車両2100の後部で互いに反対側にある。
【0115】
車輪2102は電気モータ2101に結合され、電気モータ2101はモータ制御装置2002に電気的に結合されている。車輪2104は電気モータ2103に結合され、電気モータ2103はモータ制御装置2002’に電気的に結合されている。車両制御ユニット2126はモータ制御装置2002、2002’の両方に結合されている。
【0116】
電気モータ2101、2103は制御装置2002、2002’の制御の下で互いに独立して車輪210,210を駆動する機能を有する。車両制御ユニット2126は制御装置2002、2002’に制御信号を供給してモータ2101,2103を駆動することによって車両の動きを制御する。
【0117】
後輪駆動を図示したが、車両2100は前輪駆動でもよい。また、車両2100を二輪駆動車両として示したが、本発明の実施例は四輪駆動車両に適用してもよい。車両制御ユニット2126はコントローラー・エリア・ネットワーク(CAN)バスのような制御バスによって制御装置2002、2002’に結合されてもよい。
【0118】
図12は局所電流モニタ2010と遠隔電流モニタ2014に結合されている制御手段2012を含むモータ制御装置2002を示す。モータ制御装置は外部安全装置2020と制御手段2012とに結合されている電力供給器2016を含む。制御手段2012は健康表示器2018にも結合されている。
【0119】
図12で、電源入力の接続(例えば、バッテリー接続部)とAC電力出力の接続は図示しない。電源接続は以下で更に詳細に図14を参照して論じる。
【0120】
電力供給器2016は絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)インバータを含み、直流(DC)電源を用いてパルス幅変調された電力出力を電気モータに供給する機能を有する。電力供給器は制御手段2012からのシャットダウン信号によって動作を無効にすることができ、または電力供給器2016の電力部(例えば、PWM駆動部)の接続を安全装置2020が切ることによってもできる。安全装置2020の出力が有効状態になると、電力供給器2016のPWM駆動回路への電力の供給を制御するトランジスタ回路(図示せず)が作動する。安全装置2020の出力が無効状態なると、トランジスタ回路が止まることによってPWM駆動部の動作を無効にする。
【0121】
局所電流モニタ2010は電力供給器2016によってDC電源から引き出された電流を感知する機能を有し、感知された電流フローに基づいて制御手段2012に感知出力信号を供給する。この局所電流モニタ2010は電力供給器2016によって駆動されるモータからの出力トルクの推定量を供給する機能を有し、制御装置がモータにエネルギーを供給している(例えば、駆動モードで動作している)か、あるいはモータが制御装置にエネルギーを返している(回生ブレーキモードのように)か、をチェックするために使用することができる。遠隔電流モニタ2014はモータ制御装置2002と同様に、もう一方のモータ制御装置の電力供給器によって引き出された電流を感知するように結合する機能を有する。
【0122】
健康表示器2018はモータ制御装置の他の構成要素2010、2012、2014、2016、2018、2020が正しく機能しているという判定と遠隔電流モニタ2014からの信号が車両の安全な動作を示しているという判定とに基づいてその出力結合部からハートビート出力信号を供給する機能を有する。このハートビート信号は選択された振幅、周波数、デューティサイクルを有する矩形波パルス列である。ハートビート信号が適正なら、安全装置2020は電力供給器の動作を有効にする信号を生成する。ハートビート信号が適性でないなら、安全装置回路の出力により電力供給器2016の動作は無効にされる。
【0123】
当然のことながら、安全装置の出力は本システムの他の信号(例えば制御手段2012からのシャットダウン信号を反転させたもの)と組み合わせられる。そのような信号はすべて有効状態になると電力供給器2016の動作を必ず有効にし、無効状態になると電力供給器の動作を無効にするようになっている。電力供給器2016の動作が無効になった後、一定の期間だけ再び有効にするのを防止する手段が設けられる。正しく機能しているという判定は種々の構成要素ブロックに関連付けられた信号の範囲および場合によっては過渡的挙動をチェックすることに基づく。
図12の例では、ハートビート信号はパルス(矩形波)信号を含む。安全装置2020は外部システムからハートビート信号を受信して電力供給器2016に有効信号を供給する機能を有する。安全装置2020がハートビート信号を受信し、かつ安全装置から有効信号がないときには電力供給器が作動できないようになっている場合、安全装置2020は電力供給器2016に有効信号を供給するようになっており、例えば、有効信号がないときには電力供給器2016への電力供給は止められるようになっている。安全装置に加えて、または安全装置に代えて、安全装置2020はハートビート信号を受信しない場合に電力供給器の電力出力を減らす、徐々に減らす、あるいは安全なレベルに変更するようになっている検出手段も含んでよい。場合によっては、電力供給器の動作が無効になった後、選択された時間だけ電力供給器を再び有効にさせないようなタイマーを電力供給器または安全装置は含んでもよい。
【0124】
あるいは、もしくはさらに、安全装置または電力供給器は電力供給器の動作を無効にする操作が行われたことを制御手段2012に知らせるようになっていてもよい。
制御手段2012は制御装置2002の他の構成要素の動作を制御するようになっているマイクロプロセッサ等の制御デバイスである。例えば、制御手段2012は局所電流モニタ2010によって感知された局所電流を遠隔電流モニタ2014によって感知された電流と比較するようになっている。この比較に基づいて制御手段2012は電力供給器2016を制御するようになっている。例えば、局所電流モニタ2010によって感知された電流の方向が遠隔電流モニタ2014によって感知された電流の方向と一致しない場合、制御手段は電力供給器を停止させるようになっている。この構成はモータのうちの1つが回生ブレーキに携わっている状態に関与することができる。ここで注意すべきは、逆転しているモータでのバッテリー電流の反転は過渡的だということである。この状況が持続すると、回生ブレーキ状態は終わる。逆転しているモータは反対方向に駆動し始めることができ、その後、バッテリー電流は元の状態に戻る。
【0125】
動作中、(a)安全装置2020が正当なハートビート信号を受信していることを示す有効信号を電力供給器2016に安全装置2020が供給している、また(b)制御手段が電力供給器にシャットダウン信号を供給していない、という条件で電力供給器2016はAC電力出力信号を電気走行モータに供給する。モータ制御装置の他の構成要素2010、2012、2014、2016、2018、2020が正しく機能していると健康表示器2018が判定している場合、かつ遠隔電流モニタ2014からの信号が車両の安全な動作を示している場合、例えば、モータが確実に同じ方向に駆動されている場合(またはモータが選択された方向に駆動されている場合、または、モータの速度あるいはトルクが確実に選択された範囲(例えば、もう1つのモータの速度またはトルクおよび/またはそのモータに流れる電流に基づく範囲)内にある場合)、健康表示器2018は出力ハートビート信号(例えば、もう一方の制御装置によって受信される)を供給する。場合によっては、電力供給器は遠隔モータの回転方向が安全な動作になっていることをチェックするようにする。例えば、電力供給器が車両のコントローラー・エリア・ネットワーク・バス(CANバス)に結合される場合、遠隔モニタからの速度情報をCANバスから読み込んでこのチェックを行なう。
【0126】
電力供給器16はIGBTインバータを含むものとして説明してきたが、他種のインバータを使用してもよく、インバータは例えばIG−FET、MOS−FET、BJT、または他種の電圧制御可能なインピーダンスを含んでよい。システムの構成要素間の結合は直接的であってもよいし間接的であってもよく、適切であれば無線による結合および/またはシステムの他の構成要素を通して行ってもよい。本発明を説明することを目的としてシステムの構成要素を別々のユニットとして示してきたが、これは模範例にすぎず、類似の機能をより少ない個数の機能ユニットまたは1つの一体化されたユニットで提供してもよいし、更にその機能をより多数の機能ユニットに分散/細分してもよい。
【0127】
安全装置回路はデジタルあるいはアナログ電子技術を使用して実行することができる。このハートビート信号は選択された振幅、周波数、デューティサイクルを有する矩形波パルス列として表わされる。しかしながら、正弦波や鋸歯状の波形等の他の波形を使用してもよい。また、振幅、周波数、デューティサイクルの内の1つまたはいくつかを使用しなくてもよい。例えば、ハートビートは単に信号の周波数、振幅、またはデューティサイクルに基づいてもよい。場合によっては、これらのパラメータの2つ以上の組み合わせを使用してもよい。
【0128】
図13は、図12(同一の参照番号は同一の要素を示す)のモータ制御装置2002と、これとともに使用される同様の第2のモータ制御装置2002’と外部安全モニタ2026を示す。図13の例を理解しやすくするため、この例に直接には関連しない要素だけ破線で示し、これらまたは他の要素は省略されることがある。モータ制御装置2002の外部安全装置2020は切替ユニット2024によって第2のモータ制御装置2002’の健康表示器2018’に結合されている。第2のモータ制御装置2002’の外部安全装置2020’は切替ユニット2024によってモータ制御装置2002’の健康表示器2018に結合されている。切替ユニット2024は外部安全モニタ2026に結合されている。外部安全モニタ2026は図11の車両制御ユニット2126のような制御ユニットによって設けてもよい。
【0129】
切替ユニット2024は外部安全モニタ2026によって制御可能で、第2のモータ制御装置2002’の健康表示器2018’にモータ制御装置2002の安全装置2020を結合/分断する。また、切替ユニット2024は外部安全モニタ2026によって制御可能で、モータ制御装置2002の健康表示器2018に第2のモータ制御装置2002’の安全装置2020’を結合/分断する。
動作時、外部安全モニタ2026および/または健康表示器2018は、モータ制御装置2002、2002’それぞれの電流感知量、キースイッチ電圧(例えば、主電力段の供給電圧ではなく、電子制御部への供給電圧)、各制御装置の電力トランジスタ(IGBT)の温度、各制御装置の論理制御部の温度、DCリンクトラックの電圧および/または温度、ADC較正電圧、アナログ入力、供給電圧(Vcc)監視(プログラム可能な一定の供給電圧を監視する)、速度フィードバック測定(正弦−余弦エンコーダデータ、レゾルバ測定等)、それに他のデジタル入力とモータPTC入力等の車両の安全パラメータを監視する。これらは監視可能なパラメータの例にすぎず、これらのいくつか、またはすべてを実際には使用しなくてもよく、および/または他の安全パラメータを追加して監視してもよい。選択された閾値あるいは選択された範囲とこれらパラメータの1つまたはいくつかを比較することによって、あるいはパラメータのサンプリング値をある時間間隔にわたって比較してその過渡的挙動を測定することによって故障検出を行なってよい。例えば、これらパラメータの1つまたはいくつかの変化率を選択された閾値レベルあるいは選択された範囲と比較してもよい。この閾値と範囲は記憶された(例えば、あらかじめ定められた)値に基づいて選択してもよいし、他のパラメータに基づいて動的に決定してもよい。
【0130】
外部安全モニタ2026はこれら安全パラメータの1つまたはいくつかを監視することで故障条件を検出し、それに応じて切替ユニット2024を制御する機能を有する。例えば、外部安全モニタは故障を検出した場合、切替ユニット2024を制御して、第2のモータ制御装置2002’の安全装置2020’をモータ制御装置2002の健康表示器2018から分断すること、および/または第1のモータ制御装置2002の安全装置2020を第2のモータ制御装置2002’の健康表示器2018’から分断することができる。安全装置2020、2020’からの健康表示器2018、2018’の切断に応答して制御装置は停止する。2018’が2020接続され、2018が2020’に接続される構成では、両方の制御装置が1つの制御装置の異常によって停止する。
【0131】
図14は、図12(同一の参照番号は同一の要素を示す)のモータ制御装置2002と、これとともに使用される同様の第2のモータ制御装置2002’の別の例を示す。図14の例を理解しやすくするため、この例に直接には関連しない要素を破線で示し、直接には関連しない接続は省略した。
【0132】
モータ制御装置2002の局所電流モニタ2010はバッテリー2200のバッテリー正極端子B+とモータ制御装置2002の電力供給器16の間に電気的に直列に結合されている。第2のモータ制御装置2002’の遠隔電流感知モジュールは第1のモータ制御装置2002の電力供給器2016とバッテリー2200のバッテリー負極端子B−の間に電気的に直列に結合されている。第2のモータ制御装置2002’の局所電流モニタ2010’はバッテリー2200のバッテリー正極端子B+とモータ制御装置2002’の電力供給器2016’の間に電気的に直列に結合されている。第1のモータ制御装置2002の遠隔電流感知モジュールは第2のモータ制御装置2002’の電力供給器2016’とバッテリー2200のバッテリー負極端子B−の間に電気的に直列に結合されている。このようにして、制御装置2002の遠隔電流モニタ2014は第2のモータ制御装置2002’の電力供給器2016’によって引き出された電流の感知を監視するように結合され、第2の制御装置2002’の遠隔電流モニタ2014’はモータ制御装置2002の電力供給器2016によって引き出された電流の感知を監視するように結合されている。つまり、各制御装置2002、2002’は他方のモータ制御装置によって引き出された、すなわち生成された電流の感知を監視するように配置されている。
【0133】
図14に基づくいくつかの例では、一対の制御装置を連動させるため、モータ制御装置2002の安全装置2020は第2のモータ制御装置2002’の健康表示器2018’に結合されている。第2のモータ制御装置2002’の外部安全装置2020’はモータ制御装置2002の健康表示器2018に結合されている。
【0134】
電流モニタ2010,2010’、2014,2014’は直列式電流測定装置として接続するように図示したが、これらは磁気誘導式電流変換器あるいはホール効果電流変換器によって設けてもよく、このような変換器は電源ラインに通電可能に結合させる必要がなく、および/または電流感知トランジスタ等の他の電流感知デバイスによって設ける必要がおそらくない。いくつかの例では、電流モニタは電流の大きさと方向あるいは大きさのみを監視するようにしてもよい。
図15図13図14と同じ参照番号を使用して同一の要素を示し、図13図14の構成要素を組み合わせて使用した例を示す。図15で、切替ユニット2024と外部安全モニタ2026は破線で示され、切替ユニットが存在せずに制御装置2002の安全装置2020が第2の制御装置2002’の健康表示器2018’に結合されてよいことと、同様に切替ユニットが存在せずに第2の制御装置2002’の安全装置2020’が制御装置2002の健康表示器2018に結合されてよいことを示す。場合によっては、制御装置2002と2002’の安全装置入力は外部安全モニタ2026によって直接に供給可能で、制御装置2002と2002’によって生成された健康信号は外部安全モニタ2026によって監視される。
【0135】
特に、電流モニタ2014は電気モータ制御装置(図1〜4を参照して説明されたようなもの)に監視結合部を設けるように配置された電流センサに結合されてもよく、電気モータ制御装置は少なくとも1つの電源入力結合部と他方の制御装置の動作パラメータを監視するようなっている監視結合部を含み、この場合、2つの制御装置の後部同士が対向するように配置されるとき、隣接する制御装置の監視結合部を通して一方の制御装置のDC電源(例えば、バッテリー)端子をDC電源に結合するように選択された位置に監視結合部と電源入力結合部が配置される。例えば、制御装置が回路基板上に搭載される場合、監視結合部はこの基板を貫通する開口として設けてよく、この開口の周囲または隣接域に電流変換器が配置される。したがって、1つの基板に対するバッテリー電流が隣接する基板上で電流変換器を通るDC供給結合部により供給されることによって、ここに説明した電流モニタ2014を設けることができる。
【0136】
図16は差動ギア3008に駆動シャフト3010によって結合されている電気モータ3006を有している車両3018を示す。車両の駆動装置は駆動シャフト3010、差動ギア3008、車軸3014、車輪3012と3012’を含み、車軸3014は車輪3012、3012’に差動ギア3008を結合している。図16は車輪を2つだけ示しているが、これは一例にすぎず、車両の車輪を多くしてもよいし少なくしてもよい。
【0137】
車両3018はモータ3006にインバータ3004によって結合されているバッテリー3002を含む。インバータ3004は制御装置3020結合されている。制御装置3020はセンサ3024と運転者制御インタフェース3022に結合されている。
【0138】
動作中、インバータ3004はバッテリー3002から供給されるDCをモータ3006に供給される交流(AC)電力に変換する。モータ3006はインバータからの電力に応じて駆動装置3008、3010、3014にトルクを印加して車輪3012、3012’を駆動する機能を有する。センサ3024はモータ3006によって角加速度あるいはトルク出力を感知するようになっていて、感知されたモータ3006の速度出力を示す信号を制御装置3020に供給するように結合されている。
【0139】
運転者ユーザインタフェース3022は車両の速度を制御するためのアクセルあるいはトルク要求入力ユーザインタフェースを含む。運転者ユーザインタフェース3022は制御装置3020にトルク要求信号を供給するように結合されている。制御装置3020は制御信号をインバータ3004に供給して、運転者制御インタフェース3022からのトルク要求とモータ速度センサ3024によって感知されたモータ出力とに基づいてモータに供給する電力を制御するようになっている。
【0140】
ここで、図17を参照して制御装置3020を更に詳細に説明する。制御装置3020は運転者ユーザインタフェース3022(図16に示す)から制御信号を受信するためのトルク要求入力部3030とモータ速度センサ3024(これも図16にも示す)からセンサ信号を受信するためのセンサ入力部3032とを有する。トルク要求入力部3030は差分判定器3042の第1の入力と符号チェッカー3043に結合される。センサ入力部3032は利得段3036にフィルタ3034によって結合されている。利得段3036の出力は差分判定器3042の第2の入力に結合されている。差分判定器3042の出力は符チェッカー3043に結合されている。符号チェッカー3043の出力は制御信号出力部3044に結合されている。基準信号供給器3038は利得段3036の出力に適用されたリミッタ3040に結合されている。
【0141】
制御装置3020はトルク要求入力部3030で運転者ユーザインタフェース3022からのトルク要求信号とセンサ入力部3032でモータ速度センサ3024からの測定信号とを受信する。モータの角速度の変化率を使用してトルク測定信号∂ω/∂tを判定する。
【0142】
トルクセンサから受信したトルク測定信号をフィルタ3034にかけて特定の信号周波数成分を選択または強調して他の成分を減衰させる。この場合、電気車両の一部分が既知または予測可能な周波数特性を有する電気ノイズ信号を発生させることを発明者らは認識している。例えば、車両が50Hzまたは50Hz付近にノイズ源を含む場合があるので、いくつかの例ではフィルタ3034は50Hz付近の周波数帯で信号を減衰ようにしたノッチフィルタを含む。場合によって、カットオフ周波数が50Hzのローパスフィルタを使用することがあり、この場合、サンプリングノイズを平滑化できるという長所がある。また、発明者らは車両駆動装置と車両自体がある種の特徴的な(例えば、共鳴しやすい)周波数を有する振動系を形成することを理解している。図16の例では、フィルタ3034の伝達関数/パスバンドを車両と車両駆動装置の特徴的な周波数に基づいて選択する。この特徴的な周波数は他の要因とともに駆動装置の構成要素のねじり剛性、タイヤの復元力、車両懸架装置の剛性、車両の重量、車両駆動装置の回転系構成要素の慣性モーメントに依存する。フィルタ3034はバンドパスおよび/またはノッチ特性を有するLCRネットワークを有するアナログフィルタによって、またはデジタル電子技術によって設けてよい。
【0143】
基準信号供給器3038はリミッタ3040に基準信号を供給する。リミッタ3040は差分判定器に供給する信号に対し基準信号を超えない(例えば、基準信号で制限される)ように制限する機能を有する。図16の例では、基準信号は最大可能トルク要求値の10%に選択される。これにより使用者による制御にシステムが十分に速く応答しない程度にまでトルク要求の意図的な変化を減衰させることなくモータ速度の揺れを減衰させることができるという長所が得られる。この場合、発明者らはこの応用について10%が「安全な」値であることを見出した。実験によりトルク出力のわずかな補正だけで揺れを和らげるのに十分であることが示された。アルゴリズムは速度変化に抵抗しようとするため、10%の制限を解除すると車両の応答性は低下してしまう。実際には、この制限がほとんど使用されないように利得を設定するので、わずかな補正が必要になるだけである。この制限を適切に行うことにより揺れの減衰が決して運転者の要求を完全に覆さないことが保証される。異なる値が設定できると有用な場合がある。
【0144】
符号チェッカー3043はトルク要求入力部3030に供給されるトルク要求信号の符号を制御信号出力部3044に供給される変更後のトルク要求と比較し、トルク要求入力が変更後のトルク要求と逆の符号である場合、変更後のトルク要求はゼロに設定される。この例では、符号チェッカー3043は次の疑似コードに基づくソフトウェアアルゴリズムを使用して実装される。

if(torque_demand > 0 )
{
torque_demand = torque_demand -
correction value;
if (torque_demand < 0 )
{
torque_demand = 0;
}
}
else if (torque_demand < 0 )
{
torque_demand = torque_demand -
correction_value;

if( torque_demand> 0 )
{
torque_demand = 0;
}
}

動作中、制御装置3020は運転者制御インタフェース3022(図16)からトルク要求信号を受信し、センサ3024(図16)は電気モータ3006(図16)が供給するトルクに基づいて制御装置3020に感知されたトルク信号を供給する。フィルタ3034は不要なモータ速度の揺れを示していると考えられる感知されたトルク信号成分を選択し、フィルタの伝達関数に従ってノイズ成分を減衰させる。フィルタ3034からの出力信号は利得段3036に供給される。利得段3036はフィルタ出力にスケーリング処理を行ってトルク要求入力から減算される減算信号を供給し、例えばフィードバックループの利得を設定する。一般に、車両を駆動し、異なった利得を試してドライブトレインにどのような効果があるか見ることによって利得段で適用されるスケーリングを調整する。揺れは通常、モータあるいはドライブトレインからの可聴音として現れる。スケーリング値は揺れが目立たない程度に可能な限り低く設定される。低い値を使用すると車両の応答を低下させる要求トルクに対処するアルゴリズムの性能が最小になる。利得段3036からの減算信号出力はリミッタ3040に供給される。利得段の出力の大きさが基準信号を超える場合、リミッタはその出力の大きさが基準信号供給器3038によって供給される基準信号を超えない(例えば、基準信号で制限される)ように利得段の出力をクリップする。差分判定器は運転者制御インタフェース3022から受信したトルク要求信号からスケーリング処理およびフィルタにかけられたトルク測定信号を減算する(図16)。制御装置がモータ3006を制御するための入力として使用される変更後のトルク要求出力が差分判定器の出力から供給される。
【0145】
図16の例では、車輪3012,3012’、車軸3014、差動ギア、駆動シャフトで駆動装置が構成されている。もちろん、これは駆動装置の一例にすぎず、実際は駆動装置に他の構成要素が追加されることがあり、あるいは図16に示す構成要素のいくつかは例えば直接駆動方式すなわち差動ギアを含まないシステムで省略されることもある。いくつかの例では、3004の車輪駆動システムを使用してよい。図16の例では、センサ3024はモータに隣接して配置され示されるが、実際にはセンサは駆動シャフトあるいは駆動装置の他の部分に配置してもよく、および/またはモータ3006によって引き出される電流に基づいてトルク出力を判定する電子センサであってもよい。図16は差動ギアを介して2つの車輪を1つのモータで駆動する場合を示すが、他の接続形態を使用してもよく、例えば各車輪が別個のモータによって駆動されてもよい。この場合、各モータは上記のアルゴリズムに従って個別に制御される。
【0146】
制御装置3020は受動および/または能動アナログ部品を使用してアナログ電子工学によって実装してもよい。いくつかの例で、制御装置3020はDSP回路、特定用途集積回路、FPGA等のデジタル電子技術または他のデジタル電子技術によって構成または提供してよい。制御装置はプログラム命令を使用して本明細書に説明された方法および/または装置の特徴を実施するようになっているプログラム可能なプロセッサで構成または実装してもよい。
【0147】
上記に説明され、および/または添付の請求項で規定される実施例の特徴のいずれか1つまたはいくつかを省略してもよく、および/または他の実施例のいずれか1つまたはいくつかの特徴と組み合わせてもよいことが意図されている。本明細書で説明した方法はハードウェア、ミドルウェア、ソフトウェア、あるいはそれらの任意の組み合わせで実施してよい。また、本発明の実施例はプロセッサをプログラムして本明細書で説明したいずれかの方法を実行する機能を有するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とコンピュータプログラム製品を含み、特に、上記のような制御手段2012、安全装置2020、または健康表示器2018によって実行される機能の1つまたはいくつかを行なうようになっているプロセッサを含む。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7a
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図7b