【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係るタッピンねじ着座必要トルク検出装置であるタッピンねじの着座必要トルク(TD)の決定のためのトルクアナライザーの概略を示す図であり、
図1において、1は、タッピンねじ着座必要トルク検出装置であるトルクアナライザー、2は、回転駆動モータ、3は、回転トルクセンサ、4は、ハンドル、5は、ビットホルダ、6は、ビット、7は、モニタ画面を有するコンピュータである。
本実施例1に係るタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置においては、その着座必要トルク(TD)を検出する場合には、前記回転駆動モータ2に直結した回転トルクセンサ3の反対側に直結したビットホルダ5にセットしたビット6を介して計測すべきタッピンねじを回転させて、被締結材の下穴に該タッピンねじを挿入し雌ねじ成形をしながら着座させ、さらに、締結部品を締付けて雌ねじが破壊するまで回転トルクを掛け続け、そのトルクデータを前記コンピュータ7に入力してモニタ画面に表示する。
【0015】
本実施例1に係るタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置は、タッピンねじによる締結における締結物の下穴の形状に着目し、止まり穴及び通り穴の2種類の下穴の形状に適合するタッピンねじの着座必要トルク(TD)の検出が可能なタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置としたものである。
【0016】
すなわち、本実施例1に係るタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置においては、タッピンねじの締結の際の一連のトルクデータを求める際に、固定された数のポイント数ではなく、前記回転駆動モータ2の回転数に相関するポイント数及びその合計トルク値から決定されるようにする。
【0017】
(1)検出の前提
(a)計測ポイント数の決定
前記回転駆動モータ2の回転数に対応する計測ポイント数(m)=(75/√(回転数)+5(ただし、最大30))を決定する。
例えば、400rpmで前記回転駆動モータ2を回転させた場合には、ポイント数(m)={(75/√400)+5}=(75/20)+5=8.75≒9を求める。
(b)
測定開始(0ms)から1ms単位で締付終了まで(最大60秒間)の60.000ポイント(X0・・・X60.000)についてのトルク値(Δ0・・・Δ60.000)を求め、測定トルクデータ(Δ)のうち、トルク値が最も大きい値(Δmax)を雌ねじ破壊トルク(TF)として決定する。
【0018】
(c)
測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)までの間における任意の特定の時点(例えば、Xn)(nは、
測定開始時点(n=0)から雌ねじ破壊トルク時点(TF)までの時点(n=TF))に対し、求められた計測ポイント数(m個)を用いて、前記設定時点(Xn)の前後(すなわち、前記
測定開始点方向(スタート方向)及び前記雌ねじ破壊トルク(TF)方向)について前後m個の計測ポイントにおける前後のトルク値合計(Σ1,Σ2)を求める。
Σ1(Xn前m個のトルク値合計)=Δ(n−m)+Δ(n−m+1)+・・・・+Δ(n−1)
Σ2(Xn後m個のトルク値合計)=Δ(n+1)+Δ(n+2)+・・・・・・+Δ(n+m)
(d)上記Σ1、Σ2を
測定開始時点X0から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで求める。
例えば、前記雌ねじ破壊トルク(TF)時点がX600だと仮定すると、X0〜X600までについて、上記Σ1、Σ2を求める。
(e)
測定開始時点X0から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで間の各測定ポイントにおけるΣ1とΣ2の差(Σ1−Σ2)を求める。
【0019】
(2)締結材の下穴が止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)の決定
(a)各測定ポイント(Xn)におけるΣ1とΣ2の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上の値、すなわち、
|Σ1−Σ2|/TF>±10%となる各値を求める。
(b)前記各値のうち、前記雌ねじ破壊トルク(TF)値より
測定開始点方向(スタート方向)で最大となる時点のトルク値を止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とする。
【0020】
(3)締結材の下穴が通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)の決定
タッピンねじの着座必要トルク(TD)は、本来的にはタッピンねじが締結材に完全に着座する時点(着座点:TP)までの間で一番にトルクがかかった位置がタッピンねじの着座必要トルク(TD)として表示されるべきであるが、締結材の下穴の形状が止り穴の場合には、上記のようにして決定され検出できるが、締結材の下穴の形状が通り穴の場合には、上記(2)の処理のままでは、前記着座点(TP)と前記着座必要トルク(TD)が同じ位置に表示されてしまい、正確なタッピンねじの着座必要トルク(TD)の検出ができない。
そこで、上記の(2)の処理で決定されたタッピンねじ着座必要トルク(TD)値に対し、その点から
測定開始時間(スタート時間)の間で最も大きいトルク値を通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とする。
【0021】
(4)処理の切り替え
上記(2)の処理と同(3)の処理は、前記コンピュータ7のモニタ画面上で切り替える。
図2は、
図1に示されるトルクアナライザー1を使用して、締結材の下穴が止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)を求めるか、締結材の下穴が通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)を求めるかのモニタ画面の概略を示す図であり、下穴形状によって、上記(2)の処理を行うか、又は、上記(3)の処理を行うかを決定する。
図2における「通り穴」のチェックボックスにチェックを付す場合には、上記(2)の処理に続いて上記(3)の処理が行われ、「止り穴」のチェックボックスにチェックが付される場合には、上記(2)の処理のみが行われる。
【0022】
(5)評価
図3は、前記(2)で求める締結材の下穴が止り穴の場合に算出されるトルクグラフ図であり、回転数300rpmの場合の計測グラフ図である。
図3に示すように、締結材の下穴が止り穴の場合には、1300ポイント近辺で前記雌ねじ破壊トルク(TF)(約0.39(N.m))が求められ、当該雌ねじ破壊トルク(TF)点より、
測定開始点方向(スタート方向)に隣接する前後の前記トルク累計値の変化率が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上となる時点を探し、そのうちの最大となる時点(約1100ポイント)のトルク値(約0.115(N.m))が止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)が求まる。
【0023】
図4は、締結材の下穴が通り穴の場合において、上記(3)の処理をしない場合に算出されるトルクグラフ図であり、
図3と同様の回転数300rpmで計測したグラフ図である。
締結材の下穴が止り穴の場合には、上記(3)の処理をしなくても、前記雌ねじ破壊トルク(TF)点より、
測定開始点方向(スタート方向)に前後の前記トルク累計値の変化率が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上となる時点を探し、そのうちの最大となる点(約1450ミリ秒)のトルク値(約0.198(N.m))をタッピンねじ着座必要トルク(TD)として表示する。しかしながら、締結材の下穴が通り穴の場合には、
図4に示すように、前記止り穴の着座必要トルク(TD)である着座点(TP:約1450ミリ秒のトルク値(約0.198(N.m))と同じ箇所がタッピンねじの着座必要トルク(TD)として表示されてしまい、正確なタッピンねじの着座必要トルク(TD)の検出ができない。
【0024】
そこで、上記(3)の処理をした場合には、以下のように、締結材の下穴が止り穴の場合の正しいタッピンねじ着座必要トルク(TD)を表示することができる。
図5は、締結材の下穴が通り穴の場合において、上記(3)の処理をした場合に算出されるトルクグラフ図であり、
図3と同様の回転数300rpmで計測したグラフ図である。
図5に示されるように、上記(3)の処理をした後には、タッピンねじ着座必要トルク(TP)位置(約1450ミリ秒のトルク値(約0.198(N.m))から
測定開始時間(スタート時間)の間で最も大きい地点(900ミリ秒におけるトルク値(約0.25))のトルク値を通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)が表示される。