(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に、本発明の一実施の形態に係る積層樹脂構造体を示す。図示する積層樹脂構造体1は、フレキシブル基材2に銅回路3が配設されたフレキシブルプリント配線板上に、それぞれ接着層(A)と保護層(B)が順次積層された二層構造を有する。
【0017】
接着層(A)は、フレキシブルプリント配線板に保護層(B)を接着するための内層であり、カーボンブラック以外の着色剤を含む。接着層(A)は、樹脂組成物(A1)により形成され、樹脂組成物(A1)は、感光性でも熱硬化性でもよい。感光性樹脂組成物としては、現像型でも非現像型でもよい。
ここで、接着層(A)は、遮光性を有することが好ましく、例えば、黒色を呈することがより好ましいが、青色、赤色などの他の色でも良い。
【0018】
一方、保護層(B)は、外層であり、接着層(A)によりフレキシブルプリント配線板に積層される。保護層(B)は、樹脂組成物(A1)と異なる樹脂組成物(B1)により形成され、樹脂組成物(B1)は、感光性でも熱硬化性でもよい。感光性樹脂組成物としては、現像型でも非現像型でもよい。
樹脂組成物(A1)と(B1)との組み合わせとしては、
熱硬化性樹脂組成物(A1)と熱硬化性樹脂組成物(B1)、
熱硬化性樹脂組成物(A1)と感光性樹脂組成物(B1)、
感光性樹脂組成物(A1)と熱硬化性樹脂組成物(B1)、
感光性樹脂組成物(A1)と感光性樹脂組成物(B1)の組合せが挙げられる。
【0019】
特に、本発明の積層樹脂構造体の接着層(A)と保護層(B)とが共に、感光性樹脂組成物(A1)と(B1)から形成されている場合、光照射により接着層(A)と保護層(B)のパターニングが可能となり、微細なパターンを形成できるため好ましい。
ここで、パターニングとは、光照射された部分が、現像不可能状態から現像可能状態に変化すること(ポジ型)、又は、現像可能状態から現像不可能状態に変化すること(ネガ型)を言う。また、パターンの形成とは、光照射部分が現像されて未照射部分がパターン状に残ること(ポジ型)、又は、未照射部分が現像されて光照射部分がパターン状に残ること(ネガ型)を言う。ここで、パターンは、パターン状の硬化物、すなわち、保護膜を意味する。
【0020】
樹脂組成物(A1)と(B1)は、現像型感光性樹脂組成物であることが好ましい。現像型感光性樹脂組成物(A1)と(B1)は、ポジ型でもネガ型でもよい。
ポジ型感光性樹脂組成物としては、光照射前後の極性変化により、光照射部(露光部ともいう。)が現像液により溶解するものであれば、公知慣用のものを用いることができる。例えば、ジアゾナフトキノン化合物とアルカリ可溶性樹脂を含有する組成物が挙げられる。
【0021】
ネガ型感光性樹脂組成物としては、光照射部が現像液に対して、難溶となるものであれば公知慣用のものを利用できる。例えば、光酸発生剤とアルカリ可溶性樹脂を含有する組成物、光塩基発生剤とアルカリ可溶性樹脂を含有する組成物、光重合開始剤とアルカリ可溶性樹脂を含有する組成物などが挙げられる。
【0022】
現像型感光性樹脂組成物(A1)と(B1)の組み合わせとしては、ポジ型感光性樹脂組成物(A1)とポジ型感光性樹脂組成物(B1)、ネガ型感光性樹脂組成物(A1)とネガ型感光性樹脂組成物(B1)の組み合わせであればいずれでもよい。
例えば、光塩基発生剤を含有する組成物(A1)と光塩基発生剤を含有する組成物(B1)、
光塩基発生剤を含有する組成物(A1)と光重合開始剤を含有する組成物(B1)、
光重合開始剤を含有する組成物(A1)と光塩基発生剤を含有する組成物(B1)、
光重合開始剤を含有する組成物(A1)と光重合開始剤を含有する組成物(B1)、
の組合せ等が挙げられ、組み合わせは、実施形態に応じて選択できる。
【0023】
本発明の積層樹脂構造体は、フレキシブルプリント配線板の用途であるため、硬化時のゆがみ、反りを小さくすることができるものが好ましい。そのため、上記光塩基発生剤を含有する組成物が好ましく、そのような組成物としては、例えば、光塩基発生剤と熱硬化性樹脂を含有し、付加反応により硬化する組成物も含まれる。
【0024】
なお、樹脂組成物(A1)及び樹脂組成物(B1)のいずれか一方のみが光酸発生剤、光塩基発生剤、又は光重合開始剤を有し、他方が、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び光重合開始剤のいずれも含有しない構成でもよい。この場合、一方の組成物に含まれる光酸発生剤、光塩基発生剤、又は光重合開始剤により他方の組成物を硬化すればよい。
積層樹脂構造体のパターンを形成する方法は、有機溶剤又はアルカリ水溶液によって現像する方法でも、スクリーン印刷などによって直接パターンを形成する方法でもよい。
【0025】
非現像型感光性樹脂組成物としては、光重合開始剤とラジカル重合性成分を含有する組成物などが挙げられる。熱硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂を含有する組成物が挙げられる。
【0026】
[着色剤]
接着層(A)に配合する着色剤は、カーボンブラック以外であればよく、1種又は2種以上の着色剤の組合せとすることができる。着色剤は、接着層(A)に遮光性を付与するものが好ましく、例えば、黒色着色剤が好ましいが、その他の色でもよい。着色剤としては、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0027】
接着層(A)に配合される着色剤の配合量は特に限定されないが、有機溶剤を除く接着層(A)の全成分中に、それぞれ、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは3〜60質量%、さらに好ましくは5〜40質量%とする。
【0028】
黒色着色剤としては、黒鉛系、酸化鉄系、アントラキノン系、酸化コバルト系、酸化銅系、マンガン系、酸化アンチモン系、酸化ニッケル系、ペリレン系、硫化モリブデンや硫化ビスマスおよびチタンブラックが例示できる。電気絶縁性の観点から、特に好ましいのは、ペリレン系の着色剤である。
【0029】
また、接着層(A)は、ペリレン系着色剤、該ペリレン系着色剤と補色関係にある着色剤の組み合わせにより、黒色を呈することが好ましい。
ペリレン系着色剤は上記カーボンブラックに比べて紫外線領域の吸収が少なく、光照射によるパターニングにおいて、接着層(A)の解像性を向上させることができる。また、ペリレン系着色剤は着色力が充分であり、補色着色剤と混合して用いられることにより、解像性と着色力に優れた黒色の接着層(A)を形成できる。
ペリレン系着色剤としては、慣用公知のものを使用することができ、ペリレン系着色剤であれば顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0030】
ペリレン系着色剤には緑色、黄色、橙色、赤色、紫色、黒色などの色を示すものがあり下記のようなカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)番号がつけられているものを挙げることができる。
−緑色:Solvent Green 5
−橙色:Solvent Orange 55
−赤色:Solvent Red 135, 179; Pigment Red 123, 149, 166, 178, 179, 190, 194, 224;
−紫色:Pigment Violet 29
−黒色:Pigment Black 31, 32
上記以外のペリレン系着色剤も使用することができ、例えば、カラーインデックスの番号はないが近赤外線透過黒色有機顔料として知られているBASF社のLumogen(登録商標)Black FK4280、Lumogen Black FK4281、集光性蛍光染料として知られているLumogen F Yellow 083、Lumogen F Orange 240、Lumogen F Red 305、Lumogen F Green 850等も他のペリレン系化合物と同様に紫外線領域の吸収が少なく、着色力が高いため好適に使用することができる。
【0031】
(補色着色剤)
本発明においてペリレン系着色剤と組み合わせて用いられる補色着色剤について以下に説明する。まず、本発明における補色関係について説明する。
着色剤はカラーインデックスの通りの色彩を呈していない場合もあるため、JISZ8729に規定される方法により感光性樹脂組成物の硬化塗膜の外観色調を測定・表示し、L*a*b*表色系中の色彩を示すa*値およびb*値を座標軸(
図4を参照)で確認し、ペリレン系着色剤との組み合わせで得られる硬化塗膜の(a*値,b*値)を(0,0)に限りなく近づけるための着色剤を補色関係にある着色剤として選定する。ここで、硬化塗膜の膜厚は、黒色を呈すれば、限定されない。
また、(0,0)に限りなく近い(a*値,b*値)としては、a値及びb値がそれぞれ−5〜+5の範囲であることが好ましく、−2〜+2の範囲であることがより好ましい。また、補色関係にある着色剤としてはペリレン系着色剤でもペリレン系着色剤以外の着色剤でもよい。
【0032】
ペリレン系着色剤と補色関係にある着色剤としては、ペリレン系着色剤との組合せによって、互いの着色剤の表色系a*値およびb*値が、それぞれ0に近づくものであればいずれの着色剤であってもよく、以下の着色剤が挙げられる。
より好ましいペリレン系着色剤との組合せとしては、Pigment Red 149,178,179と緑色アントラキノン系着色剤(Solvent Green 3、Solvent Green 20、Solvent Green 28等)の組合せであり、ペリレン系着色剤同士の混色(組合せ)であれば、赤色ペリレン系着色剤(Pigment Red 149,178,179)と黒色ペリレン系着色剤(Pigment Black 31、32)との組合せと、黒色ペリレン系着色剤(Pigment Black 31、32)と同じく黒色ペリレン系着色剤(Lumogen(登録商標)Black FK4280.4281)との組合せである。
【0033】
また、接着層(A)は、黄色着色剤と紫色着色剤の組合せ、黄色着色剤と青色着色剤と赤色着色剤の組合せ、緑色着色剤と紫色着色剤の組合せ、緑色着色剤と赤色着色剤の組合せ、黄色着色剤と紫色着色剤と青色着色剤の組合せ、及び緑色着色剤と赤色着色剤と青色着色剤の組合せの群から選択されたいずれかの組合せにより黒色を呈していてもよい。その他、紫色着色剤、橙色着色剤、茶色着色剤などを組み合わせてもよい。
【0034】
上記補色関係の着色剤を使用する場合、黒色着色剤を含有する場合に比べて光の吸収量が少なくて済む。このため、感光性樹脂組成物においては、黒色度を高めるために着色剤の含有率を高めても、光硬化が充分に進み、その光感度および解像性を黒色着色剤の場合よりも高めることができる。その結果、高密度化および高細線化のフレキシブルプリント配線板に有効に適用することができる。
【0035】
青色着色剤としては、フタロシアニン系、アントラキノン系等があり、ピグメント(Pigment)、ソルベント(Solvent)に分類されている化合物などがある。これ以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
赤色着色剤としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがある。
黄色着色剤としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等がある。
緑色着色剤としては、フタロシアニン系、アントラキノン系がある。これ以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0036】
紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤としては、具体的には、Pigment Violet 19, 23, 29, 32, 36, 38, 42; Solvent Violet 13, 36; C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73;C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0037】
保護層(B)は、着色剤を含んでもよいが、カーボンブラックを含まないことが好ましい。保護層(B)に配合される着色剤の配合量は、本発明の効果を損なわない程度に含んでもよく、例えば、有機溶剤を除く保護層(B)の全成分中に、好ましくは、5質量%未満、より好ましくは、4質量%以下、さらにより好ましくは、3質量%以下である。
保護層(B)における着色剤の含有量が少ないことにより、表面欠損部が形成されないため、Z軸方向の絶縁性に優れる。
本発明では、接着層(A)がカーボンブラック以外の着色剤を含み、好ましくは、保護層(B)が着色剤を含まない、又は、ほとんど含まないことにより、Z軸方向の絶縁性に優れ、かつ、遮光性に優れる。
【0038】
本発明の積層樹脂構造体の全膜厚は、100μm以下が好ましく、4〜80μmの範囲がより好ましい。例えば積層樹脂構造体が2層である場合、接着層(A)は、例えば、3〜60μmである。このような厚みとすることにより、接着層(A)が回路に隙間なく密着できる。一方、保護層(B)は、例えば、1〜20μmの厚さである。
本発明の積層樹脂構造体の接着層(A)は、保護膜の回路追従性及び屈曲性の観点より保護層(B)よりも厚い方が好ましい。
【0039】
積層樹脂構造体は、フレキシブルプリント配線板の屈曲部及び非屈曲部のうちの少なくともいずれか一方に用いることができ、具体的には、フレキシブルプリント配線板のカバーレイ及びソルダーレジストのうちの少なくともいずれか一方を形成するために用いることができる。非屈曲部としては、チップ実装部などが挙げられる。
【0040】
図示する例では二層構造であるが、本発明の積層構造体においては二層に限定されず、三層以上であってもよい。ただし、最外層は保護層(B)とする。
【0041】
図2は、
図1に示すフレキシブルプリント配線板上の積層樹脂構造体1にパターンを形成した状態を示す断面である。パターン形成は、樹脂の種類に応じて打ち抜き法、パターン印刷法、有機溶剤による現像法、または、アルカリ現像法を採用することができる。
【0042】
これまでのように遮光性を高めるために外層にカーボンブラックを配合して着色した場合には破壊電圧が低下して絶縁破壊が生じてしまっていたが、本発明のような積層構造とすることにより破壊電圧の低下をきたすことなく良好に遮光性を高めることが可能となる。
【0043】
(ドライフィルム)
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持体)と、該キャリアフィルム上に形成された上記本発明の積層樹脂構造体とを備え、積層樹脂構造体の少なくとも片面が、キャリアフィルムで支持又は保持されている。
【0044】
ドライフィルムの製造は、樹脂組成物(B1)を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、乾燥後、保護層(B)を形成する。そして、同様にして該保護層(B)上に、樹脂組成物(A1)により接着層(A)を形成し、本発明のドライフィルムを得ることができる。
【0045】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。キャリアフィルム上に積層樹脂構造体を形成した後、さらに、剥離可能なカバーフィルムを積層してもよい。
【0046】
(フレキシブルプリント配線板)
本発明のフレキシブルプリント配線板は、積層樹脂構造体をフレキシブルプリント配線板上で硬化してなる保護膜を有するものである。保護膜は、カバーレイ及びソルダーレジストのうちの少なくともいずれか一方であることが好ましい。
【0047】
<積層樹脂構造体の製造方法>
フレキシブルプリント配線板上に、接着層(A)と保護層(B)を形成する方法としては、本発明のドライフィルムを用いるラミネート法でも、樹脂組成物(A1)、(B1)をそのまま使用する塗布法でもよい。ラミネート法では、ラミネーター等により接着層(A)が、フレキシブルプリント配線板の屈曲部及び非屈曲部のうちの少なくともいずれか一方と接触するようにフレキシブルプリント配線板上に貼り合わせる。
【0048】
塗布法としては、例えば、スクリーン印刷法により、フレキシブルプリント配線板上に樹脂組成物(A1)と樹脂組成物(B1)をそれぞれ順に塗布、乾燥して接着層(A)と保護層(B)を形成する。
【0049】
なお、フレキシブルプリント配線板に樹脂組成物(A1)を塗布、乾燥して接着層(A)を形成し、その接着層(A)上に、樹脂組成物(B1)からなるフィルムをラミネートして保護層(B)を形成する方法でもよい。
逆に、樹脂組成物(A1)からなるフィルムをフレキシブルプリント配線板にラミネートすることにより接着層(A)を形成し、その接着層(A)上に、樹脂組成物(B1)を塗布、乾燥することにより保護層(B)を形成してもよい。
【0050】
<熱硬化性積層樹脂構造体を用いたフレキシブルプリント配線板の製造方法>
熱硬化性積層樹脂構造体としては、樹脂組成物(A1)及び樹脂組成物(B1)のうちの少なくともいずれか一方が熱硬化性樹脂組成物であればよい。例えば、スクリーン印刷法等によりフレキシブルプリント配線板上に熱硬化性樹脂組成物(A1)を塗布及び乾燥して、
図3のように、接着層(A)のパターンを形成する。次に、接着層(A)のパターンに対応するように、スクリーン印刷法等により熱硬化性樹脂組成物(B1)を塗布、乾燥して、
図2のように、保護層(B)のパターンを形成する。これにより、熱硬化性積層樹脂構造体のパターンを形成する。
次に、熱硬化性積層樹脂構造体を、130〜200℃で30〜120分間加熱することで、熱硬化させて、保護膜のパターンを形成する。
【0051】
<非現像型感光性積層樹脂構造体を用いたプリント配線板の製造方法>
非現像型感光性積層樹脂構造体としては、樹脂組成物(A1)及び樹脂組成物(B1)のうちの少なくともいずれか一方が非現像型感光性樹脂組成物であればよい。
例えば、非現像型感光性樹脂組成物(A1)及び非現像型感光性樹脂組成物(B1)を用いて、フレキシブルプリント配線板上に上記塗布法などにより、接着層(A)と保護層(B)を有する非現像型感光性積層樹脂構造体を形成する。その後、接触式又は非接触方式により、非現像型感光性積層樹脂構造体に紫外線などの光を照射し、硬化させて、硬化膜のパターンを形成する。また、光硬化後に加熱しても良く、光照射と加熱を同時に行ってもよい。
【0052】
<光重合開始剤を含有するネガ型積層樹脂構造体を用いたフレキシブルプリント配線板の製造方法>
光重合開始剤を含有するネガ型積層樹脂構造体の場合、樹脂組成物(A1)及び樹脂組成物(B1)のうちの少なくともいずれか一方が光重合開始剤を含有していればよい。
例えば、光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物(A1)及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物(B1)を用いて、フレキシブルプリント配線板上に上記ラミネート法などにより、接着層(A)及び保護層(B)を有するネガ型積層樹脂構造体を形成する。その後、接触式又は非接触方式により、ネガ型積層樹脂構造体に、ネガ型のパターン状に光を照射して、未照射部を現像し、パターンを一括して形成して保護膜を得る。さらに熱硬化性成分を含有している組成物の場合、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた保護膜を形成することができる。ネガ型積層樹脂構造体が光重合開始剤を含有するため、ラジカル重合により光照射分が硬化する。
【0053】
<光塩基発生剤を含むネガ型積層樹脂構造体を用いたフレキシブルプリント配線板の製造方法>
光塩基発生剤を含有するネガ型積層樹脂構造体の場合も、樹脂組成物(A1)及び樹脂組成物(B1)のうちの少なくともいずれか一方が光塩基発生剤を含有していればよい。例えば、光重合開始剤を含有するネガ型積層樹脂構造体の形成方法と同様にして、光塩基発生剤を含有する接着層(A)及び光塩基発生剤を含有する保護層(B)を有するネガ型積層樹脂構造体を形成する。その後、ネガ型積層樹脂構造体に、ネガ型のパターン状に光を照射して光塩基発生剤から塩基を発生させて光照射部を硬化した後、現像により未照射部を除去して保護膜のパターンを形成する。ここで、光照射後、積層樹脂構造体を加熱することが好ましい。
そして、現像後に、さらに、保護膜の絶縁信頼性を向上させるために紫外線を照射してもよい。また、現像後に、加熱(ポストキュア)してもよく、現像後に紫外線照射と加熱をともに行ってもよい。
【0054】
<光酸発生剤を含有するネガ型積層樹脂構造体を用いたフレキシブルプリント配線板の製造方法>
光酸発生剤を含有するネガ型積層樹脂構造体の場合も、樹脂組成物(A1)及び樹脂組成物(B1)のうちの少なくともいずれか一方が光酸発生剤を含有していればよい。例えば、光重合開始剤を含有するネガ型積層樹脂構造体の形成方法と同様にして、光酸発生剤を含有する接着層(A)及び光酸発生剤を含有する保護層(B)を有するネガ型積層樹脂構造体を形成する。その後、ネガ型積層樹脂構造体に光を照射して、光酸発生剤から酸を発生させて、光照射部を硬化する。その後、上記同様の現像方法より、保護膜のパターンを形成する。
【0055】
<ポジ型積層樹脂構造体を用いたフレキシブルプリント配線板の製造方法>
ポジ型積層樹脂構造体の場合も、樹脂組成物(A1)及び樹脂組成物(B1)のうちの少なくともいずれか一方がポジ型組成物であればよい。例えば、光重合開始剤を含有するネガ型積層樹脂構造体の形成方法と同様にして、フレキシブルプリント配線板上に、ポジ型接着層(A)及びポジ型保護層(B)を有するポジ型積層樹脂構造体を形成する。その後、ポジ型積層樹脂構造体に、パターン状に光を照射する。光照射後、上記同様の現像方法により、光照射部を除去して、保護膜のパターンを形成する。
【0056】
上記光照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。
【0057】
直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜450nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜1500mJ/cm
2の範囲内とすることができる。現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1,2、比較例1〜4)
着色剤とそれ以外の各種の成分を下記表1中に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、感光性樹脂組成物(A1)と感光性樹脂組成物(B1)をそれぞれ調製した。
【0060】
【表1】
*1:BASF社製ペリレンブラック顔料
*2:BASF社製ペリレン系黒色剤
【0061】
(感光性樹脂組成物(A1))
カルボン酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬社製):100質量部
トリメチロールプロパンEO 変性トリアクリレート(東亞合成社製):16質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:900)(三菱化学社製):28質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:500)(三菱化学社製):18質量部
アミノアルキルフェノン光重合開始剤(BASFジャパン社製):10質量部
エチルメチルイミダゾール(四国化成工業社製):1質量部
【0062】
(感光性樹脂組成物(B1))
カルボン酸変性クレゾールノボラック型エポキシアクリレート(DIC社製):100質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製):22質量部
ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂(DIC社製):23質量部
テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製):17質量部
アミノアルキルフェノン光重合開始剤(BASFジャパン社製):10質量部
ジエチルチオキサントン増感剤(日本化薬社製):1質量部
硫酸バリウム(堺化学工業社製):100質量部
【0063】
(実施例1,2、及び比較例4)
キャリアフィルム上に感光性樹脂組成物(B1)を塗布、乾燥して保護層(B)を形成した後、その表面に、感光性樹脂組成物(A1)を塗布、乾燥して接着層(A)を形成しドライフィルムを得た。そのドライフィルムをフレキシブルプリント配線板に120℃で圧着して積層樹脂構造体を形成した。(A)接着層の厚さは、30μmであり、(B)保護層の厚さは、10μmである。
そして、積層樹脂構造体に対して、メタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW-680−GW20)を用いてネガマスクを介して露光量500mJ/cm
2で光照射し、現像して保護膜を形成した。
【0064】
(比較例1〜3)
フレキシブルプリント配線板上に感光性樹脂組成物(B1)を塗布した後、乾燥し、保護層(B)のみを形成した。保護層(B)の厚さは、10μmである。
そして、保護層(B)に対して、メタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW-680−GW20)を用いてネガマスクを介して露光量500mJ/cm
2で光照射し、現像して保護膜を形成した。
【0065】
<破壊電圧>
菊水電子工業(株)社製の耐電圧試験器TOS5051Aを用いて、保護膜の厚さ方向(Z軸方向)に対して電圧を0.5kV/secで昇圧させ、導電する電圧を破壊電圧とした。
【0066】
<遮光性>
実施例及び比較例の保護膜を形成した評価基板に対し、目視により遮光性の評価を行った。遮光性が良好な場合を〇、不良の場合を×とした。
【0067】
上記表1に示す結果から、実施例1および2の積層樹脂構造体から得られる保護膜は、フレキシブルプリント配線板上において破壊電圧が高く、遮光性が良好であった。これに対し、比較例1では破壊電圧が低く遮光性に劣り、また比較例2〜4では、破壊電圧がさらに低い結果となった。
【0068】
(参考例1,2、比較例5〜8)
着色剤とそれ以外の各種の成分を下記表2中に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、熱硬化性樹脂組成物(A1)と熱硬化性樹脂組成物(B1)をそれぞれ調製した。得られた参考例1,2、比較例5〜8について、上記実施例1等と同様にして評価を行った結果を、下記表2中に併せて示す。
【0069】
【表2】
*1:BASF社製ペリレンブラック顔料
*2:BASF社製ペリレン系黒色剤
【0070】
(熱硬化性樹脂組成物(A1))
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:900)(三菱化学社製):60質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:380)(三菱化学社製):40質量部
ノボラック型フェノール樹脂(明和化成製):25質量部
エチルメチルイミダゾール(四国化成工業社製):1質量部
【0071】
(熱硬化性樹脂組成物(B1))
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製):40質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:900)(三菱化学社製):30質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:380)(三菱化学社製):20質量部
ノボラック型フェノール樹脂(明和化成製):28質量部
エチルメチルイミダゾール(四国化成工業社製):1質量部
硫酸バリウム(堺化学工業社製):100質量部
【0072】
(参考例1,2、及び比較例8)
フレキシブルプリント配線板上に熱硬化性樹脂組成物(A1)をスクリーン印刷法によりパターン状に塗布して100℃で20分間乾燥し、接着層(A)を形成した。その後、接着層(A)のパターンに対応するように、スクリーン印刷法により熱硬化性樹脂組成物(B1)を接着層(A)上に塗布して150℃で60分間加熱し熱硬化させて保護層(B)を形成した。(A)接着層の厚さは30μmであり、(B)保護層(B)は10μmである。
【0073】
(比較例4〜7)
フレキシブルプリント配線板上に熱硬化性樹脂組成物(B1)をスクリーン印刷法によりパターン状に塗布して150℃で60分間加熱し熱硬化させて保護層(B)を形成した。(B)保護層(B)は40μmである。
【0074】
上記表2に示す結果から、参考例1および2の積層樹脂構造体から得られる保護膜は、フレキシブルプリント配線板上において破壊電圧が高く、遮光性が良好であった。これに対し、比較例5では破壊電圧が低く遮光性に劣り、また比較例6〜8では、破壊電圧がさらに低い結果となった。