【実施例】
【0078】
下記で実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明に対する理解を促すために、例示の目的にのみ提供されただけで、本発明の範疇及び範囲がこれに限定されないことを明らかにする。
【0079】
<実施例1>
溶媒として炭酸水100mL中にアスコルビン酸46g、アスコルビン酸カルシウム2g、ソルビトール40g、ビサコジル10mg、クエン酸1.5g、ドキュセートナトリウム33.5mg、カフェイン20mg、ペクチン100mg、酸化亜鉛30mg、シメチコン300mg、炭酸水素ナトリウム1.5g、炭酸水素カリウム2g、スクラロース35mgを配合し、150mlの高濃縮液を準備し、別途のビヒクルとして炭酸水350mlを準備し、二液型腸洗浄用組成物を準備した。
配合は、すべての粉末形態の成分を一度に混ぜた後、炭酸水を注いで溶解させる方式で施行した。配合中に酸性であるアスコルビン酸及びクエン酸とアルカリ性である重炭酸塩間の中和反応により発生する多量の炭酸(CO
2)ガスが激しいバブルを発生させるため、注意を要する。これらのバブルは、気泡除去剤であるシメチコンを含有したGasocol(登録商標)を1:10で希釈した溶液を予め準備し、適宜添加しながら配合をすれば十分に抑制でき、配合過程を順調に進行できる。
上記の各成分のうち、食餌性繊維に属するペクチンは、溶解が容易ではなく溶媒に完全に溶解させるためには十分にかき混ぜなければならず、シリコンが30%程含まれているシメチコン原料医薬品は、水に全く溶けないため、本実施例ではシメチコンを主成分として含有している液状の薬剤であるGasocol(登録商標)を代用として用いた。
【0080】
<実施例2>
溶媒として、ミネラルウォーター100mL中にアスコルビン酸30g、キシリトール60g、ビサコジル10mg、クエン酸1.5g、シメチコン300mg、炭酸水素カリウム5g、スクラロース35mgを配合して150mlの高濃縮液を準備し、別途のビヒクルとしてミネラルウォーター350mlを準備し、二液型腸洗浄用組成物を準備した。各成分の配合方法は、実施例1と同一に施行した。
【0081】
<比較参考例1〜6>
本発明に第1洗浄成分として用いられる糖アルコールの安全性を確認するためのin vitro実験のために、実施例1の溶液に関する比較サンプルとして比較参考例1〜6を準備した。
比較参考例1〜6は、それぞれコリット溶液、ピコライト溶液、クールプレップ溶液、ソルビトール(100g/L)溶液、マンニトール(100g/L)溶液、12%キシリトール(120g/L)溶液であり、コリット溶液、ピコライト溶液、クールプレップ溶液は、それぞれの推奨服用法通りミネラルウォーターに希釈した溶液であって、それぞれの活性成分の濃度は、それぞれの腸洗浄時に用いる濃度と同一である。
【0082】
<試験例1:可燃性ガスの発生に関連する安全性実験(in vitro実験)>
水素ガス及びメタンガス濃度の測定
腸内の可燃性ガスの発生に対する安全性試験に関連し、大腸内視鏡検査の途中に被検査者から適切な検体を採取したり腸内のガスを測定することが容易ではなく、各被検査者の腸洗浄後の条件が多様に互いに異なる状態で確認した、制限された例の結果のみをもって、各洗浄液による差と結論を出すことは妥当ではないため、同一の条件下で施行が可能なin vitro実験を通じて実施例1により製造された組成物の危険可能性を間接的に確認することにした。
【0083】
このために、実施例1、比較参考例1〜比較参考例5、対照群(ミネラルウォーター)の各溶液に、5人から採取した便を希釈した溶液を混ぜて、500mlの容器に入れて18時間室温で保管した後、ガス測定器を用いて各容器内のガス濃度を測定した。この時、便を希釈した溶液は、5人の互いに異なる者から便を採取した後、各人の便の3g程度をミネラルウォーター100mlで希釈し、いずれも5種類の便の希釈液を作った。
【0084】
実験方法を具体的に説明すると次の通りである。
5人から採取した便で作った上記便の希釈液を、各個人ごとに7個の500ml容器にそれぞれ10mlずつ分けて入れ、同一の便の希釈液を入れた容器を7個ずつ作製し、このようにして5人の便の希釈液を入れた計35個の容器を準備した。
各者の同一の便の希釈液を入れた7個の容器に、順序に従って、実施例1、比較参考例1〜5(それぞれコリット、ピコライト、クールプレップ、ソルビトール、マンニトール溶液)、対照群(ミネラルウォーター)の実験溶液をそれぞれ10mlずつ添加した。
このように便の希釈液と各実験溶液を混合して入れた後、容器の蓋を固く塞ぎ、密閉したまま18時間室温に保管した。
その後、各容器内の水素ガス及びメタンガス濃度をGeotech GA5000ガス測定器(英国のLandtech社製品)を用いて測定した。Geotech GA5000ガス測定器は、メタンガスはvol%単位で、水素ガスは0〜1000ppmまで測定可能である。
計35個の容器内のガス濃度を測定した結果、可燃性ガスである水素ガスとメタンガス濃度の測定値の平均は下記の表の通りある。
【0085】
【表1】
【0086】
上記表で見られるように、実施例1の腸洗浄用組成物は、80g/L濃度のソルビトールを含んでいるにもかかわらず水素ガスが全く検出されず、メタンガス濃度も0.14%で対照群と同一であり、比較参考例1〜5の腸洗浄液より低かった。即ち、本発明による腸洗浄用組成物は、腸内可燃性ガス生成に関連し、最も安全なものであることが確認できる。
【0087】
菌培養検査
上記ガス濃度測定を終えた後、各容器に入っている混合溶液を、CAP認証と大韓診断検査医学会/診断検査医学財団の優秀検査室の新任認証を受けたソウル医科学研究所(SCL)検査室に依頼し、48時間培地に培養をした後、各容器別の菌株数(colony count)を測定した。
各実験溶液別に成長した菌株数の平均値を、下記の表に示した。また、
図1に実施例1、比較参考例1〜5、及び対照群に対する腸内の細菌培養の結果を示した。
【0088】
【表2】
【0089】
上記菌株数の測定結果は、本発明による腸洗浄用組成物の抗菌効果をさらに明確に確認できる。具体的には、実施例1の場合、5人の全員の便の希釈液を培養した結果、どこでも菌が全く培養されなかった。即ち、実施例1の場合、水素ガスやメタンガスなど、可燃性ガスを生成できる菌自体がいずれも殺菌されたことが分かる。このような結果は、たとえin vitro実験の結果であるとしても、腸内の可燃性ガスの発生に関連し、本発明による腸洗浄用組成物が既存のいかなる腸洗浄剤よりも安全であるということが確認できるものである。
【0090】
また、第1洗浄成分としてキシリトールを用いた実施例2に関連し、腸内の細菌に対する抗菌効果を確認するために、被検者の1人から採取した便を5%希釈液に作製し、それぞれ10mlずつ1から6まで6個の容器に分けて入れた後、順に実施例2の溶液、コリット溶液(比較参考例1)、ピコライト溶液(比較参考例2)、クールプレップ溶液(比較参考例3)、12%キシリトール溶液(比較参考例6)、ミネラルウォーター(対照群)を15mlずつ添加した後、これらの混合溶液をそれぞれ半分にし、CAP認証と大韓診断検査医学会/診断検査医学財団の優秀検査室の新任認証を受けたソウル医科学研究所(SCL)検査室と大韓診断検査医学会から優秀検査室の新任認証を受けた緑十字医療財団検査室等、2つの検査機関に依頼して菌培養検査を施行した。
菌培養実験結果は、次の通りである。
【0091】
【表3】
【0092】
上記表の結果から、実施例2の溶液を添加した便の希釈液において、培養された菌株数が最も少ないことが分かる。また、実施例2に含まれたキシリトールの濃度と同一の12%キシリトール溶液が添加された便の希釈液においても、対照群と類似する菌株数が培養されたことが確認できる。このような結果は、キシリトールの抗菌効果を間接的に確認したもので、キシリトールが腸洗浄液の主成分として用いられるとき、腸内の細菌の増殖を助長する可能性がないことが分かる。
上記試験結果から、キシリトールとアスコルビン酸を主成分とする実施例2の組成物は、腸内の細菌増殖とその結果による腸内の可燃性ガスの発生の危険性に関連し、非常に安全な組成物であることが確認できる。
【0093】
このような優れた抗菌効果の結果は、本発明による腸洗浄用組成物を大腸手術前処置用下剤として用いる場合、手術後の感染の発生頻度を低くするのに大きく寄与できる。参考として、大腸手術中には、腸の内容物による汚染が発生し得るため、これによる手術部位の感染を予防するために、抗生剤を手術前に事前に投与することが定石的な治療法となっている。しかし、本発明による腸洗浄用組成物で手術前に腸処置をすれば、腸の内容物中の細菌が殺菌または抑制されることにより、腸内容物による汚染が起こる場合にも感染の発生可能性を顕著に低くすることができる。
【0094】
このような効果は、既存の腸洗浄液が大腸内視鏡検査前に腸洗浄の用途として用いられるだけでなく、大腸手術前に腸処置のための主な下剤としても用いられている点を考慮すると、本発明による腸洗浄用組成物の意義を一層高めることができる。
【0095】
以上の2種類のin vitro安全性実験から、本発明による新たな腸洗浄用組成物は、これまで用いられてきた他の腸洗浄剤より可燃性ガスである水素ガスとメタンガスの発生を最小化し、細菌の増殖を抑制し、危険性が最も低いことが分かる。
【0096】
<比較例1〜3>
本発明による腸洗浄用組成物服用の容易性、各腸洗浄効果、安全性に関する比較実験のために、比較例1〜3を準備した。
具体的には、in vivo実験用として、既存の商用の腸洗浄剤製品であるコリット、ピコライト、クールプレップをそれぞれ推奨配合量で水と混合した腸洗浄用組成物をそれぞれ比較例1〜3として準備した。比較例1〜3で準備した各腸洗浄剤の種類及び水の配合量は、下記表4に示した。
【0097】
【表4】
-コリット:テジュン製薬社製造、1袋当り提供含量34.65g
-ピコライト:(株)韓国パームビオ社製造、1袋当り提供含量16.37g
-クールプレップ:テジュン製薬社製造、1袋当り提供含量56.402g
【0098】
図2は、本発明の実施例1及び比較例1〜3による腸洗浄用組成物の服用量を示すためのもので、組成物製造用腸洗浄成分及び溶媒を配合する前の状態の比較例1〜3と、腸洗浄成分及び水溶性溶媒を配合した状態の実施例1及び2を示す写真である。
図2で見られるように、実施例1及び2の場合、比較例1〜3に比べて服用量が1/8〜1/6の水準で大幅に減少した。
【0099】
上記実施例1、実施例2及び比較例1〜3で製造された腸洗浄用組成物に対する洗浄性能の分析及び服用順応度の評価を実施した。
具体的には、大腸内視鏡の被検査者を対象とし、それぞれ比較例1は8人、比較例2は45人、比較例3は49人、実施例1は48人、実施例2は50人を通じて腸洗浄力、服用の容易性、安全性如何を試験した。比較例1の対象者が少ない理由は、4Lを飲まなければならないコリット酸の不都合に対する認識が広く広まっていたため、被検査者がこの薬剤を積極的に忌避し、対象者を確保するのに限界があったためである。
【0100】
実施例1、2と比較例1〜3、それぞれの具体的な服用方法は、次の通りである。
実施例1、2の服用方法は、検査予定時刻の5時間前に始め、計500mlの腸洗浄溶液を一度に100ml(5口、紙カップの半分量)ずつ10分ごとに5回にわたり服用することを原則とした。このようにすることにより、洗浄剤の服用に計40分〜50分が要された。
比較例1、即ちコリット酸4Lの服用方法は、製品の説明書に出ている推奨服用方法、即ち、検査予定の6時間前から始め、10分ごとに250mlずつ計16回にわたり服用する方法で施行し、計2時間30分程度要された。
比較例2、即ちピコライト3.45Lは、検査前日の夕方7時に、提供された1袋を水150mlに希釈して飲んだ後、続いて1時間にわたり1Lの水を追加で飲むようにし、検査当日の5時間前と4時間前に同一の方法で2回にわたり服用した。
比較例3、即ち、クールプレップ3Lは、検査前日の夕方7時に調剤溶液1Lを1時間にわたり服用し(15分ごとに250mlずつ)、検査当日の5時間前に再度1時間にわたり1Lの調剤溶液を飲む方法を用いた。夕方と当日明け方に希釈液を全て飲んだ後、それぞれ500mLの水を追加で飲ました。
【0101】
<試験例2:腸洗浄力>
腸洗浄力は、(1)腸清潔度、及び(2)気泡の量の2種類の項目で調査した。
腸清潔度
腸清潔度は、外科医者がその清潔水準を下記表5及び
図3でのような判断基準に基づいて卓越(Excellent)、優秀(Good)、普通(Fair)、不十分(Poor)、検査不可(Fail)の5段階に分けて評価した。腸清潔度の評価は、公正な評価のために、患者が飲んだ腸洗浄用組成物に関する情報を当該大腸内視鏡検査を実施する外科医者に露出しない状態で、ブラインドテストとして実施した。
【0102】
【表5】
【0103】
表5及び
図3の基準による腸清潔度の評価結果は、下記表6に示した。
【0104】
【表6】
【0105】
また、上記結果を腸内視鏡検査に適する状態である「きれいな腸洗浄」と正確な検査をするのに不十分、または不可能であった状態である「不十分な腸洗浄」に分類し、
図4a及び
図4bに示した。「きれいな腸洗浄」は、卓越、優秀の状態が含まれ、「不十分な腸洗浄」には、普通、不十分、検査不可の状態が含まれる。
【0106】
上記表6、
図4a及び
図4bで見られるように、実施例2のきれいな腸洗浄の割合が94%と最も優れ、実施例1が91.7%と後に続き、比較例2がきれいな腸洗浄の割合が50%に過ぎず、清潔度が最も悪いものと確認された。比較例1及び比較例3もきれいな腸洗浄の割合は、それぞれ75%、67.3%に過ぎなかった。このような結果は、PEG製剤及びリン酸塩製剤の腸洗浄適合度が70〜75%程度であると報告した外国論文の内容にもある程度は符合する<「Colonoscopy preparation」、ASGE technology committee, GASTROINTESTINAL ENDOSCOPY, 69(No.7):1201-1209, 2009>。
【0107】
ところが、比較例1〜3でのような不十分な洗浄力は、正確な腸内視鏡検査を不可能にするため、現実的に深刻な問題を引き起こす。即ち、通常、腸内視鏡検査を4〜5年に1回施行するが、難しい腸洗浄を経た後に実施する腸内視鏡検査の結果が不正確で、ポリープを発見できなかったり、早期に大腸癌を発見できなかった場合、通常次回検査時まで、即ち4〜5年間疾病を放置するようになり、ポリープが癌に進んだり、早期大腸癌が進行性大腸癌に進むことが発生し得る。
【0108】
気泡(bubble)の量
正確な腸内視鏡検査のために、腸清潔度以外に重要な要素があるが、これは大腸内の気泡(バブル、bubble)の存否である。ほぼ全ての腸洗浄剤は、腸洗浄後に大腸内に気泡を発生させる傾向がある。従って、小さな病巣まで探し出すために、腸内部を隙間なく詳察するためには、これらの気泡を予防したり除去することが必須である。実施例1、2及び比較例1〜3の腸洗浄用組成物の服用後、気泡の存否及び存在程度を観測し、その結果を下記表7に示した。この時、気泡の存在程度は、なし、若干あり、多いの3段階に分けて評価した。また、
図5は、比較例によって製造された腸洗浄用組成物の服用後、腸内に多くの気泡が発生した状態を示す写真である。
【0109】
【表7】
【0110】
上記結果で見られるように、実施例1、2の場合、それぞれ85.4%、88%で気泡が発生しなかったが、比較例1〜3の場合、気泡が発生しない割合が30%程度の水準に過ぎず、特に比較例2及び3の場合、3人のうち1人以上において検査が大きく妨害を受ける程に多量の気泡が発生した。気泡が発生する場合、大腸内視鏡検査中に薬剤を用いて洗い落とすことはできるが、一度に洗われる範囲が制限的なため、このために相当な努力と時間が要される。即ち、過度な気泡の発生は、円滑な大腸内視鏡検査を妨害するだけでなく、小さな病巣を見失う原因として作用する。実施例1、2の腸洗浄用組成物の場合、気泡の発生がほぼ予防され、検査時間を短縮すると共に病巣の観察にさらに時間をかけられるようにするだけでなく、きれいな視野によって小さな病巣の発見を容易にするため、疾患の診断率を高めることができる。
【0111】
<試験例3:服用の容易性>
服用の容易性は、(1)洗浄剤の味、(2)服用後の不調症状、(3)家族に勧める意思の如何、及び(4)改善の必要性の4種の項目で調査した。
【0112】
洗浄剤の味
洗浄剤の味は、非常にまずい、若干まずい、無難の3段階に分け、アンケート調査を通じてその程度を本人が主観的に判断するようにし、その評価値の百分率を求め、下記表8に示した。
【0113】
【表8】
【0114】
上記結果で見られるように、実施例1、2では、洗浄剤の味が無難であるという評価がそれぞれ85.4%、90%で、比較例2より若干低い程度であったが、比較例1及び比較例3は無難であるという評価がそれぞれ50%と32.6%に過ぎない。特に、比較例3は、比較例1より服用量が3/4と減ったにもかかわらず、味がまずいという割合はむしろ高かった。
【0115】
服用後の不調症状
服用後の不調症状は、腹痛、ガス膨満、嘔吐、のどの渇きの4項目に分類し、アンケート調査を通じて患者本人が感知した不調症状を表示するようにし、その評価値の百分率を求めて下記表9に示した。
【0116】
【表9】
【0117】
上記表9で見られるように、実施例1、2は、腹痛、ガス膨満、嘔吐の項目において、既存の腸洗浄剤より低いか、類似する水準の不調症状を示すことが分かる。ただし、実施例1がのどの渇き項目で頻度が多少高く出たが、これは服用する水の量が相対的に少ないためであると見られる。これは、試験過程で洗浄剤の効果を正確に評価するために、被検査者が追加で水分を摂取することを制限した影響もあったものと思われる。実際に、本実験が終わった後、被検査者に必要に応じて1〜2カップの水を追加で飲むように許容した後、のどの渇きを訴える割合は顕著に減少した。一方、比較例1及び比較例3の場合、嘔吐の頻度が相当高かったが、これはPEG製剤のひどい味と関連があると見られる。
【0118】
推薦意向の如何
被検査者に、家族に推薦する意向があるかどうかについてアンケート調査をし、推薦する意向がないと否定的に答えた者の割合を求め、下記表10に示した。
【0119】
【表10】
【0120】
上記結果で見られるように、味がまずく、服用量が多い比較例1の場合、被検査者のうち62.5%が推薦意思がないと答え、非推薦の割合が最も高く、比較例3の場合にも、非推薦の割合が53%と相当高かった。服用量が3Lである比較例3(クールプレップ)が、服用量が3.45Lである比較例2(ピコライト)に比べて非推薦の割合が6倍(8.9%vs. 53%)も高いということは、PEG製剤に対して好まないことを克明に示す結果と見られる。
一方、腸洗浄力においては最も劣った比較例2は、洗浄剤の味においては「無難」という比率が93.4%と、実施例1(85.4%)及び実施例2(90%)より高かったが、「非推薦」の割合も実施例1、2よりわずかに高かった。これは3.45Lに達する大量の服用量による結果とも見られる。
【0121】
改善の必要性
服用した腸洗浄剤が改善される必要があるかどうかについてアンケート調査をし、改善の必要性があると答えた者の割合を求め、下記表11に示した。
【0122】
【表11】
【0123】
上記結果によれば、実施例2の場合、改善の必要性に対する回答比率が最も低く、最も高い満足度を示していることが分かる。一方、比較例2、即ち、洗浄剤の味と推薦意向などから順応度が高かったピコライトが、改善の必要性という項目では35%から改善が必要であるという回答を得たのは、該当腸洗浄剤の非推薦の割合8.9%と比較すると、意味ある差であると思われるが、これは純然に3.45Lに達する程に過度に多い服用量に対する改善の要求と解釈される。これを見ると、洗浄剤の味が服用の容易性に大きな影響を及ぼす要素ではあるが、服用量も患者の満足度に相当な影響を及ぼしていることが分かる。
【0124】
実施例1と他腸洗浄剤との好みの比較
実施例1の腸洗浄用組成物を用いた被検査者のうち、過去に腸洗浄経験がある23人に、以前の腸洗浄経験と比較すると、服用の容易性が改善されたかどうかをアンケート調査し、その結果を下記表12に示した。
【0125】
【表12】
【0126】
上記結果で見られるように、他洗浄剤を服用したことがある者のうち83%程度が、実施例1の腸洗浄用組成物の服用がさらに容易であると答え、さらに難しかったという者はなかった。このような結果は、既存の腸洗浄剤である比較例1〜3と実施例1の間の間接的な比較であるといえるが、実施例1に対する好みが非常に高かったことが分かる。
【0127】
<試験例4:安全性(in vivo実験)>
各腸洗浄剤の安全性は、被検査者の血液検査を通じて血中アスコルビン酸の濃度、その他血液化学学的検査を実施して評価した。
【0128】
腸内ガスの測定
可燃性ガスの発生に関連し、上記in vitro実験によって本発明による腸洗浄用組成物の安全性を確認したことに加え、さらに実施例1、2による腸洗浄用組成物で腸洗浄をしたそれぞれ10人の被検査者において、大腸内視鏡検査中に採取した腸内ガスを実際に測定した。その結果、メタンガスの濃度は0.1〜0.2 Vol%、水素ガスの濃度は1〜4 ppmと測定されることにより、これらのガスの爆発可能の最低濃度である5%と4,000ppmには絶対的に達し得ないことが直接確認できた。
【0129】
血中アスコルビン酸の濃度
各腸洗浄用組成物の服用後、大腸内視鏡検査直前に被検査者の血液を採取し、アスコルビン酸血中濃度の測定装備を備えている検査機関であるSCL(ソウル医科学研究所)に依頼し、血中アスコルビン酸濃度を測定し、その結果の平均値を下記表13に示した。
【0130】
【表13】
【0131】
血中アスコルビン酸濃度の参考値は2〜20μg/mLである。アスコルビン酸21.2gを混ぜて飲む比較例3と、アスコルビン酸類48gを含有している実施例1及びアスコルビン酸30gを含有している実施例2において、一時的に血中アスコルビン酸濃度が参考値以上に上昇することは予見可能である。ところが、アスコルビン酸は水溶性なので、参考値を超える血中アスコルビン酸は、直ちに腎臓を通じて排泄されることにより、血中濃度が正常化するものと知られている。
【0132】
また、米国国立癌センター(National Cancer Institute)の公式資料によれば、高濃度のアスコルビン酸が人体に無害であることが確認できる(http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/cam/highdosevitaminc/healthprofessional/page1/AllPages)。
【0133】
1970年代以降、多量のアスコルビン酸を静脈注射することにより、多様な癌に対して治療効果があるかを確認するための多くの研究が進められてきた。その治療効果に対しては多様な意見があるが、この過程で確認された事実は、G6PD欠乏症患者、腎臓疾患者または尿路結石がある者を除けば、健常人においては、アスコルビン酸を1.5g/kgまでも安全に静脈投与できるということである<「Vitamin C pharmacokinetics: implications for oral and intravenous use」、Padayatty SJ, Sun H, Wang Y, et al., Ann Intern Med 140(7)、533-7, 2004;「Phase I clinical trial of i.v. ascorbic acid in advanced malignancy」、Hoffer LJ, Levine M, Assouline S, et al., Ann Oncol 19(11)、1969-74, 2008>。
【0134】
また、2013年に施行されたphase I clinical studyでは、1週間に2回ずつ4週間、一度に30分にわたりアスコルビン酸15gを静脈注射し、血中アスコルビン酸の濃度を最小350mg/dL(3,500μg/mL)以上に高めたが、非常によく容認され、重大な副作用は全くなかったと報告している。<「Pharmacological ascorbate with gemcitabine for the control of metastatic and node-positive pancreatic cancer(PACMAN):results from a phase I clinical trial」、Welsh JL, Wagner BA, van't Erve TJ, et al., Cancer Chemother Pharmacol 71(3)、765-75, 2013>
【0135】
このような内容は、米国国立癌センターのホームページに掲載されている公式資料であって、高濃度の血中アスコルビン酸の濃度は、人体に全く害にならないことが確認できる。また、上記に引用されたアスコルビン酸の血中濃度3,500μg/mLは、参考値の上限の175倍に至るものであり、本発明で実施例1の腸洗浄用組成物の使用後に測定された平均血中アスコルビン酸の濃度37.4μg/mLの94倍に達する濃度である。即ち、実施例1と2の腸洗浄用組成物の服用後にアスコルビン酸の濃度が増加することは、人体に全く問題とならないということが分かる。
【0136】
このような理由により、血中アスコルビン酸の濃度を一時的に高めると確認された製品であるクールプレップ(比較例3に使用)と同一の成分製剤であるMoviprep(登録商標)が、米国FDAで何らの問題なしに腸洗浄剤として許可を受けることができたものと判断される。
【0137】
その他血液の化学学的検査
その他血液の化学学的検査として、主要な微量元素の濃度、電解質の濃度、腎臓機能を測定する指標である血中尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Creatinine)及び肝の損傷程度が示される肝酵素AST(GOT)とALT(GPT)の濃度を測定し、その結果を下記表14〜17に示した。血液の採取は、大腸内視鏡検査の直前に行い、キップム病院の診断検査医学課で通常の検査方法に従って測定した。
【0138】
【表14】
【0139】
【表15】
【0140】
【表16】
【0141】
【表17】
【0142】
上記結果で見られるように、比較例2の腸洗浄用組成物を用いた被検査者において、マグネシウム濃度が2.6mg/dLと若干上昇したこと(参考値1.58〜2.55mg/dL)以外には、全ての腸洗浄剤から主要な微量元素及び電解質の濃度、腎臓機能指標BUN及びクレアチニン、肝酵素AST及びALTの検査結果において、異常所見は発見されなかった。
比較例2の腸洗浄用組成物を用いた被検査者において、マグネシウム血中濃度が参考値以上に上昇した理由は、ピコライト成分中に多量の酸化マグネシウム(10.5g)が含まれていたためである。
【0143】
要するに、他の腸洗浄剤と同様に、実施例1、2による腸洗浄用組成物も血液化学学的で異常状態を誘発しない安全な薬剤であることが確認された。