(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三次元の物体を積層造形する方法であって、複数の層を、前記物体の形に対応する形状を有するパターンに連続的に形成するステップを含んでおり、前記形成するステップが、各層において、少なくとも1種類のモデル材を分配して未硬化層を形成するステップと、前記未硬化層を放射によって硬化させるステップと、を含んでおり、
前記方法が、少なくとも1層に対して、前記層の露出した部分を覆うための犠牲的な放射保護層の積層体を、前記複数の層のうちの次の層を形成している間において前記積層体の上部層が露出したままとなるように形成するステップと、前記犠牲的な放射保護層を硬化させるステップと、を含んでいる、
方法。
コンピュータソフトウェア製品であって、プログラム命令が格納されているコンピュータ可読媒体を備えており、前記命令が、積層造形システムのコンピュータ化されたコントローラによって読み取られたとき、それに起因して、前記システムが、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法を実行する、コンピュータソフトウェア製品。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、三次元の物体を積層造形する方法が提供される。本方法は、複数の層を、物体の形に対応する形状を有するパターンに連続的に形成するステップを含んでいる。各層は、少なくとも1種類のモデル材を分配して未硬化層を形成するステップと、この未硬化層を放射によって硬化させるステップとによって、形成される。本発明のさまざまな例示的な実施形態においては、本方法は、少なくとも1層に対して、この層の露出した部分を覆うための犠牲的な放射保護層の積層体を、複数の層のうちの次の層を形成している間において積層体の上部層が露出したままとなるように形成するステップ、を含んでいる。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によると、本方法は、積層体を除去するステップを含んでいる。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によると、積層体は、加圧された水性液体のジェットによって除去される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によると、積層体の層の数は、放射の少なくとも90%を遮断するように選択される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によると、本方法は、複数の積層体を形成するステップであって、各積層体が少なくとも10層を有する、ステップ、を含んでいる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によると、犠牲的な放射保護層は、少なくとも一部分が、三次元印刷のサポート材から形成される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によると、犠牲的な放射保護層は、少なくとも一部分が、水溶性材料から形成される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によると、犠牲的な放射保護層は、硬化後のモデル材を特徴付ける弾性係数よりも小さい弾性係数によって特徴付けられる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によると、犠牲的な放射保護層は、非重合性材料を含んでいる。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、コンピュータソフトウェア製品であって、プログラム命令が格納されているコンピュータ可読媒体を備えており、積層造形システムのコンピュータ化されたコントローラによって命令が読み取られたとき、それに起因して、システムが、本明細書に記載されている方法の少なくともいくつかの動作を実行する。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、三次元の物体を積層造形するシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1種類のモデル材を分配して未硬化層を形成するように構成されている分配ユニットと、この未硬化層を放射によって硬化させるように構成されている硬化ユニットと、複数の層を、三次元の物体の形に対応する形状を有するパターンに連続的に形成するようにと、少なくとも1層の露出した部分を覆う放射保護層の積層体を形成し、したがって、複数の層のうちの次の層を形成している間、積層体の上部層が露出したままであるように、分配ユニットおよび硬化ユニットを作動させるように構成されているコントローラと、を備えている。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によると、積層体の層の数は、放射の少なくとも90%を遮断するように選択される。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によると、複数の積層体が存在し、各積層体が少なくとも10層を有する。本発明のいくつかの実施形態によると、各積層体は少なくとも100層を有する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によると、積層体は、色においてほぼ均一である物体が形成されるように選択される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によると、積層体は、色の欠如においてほぼ均一である物体が形成されるように選択される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によると、コントローラは、積層体の層の厚さおよび数の少なくとも一方を、積層体を形成するために使用される放射保護材料の種類に基づいて計算するように構成されている。
【0025】
本明細書において使用されているすべての技術用語および科学用語の意味は、特に定義されない限り、本発明が属する技術分野における通常の技能を有する者によって一般に理解されている意味と同じである。本発明の実施形態を実施する、またはテストするときには、本明細書に記載されている方法および材料に類似するかまたは同等の方法および材料を使用することができるが、例示的な方法および材料が以降に記載してある。矛盾が生じる場合、定義を含めて本特許明細書に従うものとする。さらには、これらの材料、方法、および例は、説明のみを目的としており、本発明を制限することを意図していない。
【0026】
本発明の実施形態の方法もしくはシステムまたはその両方を実施する場合、選択されるタスクを、手動で、または自動的に、またはこれらを組み合わせて、実行または完了することができる。さらに、本発明の方法もしくはシステムまたはその両方の実施形態の実際の設備および機器に従って、いくつかの選択されるタスクを、オペレーティングシステムを使用して、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、またはファームウェアによって、あるいはこれらの組合せによって、実施することができる。
【0027】
例えば、本発明の実施形態による選択されるタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施することができる。ソフトウェアとしては、本発明の実施形態による選択されるタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として、実施することができる。本発明の例示的な実施形態においては、本明細書に記載されている方法もしくはシステムまたはその両方の例示的な実施形態による1つまたは複数のタスクは、データプロセッサ(例えば、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォーム)によって実行される。データプロセッサは、オプションとして、命令もしくはデータまたはその両方を格納するための揮発性メモリと、命令もしくはデータまたはその両方を格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、リムーバブルメディア)、の少なくとも一方を含んでいる。オプションとして、ネットワーク接続も提供される。オプションとして、ディスプレイもしくはユーザ入力デバイス(例えば、キーボード、マウス)またはその両方も提供される。
【0028】
本明細書においては、本発明のいくつかの実施形態について、単なる一例として、添付の図面を参照しながら説明してある。以下では、図面を詳細に参照するが、図示されている細部は一例であり、本発明の実施形態を、実例を挙げて説明することを目的としていることを強調しておく。この点において、当業者には、図面を参照しながらの説明によって、本発明の実施形態をどのように実施するかが明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、物体の積層造形(AM)に関し、より詳細には、以下に限定されないが、硬化によって物体または物体の一部に発生する変色が減少する、物体を積層造形するシステムおよび方法に関する。
【0031】
本発明の少なくとも一実施形態について詳しく説明する前に、以下の点を理解されたい。すなわち、以下の説明に記載されている、もしくは、図面または例の少なくとも一方に示されている、またはその両方である構成要素および/または方法の構造および配置構成の細部は、本発明の適用を必ずしも制限するものではない。本発明は、別の実施形態とする、または、さまざまな方法で実施または実行することができる。
【0032】
本発明の実施形態の方法およびシステムは、複数の層を、物体の形に対応する形状を有するパターンに形成することによって、三次元の物体を積み重ね方式で製造する。
【0033】
本明細書において使用されている用語「物体」は、物体全体またはその一部を意味する。
【0034】
各層は、2次元表面を走査してそれをパターン化する積層造形装置によって形成される。この装置は、走査中、2次元の層または表面上の複数の目標位置(target locations)にアクセスし、目標位置のそれぞれ、または目標位置のグループについて、その目標位置または目標位置のグループが構築材料によって占有されるか否かと、どの種類の構築材料をそこに供給するかとを、決定する。この決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態においては、本積層造形法は、三次元印刷を備えている。これらの実施形態においては、一連のノズルを有する分配ヘッドから構築材料を分配し、支持構造の上に構築材料を層状に堆積させていく。したがって、積層造形装置は、占有されるべき目標位置に構築材料を分配し、それ以外の目標位置には構築材料が存在しないままにする。この装置は、一般には、複数の分配ヘッドを含んでおり、分配ヘッドのそれぞれが、異なる構築材料を分配するように構成することができる。したがって、異なる目標位置を異なる構築材料によって占有することができる。構築材料の種類は、2つの大きなカテゴリとして、モデル材とサポート材とに分類することができる。サポート材は、製作工程時に物体または物体の一部を支持する、もしくはそれ以外の目的(例えば中空の物体や多数の穴を有する物体を提供する)、またはその両方を目的とする支持基盤または支持構造としての役割を果たす。支持構造は、例えば支持強度を高めるためのモデル材要素をさらに含んでいることができる。
【0036】
モデル材は、一般的には、積層造形において使用するために調製され、単独で(すなわち他の物質と混合する、または組み合わせる必要なしに)三次元の物体を形成することのできる組成物である。
【0037】
最終的な三次元の物体は、モデル材からなる、またはモデル材とサポート材の組合せからなる、またはその変形(例:硬化の後)からなる。これらの操作すべては、固体自由形状製造の分野の当業者に周知である。
【0038】
本発明のいくつかの例示的な実施形態においては、2種類以上のモデル材を、それぞれ積層造形装置の異なる分配ヘッドから分配することによって、物体が製造される。オプションとして、これらの材料は、印刷ヘッドの同一の通過動作の間に層として堆積させることが好ましい。層内の材料、および材料の組合せは、物体の所望の特性に従って選択する。
【0039】
図1Aおよび
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態による、物体12を積層造形する目的に適するシステム10の代表的な例を示しており、ただし本発明はこの例に限定されない。システム10は、複数の分配ヘッドを備えた分配ユニット21を有する積層造形装置14を備えている。各ヘッドは、
図1Bに示したように、1つまたは複数のノズル22のアレイを備えていることが好ましく、これらのノズル22を通じて構築材料24が分配される。
【0040】
積層造形装置14は三次元印刷装置であることが好ましく(ただし必須ではない)、その場合、分配ヘッドが印刷ヘッドであり、構築材料はインクジェット技術によって分配される。このことは必須条件ではなく、なぜなら、用途によっては、積層造形装置において三次元印刷技術を必ずしも採用しなくてもよいためである。本発明のさまざまな例示的な実施形態に従って予測される積層造形装置の代表的な例としては、以下に限定されないが、結合剤噴射式の粉末ベースの装置(binder jet - powder-based apparatus)、熱溶解積層装置、溶解材料堆積装置(fused material deposition apparatus)が挙げられる。
【0041】
オプションとして、各分配ヘッドには構築材料リザーバを介して供給されることが好ましく、構築材料リザーバは、オプションとして、温度制御ユニット(例:温度センサもしくは加熱装置またはその両方)と、材料レベルセンサとを含んでいることができる。構築材料を分配する目的で、例えば圧電式インクジェット印刷技術におけるように、分配ヘッドのノズルを介して材料の液滴を選択的に堆積させるための電圧信号が分配ヘッドに印加される。各ヘッドの分配速度は、ノズルの数、ノズルのタイプ、および電圧信号の印加速度(周波数)に依存する。このような分配ヘッドは、固体自由形状製造の分野の当業者に公知である。
【0042】
分配ノズルまたはノズルアレイの総数は、好ましくは(ただし必須ではない)、分配ノズルの1/2がサポート材を分配する目的に指定され、分配ノズルの1/2がモデル材を分配する目的に指定されるように選択し、すなわち、モデル材を噴射するノズルの数は、サポート材を噴射するノズルの数と同じである。
図1Aの代表的な例では、4つの分配ヘッド21a,21b,21c,21dを示してある。ヘッド21a,21b,21c,21dのそれぞれは、ノズルアレイを有する。この例においては、ヘッド21aおよびヘッド21bをモデル材用に指定することができ、ヘッド21cおよびヘッド21dをサポート材用に指定することができる。したがって、ヘッド21aは第1のモデル材を分配することができ、ヘッド21bは第2のモデル材を分配することができ、ヘッド21cおよびヘッド21dはいずれもサポート材を分配することができる。代替実施形態においては、例えばヘッド21cおよびヘッド21dを組み合わせて、サポート材を堆積させるための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドとすることができる。
【0043】
ただし、上の例は本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、モデル材を堆積させるヘッド(モデリングヘッド)の数と、サポート材を堆積させるヘッド(支持ヘッド)の数は異なってよいことを理解されたい。一般的には、モデリングヘッドの数と、支持ヘッドの数と、各ヘッドまたはヘッドアレイにおけるノズルの数は、サポート材の最大分配速度とモデル材の最大分配速度の所定の比率aが得られるように選択する。所定の比率aの値は、形成される層のそれぞれにおいて、モデル材の高さがサポート材の高さに等しいように選択されることが好ましい。aの一般的な値は、約0.6〜約1.5である。
【0044】
本明細書において使用されている語「約」は、±10%を意味する。
【0045】
例えば、a=1の場合、すべてのモデリングヘッドおよび支持ヘッドが作動するとき、サポート材の全体的な分配速度はモデル材の全体的な分配速度とほぼ同じである。
【0046】
好ましい実施形態においては、p個のノズルからなるm個のアレイをそれぞれが有するM個のモデリングヘッドと、q個のノズルからなるs個のアレイをそれぞれが有するS個の支持ヘッドとが存在し、このときM×m×p=S×s×qである。M×m個のモデル材アレイおよびS×s個のサポート材アレイのそれぞれを、個別の物理ユニットとして製造することができ、いくつかの物理ユニットをまとめてアレイのグループとする、またはアレイのグループから物理ユニットを外すことができる。この実施形態においては、オプションとして、このようなアレイそれぞれが、自身の温度制御ユニットおよび材料レベルセンサを備えており、各アレイを作動させるための個々に制御された電圧を受け取ることが好ましい。
【0047】
積層造形装置14は、硬化ユニットをさらに備えていることができ、硬化ユニットは1つまたは複数の放射源26を備えていることができ、放射源26は、使用するモデル材に応じて、例えば、紫外線ランプ、可視光ランプ、赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。放射源26は、モデル材を硬化または固化させる役割を果たす。
【0048】
分配ヘッドおよび放射源26は、フレームまたはブロック28の中に取り付けられていることが好ましく、フレームまたはブロック28は、トレイ30(作業面としての役割を果たす)の上で往復移動するように動作することが好ましい。一般的な慣例によると、トレイ30はX−Y平面に位置している。トレイ30は、(Z方向に沿って)垂直に、一般には下向きに移動するように構成されていることが好ましい。本発明のさまざまな例示的な実施形態においては、積層造形装置14は、1つまたは複数のレベリング装置32(例:ローラー34)をさらに備えている。レベリング装置32は、新たに形成された層を、その上に次の層を形成する前に、まっすぐにする、水平にする、層の厚さを確立する、のうちの少なくとも1つを行う役割を果たす。レベリング装置32は、レベリング時に発生する余分な材料を集めるための廃棄材料収集装置36を備えていることが好ましい。廃棄材料収集装置36は、材料を廃棄材料タンクまたは廃棄材料カートリッジに送る任意のメカニズムを備えていることができる。
【0049】
使用時、分配ユニット21の分配ヘッドは、走査方向(本明細書においてはX方向を意味する)に移動し、トレイ30の上を通過する過程において、構築材料を所定の形状に選択的に分配する。構築材料は、一般には、1種類または複数種類のサポート材と、1種類または複数種類のモデル材とを含んでいる。分配ユニット21の分配ヘッドが通過した後、(1種類または複数種類の)モデル材を放射源26によって硬化させる。ヘッドが、直前に堆積させた層の開始点まで逆方向に戻るとき、所定の形状に従って構築材料をさらに分配することができる。分配ヘッドが順方向に通過するとき、もしくは逆方向に通過するとき、またはその両方において、このように形成される層をレベリング装置32によってまっすぐにすることができ、レベリング装置32は、分配ヘッドが順方向に移動するときの経路もしくは逆方向に移動するときの経路またはその両方をたどることが好ましい。分配ヘッドは、X方向に沿って開始点まで戻ると、インデクシング(indexing)方向(本明細書においてはY方向を意味する)に沿って別の位置まで移動することができ、X方向に沿っての往復移動によって同じ層の構築を続行することができる。これに代えて、分配ヘッドは、順方向移動と逆方向移動の間にY方向に移動する、または順方向および逆方向に2往復以上した後に、Y方向に移動することができる。1つの層を完成させるために分配ヘッドによって行われる一連の走査を、本明細書においては1回の走査サイクルと称する。
【0050】
層が完成した時点で、トレイ30は、次に印刷される層の所望の厚さに従って、Z方向に所定のZレベルまで下がる。この手順が繰り返されて、3次元の物体12を積み重ね方式で形成する。
【0051】
別の実施形態においては、同じ層において、分配ユニット21の分配ヘッドの順方向の通過と逆方向の通過との間に、トレイ30をZ方向に移動させることができる。このようなZ方向の移動は、レベリング装置32と表面とが一方向においてのみ接触し、反対方向においては接触しないようにする目的で行われる。
【0052】
システム10は、オプションとして、構築材料供給装置50を備えており、構築材料供給装置50は、構築材料の容器またはカートリッジを備えており、複数の構築材料を積層造形装置14に供給することが好ましい。
【0053】
制御ユニット52は、積層造形装置14を制御し、オプションとして、構築材料供給装置50も制御することが好ましい。制御ユニット52は、データプロセッサ54と通信することが好ましく、データプロセッサ54は、コンピュータの物体データ(例:コンピュータ可読媒体上に表される、STL(Standard Tessellation Language)フォーマットなどの形式におけるCAD形状データ)に基づく製作命令に関連するデジタルデータを送信する。制御ユニット52は、一般に、各分配ヘッドまたはノズルアレイに印加される電圧と、それぞれの印刷ヘッドにおける構築材料の温度とを制御する。
【0054】
製造データが制御ユニット52にロードされると、制御ユニット52はユーザの介入なしに動作することができる。いくつかの実施形態においては、制御ユニット52は、ユニット52と通信する例えばデータプロセッサ54を使用して、またはユーザインタフェース16を使用して、オペレータからの追加の入力を受け取る。ユーザインタフェース16は、この技術分野において公知の任意のタイプ、例えば、以下に限定されないが、キーボード、タッチスクリーンなどとすることができる。制御ユニット52は、例えば、追加の入力として、1つまたは複数の構築材料の種類もしくは属性またはその両方を受け取ることができ、属性は、例えば、以下に限定されないが、色、特徴的なひずみもしくは遷移温度またはその両方、粘度、電気特性、磁気特性である。他の属性および属性のグループも考えられる。
【0055】
いくつかの実施形態においては、異なる分配ヘッドから異なる材料を分配することによって、物体を製作するように意図されている。これらの実施形態では、特に、与えられた数の材料から材料を選択し、選択される材料およびそれらの特性の所望の組合せを定義することが可能である。これらの実施形態によると、層の中で各材料が堆積される空間位置は、異なる3次元空間位置が異なる材料によって占有されるように定義する、または、堆積後に層の中での材料の空間的な組合せが可能となり、これにより1つまたは複数の各位置に複合材料が形成されるように、実質的に同じ3次元位置または隣接する3次元位置が2種類以上の異なる材料によって占有されるように定義する。
【0056】
堆積後のモデル材の任意の組合せまたは混合が考えられる。例えば、ある材料が分配されると、この材料は元の特性を維持することができる。しかしながら、この材料が、別のモデル材と同時に分配される、または同じ位置あるいは近い位置に分配される別の材料と同時に分配されるとき、これらの分配される材料とは異なる1つまたは複数の特性を有する複合材料が形成される。
【0057】
したがって、本発明の実施形態では、材料の多様な組合せを堆積させて物体を製作することが可能であり、物体は、その各部を特徴付けるうえで望ましい特性に従って、物体の複数の異なる部分における材料の複数の異なる組合せからなる。
【0058】
システム10などの積層造形システムの原理および動作に関するさらなる詳細は、特許文献13に記載されており、この文書の内容は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0059】
一般に、分配ユニット21は、トレイ30を走査するときに何回か通過する。この動作が適用されるのは、分配ユニット21の幅がトレイ30の幅よりも小さいとき、もしくは、1回の積層造形バッチにおいて同じトレイ上でいくつかの物体を構築するとき、またはその両方である。
【0060】
物体12が、高さの異なる複数の領域を備えているときには、印刷される物体の、より高い領域には、より低い領域よりも、モデル材の多くの層が要求される。
図2Aは、代表的な状況を示している。
図2Aには、実施形態における物体12を示してあり、物体12は、高さH1の領域62と、高さH2の領域64と、高さH3の領域66とを含んでおり、H1<H2<H3である。層70は、3つの領域62,64,66のすべてによって共有されている。
【0061】
物体12は下部から上部に積み重ね方式で形成されるため、高さH1より上の層を形成している間、領域62の最上層が露出したままであり、高さH2より上の層を形成している間、領域62の最上層と領域64の最上層の両方が露出したままであり、分配ユニット21は、高さH1より上の各層と高さH2より上の各層を分配して硬化させる走査工程を続ける。これらの最上層は、長時間にわたり露出しているため、硬化放射の累積量が他の層よりも大きい。本発明者は、このような過度な硬化によって、より低い高さの1つまたは複数の露出した領域(本例においては領域62,64)の少なくとも最上層が変色することを見出した。硬化放射はモデル材を貫通するため、変色の影響は最上層より下の層にも達することがある。
図2Bは、この状況を示しており、領域62の2つの最上層72の露出部分と、領域64の2つの最上層74の露出部分とにおける変色を示している。
【0062】
過度な硬化に起因するモデル材の変色の1つの形態として、形成される物体の露出していない領域における層または層の一部と比較して、露出している領域、すなわち露出している領域における層または層の一部に、望ましくない着色が発生する。
【0063】
あるいは、過度な硬化によって、モデル材の別の形態の変色が発生し、過度な露出が原因で材料が、黄色がかった色となり、したがって、過度な放射の影響を受けていない領域と比較して、放射に過度にさらされることで材料が黄色味を帯びた領域が形成される。
【0064】
例えば、
図2Bに示した物体を、商品名Objet(登録商標) VeroWhite RGD830(Objet社、イスラエル)を有する構築材料(硬化すると不透明な白色材料)を使用して印刷すると、過度な硬化に起因して、露出している上層部分72,74が黄色がかる、または茶色がかるが、物体の残りの部分は不透明な白色である。
【0065】
別の例においては、
図2Bに示した物体を、商品名Objet VeroClear RGD810 (Objet社、イスラエル)を有する構築材料(硬化すると実質的に無色透明な材料)を使用して印刷すると、過度な硬化に起因して、上層部分72,74における材料が黄色がかる、または茶色がかり(これは無色透明な材料を通じて目に見える)、物体の残りの部分は全体を通じて実質的に無色透明である。
【0066】
他の不透明な着色材料または透明な着色材料、例えば、商品名Objet FullCure(登録商標)720 RGD720、Objet VeroGray RGD850を有する構築材料、および他のモデル材においても、過度な硬化によって同様に黄色がかる、または茶色がかることがある。
【0067】
本発明者は、硬化によって発生する変色を低減または防止する技術を考案した。したがって、本発明の実施形態の方法では、全体を通じて色が均一である物体が提供される。本発明のさまざまな例示的な実施形態においては、複数の層のうちの1層または複数層の露出した部分(例:上の例では領域62,64)を覆う放射保護層の積層体が形成されるように、制御ユニット52が分配ユニット21を作動させる。
図3は、これらの実施形態の概略図を示している。図示したように、高さH1における領域62と高さH2における領域64は、全体を82および84として示した積層体によって覆われている。これらの積層体は、放射源26によって照射される硬化放射の波長に対して十分に高い吸収率または反射率を有する材料から形成されている。
【0068】
オプションとして、これらの積層体は、物体12を構築するとき、同じ高さに形成される物体の層と同時に分配ユニット21によって形成されることが好ましい。したがって、これらの実施形態においては、層のうち物体を形成する部分と、層のうち放射保護部分とが、分配ヘッドの同じ走査時に形成される。例えば、積層体82の最下層は、トレイ30のZレベルが、領域62の最上層の真上の(例:上の)層に調整されているときに形成される。したがって、物体の低い高さの領域(本例においては領域62,64)に達する放射の量は、積層体が積み重ねられていく結果として徐々に減少する。
【0069】
本発明のさまざまな例示的な実施形態においては、積層体の少なくとも1つは、モデル材層によって上から覆われない。言い換えれば、放射保護層のこのような積層体は、追加の放射保護層によって覆うことができるが、モデル材層によっては覆われないことが好ましい。したがって、物体12の低い高さの領域の最上層に続く(すなわち最上層よりも高い)モデル材層を形成している間、低い高さの領域の最上層(保護積層体の最上層である)が露出し、その下のモデル材層を過度な硬化の影響から保護する。積層体の最上層が形成されると、その最上層は物体12が完成するまで露出したままである。
【0070】
オプションとして、放射保護層の全体的な高さまたは数は、積層体を形成するために使用される放射保護材料の種類に基づいて、制御ユニット52によって選択されることが好ましい。例えば、放射を強く吸収する材料は、少ない層(例:1層)によって、放射からの遮蔽効果を提供することができ、放射の吸収率の低い材料では、より多くの数の層が好ましい。本発明のいくつかの実施形態においては、積層体の層の数は、放射源26によって放出される硬化放射の少なくとも90%、または少なくとも93%、または少なくとも96%、または少なくとも99%を遮断するように選択する。一般には、積層体の層の数は、少なくとも10(例:11以上の)層、または少なくとも30(例:31以上の)層、または少なくとも60(例:61以上の)層、または少なくとも90(例:91以上の)層、例えば100層またはそれ以上である。
【0071】
各層は、一般には(ただし必須ではない)、約15μの厚さを有する。いくつかの実施形態においては、各層は、少なくとも5μ(例:約5μ、または約10μ、または約15μ、または約30μ)の厚さを有する。それ以外の厚さも、本発明の範囲から除外されない。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態においては、コントローラは、積層体の層の厚さおよび数の少なくとも一方を、積層体を形成するために使用される放射保護材料の種類に基づいて計算する。オプションとして、層の厚さもしくは数またはその両方は、硬化放射に対する放射保護材料の透過率に基づいて計算されることが好ましい。この計算は、あらかじめプログラムされた解析機能によって、またはルックアップテーブル(例えばコントローラによってアクセス可能なメモリ媒体に格納することができる)を介して、行うことができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態においては、複数の積層体が形成され、これら複数の積層体の層の数は、上に示したとおりである。
【0074】
放射保護層は犠牲層である。すなわち放射保護層は、物体12の構築時に堆積されるが、物体自体の一部ではない。物体が完成した時点で、モデル材層をほぼ損傷させることなく放射保護層を選択的に除去する任意の技術を使用して、積層体を除去することができる。
【0075】
物体を積層造形するとき、追加の犠牲層を形成することができる。
図4Aおよび
図4Bは、このような構造の代表的な例を示している。
図4Aに示した構造は、保護性の積層体82,84に加えて、物体12の上部層94を形成している間、上部層94を支持するために形成されているいくつかの支持層92を含んでいる。このような支持層は、サポート材からなり、オプションとして、補強のためのモデル材要素も含んでおり、このような支持層は最終的な物体の一部ではないため、同様に犠牲層である。物体が完成した時点で、すべての犠牲層を除去し、モデル材層のみを残す。保護積層体82,84を除去することにより、低い高さの領域62,64が現れ、支持層92を除去することにより、上部層94の下に空洞または凹部96が現れ、上部層94は凹部96の上に突き出し部を形成する。
【0076】
2種類の犠牲層の違いとして、支持層92の最上層は、最終的にモデリング層94の最下層によって覆われているのに対して、積層体82,84の最上層は、物体12の構築が完成した時点で露出したままであることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態においては、積層体の層の数は、いかなる支持領域92の層の数よりも多い。本発明のいくつかの実施形態においては、積層体の層の数は、いかなる支持領域92の層の数よりも少ない。
【0077】
本発明のさまざまな例示的な実施形態においては、積層体の層の少なくとも50%、または層の少なくとも60%、または層の少なくとも70%、または層の少なくとも80%、または層の少なくとも90%、例えば積層体のすべての層において、層の寸法は、X方向またはY方向の少なくとも一方において、1.7mm以上、または1.8mm以上、または1.9mm以上、または2mm以上である。本発明のいくつかの実施形態においては、層の寸法は、2mm×2mmより大きい。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態の態様においては、三次元の物体を積層造形するのに適する方法が提供される。この方法は、積層造形システム(例:システム10)を使用して実行することができる。この方法は、複数の層を、物体の形に対応する形状を有するパターンに連続的に形成するステップを含んでいる。各層を形成するステップは、前に詳しく説明したように、少なくとも1種類のモデル材を分配して未硬化層を形成するステップと、この未硬化層を放射によって硬化させるステップとを含んでいる。本方法では、前に詳しく説明したように、複数の層のうちの少なくとも1層に対して、その層の露出した部分を覆うための犠牲的な放射保護層の積層体を形成する。本発明のいくつかの実施形態においては、本方法では、物体の構築が完了した時点で積層体を除去する。
【0079】
積層体の放射保護層は、積層造形(例:三次元印刷)に適する任意の材料であって、放射源26によって照射される硬化放射の波長に対して十分に高い吸収率または反射率を有する材料から形成することができる。本発明のさまざまな例示的な実施形態においては、放射保護層は、製造後にモデリング層から剥離することができるように除去可能である。
【0080】
本発明者は、突き出し部または物体の湾曲形状の下の支持層を形成する目的に従来使用されてきたサポート材が、物体の低い高さの領域の上の放射保護層として使用するうえで十分な放射吸収率を有することを見出した。本発明者が行った実験では、サポート材からなる(オプションとして補強のためのモデル材要素も含んでいる)層の積層体によって、低い高さの領域における変色の影響が予想外に防止された。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態においては、放射保護層は、少なくとも一部分が、水溶性のサポート材から形成されている。これによって、水または他の水性液体を使用して犠牲層を除去することができる。例えば、加圧された水性液体(例:水)のジェットを物体に導くことで、犠牲層を選択的に除去する一方で、モデリング層をそのままの状態で損傷なく維持することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態においては、放射保護層は、硬化後のモデル材を特徴付ける弾性係数よりも小さい弾性係数によって特徴付けられる。弾性係数の小さい放射保護層は、除去手順の観点から有利である。放射保護層が、モデリング層よりも小さい弾性係数を有するとき、湿式または乾式の機械的処理によって放射保護層をモデリング層から容易に剥離することができ、この場合、モデリング層の弾性によって、処理によるモデリング層の損傷が防止される。機械的処理の代表的な例としては、以下に限定されないが、乾式剥離法(dry peeling)および液体ジェットの使用が挙げられる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態においては、放射保護層は、非重合性成分と重合性成分の組合せを含んだ材料からなる。オプションとして、このような材料は、層の形成時、放射保護層が単独で(例えば補強のためのモデル材要素なしに)堆積されるとき、放射保護層とモデリング層との間、2つのタイプの層部分(物体の層の部分および保護層の部分)の間の界面に、極めて薄い分離領域を形成することができる。このような薄い分離領域によって、物体から保護層の積層体が容易に除去され、分離領域自体も、製造工程の完了後に物体から除去される。放射保護層の材料は、少なくとも50重量%の非重合性成分を含んでいることが好ましい。
【0084】
本発明のさまざまな例示的な実施形態においては、保護被覆層によって酸素の浸透を低減する、または浸透から保護することができるように、放射保護層の材料は十分に低い酸素溶解度を有する。
【0085】
本発明の実施形態の放射保護層を形成するのに適する材料の代表的な例は、三次元印刷のサポート材であり、例えばObjet社から販売されているFullCure 705である(ただしこれに限定されない)。オプションとして、サポート材は、特定の量(例:25重量%)のモデル材と混合されることが好ましい。
【0086】
いくつかの実施形態では、本方法もしくは本システムまたはその両方において、色がほぼ均一である物体が製造される。いくつかの実施形態では、本方法もしくは本システムまたはその両方において、色の欠如がほぼ均一である物体が製造される。
【0087】
色または色の欠如の均一性は、例えば、分光光度計を使用して測定することができる。適切な分光光度計は、例えば、X−Rite SP62(X−Rite社、米国)である。この手法は、有色の物体の場合に特に有用である。別の手法としては、デジタル撮像法を使用して物体の画像を取得する手法が挙げられる。適切なデジタルカメラは、例えば、Canon Powershot A650 IS(Canon USA社)である。この手法は、透明な物体の場合に特に有用である。
【0088】
黄色の指標は、例えば次式に従って計算することができる。
【0089】
黄色の指標=100−青/[(青+赤+緑)/3]*100
この式において、青、赤、緑は、得られた各色の強度である。青、赤、および緑の強度の値は、この技術分野において公知である任意の画像処理アルゴリズムを使用して得ることができる。このようなアルゴリズムの代表的な例はImageJソフトウェアであり、これはJavaベースの画像処理プログラムである(米国の国立衛生研究所)。
【0090】
黄色の指標は、色の均一性の記述子として使用することができ、0より大きい値は、より黄色が強い色に対応し、0より小さい値は、より青色が強い色に対応する。本発明のさまざまな例示的な実施形態においては、本発明の実施形態の方法およびシステムによって形成される物体は、約−1〜約3.3、または約−1〜約2、または約−1〜約1、または約−0.5〜約0.5、または約−0.1〜約0.1、例えば0である黄色の指標によって、特徴付けられる。
【0091】
本発明の実施形態の方法の1つまたは複数の動作は、コンピュータによって実施される。本発明の実施形態の方法を実施するコンピュータプログラムは、一般に、配布媒体(例えば、以下に限定されないが、フロッピーディスク、CD−ROM、フラッシュメモリデバイス、ポータブルハードディスク)を通じて使用者に配布することができる。配布媒体からハードディスクまたは類似する中間記憶媒体に、コンピュータプログラムをコピーすることができる。配布媒体または中間記憶媒体からコンピュータ命令をコンピュータの実行メモリにロードし、本発明の方法に従って動作するようにコンピュータを設定することによって、コンピュータプログラムを実行することができる。これらの操作すべては、コンピュータシステムの技術分野における当業者に周知である。
【0092】
コンピュータによって実施される、本発明の実施形態の方法は、数多くの形態として具体化することができる。例えば、本方法を、有形媒体(例えば、本方法の動作を実行するコンピュータ)上に具体化することができる。本方法を、本方法の動作を実行するコンピュータ可読命令を備えたコンピュータ可読媒体上に具体化することができる。さらには、有形媒体上のコンピュータプログラムを実行するようにされた、またはコンピュータ可読媒体上の命令を実行するようにされたデジタルコンピュータ機能を有する電子デバイスに、本方法を具体化することもできる。
【0093】
本出願から発生する特許権の存続期間中、積層造形のための数多くの関連するモデル材が開発されることが予測されるが、用語「モデル材」の範囲は、このような新規の技術すべてを含むものとする。
【0094】
本明細書において使用されている語「約」は、±10%を意味する。
【0095】
表現「例示的な」は、本明細書においては、「例、一例、または説明としての役割を果たす」を意味する目的で使用されている。「例示的な」と記載されている実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましい、または有利であるとは解釈されないものとし、さらには、他の実施形態の特徴を組み込むことが必ずしも排除されないものとする。
【0096】
表現「オプションとして」は、本明細書においては、「いくつかの実施形態において設けられ、他の実施形態では設けられない」を意味する目的で使用されている。本発明のいずれの実施形態も、互いに矛盾しない限りは複数の「オプションの」特徴を含んでいることができる。
【0097】
表現「備えている」、「含んでいる」、「有する」およびこれらの活用形は、「〜を含んでいるがそれらに限定されない」ことを意味する。
【0098】
表現「からなる」は、「〜を含んでおりそれらに限定される」ことを意味する。
【0099】
表現「本質的に〜からなる」は、組成物、方法、または構造が、追加の構成要素、追加のステップ、または追加の部分を含んでいることができるが、これらの追加の構成要素、追加のステップ、または追加の部分が、請求されている組成物、方法、または構造の基本的かつ新規の特徴を実質的に変化させない場合に限られることを意味する。
【0100】
本明細書において使用されている単数形「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」は、文脈から明らかに単数形に限定されない限りは、対象要素の複数形も含む。例えば、表現「ある化合物」または「少なくとも1種類の化合物」には、複数種類の化合物(それらの混合物も含む)も含まれうる。
【0101】
本出願の全体を通じて、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式で提示されていることがある。範囲形式での記述は、便宜上および簡潔さのみを目的としており、本発明の範囲を固定的に制限するようには解釈されないものとする。したがって、範囲の記述には、具体的に開示されている可能な部分範囲すべてと、その範囲内の個々の数値とが含まれるものとみなされたい。例えば、1〜6などの範囲の記述には、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)と、この範囲内の個々の数(例えば1、2、3、4、5、6)とが含まれるものとみなされたい。このことは、範囲の広さにかかわらずあてはまる。
【0102】
本明細書中に数値範囲が示されているときには、示された範囲内の任意の該当する数値(小数または整数)が含まれるものとする。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」、および、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書においては互換的に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間のすべての小数および整数を含むものとする。
【0103】
明確さを目的として、個別の実施形態の文脈の中で説明されている本発明の複数の特徴は、1つの実施形態の中に組み合わせて設けることもできることを理解されたい。逆に、簡潔さを目的として、1つの実施形態の文脈の中で説明されている本発明のさまざまな特徴は、個別に設ける、または適切な部分的組合せとして設ける、または本発明の任意の他の説明されている実施形態において適切に設けることもできる。さまざまな実施形態の文脈の中で説明されている特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作・機能しない場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴とはみなさないものとする。
【0104】
ここまで、本発明について、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、当業者には数多くの代替形態、修正形態、および変形形態が明らかであろう。したがって、添付の請求項の概念および広い範囲内に含まれるそのような代替形態、変形形態、およびバリエーションは、すべて本発明に包含されるものとする。
【0105】
本明細書に記載されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、これら個々の刊行物、特許、および特許出願それぞれが、参照によって本明細書に組み込まれることを明示的かつ個別に示されている場合と同じように、それぞれの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれている。さらには、本出願において参考文献が引用または特定されていることは、そのような参考文献が本発明の従来技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されない。セクションの見出しが使用されている場合、それらの見出しは必ずしも本発明を制限するものとして解釈されない。
【0106】
本出願は、米国特許出願第61/417,436号(出願日:2010年11月28日)の優先権の利益を主張し、この文書の内容は、その全体が本明細書に記載されている場合と同じように、参照によって本明細書に組み込まれている。