特許第6062071号(P6062071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062071
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】レーザ通信端末及びレーザ通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/118 20130101AFI20170106BHJP
   G02B 17/06 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   H04B10/118
   G02B17/06
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-555152(P2015-555152)
(86)(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公表番号】特表2016-510557(P2016-510557A)
(43)【公表日】2016年4月7日
(86)【国際出願番号】US2013071163
(87)【国際公開番号】WO2014126624
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】13/764,989
(32)【優先日】2013年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】クック,レイシー・ジィ
【審査官】 川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0258415(US,A1)
【文献】 特表2009−504110(JP,A)
【文献】 特開平11−326729(JP,A)
【文献】 特開2010−171645(JP,A)
【文献】 特開平11−249028(JP,A)
【文献】 特開平08−050246(JP,A)
【文献】 特開2005−065131(JP,A)
【文献】 特開2012−156685(JP,A)
【文献】 米国特許第06347001(US,B1)
【文献】 中川伸吾 他,光で列車と通信する,RRR 平成22年2月号,財団法人鉄道総合技術研究所,2010年 2月,p.6−9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00 − 10/90
H04J 14/00 − 14/08
G02B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ通信端末であって、
複数のレーザチャネルを含み、各前記レーザチャネルは光信号を送受信するように構成されたチャネルトランシーバを含み、前記レーザ通信端末はさらに、
前記チャネルトランシーバの各々と光学的に結合された無限焦点望遠鏡と、
前記無限焦点望遠鏡と光学的に結合されたシーロスタットミラー対と、
複数のビームステアリングミラーとを含み、少なくとも1つのビームステアリングミラーは、前記複数のレーザチャネルの各チャネルと関連付けられ、前記無限焦点望遠鏡の視野内において対応する光信号を独立してステアリングするように構成される、レーザ通信端末。
【請求項2】
前記レーザ通信端末はジンバルを含むプラットフォーム上に搭載され、
前記シーロスタットミラー対は前記ジンバル上に搭載され、
前記複数のチャネルトランシーバおよび前記複数のビームステアリングミラーは、前記ジンバル上ではなく前記プラットフォームの本体上に搭載される、請求項1に記載のレーザ通信端末。
【請求項3】
前記無限焦点望遠鏡は前記ジンバル上ではなく前記プラットフォームの前記本体上に搭載される、請求項2に記載のレーザ通信端末。
【請求項4】
前記無限焦点望遠鏡は3ミラーアナスチグマートを含む、請求項3に記載のレーザ通信端末。
【請求項5】
前記無限焦点望遠鏡は前記ジンバル上に搭載される、請求項2に記載のレーザ通信端末。
【請求項6】
前記無限焦点望遠鏡は、
屈折力を有する一次ミラーと、
前記一次ミラーから光信号を受け、前記光信号を反射するように構成された、屈折力を有する二次ミラーと、
前記二次ミラーから反射された前記光信号を受け、前記光信号をさらに反射するように構成された四次ミラーと、
前記四次ミラーから反射された前記光信号を受け、前記光信号を前記シーロスタットミラー対に向けるように構成された、屈折力を有する三次ミラーとを含む、請求項5に記載のレーザ通信端末。
【請求項7】
前記四次ミラーは実質的に平坦なミラーである、請求項6に記載のレーザ通信端末。
【請求項8】
前記複数のビームステアリングミラーは前記複数のレーザチャネルの各チャネルに関連付けられるビームステアリングミラーの対を含み、前記ビームステアリングミラーの対は、対応する光信号を、前記無限焦点望遠鏡の視野内において二次元にわたってステアリングするように構成される、請求項6に記載のレーザ通信端末。
【請求項9】
前記無限焦点望遠鏡の視野は約1度と約2度との間にある、請求項1〜8のいずれかに記載のレーザ通信端末。
【請求項10】
レーザ通信を与える方法であって、
各々がレーザ通信チャネルに対応する複数の光信号を生成することを含み、各レーザ通信チャネルは地上ベースの位置と関連付けられ、前記方法はさらに、 前記複数の光信号を無限焦点望遠鏡で送信することと、
各光信号を前記無限焦点望遠鏡の視野内において独立してステアリングして、各光信号を、関連付けられる地上ベースの位置に向けることとを含
前記各光信号を独立してステアリングすることは、各光信号を、前記無限焦点望遠鏡とは離れているそれぞれのビームステアリングミラーで、独立してステアリングすることを含み、
前記複数の光信号を前記無限焦点望遠鏡で送信することは、前記複数の光信号を前記無限焦点望遠鏡からシーロスタットミラー対に向けることを含み、前記方法はさらに、前記複数の光信号を前記シーロスタットミラー対からそれぞれの関連付けられる地上ベースの位置に向けることを含む、方法。
【請求項11】
前記各光信号を独立してステアリングすることは、各光信号を、前記無限焦点望遠鏡とは離れているそれぞれのビームステアリングミラーの対で、独立してステアリングすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各レーザ通信チャネルごとに、関連付けられる地上ベースの位置によって送信されるビーコン信号を監視することをさらに含み、
各光信号を独立してステアリングすることは、前記関連付けられる地上ベースの位置からの前記ビーコン信号の受信に基づいて各光をステアリングすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記関連付けられる地上ベースの位置からの前記ビーコン信号の受信がないことに応答して、代替の地上ベースの位置を選択することと、
前記関連付けられる地上ベースの位置と関連付けられるレーザ通信チャネルに対応する光信号をステアリングして、前記光信号を前記代替の地上ベースの位置に向けることとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
レーザを用いる空間対地上通信では、気象条件が長い間大きな問題だった。レーザ通信が望ましいのは、レーザチャネルが、無線周波数(RF)チャネルよりも、はるかにより大きい帯域幅、およびしたがってはるかにより大きいデータ速度を可能にし得るからである。従来、気象緩和措置は、レーザに基づいた通信からRFに基づいた技術への切換えを、スループットにおける損失を付随して、伴うことがよくある。代替的に、気象関連の問題は、従来非常に小さい視野(たとえばほんの数マイクロラジアン)を有するため各々が単一の位置にアクセスするように構成される複数のレーザ通信端末を用いることによって、または天候を回避するために端末を他の場所に移動することを試みることによって、対処されてもよい。しかしながら、これらの解決策の各々は、関連付けられるコストおよびSWAP(サイズ、重量およびパワー)ペナルティを有する。加えて、端末の移動は、端末が移動されている間、通信システムにおいて避けられないダウンタイムを結果として生じるかもしれない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
局面および実施の形態は、相対的に広視野にわたって独立してステアリングされることが可能である複数の独立したチャネルをサポートすることが可能である先進のレーザ通信端末に向けられる。
【0003】
一実施の形態によれば、レーザ通信端末は、光信号を送受信するように構成されたチャネルトランシーバを各々が含む複数のレーザチャネルと、チャネルトランシーバの各々と光学的に結合された無限焦点望遠鏡と、無限焦点望遠鏡と光学的に結合されたシーロスタットミラー対と、複数のビームステアリングミラーとを含み、少なくとも1つのビームステアリングミラーは、複数のレーザチャネルの各チャネルと関連付けられ、無限焦点望遠鏡の視野内において対応する光信号を独立してステアリングするように構成される。
【0004】
レーザ通信端末はジンバルを含むプラットフォーム上に搭載されてもよい。一例では、シーロスタットミラー対はジンバル上に搭載され、複数のチャネルトランシーバおよび複数のビームステアリングミラーは、ジンバル上ではなくプラットフォームの本体上に搭載される。一例では、無限焦点望遠鏡はジンバル上ではなくプラットフォームの本体上に搭載される。無限焦点望遠鏡は3ミラーアナスチグマートを含んでもよい。他の例では、無限焦点望遠鏡はジンバル上に搭載される。無限焦点望遠鏡は、屈折力を有する一次ミラーと、一次ミラーから光信号を受け、光信号を反射するように構成された、屈折力を有する二次ミラーと、二次ミラーから反射された光信号を受け、光信号をさらに反射するように構成された四次ミラーと、四次ミラーから反射された光信号を受け、光信号をシーロスタットミラー対に向けるように構成された、屈折力を有する三次ミラーとを含んでもよい。一例では、四次ミラーは実質的に平坦なミラーである。複数のビームステアリングミラーは複数のレーザチャネルの各チャネルに関連付けられるビームステアリングミラーの対を含み、ビームステアリングミラーの対は、対応する光信号を、無限焦点望遠鏡の視野内において二次元にわたってステアリングするように構成されてもよい。一例では、無限焦点望遠鏡の視野は約1度と約2度との間にある。
【0005】
他の実施の形態によると、レーザ通信を与える方法は、各々がレーザ通信チャネルに対応する複数の光信号を生成することを含み、各レーザ通信チャネルは地上ベースの位置と関連付けられ、この方法はさらに、複数の光信号を無限焦点望遠鏡で送信することと、各光信号を無限焦点望遠鏡の視野内において独立してステアリングして、各光信号を、関連付けられる地上ベースの位置に向けることとを含む。
【0006】
この方法の一例では、各光信号を独立してステアリングすることは、各光信号を、無限焦点望遠鏡とは離れているそれぞれのビームステアリングミラーで、独立してステアリングすることを含む。別の例では、複数の光信号を無限焦点望遠鏡で送信することは、複数の光信号を無限焦点望遠鏡からシーロスタットミラー対に向けることを含み、この方法はさらに、複数の光信号をシーロスタットミラー対からそれぞれの関連付けられる地上ベースの位置に向けることを含んでもよい。別の例では、各光信号を独立してステアリングすることは、各光信号を、無限焦点望遠鏡とは離れているそれぞれのビームステアリングミラーの対で、独立してステアリングすることを含む。この方法はさらに、各レーザ通信チャネルごとに、関連付けられる地上ベースの位置によって送信されるビーコン信号を監視することを含んでもよく、各光信号を独立してステアリングすることは、関連付けられる地上ベースの位置からのビーコン信号の受信に基づいて各光をステアリングすることを含む。一例では、この方法は、関連付けられる地上ベースの位置からのビーコン信号の受信がないことに応答して、代替の地上ベースの位置を選択することと、関連付けられる地上ベースの位置と関連付けられるレーザ通信チャネルに対応する光信号をステアリングして、光信号を代替の地上ベースの位置に向けることとをさらに含む。
【0007】
これらの例示的な局面および実施の形態の、さらなる他の局面、実施の形態および利点が、詳細に以下に論じられる。ここに開示される実施の形態は、ここに開示される原理の少なくとも1つと整合する任意の態様で他の実施の形態と組み合わせられてもよく、「実施の形態」、「ある実施の形態」、「代替的な実施の形態」、「さまざまな実施の形態」および「一実施の形態」などへの言及は、必ずしも相互排除的ではなく、記載される特定の特徴、構造または特性が少なくとも一実施の形態において含まれてもよいことを示すことが意図される。そのような用語の出現はここにおいては必ずしもすべてが同じ実施の形態に言及してはいない。
【0008】
図面の簡単な説明
少なくとも一実施の形態のさまざまな局面が、尺度決めされるようには意図されない添付の図を参照して以下に論じられる。図は説明ならびにさまざまな局面および実施の形態のさらなる理解を与えるように含まれ、この明細書に組み込まれ、この明細書の一部を構成するが、この発明の限定の定義として意図されるものではない。図では、さまざまな図において示される同一またはほとんど同一の各構成要素は、同様の番号によって表される。明瞭にするため、すべての構成要素がすべての図において符号付けられるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の局面に従うレーザ通信端末の一例のブロック図である。
図2】この発明の局面に従う図1のレーザ通信端末の一部に対応するレイトレースである。
図3】この発明の局面に従うレーザ通信端末の他の例のブロック図である。
図4】この発明の局面に従う図3のレーザ通信端末の一部に対応するレイトレースである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な記載
局面および実施の形態は、同時に複数の位置にアクセスし、非常に限定された視野および任意の所与の時間において1つの位置にのみアクセスする能力を有する従来のLC端末を超える先進の能力を与える能力を有するレーザ通信(LC)端末に向けられる。上に論じられるように、気象現象は空間対地上レーザ通信の文脈において著しい問題であり得る。しかしながら、大抵の気象パターンは適度に局地化される。統計的に、位置間の地上分離が大きいほど、1つの位置における悪天候が代替位置における同様の悪天候に相互に関連しない可能性が大きい。したがって、局面および実施の形態は、地上においてたとえば何百キロメートルという大きな距離によって分離された複数の地上位置に同時の2方向の安定した通信リンクを与えることが可能であるレーザ通信端末に向けられる。これらの地上位置は、たとえば光ファイバまたは他の高帯域幅ケーブルを用いて、ともにリンクされてもよい。したがって、1つの位置へのアクセスが天候のために途絶されても、通信は他の位置と確立されてもよく、任意で、ケーブルを介して最初の位置に伝達されてもよい。このように、通信に対する局所化された気象の影響は緩和され得る。
【0011】
より詳細に以下に論じられるように、ある実施の形態によれば、LC端末は、端末の前置光学系と関連付けられる相対的に広い視野内において、複数の独立した個々にステアリング可能なチャネルを収容する。各チャネルは、異なる地上ベースの位置と関連付けられてもよい。したがって、全体的な動眼視野(FOR)内において端末の位置を変えずに、局面および実施の形態は、端末の視野(FOV)内において最良の地上位置への高速アクセスを可能にし、それによって、天候緩和措置を可能にする。加えて、さらに以下に論じられるように、ある実施の形態は、システムにおいて可能な限りわずかな移動質量で広視野を与え、任意ですべてまたはほとんどの複雑で、機械的、熱的、および電気的な装置を「ジンバル外で」維持するように構成される。
【0012】
ここに論じられる方法および装置の実施の形態は、適用において、以下の記載に述べられるかまたは添付の図面に示される構築物の詳細および構成要素の配置に限定されないことが理解される。方法および装置は、他の実施の形態における実現、およびさまざまな態様における実施または実行が可能である。具体的な実現例は、例示の目的のみのためにここに与えられ、限定するようには意図されない。特に、任意の1つ以上の実施の形態と関連して論じられる動作、要素および特徴は、任意の他の実施の形態において同様の役割から排除されるようには意図されない。さらに、ここに用いられる語法および用語は、記載の目的のためであり、限定するように見なされるべきでない。ここにおける「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」、「伴う」およびその変形の使用は、その後列挙される項目およびそれらの等価物ならびにさらなる項目を包含するよう意味される。「または」への言及は包含的であるように解釈され得、「または」を使用して記載される任意の用語は、その記載される用語の1つ、2つ以上、およびすべてのいずれを示してもよい。
【0013】
ある実施の形態によれば、空間ベースのレーザ通信(LC)端末はビークルまたは航宙機(たとえば人工衛星など)上に搭載されるように構成される。ビークルは、ここにおいては、ジンバルと呼ばれる、可動で、一般に回転可能なプラットフォームを含み、その上には、LC端末の光学構成要素の少なくともいくつかが位置される。ジンバルの回転、およびしたがってジンバルに位置する構成要素は、たとえば約20〜40°の広い動眼視野(WFOR)を与え、それは、空間ベースのプラットフォームから、地上において非常に広い領域にわたってカバレージを与えるのに十分である。加えて、LC端末は、約1〜2°の内部の広視野(WFOV)とともに構成される。したがって、さらに以下に論じられるように、LC端末は、WFOR指示装置およびWFOV無限焦点望遠鏡を含んでもよい。LC端末は2つ以上の独立したチャネルに対応するように構成されてもよく、したがって、多数の周知のチャネル分割技術のいずれかを実現するように構成されてもよい。さらに以下に論じられるように、LC端末はシステムの視野内においてチャネルの各々をステアリングするビームステアリング装置を含んでもよく、さらに、さまざまな視準および結像構成要素を含むことにより、この開示の恩恵を与えられて、当業者によって評価され理解されるように、2方向通信と関連付けられる送受信機能を実行してもよい。
【0014】
図1を参照して、ある局面および実施の形態に従うLC端末の一例の機能ブロック図が示される。この例において、LC端末は2つの独立したチャネルを含み、したがって、それぞれ(ここではチャネル1およびチャネル2と呼ばれる)第1および第2のチャネルと関連付けられる、第1および第2のトランシーバ110、120を含む。ビームスプリッタ130(または他のチャネル分割装置)は、2つのチャネルを分離するために用いられる。無限焦点前置光学系140はすべてチャネルのための共通光路において位置決めされ、LC端末のための視野を与える。上に論じられるように、一例では、この視野は約1〜2°であり、それは低い地球軌道人工衛星からでも、たとえば数百キロメートルにわたる地上における広い領域をカバーする。無限焦点前置光学系140は、シーロスタットミラー対150との間で各チャネルに対する光束を向ける。一例では、シーロスタットミラー対は、光学的にともに結合される第1のミラー152および第2のミラー154を含む。
【0015】
図1に示された例においては、線160の左に位置決めされる構成要素は「ジンバル上に」搭載され、線160の右の構成要素は「ジンバル外に」(たとえばLC端末が位置されるビークルの本体上に)搭載される。したがって、図1に示される例において、シーロスタットミラー対150は無限焦点前置光学系140に対して物空間に位置し、無限焦点前置光学系はジンバル外にある。一実施の形態によると、LC端末は、さらに、各チャネルごとにビームステアリングミラーを含み、すなわち、チャネル1と関連付けられる第1のビームステアリングミラー115およびチャネル2と関連付けられる第2のビームステアリングミラー125を含む。ビームステアリングミラー115、125は、無限焦点前置光学系の視野内においてそれぞれのチャネルと関連付けられる光束を差し向けるため、および光束安定化のために、用いられてもよい。ビームステアリングミラー115、125を用いて、各チャネルは、無限焦点前置光学系140の視野内においてその関連付けられる地上位置に正確に向けられてもよい。ある例では、ビームステアリングミラー115、125の使用は、それが、より多くの質量を有する構成要素ではなく、小さいミラーのみを移動させることによって、光束の差し向けを可能にするという点で有利であってもよく、したがって、パワー要件の点、およびより正確な差し向けを可能にしている点において、効率的であってもよい。
【0016】
図2は、図1のLC端末において用いられてもよいWFOV無限焦点前置光学系140の一例のレイトレースであり、物空間におけるシーロスタットミラー対150の位置決めも示す。示された例では、無限焦点前置光学系140は3ミラーアナスチグマート(TMA)であり、一次ミラー210、二次ミラー220および三次ミラー230を含む。一例では、図2に示されるTMA形式を有する無限焦点前置光学系140は、2°の視野および4X倍率を有する。
【0017】
図1および図2を参照して上に論じられるLC端末は、無限焦点前置光学系140の視野内において複数の独立してステアリング可能なチャネルを与えることが可能である。加えて、無限焦点前置光学系140の視野は、ジンバル上シーロスタットミラー対150を回転させることによって、端末の、より広い動眼視野上を走査されてもよい。この構成は、各チャネルが、ある特定の位置と関連付けられ、その特定の位置に向けられ得るので、端末が複数の地上ベースの位置を同時にアクセスすることを可能にする。上に論じられるように、互いから相対的に遠く離れて離間される複数の地上ベースの位置は、LC端末の1〜2°視野内に包含されてもよい。加えて、動眼視野内において視野を移動させることによって、代替位置がアクセスされてもよい。
【0018】
上記の論じられた例では、無限焦点前置光学系140はジンバル外に位置する。他の実施の形態では、LC端末は、ジンバル上に位置される無限焦点前置光学系を含んでもよい。図3を参照して、内部のシーロスタットミラー対340およびジンバル上無限焦点前置光学系330を含むLC端末の一例の機能ブロック図が示される。図1に関して上に論じられた例と同様に、シーロスタットミラー対340は、光学的にともに結合される第1のミラー342および第2のミラー344を含んでもよい。各チャネルはビームステアリングミラー対310、320を含んでもよい。無限焦点前置光学系330がジンバル上に位置されるこの例では、単一のビームステアリングミラーではなく、ビームステアリングミラー対が、無限焦点前置光学系330の視野内において二次元(たとえば方位および高さ)にわたって光束をステアリングするために必要であってもよい。上に論じられるように、ビームステアリングミラー対310および320を用いて、各チャネルの光束をその関連付けられる地上位置に向かって向け、さらに、ビームステアリングミラー対310および320を光束安定化に対して用いてもよい。
【0019】
図4は、図3のLC端末の実施の形態において用いられてもよい内部のシーロスタットミラー対340を含むWFOV無限焦点前置光学系330構成の一例のレイトレースである。示された例では、WFOV無限焦点前置光学系330は屈折力を有する3つのミラー、つまり一次ミラー410、二次ミラー420および三次ミラー430を含む。WFOV無限焦点前置光学系330は、図4において示されるように、二次ミラー420と三次ミラー430との間に光学的に位置決めされる四次ミラー440をさらに含む。一例では、四次ミラー440は実質的に平坦である。したがって、この構成では、WFOV無限焦点前置光学系330は、図2において示される3ミラーアナスチグマートと同様の光学的形式を含むが、しかしさらに四次ミラー440を含む。一例では、WFOV無限焦点前置光学系330は、2°の視野および4X倍率を有する。下記の表1は、図4のWFOV無限焦点前置光学系330構成の実施の形態のための光学的規定の一例を与える。この例示システムのための光学的規定は、業界標準であり、当業者には公知であろう等式を用いて生成されてもよい。しかしながら、表1において与えられる規定は単に例示的であること、およびWFOV無限焦点前置光学系のさまざまな実施の形態の規定はシステムによって実行される意図されるタスクによって判断されることが理解される。表1における単位はセンチメートルである。
【0020】
【表1】
【0021】
表1では、Rdと指定された欄は表面の半径であり、負符号(−)は、曲率中心が表面の左にあることを示す。CCと指定された欄は、円錐曲線(二重シートの(double sheeted)円錐面を通る平面切断)の偏心度の負の2乗された値と等しい円錐定数である。「Thk」と指定された欄は、表面の厚みである。「Matl」と指定された欄は、素子の材料である(Reflは「反射性」を意味する)。xyz座標系に関して、y軸を接平面にとり、x軸をサジタル平面にとって、光軸をz軸と考える。YDecと指定された欄は、偏心化距離である。偏心化はy軸に沿って線形測定の単位で測定され、座標系の原点からの表面の頂点の変位を表す。Ytiltと指定された欄は、傾斜を記載する。ミラー表面の各々は回転面として形成されてもよく、これは円錐曲線を軸のまわりで回転させることによって行われる。Ytilt欄は、この軸のyz面における傾斜を与える。傾斜の度合の正の数は、xyz座標系を参照して反時計回りの方向における傾斜を表す。
【0022】
したがって、局面および実施の形態は、複数の広く分離した地上ベースの位置に同時にアクセスして、気象条件を緩和し向上した通信能力を与えることが可能である先進のLC端末を与える。各LC端末が複数の位置にアクセスすることが可能であるので、大きな地理的領域にわたって堅固なカバレージを与えるために必要とされるLC端末の総数が最小限にされ得る。WFOV無限焦点前置光学系と各チャネルに対するビームステアリングミラーとの組合わせを用い、一方で、さらに、上に論じられたように、各チャネルに関連付けられる大多数の電子機器および構成要素を(ジンバル外で)本体に搭載することによって、所望のカバレージを与えるために大きい角度にわたって移動される必要のあるハードウェアの量が最小限にされ得る。加えて、WFOV無限焦点前置光学系とビームステアリングミラーとの組合わせは、LC端末の複数チャネルが、前置光学系の視野内に位置する任意の位置に速やかにかつ内部的に向けられ安定されることを可能にする。ある実施の形態では、地上位置は、データが各それぞれの位置と関連付けられるチャネルをわたって送信されることに加えて、「ビーコン」信号を送信するように構成されてもよい。ビーコン信号は、LC端末によって用いられることにより、正確なチャネルが、関連付けられる地上位置に正確に向けられ安定させられる状態で保持される。さらに、ビーコン信号が受信されないことは、LC端末に対して、気象条件または他のなんらかの条件もしくはエラーが、関連付けられる地上位置との通信を妨げている旨を示してもよく、LC端末は、代替位置との通信を確立してもよい。従来のデータ/ビーコン分離技術は、たとえば、ビーコン信号を得るためにチャネルトランシーバ110および120において実現されてもよい。したがって、局面および実施の形態は、気象または他の条件を緩和し、堅固な通信を与えるために、複数の位置にアクセスすることにおいて、最大の機敏性をLC端末を与え得る。
【0023】
少なくとも一実施の形態のいくつかの局面を上に記載したが、さまざまな変更、修正および改良が当業者には容易に想起されることが理解される。たとえば、図1および図3において示されるブロック図は2つのチャネルを含むLC端末を示すが、端末は、2つに限定されない任意の数のチャネルとともに構成されてもよく、この開示の恩恵を与えられて、当業者によって理解されるように、周知のチャネル分割技術を用いて、各チャネルごとに信号を分離してもよい。そのような変更、修正および改良は、この開示の一部であるように意図され、この発明の範囲内にあるように意図される。したがって、前述の記載および図面は例示のみによるものであり、この発明の範囲は特許請求の範囲の適切な構築物およびそれらの等価物から判断されるべきである。
図1
図2
図3
図4