特許第6062005号(P6062005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062005耐冷熱衝撃フラックス組成物、ソルダペースト組成物および電子回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062005
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】耐冷熱衝撃フラックス組成物、ソルダペースト組成物および電子回路基板
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20170106BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20170106BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20170106BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20170106BHJP
【FI】
   B23K35/363 D
   B23K35/363 E
   B23K35/363 C
   H05K3/34 503Z
   H05K3/34 512C
   !B23K35/26 310A
   !C22C13/00
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-169282(P2015-169282)
(22)【出願日】2015年8月28日
(62)【分割の表示】特願2013-172749(P2013-172749)の分割
【原出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-20005(P2016-20005A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】新井 正也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】勝山 司
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 章一郎
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/104693(WO,A1)
【文献】 特開平10−077380(JP,A)
【文献】 特開2008−062252(JP,A)
【文献】 特開2014−124657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価を有する合成樹脂と、チキソ剤と、活性剤と、溶剤とを含むフラックス組成物であって、
前記酸価を有する合成樹脂としてメタクリル酸と2−ヘキシルデシルアクリレートを含むモノマーを重合して得られるアクリル樹脂を含み、
フラックス組成物を加熱して形成するフラックス固化物に−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与えた後の前記フラックス固化物の接着力が0.2N/mm以上であることを特徴とするフラックス組成物。
【請求項2】
前記アクリル樹脂は、メタクリル酸と2−ヘキシルデシルアクリレートと炭素鎖が直鎖状である炭素数2〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマー含むモノマー類を重合して得られるアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のフラックス組成物。
【請求項3】
前記アクリル樹脂は、メタクリル酸と2−ヘキシルデシルアクリレートと炭素鎖が直鎖状である炭素数6〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマー含むモノマー類を重合して得られるアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフラックス組成物。
【請求項4】
酸化防止剤を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフラックス組成物。
【請求項5】
前記酸価を有する合成樹脂以外のロジン系樹脂を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフラックス組成物。
【請求項6】
前記メタクリル酸と2−ヘキシルデシルアクリレートを含むモノマーを重合して得られるアクリル樹脂の配合量は、フラックス組成物全量に対して10重量%から90重量%であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のフラックス組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフラックス組成物とはんだ合金粉末とを含むことを特徴とするソルダペースト組成物。
【請求項8】
前記はんだ合金粉末は、SnおよびSbからなる合金、SnおよびSb並びにAg、BiおよびInの少なくとも1種からなる合金、Sn並びにAg、CuおよびBiの少なくとも1種からなる合金、SnおよびPbを含む合金のいずれかからなることを特徴とする請求項7に記載のソルダペースト組成物。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のソルダペースト組成物を用いてはんだ接合部を形成するはんだ接合部の製造方法であって、前記はんだ接合部に−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与える前と与えた後のはんだシェア強度の低下率が50%以下であることを特徴とするはんだ接合部の製造方法。
【請求項10】
電子部品が搭載される電子回路基板の製造方法であって、
基板上に請求項7または請求項8に記載のソルダペースト組成物を用いてはんだ接合部とフラックス残渣とを形成し、
前記フラックス残渣が前記はんだ接合部およびその近傍に電子回路基板表面と前記電子部品とに接着するよう形成されることを特徴とする電子回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に電子部品等をはんだ付けする際に使用されるフラックス組成物およびこれを用いたソルダペースト組成物であって、特に寒暖の差が激しい冷熱衝撃サイクル環境下に置かれる電子回路基板に用いた場合であっても、そのフラックス残渣のみならず、はんだ接合部に亀裂が入り難いフラックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を基板に実装する際に使用されるソルダペースト組成物には、はんだ合金粉末や基板上の金属酸化物の除去とはんだ合金粉末の表面張力を低下させて濡れ性を向上することを目的としてフラックス組成物が配合される。
【0003】
そして基板上に電子部品を実装した後、このようなフラックス組成物の一部はフラックス残渣としてはんだ接合部およびその近傍、例えば基板上や電子部品の端子・リードフレーム等に付着したまま残ってしまう。
【0004】
このようなフラックス残渣は、その性質上、亀裂が発生し易いという問題がある。特にその使用時に−40℃から125℃といった寒暖の差が激しい環境下に置かれる電子回路基板の場合、激しい冷熱衝撃を受けたフラックス残渣には特に亀裂が入り易く、この亀裂を通して水分が電子回路基板の回路部分に浸透して回路をショートさせたり、その回路の金属を腐食させたりするという問題が生じる。
【0005】
また上述のような寒暖の差が激しい環境下に置かれる電子回路基板の場合、実装された電子部品と電子回路基板との熱膨張係数の差によってはんだ接合部に大きな応力が発生し、この応力によるはんだ接合部の塑性変形の繰り返しによりはんだ接合部に亀裂が発生し、更に繰り返し応力が加えられる過程で(まだ亀裂が発生していない)亀裂先端付近のはんだに応力が集中することで亀裂がはんだ接合部のより深くに進展し、著しく亀裂が進展した場合には最終的に電子部品と電子回路基板との電気的な接続が損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
このような問題を解決する方法として、電子部品と絶縁膜との間にはんだ部から浸出したフラックスの残渣が介在しており、前記フラックスに用いるアクリル樹脂のガラス転移点が−40℃以下または当該フラックス残渣の軟化温度以上であり、−40℃から当該フラックス残渣の軟化温度までの温度範囲における線膨張係数の最大値が300×10−6/K以下であるフラックス残渣を有するはんだ接合構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/104693号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、特にその使用時に−40℃から125℃といった寒暖の差が激しく冷熱衝撃の大きい環境下に置かれる電子回路基板に用いられた場合であっても、はんだ接合部の亀裂の進展を抑制し、これによりはんだ接合部のはんだシェア強度の低下を防止することのできるフラックス組成物、ソルダペースト組成物およびこれらを用いて形成されたはんだ接合部を有する電子回路基板を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明のフラックス組成物は、酸価を有する合成樹脂と、チキソ剤と、活性剤と、溶剤とを含み、前記酸価を有する合成樹脂としてメタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類を重合して得られるアクリル樹脂を含み、このフラックス組成物を加熱して形成するフラックス固化物に−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与えた後の前記フラックス残渣の接着力が0.2N/mm以上であることをその特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)の構成にあって、前記アクリル樹脂はメタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数6〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類を重合して得られるアクリル樹脂であることをその特徴とする。
【0011】
(3)上記(1)の構成にあって、前記アクリル樹脂はメタクリル酸と2−エチルヘキシルメタクリレートを含むモノマーを重合して得られるアクリル樹脂であることをその特徴とする。
【0012】
(4)上記(1)または(2)に記載の構成にあって、前記アクリル樹脂はメタクリル酸と2−ヘキシルデシルアクリレートを含むモノマーを重合して得られるアクリル樹脂であることをその特徴とする。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1に記載の構成にあって、本発明のフラックス組成物は酸化防止剤を更に含むことをその特徴とする。
【0014】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1に記載の構成にあって、本発明のフラックス組成物は前記酸価を有する合成樹脂以外のロジン系樹脂を更に含むことをその特徴とする。
【0015】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1に記載の構成にあって、前記前記酸価を有する合成樹脂としてメタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類を重合して得られるアクリル樹脂の配合量は、フラックス組成物全量に対して10重量%から90重量%であることをその特徴とする。
【0016】
(8)本発明のソルダペースト組成物は、上記(1)から(7)のいずれか1に記載のフラックス組成物とはんだ合金粉末とを含むことをその特徴とする。
【0017】
(9)上記(8)に記載の構成にあって、前記はんだ合金粉末は、SnおよびSbからなる合金、SnおよびSb並びにAg、BiおよびInの少なくとも1種からなる合金、Sn並びにAg、CuおよびBiの少なくとも1種からなる合金、SnおよびPbを含む合金のいずれかからなることをその特徴とする。
【0018】
(10)本発明のはんだ接合部は、上記(8)または(9)に記載のソルダペースト組成物を用いて形成され、前記はんだ接合部に−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与える前と与えた後のはんだシェア強度の低下率が50%以下であることをその特徴とする。
【0019】
(11)本発明の電子回路基板は、電子部品が搭載され、上記(8)または(9)に記載のソルダペースト組成物を用いて形成されるはんだ接合部とフラックス残渣とを有し、前記フラックス残渣が前記はんだ接合部およびその近傍に電子回路基板表面と前記電子部品とに接着するよう形成されることをその特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上述の通り、寒暖の差が激しい環境下に置かれる電子回路基板の場合、実装された電子部品と電子回路基板との熱膨張係数の差によってはんだ接合部に大きな応力が発生し、この応力によるはんだ接合部の塑性変形の繰り返しによりはんだ接合部に亀裂が発生し更に繰り返し応力が加えられる過程で(まだ亀裂が発生していない)亀裂先端付近のはんだに応力が集中することで亀裂がはんだ接合部のより深くに進展し、著しく亀裂が進展した場合には最終的に電子部品と電子回路基板との電気的な接続が損なわれてしまう。
【0021】
しかし本発明のフラックス組成物およびソルダペースト組成物により形成されるフラックス残渣は、激しい冷熱衝撃を受けた場合であってもその接着力を保つことができる。そしてこのようなフラックス残渣は、その接着力により部品と基板およびはんだ接合部を接着していることで、亀裂先端付近のはんだへの応力集中を防ぎ、冷熱衝撃の大きい環境下であってもはんだ接合部の亀裂の進展を抑制することができると考えられる。
【0022】
またこのようなフラックス残渣およびはんだ接合部を有する電子回路基板は、例えば自動車のエンジンルーム内といった長期の過酷な冷熱衝撃サイクルに曝される環境下においても、十分な接合信頼性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の電子回路基板の断面を示した概略図。
図2】本発明の一実施例および一比較例における冷熱衝撃サイクル下でのフラックス残渣の接着力(N)の変化を示す図。
図3】同実施例および同比較例にかかり、冷熱衝撃サイクル下でのフラックス残渣が付着したはんだ接合部のはんだシェア強度の変化を示す図。
図4】同実施例および同比較例にかかり、冷熱衝撃試験後(2000サイクル)のチップレジスタの断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のフラックス組成物、ソルダペースト組成物および電子回路基板の一実施形態を以下に詳述する。
【0025】
<フラックス組成物>
本発明のフラックス組成物は、酸価を有する合成樹脂とチキソ剤と活性剤と溶剤とを含む。
【0026】
1.酸価を有する合成樹脂
本発明のフラックス組成物に用いる酸価を有する合成樹脂は、メタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類を重合して得られるアクリル樹脂を含む。当該アクリル樹脂以外の樹脂として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の各種エステル、メタクリル酸の各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のエステル、無水マレイン酸のエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニルおよび酢酸ビニルの少なくとも1種のモノマーを重合してなるアクリル樹脂、カルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0027】
前記メタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類とを重合して得られるアクリル樹脂の中でも、メタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数6〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類を重合して得られるアクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0028】
また前記メタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類とを重合して得られるアクリル樹脂の中でも、更にメタクリル酸と2−エチルヘキシルメタクリレートを含むモノマーを重合して得られるアクリル樹脂、またはメタクリル酸と2−ヘキシルデシルアクリレートを含むモノマーを重合して得られるアクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0029】
また前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物(以下、「ロジン誘導体化合物」という。)に使用するカルボキシル基を有するロジン系樹脂としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン;水添ロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン等のロジン誘導体等が挙げられ、これら以外にもカルボキシル基を有するロジンであれば使用することができる。またこれらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0030】
次に前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物としては、例えばダイマージオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルダイマージオールのようなダイマー酸から誘導される化合物であって、その末端にアルコール基を有するもの等が挙げられ、例えばPRIPOL2033、PRIPLAST3197、PRIPLAST1838(以上、クローダジャパン(株)製)等を用いることができる。
【0031】
前記ロジン誘導体化合物は、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合することにより得られる。この脱水縮合の方法としては一般的に用いられる方法を使用することができる。また、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合する際の好ましい重量比率は、それぞれ25:75〜75:25である。
【0032】
前記酸価を有する合成樹脂の酸価は30〜150mgKOH/gであることが好ましく、前記メタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2〜20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類とを重合して得られるアクリル樹脂の配合量はフラックス組成物全量に対して10重量%から90重量%であることが好ましい。
【0033】
2.チキソ剤
本発明のフラックス組成物に用いるチキソ剤としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、オキシ脂肪酸類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
このようなチキソ剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して3重量%から15重量%であることが好ましい。
【0034】
3.活性剤
本発明のフラックス組成物に用いる活性剤としては、例えば有機アミンのハロゲン化水素塩等のアミン塩(無機酸塩や有機酸塩)、有機酸、有機酸塩、有機アミン塩を配合することができる。更に具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩、酸塩、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
このような活性剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して5重量%から15重量%であることが好ましい。
【0035】
4.溶剤
本発明のフラックス組成物に用いる溶剤としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコールエーテル等を使用することができる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
このような溶剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して20重量%から40重量%であることが好ましい。
【0036】
5.酸化防止剤
本発明のフラックス組成物には、はんだ合金粉末の酸化を抑える目的で酸化防止剤を配合することができる。このような酸化防止剤としては、例えばヒンダートフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられる。その中でも特にヒンダートフェノール系酸化剤が好ましく用いられるが、使用できる酸化防止剤はこれらに限定されるものではない。またこれらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
このような酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス組成物全量に対して0.5重量%から5重量%程度であることが好ましい。
【0037】
6.ロジン系樹脂
本発明のフラックス組成物には、前記酸価を有する合成樹脂以外のロジン系樹脂として例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン、およびロジンを重合化、水添化、不均一化、アクリル化、マレイン化、エステル化、およびフェノール付加反応等を行ったロジン変性樹脂等を使用することができる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
このようなロジン系樹脂の配合量は、フラックス組成物全量に対して20重量%以下であることが好ましい。
【0038】
本発明のフラックス組成物には、更にアクリル系樹脂、並びにハロゲン、つや消し剤および消泡剤等の添加剤を加えてもよい。
【0039】
このようなアクリル系樹脂としては、例えばアクリル系モノマーを重合成分に有するポリマーからなる樹脂を用いることができる。このようなアクリル系モノマーとしては、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル酸、エステル基を有するアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。またこれ以外に、これらのアクリル系モノマーのみを用いたポリマーからなる樹脂も用いることができる。このようなアクリル系樹脂の配合量は、フラックス組成物全量に対して50重量%以下であることが好ましい。
【0040】
また前記添加剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して10重量%以下であることが好ましい。またこれらの更に好ましい配合量はフラックス組成物全量に対して5重量%以下である。
【0041】
このようなフラックス組成物を加熱して形成するフラックス固化物は、これに−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与えた後の接着力を0.2N/mm以上に保つことができる。本明細書においては、このようなフラックス固形物は、フラックス組成物のみを加熱して形成するものと、当該フラックス組成物とはんだ合金粉末とを含むソルダペースト組成物を用いて電子回路基板上に電子部品を実装した場合に当該電子基板上に形成されるフラックス残渣の両方を含む。
【0042】
<ソルダペースト組成物>
本発明のソルダペースト組成物は、上記フラックス組成物とはんだ粉末とを混合することにより得られる。
前記はんだ合金粉末としては、例えばSn、Ag、Cu、Bi、Zn、In、Ga、Sb、Au、Pd、Ge、Ni、Cr、Al、P、In、Pb等を複数組合せたものが挙げられる。代表的なはんだ合金粉末としては、SnとPbを含むSn−Pb系はんだ合金粉末や、Sn−Ag−CuおよびSn−Ag−Cu−Inといった鉛フリーはんだ合金粉末が用いられる。
【0043】
上記はんだ合金粉末の中でも、Sn−Sb、Sn−Sb−Ag、Sn−Sb−Bi、Sn−Sb−In、Sn−Sb−Ag−Bi、Sn−Sb−Ag−In、Sn−Sb−Bi−In、Sn−Ab−Ag−Bi−In、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Bi、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Bi、Sn−Cu−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、並びにSn−Pb系はんだ合金粉末が好ましく用いられる。これらの合金粉末は、単独でまたは複数を組合せて用いることができる。
【0044】
前記はんだ合金粉末の配合量は、ソルダペースト組成物全量に対して65重量%以上95重量%以下であることが好ましい。より好ましい配合量は85重量%以上93重量%以下であり、特に好ましい配合量は89重量%以上92重量%以下である。
はんだ合金粉末の配合量が65重量%未満の場合には、得られるソルダペースト組成物を用いた場合に充分なはんだ接合が形成されにくくなる傾向にある。他方はんだ合金粉末の含有量が95重量%を超える場合にはバインダとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ合金粉末とを混合しにくくなる傾向にある。
【0045】
<電子回路基板>
本発明の電子回路基板は、その表面上に形成される電極部と、この電極部上に形成されるはんだ接合部と、このはんだ接合部を介して当該電子回路基板上に実装される電子部品と、前記はんだ接合部およびその近傍に当該電子回路基板表面と前記電子部品とに接着するよう形成されるフラックス残渣とを有し、当該はんだ接合部およびフラックス残渣は上記ソルダペースト組成物を用いて形成される。
また前記はんだ接合部は、上記ソルダペースト組成物をリフロー処理することにより形成されることが望ましい。
【0046】
本明細書において、フラックス残渣が電子回路基板表面と電子部品に接着するように形成される状態とは、フラックス残渣が電子回路基板自体の表面と電子部品とに接着する場合と、フラックス残渣が電子回路基板上に形成される絶縁層の表面と電子部品とに接着する場合との両方を含むものとする。
【0047】
また本発明の電子回路基板に実装される電子部品の種類は特に限定されないが、例えばチップコンデンサ、チップLEDといったチップ型部品を実装する際に特にその効果を発揮することができる。
【0048】
以下、図1を用いて電子回路基板の一実施形態を説明する。
【0049】
本実施形態における電子回路基板は、基板1、電極部2、絶縁層3、はんだ接合部4、フラックス残渣5、電子部品6、外部電極7とからなる。
電極部2および絶縁層3は基板1表面に形成されている。はんだ接合部4は、電極部2と電子部品6の外部電極7とを接合するように形成されており、フラックス残渣5は、はんだ接合部4、および電子部品6の基板1側表面とこれに対向する絶縁層3表面とに接着するよう形成されている。
【0050】
そしてフラックス残渣5が上記基板1表面と絶縁層3表面とに接着する力は、−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を当該電子回路基板に2000サイクル与えた場合であっても、0.2N/mm以上を保つことができる。
【0051】
更には本実施形態における電子回路基板は、上記冷熱衝撃試験を与える前と後の前記はんだ接合部のはんだシェア強度の低下率を50%以下に保つことができる。
【0052】
本実施形態における電子回路基板は上記のような構成からなることにより、冷熱衝撃サイクル下における電子部品6と基板1の熱膨張の差に起因する塑性変形の繰り返しにより生ずるはんだ接合部4の亀裂について、亀裂先端付近のはんだへの応力集中を防ぐことではんだ接合部4の亀裂進展を抑性することができる。
特に図1のようにフラックス残渣5が電子部品6の基板1側表面とこれに対向する絶縁層3の表面との隙間を埋めるように形成されている場合、フラックス残渣5が電子部品6と絶縁層3とに強固に接着するため、はんだ接合部4の亀裂進展をより抑制することができる。
【0053】
なお、本実施形態においては基板1上に絶縁層3が形成された状態で電子部品6が実装されているが、例えばセラミック基板のように基板上に絶縁層を形成しない基板上に電子部品を実装した電子回路基板であっても同様の効果を奏する。
【0054】
また本明細書において、前記フラックス固形物(フラックス残渣を含む)の接着力は、以下の測定方法にて測定される。
【0055】
フラックス組成物またはこれを用いたソルダペースト組成物を用いて基板上にチップ部品を表面実装し、当該基板上にフラックス固形物を形成する。当該フラックス固形物は前記チップ部品と前記基板の両方に接着するように形成される。
その後、冷熱衝撃試験装置等を用いて前記基板に−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与える。
そして当該冷熱衝撃試験後の基板上にあるフラックス固形物について、オートグラフ等を用いてその接着力を測定する。測定の条件はJIS規定C60068−2−21に準拠する。測定に用いるジグは端面が平坦で部品寸法と同等以上の幅を持つせん断ジグとする。測定にあたっては、当該せん断ジグを前記冷熱衝撃試験後のチップ部品側面に突き当てて所定のせん断速度にて基板に平行な力を加えてその最大試験力を求め、この値を前記チップ部品の面積で除してフラックス固形物の接着力を算出する。この時、せん断高さは部品高さの1/4以下とし、せん断速度は5mm/分とする。
【0056】
更に本明細書において、前記はんだ接合部のはんだシェア強度およびその低下率は、以下の測定方法にて測定される。
【0057】
ソルダペースト組成物を用いて基板上にチップ部品を表面実装し、当該基板上にはんだ接合部およびフラックス残渣を形成する。当該チップ部品を実装した基板についてオートグラフ等を用いてそのはんだシェア強度を測定する。
その後、冷熱衝撃試験装置等を用いて前記基板に−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与える。
次いで、当該冷熱衝撃試験後の基板上にあるはんだ接合部について、オートグラフ等を用いてそのはんだシェア強度を測定する。
冷熱衝撃試験前後のはんだシェア強度測定の条件はJIS規定C60068−2−21に準拠する。測定に用いるジグは端面が平坦で部品寸法と同等以上の幅を持つせん断ジグとする。測定にあたっては、当該せん断ジグを基板のチップ部品側面に突き当てて所定のせん断速度にて基板に平行な力を加えてその最大試験力を求め、この値をはんだシェア強度とする。この時、せん断高さは部品高さの1/4以下とし、せん断速度は5mm/分とする。
そして、冷熱衝撃試験前のはんだ接合部のはんだシェア強度に対し、冷熱衝撃試験後により低下したはんだシェア強度の割合を百分率で示した値をはんだシェア強度の低下率(%)とする。なお、本明細書においてはんだ接合部のはんだシェア強度とは、フラックス残渣が付着した状態のはんだ接合部のはんだシェア強度を意味する。
【0058】
このようなフラックス組成物およびソルダペースト組成物を用いて形成されたはんだ接合部およびフラックス残渣を有する電子回路基板は、これが寒暖の差が激しい過酷な環境下において使用される場合であっても、そのフラックス残渣およびはんだ接合部の亀裂進展抑制、並びにそれに起因するはんだ接合部のはんだシェア強度の低下抑制を実現することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
<酸価を有する合成樹脂の合成および合成樹脂の合成>
以下の成分および手順にて、本発明に係る酸価を有するアクリル樹脂AからC、および比較例に係る合成樹脂DおよびEを作製した。
【0061】
アクリル樹脂A
メタクリル酸10重量%、2−エチルヘキシルメタクリレート51重量%、ラウリルアクリレート39重量%を混合した溶液を作製した。
その後、撹拌機、流管および窒素導入管とを備えた500mlの4つ口フラスコにジエチルヘキシルグリコール200gを仕込み、これを110℃に加熱した。その後、上記溶液300gにアゾ系ラジカル開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(製品名:V−601、和光純薬(株)製)を0.2重量%から5重量%を加えてこれを溶解させた。
この溶液を上記4つ口フラスコに1.5時間かけて滴下し、当該4つ口フラスコ内にある成分を10℃で1時間撹拌した後に反応を終了させ、アクリル樹脂Aを得た。なお、アクリル樹脂Aの重量平均分子量は7,800Mw、酸価は40mgKOH/g、ガラス転移温度は−47℃であった。
【0062】
アクリル樹脂B
撹拌機および還流管を備えた2000mlの4つ口フラスコにアクリル酸243.4g(3.38mol)、2−へキシルデカノール630.3g(2.6mol、製品名:ファインオキソコール1600、日産化学工業(株)製)、p−トルエンスルホン酸一水和物 74.1g(0.39mol)、p−メトキシハイドロキノン4g、トルエン900gを加え、還流下でこれらを6時間反応させた。この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、これを酢酸エチルで抽出した後に濃縮し、下記一般式(1)の構造を有する
2−ヘキシルデシルアクリレート756g(収率:98%)を得た。
【0063】
【化1】
【0064】
そして、メタクリル酸11重量%、2−エチルヘキシルメタクリレート25重量%、上記2−ヘキシルデシルアクリレート64重量%を混合した溶液を使用した以外はアクリル樹脂Aの作製と同じ条件にてアクリル樹脂Bを得た。なお、アクリル樹脂Bの重量平均分子量は14,700Mw、酸価は72mgKOH/g、ガラス転移温度は−71℃であった。
【0065】
アクリル樹脂C
メタクリル酸11重量%、2−エチルヘキシルメタクリレート10重量%、上記2−ヘキシルデシルアクリレート79重量%を混合した溶液を使用した以外はアクリル樹脂Aの作製と同じ条件にてアクリル樹脂Cを得た。なお、アクリル樹脂Cの重量平均分子量は12,500Mw、酸価は70mgKOH/g、ガラス転移温度は−83℃であった。
【0066】
アクリル樹脂D
2−エチルヘキシルアクリレート100重量%からなる溶液を使用した以外はアクリル樹脂Aの作製と同じ条件にてアクリル樹脂Dを得た。なお、アクリル樹脂Dの重量平均分子量は8,200Mw、酸価は0mgKOH/g、ガラス転移温度は−70℃であった。
【0067】
アクリル樹脂E
ラウリルメタクリレート100重量%からなる溶液を使用した以外はアクリル樹脂Aの作製と同じ条件にてアクリル樹脂Eを得た。なお、アクリル樹脂Eの重量平均分子量は9,000Mw、酸価は0mgKOH/g、ガラス転移温度は−60℃であった。
【0068】
なお、比較例のロジン変性樹脂として用いる水添酸変性ロジン(製品名:KE−604、荒川化学工業(株)製)の重量平均分子量は350Mw、酸価は230mgKOH/g、ガラス転移温度は75℃であった。
【0069】
<フラックス組成物>
表1に記載の各成分を混練し、実施例1から5、および比較例1から3の各フラックス組成物を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
各フラックス組成物について、フラックス残渣の接着力を測定した。その測定方法は以下の通りである。また測定した数値を表2に示す。
【0072】
はんだ付パターンを有していない、ソルダレジストを備えたガラスエポキシ基板と、3.2mm×1.6mmサイズのチップ部品と、当該チップ部品を実装するために形成された開口を持つ厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各フラックス組成物を印刷し、前記チップ部品を搭載した。その後、酸素濃度1500±500ppmの窒素雰囲気下において、ピーク温度を240℃に設定したリフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各基板を加熱し、フラックス残渣にて当該各基板と前記チップ部品とを接着した。
次に、−40℃(30分間)〜125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、上記冷熱衝撃サイクルを2000回繰り返す環境下に前記各基板を曝した後これを取りだし、各試験基板を作製した。
当該各試験基板について、各基板と前記チップ部品の接着力(フラックス残渣の接着力)をオートグラフ(製品名:EZ−L−500N、(株)島津製作所製)を用いて測定した。測定条件は、JIS規定C60068−2−21に準拠した。また接着力の測定に際しては、ジグは端面が平坦で部品寸法と同等以上の幅を持つせん断ジグを用いた。このせん断ジグを前記チップ部品側面に突き当てて所定のせん断速度で基板に平行な力を加えて最大試験力を求め、この値をフラックス残渣の接着力(N)とした。またこの値を前記チップ部品の面積で除してフラックス残渣の接着力(N/mm)を算出した。この時、せん断高さは部品高さの1/4以下とし、せん断速度は5mm/分とした。
なお、実施例4および比較例1については、上記冷熱衝撃サイクルを0、500、1000、1500、および2000回繰り返した際のフラックス残渣(N)の接着力を測定した。
【0073】
次に、上記各フラックス組成物11.0重量%と、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金粉末(平均粒径20〜36μm)89.0重量%とを混合し、実施例1から5、および比較例1から3に係る各ソルダペースト組成物を作製した。
【0074】
各ソルダペースト組成物について、はんだ接合部のはんだシェア強度低下率とはんだ亀裂進展性を測定し、その結果に基づき評価を行った。これらの測定方法および評価方法は以下の通り。またその評価結果を表2に示す。
【0075】
<はんだシェア強度低下率>
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよびチップ部品を接続する電極(1.6mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、前記チップ部品を搭載した。その後、酸素濃度1500±500ppmの窒素雰囲気下において、ピーク温度を240℃に設定したリフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各基板を加熱してはんだ付をし、はんだ接合部を形成した。このはんだ付けを行った各基板について、各基板上のはんだ接合部のはんだシェア強度をオートグラフ(製品名:EZ−L−500N、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
次に、−40℃(30分間)〜125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、上記冷熱衝撃サイクルを2000回繰り返す環境下に前記各基板を曝した後これを取りだした。そしてこの冷熱衝撃試験後の各基板上のはんだ接合部のはんだシェア強度をオートグラフ(製品名:EZ−L−500N、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
上記はんだシェア強度の測定条件は、いずれもJIS規定C60068−2−21に準拠した。またはんだシェア強度の測定に際しては、ジグは端面が平坦で部品寸法と同等以上の幅を持つせん断ジグを用いた。このせん断ジグをチップ部品側面に突き当てて所定のせん断速度で基板に平行な力を加えて最大試験力を求め、この値をはんだ接合部のはんだ
シェア強度とした。この時、せん断高さは部品高さの1/4以下とし、せん断速度は5mm/分とした。
そして、冷熱衝撃試験前のはんだシェア強度と冷熱衝撃試験後のはんだシェア強度とを比較し、低下したシェア強度の割合を百分率で示した値をシェア強度低下率(%)として求め、以下の通り評価した。
○:シェア強度低下率が50%以下
×:シェア強度低下率が50%超
なお、実施例4および比較例1については、上記冷熱衝撃サイクルを0、500、1000、1500、および2000回繰り返した際のはんだシェア強度を測定した。
【0076】
<はんだ亀裂進展性>
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよびチップ部品を接続する電極(1.6mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクとを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、前記チップ部品を搭載した。その後、酸素濃度1500±500ppmの窒素雰囲気下において、ピーク温度を240℃に設定したリフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各基板を加熱してはんだ付をし、はんだ接合部を形成した。
次に、−40℃(30分間)〜125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、 日立アプライアンス(株)製)を用い、上記冷熱衝撃サイクルを2000回繰り返す環境下に前記各基板を曝した後これを取りだし、各試験基板を作製した。
そして、前記各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて前記各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、そのはんだ接合部の組織内部に進行した亀裂の長さを測定顕微鏡(製品名:STM6、オリンパス(株)製)を用いて、以下のように評価した。
○:亀裂の長さが0.5mm以下
×:亀裂の長さが0.5mm超
【0077】
【表2】
【0078】
以上、実施例に示す通り、本発明のフラックス組成物を加熱して形成するフラックス残渣は、これに−40℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与えた後の接着力が0.2N/mm以上と高く、電子部品と基板とを強固に接着することができる。
また本発明のソルダペースト組成物を用いて形成したはんだ接合部は上記冷熱衝撃試験によるはんだ接合部の亀裂進展を抑制することができる。
これに起因してシェア強度の低下も抑性される。
このようなフラックス組成物、ソルダペースト組成物を用いた電子回路基板は、特に高信頼性が要求されると共に−40℃から125℃という激しい冷熱衝撃サイクル下に長時間曝される環境下において好適に用いることができる。特に実施例4のフラックス組成物およびソルダペースト組成物においては、フラックス残渣の接着力が冷熱衝撃サイクルをかけるほどに増しており、このようなフラックス残渣を有する電子回路基板は長時間に渡って冷熱衝撃サイクルを受ける環境下にて非常に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 基板
2 電極部
3 絶縁層
4 はんだ接合部
5 フラックス残渣
6 電子部品
7 外部電極

図1
図2
図3
図4