特許第6061971号(P6061971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6061971
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0612 20160101AFI20170106BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20170106BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20170106BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20170106BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170106BHJP
【FI】
   H01M8/06 G
   H01M8/04 J
   H01M8/04 N
   C01B3/38
   C01B3/56 Z
   !H01M8/12
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-64148(P2015-64148)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-184503(P2016-184503A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−089919(JP,A)
【文献】 特開2007−141772(JP,A)
【文献】 特開2006−031989(JP,A)
【文献】 特開2002−137905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/24
C01B 3/38
C01B 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器から供給された前記改質ガスを用いて発電を行なう燃料電池と、
前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスから、水蒸気及び一部の水素を分離する分離膜と、
前記改質器の上流に配置され、前記原料ガス中に含まれる硫黄分を水添脱硫する脱硫器と、
前記分離膜の透過側に配置され、前記分離膜により分離された水素を前記脱硫器に供給し、前記分離膜により分離された水蒸気、及び前記原料ガスを前記改質器に供給する原料ガス供給経路と、を備え、
水蒸気が分離された前記オフガスを発電に用いる燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池である第1燃料電池を備えるとともに、前記分離膜により水蒸気が分離された前記オフガスを用いて発電を行なう第2燃料電池をさらに備える請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記分離膜の下流に配置され、水蒸気が分離された前記オフガスを前記燃料電池に供給するオフガス循環経路をさらに備える請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記分離膜の上流又は下流に配置され、前記オフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部をさらに備える請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記分離膜は、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜又は液体膜である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記分離膜は、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜である請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記分離膜の上流を流通する前記オフガスと、前記分離膜の下流を流通する水蒸気が分離された前記オフガスと、の間で熱交換を行なう熱交換器をさらに備える請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常600℃以上の温度で作動する固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池などの高温作動形燃料電池のシステムでは、高効率化を図るため、高温作動形燃料電池のアノードから排出されるアノード排ガスを再利用することが検討されている。例えば、アノード排ガス中の水蒸気を凝縮により除去し、そのガスを再利用することで、システム全体の燃料利用率を向上させる技術がいくつか提案されている。
【0003】
例えば、固体酸化物形燃料電池のアノードオフガスから水蒸気を除去してアノードオフガスを再生し、再生オフガスを固体酸化物形燃料電池の燃料として再利用することにより固体酸化物形燃料電池それ自体での燃料利用率を改善する固体酸化物形燃料電池による発電方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、燃料電池から排出された排出燃料ガスを、燃料再循環ラインを介して前記燃料電池へと再循環することにより、前記燃料電池の燃料ガスとして再利用する構成を有し、前記再循環ラインに再循環中の前記排出燃料ガスから水蒸気の除去と二酸化炭素の除去とを同時に行うガス調整器を備えた燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、燃料吸入流が供給された燃料電池スタックを運転して電気と200℃を超える温度の燃料排気流とを生成し、前記燃料排気流の温度を200℃以下に下げ、前記燃料排気流を第一の燃料排気分流と第二の燃料排気分流とに分割した後、前記第一の燃料排気分流を前記燃料吸入流へとリサイクルする燃料電池システムの運転方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、燃料電池スタックから排出される燃料極オフガスを前記燃料電池スタックに循環させるリサイクル燃料ラインを備え、前記リサイクル燃料ラインが前記燃料極オフガスに含まれる水蒸気を脱湿する凝縮器を備える燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−31989号公報
【特許文献2】特開2006−139984号公報
【特許文献3】特許第5542332号公報
【特許文献4】特許第5327693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1〜4に記載の燃料電池システムなどの一般的な燃料電池システムでは、燃料ガス中の付臭剤由来等の硫黄系不純物を除去するために脱硫が必要であり、脱硫方式として水素を添加する水添脱硫方式が広く用いられている。
また、この水添脱硫方式において添加される水素は、例えば、燃料ガスを改質して得られた改質ガスの一部を燃料ガス経路に戻すことで供給される。しかしながら、改質ガスの一部を燃料ガス経路に戻すための構成が別途必要となり、システムが複雑化してしまい、システムの信頼性が低下するという問題がある。また、構成の追加によるコストアップも問題となる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、発電効率に優れ、かつシステムの簡略化により信頼性が向上した燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、例えば以下の手段により解決される。
<1> 原料ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質器と、前記改質器から供給された前記改質ガスを用いて発電を行なう燃料電池と、前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスから、水蒸気及び一部の水素を分離する分離膜と、前記改質器の上流に配置され、前記原料ガス中に含まれる硫黄分を水添脱硫する脱硫器と、前記分離膜の透過側に配置され、前記分離膜により分離された水素を前記脱硫器に供給し、前記分離膜により分離された水蒸気、及び前記原料ガスを前記改質器に供給する原料ガス供給経路と、を備え、水蒸気が分離された前記オフガスを発電に用いる燃料電池システム。
【0008】
本形態に係る燃料電池システムでは、分離膜は、燃料電池から排出された未反応の改質ガスを含むオフガスから水蒸気及び一部の水素を分離し、水蒸気が分離されたオフガスは発電に用いられる。水蒸気が分離されたオフガスを発電用燃料として用いることで、このオフガスが供給された燃料電池では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の水蒸気に起因する濃度過電圧が低減される。よって、本形態に係る燃料電池システムは、水蒸気を分離せずにオフガスを再利用する燃料電池システムよりも高い発電効率を得ることができる。
【0009】
また、分離膜により分離された水蒸気及び水素は、分離膜の透過側に配置された原料ガス供給経路に供給される。原料ガスが原料ガス供給経路内を流通するため、分離された水素は、原料ガスとともに脱硫器に供給され、分離された水蒸気は、原料ガスとともに改質器に供給される。したがって、水素及び水蒸気をそれぞれ脱硫器及び改質器に供給するために供給経路及びブロワを別途設ける必要は無く、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0010】
また、分離膜を透過した水蒸気は原料ガスとともに原料ガス供給経路内を流通するため、分離膜の透過側の水蒸気分圧は低くなり、水蒸気の分離が促進される。したがって、本形態に係る燃料電池システムでは、システムの簡略化とともに水蒸気の分離が促進されている。その結果、水蒸気が分離された後のオフガス中の水蒸気濃度をより小さくすることができ、燃料電池システムの発電効率をより高めることができる。
【0011】
<2> 前記燃料電池である第1燃料電池を備えるとともに、前記分離膜により水蒸気が分離された前記オフガスを用いて発電を行なう第2燃料電池をさらに備える<1>に記載の燃料電池システム。
【0012】
本形態に係る燃料電池システムは、第1燃料電池と第2燃料電池とを備える多段式の燃料電池システムである。そのため、循環式の燃料電池システムと比較して燃料利用率が向上しており、高い発電効率を得ることができる。
【0013】
<3> 前記分離膜の下流に配置され、水蒸気が分離された前記オフガスを前記燃料電池に供給するオフガス循環経路をさらに備える<1>に記載の燃料電池システム。
【0014】
本形態に係る燃料電池システムは、水蒸気が分離された前記オフガスを燃料電池に供給する循環式の燃料電池システムであり、このようなシステムであっても、燃料利用率が向上し、高い発電効率を得ることができる。
【0015】
<4> 前記分離膜の上流又は下流に配置され、前記オフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部をさらに備える<1>〜<3>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0016】
本形態に係る燃料電池システムでは、分離膜の上流又は下流に配置された二酸化炭素除去部により、オフガスから二酸化炭素が除去された後、このオフガスが発電に用いられる。そのため、このオフガスが供給された燃料電池では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧がより向上するとともに、オフガス中の二酸化炭素に起因する濃度過電圧が低減される。よって、本形態に係る燃料電池システムは、さらに高い発電効率を得ることができる。
【0017】
<5> 前記分離膜は、有機高分子膜、無機材料膜、又は有機高分子−無機材料複合膜又は液体膜である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0018】
<6> 前記分離膜は、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜である<5>に記載の燃料電池システム。
【0019】
本形態に係る燃料電池システムでは、前述の分離膜を用いることにより、燃料電池から排出された未反応の改質ガスを含むオフガスから水蒸気及び一部の水素を好適に分離することができる。
【0020】
<7> 前記分離膜の上流を流通する前記オフガスと、前記分離膜の下流を流通する水蒸気が分離された前記オフガスと、の間で熱交換を行なう熱交換器をさらに備える<1>〜<6>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【0021】
本形態に係る燃料電池システムでは、分離膜の上流を流通するオフガスと、分離膜の下流を流通するオフガスと、の間で熱交換が行なわれる。そのため、分離膜に供給されるオフガスが水蒸気の分離に適した温度まで冷却されるとともに、水蒸気分離後のオフガスが発電に適した温度に加熱される。よって、システム全体の発電効率及び熱効率がより向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、発電効率に優れ、かつシステムの簡略化により信頼性が向上した燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図2】第2実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図3】第3実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図4】比較対象となる多段式の燃料電池システムを示す概略構成図である。
図5】比較対象となる循環式の燃料電池システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0025】
まず、本発明の燃料電池システムの比較対象となる多段式の燃料電池システムについて、図4を用いて説明する。図4は、比較対象となる多段式の燃料電池システムを示す概略構成図である。
【0026】
図4において、比較対象となる燃料電池システム100は、原料ガス供給経路124と、脱硫器127と、改質器114と、第1燃料電池111と、気液分離器129と、第2燃料電池112と、改質ガス循環経路151とを備えるシステムである。このシステムでは、メタンなどの原料ガスを改質器114に送るためのブロワ125が原料ガス供給経路124に配置されており、原料ガスが原料ガス供給経路124内を流通して改質器114の改質部119に供給される。ここで、原料ガスが改質器114の改質部119に供給される前に、脱硫器127により、原料ガス中の硫黄分が水添脱硫により除去される。
【0027】
改質器114は、原料ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成するためのものであり、燃焼部118と、改質用触媒を備える改質部119とを有している。改質器114の改質部119にて、供給された原料ガスが水蒸気改質され、水素を含む改質ガスが生成される。水素を含む改質ガスは、改質ガス供給経路142を通じて第1燃料電池111のアノード(図示せず)に供給されて発電に用いられるが、一部の改質ガスは、流量を調整するためのオリフィス150が配置された改質ガス循環経路151を通じて原料ガス供給経路124に供給され、脱硫器127での硫黄分の水添脱硫に用いられる。
【0028】
改質器114の燃焼部118は、酸素供給経路144を通じて供給された酸素を含むガス(酸化剤ガス)と、オフガス経路146を通じて供給されたオフガスとの混合ガスを燃焼させ、改質部119内の改質用触媒を加熱する。燃焼部118からの排気ガスは、排気経路148を通じて排出されるが、このとき、熱交換器122により、酸素供給経路144内を流通する酸素を含むガスが加熱される。そして、熱交換器122により加熱された酸素を含むガスは、第1燃料電池111のカソード(図示せず)に供給されて発電に用いられる。
【0029】
改質器114にて原料ガスを水蒸気改質する際に必要な水蒸気は、水タンク130から供給される。具体的には、水タンク130に貯留されている水が改質水経路131に供給され、水ポンプ132により改質水経路131内を流通する水が気化器133に供給されて気化された後、原料ガス供給経路124を通じて原料ガスとともに改質器114に供給される。ここで、気化器133は、改質部119より放出される熱を利用して、改質水経路131より供給された水を蒸発させる。
【0030】
第1燃料電池111は、アノードと、電解質(図示せず)と、カソードとを備え、アノードに供給された水素を含む改質ガス、及びカソードに供給された酸素を含むガスを用いて発電を行なう。この第1燃料電池111は、例えば750℃程度で作動する高温型の燃料電池であり、具体的には、固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池などである。
【0031】
第1燃料電池111のカソードから未反応の酸素を含むガスが排出され、未反応の酸素を含むガスは、下流側の酸素供給経路144内を流通して第2燃料電池112のカソードに供給される。
【0032】
一方、第1燃料電池111のアノードから未反応の改質ガスを含むオフガスが排出され、このオフガスは、オフガス経路152、154を通じて第2燃料電池112のアノードに供給されて発電に用いられる。このとき、気液分離器129にてこのオフガス中の水蒸気が凝縮されて液化し、オフガス中の水蒸気が除去される。また、熱交換器121にて、オフガス経路152内を流通するオフガスは気液分離器129に供給される前に冷却され、オフガス経路154内を流通するオフガスは第2燃料電池112に供給される前に加熱される。
【0033】
第2燃料電池112は、前述の第1燃料電池111同様、アノードと、電解質と、カソードとを備え、アノードに供給された水蒸気が除去されたオフガス、及びカソードに供給された未反応の酸素を含むガスを用いて発電を行なう。
【0034】
第2燃料電池112のカソードから未反応の酸素を含むガスが排出され、未反応の酸素を含むガスは、下流側の酸素供給経路144内を流通して改質器114の燃焼部118へ供給される。一方、第2燃料電池112のアノードから未反応のオフガスが排出され、未反応のオフガスは、オフガス経路146内を流通して改質器114の燃焼部118へ供給される。
【0035】
上述したように、燃料電池システム100は、改質器114の改質部119にて生成された改質ガスの一部を、原料ガス供給経路124に配置された脱硫器127へ供給する改質ガス循環経路151を備える必要がある。したがって、燃料電池システム100では、システム構成が複雑化し、システムの制御も複雑化してしまう。
【0036】
さらに、燃料電池システム100は、水蒸気改質に用いる水蒸気を供給する手段として、気液分離器129の他に水タンク130、改質水経路131、水ポンプ132及び気化器133を備える必要がある。したがって、燃料電池システム100では、システム構成がより複雑化し、システムの制御もより複雑化してしまう。
【0037】
次に、本発明の燃料電池システムの比較対象となる循環式の燃料電池システムについて、図5を用いて説明する。図5は、比較対象となる循環式の燃料電池システムを示す概略構成図である。なお、図5を用いて説明した前述の多段式の燃料電池システムと共通する事項については、その説明を省略する。
【0038】
図5において、比較対象となる燃料電池システム200は、第1燃料電池111及び第2燃料電池112の代わりに燃料電池135を備え、かつ、燃料電池135のアノードから排出されたオフガスの一部が、オフガス循環経路156、157を通じて改質ガス供給経路142に供給されて燃料電池135の発電に用いられる点で、前述の燃料電池システム100と異なる。
【0039】
つまり、燃料電池システム200では、燃料電池135のアノードから排出されたオフガスの一部が、オフガス循環経路156に供給され、気液分離器129によりオフガス中の水蒸気が分離された後、水蒸気が分離されたオフガスが、オフガス循環経路157を通じて改質ガス供給経路142に供給されて燃料電池135の発電に用いられる。
【0040】
このような燃料電池システム200においても、燃料電池システム100と同様に、改質器114の改質部119にて生成された改質ガスの一部を、原料ガス供給経路124に配置された脱硫器127へ供給する改質ガス循環経路151を設ける必要がある。したがって、燃料電池システム200では、システム構成が複雑化し、システムの制御も複雑化してしまう。
【0041】
さらに、燃料電池システム200は、燃料電池システム100と同様に、水蒸気改質に用いる水蒸気を供給する手段として、気液分離器129の他に水タンク130、改質水経路131、水ポンプ132及び気化器133を備える必要がある。したがって、燃料電池システム200では、システム構成がより複雑化し、システムの制御もより複雑化してしまう。
【0042】
一方、本発明に係る燃料電池システムは、発電効率に優れ、かつシステムの簡略化により信頼性が向上したものである。以下、本発明の燃料電池システムの一実施形態について図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【0043】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質器14と、改質器14から供給された前記改質ガスを用いて発電を行なう第1燃料電池11(燃料電池)と、第1燃料電池11から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスから、水蒸気及び一部の水素を分離する分離膜16と、改質器14の上流に配置され、前記原料ガス中に含まれる硫黄分を水添脱硫する脱硫器27と、分離膜16の透過側に配置され、分離膜16により分離された水素を脱硫器27に供給し、分離膜16により分離された水蒸気、及び前記原料ガスを改質器14に供給する原料ガス供給経路24と、を備え、水蒸気が分離された前記オフガスを発電に用いるシステムである。
【0044】
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池11と第2燃料電池12とを備える多段式の燃料電池システムである。循環式の燃料電池システムでは、循環系内での水蒸気濃度の増加を抑制するため、アノードから排出されるオフガスを循環系外に一部排出する必要があるが、そのときに未反応の改質ガスも循環系外に一部排出されてしまうため、燃料利用率を高めることに限界がある。一方、多段式の燃料電池システムでは、前段の燃料電池のアノードから排出されるオフガスに含まれる改質ガスが、後段の燃料電池のアノードに全て供給される。そのため、多段式である燃料電池システム10は、循環式の燃料電池システムと比較して燃料利用率が向上しており、高い発電効率を得ることができる。
【0045】
さらに、燃料電池システム10では、分離膜16は、第1燃料電池11から排出された未反応の改質ガスを含むオフガスから水蒸気及び一部の水素を分離し、第2燃料電池12は、水蒸気が分離されたオフガスを用いて発電を行なう。そのため、第2燃料電池12では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の水蒸気に起因する濃度過電圧が低減される。よって、燃料電池システム10は、水蒸気を分離せずにオフガスを再利用する燃料電池システムよりも高い発電効率を得ることができる。
【0046】
また、分離膜16により分離された水蒸気及び水素は、分離膜16の透過側16Bに配置された原料ガス供給経路24に供給される。原料ガスが原料ガス供給経路24内を流通するため、分離された水素は、原料ガスとともに脱硫器27に供給され、分離された水蒸気は、原料ガスとともに改質器14に供給される。したがって、水素及び水蒸気を、それぞれ脱硫器27及び改質器14に供給するために供給経路及びブロワを別途設ける必要は無く、また、水タンク、水ポンプ、気化器なども別途設ける必要は無い。そのため、燃料電池システム10では、システムが簡略化されており、システムの信頼性が向上する。さらに、システムに必要な構成を減らすことができ、コストを削減することができる。
【0047】
また、分離膜16を透過した水蒸気は原料ガスとともに原料ガス供給経路24内を流通するため、分離膜16の透過側16Bの水蒸気分圧は低くなり、水蒸気の分離が促進される。したがって、燃料電池システム10では、システムの簡略化とともに水蒸気の分離が促進されている。その結果、第2燃料電池12に供給されるオフガス中の水蒸気濃度をより小さくすることができ、燃料電池システム10の発電効率をより高めることができる。
【0048】
(原料ガス供給経路)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、分離膜16の透過側16Bに配置され、分離膜16により分離された水素を脱硫器27に供給し、分離膜16により分離された水蒸気、及び原料ガスを改質器14に供給する原料ガス供給経路24を備えており、原料ガス供給経路24は、水蒸気、水素及び原料ガスを流通させるためのブロワ25が設置されている。
【0049】
原料ガス供給経路24内を流通する原料ガスとしては、水蒸気改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料が挙げられる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、特にメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスを含む天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。
【0050】
(脱硫器)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガス中に含まれる硫黄分(硫黄化合物)を水添脱硫する脱硫器27を備えている。脱硫器27は、原料ガス中に含まれる硫黄分を水素と反応させて除去するための装置である。脱硫器27は、例えば、原料ガス中に含まれる硫黄分を水素と反応させて硫化水素に転化するための触媒(脱硫触媒)と、転化された硫化水素を吸着して除去する吸着剤(脱硫剤)と、を備える。これにより、硫化カルボニル(COS)、メルカプタン類、ジメチルスルフィド(DMS)などのサルファイド類、チオフェン類等の硫黄分を水素と反応させて硫化水素に転化し、次いで、転化された硫化水素を除去できる。原料ガス中に含まれる硫黄分が除去されるため、改質器14、第1燃料電池11及び第2燃料電池12などの各システム構成の性能低下が抑制される。
【0051】
硫黄分を水素と反応させて硫化水素に転化するための触媒としては、一般に水添脱硫に使用される触媒であれば限定されず、例えば、コバルト−ニッケル(Co−Ni)系触媒、ニッケル−モリブデン(Ni−Mo)系触媒などが挙げられる。
【0052】
硫化水素を吸着して除去する吸着剤としては、一般に硫化水素の吸着剤として使用されるものであれば限定されず、例えば、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マンガン、酸化銅、酸化ニッケル、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化リン、酸化ホウ素などが挙げられる。
【0053】
原料ガス中に含まれる硫黄分をRS(Rはアルキル基)としたとき、前述の触媒の作用により、硫黄分と水素とは以下の式(a)のように反応して硫化水素に転化される。
2H+RS→HS+2RH・・・・(a)
【0054】
次に、硫化水素を吸着して除去する吸着剤を酸化亜鉛(ZnO)としたとき、転化された硫化水素は吸着剤に化学吸着されて除去される。このとき、硫化水素と吸着剤とは以下の式(b)のように反応する。
S+ZnO→ZnS+HO・・・・(b)
【0055】
通常、水添脱硫に用いる水素は、別の水素供給手段より脱硫器に供給されるか、あるいは、前述のように、改質ガスの一部を循環させて脱硫器に供給される。しかしながら、これらの場合には、水素供給手段、水素供給用の経路などを別途配置する必要があり、システムが複雑化し、システムの信頼性が低下するという問題がある。一方、本実施形態に係る燃料電池システム10では、分離膜16により分離された水素は、分離膜16の透過側16Bに配置された原料ガス供給経路24を通じて脱硫器27に供給される。そのため、水素供給手段、水素供給用の経路などを別途配置する必要がなく、システムを簡略化することができ、システムの信頼性が向上する。
【0056】
また、原料ガス中に含まれる硫黄分の量は、分離膜16により分離されて脱硫器27に供給される水素の量と比較して非常に少ない。そのため、燃料電池システム10では、原料ガス中に含まれる硫黄分に対して、十分な量の水素が分離膜16より分離され、水添脱硫に利用される。なお、水添脱硫に利用されない過剰な水素は、第1燃料電池11に供給されて発電に用いられる。
【0057】
(改質器)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、原料ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成する改質器14を備えている。改質器14は、例えば、バーナ又は燃焼触媒を配置した燃焼部18と、改質用触媒を備える改質部19とにより構成される。
【0058】
改質部19は、上流側にて原料ガス供給経路24と接続しており、下流側にて改質ガス供給経路42と接続している。そのため、原料ガス供給経路24を通じてメタンなどの原料ガスが改質部19に供給され、改質部19にて原料ガスを水蒸気改質した後に、生成された改質ガスが改質ガス供給経路42を通じて第1燃料電池11に供給される。
【0059】
燃焼部18は、上流側にて酸素供給経路44及びオフガス経路46と接続しており、下流側にて排気経路48と接続している。燃焼部18は、酸素供給経路44を通じて供給された酸素を含むガスと、オフガス経路46を通じて供給されたオフガスとの混合ガスを燃焼させ、改質部19内の改質用触媒を加熱する。燃焼部18からの排気は、排気経路48を通じて排出される。
【0060】
排気経路48及び酸素供給経路44には熱交換器22が設置されており、熱交換器22により、排気経路48内を流通する排気と、酸素供給経路44内を流通する酸素を含むガスと、の間で熱交換を行なう。これにより、排気経路48内を流通する排気は冷却された後に排出され、酸素供給経路44内を流通する酸素を含むガスは、第1燃料電池11の作動温度に適した温度に加熱された後に第1燃料電池11のカソードに供給される。
【0061】
改質部19で起こる水蒸気改質は大きな吸熱を伴うので、反応の進行のためには外部から熱の供給が必要であり、そのため、燃焼部18で発生する燃焼熱により改質部19を加熱することが好ましい。あるいは、燃焼部18を設置せずに各燃料電池から放出される熱を用いて改質部19を加熱してもよい。
【0062】
原料ガスの一例であるメタンを水蒸気改質させた場合、改質部19にて、以下の式(c)の反応により一酸化炭素および水素が生成される。
CH+HO→CO+3H・・・・(c)
【0063】
改質部19内に設置される改質用触媒としては、水蒸気改質反応の触媒となるものであれば特に限定されないが、Ni,Rh,Ru,Ir,Pd,Pt,Re,Co,Fe及びMoの少なくとも一つを触媒金属として含む水蒸気改質用触媒が好ましい。
【0064】
改質器14の改質部19に供給される単位時間当たりの水蒸気の分子数Sと、改質器14の改質部19に供給される単位時間当たりの原料ガスの炭素原子数Cとの比であるスチームカーボン比S/Cは、1.5〜3.5であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましく、2.0〜2.5であることがさらに好ましい。スチームカーボン比S/Cがこの範囲にあることにより、原料ガスが効率よく水蒸気改質され、水素および一酸化炭素を含む改質ガスが生成される。さらに、燃料電池システム100内での炭素析出を抑制することができ、燃料電池システム100の信頼性を高めることができる。
【0065】
また、燃焼部18は、水蒸気改質を効率よく行なう観点から、改質部19を、600℃〜800℃に加熱することが好ましく、600℃〜700℃に加熱することがより好ましい。
【0066】
(第1燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、改質ガス供給経路42を通じて改質器14から供給された改質ガスを用いて発電を行なう第1燃料電池11を備えている。第1燃料電池11としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。また、第1燃料電池としては、600℃〜800℃程度で作動する高温型の燃料電池、例えば、700℃〜800℃程度で作動する固体酸化物形燃料電池、600℃〜700℃程度で作動する溶融炭酸塩形燃料電池が挙げられる。
【0067】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、酸素供給経路44を通じて酸素を含むガス(酸化剤ガス)が供給される。酸素を含むガスがカソードに供給されることにより、以下の式(d)に示す反応が起こり、その際、酸素イオンが固体酸化物電解質(図示せず)の内部を移動する。
+4e→2O2−・・・・(d)
【0068】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、改質ガス供給経路42を通じて水素を含む改質ガスが供給される。固体酸化物電解質の内部を移動する酸素イオンからアノードと固体酸化物電解質との界面にて水素が電子を受け取ることにより、以下の式(e)に示す反応が起こる。
+O2−→HO+2e・・・・(e)
【0069】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、酸素供給経路44を通じて酸素及び二酸化炭素を含むガスが供給される。酸素及び二酸化炭素を含むガスがカソードに供給されることにより、以下の式(f)に示す反応が起こり、その際、炭酸イオンが電解質(図示せず)の内部を移動する。
+2CO+4e→2CO2−・・・・(f)
【0070】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、改質ガス供給経路42を通じて水素を含む改質ガスが供給される。電解質の内部を移動する炭酸イオンからアノードと電解質との界面にて水素が電子を受け取ることにより、以下の式(g)に示す反応が起こる。
+CO2−→HO+CO+2e・・・・(g)
【0071】
上記式(e)及び式(g)に示すように、第1燃料電池11での改質ガスの電気化学的な反応により、固体酸化物形燃料電池では主に水蒸気が生成され、溶融炭酸塩形燃料電池では主に水蒸気及び二酸化炭素が生成される。また、アノードで生成された電子は、外部回路を通じてカソードに移動する。このようにして電子がアノードからカソードに移動することにより、第1燃料電池11にて発電が行なわれる。なお、固体酸化物形燃料電池であっても、一部の一酸化炭素が発電に用いられることで、二酸化炭素が生成される。
【0072】
カソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の酸素供給経路44を通じて、第2燃料電池12のカソード(図示せず)に供給される。
【0073】
一方、アノードから排出された未反応の改質ガスを含むオフガスは、オフガス経路52を通じて分離膜16の供給側16Aへ供給される。ここで、未反応の改質ガスを含むオフガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気などを含む混合ガスである。
【0074】
オフガス経路52及びオフガス経路54には熱交換器21が設置されており、熱交換器21により、オフガス経路52内を流通するオフガスと、オフガス経路54内を流通する水蒸気分離後のオフガスと、の間で熱交換を行なう。これにより、オフガス経路52内を流通するオフガスは、分離膜16により水蒸気を分離する際に好ましい温度まで冷却され、オフガス経路54内を流通する水蒸気分離後のオフガスは、第2燃料電池12の作動温度に適した温度に加熱される。そのため、システム全体の発電効率及び熱効率がより向上する。
【0075】
(分離膜)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、第1燃料電池11から排出された未反応の改質ガスを含むオフガスから、水蒸気及び一部の水素を分離する分離膜16を備えている。オフガス経路52内を流通するオフガスは、分離膜16の供給側16Aに供給され、オフガス中の水蒸気及び一部の水素は、供給側16Aから透過側16Bへ矢印A方向に分離膜16を通過する。水蒸気を分離した後のオフガスは、供給側16Aからオフガス経路54内を流通し、第2燃料電池12へ供給され、分離された水蒸気及び水素は、透過側16Bを流れる原料ガスと混合され、透過側16Bから原料ガス供給経路24内を流通し、水素は脱硫器27へ供給され、水蒸気は改質器14の改質部19へ供給される。
【0076】
ここで、燃料電池システム10では、分離された水蒸気は、原料ガスとともに改質器14に供給される。したがって、水蒸気を改質器14に供給するための供給経路及びブロワや、水タンク、供給経路、水ポンプ及び気化器を別途設ける必要は無く、システムが簡略化されていることにより、システムの信頼性が向上する。
【0077】
さらに、分離膜16を透過した水蒸気は原料ガスとともに原料ガス供給経路24内を流通するため、分離膜16の透過側16Bの水蒸気分圧は低くなり、供給側16Aと透過側16Bとの水蒸気分圧差を大きくすることができる。そのため、より多くの水蒸気を透過側16Bへ移動させることができ、水蒸気の分離が促進される。
【0078】
したがって、燃料電池システム10では、システムの簡略化とともに水蒸気の分離が促進されている。その結果、第2燃料電池12に供給されるオフガス中の水蒸気濃度をより小さくすることができ、燃料電池システム10の発電効率をより高めることができる。
【0079】
分離膜16は、水蒸気及び水素を分離する膜であるが、分離された水素の量は、分離された水蒸気の量に比べて非常に少ない。例えば、水素の透過係数PH2に対する水蒸気の透過係数PH2Oの比である透過係数比α(PH2O/PH2)は、5以上であることが好ましく、10以上であることが好ましい。これにより、水素が分離膜16に分離されたことによる第2燃料電池12の発電効率低下の影響をより少なくし、かつ、水蒸気が分離膜16に分離されたことによる第2燃料電池12の発電効率上昇の影響をより大きくすることができる。
【0080】
また、透過係数比α(PH2O/PH2)は、100000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましい。これにより、水添脱硫する際に十分な量の水素が、分離膜16を透過して脱硫器27に供給されることになる。
【0081】
なお、透過係数の単位は、barrer(バーラー)であり、1barrer=1×10−10cm(標準状態)・cm・cm−2・s−1・cmHg−1を表す。また、透過係数は、JIS K7126−1:2006「プラスチック−フィルム及びシートのガス透過度試験方法」の第1部に記載の差圧法に準拠して測定された値である。
【0082】
分離膜は、水蒸気を透過する膜であれば特に限定されないが、例えば、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜などが挙げられる。また、分離膜は、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることがより好ましい。
【0083】
分離膜としては、例えば、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜などの有機高分子膜が挙げられる。有機高分子膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリピロール、ポリフェニレンオキシド、ポリアニリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール等の各種有機材料が挙げられる。また、有機高分子膜は、1種の有機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の有機材料から構成される膜であってもよい。
【0084】
また分離膜としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体、ポリエチレングリコールなどの吸水性を有する有機高分子を含む有機高分子膜であってもよい。
【0085】
分離膜としては、例えば、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜などの無機材料膜が挙げられ、無機材料膜としては、中でもゼオライト膜が好ましい。ゼオライトとしては、例えば、A型、Y型、T型、ZSM−5型、ZSM−35型、モルデナイト系などが挙げられる。また、無機材料膜は、1種の無機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の無機材料から構成される膜であってもよい。
【0086】
分離膜は、有機高分子−無機材料複合膜であってもよい。有機高分子−無機材料複合膜としては、有機材料及び無機材料から構成される膜であれば特に限定されないが、例えば、上述した有機材料から選択される少なくとも1種の有機材料及び上述した無機材料から選択される少なくとも1種の無機材料から構成される複合膜であることが好ましい。
【0087】
分離膜としては、例えば、アミン水溶液、イオン液体などの液体膜が挙げられる。これら液体膜は、前述の有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜に、アミン水溶液又はイオン液体を含浸させたものであってもよい。
【0088】
分離膜として、アミン水溶液膜を用いた場合、オフガス中の二酸化炭素をアミン水溶液膜に化学的に吸着させた後、加熱することで二酸化炭素が分離され、アミン水溶液膜の透過側に二酸化炭素が移動する。アミン水溶液としては、モノエタノールアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。
【0089】
分離膜として、イオン液体膜を用いた場合、オフガス中の二酸化炭素がイオン液体膜に吸着し、吸着された二酸化炭素をイオン液体膜から分離することで、イオン液体膜の透過側に二酸化炭素が移動する。ここで、イオン液体は、150℃以下の比較的低温の融点を有する塩であり、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンなどの陽イオンと、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンなどの陰イオンと、から構成される。
【0090】
分離膜の厚さは、特に限定されないが、機械的強度の観点からは、通常、10μm〜3000μmの範囲が好ましく、より好ましくは10μm〜500μmの範囲であり、さらに好ましくは15μm〜150μmの範囲である。
【0091】
なお、分離膜は、多孔質性の支持体に支持されていてもよい。支持体の材質としては、紙、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミックなどが挙げられる。
【0092】
本実施形態において、分離膜としては、例えば、「Catalysis Today Vol. 132 (2008)182-187, Selective permeation and separation of steam from water-methanol-hydrogen gas mixtures through mordenite membrane」に記載の膜を用いてもよい。
【0093】
水蒸気を分離した後のオフガスは、供給側16Aからオフガス経路54内を流通し、第2燃料電池12へ供給される。このとき、前述のように、オフガス経路52及びオフガス経路54に設置された熱交換器21により、オフガス経路54内を流通する水蒸気分離後のオフガスは、第2燃料電池12の作動温度に適した温度に加熱される。
【0094】
(第2燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム10は、分離膜16の下流に配置され、水蒸気が分離されたオフガスを用いて発電を行なう第2燃料電池12を備えている。第2燃料電池12としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。なお、第2燃料電池12は、上述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、共通する事項に関する説明は省略する。
【0095】
燃料電池システム10では、第2燃料電池12は、水蒸気が分離されたオフガスを用いて発電を行なう。そのため、第2燃料電池12では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の水蒸気に起因する濃度過電圧が低減され、特に高電流密度時に高い性能を発揮することができる。よって、燃料電池システム10は、後段の燃料電池にて水蒸気が分離されていないオフガスを用いて発電を行なう多段式の燃料電池システムと比較して、高い発電効率を得ることができる。
【0096】
第2燃料電池12のカソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の酸素供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。一方、第2燃料電池12のアノードから排出されたオフガスは、オフガス経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。
【0097】
本実施形態では、2つの燃料電池(第1燃料電池11及び第2燃料電池12)を備える燃料電池システムについて説明したが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の燃料電池を備える燃料電池システムであってもよく、例えば、第2燃料電池12の下流に第3燃料電池を備える構成であってもよい。
【0098】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る燃料電池システム20は、第1燃料電池11の下流かつ第2燃料電池12の上流に、オフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部をさらに備えている点で第1実施形態に係る燃料電池システム10とは相違する。以下、本実施形態に係る燃料電池システム20について図2を用いて説明するが、上述の第1実施形態に係る燃料電池システム10と共通する構成については、その説明を省略する。図2は、第2実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図であり、本実施形態では、図2に示すB1又はB2の位置に、二酸化炭素除去部が設置される。
【0099】
本実施形態に係る燃料電池システム20では、第1燃料電池11の下流かつ第2燃料電池12の上流に配置された二酸化炭素除去部により、オフガスから二酸化炭素が除去された後、オフガスが第2燃料電池12に供給されて発電に用いられる。そのため、第2燃料電池12の電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧がより向上するとともに、オフガス中の二酸化炭素に起因する濃度過電圧が低減される。よって、本実施形態に係る燃料電池システム20では、第1実施形態に係る燃料電池システム10よりも高い発電効率を得ることができる。
【0100】
二酸化炭素除去部は、オフガスから二酸化炭素を除去するためのものであり、例えば、二酸化炭素を吸着、吸収するフィルター、二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収剤、二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去材を含むものが挙げられ、他にも、電気化学的な反応によりオフガスから二酸化炭素を除去するものであってもよい。
【0101】
二酸化炭素を吸着、吸収するフィルター、二酸化炭素吸収剤、二酸化炭素除去材としては、例えば、化学吸着剤、物理吸着剤、多孔質セラミックフィルターが挙げられる。より具体的には、活性炭、ゼオライト、チタン酸二バリウム、珪酸リチウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物、リチウム化ジルコニア、リチウムシリケートなどが挙げられ、これらの材料を組み合わせたり、混合したりして用いてもよい。また、多孔質セラミックフィルターに対してより緻密な細孔を有する材料をコーティングしてもよい。コーティングの具体例としては、多孔質セラミックフィルターの細孔表面に対して、アミノ基系シランカップリング剤で修飾されたメソポーラスシリカやゼオライトなどをコーティングする方法が挙げられる。これにより、二酸化炭素の高い選択性を実現でき、好適に二酸化炭素を除去することができる。多孔質セラミックフィルターとしては、市販のものを用いてもよく、例えば、日本碍子社製のサブナノセラミック膜フィルターを用いることができる。
【0102】
二酸化炭素除去部は、電気化学的な反応によりオフガスから二酸化炭素を除去するものであってもよい。例えば、二酸化炭素除去部は、アノードと、電解質と、カソードとを備え、アノード及びカソードには電源が接続されていてもよい。電源としては、第1燃料電池11又は第2燃料電池12を用いてもよい。このとき、アノードに二酸化炭素を含むオフガスが供給され、かつ、アノード及びカソードに電圧が印加されると、アノード及びカソードでそれぞれ次のような反応が生じる。この結果、カソードより二酸化炭素が除去される。
アノード:2HO→2H+O+2CO+4e→2CO2−
カソード:2CO2−→O+2CO+4e
【0103】
二酸化炭素除去部が電気化学的な反応によりオフガスから二酸化炭素を除去するものである場合、前述のアノードの反応では、水(水蒸気)が必要となるため、分離膜16の上流側に二酸化炭素除去部を配置することが好ましい。これにより、電気化学的な反応を行なう際に必要となる水を十分に供給することができ、二酸化炭素を好適に除去することができる。
【0104】
なお、図2では、二酸化炭素除去部は、分離膜16の供給側16Aの上流かつ熱交換器21の下流(図2中、B1)又は分離膜16の供給側16Aの下流かつ熱交換器21の上流(図2中、B2)に配置される。熱交換器21を通過したオフガスは、熱交換により温度が比較的低温(例えば、200℃程度)となっているため、二酸化炭素除去部は、低温度域で二酸化炭素を除去できる構成であることが好ましい。
【0105】
また、二酸化炭素除去部は、第1燃料電池11の下流かつ第2燃料電池12の上流に配置されていればよく、本実施形態のように、分離膜16の供給側16Aの上流かつ熱交換器21の下流(図2中、B1)又は分離膜16の供給側16Aの下流かつ熱交換器21の上流(図2中、B2)に配置される構成に限定されない。そのため、例えば、第1燃料電池11の下流かつ熱交換器21の上流に配置されていてもよく、熱交換器21の下流かつ第2燃料電池12の上流に配置されていてもよい。このとき、オフガス経路52にて熱交換器21を通過する前のオフガス、又はオフガス経路54にて熱交換器21を通過した後のオフガスは、比較的高温(例えば、750℃)であるため、二酸化炭素除去部は、高温領域で二酸化炭素を除去できる構成であることが好ましい。
【0106】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る燃料電池システム30は、水蒸気及び一部の水素が分離されたオフガスを燃料電池31に再度供給するオフガス循環経路56、57を備える循環式の燃料電池システムである。以下、本実施形態に係る燃料電池システム30について図3を用いて説明するが、上述の第1実施形態に係る燃料電池システム10と共通する構成については、その説明を省略する。また、燃料電池31は前述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0107】
燃料電池システム30では、分離膜16は、燃料電池31から排出された未反応の改質ガスを含むオフガスから水蒸気及び一部の水素を分離し、水蒸気が分離されたオフガスを用いて燃料電池31で発電を行なう。そのため、燃料電池31では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の水蒸気に起因する濃度過電圧が低減される。よって、燃料電池システム30は、水蒸気を分離せずにオフガスを再利用する循環式の燃料電池システムよりも高い発電効率を得ることができる。
【0108】
オフガス循環経路57には、改質ガスを流通させるためのリサイクルブロワ28が配置されている。なお、リサイクルブロワの配置は、特に限定されず、分離膜16の上流であってもよく、分離膜16の下流であってもよいが、分離膜16の上流に設ける場合には、熱交換器21と分離膜16との間に配置することが好ましく、分離膜16の下流に設ける場合には、分離膜16と熱交換器21との間に配置することが好ましい。
【0109】
また、分離膜16により分離された水蒸気及び水素は、分離膜16の透過側16Bに配置された原料ガス供給経路24に供給される。原料ガスが原料ガス供給経路24内を流通するため、分離された水素は、原料ガスとともに脱硫器27に供給され、分離された水蒸気は、原料ガスとともに改質器14に供給される。したがって、水素及び水蒸気を、それぞれ脱硫器27及び改質器14に供給するために供給経路及びブロワを別途設ける必要は無く、また、水タンク、水ポンプ、気化器なども別途設ける必要は無い。そのため、燃料電池システム10では、システムが簡略化されており、システムの信頼性が向上する。さらに、システムに必要な構成を減らすことができ、コストを削減することができる。
【0110】
また、分離膜16を透過した水蒸気は原料ガスとともに原料ガス供給経路24内を流通するため、分離膜16の透過側16Bの水蒸気分圧は低くなり、水蒸気の分離が促進される。したがって、燃料電池システム30では、システムの簡略化とともに水蒸気の分離が促進されている。その結果、オフガス循環経路57内を流通するオフガス中の水蒸気濃度をより小さくすることができ、燃料電池システム30の発電効率をより高めることができる。
【0111】
本実施形態に係る燃料電池システム30では、燃料電池31のカソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の酸素供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。一方、燃料電池31のアノードから排出されたオフガスについては、一部はオフガス経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給され、それ以外はオフガス循環経路56を通じて分離膜16の供給側16Aへ供給される。
【0112】
オフガス循環経路56内を流通するオフガスは、分離膜16の供給側16Aに供給され、オフガス中の水蒸気及び一部の水素は、供給側16Aから透過側16Bへ矢印A方向に分離膜16を通過する。水蒸気を分離した後のオフガスは、供給側16Aからオフガス循環経路57内を流通し、改質ガス供給経路42へ供給され、水蒸気を分離した後のオフガスと改質ガスとが混合された混合ガスが燃料電池31の発電に用いられる。一方、分離された水蒸気及び水素は、透過側16Bを流れる原料ガスと混合され、透過側16Bから原料ガス供給経路24内を流通し、水素は脱硫器27へ供給され、水蒸気は改質器14の改質部19へ供給される。
【0113】
オフガス循環経路56及びオフガス循環経路57には熱交換器21が設置されており、熱交換器21により、オフガス循環経路56内を流通するオフガスと、オフガス循環経路57内を流通する水蒸気分離後のオフガスと、の間で熱交換を行なう。これにより、オフガス循環経路56内を流通するオフガスは、分離膜16により水蒸気を分離する際に好ましい温度まで冷却され、オフガス循環経路57内を流通する水蒸気分離後のオフガスは、燃料電池31の作動温度に適した温度に加熱される。そのため、システム全体の発電効率及び熱効率がより向上する。
【0114】
本実施形態に係る燃料電池システム30は、システム全体の発電効率をより向上させる観点から、分離膜16の供給側16Aの上流又は下流にオフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部をさらに備えていてもよい。
【0115】
本発明は、前述の第1実施形態〜第3実施形態に限定されず、本発明の技術的思想内で、当業者によって、前述の各実施形態を組み合わせて実施される。さらに、熱交換器の設置場所、組み合わせなどについてもこれら実施形態に限定されない。
【0116】
[硫黄分の量と透過水素量との比較]
以下のようにして、本発明の一実施形態に係る2段式の燃料電池システムにて水添脱硫すべき硫黄分の量と、分離膜を透過する水素量(透過水素量)について比較した。まず、燃料電池システム、分離膜の各条件を以下のように仮定した。
燃料電池の出力(1段目と2段目の合計)・・・10kW
燃料電池のDC発電効率(1段目と2段目の平均)・・・65%LHV(低位発熱量)
原料ガス・・・メタン
S/C・・・2.3
第1燃料電池反応温度・・・750℃
第1燃料電池の燃料利用率・・・60%
分離膜の透過係数比(PH2O/PH2)・・・156(150℃)
【0117】
メタンに含まれる硫黄分を、都市ガス組成の一般的な値である5[mgS/Nm](=1.56×10−7[mol/NL]と仮定する。ここで、メタン流量は、前述の出力及び発電効率から25.7[NL/min](=1.15[mol/min])と試算されるため、脱硫器に流入する1分間当たりの硫黄分の量は、以下のように求められる。
25.7[NL/min]×1.56×10−7[mol/NL]=4.02×10−6[mol/min]
よって、硫黄分の量は、4.0×10−6[mol/min]である。
【0118】
次に、S/C=2.3であることから、改質器に供給される水蒸気流量は、以下のように求められる。
1.15[mol/min]×2.3=2.64[mol/min]
よって、改質器に供給される水蒸気流量は、2.6[mol/min]である。
【0119】
第1燃料電池のアノードから排出されるオフガスは、750℃平衡状態になっていると仮定した場合、流量は6.3[mol/min]であり、その内、57.4%が水蒸気であると試算される。そのため、分離膜に供給される水蒸気量は、以下のように求められる。
6.3[mol/min]×0.574=3.63[mol/min]
よって、分離膜に供給される水蒸気流量は、3.6[mol/min]である。
【0120】
改質器に供給される水蒸気流量及び分離膜に供給される水蒸気流量の結果から、第1燃料電池のアノードから排出されるオフガス中の水蒸気の約72%(2.6[mol/min]÷3.6[mol/min])が分離膜を透過すればよい。
【0121】
ここで、透過係数比(PH2O/PH2)=156であるため、分離膜を透過する水素量は、以下のように求められる。
2.6[mol/min]/156=1.69×10−2[mol/min]
よって、分離膜を透過する水素量は、1.7×10−2[mol/min]である。
【0122】
したがって、メタンに含まれる硫黄分の量に対する透過水素量の比は以下のとおりである。
1.7×10−2[mol/min]/4.0×10−6[mol/min]=4.25×10
化学量論的に必要な水素の約4000倍の水素を供給できることになるので、前述の式(a)の反応は十分に進行する。そのため、本発明に係る燃料電池システムでは、原料ガス中に含まれる硫黄分に対して、十分な量の水素が分離膜より分離され、水添脱硫に利用されることが分かる。
【符号の説明】
【0123】
10、20、30…燃料電池システム、11…第1燃料電池、12…第2燃料電池、14…改質器、16…分離膜、16A…供給側、16B…透過側、18…燃焼部、19…改質部、21、22…熱交換器、24…原料ガス供給経路、25…ブロワ、27…脱硫器、28…リサイクルブロワ、31…燃料電池、42…改質ガス供給経路、44…酸素供給経路、46、52、54…オフガス経路、48…排気経路、56、57…オフガス循環経路、100、200…燃料電池システム、111…第1燃料電池、112…第2燃料電池、114…改質器、118…燃焼部、119…改質部、121、122…熱交換器、124…原料ガス供給経路、125…ブロワ、127…脱硫器、129…気液分離器、130…水タンク、131…改質水経路、132…水ポンプ、133…気化器、135…燃料電池、142…改質ガス供給経路、144…酸素供給経路、146、152、154…オフガス経路、148…排気経路、150…オリフィス、151…改質ガス循環経路、156、157…オフガス循環経路
図1
図2
図3
図4
図5