特許第6062006号(P6062006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062006タッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6062006
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】タッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   B25B23/14 610E
   B25B23/14 620J
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-176405(P2015-176405)
(22)【出願日】2015年9月8日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】301031093
【氏名又は名称】ベクトリックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】小長井 和裕
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−297351(JP,A)
【文献】 特開2006−110657(JP,A)
【文献】 特開2013−166211(JP,A)
【文献】 米国特許第6144891(US,A)
【文献】 米国特許第7091683(US,B1)
【文献】 特開平8−323639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも回転駆動モータ及び回転トルクセンサーを備え、前記回転駆動モータの回転数に相関する計測ポイント数を求め、求められた計測ポイントにおける測定開始(0ms)から測定終了までの間の前記回転トルクセンサーからタッピンねじ締結トルク値データ(Δ)のうち、トルク値が最も大きい値(Δmax)を雌ねじ破壊トルク(TF)とし、前記測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)までの間における任意の特定の時点(Xn)(nは、測定開始時点(n=0)から雌ねじ破壊トルク(TF)までの時点)の前後について各トルク値合計(Σ1(Xn前m個のトルク値合計)=Δ(n−m)+Δ(n−m+1)+・・・・+Δ(n−1),Σ2(Xn後m個のトルク値合計)=Δ(n+1)+Δ(n+2)+・・・・・・+Δ(n+m))を求め、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで間の各測定ポイントにおける前記Σ1と前記Σ2の差(Σ1−Σ2)を求め、求められたトルク値合計の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF)時点のうちの最大となる時点のトルク値を締結材の下穴が止り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とするタッピンねじ着座必要トルク検出方法。
【請求項2】
少なくとも回転駆動モータ及び回転トルクセンサーを備え、前記回転駆動モータの回転数に相関する計測ポイント数を求め、求められた各計測ポイントにおける測定開始(0ms)から測定終了までの間の前記回転トルクセンサーからタッピンねじ締結トルク値データ(Δ)のうち、トルク値が最も大きい値(Δmax)を雌ねじ破壊トルク(TF)とし、前記測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)までの間における任意の特定の時点(Xn)(nは、測定開始時点(n=0)から雌ねじ破壊トルク時点(TF)までの時点)の前後について各トルク値合計(Σ1(Xn前m個のトルク値合計)=Δ(n−m)+Δ(n−m+1)+・・・・+Δ(n−1),Σ2(Xn後m個のトルク値合計)=Δ(n+1)+Δ(n+2)+・・・・・・+Δ(n+m))を求め、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで間の各測定ポイントにおける前記Σ1と前記Σ2の差(Σ1−Σ2)を求め、求められたトルク値合計の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF) 時点のうちの最大となるトルク値(前記止り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD))時点から測定開始時間(スタート時間)までの間で最も大きいトルク値を締結材の下穴が通り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とするタッピンねじ着座必要トルク検出方法。
【請求項3】
前記計測ポイント数(m)は、75/√回転数)+5(ただし、最大30ポイント))で求められることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタッピンねじ着座必要トルク検出方法。
【請求項4】
前記求められたトルク値合計の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上となるうちの最大となる時点のトルク値を締結材の下穴が止り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD)又は通り穴のタッピングねじ着座必要トルク(TD)とした請求項1又は請求項2に記載のタッピンねじ着座必要トルク検出方法。
【請求項5】
少なくとも回転駆動モータ、回転トルクセンサー及びモニタ画面を有するコンピュータからなるトルクアナライザーからなり、前記コンピュータでは、前記回転駆動モータの回転数に相関する計測ポイント数(m=75/√回転数)+5(ただし、最大30ポイント))を求め、前記回転トルクセンサーから測定開始(0ms)から測定終了までの間のタッピンねじ締結トルク値データ(Δ)を収集し、測定されたトルクデータ(Δ)のうち、トルク値が最も大きい値(Δmax)を雌ねじ破壊トルク(TF)として決定し、次いで、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)までの間における任意の特定の時点(Xn)(nは、測定開始時点(n=0)から雌ねじ破壊トルク時点(TF)までの時点(n=TF))に対し、求められた計測ポイント数(m)を用いて、前記設定時点(Xn)の前後(すなわち、前記測定開始点方向(スタート方向)及び前記雌ねじ破壊トルク(TF)方向)について前後m個の計測ポイントにおける前後のトルク値合計(Σ1(Xn前m個のトルク値合計)=Δ(n−m)+Δ(n−m+1)+・・・・+Δ(n−1),Σ2(Xn後m個のトルク値合計)=Δ(n+1)+Δ(n+2)+・・・・・・+Δ(n+m))を求め、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで間の各測定ポイントにおける前記Σ1と前記Σ2の差(Σ1−Σ2)を求め、(1)締結材の下穴が止り穴の場合には、求められたトルク値合計の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上となるうちの最大となる時点のトルク値を止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とし、(2)締結材の下穴が通り穴の場合には、さらに、前記決定された止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)時点から測定開始時間(スタート時間)までの間で最も大きいトルク値を通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)として前記コンピュータのモニタ画面上に表示可能としたことを特徴とするタッピンねじ着座必要トルク検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッピンねじの締付トルク解析のためのタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッピンねじは、相手部材へのタップ加工を必要としないため安価にねじ締結ができ、そしてインサート部材の抜去が不要のためリサイクルが容易である等の理由から近年多用されている。
この種のタッピンねじによる締結は、ねじ自ら相手部材を塑性タップ加工(Self Tapping)するため、着座(ねじ頭の底面(座面)が取付部材又は被取付部材に密着)するためにはある程度のねじ込みトルクを必要とし、また、相手部材は塑性変形が容易な軟質材料であるが故に、着座後のねじ締めトルクを掛け過ぎると今度は相手部材の雌ねじ破壊を起こし、いわゆる「ねじバカ」となるなど、タッピンねじにおいては、ねじ頭の底部が被締結部材に着座したかどうかが重要である。
タッピンねじの着座に要するトルク(以下、「着座必要トルク(TD)」)が十分でない場合には、タッピンねじによる締結が完全ではなく、逆に、必要以上のトルクがかかりすぎると、上述の雌ねじ破壊を起こすこととなり、タッピンねじにおいては、締結材が締結される際の必要にして十分な着座必要トルク(TD)を個々の締結材に対して決定する必要がある。
【0003】
この種のタッピンねじの締付の解析に関しては、例えば、特開平6−297351号公報に開示のものが知られている。
当該特開平6−297351号公報の開示は、発明名称「ネジ結合部の適切な締付モーメントを求める装置および方法」に係り、「トルク検知器によって検知された数値をデジタルコンピュータに記録し、螺着実験の終了後に上記数値から最大値を計算し・・・得られたネジ結合の過大トルクに対応する最大値は、工場における連続螺着時に選択すべき締付モーメントについて不十分な根拠を与えるに過ぎないという欠点があり・・・、タッピンネジにおいて材料にネジを切る際に過大トルクに達する前に現れる典型的な相対的最大値が、考慮されないので、連続螺着プロセスのための確実な締付トルクに関する適切な指示を尖頭値から得ることは不可能である等の欠陥の排除すること」の発明の解決課題において(同公報明細書段落番号0002〜0004参照)、「コンピュータ(11)が、所定の第1時間インターバル(T1)における測定値から相対的最大値(ME)を求め、記憶装置(mE)にファイルし、コンピュータ(11)が、更に、第2時間インターバル(T2)における測定値から絶対的最大値(MU)を求め、記憶装置(mU)にファイルし、コンピュータが、更に、差数値(MD=MU−ME)を形成し、別の記憶装置(mD)にファイルする」等の手段を執ること等によって(同公報明細書特許請求の範囲の請求項1以下の記載等参照)、「過大トルクだけでなく、いわゆるネジ切りモーメント(第1時間インターバルの相対的最大値)をも測定・記憶してその差数値から適切な締付モーメントが求められるので、従来よりも正確且つより適切な締付モーメントを提供でき、工場におけるネジの螺着作業の能率を向上する」等の特有の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0008参照)。
【0004】
図6は、特開平6−297351号公報に図1として添付される実施例装置の略図を示すものであり、また、図7は、同図2として同公報に添付される螺着時のトルクと時間との関係を示すグラフである。図6及び図7において、符号101は、タッピンネジ、102、103は、締付部材、104は、貫通孔、105は、心穴、106は、ねじ頭、107は、工具、108は、トルク検知器、109は、電動ドライバ、110は、リード線、110Aは、A/D変換器、111は、デジタルコンピュータ、112は、非持久記憶装置、113は、表示ユニット、114は、固定ディスク、115は、フロッピィ駆動装置、T1は、第1時間インターバル、T2は、第2時間インターバル、MEは、ネジ切りモーメント(第1時間インターバルの相対的最大値)、MUは、絶対的最大値、MDは、差モーメント(の数値)である(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)
【0005】
しかしながら、上述してきた特開平6−297351号公報に開示のものは、タッピンねじの適切な締付モーメントを求めるのみであり、タッピンねじの着座に要する着座必要トルク(TD)を直接求めることはできなかった。
図8は、タッピンねじの締付の際のトルクグラフ図であり、TFは、雌ねじ破壊トルク、TSは、目標締付トルク、TDは、着座必要トルク、TPは、着座点である。タッピンねじにより締結材の締結は、図8に示されるように、タッピンねじが締結材に雌ねじを切りながら突き進み、前記着座必要トルク(TD)で、一旦、トルクが大きくなり、やがて、タッピンねじのねじ頭底面が締結材の上面にに至る前記着座点(TP)に至るまで若干トルクが小さくなり、その後も締付が続けられると、大きく前記雌ねじ破壊トルク(TF)に至り、ネジ穴が破壊されるという挙動からなる。
【0006】
このような挙動のタッピンねじ締結における着座必要トルク(TD)を求めるには、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)まで、例えば、600msまでの間を1ms毎のトルク値を表示し、この間における特定の時点(例えば、Xn)に対して、当該時点(Xn)の前10ポイントの合計トルク値(Σ1)及び同時点(Xn)の後10ポイントの合計トルク値(Σ2)を求め、これを各点(Xn)について、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)時点(Xtf)まで求め、各(Σ1-Σ2)の差が、前記雌ねじ破壊トルク(TF)の15%以上に入った時点のトルク値を着座必要トルク(TD)として決定していた。
【0007】
図8に示すように、前記雌ねじ破壊トルク(TF)は、一連のトルクデータが最大となる最大値を求めれば容易に求めることができる。しかしながら、図8で略示される着座必要トルク(TD )の決定は、当該タッピンねじで締結する被締結材の下穴が「止り穴」の場合や、被締結材の下穴が「貫通穴(通り穴)」の場合には、特に、回転駆動モータの回転数600回転以上では貫通穴(通り穴)の下穴では高速回転により取得データ数が少なくなるため、着座必要トルク(TD)が上手く検出できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−297351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本願発明は、止り穴及び通り穴の2種類の下穴に適合するタッピンねじの着座必要トルク(TD)の検出が可能なタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、タッピンねじ着座必要トルク検出方法において、少なくとも回転駆動モータ及び回転トルクセンサーを備え、前記回転駆動モータの回転数に相関する計測ポイント数を求め、求められた計測ポイントにおける測定開始(0ms)から測定終了までの間の前記回転トルクセンサーからタッピンねじ締結トルク値データ(Δ)のうち、トルク値が最も大きい値(Δmax)を雌ねじ破壊トルク(TF)とし、前記測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)までの間における任意の特定の時点(Xn)(nは、測定開始時点(n=0)から雌ねじ破壊トルク時点(TF)までの時点)の前後について各トルク値合計(Σ1(Xn前m個のトルク値合計)=Δ(n−m)+Δ(n−m+1)+・・・・+Δ(n−1),Σ2(Xn後m個のトルク値合計)=Δ(n+1)+Δ(n+2)+・・・・・・+Δ(n+m))を求め、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで間の各測定ポイントにおける前記Σ1と前記Σ2の差(Σ1−Σ2)を求め、求められたトルク値合計の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF)時点のうちの最大となる時点のトルク値を締結材の下穴が止り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とする。
また、本願請求項2に係る発明は、タッピンねじ着座必要トルク検出方法において、少なくとも回転駆動モータ及び回転トルクセンサーを備え、前記回転駆動モータの回転数に相関する計測ポイント数を求め、求められた各計測ポイントにおける測定開始(0ms)から測定終了までの間の前記回転トルクセンサーからタッピンねじ締結トルク値データ(Δ)のうち、トルク値が最も大きい値(Δmax)を雌ねじ破壊トルク(TF)とし、前記測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)までの間における任意の特定の時点(Xn)(nは、測定開始時点(n=0)から雌ねじ破壊トルク時点(TF)までの時点)の前後について各トルク値合計(Σ1(Xn前m個のトルク値合計)=Δ(n−m)+Δ(n−m+1)+・・・・+Δ(n−1),Σ2(Xn後m個のトルク値合計)=Δ(n+1)+Δ(n+2)+・・・・・・+Δ(n+m))を求め、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで間の各測定ポイントにおける前記Σ1と前記Σ2の差(Σ1−Σ2)を求め、求められたトルク値合計の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF) 時点のうちの最大となるトルク値(前記止り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD))時点から測定開始時間(スタート時間)までの間で最も大きいトルク値を締結材の下穴が通り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とする。
さらに、本願請求項に係る発明は、前記請求項1又は請求項2に記載のタッピンねじ着座必要トルク検出方法において、前記計測ポイント数(m)は、75/√回転数)+5(ただし、最大30ポイント))で求められることを特徴とする。
そして、本願請求項4に係る発明は、前記請求項1又は請求項2に記載のタッピンねじ着座必要トルク検出方法において、前記求められたトルク値合計の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上となるうちの最大となる時点のトルク値を締結材の下穴が止り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD)又は通り穴のタッピングねじ着座必要トルク(TD)とする
その上で、本願請求項に係る発明は、タッピンねじ着座必要トルク検出装置において、少なくとも回転駆動モータ、回転トルクセンサー及びモニタ画面を有するコンピュータからなるトルクアナライザーからなり、前記コンピュータでは、前記回転駆動モータの回転数に相関する計測ポイント数(m=75/√回転数)+5(ただし、最大30ポイント))を求め、前記回転トルクセンサーから測定開始(0ms)から測定終了までの間のタッピンねじ締結トルク値データ(Δ)を収集し、測定されたトルクデータ(Δ)のうち、トルク値が最も大きい値(Δmax)を雌ねじ破壊トルク(TF)として決定し、次いで、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)までの間における任意の特定の時点(Xn)(nは、測定開始時点(n=0)から雌ねじ破壊トルク時点(TF)までの時点(n=TF))に対し、求められた計測ポイント数(m)を用いて、前記設定時点(Xn)の前後(すなわち、前記測定開始点方向(スタート方向)及び前記雌ねじ破壊トルク(TF)方向)について前後m個の計測ポイントにおける前後のトルク値合計(Σ1(Xn前m個のトルク値合計)=Δ(n−m)+Δ(n−m+1)+・・・・+Δ(n−1),Σ2(Xn後m個のトルク値合計)=Δ(n+1)+Δ(n+2)+・・・・・・+Δ(n+m))を求め、測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで間の各測定ポイントにおける前記Σ1と前記Σ2の差(Σ1−Σ2)を求め、(1)締結材の下穴が止り穴の場合には、求められたトルク値合計の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上となるうちの最大となる時点のトルク値を止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とし、(2)締結材の下穴が通り穴の場合には、さらに、前記決定された止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)時点から測定開始時間(スタート時間)までの間で最も大きいトルク値を通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)として前記コンピュータのモニタ画面上に表示可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、次のような特有の効果を有する。
(1)被締結物の下穴が止まり穴でも通り穴の双方に対し、しかも回転駆動モータの回転数に関係なく、正しいタッピンねじ着座必要トルク(TD)の検出が可能となる。
(2)これまで正しく算定することができなかった被締結物の下穴が通り穴の正しいタッピンねじ着座必要トルク(TD)の検出ができ、着座後のねじ締めトルクを掛け過ぎによる雌ねじ破壊、いわゆる「ねじバカ」を防止することができる。
(3)また、タッピンねじ着座必要トルク(TD)の検出に関し、電動ドライバや回転駆動モータの回転数に関係なく、正しいタッピンねじ着座必要トルク(TD)を求めることができ、トルクアナライザーの利用範囲が拡大する。
(4)これまでは、被締結物の下穴が通り穴のタッピンねじ着座必要トルク(TD)の検出には、パーソナルコンピュータ画面に表示された着座必要トルク(TD)を目視で確認し、経験上その位置が正確でない場合には、トルク表示編集画面上で「着座必要トルク(TD)の移動」等の作業を必要としていたが、通り穴被締結物の場合にも正しい着座必要トルク(TD)が検出できるため、このような目視チェックと「(TD)の移動」の編集作業を必要としないで、タッピンねじについても目標締付トルク(TS)を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係るタッピンねじ着座必要トルク検出装置であるタッピンねじ着座必要トルク(TD)のためのトルクアナライザーの概略を示す図である。
図2図2は、図1に示されるトルクアナライザー1を使用して、締結材の下穴が止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)を求めるか、締結材の下穴が通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)を求めるかのモニタ画面の概略を示す図である。
図3図3は、締結材の下穴が止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)を求める場合のトルクグラフ図である。
図4図4は、締結材の下穴が通り穴の場合において、上記(3)の通り穴の処理をしない場合に算出されるトルクグラフ図である。
図5図5は、締結材の下穴が通り穴の場合において、上記(3)の処理をした場合に算出されるトルクグラフ図である。
図6図6は、特開平6−297351号公報に図1として添付される実施例装置の略図を示す図である。
図7図7は、同特開平6−297351号公報に図2として添付される螺着時のトルクと時間との関係を示すグラフである
図8図8は、タッピンねじの締結に際し、測定開始から600msまでの間に1ms毎トルク値を求めグラフ化し、当該グラフ図からタッピンねじの着座必要トルク(TD)を求める概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置を実施するための一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係るタッピンねじ着座必要トルク検出装置であるタッピンねじの着座必要トルク(TD)の決定のためのトルクアナライザーの概略を示す図であり、図1において、1は、タッピンねじ着座必要トルク検出装置であるトルクアナライザー、2は、回転駆動モータ、3は、回転トルクセンサ、4は、ハンドル、5は、ビットホルダ、6は、ビット、7は、モニタ画面を有するコンピュータである。
本実施例1に係るタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置においては、その着座必要トルク(TD)を検出する場合には、前記回転駆動モータ2に直結した回転トルクセンサ3の反対側に直結したビットホルダ5にセットしたビット6を介して計測すべきタッピンねじを回転させて、被締結材の下穴に該タッピンねじを挿入し雌ねじ成形をしながら着座させ、さらに、締結部品を締付けて雌ねじが破壊するまで回転トルクを掛け続け、そのトルクデータを前記コンピュータ7に入力してモニタ画面に表示する。
【0015】
本実施例1に係るタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置は、タッピンねじによる締結における締結物の下穴の形状に着目し、止まり穴及び通り穴の2種類の下穴の形状に適合するタッピンねじの着座必要トルク(TD)の検出が可能なタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置としたものである。
【0016】
すなわち、本実施例1に係るタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置においては、タッピンねじの締結の際の一連のトルクデータを求める際に、固定された数のポイント数ではなく、前記回転駆動モータ2の回転数に相関するポイント数及びその合計トルク値から決定されるようにする。
【0017】
(1)検出の前提
(a)計測ポイント数の決定
前記回転駆動モータ2の回転数に対応する計測ポイント数(m)=(75/√(回転数)+5(ただし、最大30))を決定する。
例えば、400rpmで前記回転駆動モータ2を回転させた場合には、ポイント数(m)={(75/√400)+5}=(75/20)+5=8.75≒9を求める。
(b)測定開始(0ms)から1ms単位で締付終了まで(最大60秒間)の60.000ポイント(X0・・・X60.000)についてのトルク値(Δ0・・・Δ60.000)を求め、測定トルクデータ(Δ)のうち、トルク値が最も大きい値(Δmax)を雌ねじ破壊トルク(TF)として決定する。
【0018】
(c)測定開始(0ms)から前記雌ねじ破壊トルク(TF)までの間における任意の特定の時点(例えば、Xn)(nは、測定開始時点(n=0)から雌ねじ破壊トルク時点(TF)までの時点(n=TF))に対し、求められた計測ポイント数(m個)を用いて、前記設定時点(Xn)の前後(すなわち、前記測定開始点方向(スタート方向)及び前記雌ねじ破壊トルク(TF)方向)について前後m個の計測ポイントにおける前後のトルク値合計(Σ1,Σ2)を求める。
Σ1(Xn前m個のトルク値合計)=Δ(n−m)+Δ(n−m+1)+・・・・+Δ(n−1)
Σ2(Xn後m個のトルク値合計)=Δ(n+1)+Δ(n+2)+・・・・・・+Δ(n+m)
(d)上記Σ1、Σ2を測定開始時点X0から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで求める。
例えば、前記雌ねじ破壊トルク(TF)時点がX600だと仮定すると、X0〜X600までについて、上記Σ1、Σ2を求める。
(e)測定開始時点X0から前記雌ねじ破壊時点(TF)点まで間の各測定ポイントにおけるΣ1とΣ2の差(Σ1−Σ2)を求める。
【0019】
(2)締結材の下穴が止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)の決定
(a)各測定ポイント(Xn)におけるΣ1とΣ2の差(Σ1−Σ2)の絶対値が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上の値、すなわち、|Σ1−Σ2|/TF>±10%となる各値を求める。
(b)前記各値のうち、前記雌ねじ破壊トルク(TF)値より測定開始点方向(スタート方向)で最大となる時点のトルク値を止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とする。
【0020】
(3)締結材の下穴が通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)の決定
タッピンねじの着座必要トルク(TD)は、本来的にはタッピンねじが締結材に完全に着座する時点(着座点:TP)までの間で一番にトルクがかかった位置がタッピンねじの着座必要トルク(TD)として表示されるべきであるが、締結材の下穴の形状が止り穴の場合には、上記のようにして決定され検出できるが、締結材の下穴の形状が通り穴の場合には、上記(2)の処理のままでは、前記着座点(TP)と前記着座必要トルク(TD)が同じ位置に表示されてしまい、正確なタッピンねじの着座必要トルク(TD)の検出ができない。
そこで、上記の(2)の処理で決定されたタッピンねじ着座必要トルク(TD)値に対し、その点から測定開始時間(スタート時間)の間で最も大きいトルク値を通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)とする。
【0021】
(4)処理の切り替え
上記(2)の処理と同(3)の処理は、前記コンピュータ7のモニタ画面上で切り替える。
図2は、図1に示されるトルクアナライザー1を使用して、締結材の下穴が止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)を求めるか、締結材の下穴が通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)を求めるかのモニタ画面の概略を示す図であり、下穴形状によって、上記(2)の処理を行うか、又は、上記(3)の処理を行うかを決定する。図2における「通り穴」のチェックボックスにチェックを付す場合には、上記(2)の処理に続いて上記(3)の処理が行われ、「止り穴」のチェックボックスにチェックが付される場合には、上記(2)の処理のみが行われる。
【0022】
(5)評価
図3は、前記(2)で求める締結材の下穴が止り穴の場合に算出されるトルクグラフ図であり、回転数300rpmの場合の計測グラフ図である。
図3に示すように、締結材の下穴が止り穴の場合には、1300ポイント近辺で前記雌ねじ破壊トルク(TF)(約0.39(N.m))が求められ、当該雌ねじ破壊トルク(TF)点より、測定開始点方向(スタート方向)に隣接する前後の前記トルク累計値の変化率が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上となる時点を探し、そのうちの最大となる時点(約1100ポイント)のトルク値(約0.115(N.m))が止り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)が求まる。
【0023】
図4は、締結材の下穴が通り穴の場合において、上記(3)の処理をしない場合に算出されるトルクグラフ図であり、図3と同様の回転数300rpmで計測したグラフ図である。
締結材の下穴が止り穴の場合には、上記(3)の処理をしなくても、前記雌ねじ破壊トルク(TF)点より、測定開始点方向(スタート方向)に前後の前記トルク累計値の変化率が前記雌ねじ破壊トルク(TF)値の10%以上となる時点を探し、そのうちの最大となる点(約1450ミリ秒)のトルク値(約0.198(N.m))をタッピンねじ着座必要トルク(TD)として表示する。しかしながら、締結材の下穴が通り穴の場合には、図4に示すように、前記止り穴の着座必要トルク(TD)である着座点(TP:約1450ミリ秒のトルク値(約0.198(N.m))と同じ箇所がタッピンねじの着座必要トルク(TD)として表示されてしまい、正確なタッピンねじの着座必要トルク(TD)の検出ができない。
【0024】
そこで、上記(3)の処理をした場合には、以下のように、締結材の下穴が止り穴の場合の正しいタッピンねじ着座必要トルク(TD)を表示することができる。
図5は、締結材の下穴が通り穴の場合において、上記(3)の処理をした場合に算出されるトルクグラフ図であり、図3と同様の回転数300rpmで計測したグラフ図である。
図5に示されるように、上記(3)の処理をした後には、タッピンねじ着座必要トルク(TP)位置(約1450ミリ秒のトルク値(約0.198(N.m))から測定開始時間(スタート時間)の間で最も大きい地点(900ミリ秒におけるトルク値(約0.25))のトルク値を通り穴の場合のタッピンねじ着座必要トルク(TD)が表示される。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明はタッピンねじの締付トルク解析のためのタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置に利用される。
【符号の説明】
【0026】
1 トルクアナライザー
2 回転駆動モータ
3 回転トルクセンサ
4 ハンドル
5 ビットホルダ
6 ビット
7 パーソナルコンピュータ
101 タッピンネジ
102、103 締付部材
104 貫通孔
105 心穴
106 ねじ頭
107 工具
108 トルク検知器
109 電動ドライバ
110 リード線
110A A/D変換器
111 デジタルコンピュータ
112 非持久記憶装置
113 表示ユニット
114 固定ディスク
115 フロッピィ駆動装置
T1 第1時間インターバル
T2 第2時間インターバル
ME ネジ切りモーメント(第1時間インターバルの相対的最大値)
MU 絶対的最大値
MD 差モーメント(の数値)
TF 雌ねじ破壊トルク
TS 目標締付トルク
TD 着座必要トルク
【要約】
【課題】
タッピンねじによる締結における正確な着座必要トルクの検出が可能なタッピンねじ着座必要トルク検出方法及びその装置を提供する。
【解決手段】
タッピンねじ着座必要トルク検出方法において、少なくとも回転駆動モータ及び回転トルクセンサーを備え、前記回転駆動モータの回転数から計測ポイント数を求め、求められた計測ポイント数(m)を用いてタッピンねじ着座必要トルク(TD)を検出する。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8