(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が形成する前記突出部が、筒状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の鞍乗型車両用外装カバー。
前記第1樹脂層と層状に一体成形される前記第2樹脂層は、結晶性を有する樹脂で形成され、前記第1樹脂層よりも結晶化度が低いことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の鞍乗型車両用外装カバー。
層状に一体成形される前記第1樹脂層および前記第2樹脂層が、共にポリプロピレンまたはポリアミドで形成されていることを特徴とする請求項11に記載の鞍乗型車両用外装カバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されている鞍乗型車両用外装カバー構造は、鞍乗型車両用外装カバーを複数の外装カバーで構成し、それら外装カバーの一部を重ねて締結することで、樹脂製の鞍乗型車両用外装カバーの靭性および剛性を確保しつつ、軽量化を図るという技術思想に立脚している。しかしながら、このような技術思想に立脚した技術でも、複数の外装カバーを一部重ねるため、樹脂製であっても軽量化には改良の余地がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、靭性および剛性を確保しつつ、軽量化をより図ることが可能な鞍乗型車両用外装カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、従来提案されてきた肉厚を厚くしたり、リブで補強したり、複数の外装カバーを重ねて締結することで靭性および剛性を確保するという技術思想に依存するものではない。本発明は、第1樹脂層および第2樹脂層を含む一体積層樹脂部を備えるように外装カバーを構成し、更に、それら第1樹脂層および第2樹脂層の素材や強度などの特性および形状を工夫することにより、鞍乗型車両用外装カバーの靭性および剛性を確保しつつ軽量化をより図るという技術思想に立脚したものである。換言すれば、特性の異なる樹脂層を積層するだけでなく、その積層した樹脂層の分布と形状とをさらに工夫することにより、鞍乗型車両用外装カバーの靭性および剛性を確保しつつ軽量化をより図るという技術思想に立脚したものである。
【0008】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、車体フレームにシートが支持された鞍乗型車両に用いられ、外装面を有し、前記車体フレームに支持される鞍乗型車両用外装カバーであって、結晶性を有する樹脂で形成された第1樹脂層が、前記第1樹脂層よりもヤング率の小さい樹脂で形成された第2樹脂層よりも薄い状態で、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が積層されて一体成形された一体積層樹脂部を含み、前記外装面と交差する第1方向に切断した第1断面において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が、前記外装面が形成されたカバー本体と、前記カバー本体の両端部においてそれぞれ屈曲して形成された2つの第1屈曲部を形成していることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、外装カバーは、外装面と交差する第1断面において、第1樹脂層と第2樹脂層とが層状に一体成形された一体積層樹脂部が、外装面が形成されたカバー本体と、カバー本体の両端部の2つの第1屈曲部を形成している。
第1樹脂層は、結晶性を有し、第2樹脂層よりもヤング率が大きいので、第2樹脂層よりも相対的に剛性を高めやすい。しかし、第1樹脂層の厚みが厚すぎると、外装カバーに求められる靱性を確保するのが困難となる。そこで、本発明では、第1樹脂層を第2樹脂層よりも薄くすることで、剛性と靭性を確保している。また、第2樹脂層は、第1樹脂層よりもヤング率が小さいので、靭性が確保しやすい。その一方、第2樹脂層の剛性は確保しにくい。そこで、第2樹脂層は、第1樹脂層より厚みを厚くすることで、剛性と靱性を確保している。また、第2樹脂層と第1樹脂層を一体成形して、第1樹脂層の剛性を高めやすい性質を利用することで、第2樹脂層に求められる剛性を下げることができる。そのため、剛性と靭性を確保しつつ第2樹脂層の厚みを薄くできる。そして、外装カバーは、結晶性を有する樹脂で形成された第1樹脂層が、第1樹脂層よりもヤング率の小さい樹脂で形成された第2樹脂層よりも薄い状態で、第1樹脂層と第2樹脂層が積層されて一体成形された一体積層樹脂部を含む。これにより、剛性と靱性を確保しつつ外装カバーを軽量化できる。
また、本発明の外装カバーは、外装面と交差する第1断面において、第1樹脂層と第2樹脂層とが層状に一体成形された一体積層樹脂部が、外装面が形成されたカバー本体と、カバー本体の両端部においてそれぞれ屈曲して形成された2つの第1屈曲部を形成している。そのため、外装カバーは、剛性を高めやすい第1樹脂層を含む一体積層樹脂部の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、カバー本体だけが、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された一体積層樹脂部で形成されている場合に比べて、より剛性を高くできる一方、靭性も確保することができる。
したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0010】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記第1断面において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が、前記カバー本体の両端部に前記第1屈曲部を介して連なる2つの第1縁壁部を形成し、前記第1縁壁部が、前記カバー本体の両端部から前記外装面と交差する前記第1方向の一方に向けて延びていることが好ましい。
【0011】
この構成によると、外装カバーは、外装面と交差する第1断面において、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された一体積層樹脂部が形成する2つの第1縁壁部が、カバー本体の両端部から第1方向の一方に延びている。外装カバーは、剛性を高めやすい第1樹脂層を含む一体積層樹脂部の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、2つの第1縁壁部のうち一方が第1方向の一方に、2つの第1縁壁部の他方が第1方向の他方に延びている場合に比べて、外装面垂直方向、曲げ方向、および捩り方向に関して外装カバーの剛性を向上できる一方、靱性も確保することができる。
したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0012】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記第1断面において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が形成する前記カバー本体が、前記2つの第1屈曲部を結ぶ仮想直線に対して膨らんだまたはへこんだ曲線状に形成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によると、外装カバーは、外装面と交差する第1断面において、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された一体積層樹脂部が形成するカバー本体が、膨らんだまたはへこんだ曲線状に形成されている。外装カバーは、剛性を高めやすい第1樹脂層を含む一体積層樹脂部の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えばカバー本体が平坦状の場合に比べて、外装面垂直方向、曲げ方向、および捩り方向に関して外装カバーの剛性を向上できる一方、靱性も確保することができる。
したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0014】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記第1断面において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が形成する前記カバー本体の幅が、前記カバー本体の両端部に前記第1屈曲部を介して連なる2つの第1縁壁部のいずれの長さよりも長いことが好ましい。
【0015】
この構成によると、外装カバーは、外装面と交差する第1断面において、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された一体積層樹脂部が形成するカバー本体の幅が、カバー本体の両端部に第1屈曲部を介して連なる2つの第1縁壁部のいずれの長さよりも長くなっている。本発明では、第1断面において、カバー本体が曲線状に形成されているため、例えば、カバー本体が平坦状の場合に比べて、カバー本体の剛性を維持しつつカバー本体の幅をより長くすることができる。外装カバーは、剛性を高めやすい第1樹脂層を含む一体積層樹脂部の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、カバー本体が平坦状の場合に比べて、カバー本体の幅と剛性を維持しつつカバー本体の厚みを薄くできる一方、靱性も確保することができる。
したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
なお、第1断面におけるカバー本体の幅とは、第1断面においてカバー本体が曲線状の場合、第1断面におけるカバー本体の長さではなく、カバー本体の両端部の離間距離のことである。
【0016】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記第1断面において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が形成する前記カバー本体の両端部に設けられた2つの前記第1屈曲部の屈曲角度が、互いに異なっていることが好ましい。
【0017】
第1屈曲部の屈曲角度の大きさによって、外装カバーの剛性の程度は異なる。本発明では、外装カバーは、外装面と交差する第1断面において、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された一体積層樹脂部が形成するカバー本体の両端部に設けられた2つの第1屈曲部の屈曲角度が、互いに異なっている。これにより、例えば、2つの第1屈曲部の屈曲角度が同一の場合に比べて、外装カバーの剛性の程度を調整しやすい。
したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0018】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記第1断面において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が、前記カバー本体の両端部に前記第1屈曲部を介して連なる2つの第1縁壁部を形成し、前記2つの第1縁壁部の長さが、互いに異なっていることが好ましい。
【0019】
第1縁壁部の長さが長いほど、外装カバーの剛性は高くなる。本発明では、外装カバーは、外装面と交差する第1断面において、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された一体積層樹脂部が形成する2つの第1縁壁部の長さが、互いに異なっている。外装カバーは、剛性を高めやすい第1樹脂層を含む一体積層樹脂部の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、2つの第1縁壁部の長さが同一の場合に比べて、外装カバーの剛性を調整しやすい。
したがって、必要な剛性を確保しつつ、第1縁壁部の長さをできるだけ短くすることができるため、外装カバーをさらに軽量化できる。
【0020】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記第1断面と直交し且つ前記外装面と交差する第2断面において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が、前記カバー本体と、前記カバー本体の両端部においてそれぞれ屈曲して形成された2つの第2屈曲部を形成していることが好ましい。
【0021】
この構成によると、外装カバーは、第1断面と直交し且つ外装面と交差する第2断面において、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された一体積層樹脂部が、カバー本体と、カバー本体の両端部の2つの第2屈曲部を形成している。外装カバーは、剛性を高めやすい第1樹脂層を含む一体積層樹脂部の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、第2断面においてカバー本体だけが一体積層樹脂部で形成されている場合に比べて、外装カバーの剛性を確保し易い。
したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0022】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記カバー本体の両端部の間に、前記カバー本体に屈曲部を介して連なる突出部が形成されており、前記突出部を通り且つ前記外装面と交差する断面において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が、前記カバー本体と、前記突出部の少なくとも一部分を形成していることが好ましい。
【0023】
この構成によると、外装カバーは、外装面と交差する断面において、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された一体積層樹脂部が、カバー本体の両端部の間に形成された突出部を形成している。外装カバーは、剛性を高めやすい第1樹脂層を含む一体積層樹脂部の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、突出部が全く設けられていない場合に比べて、外装カバーの剛性を向上できる一方、靱性も確保することができる。
したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
なお、本発明の突出部は、カバー本体の外装面から突出していてもよく、カバー本体の外装面と反対側の面から突出していてもよい。
【0024】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が形成する前記突出部が、筒状に形成されていることが好ましい。
【0025】
この構成によると、外装カバーを車体フレームに取り付けるために突出部を利用しやすい。
【0026】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記外装カバーの長手方向が、前記第1断面と直交する方向であり、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が形成する前記第1縁壁部が、前記外装カバーの長手方向に延びていることが好ましい。
【0027】
この構成によると、第1樹脂層と第2樹脂層が層状に一体成形された前記一体積層樹脂部が形成する第1縁壁部が、第1断面と直交する方向に延びている。外装カバーは、剛性を高めやすい第1樹脂層を含む一体積層樹脂部の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。本発明では、長手方向の広い範囲に亘って外装カバーの剛性と靭性とを確保しつつ軽量化の効果を得ることができる。
したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0028】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、前記第1樹脂層と層状に一体成形される前記第2樹脂層は、結晶性を有する樹脂で形成され、前記第1樹脂層よりも結晶化度が低いことが好ましい。
【0029】
この構成によると、結晶化度によってヤング率を調整することができる。また、層状に一体成形される第1樹脂層と第2樹脂層とを同種の樹脂とすることで、前記調整をさらに容易にすることができる。したがって、外装カバーに必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層と第2樹脂層とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0030】
本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、層状に一体成形される前記第1樹脂層および前記第2樹脂層が、共にポリプロピレンまたはポリアミドで形成されていることが好ましい。
【0031】
この構成によると、層状に一体成形される第1樹脂層および第2樹脂層がポリプロピレンで形成されている場合には、外装カバーのコストを抑えることができる。また、層状に一体成形される第1樹脂層および第2樹脂層がポリアミドで形成されている場合には、外装カバーの耐熱性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る鞍乗型車両は、モトクロッサーと呼ばれるオフロード型の自動二輪車1である。ただし、本発明に係る鞍乗型車両はオフロード型の自動二輪車1に限定される訳ではない。鞍乗型車両は、乗員が跨って乗車する任意の車両を意味する。本発明の鞍乗型車両は、オンロード型、スクータ型、モペット型等の他の型式の自動二輪車であってもよく、三輪車、四輪バギー(ATV:ALL Terrain Vehicle)、水上バイク、スノーモービル等の自動二輪車以外の車両であってもよい。
【0034】
以下の説明では特に断らない限り、上、下、前、後、左、右は、後述するシート9に着座した自動二輪車1の乗員から見た上、下、前、後、左、右をそれぞれ意味するものとする。自動二輪車1は走行中に傾いた姿勢をとる場合があるが、ここで言う上、下は、自動二輪車1が水平面上に静止しているときの鉛直方向の上、下に対応する。図面中の符号U、D、F、Re、L、Rは、上、下、前、後、左、右をそれぞれ表す。
【0035】
図1に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム2、前輪6、後輪7、を備えている。車体フレーム2には、エンジン3、ハンドル8、シート9、燃料タンク10が支持されている。なお、本明細書において、車体フレームに支持されるとは、車体フレームに直接支持される場合と、ブラケットなど他部品を介して間接的に支持される場合を含む。
【0036】
車体フレーム2は、一対のメインフレーム20、ダウンフレーム21、一対の下部フレーム22、ヘッドパイプ23、一対のリヤアーム24、およびシートレール25を備えている。ヘッドパイプ23は、自動二輪車1の前部に配置されている。メインフレーム20は、ヘッドパイプ23から後斜め下に延びている。ダウンフレーム21は、メインフレーム20よりも下方に配置されており、ヘッドパイプ23から後斜め下に延びている。下部フレーム22は、ダウンフレーム21の下端と、メインフレーム20の下端とを接続している。シートレール25は、メインフレーム20から後方に延びている。
【0037】
メインフレーム20の下方かつダウンフレーム21の後方には、エンジン3が配置されている。ヘッドパイプ23の後方には、エアクリーナ30が配置されている。エアクリーナ30の後方かつメインフレーム20の上方には、シートレール25に支持されたシート9が配置されている。シート9の前部の下方には、燃料タンク10が配置されている。
【0038】
ヘッドパイプ23内にはステアリングシャフト(図示省略)が挿入されており、ステアリングシャフトの上部にはハンドル8が接続されている。ステアリングシャフトと並んで一対のフロントフォーク40が配置されている。フロントフォーク40の下端には、前輪6が回転可能に取り付けられている。
【0039】
メインフレーム20の後部にはピボット軸20aが設けられている。リヤアーム24の前端部はピボット軸20aに支持されている。リヤアーム24は、ピボット軸20aによって、メインフレーム20に対して上下に揺動可能となっている。リヤアーム24の後端部には、後輪7が回転可能に取り付けられている。
【0040】
車体フレーム2には、車体フレーム2の一部を覆う外装カバー11が支持されている。外装カバー11は、一対のフロントサイドカバー50、一対のリヤサイドカバー12、フロントフェンダー13、リヤフェンダー14を有する。フロントサイドカバー50は、シート9の前部の下方に配置され、メインフレーム20およびダウンフレーム21の上部に支持されている。リヤサイドカバー12は、シート9の後部の下方に配置され、シートレール25に支持されている。フロントフェンダー13は、前輪6の上方に配置され、フロントフォーク40に支持されている。リヤフェンダー14は、後輪7の上方に配置され、シートレール25に支持されている。
【0041】
車体フレーム2の左方に配置されたフロントサイドカバー50と、車体フレーム2の右方に配置されたフロントサイドカバー50は、左右対称に形成されている。以下、車体フレーム2の左方に配置されたフロントサイドカバー50の詳細について説明する。以下の説明においてサイドカバー50とは、車体フレーム2の左方に配置されたフロントサイドカバー50のことである。
【0042】
図2はサイドカバー50の正面図であり、サイドカバー50を自動二輪車1の左方から見た図に相当する。
図3はサイドカバー50の裏面図であり、サイドカバー50を自動二輪車1の右方から見た図に相当する。以下の説明では特に断らない限り、表、裏とは、それぞれサイドカバー50の表、裏を意味する。
図4はサイドカバー50を左斜め後方から見た斜視図である。
図5、
図6、
図7は、サイドカバー50の前後方向に交差する断面図である。
【0043】
図2に示すように、サイドカバー50は、上カバー部31と、上カバー部31の下方に位置する下カバー部32とから構成されている。上カバー部31は前後に細長く形成されている。下カバー部32は略三角形状に形成されている。サイドカバー50は一体物であり、下カバー部32は上カバー部31の前側下部とつながっている。サイドカバー50の前後の長さ(上カバー部31の前後の長さ)は、サイドカバー50の上下の長さよりも長くなっている。
【0044】
図4に示すように、サイドカバー50は、自動二輪車1にサイドカバー50が取り付けられた状態において視認可能な外装面を有する。外装面は、左方に面した面である。サイドカバー50は、外装面が形成されたカバー本体51と、カバー本体51の外縁から右方(外装面からカバー本体51の裏面に向かう方向)に延びる縁壁部52とを有している。カバー本体51と縁壁部52とは、屈曲して形成された屈曲部54を介して連なっている。屈曲部54のなす角度は、90度以上である。屈曲部54は、カバー本体51の端部と縁壁部52の少なくとも一部によって形成されている。つまり、屈曲部54が形成されている箇所には、必ず縁壁部52も形成されていることになる。屈曲部54および縁壁部52は、カバー本体51の全周に形成されている。屈曲部54は、自動二輪車1を左方から見たとき(外装面側から見たとき)に、サイドカバー50の輪郭線として視認される。
【0045】
カバー本体51は、上カバー部31に含まれる上カバー本体51Uと、下カバー部32に含まれる下カバー本体51Dで構成されている。縁壁部52は、上カバー部31に含まれる縁壁部52Uと、下カバー部32に含まれる縁壁部52Dで構成されている。屈曲部54は、上カバー部31に含まれる屈曲部54Uと、下カバー部32に含まれる屈曲部54Dで構成されている。つまり、上カバー部31は、上カバー本体51Uと、この上カバー本体51Uに屈曲部54Uを介して連なる縁壁部52Uを備えており、下カバー部32は、下カバー本体51Dと、この下カバー本体51Dに屈曲部54Dを介して連なる縁壁部52Dを備えている。
【0046】
上カバー本体51Uの前端と下カバー本体51Dの前端によって、鋭角な角部33が形成されている。また、上カバー本体51Uの後端、下カバー本体51Dの後端には、鋭角な角部34、35がそれぞれ形成されている。上カバー部31の屈曲部54Uは、上カバー本体51Uの上側の端部に形成された屈曲部56aと、上カバー本体51Uの下側の端部に形成された屈曲部56bで構成されている。また、下カバー部32の屈曲部54Dは、下カバー本体51Dの角部35から上斜め前方に延びる屈曲部57aと、下カバー本体51Dの角部35から下斜め前方に延びる屈曲部57bと、下カバー本体51Dの角部33から下斜め後方に延びる屈曲部57cで構成されている。
【0047】
図2に示すように、サイドカバー50には、カバー本体51の厚さ方向に貫通する円形状の孔41A,41B,41C,41Dが形成されている。本実施形態では、サイドカバー50には4つの孔41A,41B,41C,41Dが形成されているが、孔の個数は何ら限定されない。また、孔41A,41B,41C,41Dは、円形状でなくてもよい。また、孔41A,41B,41C,41Dは必ずしも必要ではなく、なくてもよい。
【0048】
図5、
図6および
図7に示すように、孔41A,41B,41C,41Dは、カバー本体51から右方(外装面からカバー本体51の裏面に向かう方向)に突出した筒状の突出部53A,53B,53C,53Dの内壁面によって形成されている。つまり、孔41A,41B,41C,41Dの左右方向長さは、カバー本体51の厚みよりも大きい。カバー本体51と突出部53A,53B,53C,53Dとは、屈曲して形成された屈曲部55A,55B,55C,55Dを介して連なっている。
【0049】
孔41Aは、上カバー部31と下カバー部32の境界部分に形成されている。孔41B,41Cは、下カバー部32に形成され、孔41Dは上カバー部31に形成されている。孔41A,41B,41Cはサイドカバー50を車体フレーム2に取り付けるための孔である。
図5および
図6に示すように、サイドカバー50は、孔41A,41Bに挿通された締結具59によってラジエタ15に固定される。このラジエタ15はダウンフレーム21に固定される。また、
図7に示すように、サイドカバー50は、孔41Cに挿通された締結具59によってメインフレーム20のブラケット20bに固定される。
【0050】
図3および
図5に示すように、下カバー本体51Dの裏面には、補強用のリブ42が突出して形成されている。本実施形態では、突出部53Cの外周面から放射状に延びる3本のリブ42が設けられている。ただし、リブ42の本数は特に限定されない。また、リブ42は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。リブ42は、他の突出部53A,53B,または53Dの周りに設けることも可能であり、突出部53A,53B,53C,53Dの周り以外の箇所に設けてもよい。
【0051】
図5は、サイドカバー50を、孔41Aを通る
図2中のV−V線に沿って切断した断面図である。V−V線は、上カバー部31と下カバー部32がつながっている部分を通っている。
図5に示す断面では、上から下に向かって順に、縁壁部52U、屈曲部56a(54U)、上カバー本体51U、屈曲部55A、突出部53A、屈曲部55A、下カバー本体51D、屈曲部57c(54D)、縁壁部52Dが並んでいる。
【0052】
図5の断面において、上カバー部31の屈曲部56aのなす角θ1は約90度である。
図5の断面に現れる屈曲部55Aのうち、上カバー本体51Uと突出部53Aとの連結部分のなす角θ3は約110度である。また、
図5の断面に現れる屈曲部55Aのうち、突出部53Aと下カバー本体51Dとの連結部分のなす角θ3は約100度である。また、
図5の断面において、下カバー部32の屈曲部57cのなす角θ2は約130度である。このように、
図6の断面において、カバー本体51の上下両端に設けられた屈曲部56a、57cの屈曲角度は互いに異なっている。
【0053】
図5の断面において、カバー本体51は、屈曲部56aと屈曲部57cとを結ぶ仮想線L5に対して左方(表側)に膨らんだ曲線状に形成されている。また、
図5の断面において、カバー本体51の幅(突出部53Aを含む上下方向長さ)は、縁壁部52U、52Dのいずれの長さ(左右方向長さ)よりも長い。また、
図5の断面において、カバー本体51の上下両端に連なる縁壁部52U、52Dの長さ(左右方向長さ)は、互いに異なっている。
【0054】
図5の断面は、屈曲したV−V線で切断した断面であるが、孔41Aを通る直線状の切断線で切断した断面においても、
図5の断面における上述した構成とほぼ同様の構成となる。このような断面は、本発明の第1断面または第2断面に相当し、このような断面におけるカバー本体51の上下両端部に形成された屈曲部54U、54Dは、本発明の第1断面におけるカバー本体の両端部に形成された2つの第1屈曲部、または、第2断面におけるカバー本体の両端部に形成された2つの第2屈曲部に相当する。なお、本発明の第1断面または第2断面は、
図5の断面を含んでもよい。
【0055】
また、図示は省略するが、サイドカバー50には、
図2中のV−V線以外の切断線であって、上カバー本体51Uと下カバー本体51Dのつながった部分を通り、外装面と交差する切断線で切断した複数の断面がある。このような複数の断面のうちの少なくとも一部の断面においても、
図5と同様に、カバー本体51の上下両端に設けられた屈曲部54U、54Dの屈曲角度が互いに異なっている。また、この複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、カバー本体51は、カバー本体51の上下両端に連なる屈曲部54Uと屈曲部54Dを結ぶ仮想線に対して左方(表側)に膨らんだ曲線状に形成されている。また、この複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、カバー本体51の幅は、カバー本体51の上下両端に連なる縁壁部52U、52Dのいずれの長さよりも長くなる。また、この複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、カバー本体51の上下両端に連なる縁壁部52U、52Dの長さは、互いに異なっている。
【0056】
図6は、サイドカバー50を、孔41Bを通る
図2中のVI−VI線に沿って切断した断面図である。VI−VI線は、上カバー部31と下カバー部32のつながった部分を通らない。
図6に示す断面では、上から下に向かって順に、縁壁部52U、屈曲部56a(54U)、上カバー本体51U、屈曲部56b(54U)、縁壁部52U、縁壁部52D、屈曲部57a(54D)、下カバー本体51D、屈曲部55B、突出部53B、屈曲部55B、下カバー本体51D、屈曲部57c(54D)、縁壁部52Dが並んでいる。
【0057】
図6の断面において、上カバー部31の屈曲部56aのなす角θ1は約90度である。また、
図6の断面において、上カバー部31の屈曲部56bのなす角θ2は約100度である。このように、
図6の断面において、上カバー本体51Uの上下両端に設けられた屈曲部56a、56bの屈曲角度は互いに異なっている。また、
図6の断面において、下カバー部32の屈曲部57aのなす角θ1は約90度である。また、
図6の断面に現れる屈曲部55Bのうち突出部53Bの上側の部分のなす角θ3は約110度である。また、
図6の断面において、下カバー部32の屈曲部57cのなす角θ2は約110度である。このように、
図6の断面において、下カバー本体51Dの上下両端に設けられた屈曲部57a、57cの屈曲角度は互いに異なっている。
【0058】
図6の断面において、下カバー本体51Dは、屈曲部57aと屈曲部57cとを結ぶ仮想線(図示せず)に対して左方(表側)に緩やかに膨らんだ曲線状に形成されている。また、
図6の断面において、上カバー本体51Uは、平坦状に形成されている。また、
図6の断面において、上カバー本体51Uの幅(上下方向長さ)は、上カバー本体51Uの上下両側に位置する2つの縁壁部52Uのいずれの長さ(左右方向長さ)よりも長い。また、
図6の断面において、下カバー本体51Dの幅(上下方向長さ)は、下カバー本体51Dの上下両側に位置する2つの縁壁部52Dのいずれの長さ(左右方向長さ)よりも長い。また、
図6の断面において、上カバー本体51Uの上下両端に連なる2つ縁壁部52Uの長さ(左右方向長さ)はほぼ同じである。また、下カバー本体51Dの上下両端に連なる2つ縁壁部52Dの長さ(左右方向長さ)はほぼ同じである。
【0059】
図6の断面は、屈曲したVI−VI線で切断した断面であるが、上カバー本体51Uと下カバー本体51Dのつながっていない部分を通り且つ孔41Bを通る直線状の切断線で切断した断面においても、
図6の断面における上述した構成とほぼ同様の構成となる。このような断面は、本発明の第1断面または第2断面に相当し、このような断面における上カバー本体51U(または下カバー本体51D)の上下両端部に形成された2つの屈曲部54U(または54D)は、本発明の第1断面におけるカバー本体の両端部に形成された2つの第1屈曲部、または、第2断面におけるカバー本体の両端部に形成された2つの第2屈曲部に相当する。なお、本発明の第1断面または第2断面は、
図6の断面を含んでもよい。
【0060】
図7は、サイドカバー50を、孔41Cを通る
図2中のVII−VII線に沿って切断した断面図である。VII−VII線は、上カバー部31と下カバー部32のつながった部分を通らない。
図7に示す断面では、上から下に向かって順に、縁壁部52U、屈曲部56a(54U)、上カバー本体51U、屈曲部56b(54U)、縁壁部52U、縁壁部52D、屈曲部57a(54D)、下カバー本体51D、屈曲部55C、突出部53C、屈曲部55C、下カバー本体51D、屈曲部57b(54D)、縁壁部52Dが並んでいる。
【0061】
図7の断面において、上カバー部31の屈曲部56aのなす角θ1は約110度である。また、
図7の断面において、上カバー部31の屈曲部56bのなす角θ2は約90度である。このように、
図7の断面において、上カバー本体51Uの上下両端に設けられた屈曲部56a、56bの屈曲角度は互いに異なっている。また、
図7の断面において、下カバー部32の屈曲部57aのなす角θ1は約100度である。また、
図7の断面に現れる屈曲部55Cのうち突出部53Cの上側の部分のなす角θ3は約90度である。また、
図7の断面において、下カバー部32の屈曲部57bのなす角θ2は約150度である。このように、
図7の断面において、下カバー本体51Dの上下両端に設けられた屈曲部57a、57bの屈曲角度は互いに異なっている。
【0062】
図7の断面において、上カバー本体51Uは、屈曲部56aと屈曲部56bとを結ぶ仮想線(図示せず)に対して左方(表側)に緩やかに膨らんだ曲線状に形成されている。また、
図7の断面において、下カバー本体51Dは、屈曲部57aと屈曲部57bとを結ぶ仮想線(図示せず)に対して左方(表側)に緩やかに膨らんだ曲線状に形成されている。また、
図7の断面において、上カバー本体51Uの幅(上下方向長さ)は、上カバー本体51Uの上下両側に位置する2つの縁壁部52Uのいずれの長さ(左右方向長さ)よりも長い。また、
図7の断面において、下カバー本体51Dの幅(上下方向長さ)は、下カバー本体51Dの上下両側に位置する2つの縁壁部52Dのいずれの長さ(左右方向長さ)よりも長い。
【0063】
なお、
図7の断面は、本発明の第1断面または第2断面に相当する。また、
図7の断面における上カバー本体51Uの上下両端部に形成された屈曲部56a、56bは、本発明の第1断面におけるカバー本体の両端部に形成された2つの第1屈曲部、または、第2断面におけるカバー本体の両端部に形成された2つの第2屈曲部に相当する。また、
図7の断面における下カバー本体51Dの上下両端部に形成された屈曲部57a、57bは、本発明の第1断面におけるカバー本体の両端部に形成された2つの第1屈曲部、または、第2断面におけるカバー本体の両端部に形成された2つの第2屈曲部に相当する。
【0064】
また、図示は省略するが、サイドカバー50には、
図2中のVI−VI線、VII−VII線以外の切断線であって、上カバー本体51Uと下カバー本体51Dのつながった部分を通らず、外装面と交差する切断線で切断した複数の断面が存在する。このような複数の断面のうちの少なくとも一部の断面においても、
図6および
図7と同様に、上カバー本体51U(または下カバー本体51D)の両端に設けられた2つ屈曲部54U(または54D)の屈曲角度が互いに異なっている。また、この複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、上カバー本体51U(または下カバー本体51D)は、その両端部の2つの屈曲部54U(または54D)を結ぶ仮想線に対して左方(表側)に膨らんだ曲線状に形成されている。また、この複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、上カバー本体51U(または下カバー本体51D)の幅は、その両端に連なる2つの縁壁部52U(または52D)のいずれの長さよりも長くなっている。また、この複数の断面のうちの少なくとも一部の断面において、上カバー本体51U(または下カバー本体51D)の両端に連なる2つの縁壁部52U(または52D)の長さは、互いに異なっている。なお、VI−VI線、VII−VII線以外の切断線であって、上カバー本体51Uと下カバー本体51Dのつながった部分を通らない切断線で切断した断面の例としては、例えば、VII−VII線で切断した断面(
図7の断面)と直交する断面であって、上カバー部31のみまたは下カバー部32のみを通る切断線で切断した断面がある。
図7の断面と直交する断面であって、上カバー部31のみを通る切断線で切断した断面では、上カバー本体51Uの両端部に2つの屈曲部56aが形成されることになる。
【0065】
以上がサイドカバー50の形状である。次に、サイドカバー50の構造について説明する。
図6〜
図7に示すように、サイドカバー50は、第1樹脂層62と第2樹脂層61によって形成されている。前述の通りサイドカバー50は一体物であるが、サイドカバー50の少なくとも一部は、第2樹脂層61と第1樹脂層62とが積層された状態で一体成形された一体積層樹脂部63で形成されている。本実施形態では、第1樹脂層62は、第2樹脂層61より左方(表側)に配置されている。第1樹脂層62は、サイドカバー50の外装面を形成している。
【0066】
図5〜
図7に示すように、一体積層樹脂部63は、カバー本体51全体と、屈曲部54全体と、縁壁部52の少なくとも一部を形成している。
図8Aは
図7のVIIIa部分の拡大図である。
図8Aに示すように、上カバー本体の上端部に屈曲部56aを介して連なる縁壁部52Uは、その全域にわたって、屈曲部56a側の一部が一体積層樹脂部63で形成され、残りの部分(
図8A中の52Ua)が第2樹脂層61のみで形成されている。より詳細には、この縁壁部52Uの第2樹脂層61に段差61sが形成され、第1樹脂層62がこの段差61sに嵌り込んでいる。第1樹脂層62の縁部62eの上下の長さと、段差61sの上下の長さは同じである。これにより、縁壁部52Uにおいて、第2樹脂層61と第1樹脂層62とは、面一に隣り合っている。なお、屈曲部56aと連なる縁壁部52Uには、第2樹脂層61のみで形成される部分52Uaは必ずしも必要ではない。例えば、
図8Bに示すように、ある断面において、縁壁部52U全体が、一体積層樹脂部63で形成されていてもよい。
【0067】
また、
図6および
図7に示すように、上カバー本体51Uの下端部と屈曲部56bを介して連なる縁壁部52Uは、その全域にわたって、屈曲部56b側の一部が一体積層樹脂部63で形成され、残りの部分が第2樹脂層61のみで形成されている。なお、外装面と交差する少なくとも1つの断面において、屈曲部56bと連なる縁壁部52Uが、全て一体積層樹脂部63で形成されていてもよい。
【0068】
また、
図6および
図7に示すように、下カバー本体51Dと屈曲部57aを介して連なる縁壁部52Dは、その全域にわたって、屈曲部57a側の一部が一体積層樹脂部63で形成され、残りの部分が第2樹脂層61のみで形成されている。なお、外装面と交差する少なくとも1つの断面において、屈曲部57aと連なる縁壁部52Dが、全て一体積層樹脂部63で形成されていてもよい。
【0069】
また、
図5の断面において、下カバー本体51Dと屈曲部57cを介して連なる縁壁部52Dは、全て一体積層樹脂部63で形成されている。また、
図6および
図7の断面において、下カバー本体51Dと屈曲部57cまたは屈曲部57bを介して連なる縁壁部52Dは、屈曲部57cまたは屈曲部57b側の一部が一体積層樹脂部63で形成され、残りの部分が第2樹脂層61のみで形成されている。
【0070】
上カバー部31と下カバー部32のつながる部分を通り、外装面と交差する切断線で切断した断面において、一体積層樹脂部63は、カバー本体51と、カバー本体51の両端部に形成された屈曲部56a、57cと、この屈曲部56a、57cを介してカバー本体51の両端部と連なる縁壁部52U、52Dの少なくとも一部を形成する。また、上カバー部31と下カバー部32のつながる部分を通らずに上カバー部31と下カバー部32の両方を通り、外装面と交差する切断線、または、上カバー部31のみ通り、外装面と交差する切断線で切断した断面において、一体積層樹脂部63は、上カバー本体51Uと、上カバー本体51Uの両端部に形成された2つの屈曲部54Uと、屈曲部54Uを介して上カバー本体51Uの両端部と連なる2つの縁壁部52Uの少なくとも一部を形成する。上カバー部31と下カバー部32のつながる部分を通らずに上カバー部31と下カバー部32の両方を通り、外装面と交差する切断線、または、下カバー部32のみ通り、外装面と交差する切断線で切断した断面において、一体積層樹脂部63は、下カバー本体51Dと、下カバー本体51Dの両端部に形成された2つの屈曲部54Dと、屈曲部54Dを介して下カバー本体51Dの両端部と連なる2つの縁壁部52Dの少なくとも一部を形成している。
【0071】
また、
図5の断面において、一体積層樹脂部63は、屈曲部55A全体と、突出部53Aの屈曲部55A側の少なくとも一部を形成している。
図5の断面に限らず、突出部53Aを通るどの断面においても、一体積層樹脂部63は、屈曲部55A全体と、突出部53Aの屈曲部55A側の少なくとも一部を形成している。突出部53Aの一部だけが一体積層樹脂部63で形成される場合、突出部53Aの残りの部分は、第2樹脂層61だけで形成される。また、
図6に示すように、突出部53Bを通るどの断面においても、一体積層樹脂部63は、屈曲部55B全体と、突出部53Bの屈曲部55B側の少なくとも一部を形成している。また、
図7に示すように、突出部53Cを通るどの断面においても、一体積層樹脂部63は、屈曲部55C全体と、突出部53Cの屈曲部55C側の少なくとも一部を形成している。また、突出部53Dを通るどの断面においても、一体積層樹脂部63は、屈曲部55D全体と、突出部53Dの屈曲部55D側の少なくとも一部を形成している。
【0072】
第1樹脂層62は、第2樹脂層61よりもヤング率が高くかつ厚さが薄い樹脂層である。第1樹脂層62および第2樹脂層61のヤング率の値は特に限定されないが、例えば、第1樹脂層62のヤング率は2000〜3000MPaで、第2樹脂層61のヤング率は1000〜1500MPaである。第1樹脂層62および第2樹脂層61の厚みは特に限定されないが、例えば、第2樹脂層61の厚みは1.8〜3mm、第1樹脂層62の厚みは0.2〜0.4mmである。第1樹脂層62と第2樹脂層61との厚みの比率は特に限定されないが、例えば、第1樹脂層62の厚みは第2樹脂層61の厚みの0.05〜0.2倍である。なお、
図5〜8では、第1樹脂層62の厚みを実際よりも誇張して表している。
【0073】
第1樹脂層62は、結晶性の樹脂で形成されている。第1樹脂層62は、第2樹脂層61よりも結晶化度の大きい樹脂層であることが好ましい。一体成形のしやすさから、第2樹脂層61は、結晶性の樹脂であることが好ましいが、非結晶性の樹脂であってもよい。第1樹脂層62は第2樹脂層61よりも降伏点が大きいことが好ましい。また、第1樹脂層62は第2樹脂層61よりも破断点が大きいことが好ましい。第1樹脂層62の密度は、第2樹脂層61の密度とほぼ同じかそれよりも小さいことが好ましいが、第2樹脂層61の密度より若干大きくてもよい。第1樹脂層62と第2樹脂層61を異種の樹脂材料で形成する場合には、第1樹脂層62の結晶化度が、第2樹脂層61の結晶化度より低くてもよい。
【0074】
なお、「結晶性の樹脂」とは、少なくとも結晶部分を一部分持っている樹脂をいい、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(ナイロン)(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ふっ素樹脂(四ふっ化エチレン)(PTFE)等をいう。これに対して「非結晶性の樹脂」とは、無定形の非晶部のみからなる樹脂をいい、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)、酢酸ビニル樹脂(PVAC)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(メタクリル樹脂)(PMMA)、ポリフェニレンオキシド(ノリル)(PPO)、ポリウレタン(PUR)等をいう。
【0075】
第1樹脂層62および第2樹脂層61の材料として種々の樹脂材料を利用することができるが、軽量化および低コスト化の観点から、オレフィン系またはポリアミド系の樹脂を好適に用いることができる。第1樹脂層62および第2樹脂層61の材料として、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ナイロン等を用いてもよい。第1樹脂層62および第2樹脂層61は、同種の樹脂材料で形成されていることが好ましいが、異種の樹脂材料で形成されていてもよい。
【0076】
第1樹脂層62と第2樹脂層61を同種の樹脂材料で形成する場合には、第1樹脂層62の結晶化度を、第2樹脂層61の結晶化度よりも高くする。これにより、第1樹脂層62のヤング率を、第2樹脂層61のヤング率よりも高くなる。この場合の第1樹脂層62の密度は、第2樹脂層61の密度よりもわずかに大きいもののほとんど同じである。例えば、第1樹脂層62と第2樹脂層61を共にポリプロピレンで形成する場合には、第1樹脂層62の結晶化度を例えば65.1〜75.5%とし、第2樹脂層61の結晶化度を例えば60.5%とする。この場合の第1樹脂層62のヤング率は、例えば2800MPaであって、第2樹脂層61のヤング率は、例えば1652MPaである。この場合の第1樹脂層62の密度は、第2樹脂層61の密度よりもわずかに大きいもののほとんど同じである。
【0077】
第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63を少なくとも一部に有するサイドカバー50を製造する方法は、特に限定されない。例えば射出成形を利用することができる。例えば、
図9Aに示すように、金型70の第1ゲート71、第2ゲート72から、それぞれ第2樹脂層61の材料61M、第1樹脂層62の材料62Mを層状に注入することにより、
図9Bに示すように第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63を有するサイドカバー50を製造することができる。
【0078】
また、
図10Aに示すように、シート状に形成した第1樹脂層62を予め金型70に配置し、ゲート71から第2樹脂層61の材料61Mを注入することにより、
図10Bに示すように、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63を有するサイドカバー50を製造することができる。この場合、第1樹脂層62として、第2樹脂層61よりもヤング率の高い樹脂フィルムを用いてもよいし(延伸によって結晶化度が高まった延伸フィルムを用いると好適である。)、樹脂フィルムに対して予め熱処理等を加え、その結晶化度を高めることにより、第1樹脂層62のヤング率を第2樹脂層61よりも高くしてもよい。このように、フィルムインサート成形により、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63を有するサイドカバー50を得ることも可能である。なお、ヤング率(結晶性)を高めるために、造核剤を用いてもよい。
【0079】
以上説明した本実施形態のサイドカバー50(外装カバー)は、以下の特徴を有する。サイドカバー50は、外装面と交差する断面(第1断面)において、第1樹脂層62と第2樹脂層61とが層状に一体成形された一体積層樹脂部63が、外装面が形成されたカバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)と、カバー本体の両端部の2つの屈曲部54(第1屈曲部)を形成している。
第1樹脂層62は、結晶性を有し、第2樹脂層61よりもヤング率が大きいので、第2樹脂層61よりも相対的に剛性を高めやすい。しかし、第1樹脂層62の厚みが厚すぎると、サイドカバー50に求められる靱性を確保するのが困難となる。そこで、本実施形態では、第1樹脂層62を第2樹脂層61よりも薄くすることで、剛性と靭性を確保している。また、第2樹脂層61は、第1樹脂層62よりもヤング率が小さいので、靭性が確保しやすい。その一方、第2樹脂層61の剛性は確保しにくい。そこで、第2樹脂層61は、第1樹脂層62より厚みを厚くすることで、剛性と靱性を確保している。また、第2樹脂層61と第1樹脂層62を一体成形して、第1樹脂層62の剛性を高めやすい性質を利用することで、第2樹脂層61に求められる剛性を下げることができる。そのため、剛性と靭性を確保しつつ第2樹脂層61の厚みを薄くできる。そして、サイドカバー50は、結晶性を有する樹脂で形成された第1樹脂層62が、第1樹脂層62よりもヤング率の小さい樹脂で形成された第2樹脂層61よりも薄い状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61が積層されて一体成形された一体積層樹脂部63を含む。これにより、剛性と靱性を確保しつつサイドカバー50を軽量化できる。
【0080】
また、本実施形態のサイドカバー50は、外装面と交差する断面(第1断面)において、第1樹脂層62と第2樹脂層61とが層状に一体成形された一体積層樹脂部63が、外装面が形成されたカバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)と、カバー本体の両端部においてそれぞれ屈曲して形成された2つの屈曲部54(第1屈曲部)を形成している。そのため、サイドカバー50は、剛性を高めやすい第1樹脂層62を含む一体積層樹脂部63の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。そのため、例えば、カバー本体だけが、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63で形成されている場合に比べて、より剛性を高くできる一方、靭性も確保することができる。
したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0081】
仮にヤング率の高い第1樹脂層62だけでサイドカバー50を形成すると、剛性が高くなりすぎて脆くなるので、サイドカバー50全体の靱性が低くなって転倒による割れが発生しやすくなる。一方、本実施形態のサイドカバー50では、ヤング率の小さい第2樹脂層61を有するので、カバー全体の靱性の低下を抑制する。したがって、剛性を高めたとしても割れの発生が抑制されるので外装カバーの機能を損なうことがない。また、本実施形態のサイドカバー50は、第2樹脂層63だけでサイドカバー50を形成した場合に比べて、サイドカバー50の剛性を確保しつつ、軽量化できる。
【0082】
また、本実施形態では、サイドカバー50は、外装面と交差する断面(第1断面)において、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63が2つの縁壁部52(第1縁壁部)が、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)の両端部から同一方向に延びている。サイドカバー50は、剛性を高めやすい第1樹脂層62を含む一体積層樹脂部63の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、2つの縁壁部52が互いに異なる方向に延びている場合に比べて、外装面垂直方向、曲げ方向、および捩り方向に関してサイドカバー50の剛性を向上できる一方、靱性も確保することができる。
したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0083】
本実施形態では、外装面と交差する断面(第1断面)において、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63が形成するカバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)が膨らんだ曲線状に形成されている。サイドカバー50は、剛性を高めやすい第1樹脂層62を含む一体積層樹脂部63の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、カバー本体が平坦状の場合に比べて、外装面垂直方向、曲げ方向、および捩り方向に関してサイドカバー50の剛性を向上できる一方、靱性も確保することができる。
したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0084】
本実施形態のサイドカバー50は、外装面と交差する断面(第1断面)において、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63が形成するカバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)の幅が、カバー本体の両端部に屈曲部54(第1屈曲部)を介して連なる2つの縁壁部52(第1縁壁部)のいずれの長さよりも長くなっている。上述したように、カバー本体は曲線状に形成されているため、例えば、カバー本体が平坦状の場合に比べて、カバー本体の剛性を維持しつつカバー本体の幅をより長くすることができる。サイドカバー50は、剛性を高めやすい第1樹脂層62を含む一体積層樹脂部63の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、カバー本体が平坦状の場合に比べて、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)の幅と剛性を維持しつつカバー本体の厚みを薄くできる一方、靱性も確保することができる。
したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0085】
屈曲部54の屈曲角度の大きさによって、サイドカバー50の剛性の程度は異なる。本実施形態では、サイドカバー50は、外装面と交差する断面(第1断面)において、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63が形成するカバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)の両端部に設けられた2つの屈曲部54(第1屈曲部)の屈曲角度が、互いに異なっている。したがって、例えば、2つの屈曲部54(第1屈曲部)の屈曲角度が同一の場合に比べて、サイドカバー50の剛性の程度を調整しやすい。
したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0086】
縁壁部52の長さが長いほど、サイドカバー50の剛性は高くなる。本実施形態のサイドカバー50は、外装面と交差する断面(第1断面)において、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63が形成する2つの縁壁部52(第1縁壁部)の長さが、互いに異なっている。サイドカバー50は、剛性を高めやすい第1樹脂層62を含む一体積層樹脂部63の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、2つの縁壁部52(第1縁壁部)の長さが同一の場合に比べて、サイドカバー50の剛性を調整しやすい。
したがって、必要な剛性を確保しつつ、縁壁部52(第1縁壁部)の長さをできるだけ短くすることができるため、サイドカバー50をさらに軽量化できる。
【0087】
本実施形態のサイドカバー50は、外装面と交差する少なくとも1つの断面において、一体積層樹脂部63が、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)と、カバー本体の両端部の2つの屈曲部54を形成しているだけでなく、この断面と直交し且つ外装面と交差する断面(第2断面)においても、一体積層樹脂部63が、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)と、カバー本体の両端部の2つの屈曲部54を形成している。サイドカバー50は、剛性を高めやすい第1樹脂層62を含む一体積層樹脂部63の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、第2断面において、カバー本体だけが一体積層樹脂部63で形成されている場合に比べて、サイドカバー50の剛性を確保し易い。
したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0088】
本実施形態のサイドカバー50は、外装面と交差する断面(第1断面)において、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63が、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)の両端部の間に設けられた突出部(53A,53B,53Cまたは53D)を形成している。サイドカバー50は、剛性を高めやすい第1樹脂層62を含む一体積層樹脂部63の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。例えば、突出部が全く設けられていない場合に比べて、サイドカバー50の剛性をより向上できる一方、靱性も確保することができる。
したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0089】
本実施形態では、第1樹脂層62と第2樹脂層61が層状に一体成形された一体積層樹脂部63が形成する縁壁部52が、サイドカバー50の長手方向に延びている。サイドカバー50は、剛性を高めやすい第1樹脂層62を含む一体積層樹脂部63の形状を工夫することで、撓み変形および捩れ変形に対してより剛性を高くできる。本実施形態では、長手方向の広い範囲に亘ってサイドカバー50の剛性と靭性とを確保しつつ軽量化の効果を得ることができる。
したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0090】
また、第2樹脂層61は、結晶性を有する樹脂で形成され、第1樹脂層62よりも結晶化度が低いことが好ましい。結晶化度によってヤング率を調整することができる。層状に一体成形される第1樹脂層62と第2樹脂層61とを同種の樹脂とすることで、前記調整をさらに容易にすることができる。したがって、サイドカバー50に必要な剛性と靭性とを確保した状態で、第1樹脂層62と第2樹脂層61とを薄くすることでより軽量化を図ることが可能になる。
【0091】
また、層状に一体成形される第1樹脂層62および第2樹脂層61が共にポリプロピレンで形成されている場合には、サイドカバー50のコストを抑えることができる。また、層状に一体成形される第1樹脂層62および第2樹脂層61が共にポリアミドで形成されている場合には、サイドカバー50の耐熱性を向上できる。
【0092】
本実施形態のサイドカバー50によれば、カバー本体51および屈曲部54が、第2樹脂層61と、第2樹脂層61よりもヤング率が高くかつ厚さが薄い第1樹脂層62とが積層された状態で一体成形されている。第1樹脂層62は結晶性の樹脂で形成され、第2樹脂層61よりもヤング率が高いので、同じ剛性を発揮するために必要な厚みは、第1樹脂層62の方が第2樹脂層61よりも薄い。第1樹脂層62および第2樹脂層61は、共にポリプロピレンからなっており、比重が等しい。このように第2樹脂層61の一部を、第2樹脂層61よりもヤング率の高い第1樹脂層62で置き換えることにより、重量の増大を抑えながら剛性を高めることができる。換言すれば、剛性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。なお、同じ剛性を確保するために必要な厚みは第1樹脂層の方が第2樹脂層よりも薄いため、第1樹脂層の比重が第2樹脂層の比重よりも大きかったとしても、厚みが薄い分だけ、同じ剛性を発揮するために必要な重量は第1樹脂層の方が第2樹脂層よりも小さい場合がある。そのため、第1樹脂層の比重は必ずしも第2樹脂層の比重以下である必要はない。
【0093】
ところで、第1樹脂層62は第2樹脂層61よりもヤング率が高いが、第2樹脂層61はヤング率を高めるための処理等が不要であるので、第1樹脂層62よりも安価に形成することができる。第1樹脂層62の割合が多くなると、サイドカバー50の剛性をより高めることが期待できるが、コストアップを招くおそれがある。しかし、本実施形態に係るサイドカバー50では、第2樹脂層61は第1樹脂層62よりも厚い。そのため、大幅なコストアップを避けながら、剛性を向上させることができる。
【0094】
また、サイドカバー50は第1樹脂層62および第2樹脂層61からなる一体積層樹脂部63を備えているが、第1樹脂層62と第2樹脂層61とは一体成形されているので、それらが剥離してしまうことはない。よって、一体積層樹脂部63を備えたことに起因してサイドカバー50の剛性が低下してしまうことはない。
【0095】
図11に示すように、サイドカバー950のカバー本体951のみを、本実施形態の第1樹脂層62および第2樹脂層61と同様の構成(材質および厚みなど)の第1樹脂層962および第2樹脂層961を積層して一体成形したもので形成し、サイドカバー950の縁壁部952を第2樹脂層961のみで形成することも考えられる。しかし、本実施形態に係るサイドカバー50では、ある断面において、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)とその両側の屈曲部54および縁壁部52を、第1樹脂層62と第2樹脂層61との一体積層樹脂部63で形成している。サイドカバー50の長手方向は前後方向であるので、走行中に、左右の撓み変形、すなわち鉛直線V回りの撓み変形(
図4の符号A参照)および前後に延びる水平軸H回りの捩り変形(
図4の符号B参照)が生じやすい。そのため、それらの変形を抑えるためには、横断面の断面二次モーメントを高めることが効果的である。カバー本体51のみでは横断面が略平板状であるのに対し、外装面と交差するある断面において、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)とその両側の屈曲部54および縁壁部52からなる部分は、略C字状に形成されている。そのため、この部分は、カバー本体に比べて断面二次モーメントが大きい。本実施形態によれば、第1樹脂層62および第2樹脂層61からなる一体積層樹脂部63を含んでいるという構造面での工夫だけでなく、その一体積層樹脂部63でもってサイドカバー50の横断面の断面二次モーメントを増加させるという形状面での工夫を更に加えたことにより、重量の増大を抑えながら剛性を高めることが可能となった。本実施形態に係るサイドカバー50によれば、上記の効果が有機的に組み合わされることにより、剛性の確保と軽量化とを高い次元で両立させることが可能となった。
【0096】
屈曲部54のなす角度は特に限定されないが、鞍乗型車両用のサイドカバー50としての形状の適合性および剛性を高める観点から、150度以下が好ましく、135度以下が更に好ましい。
【0097】
サイドカバー50が車体フレーム2に支持されたときに、カバー本体51は車体フレーム2の側方に位置し、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)の上下両側に屈曲部54および縁壁部52が配置される。このような構成により、走行中の左右の撓み変形および水平軸回りの捩り変形を好適に抑制することができる。また、本実施形態では、屈曲部54および縁壁部52はカバー本体51の全周にわたって形成されている。したがって、剛性の確保と軽量化とを更に高い次元で両立させることができる。
【0098】
カバー本体51は真っ直ぐな平板状に形成されていてもよいが、本実施形態では、カバー本体51は表側に膨らんでいる。このことにより、カバー本体51の撓み変形および捩れ変形が更に抑制され、カバー本体51の剛性を更に確保することができる。
【0099】
(第2実施形態)
第1実施形態に係るサイドカバー50は、第1樹脂層62が第2樹脂層61の表側に配置され、サイドカバー50の外装面を形成していた。別の言い方をすると、第1樹脂層62は第2樹脂層61に対して、縁壁部52がカバー本体51に対して配置される側に配置されていた。しかし、第2樹脂層61に対する第1樹脂層62の位置は特に限定されない。
【0100】
図12Aに示すように、第1樹脂層62は第2樹脂層61の裏側に配置されていてもよい。第1樹脂層62は第2樹脂層61に対して、縁壁部52がカバー本体51に対して配置される側に配置されていてもよい。また、
図12Bに示すように、第1樹脂層62は第2樹脂層61の表側および裏側の両方に配置されていてもよい。
【0101】
(第3実施形態)
第1実施形態に係るサイドカバー50では、第1樹脂層62および第2樹脂層61は、いずれも単一の層であった。しかし、第2樹脂層61および/または第1樹脂層62は、多層構造を有していてもよい。例えば
図13に示すように、第2樹脂層61が単一の層からなり、第1樹脂層62が多層構造を有していてもよい。
【0102】
図13に示す実施形態では、第1樹脂層62は、第2樹脂層61との密着性を高めるバインダ層62aと、バインダ層62aの上に積層された有色層62bと、有色層62bの上に積層された透明層62cとを備えている。有色層62bは、文字、図形、色彩、模様、またはそれらの組み合わせを有し、サイドカバー50を装飾する機能を有する。なお、有色層62bの色には白色も含まれる。透明層62cは透明であり、有色層62bを保護する機能を有する。有色層62bは透明層62cを通じて視認される。このような形態であれば、サイドカバー50を装飾するためにサイドカバー50の表面に塗装を施したり、装飾用のシールを貼付する必要がない。本実施形態によれば、塗膜またはシールが不要となるので、サイドカバー50に装飾を施す必要がある場合、更に軽量化することができる。
【0103】
本実施形態に係るサイドカバー50は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、透明層62cを構成する透明の樹脂フィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム)の表面にインクを用いて印刷を行い、このインクにより透明層62cの上に有色層62bを形成する。次に、有色層62bの表面にバインダを塗布し、有色層62bの上にバインダ層62aを形成する。これにより、3層構造のシート状の第1樹脂層62が得られる。次に、このシート状の第1樹脂層62を、透明層62cが金型の内壁面と接触するように金型内に配置する。そして、第2樹脂層61の材料を金型内に注入する。その結果、多層構造を有する第1樹脂層62が第2樹脂層61と積層状態で一体成形されたサイドカバー50が得られる。このように、本実施形態に係るサイドカバー50は、例えばフィルムインサート成形によって製造することができる。ただし、本実施形態に係るサイドカバー50の製造方法はフィルムインサート成形に限定される訳ではなく、他の製造方法を用いることも可能である。
【0104】
(他の実施形態)
前述の実施形態はいずれも本発明の実施の形態の一例に過ぎず、本発明は他に種々の形態で実施することができる。
【0105】
第1実施形態に係るサイドカバー50には、ボルト等の締結具59が挿入される孔41A,41B,41Cが形成されていた。孔41A,41B,41Cは、サイドカバー50を車体フレーム2に取り付ける用途に用いられる取付孔であった。しかし、サイドカバー50に形成される孔は、取付孔に限定されない。サイドカバー50には、例えば、自動二輪車1の走行に伴って空気が通過する孔、または装飾のための孔が形成されていてもよい。
【0106】
上記実施形態では、カバー本体51の全周に屈曲部54(および縁壁部52)が形成されているが、屈曲部は、カバー本体の周囲の一部分にのみ形成されていてもよい。ただし、外装面と交差する少なくとも1つの断面において、一体積層樹脂部63が、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)と、このカバー本体の両端部に形成された2つの屈曲部54を形成するものとする。また、この断面が、サイドカバー50の長手方向と交差する断面であって、屈曲部54がサイドカバー50の長手方向に沿って延びていることが好ましい。
【0107】
上記実施形態では、カバー本体51は、外装面と交差する少なくとも1つの断面において、表側に膨らんだ曲線状に形成されているが、この構成に限定されない。カバー本体51全体が、平坦状に形成されていてもよい。また、外装面と交差する少なくとも1つの断面において、カバー本体(カバー本体51、上カバー本体51U、または下カバー本体51D)が、このカバー本体の両端部に形成された2つの屈曲部54を結ぶ仮想直線に対してへこんだ曲線状に形成されていてもよい。
【0108】
上記実施形態では、突出部53A,53B,53C,53Dは、筒状に形成されているが、本発明の突出部は筒状でなくてもよい。また、上記実施形態では、突出部53A,53B,53C,53Dは、全てカバー本体51の裏側に突出しているが、本発明の外装カバーは、外装面から突出する突出部を有していてもよい。
【0109】
上記実施形態では、フロントサイドカバー50に本発明の鞍乗型車両用外装カバーを適用しているが、本発明の鞍乗型車両用外装カバーは、リヤサイドカバー12、フロントフェンダー13およびリヤフェンダー14のいずれに適用してもよい。また、本発明に係る外装カバーは、自動二輪車1以外の鞍乗型車両の外装カバーであってもよい。
【0110】
なお、本発明は、従来提案されてきた肉厚を厚くしたり、リブで補強したり、複数の外装カバーを重ねて締結することで靭性および剛性を確保するという技術思想に依存するものではない。しかしながら、従来提案されてきた技術思想と本発明を組み合わせることで、靭性および剛性を確保しつつ、軽量化をより一層図ることが可能になる。本発明は、従来提案されてきた肉厚を厚くしたり、リブで補強したり、複数の外装カバーを重ねて締結することで靭性および剛性を確保するという技術思想を含む他の技術思想と組み合わせることが可能である。
【0111】
本明細書に用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。上述の実施形態および変更例は、本発明を本明細書に記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。
本発明は、本明細書の開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。そのような実施形態は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」および「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。