(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パイロットバーナの失火を伴わずに前記メインバーナが失火するのに応じて前記実行対象の制御モードを前記第一制御にするように構成されている、請求項7記載の工業炉のコントローラ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の点火制御方法によれば、バーナに点火するときには弁開度が固定されるので、弁開度の制御のハンチングに起因する点火不良は防止される。しかしながら、各バーナ用のバルブを開く度に個々のバーナへの燃料の供給量は低下する。このため、点火されたバーナの数が増えるのに応じて弁開度をマニュアル操作で大きくし、燃料供給の総量を増やすことが必要となる場合がある。この場合、バーナに点火する作業者と、弁開度を調節する作業者との連携による煩雑な作業が求められる。
【0006】
そこで本開示は、簡単な作業にてバーナの点火をより確実に遂行することができる工業炉の運転方法、工業炉のコントローラ、及び工業炉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る工業炉の運転方法は、複数のバーナと、燃料を送るための第一管路と、第一管路から分岐して複数のバーナにそれぞれ接続された複数の第二管路と、第一管路に設けられ、燃料の流路の開度を調節する第一バルブと、複数の第二管路にそれぞれ設けられ、燃料の流路が遮断された状態と開放された状態とを切り替える複数の第二バルブと、を備える工業炉を運転対象とし、バーナと第一バルブとの間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように第一バルブの開度を制御する第一制御を実行しながら、複数の第二バルブを順次開いて複数のバーナに順次点火することと、複数のバーナにおける点火が完了した後に、第一管路を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように第一バルブの開度を制御する第二制御を実行することと、を含む。
【0008】
この運転方法によれば、各バーナにおける点火が完了した後には、燃料の流量を第二目標値に追従させるように第一バルブの開度が制御されるので、第二目標値の調節によって各バーナを所望の燃焼状態にすることができる。これに対し、各バーナの点火中には、バーナと第一バルブとの間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように第一バルブの開度が制御される。第一バルブの開度の制御に応じた圧力の応答遅れは、流量の応答遅れに比べ小さいので、バーナと第一バルブとの間における燃料の圧力は、第二バルブの開放に応じて低下した後に、迅速に第一目標値の近傍に戻される。バーナと第一バルブとの間における燃料の圧力が第一目標値の近傍に保たれた状態で第二バルブを順次開放すると、これに応じて燃料の供給量が増える。このため、燃料の圧力を第一目標値に追従させる制御によって、点火されたバーナの数が増えるのに応じて第一バルブの開度を大きくし、燃料の総流量(第一管路を通る燃料の流量)を増やすことが自動的に実行される。また、点火されたバーナの数が増えるのに応じて第一バルブの開度を大きくすることは、一つのバーナが点火される度に実行されるので、燃料の総流量の調整がより細やかに実行される。従って、簡単な作業にてバーナの点火をより確実に遂行することができる。
【0009】
第一制御においては、第一バルブの開度を所定の上限値以下に保ってもよい。この場合、第一制御において第一バルブが過剰に開くことが抑制されるので、第一目標値に対する燃料の圧力のオーバーシュートが抑制される。また、燃料の圧力の検出系統に異常が生じた場合等においても、燃料の流量を適正な範囲内に保つことができる。従って、バーナの点火をより確実に遂行することができる。
【0010】
第二目標値は、空燃比を第三目標値に一致させるのに必要な燃料の流量であり、所定の上限値は、複数の第二バルブを順次開いて複数のバーナに順次点火する際の空気の供給量に対応する第二目標値であってもよい。この場合、所定の上限値は、第一制御における空燃比が、第二制御における空燃比を下回ることがないように設定される。このため、第一制御における第一バルブの開度の変動範囲がよりバーナの燃焼に適した範囲に保たれる。従って、バーナの点火をより確実に遂行することができる。
【0011】
本開示に係るコントローラは、複数のバーナと、燃料を導くための第一管路と、第一管路から分岐して複数のバーナにそれぞれ接続された複数の第二管路と、第一管路に設けられ、燃料の流路の開度を調節する第一バルブと、複数の第二管路にそれぞれ設けられ、燃料の流路が遮断された状態と開放された状態とを切り替える複数の第二バルブと、を備える工業炉を制御対象とし、複数の第二管路が順次開かれて複数のバーナが順次点火される際に、バーナと第一バルブとの間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように第一バルブの開度を制御する第一制御と、複数のバーナにおける点火が完了した後に、第一管路を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように第一バルブの開度を制御する第二制御とを実行するように構成されている。
【0012】
上記コントローラは、第一制御において、第一バルブの開度を所定の上限値以下に保つように構成されていてもよい。
【0013】
第二目標値は、空燃比を第三目標値に一致させるのに必要な燃料の流量であり、所定の上限値は、複数の第二バルブを順次開いて複数のバーナに順次点火する際の空気の供給量に対応する第二目標値であってもよい。
【0014】
上記コントローラは、複数のバーナのそれぞれが、メインバーナと、メインバーナにおいて燃料を燃焼させるためのパイロットバーナとを含む工業炉を制御対象とし、パイロットバーナが点火されるのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にすることを更に実行するように構成されていてもよい。パイロットバーナは、工業炉の起動に際して点火される。このため、パイロットバーナが点火されるのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にすることによって、複数のバーナの点火に際してより確実に第一制御を実行できる。従って、バーナの点火をより確実に遂行することができる。
【0015】
上記コントローラは、パイロットバーナの失火を伴わずにメインバーナが失火するのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にするように構成されていてもよい。パイロットバーナの失火を伴わずにメインバーナが失火する場合、その後にメインバーナが再点火されることが想定される。このため、パイロットバーナの失火を伴わずにメインバーナが失火するのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にすることによって、メインバーナの再点火をもより確実に遂行することができる。
【0016】
本開示に係る工業炉システムは、複数のバーナと、燃料を導くための第一管路と、第一管路から分岐して複数のバーナにそれぞれ接続された複数の第二管路と、第一管路に設けられ、燃料の流路の開度を調節する第一バルブと、複数の第二管路にそれぞれ設けられ、燃料の流路が遮断された状態と開放された状態とを切り替える複数の第二バルブと、を有する工業炉と、工業炉を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、複数の第二管路が順次開かれて複数のバーナが順次点火される際に、バーナと第一バルブとの間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように第一バルブの開度を制御する第一制御と、複数のバーナにおける点火が完了した後に、第一管路を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように第一バルブの開度を制御する第二制御とを実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、簡単な作業にてバーナの点火をより確実に遂行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
<工業炉システム>
(全体構成)
図1に示すように、工業炉システム1は、工業炉10と、工業炉10を制御するコントローラ100とを備える。
【0021】
工業炉10は、例えば鋼板の連続処理ラインに設置される処理炉である。このような処理炉の具体例としては、焼鈍炉等が挙げられる。工業炉10は、炉本体11と、複数の加熱系統20(ゾーン)と、燃料供給系統30と、空気供給系統40と、排気系統50とを有する。
【0022】
炉本体11は、加熱対象物を収容する。複数の加熱系統20のそれぞれは、燃料を燃焼させることで炉本体11内を加熱する。燃料は可燃性ガスである。可燃性ガスの具体例としては、コークスガスが挙げられる。燃料供給系統30は、加熱系統20に燃料を供給する。空気供給系統40は、燃料を燃焼させるための空気を加熱系統20に供給する。排気系統50は、燃焼後のガスを排気する。なお、加熱系統20の数に制限はなく、炉本体11の大きさなどに応じて適宜設定可能である。以下、各部の具体的な構成例を説明する。
【0023】
(加熱系統)
図2に示すように、加熱系統20は、複数(例えば数十機)のバーナ21を有する。複数のバーナ21は、炉本体11の周壁に設けられており、炉本体11内を加熱する。
【0024】
例えばバーナ21は、メインバーナ22と、パイロットバーナ23と、フレームディテクタ24とを有する。バーナ21は、ラジアントチューブ型のメインバーナ22を有するラジアントチューブバーナであってもよい。ラジアントチューブ型のメインバーナ22は、燃料及び空気の混合ガスを一端の開口(入口)からを受け入れ、燃焼後のガス(以下、「排ガス」という。)を他端の開口(出口)から排出する。
【0025】
パイロットバーナ23は、メインバーナ22において燃料を燃焼させる。例えばパイロットバーナ23は、メインバーナ22の入口の近傍に設けられており、燃料及び空気の混合ガスを燃焼させることで点火用の炎を発生する。パイロットバーナ23が発生する炎により、メインバーナ22内に向かう混合ガスが点火され、メインバーナ22内を通過しながら燃焼する。
【0026】
フレームディテクタ24は、例えば赤外線を用いた検出方式等によってメインバーナ22及びパイロットバーナ23の少なくとも一方の炎の有無を検出する。バーナ21は、メインバーナ22及びパイロットバーナ23にそれぞれ対応する二つのフレームディテクタ24を有してもよい。
【0027】
(燃料供給系統)
図1及び
図2に示すように、燃料供給系統30は、燃料基管31と、複数のゾーン別燃料本管33(第一管路)と、複数の燃料流調バルブ34(第一バルブ)と、複数の燃料遮断バルブ35と、複数の燃料流量センサ36と、複数の燃料圧力センサ37と、複数の燃料枝管38(第二管路)と、複数の燃料枝管38と、複数のバーナ前バルブ39(第二バルブ)とを有する。
【0028】
燃料基管31は、燃料源32に接続され、燃料を炉本体11側に導く。
【0029】
複数のゾーン別燃料本管33は、燃料基管31から分岐して複数の加熱系統20にそれぞれ燃料を導く。
【0030】
複数の燃料流調バルブ34は、複数のゾーン別燃料本管33にそれぞれ設けられ、燃料の流路(ゾーン別燃料本管33の内部)の開度を調節する。燃料流調バルブ34の具体例としては、空気圧によってバルブの開度を調節する空気式のバルブが挙げられる。
【0031】
複数の燃料遮断バルブ35は、複数のゾーン別燃料本管33にそれぞれ設けられ、燃料の流路が遮断された状態と、燃料の流路が開放された状態とを切り替える。燃料遮断バルブ35の具体例としては、電磁式又は機械式のバルブが挙げられる。燃料遮断バルブ35は、開閉機能に特化したもの(開度調節機能を有しないもの)であってもよい。
【0032】
燃料流量センサ36は、ゾーン別燃料本管33に設けられ、燃料の流量を検出する。燃料流量センサ36は、燃料流調バルブ34よりも上流側(バーナ21の逆側)に設けられていてもよいし、燃料流調バルブ34よりも下流側(バーナ21側)に設けられていてもよい。燃料流量センサ36の具体例としては、差圧伝送器が挙げられる。差圧伝送器は、燃料の流量に関する情報として、絞り部の前後における差圧を検出してコントローラ100に伝送する。
【0033】
燃料圧力センサ37は、ゾーン別燃料本管33において燃料流調バルブ34よりも下流側(バーナ21側)に設けられ、バーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力を検出する。燃料圧力センサ37は、燃料流調バルブ34と燃料遮断バルブ35との間に設けられていてもよいし、燃料遮断バルブ35よりも更に下流側に設けられていてもよい。
【0034】
複数の燃料枝管38は、ゾーン別燃料本管33から分岐して複数のバーナ21にそれぞれ接続されている。例えば燃料枝管38は、メインバーナ22の入口に接続されている。
【0035】
複数のバーナ前バルブ39は、複数の燃料枝管38にそれぞれ設けられ、燃料の流路(燃料枝管38の内部)が遮断された状態と開放された状態とを切り替える。
【0036】
(空気供給系統)
空気供給系統40は、空気基管41と、ブロワ―42と、ダンパー43と、複数のゾーン別空気本管44と、複数の空気流調バルブ45と、複数の空気流量センサ46と、複数の空気枝管47とを有する。
【0037】
空気基管41は、空気を炉本体11側に導く。ブロワ―42は、空気基管41に設けられ、空気を炉本体11側に圧送する。ダンパー43は、空気基管41に設けられ、空気の流路(空気基管41の内部)の開度を調節する。
【0038】
複数のゾーン別空気本管44は、空気基管41から分岐して複数の加熱系統20にそれぞれ空気を導く。
【0039】
複数の空気流調バルブ45は、複数のゾーン別空気本管44にそれぞれ設けられ、空気の流路(ゾーン別空気本管44の内部)の開度を調節する。
【0040】
複数の空気流量センサ46は、複数のゾーン別空気本管44にそれぞれ設けられ、空気の流量を検出する。空気流量センサ46の具体例としては、差圧伝送器が挙げられる。
【0041】
複数の空気枝管47は、ゾーン別空気本管44から分岐して複数のバーナ21にそれぞれ接続されている。例えば空気枝管47は、燃料枝管38と共にメインバーナ22の入口に接続されている。
【0042】
(排気系統)
排気系統50は、排気管51と、プレナムチャンバ52と、チャンバ圧力調節バルブ53と、排ガスブロワ―54とを有する。
【0043】
排気管51は、複数のバーナ21から導出された排ガスを導く。
【0044】
プレナムチャンバ52は、排気管51と複数のバーナ21との間に介在する。例えばプレナムチャンバ52は、複数のバーナ21にそれぞれ対応する複数の導入口52aを有する。それぞれの導入口52aは、対応する加熱系統20における複数のメインバーナ22の出口に接続されている。
【0045】
排ガスブロワ―54は、排気管51においてプレナムチャンバ52よりも下流側(バーナ21の逆側)に設けられており、プレナムチャンバ52内のガスを吸い出すことでプレナムチャンバ52内を負圧に保つ。これにより、各メインバーナ22における排ガスがプレナムチャンバ52内に導入される。
【0046】
チャンバ圧力調節バルブ53は、排気管51においてプレナムチャンバ52と排ガスブロワ―54との間に設けられ、排ガスの流路の開度を調節する。これにより、プレナムチャンバ52からのガスの吸い出し量が調節され、プレナムチャンバ52内の圧力が調節される。
【0047】
(コントローラ)
コントローラ100は、工業炉10を制御対象とし、複数の燃料枝管38が順次開かれて複数のバーナ21が順次点火される際に、複数のバーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度を制御する第一制御と、複数のバーナ21(点火対象の全てのバーナ21)における点火が完了した後に、ゾーン別燃料本管33を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度を制御する第二制御とを実行するように構成されている。
【0048】
第一目標値は、点火の遂行の確実性を高める観点で予め設定される。いかなる値が適切であるかは、例えば事前実験及びシミュレーションの少なくとも一方によって導出可能である。第二目標値は、例えば外部から入力される温度又は熱量指令値に実際の温度又は熱量を追従させるように設定される。
【0049】
コントローラ100は、第一制御において、燃料流調バルブ34の開度を所定の上限値以下に保つように構成されていてもよい。
【0050】
第二目標値は、空燃比を第三目標値に一致させるのに必要な燃料の流量であってもよい。空燃比は、燃料の質量(燃料供給系統30がバーナ21に供給する燃料の質量)に対する空気の質量(空気供給系統40がバーナ21に供給する空気の質量)の比率である。第三目標値は、工業炉の燃焼負荷に対応した空燃比の設定値であり、燃料の不完全燃焼の抑制及び二酸化炭素の発生抑制等の観点から適宜設定される。
【0051】
第二目標値が空燃比に基づいて設定される場合、所定の上限値は、複数のバーナ前バルブ39を順次開いて複数のバーナ21に順次点火する際の空気供給量(空気供給系統40がバーナ21に供給する空気の質量)に対応する第二目標値であってもよい。バーナ21に順次点火する際の空気供給量は、例えば、点火の遂行を妨げない範囲で最小の値に設定される。
【0052】
例えばコントローラ100は、機能モジュールとして、第一制御部111と、第二制御部112と、ローセレクト部113と、制御出力部114とを有する。
【0053】
第一制御部111は、複数のバーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度指令値(以下、「第一開度指令値」という。)を導出し、出力する。また、第一制御部111は、空気の流量を第四目標値に追従させるように空気流調バルブ45の開度指令値を導出し、出力する。更に、第一制御部111は、点火対象となるバーナ21に対応する燃料遮断バルブ35に対する開放指令を出力する。第四目標値は一定値であり、例えば、燃料の圧力が第一目標値に一致している場合に、空燃比が点火に最適な値となるように設定される。
【0054】
第二制御部112は、ゾーン別燃料本管33を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度指令値(以下、「第二開度指令値」という。)を導出し、出力する。また、第二制御部112は、空気の流量を第五目標値に追従させるように空気流調バルブ45の開度指令値を導出し、出力する。第二目標値及び第五目標値は、空燃比を第三目標値の近傍に保ちつつ、外部から入力される温度又は熱量指令値に実際の温度又は熱量を追従させるように設定される。
【0055】
ローセレクト部113は、第一制御部111により導出された第一開度指令値と所定の上限値とを比較し、いずれか低い方を出力する。一例としてローセレクト部113は、第二制御部112により導出された第二開度指令値を所定の上限値として用いる。
【0056】
制御出力部114は、制御モードを第一制御又は第二制御にセットする。例えば制御出力部114は、パイロットバーナ23の点火に応じて制御モードを第一制御にする。制御出力部114は、パイロットバーナ23の失火を伴わずにメインバーナ22が失火するのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にするように構成されていてもよい。
【0057】
更に、制御出力部114は、オペレータによる指示入力に応じて実行対象の制御モードを第二制御にするように構成されていてもよい。この場合、工業炉システム1は、オペレータによる制御モードの指示入力を可能とするための切替スイッチ200を更に備えてもよい。切替スイッチ200は、トグルスイッチ又は押しボタンスイッチのようなハードウェアスイッチであってもよいし、タッチパネル上に描画されるソフトウェアスイッチであってもよい。
【0058】
制御モードを第一制御としている場合、制御出力部114は、第一制御部111からの指令値を燃料流調バルブ34、燃料遮断バルブ35及び空気流調バルブ45に出力する。ただし、制御出力部114は、ローセレクト部113が上記第二開度指令値を選択した場合には、第一制御部111からの第一開度指令値に代えて、第二制御部112からの第二開度指令値を燃料流調バルブ34に出力する。
【0059】
制御モードを第二制御としている場合、制御出力部114は、第二制御部112からの指令値を燃料流調バルブ34及び空気流調バルブ45に出力する。
【0060】
図3は、コントローラ100のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図3に示すように、コントローラ100は回路120を有し、回路120は、一つ又は複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、入出力ポート124とを有する。
【0061】
入出力ポート124は、燃料流量センサ36、燃料圧力センサ37、空気流量センサ46、燃料流調バルブ34、燃料遮断バルブ35、空気流調バルブ45、及び切替スイッチ200との間で電気信号の入出力を行う。ストレージ123は、コントローラ100の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記録している。ストレージ123は、コンピュータ読み取り可能であればどのようなものであってもよい。具体例として、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等が挙げられる。メモリ122は、ストレージ123からロードしたプログラム及びプロセッサ121の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ121は、メモリ122と協働してプログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。
【0062】
なお、コントローラ100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えばコントローラ100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0063】
<工業炉の運転方法>
続いて、工業炉の運転方法の一例を示す。この運転方法は、工業炉10を運転対象とし、バーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度を制御する第一制御を実行しながら、複数のバーナ前バルブ39を順次開いて複数のバーナ21に順次点火することと、複数のバーナ21における点火が完了した後に、ゾーン別燃料本管33を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度を制御する第二制御を実行することと、を含む。
【0064】
以下、複数のバーナ21が点火されるまでの手順と、複数のバーナ21が点火された後の手順とを詳細に例示する。
【0065】
(複数のバーナ21が点火されるまでの手順)
図4は、複数のバーナ21に点火するまでに、コントローラ100により実行される制御手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、コントローラ100は、まずステップS01を実行する。ステップS01では、パイロットバーナ23用のフレームディテクタ24によりパイロットバーナ23の点火が検出されているか否かを制御出力部114が確認する。制御出力部114は、フレームディテクタ24によりパイロットバーナ23の点火が検出されるまでステップS01を繰り返す。
【0066】
フレームディテクタ24によりパイロットバーナ23の点火が検出されると、コントローラ100はステップS02を実行する。ステップS02では、制御出力部114が制御モードを第一制御にセットする。ステップS02に例示されるように、工業炉10の運転方法は、パイロットバーナ23が点火されるのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にすることを更に含んでいてもよい。
【0067】
次に、コントローラ100はステップS03を実行する。ステップS03では、第一制御部111が、燃料流調バルブ34及び空気流調バルブ45に対する初期の開度指令値を導出して出力し、第一制御部111からの開度指令値を制御出力部114が燃料流調バルブ34及び空気流調バルブ45に出力する。燃料流調バルブ34の初期の開度指令値は、例えば一つ目のバーナ前バルブ39が開放された状態において、燃料の圧力が第一目標値に近い値となるように設定される。空気流調バルブ45の初期の開度指令値は、例えば空気の流量を第四目標値に追従させるように設定される。
【0068】
次に、コントローラ100はステップS04を実行する。ステップS04では、第一制御部111が、燃料遮断バルブ35の開放指令を出力し、第一制御部111からの開放指令を制御出力部114が燃料遮断バルブ35に出力する。これにより、バーナ21の点火が可能な状態となる。この状態にて、オペレータが、複数のバーナ前バルブ39を順次開いて複数のバーナ21に順次点火することを開始する。オペレータがバーナ前バルブ39を開くと、当該バーナ前バルブ39に対応するバーナ21に燃料と空気の混合ガスが供給され、当該混合ガスがパイロットバーナ23の炎によって点火される。
【0069】
次に、コントローラ100はステップS05を実行する。ステップS05では、第一制御部111が、複数のバーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力の検出結果を燃料圧力センサ37から取得する。
【0070】
次に、コントローラ100はステップS06を実行する。ステップS06では、第一制御部111が、複数のバーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の第一開度指令値を算出する。
【0071】
次に、コントローラ100はステップS07を実行する。ステップS07では、第二制御部112が、ゾーン別空気本管44における空気の流量の検出結果を空気流量センサ46から取得する。
【0072】
次に、コントローラ100はステップS08を実行する。ステップS08では、第二制御部112が、空燃比を第三目標値に一致させるために必要な燃料の流量を第二目標値として算出し、燃料の流量を第二目標値に追従させるための燃料流調バルブ34の第二開度指令値を算出する。
【0073】
次に、コントローラ100はステップS09を実行する。ステップS09では、第一開度指令値が第二開度指令値以下であるか否かを制御出力部114が確認する。ステップS09において、第一開度指令値が第二開度指令値以下であると判定された場合、コントローラ100はステップS10を実行する。ステップS10では、制御出力部114が、第一開度指令値を燃料流調バルブ34に出力する。
【0074】
ステップS09において、第一開度指令値が第二開度指令値を超えていると判定された場合、コントローラ100は、ステップS10に代えてステップS11を実行する。ステップS11では、制御出力部114が、第二開度指令値を燃料流調バルブ34に出力する。
【0075】
ステップS07〜S11に例示されるように、第一制御においては、燃料流調バルブ34の開度を所定の上限値以下に保ってもよい。また、第二目標値が、空燃比を第三目標値に一致させるのに必要な燃料の流量である場合に、所定の上限値は、複数のバーナ前バルブ39を順次開いて複数のバーナ21に順次点火する際の空気の供給量に対応する第二目標値であってもよい。
【0076】
次に、コントローラ100はステップS12を実行する。ステップS12では、制御出力部114が、制御モードの切替指示が切替スイッチ200に入力されているか否かを判定する。
【0077】
ステップS12において、制御モードの切り替え指示が入力されていないと判定された場合、コントローラ100は処理をステップS05に戻す。これにより、制御モードの切替指示が入力されるまでは、第一制御が継続される。
【0078】
ステップS12において、制御モードの切り替え指示が入力されたと判定された場合、コントローラ100はステップS13を実行する。ステップS13では、制御出力部114が、制御モードを第二制御に切り替える。以上で、複数のバーナ21が点火されるまでの手順が完了する。
【0079】
(複数のバーナ21が点火された後の手順)
図5は、複数のバーナ21に点火した後に、コントローラ100により実行される制御手順を示すフローチャートである。
図5に示すように、コントローラ100は、まずステップS21を実行する。ステップS21では、第二制御部112が、クロスリミット演算により燃料流調バルブ34及び燃料遮断バルブ35の開度指令値を算出する。
【0080】
具体的に、第二制御部112は、空燃比を第三目標値の近傍に保ちつつ、外部から入力される温度又は熱量指令値に実際の温度又は熱量を追従させるように第二目標値及び第五目標値を設定する。その後、第二制御部112は、ゾーン別燃料本管33を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度指令値を導出し、空気の流量を第五目標値に追従させるように空気流調バルブ45の開度指令値を導出し、これらを出力する。
【0081】
次に、コントローラ100はステップS22を実行する。ステップS22では、制御出力部114が、第二制御部112からの指令値を燃料流調バルブ34及び空気流調バルブ45に出力する。
【0082】
次に、コントローラ100はステップS23を実行する。ステップS23では、メインバーナ22用のフレームディテクタ24によりメインバーナ22の失火が検出されているか否かを制御出力部114が確認する。制御出力部114は、オペレータによりメインバーナ22を失火させる操作がなされたか否かに基づいて、メインバーナ22が失火しているか否かを判定してもよい。メインバーナ22を失火させる操作としては、燃料遮断バルブ35を閉じる操作又はバーナ前バルブ39を閉じる操作等が挙げられる。これらの操作は、例えば燃料遮断バルブ35又はバーナ前バルブ39を遠隔操作するためのユーザインタフェースから取得可能である。また、燃料遮断バルブ35及びバーナ前バルブ39にセンサを配置し、当該センサによって燃料遮断バルブ35及びバーナ前バルブ39に対する操作を検知することも可能である。
【0083】
ステップS23において、メインバーナ22が失火していないと判定された場合、コントローラ100は処理をステップS21に戻す。これにより、メインバーナ22の失火が検知されるまでは第二制御が繰り返される。
【0084】
ステップS23において、メインバーナ22が失火していると判定された場合、コントローラ100はステップS24を実行する。ステップS24では、パイロットバーナ23が失火しているか否かを制御出力部114が確認する。
【0085】
ステップS24において、パイロットバーナ23が失火していないと判定された場合、コントローラ100はステップS25を実行した上で処理を終了する。ステップS25では、制御出力部114が、制御モードを第一制御に切り替え、第一制御の制御手順を上記ステップS03から再開させる。
【0086】
ステップS24において、パイロットバーナ23が失火していると判定された場合、コントローラ100は、ステップS25を実行することなく処理を終了する。以上で、複数のバーナ21が点火された後の手順が完了する。
【0087】
<本実施形態の効果>
以上に説明したように、本実施形態に係る工業炉の運転方法は、複数のバーナ21と、燃料を送るためのゾーン別燃料本管33と、ゾーン別燃料本管33から分岐して複数のバーナ21にそれぞれ接続された複数の燃料枝管38と、ゾーン別燃料本管33に設けられ、燃料の流路の開度を調節する燃料流調バルブ34と、複数の燃料枝管38にそれぞれ設けられ、燃料の流路が遮断された状態と開放された状態とを切り替える複数のバーナ前バルブ39と、を備える工業炉10を運転対象とし、バーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度を制御する第一制御を実行しながら、複数のバーナ前バルブ39を順次開いて複数のバーナ21に順次点火することと、複数のバーナ21における点火が完了した後に、ゾーン別燃料本管33を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度を制御する第二制御を実行することと、を含む。
【0088】
この運転方法によれば、各バーナ21における点火が完了した後には、燃料の流量を第二目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度が制御されるので、第二目標値の調節によって各バーナ21を所望の燃焼状態にすることができる。これに対し、各バーナ21の点火中には、バーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように燃料流調バルブ34の開度が制御される。燃料流調バルブ34の開度の制御に応じた圧力の応答遅れは、流量の応答遅れに比べ小さいので、バーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力は、バーナ前バルブ39の開放に応じて低下した後に、迅速に第一目標値の近傍に戻される。バーナ21と燃料流調バルブ34との間における燃料の圧力が第一目標値の近傍に保たれた状態でバーナ前バルブ39を順次開放すると、これに応じて燃料の供給量が増える。このため、燃料の圧力を第一目標値に追従させる制御によって、点火されたバーナ21の数が増えるのに応じて燃料流調バルブ34の開度を大きくし、燃料の総流量(ゾーン別燃料本管33を通る燃料の流量)を増やすことが自動的に実行される。また、点火されたバーナ21の数が増えるのに応じて燃料流調バルブ34の開度を大きくすることは、一つのバーナ21が点火される度に実行されるので、燃料の総流量の調整がより細やかに実行される。
【0089】
図6は、上述した運転方法を採用した場合の燃料の圧力、燃料の流量、及び燃料流調バルブの開度目標値の推移を示すグラフである。グラフの横軸は経過時間を示し、縦軸は各値の大きさを示している。期間T1では第一制御が実行され、期間T2では第二制御が実行されている。複数のバーナ21の点火は、期間T1の前半の期間T3にて実行されている。燃料の圧力D1は、期間T3の初期において急降下している。これは、最初のバーナ前バルブ39が開放されることにより、燃料の流出が開始されたためである。第一制御により、圧力D1の降下は圧力目標値D2の近傍で停止している。その後、二つ目以降のバーナ前バルブ39が順次開放され、二つ目以降のバーナ21が順次点火されているが、圧力D1は大きく変動することなく圧力目標値D2の近傍に保たれている。開放されたバーナ前バルブ39の数が増えても圧力D1を圧力目標値D2の近傍に保つために、開度指令値D4は徐々に増えている。これに応じ、燃料流量D3も徐々に増えている。
【0090】
このように、上述した運転方法によれば、点火されたバーナ21の数が増えるのに応じて燃料流調バルブ34の開度を大きくし、燃料の総流量を増やすことが自動的に実行され、燃料の総流量の調整が細やかに実行される。従って、簡単な作業にてバーナ21の点火をより確実に遂行することができる。
【0091】
第一制御においては、燃料流調バルブ34の開度を所定の上限値以下に保ってもよい。この場合、第一制御において燃料流調バルブ34が過剰に開くことが抑制されるので、第一目標値に対する燃料の圧力のオーバーシュートが抑制される。また、燃料の圧力の検出系統に異常が生じた場合等においても、燃料の流量を適正な範囲内に保つことができる。従って、バーナ21の点火をより確実に遂行することができる。
【0092】
第二目標値は、空燃比を第三目標値に一致させるのに必要な燃料の流量であり、所定の上限値は、複数のバーナ前バルブ39を順次開いて複数のバーナ21に順次点火する際の空気の供給量に対応する第二目標値であってもよい。この場合、所定の上限値は、第一制御における空燃比が、第二制御における空燃比を下回ることがないように設定される。このため、第一制御における燃料流調バルブ34の開度の変動範囲がよりバーナ21の燃焼に適した範囲に保たれる。従って、バーナ21の点火をより確実に遂行することができる。
【0093】
コントローラ100は、複数のバーナ21のそれぞれが、メインバーナ22と、メインバーナ22において燃料を燃焼させるためのパイロットバーナ23とを含む工業炉10を制御対象とし、パイロットバーナ23が点火されるのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にすることを更に実行するように構成されていてもよい。パイロットバーナ23は、工業炉10の起動に際して点火される。このため、パイロットバーナ23が点火されるのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にすることによって、複数のバーナ21の点火に際してより確実に第一制御を実行できる。従って、バーナ21の点火をより確実に遂行することができる。
【0094】
コントローラ100は、パイロットバーナ23の失火を伴わずにメインバーナ22が失火するのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にするように構成されていてもよい。パイロットバーナ23の失火を伴わずにメインバーナ22が失火する場合、その後にメインバーナ22が再点火されることが想定される。このため、パイロットバーナ23の失火を伴わずにメインバーナ22が失火するのに応じて実行対象の制御モードを第一制御にすることによって、メインバーナ22の再点火をもより確実に遂行することができる。
【0095】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。炉本体11内を加熱する構成は、必ずしも複数の加熱系統20(ゾーン)に分かれている必要はなく、全てのバーナ21が単一のゾーンにまとめられていてもよい。本発明の適用対象は、焼鈍炉に限られず、複数のバーナに順次点火する作業を要する工業炉であればどのようなものにも適用し得る。
【解決手段】工業炉の運転方法は、複数のバーナと、第一管路と、第一管路から分岐して複数のバーナにそれぞれ接続された複数の第二管路と、第一管路に設けられた第一バルブと、複数の第二管路にそれぞれ設けられた複数の第二バルブと、を備える工業炉を運転対象とし、バーナと第一バルブとの間における燃料の圧力を第一目標値に追従させるように第一バルブの開度を制御する第一制御を実行しながら、複数の第二バルブを順次開いて複数のバーナに順次点火することと、複数のバーナにおける点火が完了した後に、第一管路を通過する燃料の流量を第二目標値に追従させるように第一バルブの開度を制御する第二制御を実行することと、を含む。