(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の発電装置について、以下に図面を用いて説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
初めに、第1の実施形態として、本発明の基本実施形態を説明する。
図1は、本発明で用いる発電装置の揺動部材の構造を示す斜視図である。
第1の実施形態は、
図1に示すように、10は第1の揺動部材であり、第1の電極11と第1の電極11の外周部に配置された第1の錘12とからなる。
【0017】
第1の揺動部材10は、開口16に配置された軸14と弾性部材13を介して接続されていて、外部からの振動により軸14の回りで揺動運動するように構成されている。
【0018】
弾性部材13は、第1の揺動部材10を保持する役目も担っている。
【0019】
第1の実施形態の第1の揺動部材10の構成部材である第1の電極11は、揺動運動を行う機械的要素の機能と電極としての電気的要素の機能を併せ持つように構成されている。そのため、鉄やステンレス、銅などの導電性の材料で構成されている。
【0020】
なお、機械的要素としての揺動体の部分を、例えば非導電性の樹脂材料や回路基板で構成し、該非導電性の揺動体に電極を設ける構成としても良い。
【0021】
さらに、第1の電極11の下面に帯電体15が形成する構成になっている。帯電体15は後述の交流発電を行うために、周回状に間隔をあけて配置される。帯電体15間には、軽量化のため開口16が設けられている。
【0022】
帯電体15には、帯電しやすい材料を用い、例えばマイナスに帯電する材料としてはシリコン酸化物(SiO2)や、フッ素樹脂材料などを用いる。具体的には一例としてマイナスに帯電する材料として旭硝子製のフッ素樹脂材料であるCYTOP(登録商標)などがある。
【0023】
さらに帯電体15の材料としては、例えば、高分子材料としてポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルデンジフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などがあり、無機材料としては前述したシリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiN)なども使用することができる。
【0024】
また帯電体15に電荷を持たせる方法として、コロナ放電を用いて帯電体15にマイナスの電荷を保持させる方法がある。コロナ放電の方法としては、帯電体15に対して数mm離した距離に固定したコロナ放電用ニードルに、−2000Vから−8000V程度の
電圧を印加して帯電体15に対してマイナスの電荷を打ち込むことで帯電させる。
【0025】
以下の実施形態では、帯電体15は、マイナスに帯電されているものとして説明を行う。
【0026】
本実施例では、第1の揺動部材10の第1の電極11に帯電体15を設けた場合について説明するが、帯電体15は、後述する対向電極である第2の電極40の表面に形成してもよい。
【0027】
第1の電極11の外周部に配置された第1の錘12は、第1の電極11と同じ材質で構成してもよいが、銅や鉛などの重い金属材料を用いて構成してもよい。この第1の錘12により第1の揺動部材10全体の重量バランスが片寄るため、外部からの振動を受けることで第1の揺動部材10は、軸14を軸として揺動運動を起こすことができる。
【0028】
また、第1の錘12は第1の電極11の外周部に配置された構成となっているが、第1の電極11の外周部付近の表面に取り付けても良い。この場合、第1の錘12の分だけ平面積を小さく出来る。
【0029】
また第1の電極11と軸14と接続している弾性部材13は、ピアノ線や炭素鋼などのバネ材を用いて構成されている。また本実施形態のように渦巻きバネを用いた場合は、バネの長さを調整することで、振動の共振周波数を変えることができ、搭載する機器が受ける外部振動に合わせて調整することができる。たとえば渦巻きバネの長さを長くすることで共振周波数を低くすることができ、短くすることで共振周波数を高くすることもできる。
【0030】
さらに本実施形態のように弾性部材13に渦巻きバネを用いた場合は、長いバネを小スペースに収めることができるため、第1の揺動部材10を小型にすることができ、小型でも低い共振周波数に対応させることができる。
【0031】
したがって第1の電極11の外周部に配置する第1の錘12が小型軽量であっても、弾性部材13と合わせることで、人の歩行などで発生する数Hzの低い振動数の振動などでも十分に共振させる構造にすることができ、第1の揺動部材10に揺動運動を起こすことができる。
【0032】
また外部からの振動が止まった場合にも弾性部材13の変形による揺動運動が完全に停止するまでしばらく続くため、第1の揺動部材10の揺動運動は外部の振動が止まった後もしばらく継続させることができ、発電している時間を延長することが可能になる。
【0033】
つぎに
図4と
図5を用いて、本発明の発電装置の構造を説明する。
図4は本発明の発電装置の構造を示す断面図である。
図5は本発明の発電装置の電極の位置関係を示す斜視図である。
【0034】
まず
図4を用いて本発明の発電装置の構造を説明する。
図4に示すように、第1の電極11に対向して、第2の電極40を配置した構造になっている。第2の電極40は、固定基板41の表面に形成されている。
【0035】
第1の電極11と第2の電極40の隙間は、10ミクロンから200ミクロンの隙間を設けて配置される。静電誘導発電では、電極間の隙間が狭い方が誘導される電圧が高いので、できるだけ隙間は狭い方がよい。
【0036】
また固定基板41は非導電性の樹脂材料等で形成されており、たとえば、ポリイミドやガラスエポキシ板などを用いる。第2の電極40は、鉄やステンレス、銅などの導電性の材料で構成されていており、図示しないが、固定基板41上の導電性材料で配線が形成され、後述する電気回路などへ接続出来るようになっている。
【0037】
次に
図5の斜視図を用いて帯電体15と第2の電極との位置関係について説明する。
【0038】
まず
図5(a)に示すように本発明の発電装置の帯電体15と第2の電極40との位置関係は、第1の揺動部材10の回転位置によって、第1の揺動部材に配置された帯電体15と対向する固定基板41に配置された第2の電極40が重なるように配置されるようになっている。
【0039】
また
図5(b)には、
図5(a)の状態から第1の揺動部材10が1電極分だけ回転した状態を示す。この状態では、第1の揺動部材10に設けた開口16と固定基板41上の第2の電極40が重なっている状態になり、帯電体15は、第2の電極40の間に位置するようになっている。
【0040】
このような配置になっていることで、本発明の発電装置は第1の揺動部材10が揺動運動をするときに、帯電体15と第2の電極40が重なる状態と重ならない状態を交互に繰り返すようにすることができる。このようにすることで第2の電極40の表面に静電誘導現象により電荷を誘導させたり解放したりすることが可能になり、発電装置として機能させることが出来るようになる。
【0041】
[第1の実施形態の変形例]
弾性部材13としては、
図1に示す渦巻きバネの他、以下のような変形例が可能である。
【0042】
図2に、
図1で示した第1の揺動部材10の別の構成例を示す。
【0043】
図2に示すように第1の電極11と軸14を接続している弾性部材13を板バネにしても外部からの振動で第1の揺動部材は揺動運動をすることができる。
【0044】
図2の構成の板バネは、
図1の渦巻きバネよりも簡単に弾性部材13を構成できる利点がある。
【0045】
さらに
図3に第1の揺動部材の別の構成例を示す。
図3に示す第1の揺動部材10の第1の電極11は軸14と直接接続されており、外部の支持体30とスプリング形状の弾性部材13で接続された構造になっている。このような構成でも弾性部材13の伸縮で第1の揺動部材10は揺動運動を起こすことができる。
【0046】
図3の構成の場合、中心軸にバネを配置しないので、中心軸付近の構成を簡略化することが可能である。
【0047】
[第2の実施形態]
次に、
図6に
図4で示す発電装置とは別の第2の実施形態を説明する。
【0048】
図6に示す第2の実施形態では、第2の電極の材質や第1の電極との隙間などは
図4に示す実施例と同様であるが、
図4の実施例とは異なり第1の揺動部材10に対向して、第2の揺動部材60を配置した構造になっている。
【0049】
図6に示すように第2の揺動部材60は揺動基板61上に第2の電極40を形成した構造になっている。さらに揺動基板61の外周部に第2の錘62を配置した構造になっている。このような構造にすることで、両方の電極が揺動することになる。
【0050】
また第1の揺動部材10と第2の揺動部材60にそれぞれ配置される第1の錘12と第2の錘62は軸14に対して反対の位置に配置する。このような構造にすることで外部の振動により第1の揺動部材10と第2の揺動部材60は常に逆向きの回転方向に揺動させることが可能になる。
【0051】
図7に
図6の実施形態における揺動部材の振動の様子を概略図で示す。
【0052】
図7に示すように、本実施形態のように第1の錘12と第2の錘62が対角に配置された状態で、矢印で示す外部からの振動方向70が発生した場合は、第1の錘12と第2の錘62は、矢印で示す錘の揺動方向71の方向に揺動することになる。このとき第1の錘12と第2の錘62がそれぞれの揺動部材で反対側に配置されているため第1の揺動部材10と第2の揺動部材60には、逆向きの揺動運動が発生することになる。
【0053】
また外部からの振動方向70が、
図6に示す方向とは異なる向きの振動になっても第1の錘12と第2の錘62は対角に位置しているため、常に逆向きの揺動振動を起こすことができる。
【0054】
このように第1の揺動部材10と第2の揺動部材60を逆向きに揺動させることで、
図4に示す実施形態のように片方を固定して回転しない場合よりもそれぞれの電極が交差する速度を2倍にすることができ、第1の揺動部材10の揺動運動を2倍にした効果を得る
ことができる。揺動運動が上がると、出力波形が増えるため発電量をより増やすことができる。
【0055】
[第2の実施形態の変形例]
次に、
図8に
図7とは別の構成により対向する電極を逆向きの回転で揺動させる構成を示す。
【0056】
図8に示す実施形態では、
図4の実施形態とは異なり第1の揺動部材10と対向する第2の電極40を備えた可動基板80は反転歯車81で接続した構成になっている。
【0057】
図8に示すように、可動基板80は軸14に対してベアリング82で固定され回転することができるようになっている。したがって可動基板80は、第1の揺動部材10が回転すると反転歯車81が回転し、可動基板80を第1の揺動部材10とは逆向きの方向に回転させることができる。
【0058】
反転歯車81は、
図8の実施例では1つの歯車で構成した場合を示したが、複数の歯車を用いて構成してもよい。いずれにしても第1の揺動部材10と可動基板80の回転方向を逆向きにするように構成する。
【0059】
このような構成にすることでも、対向する電極同士を逆回転させることが可能になり、発電量を増やすことができる。
【0060】
[第3の実施形態]
次に
図9を用いて、第3の実施形態における発電装置と電気回路との接続について説明する。
図9は、
図5(a)においてA−A´の点線に沿った断面図である。
【0061】
図9に示すように、第3の実施形態では第2の電極40側からのみ出力を取り出す構成になっている。このような構成にすることで第1の揺動部材10には出力の配線をする必要がなく、第1の揺動部材10は揺動運動のみを行うだけでよいので、より構造を簡単にすることができる。
【0062】
本実施例では
図4で示す発電装置を用いた場合について説明するが、
図6や
図8に示す実施形態の発電装置を用いた場合は、第2の電極40も揺動運動をするため、第2の電極40を回路に接続するためにブラシ電極などを用いて回転しながら電気的接続を行う方法を用いて電気回路と接続を行う。
【0063】
いずれにしても第2の電極40からのみ配線を取り出すだけでよく、第1の揺動部材10からも配線を取り出す場合に比べて配線をより簡単にすることができる。
【0064】
図9に示すように、固定基板41上の第2の電極40から取り出した配線90は、ダイオード91を使った整流回路92に接続され、さらにコンデンサまたは2次電池等を用いた蓄電部材93に接続されている。
【0065】
第2の電極40から出力される電圧は、第1の揺動部材10が揺動することにより静電誘導が交互に発生するため、交流の波形が出力される。具体的には、第1の揺動部材10に形成する帯電体15と対向する位置になる第2の電極40と、帯電体15と対向しない位置にいる第2の電極40とは逆の極性となるので、それぞれの配線90を整流回路92の入力端子に接続する。
【0066】
発電装置から出力された交流波形は、整流回路92により直流に変換され蓄電部材93
に充電されることになる。さらに後段に接続されている電子機器回路94を駆動させるに十分な電気が充電されれば後段の電子機器回路94を駆動させることができる。
【0067】
次に
図10(a)(b)を用いて第3の実施形態の発電装置の発電方法について説明する。
【0068】
まず
図10(a)に示す第1の電極11と第2の電極40の状態では、第1の電極11の帯電体15と対向している第2の電極40の表面に帯電体15が帯電している電荷と反対の電荷が誘導される。本実施例の場合は帯電体15はマイナスに帯電しているので、対向する第2の電極40の表面にはプラス電荷100が誘導されることになる。帯電体15と対向していない第2の電極40には誘導現象が発生しない状態になる。
【0069】
次に、
図10(b)に第1の揺動部材10が回転して電極1つ分移動した位置に来たときの様子を示す。
【0070】
この場合は、
図10(a)でプラス電荷100が誘導された第2の電極40は、
図10(b)の位置では、対向する第1の電極11には帯電体15が無いため、
図10(a)で
誘導されたプラス電荷100は解放され、配線90を通って後段の整流回路へ流れるとことになる。さらに
図10(b)で新たに第1の電極11の帯電体15と対向した第2の電極40上には新たにプラス電荷100が誘導される。
【0071】
このように第1の揺動部材10が揺動することによって第2の電極40の表面に交互に電荷の誘導と解放が発生し後段の整流回路へ電気が流れることになる。
【0072】
このように第1の揺動部材10を揺動させることで、発電を行うことができる。
【0073】
[第4の実施形態]
続いて、第4の実施形態についての説明を、
図11を用いて説明する。
【0074】
図11に、本発明の発電装置をボタン電池の形状に収納しパッケージ化し、発電機器とした場合の構造を断面図で示す。
【0075】
図11には一例として
図4に示した発電装置の構造をパッケージ化した場合を示している。
【0076】
図11に示すように筒状のパッケージ筐体110の内部の底面に整流回路92と蓄電部材93を載せた回路基板111を配置してあり、その上に
図4の発電装置を配置した構造になっている。本実施例では、第2の電極40側を回路基板111のある底面側へ配置する。第2の電極40は、詳細は図示しないが、整流回路92へ接続されるように回路基板111と出力配線112で電気的に接続されている。
【0077】
さらに軸14の両端部はそれぞれ蓋113と回路基板111に固定されている。
【0078】
次に、パッケージ化した場合の筐体と蓋の電極の接続について説明する。
【0079】
回路基板111の蓄電部材93のプラス極にあたる電極からパッケージ筐体110へ電気的に接続させるプラス配線114を接続し、パッケージ筐体110をプラス極とするようになっている。
【0080】
さらに回路基板111の蓄電部材93のマイナス極にあたる電極から蓋113とマイナ
ス配線115を用いて電気的に接続する。さらに蓋113はパッケージ筐体110とは絶縁部材116を介して固定されており電気的にパッケージ筐体110と蓋113は絶縁されている。このようにすることで蓋113はマイナス極とすることができる。
【0081】
このような構造にすることで本発明の発電装置のパッケージは、一般的なボタン電池と同じ構造の電極にすることができ、見かけ上はボタン電池と同様だが、自己発電する発電機器とすることができる。
【0082】
したがって1次電池型のボタン電池を使用する機器に本発明の発電機器を使用できるようになり、ボタン電池を本発明の発電機器に取り替えることで、容易に、振動で発電して駆動する自己発電駆動型の電子機器にすることができる。
【0083】
従来技術の発電装置の場合、回転錘が必要なので全体のサイズが大型化し、また、非常に小さなベアリング装置を組み入れる必要があるため、本実施形態のような電池型発電装置の実現は不可能であった。
【0084】
それに対し、本実施形態の場合、中央軸支された揺動体を渦巻きばねで支持するだけの簡単な構成で実現可能なため、小型・軽量で発電効率の良い電池型発電装置を実現できる。
【0085】
さらに従来技術の発電装置では、回転錘の共振周波数を下げるために錘を大きくする必要があったが、本実施形態では長いバネを渦巻き状に巻いて電極中央部に収めることが出来るため、小型でも共振周波数を低くすることが可能になる。
【0086】
以上の説明からも明らかなように、本発明の発電装置および発電機器を用いることで、人の歩行などの動作で発生する低い周波数の外部振動に共振し、さらに外部からの振動が止まった後でもしばらく振動が持続して発電を続ける発電装置をつくることができる。
【0087】
したがって従来よりも発電時間を長くすることができ、より多く発電ができるようになる。
【0088】
さらに従来例に比べても部品点数を少なくすることができ、従来では難しかった小型のボタン電池型の発電機器を作ることが可能になる。
【0089】
また本発明の発電装置をボタン電池形状にパッケージ化した発電機器を、1次電池を使用する電子機器に用いることで、容易に振動により発電して駆動する自己発電駆動型の電子機器にすることが可能になる。