(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示は、一般に集積化センサに関する。集積化センサの例は、表面増強ラマン分光(SERS:surface enhanced Raman spectroscopy)で使用するのに適する。センサの例は、多角形組立体に配列された崩壊可能又は再構成可能信号増幅構造を含む1つ又は複数の検知部材を含む。単一多角形組立体の崩壊可能信号増幅構造は、毛管力(例えば、液体蒸発中の)を用いて、自己癒着(例えば、構造の先端における自己閉鎖又は自己再構成)を受けることができる。信号増幅構造は、閉鎖先端の間に形成されるホットスポットに分子を捕捉することができ、それが、SERS問い合わせ(interrogation)の下で電磁界を著しく増幅させる。更に、集積化センサの例は可撓性基材上に制御可能に形成され、これらの集積化センサは、有利には、長期間にわたる連続モニタリングのために使用することができる。更に、集積化センサの幾つかの例は、集積化センサに暴露されるサンプルを、崩壊可能信号増幅構造に向かってサンプルが送られるように自己位置決めすることができる。これらの例では、集積化センサは、最適信号増強のためにサンプルを動的に再構成することができる。
【0006】
ここで
図1A及び
図1Bを参照すると、液体サンプル暴露の前(
図1A)及び液体サンプル暴露の後(
図1B)の集積化センサ10の例が示される。一例では、集積化センサ10は、可撓性基材12と、可撓性基材12の表面S
12上に形成された離間した検知部材14
A、14
Bのアレイとを含む。2つの検知部材14
A、14
Bが
図1A及び
図1Bに示されるが、任意の数の検知部材14
A、14
B(本明細書で14とも呼ばれる)を可撓性基材12上に形成することができることが理解される。例えば、単一検知部材14
A又は14
Bを形成することもできるし、数十又は数百の検知部材14
A、14
Bを形成することもできる。形成される検知部材14
A、14
Bの数は、例えば、可撓性基材12の寸法(すなわち、長さ及び幅)によって及び/又は任意の1つの検知部材14
A、14
B内に形成される多角形組立体16の数によって制限されることがある。幾つかの例として、検知部材14
A、14
Bのアレイは、可撓性基材12の長さに沿う検知部材14
A、14
Bの単一行(例えば、
図9参照)、又は、可撓性基材12の長さに沿う複数行及び可撓性基材12の幅に沿う複数列(例えば、
図8参照)を含むことができる。隣接する検知部材14
A、14
Bの間の間隔は、例えば、可撓性基材12の寸法(すなわち、長さ及び幅)及び/又はセンサ10に問い合わせするために使用されることになる検知システムの分注器、光源、検出器等の構成に依拠することができる。例えば、検知システムが、検知部材14
A、14
Bに分析物溶液(すなわち、サンプル)を分注するために単一分注器を有する場合、検知部材14
A、14
Bは、可撓性基材12の長さに沿う単一行内で互いから約1000μm(すなわち、1mm)〜約10000μm(すなわち、10mm)の範囲の距離だけ離間することができるため、分注器は、検知部材14
A、14
Bを次々に充填するよう作動することができる。別の例では、隣接する検知部材14
A、14
Bの間の距離は、約200μm(すなわち、0.2mm)〜約500μm(すなわち、0.5mm)又は約1000μm(すなわち、1mm)の範囲にある。単一検知部材14
A、14
Bは、約0.1mm〜約2mmの範囲の長さ及び/又は幅を有することができる。一例では、単一検知部材14
A、14
Bは、約1mmの長さ及び/又は幅を有することができる。
【0007】
可撓性基材12は、破断することなく撓むか又は屈曲することが可能である任意の基材材料とすることができる。可撓性基材12はまた、可撓性基材12内に形成された信号増幅構造18を有することが可能である。可撓性はまた、可撓性基材12が、モニタリングのために(例えば、連続式又はラチェット式に)割出し送りされる(indexed)か、又は移動されることを可能にすることができる。可撓性基材12の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリカーボネートを含む。一例では、可撓性基材12は、約30μm〜約50μmの範囲にある厚さを有する。他の例では、基材12の厚さは50μmより大きい。より硬質の材料(例えば、ポリカーボネート)が使用される例では、基材12の厚さは、所望の可撓性を得るために厚さ範囲の下端にすることができる。幾つかの基材12の幅は、約8mm〜約12mmの範囲にすることができる。
【0008】
図1A及び
図1Bに示す例では、各検知部材14
A、14
Bは、可撓性基材12の表面S
12上に制御されたパターンで配列された複数の多角形組立体16を含む。制御されたパターンは、任意のN×Mアレイを含むことができる。ここで、N、Mは、2、3、4、5、…50…2000から個々に選択される。一例では、N=M=100〜1000である。
図1A及び
図1Bの検知部材14
A、14
Bのそれぞれに示す多角形組立体16の制御されたパターンは2×2アレイである。この例では、検知部材14
A、14
Bのそれぞれは、同じ制御されたパターンを有するが、検知部材14
A、14
Bの1つ又は複数が、他の検知部材14
A、14
Bの1つ又は複数と異なる制御されたパターンで配列された多角形組立体16を有することができることが理解される。単一検知部材14
A又は14
B内の各多角形組立体16は、同じ検知部材14
A又は14
B内の他の各多角形組立体16から所定の距離にあることができる。一例では、所定の距離は約0.5μm〜約1μm又は約10μmの範囲をとることができる。別の例では、所定の距離は約0.7μmとすることができる。制御されたパターン及び所定の距離は、本明細書に開示される作製方法を使用して得ることができる。
【0009】
各多角形組立体16は、所定の幾何学的形状に制御可能に位置決めされた崩壊可能信号増幅構造18を含む。所定の幾何学的形状の例の上面図が、
図2A〜
図2Eに示される。これらの形状は、三角形(すなわち、3量体、
図2Aに示すように3つの崩壊可能信号増幅構造18を含む)、四角形(すなわち、4量体、
図2Bに示すように4つの崩壊可能信号増幅構造18を含む)、五角形(すなわち、5量体、
図2Cに示すように5つの崩壊可能信号増幅構造18を含む)、六角形(すなわち、6量体、
図2Dに示すように6つの崩壊可能信号増幅構造18を含む)、及び、七角形(すなわち、7量体、
図2Eに示すように7つの崩壊可能信号増幅構造18を含む)を含む。複数の例では、三角形形状又は四角形形状を有する多角形組立体16の周期は、約400nm〜約700nmの範囲にあり、五角形形状、六角形形状、又は七角形形状を有する多角形組立体16の周期は、約600nm〜約900nmの範囲にある。一例では、単一検知部材14
A、14
B内の多角形組立体16のアレイは、約50μm〜約100μm幅及び約50μm〜約100μm長である可撓性基材12上の空間を占めることができる。例として、五角形の3×3アレイは約2×2μm
2のエリアをカバーすることができ、一方、五角形の30×30アレイは約20×20μm
2のエリアをカバーすることができる。
【0010】
少なくとも一部には、大きなエリアにわたって任意の対称性の実質的に均一な構造(例えば、4量体、5量体、7量体等)も形成しながら、所望の小さなギャップサイズ(例えば、崩壊した信号増幅構造間の2nm以下のギャップ)を得ることは困難であるという理由で、所定の幾何学的形状の信号増幅構造18の制御された作製が達成されていないと思われる。しかし、本明細書で開示される作製方法は、比較的大きなエリア(例えば、約8mm〜約12mm幅)にわたって多角形組立体の崩壊したギャップサイズ並びに幾何学的形状を制御することを可能にする。
【0011】
各崩壊可能信号増幅構造18は、ポリマベースナノ構造20及びその上に位置決めされた信号増幅材料22を含む。ポリマベースナノ構造20の例は、
図1A、
図1B、及び
図3Aに示す、ピラー、円柱状、又はフィンガ様構造、
図3Bに示すナノフレーク構造、
図3Cに示すマッシュルーム状ナノ構造を含む。
図4A〜
図4Dを参照して以下で述べるように、これらのポリマベースナノ構造20は、可撓性基材12内に形成され、したがって、可撓性基材12と同じ材料から形成される。
【0012】
信号増幅材料22は、特定の検知プロセス中に生成される信号を増強することが可能である任意の材料とすることができる。一例では、信号増幅材料22は、分子(又は他の関心の種)が、崩壊した信号増幅構造(複数の場合もある)18によって捕捉されるときに、また、分子及び材料22が光放射/電磁放射を受けるときにラマン散乱光子の数を増加させるラマン信号増強材料(組成物)である。ラマン信号増強材料は、銀、金、及び銅を含むが、それらに限定されない。信号増幅材料22はまた、増強フルオレセンス(例えば、金属増強フルオレセンス又は表面増強フルオレセンス(SEF:surface enhanced fluorescence)又は増強ケミルミネセンス等の他の技法で使用するために選択することができる。一例として、金属増強フルオレセンス用途の場合、信号増幅構造18のポリマベースナノ構造20は、銀ナノ粒子でコーティングすることができる。増強フルオレセンスは、入射光が、銀ナノ粒子の近傍の分子によって銀ナノ粒子に結合するときに観測される。信号増幅材料22は、局在化した(また幾つかの事例では、伝播する)表面プラズモンに結合するように構成することができる。崩壊可能信号増幅構造18を形成するためにポリマベースナノ構造20上の所望の位置に信号増幅材料22を堆積させるための方法はまた、
図4A〜
図4Dを参照して論じられることになる。
【0013】
図1Aと
図1Bとの間の矢印で示すように、
図1Aの集積化センサ10の検知部材14
A、14
Bのそれぞれが液体サンプルに暴露される。
図1Bに示すように、サンプルに暴露される崩壊可能信号増幅構造18は、毛管力を用いて自己閉鎖を受けるため、信号増幅材料22は、互いの方に引き寄せられて、nm以下のギャップを生成し、そこで、オリジナルの液体サンプル内に存在する関心の分析物(例えば、分析物24)が捕捉(trap)される。上記で述べたように、閉鎖した信号増幅構造18は、SERS場を増幅するホットスポットを形成し、それにより、SERS信号を増強する。
【0014】
ここで
図4A〜
図4Dを参照すると、集積化センサ10の例を形成するための方法の例が、半模式的に示される。この方法は、ナノインプリント又はエンボス加工に基づく制御された方法である。
図4A〜
図4Dは、ナノインプリントに基づく方法を述べる。エンボス加工は、シリコンモールドを調製すること、及び、その後、モールドを使用してモールドフィーチャをポリマに転写することを含むことができる。
【0015】
図4Aは、各検知部材14
A、14
Bの多角形組立体16を形成するために使用することができるモールド26の斜視図を示す。
図4Aに示すモールド26は、それぞれが五角形又は5量体である4つの多角形組立体を有する1つの検知部材を形成するためのパターンを含む。これは、モールド26の簡略化した例であり、モールド26が、形成される信号増幅構造18のポリマベースナノ構造20の制御された幾何学的形状を含む、形成される多角形組立体に似る任意の制御されたパターン(複数の場合もある)を有することができることが理解される。例えば、複数の検知部材がモールド26を使用して形成されるとき、モールド26は、それぞれが、形成されるそれぞれの構造の所望のパターンに対応する、複数の離間した制御されたパターンを含むことができる。モールド26のパターン及びフィーチャが使用されて、最終の集積化センサ10のパターン及びフィーチャを形成することになる。モールド26は、単結晶シリコン、ポリマ材料(アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド等)、金属(アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、合金等)、石英、セラミック、サファイア、窒化シリコン、又はガラスから形成することができる。
【0016】
複数の検知部材14、14
A、14
Bが形成されるとき、モールド26は、形成される検知部材14、14
A、14
B用の(すなわち、検知部材間の間隔を画定する)パターン、各検知部材14、14
A、14
Bの形成される多角形組立体16の配置用のパターン、及び各多角形組立体16の形成されるポリマベースナノ構造20用のパターンを含む。換言すれば、モールドパターンは、可撓性基材12内に形成される(多角形組立体16を含む)所望の検知部材14、14
A、14
Bの複製である。
【0017】
パターンは、モールド26内に一体的に形成することができる。一例では、パターンは、電子ビーム(eビーム)リソグラフィ又はフォトリソグラフィ及びドライエッチングによってモールド26内に形成することができる。本明細書で述べる制御されたパターンを生成するために、集束イオンビーム又は光リソグラフィもまた、モールド26を形成するために使用することができる。モールドは、シリコン基材のダイレクトエッチングによって調製することもできる。
【0018】
その後、モールド26を使用して、制御されたパターンをUV又は熱硬化性レジストに転写し、それにより、
図4Bに示すポリマリバーストーンモールド28が形成される。示すように、ポリマリバーストーンモールド28は、モールド26のパターンのネガ複製を呈する。換言すれば、多角形組立体及びポリマベースナノ構造の制御されたパターンは、ポリマリバーストーンモールド28の表面S
28に入るように延在する。したがって、ポリマリバーストーンモールド28を形成するために使用される硬化性レジストは、モールド26のパターンに一致しかつパターンを精密に再現/複製することができるのに十分な剛性を有するように選択される。
【0019】
ポリマリバーストーンモールド28を形成するのに適した紫外線硬化性レジストは、光開始剤(すなわち、UV放射の暴露に応答してラジカルを生成する化合物)、架橋剤、及びシロキサンベースバックボーンチェーン(例えば、UV硬化性アクリル化ポリ(ジメチルシロキサン)材料)を含む。適した光開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、IRGACURE(商標)184、及びIRGACURE(商標)810(BASF社(ニュージャージ州フローハム・パーク(Florham Park, NJ)所在)から市販されている)を含み、架橋剤の例は、硬化すると開口し重合する2つ以上の2重結合又は3重結合を有する種々の種を含む。一例では、少なくとも一部には、シロキサンベースバックボーンが存在するため、更なる溶剤は、こうしたUV硬化性レジストに含まれない。シロキサンベースバックボーンは、アクリル等の2重結合した末端官能基を含むことができる。ポリマリバーストーンモールド28を形成するのに適したUVレジストの成分は、光開始剤と架橋剤とシロキサンバックボーンとの所定の比で含めることができる。各成分は、レジストの総重量の0.05%〜99.9%の範囲に存在することができる。一例では、UVレジストは、ラジカル開始剤の約0.5重量%〜約2重量%、UV硬化性モノマ種(すなわち、シロキサンベースバックボーンチェーン)の約88重量%〜約92重量%、及び架橋剤の約7重量%〜約11重量%を含む。別の例では、UVレジストは、ラジカル開始剤の1重量%、UV硬化性モノマ種(すなわち、シロキサンベースバックボーンチェーン)の90重量%、及び架橋剤の9重量%を含む。硬化性レジストのために使用することができる商業的に入手可能なレジストは、NXR−2010(Nanonex社(ニュージャージ州モンマウス・ジャンクション(Monmouth Junction, NJ)所在))及びAR−UV−01(Nanolithosolution社(カリフォルニア州サン・マルコス(San Marcos, CA)所在))を含む。
【0020】
一例では、ポリマリバーストーンモールド28は、紫外線硬化性(すなわち、UV硬化性)ナノインプリントリソグラフィ(NIL)を使用して形成することができる。UV対応NILツールをこのプロセスで使用することができる。上記で述べたUV硬化性レジストは、モールド26上に(例えば、スピンコーティング、ドロップコーティング、ディップコーティング、又は同様なものによって)堆積され、その後、(ツール内で)硬化して、ポリマリバーストーンモールド28を形成することができる。別の例では、モールド26は、基材上に以前に堆積されたレジストに圧入することができ、その後、硬化が実施される。硬化条件及びパラメータが、使用されるUVレジストに少なくとも部分的に依拠することになることが理解される。モールド26がレジストに圧入される(又は、その他の方法で接触する)間に、部分的な硬化を実施することができることが更に理解される。部分的な硬化は、レジストの全てではないが一部を硬化させる。部分的に硬化した後、モールド26を取外すことができる。モールド26が取り外されると、硬化が継続し、ついには、レジストが完全に硬化して、ポリマリバーストーンモールド28を形成することができる。
【0021】
モールド26上にUV硬化性レジストを堆積させる前に、又は、モールド26をUV硬化性レジストに圧入させる前に、モールド26は、硬化が終了した後にモールド26からポリマリバーストーンモールド28を除去するのを補助するクロロシラン・カップリング剤(例えば、(3−アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン)でプライマ処理することができる(prime)。
図4Aと
図4Bとの間の矢印で示す断面図は、ポリマリバーストーンモールド28がモールド26から除去されていることを示す。
【0022】
ポリマリバーストーンモールド28は、その後、(例えば、UV対応NILツールを使用して)別のUV硬化性ナノインプリントリソグラフィプロセスで使用して、可撓性基材12内に多角形組立体16及び関連するポリマベースナノ構造20を形成することができる。この例では、ポリマリバーストーンモールド28は、(
図4Bと
図4Cとの間の矢印で示すように)可撓性基材12に圧入することができ、その後、硬化を実施することができる。硬化が終了した後、ポリマリバーストーンモールド28を除去し、可撓性基材12を、ポリマベースナノ構造20の多角形組立体16、したがって、検知部材14で制御可能にパターニングされた状態にすることができる。
【0023】
図4Dに示すように、信号増幅材料22は、少なくともポリマベースナノ構造20の表面に堆積されて、信号増幅構造(複数の場合もある)18を形成する。信号増幅材料22は、任意の適した堆積又は他のコーティング技法によって形成することができる。幾つかの例では、選択的な堆積技法を使用することができるため、材料22は、例えば、ポリマベースナノ構造20の先端だけに形成される。例として、材料22は、垂直入射の電子ビーム(eビーム)又はスパッタリングによって堆積することができる。更に他の例では、信号増幅材料22は、ポリマベースナノ構造20上にコーティングされる(例えば、銀、金、銅等の)予備成形されたナノ粒子とすることができる。こうしたナノ粒子は、約5nm〜約50nmの範囲の平均径(平均直径)を有することができる。ポリマベースナノ構造20の頂端又は先端に材料22が存在することが、例えばSERS動作中に電界を更に増強させると思われる。材料22自体はまた、堆積プロセス中に自然に形成する表面粗さを有することができる。この表面粗さは、更なる光アンテナとして働いて、各信号増幅構造18にわたってSERS活性部位を増加させる可能性がある。一例では、信号増幅材料22の厚さは、約50nm〜約80nmの範囲にある。
【0024】
本明細書で開示する方法(複数の場合もある)では、パターンが、(例えば、初期eビームリソグラフィによって)オリジナルのモールド26内に精密に画定され、ナノインプリントリソグラフィによって忠実に再現性があるため、多角形組立体16の任意の制御されたパターンを有する検知部材14、14
A、14
Bの任意のアレイを、可撓性基材12内の望ましい位置に均一に作製することができる。
【0025】
図4A〜
図4Dを参照して述べる方法(複数の場合もある)は、金属キャップ付きポリマ・ナノピラー(例えば、信号増幅構造18)の形成を示すが、この方法(複数の場合もある)は、金属リング付きポリマ・ナノピラー(
図3Aに示す)、金属コーティング式ポリマ・ナノフレーク(
図3Bに示す)、又は金属コーティング式マッシュルーム状ナノ構造(
図3Cに示す)を形成するために同様に使用することができることが理解される。金属リング付きポリマ・ナノピラーを形成するために、例えば、選択的堆積(例えば、角度付き堆積)又はシャドウマスキングを使用して、ピラー20の高さに沿う所望の位置に信号増幅材料22(例えば、予備成形された材料)を堆積することができる。他の例では、金属リング付きポリマ・ナノピラーは、信号増幅材料22が堆積されると自然に形成することができる。ポリマ・ナノフレーク又はマッシュルーム状ナノ構造を形成するために、オリジナルのシリコンモールド26は、上記で述べたピラー形状と対照的にこれらの形状に形成されることになる。これらのナノフレーク又はマッシュルーム状ナノ構造を、所定の幾何学的形状のうちの任意の幾何学的形状(例えば、3角形、4角形等)に形成して、検知部材14
A、14
Bの多角形組立体を生成することができることが理解される。
【0026】
上記で述べた方法(複数の場合もある)をロール・ツー・ロールプロセスとして実装することができることが理解される。上記で述べた方法を、熱インプリント(例えば、熱硬化性レジストを使用する)又はエンボス加工プロセスのために変更することができることが更に理解される。
【0027】
ここで
図5〜
図7を参照すると、集積化センサ10’、10’’、及び10’’’は、これらの図において14
C、14
D、14
Eとしてそれぞれ示す検知部材の異なる例を含む。これらの検知部材14
C、14
D、14
Eのそれぞれは、崩壊可能信号増幅構造18を囲むエリア30を含み、エリア30は、エリアに暴露される液滴が、崩壊可能信号増幅構造18に向かってそれ自身を位置決めすることを可能にするように修飾されている。換言すれば、検知部材14
C、14
D、14
E内でかつ検知部材14の多角形組立体16の制御されたパターンを囲むエリア30は、その表面を、崩壊可能信号増幅構造18に向かって液滴を誘導(guide)するように修飾させることができる。液滴が自分自身を崩壊可能信号増幅構造18に再位置決めすると、液滴内の分析物は、崩壊可能信号増幅構造18の外部の又はそれを囲むエリア30内に付着せず、したがって、検知中、考慮されない。むしろ、液滴は、崩壊可能信号増幅構造18を含む検知部材14
C、14
D、14
Eのエリアに存在する。したがって、液滴が蒸発してサイズが小さく(例えば、直径が約50μm〜約100μmに)なると、多角形組立体16における分析物の濃度が、初期の流体サンプルと比較して増加する。
【0028】
図5〜
図7を参照して更に述べられるように、エリア30に対して行われる修飾は化学的及び/又は物理的とすることができる。
【0029】
図5及び
図6に示す例では、エリア30の湿潤性が修飾される。より詳細には、エリア30は、崩壊可能信号増幅構造18に比べて疎水性が高く(親水性が低く)なるように修飾される。
【0030】
図5では、エリア30は、ポリマピラーのグラジエントGを含み、グラジエントGに沿ってピラー間の分離が変動する。
図5に示すように、グラジエントGは、検知部材14
Cの周辺に向かってより密になるポリマピラー32を含む。ポリマピラー32のグラジエントGは、崩壊可能信号増幅構造18に向かって線形密度等級にすることができるため、エリア30に暴露される液滴は、グラジエントGの周辺から崩壊可能信号増幅構造18に向かって移動する。
図5のグラジエントGは、ピラー32間に2つの異なる分離サイズ(すなわち、ギャップ)を含むが、ピラー32間の分離サイズが、グラジエントGに沿って3回以上変動することができることが理解される。ピラー32は、約500nmまで区分的に線形にスケールアップすることができる約50nmの最小径を有することができる。50nm径ピラー32は、約50nm〜約150nmの範囲の距離によって分離され、500nm径ピラー32は、約300nm〜約500nmの範囲の距離によって分離することができる。スケールアップされた径は、約50nm〜約500nmのどの値でもよく、これらのピラー間の距離もまた約50nm〜約500nmの範囲にある。
【0031】
エリア30内のポリマピラー32にはまた、信号増幅材料22が存在しない。
【0032】
ポリマピラー32は、所望のピラーグラジエントをエリア30に転写することができる、グラジエントテクスチャを有するモールドを使用して形成することができる。
【0033】
図6では、エリア30は、エリア30に対して複数の疎水性分子(HPM)を堆積させるか又はその他の方法で添加することによって化学的に修飾される。疎水性分子HPMが崩壊可能信号増幅構造18より疎水性が高い限り、任意の疎水性分子HPMを選択することができる。疎水性分子HPMの幾つかの例は、(C
2F
2)
nチェーン(例えば、DuPont社からのTEFLON(商標))を含むことができる。
【0034】
図7では、エリア30は、可撓性基材12の表面S
12内に形成された毛管ガイド又は溝34によって物理的に修飾される。毛管ガイド又は溝34は、エリア30内の表面S
12内にエンボス加工することができる。毛管ガイド又は溝34の形状及び寸法は、液滴が毛管ガイド又は溝34に暴露されると、液滴が崩壊可能信号増幅構造18に向かって自動的に移動するように選択される。一例では、毛管ガイド又は溝34は、10μmの最大深さを有するmm長V溝の小部分であり、深さは、崩壊可能信号増幅構造18から離れると線形に浅くなる。
【0035】
示されない集積化センサの他の例では、エリア30は、疎水性分子HPMと毛管ガイド若しくは溝34との両方又は疎水性分子HPMとポリマピラーグラジエントGとの両方を含むことができる。
【0036】
本明細書で開示される例の任意の例では、液滴流動性は、センサ10、10’、10’’、及び10’’’を加熱することによって又は低パワー超音波を印加することによって増加させることができる。加熱は、外部加熱器を使用して達成することができるか、又は、SERS光源(例えば、
図8及び
図9の参照符号38)からの光が、液滴流動性を増加させるのに適することができる。低パワー超音波は、集積化されたSiベースPZT((PbZr
xTi
1−x)O
3)超音波変換器を使用して印加することができる。一例では、超音波変換器は、シリコン基材に集積化することができる。例えば、圧電素子は、シリコン基材のエッチングされたフィーチャ内へのPZTの堆積によって形成することができる。超音波変換器は、分注器36と光源38との間に固定要素として動作可能に位置決めすることができる。基材12が検知動作中に移動すると、超音波変換器は、分注器36から分注されたサンプルを励起するように動作することができる。
【0037】
ここで
図8を参照すると、集積化センサ10の例を組込む検知システム100の例が示される。センサ10のこの例は、可撓性基材12の幅に沿う4つの列及び可撓性基材12の長さに沿う複数の行で形成された複数の検知部材14を含む。明確にするために図示しないが、検知部材14のそれぞれが多角形組立体16の制御されたパターンを含み、
図5、
図6、又は
図7を参照して述べた修飾されたエリア30を含むことができることが理解される。
【0038】
システム100では、可撓性基材12が、検知システム100のコンポーネント(例えば、分注器又は分注システム36、レーザ源38、及び検出器40)に関して位置決めされるため、分注、問い合わせ、及び検出は、可撓性基材12がそれぞれのコンポーネント36、38、及び40を通過して割出し送りされている間に、所望の順序で起こる可能性がある。例えば、可撓性基材12は、1つ又は複数のサンプルが、問い合わせ及び検出の前に検知部材(複数の場合もある)14上に導入されるように、分注器36に対して位置決めすることができる。分注システム36は、検知部材の1つ又は複数にサンプルを同時に分注することができる(例えば、単一行の各部材14がサンプルを同時に受取ることができる)及び/又は順次に分注することができる(例えば、1つの検知部材14が1度に1サンプルを受取る、又は、1つの行が1度に1サンプルを受取る、等)。分注システム36の例は、インクジェット技術、ピペット操作、又は同様なものに基づく自動化分注器を含む。手動分注器もまた使用することができる。分注システム36が、同じ溶液を全ての検知部材14に、又は、異なる溶液を検知部材14の2つ以上に分注するように動作可能とすることができることが理解される。
【0039】
レーザ源38は、狭いスペクトル線幅を有する光源とすることができ、可視域内又は近赤外域内の単色光ビームLを放出するように選択される。レーザ源38は、分注システム36が配置される場所から下流で、可撓性基材12が割出し送りされる方向に位置決めされる。分注システム36に対する光源38の位置決めは、液滴流動性を増加させる熱を供給するのに十分に接近しながら、分注された液滴が蒸発し始めることを可能にするのに十分に遠くすることができる。例えば、レーザ源38は、基材12及び液滴に熱を供給し、それにより、液滴の加熱、液滴の乾燥、及び後続の、多角形組立体16の表面を湿潤化することによって生成される毛管力によるピラー崩壊を促進することができる。レーザ源38は、定常状態レーザ又はパルス駆動式レーザから選択することができる。レーザ源38は、光Lを種々の検知部材14上に投影するように位置決めされる。
図8に示す例は、暴露される検知部材14の全体の行を光Lに同時に暴露するVCSEL(垂直共振器面発光)である。他の例では、レーザ源38は、1度に単一検知部材14に問い合わせるか又は検知部材14の複数行に同時に問い合わせるように選択することができる。したがって、並列検知を実施することができる。レンズ(図示せず)及び/又は他の光学機器(例えば、光学顕微鏡)を使用して、レーザ光Lを所望の方法で方向付ける(例えば、屈曲させる)ことができる。一例では、レーザ源38は、チップ上に一体化される。レーザ源38はまた、電源(図示せず)に動作可能に接続することができる。
【0040】
システム100の動作中、可撓性基材12は、分配点42から受取り点44まで割出し送りすることができる。可撓性基材12が割出し送りされるにつれて、分注システム36は、1つ又は複数のサンプル(関心の分析物(複数の場合もある)を含む)を所望の検知部材14内に分注するように動作することができる。分注システム36は、各行内に、一つおきの行内に、又は任意の他の所望の構成で分注するようプログラムすることができる。
【0041】
可撓性基材12が割出し送りされるにつれて、分注されたサンプルは蒸発し始め、それにより、サンプルに暴露された各検知部材14内の信号増幅構造18を崩壊させ、崩壊した構造内に分析物を取込む。サンプルを受取った検知部材14が光源38に隣接するとき、レーザ源38は、それぞれの検知部材14に向かって光Lを放出するように動作することができる。検知部材14の信号増幅構造18内に捕捉された、又はそこで若しくはその近くで濃縮した分析物分子は、光/電磁放射Lと相互作用し、光/電磁放射Lを散乱させる(散乱光/電磁放射がRで表示されることに留意されたい)。分析物分子と信号増幅構造18の信号増幅材料22との間の相互作用(
図8に示す)は、ラマン散乱放射Rの強度の増加をもたらす。ラマン散乱放射Rは、光検出器40に向けて転送され、光検出器40は、任意の反射成分及び/又はレイリー成分を光学的にフィルタリング除去し、その後、入射波長に近い各波長についてラマン散乱放射Rの強度を検出することができる。
【0042】
可撓性基材12の割出し送りを連続的とし、SERS分析が所望の期間にわたって中断なしに起こるようにすることもできるし、割出し送りをパルス状にし、割出し送り及びSERS分析が所定の時間の間に起こり、その後、割出し送りもSERS分析も起こらない別の所定の時間が続くようにすることもできる。検知システム100を動作させるエレクトロニクスは、所望の連続的又は周期的モニタリングを実施するようにプログラムすることができる。検知システム100を使用して、要求に応じて検知動作を実施することができる。
【0043】
更に、
図8に示すように、システム100及びセンサ10は、或る行内への分注が、分注されたサンプルを既に受取った別の行において問い合わせ及び検出が起こる間に起こることを可能にする。この構成は、連続的モニタリング用の能力に対する寄与が生じることを可能にする。図示しないが、システム100が、更なる可撓性基板12及び未使用の検知部材14を放出するために分配点(例えば、スプール)42を回転させる電子的機構又は機械的機構を含むことができ、一方、受取り点(例えば、スプール)44が、同じ方向に回転して、集積化センサ10の使用済み部分を巻上げることが理解される。一例では、連続的で均質の割出し送りが実施される。別の例では、割出し送り中に、或るカタロギング情報を有する新しいデータセットのヘッダを書込むことができる。
【0044】
図示しないが、システム100が検知部材14と光検出器40との間に位置決めされた光フィルタリング要素を含むことができることが理解される。この光フィルタリング要素を使用して、任意のレイリー成分及び/又は所望の領域のものでない任意のラマン散乱放射Rを光学的にフィルタリング除去することができる。システム100はまた、検知部材14と光検出器40との間に位置決めされた光分散要素を含むことができる。光分散要素は、ラマン散乱放射Rを異なる角度で分散させることができる。光フィルタリング及び光分散要素は、同じデバイスの一部とすることもできるし、別個のデバイスとすることもできる。
【0045】
ハードウェア46、46’、プログラミング48、又はその組合せはまた、分注システム36、レーザ源38、及び光検出器40に動作可能に接続されて、これらのコンポーネント36、38、40を制御することができる。図示しないが、ハードウェア46、46’及び/又はプログラミング48はまた、集積化センサ10を移動させるために、分配点42及び受取り点44に動作可能に接続することができる。
【0046】
同じ又は異なるハードウェア46、46’は、光検出器40からの読み値を受信し、同じ又は異なる関連プログラミング48にラマンスペクトル読出しを生成させることができ、その読出しのピーク及び谷が、その後、分析物分子を分析するために利用される。ハードウェア46、46’は、後続の取出し、分析、レビュー、ライブラリ又はデータベースの生成のためにハードウェア46、46’に送信されるデータを記憶することができるメモリデバイス(複数の場合もある)を含むことができる。
【0047】
ハードウェア46及び/又はプログラミング48は、コンポーネント36、38、40に直接接続されるデバイス52の一部とすることができる。更に又は代替的に、ハードウェア46及び/又はプログラミング48は、クラウドコンピューティングシステム54の一部とすることができる。ローカルハードウェア46及び/又は関連するプログラミング48は、分注システム36、レーザ源38、及び光検出器40を動作させるために望ましい場合があり、クラウドコンピューティングシステム54は、データを記憶し、こうしたデータを用いてアプリケーションを実施するために望ましい場合がある。
【0048】
クラウドコンピューティングシステム54は、特定のコンピューティングタスク(例えば、システム100のコンポーネントを実行すること、検出器40からデータを受信すること、ユーザが、記憶されたSERSデータ、統計的情報等にアクセスし、及び/又はそれを操作することを可能にすること、及び/又は、ユーザが、前データ処理及び後データ処理、異常検出、緊急事態/破壊の傾向把握(trend emergence/breakdown)、データ内のジャンプ等を実施することを可能にすること)を実施するようネットワークを通じて動作可能に結合された複数のハードウェア46、46’を含むコンピューティングシステムである。クラウドハードウェアは、物理的ハードウェア46(例えば、プロセッサ、サーバ、メモリ等)、ソフトウェア(すなわち、関連するプログラミング48)、及び仮想ハードウェア46’の組合せを含むことができる。一例では、クラウド54は、(i)アプリケーションクライアントサーバ56を通して複数のユーザから要求を受信し、(ii)要求応答を返送するように構成することができる。本明細書に開示される複数の例では、要求は、SERSデータの取出し、ユーザの記憶データを利用するSERSライブラリの構築等に関連することができる。
【0049】
物理的ハードウェア46は、プロセッサ、メモリデバイス、及びネットワーキング機器を含むことができる。仮想ハードウェア46’は、物理的ハードウェア46によって処理され、特定のソフトウェアをエミュレートするように設計されるソフトウェアのタイプである。例えば、仮想ハードウェア46’は、仮想マシン、すなわち、物理的マシンのようなアプリケーションの実行をサポートするコンピュータのソフトウェア実装を含むことができる。本明細書で使用されるアプリケーションは、特定のタスクを実行することを容易にするためのコンピューティングシステムによって実行可能な特定の命令のセットを指す。例えば、アプリケーションは、特定の機能、例えば、以前に保存したSERSデータを取出すことをユーザに提供するウェブベースツールの形態をとることができる。ソフトウェア48は、仮想ハードウェア46’にアプリケーションを実行させるように構成される命令及びデータのセットである。したがって、クラウド54は、検知システム100に関連する特定のアプリケーションを、クライアントデバイス56を通してユーザに利用可能にすることができる。
【0050】
ハードウェア46、46’、プログラミング48、又はその組合せは、種々の方式で実装することができる。例えば、プログラミング48は、有形の非一時的なコンピュータ可読メモリ媒体上に記憶されたプロセッサ実行可能命令であり、ハードウェア46は、これらの命令を実行するためのプロセッサとすることができる。メモリ媒体(例えば、ハードドライブ、サーバによって維持されるメモリ、CD、DVD、又はフラッシュドライブ等の可搬型媒体等)は、プロセッサによって実行されると、検出器40からメモリ媒体に送信されるデータにユーザがアクセスすることを可能にする命令を記憶するのに使用することができる。一例では、メモリ媒体は、プロセッサと同じデバイス内に一体化されるか、又は、メモリ媒体は、そのデバイス及びプロセッサと別個であるが、それらにアクセス可能とすることができる。
【0051】
ここで
図9を参照すると、検知システム100’の別の例が示される。この例では、集積化センサ10は、カセット58に組込まれる。カセット58は、カセット58内に集積化センサ10を含むハウジングを含む。ハウジングは、例えばポリマ材料を含む任意の適した材料から形成することができる。
【0052】
カセット58はまた、カセット58内に分配点/スプール42及び受取り点/スプール44を含む。集積化センサ10は、最初に、分配点/スプール42に巻付けられ、受取り点/スプール44に同様に取付けられる。割出し送りされると、集積化センサ10は、分配点42から受取り点44まで移動する。カセットはまた、動作中に分配点/スプール42から受取り点/スプール44までの可撓性基材12の割出し送りを補助するローラ60を含むことができる。カセット58は、ハウジング内に穴を含み、これらの穴は、分配点/スプール42から受取り点/スプール44まで可撓性基材12を進ませるために、それぞれの回転プロングが、分配点/スプール42及び受取り点/スプール44に係合することを可能にする。
【0053】
カセット58はまた、カセット58内に形成されたアパーチャ62を含むことができる。アパーチャ62は、ハウジングの一方の側面に形成されて、集積化センサ10が割出し送りされるにつれて、割出し送りされた可撓性基材12及びその上に形成された検知部材14を、検知システム100’の種々のコンポーネント、例えば36、38、40等に暴露させる。所望の数の検知部材14を暴露するのに十分に大きい1つのアパーチャ62を含めることもできるし、
図9に示すように、複数のアパーチャ62を、検知システム100’のそれぞれのコンポーネント、例えば36、38、40等の向かいに形成することもできる。
【0054】
図示しないが、カセット58を受取り、カセット58を動作位置に入るように及び動作位置から出るように移動させるスロットを有するハウジングを、検知システム100’自体が含むことができることが理解される。システム100’のこうしたハウジングはまた、集積化センサ10を適切な方法で進め、検知動作を実施することが望ましいときに、例えば分注システム36、レーザ源38、及び光検出器40を始動させる機械的及び/又は電気的コンポーネントを含むことができる。
【0055】
図8を参照して述べたように、分注器36、レーザ源38、及び検出器40は、分注、次に、問い合わせ、検出を、この順序で行うように位置決めされる。図示しないが、システム100’のコンポーネントを動作させ、及び/又は検出器40から受信されるデータを記憶するためのハードウェア46、46’及び/又はプログラミング48を、この検知システム100’が同様に含むことができることが理解される。
【0056】
検知システム100’のこの例はまた、圧力検知システム64及び温度分析システム66等の他のシステムを含む。圧力検知システム64はシステム100’の圧力を測定し、温度分析システム66はシステム100’の温度を測定する。圧力検知システム64及び/又は温度分析システム66は、SERSコンポーネントによって行われる測定を補足する環境特性を測定する別個のユニットである。システムエラー、例えば、分注器36の誤動作をデバッグするのに役立つ、流量センサ等の他の検知システムを含めることができると思われる。これらの更なるシステムが、SERSコンポーネント(例えば、分注器36、レーザ源38、及び検出器40)に加えて別個のコンポーネントとして検知システム100’に一体化されることが理解される。これらの更なるシステムは、SERSに加えて他の望ましいプロセスを実施するのに有用とすることができる。これらの更なるセンサが、どんなハードウェア46、46’、及び/又はプログラミング48がシステム100’を動作させるために利用されてもそのハードウェア46、46’、及び/又はプログラミング48に動作可能に結合することができることが理解される。
【0057】
本明細書で開示される集積化センサ10、10’、10’’、及び10’’’を使用して、1つのサンプル又は複数のサンプルの連続的又は周期的モニタリングを実施することができる。可撓性基材12上の各検知部材14内の多角形組立体16の制御されたパターンは、ホットスポット内に分析物を捕捉して、SERS場及び信号を増強することが可能である独自の信号増幅構造18を、大きなエリアにわたって提供する。
【0058】
本明細書で提供される範囲が、述べた範囲及び述べた範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことが理解される。例えば、約400nm〜約600nmの範囲が、約400nm〜約600nmの明示的に挙げた限界だけでなく、415nm、480nm、550nm等の個々の値、及び、約425nm〜約500nm、約450nm〜約575nm等の部分範囲も同様に含むと解釈されるべきである。更に、「約(about)」が或る値を述べるために利用されるとき、これは、述べた値からのわずか(+/−10%まで)の変動を包含することが意味される。
【0059】
幾つかの例を詳細に説明したが、当業者には、開示した例を変更することができることが明らかとなろう。したがって、上述した説明は、非限定的なものとみなされるべきである。