(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後行トンネル施工工程後に、前記先行トンネルおよび前記後行トンネルの集合体の外周側地山および内周側地山に対して止水対策工を施す止水工程を備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の大断面地中構造物の構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の施工方法では、後行トンネルと先行トンネル内の覆工体との間にエアモルタルが介設されている。先行トンネル内の覆工体と後行トンネルに形成する覆工体とを接続するために、このエアモルタルを撤去する必要があるため、地山側から後行トンネルに作用する土圧や地下水圧に対して、先行トンネル側から十分な反力を確保することができず、後行トンネルが変形するおそれがある。後行トンネルが変形すると、先行トンネルと後行トンネルとの外周囲の凍土に亀裂が生じ、もしくは、変形した後行トンネルと凍土が剥離して、出水するおそれがある。凍土において出水が生じると、凍土が溶解してしまう。
このような観点から、本発明は、地下水の出水や土砂の流入を防止することで安全性を確保し、かつ、周辺環境への影響(例えば、地盤沈下や地下水位の低下等)を最小限に抑えることを可能とし、なおかつ、効率よく止水性に優れた高品質な大断面地中構造物を構築することを可能とした、大断面地中構造物の構築方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の大断面地中構造物の構築方法は、間隔をあけて複数本の先行トンネルを並設する先行トンネル施工工程と、前記各先行トンネル内に先行鉄筋を配筋する先行トンネル配筋工程と、前記各先行トンネル内に先行中詰コンクリートを充填する先行トンネル充填工程と、隣り合う前記先行トンネル同士の間に後行トンネルを構築する後行トンネル施工工程と、
前記後行トンネルを構成する鋼製セグメントのうち、前記先行中詰コンクリートとの当接部分に対応する鋼製セグメントのスキンプレートを撤去するとともに、当該鋼製セグメントと前記先行中詰コンクリートとの間にスペーサーを介設する接続準備工程と、前記各後行トンネル内に後行鉄筋を配筋する後行トンネル配筋工程と、前記後行トンネル内に後行中詰コンクリートを充填する後行トンネル充填工程と、複数本の前記先行トンネルおよび複数本の前記後行トンネルにより囲まれた領域を掘削する掘削工程とを備えている。前記後行トンネル施工工程では、隣接する前記先行トンネルの断面の一部を切削するとともに前記先行中詰コンクリートに凹部を形成し、前記後行トンネルの外面が前記先行中詰コンクリートに当接するように当該後行トンネルを構築する。また、前記後行トンネル配筋工程では、前記凹部に露出した前記先行鉄筋の端部に前記後行鉄筋を接続する。
【0007】
かかる大断面地中構造物の構築方法によれば、後行トンネルの外面が先行中詰コンクリートに当接しているため、後行トンネルに変形が生じることを防止あるいは最小限に抑えることができる。そのため、後行トンネルの切り開き部からの出水を防止し、施工時の安全性が向上する。なお、「後行トンネルの外面が先行中詰コンクリートに当接している」状態は、後行トンネルの覆工が先行中詰コンクリートに当接している場合の他、裏込め材やスペーサー等を介して当接している場合も含むものとする。
また、先行中詰コンクリートに形成した凹部を利用して先行鉄筋と後行鉄筋とを接合するため、一体性に優れた覆工体を簡易に構築することができる。
【0008】
また、本発明の大断面地中構造物の構築方法によれば、先行中詰コンクリートと後行トンネルとの間に隙間が形成されることを防止し、ひいては、後行トンネルの変形を抑制することが可能となる。このとき、前記スキンプレートの撤去により露出した前記先行中詰コンクリートの表面にチッピングを行い、先行中詰コンクリートと後行中詰コンクリートとの一体性を向上させるのが望ましい。
【0009】
また、前記先行トンネル充填工程では、前記先行鉄筋の端部に間詰材を設置した状態で前記先行中詰コンクリートを充填するのが望ましい。このようにすれば、後行トンネル施工工程において先行トンネルの一部を切削した際に間詰材を撤去することで容易に先行鉄筋の端部を露出させることが可能となる。
また、前記後行トンネル施工工程後に、前記先行トンネルおよび前記後行トンネルの集合体の外周側地山および内周側地山に対して止水対策を施す止水工程を備えていれば、止水性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の大断面地中構造物の構築方法によれば、高水圧、軟弱地盤等の施工条件が厳しい場所でも、地下水の出水や土砂の流入を防止することで安全性を確保し、かつ、周辺環境への影響を最小限に抑えることを可能とし、なおかつ、効率よく止水性に優れた高品質な大断面地中構造物を構築することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態では、
図1に示すように、道路トンネル(本線トンネル11および分岐トンネル12)の合流部の構築に必要な大断面地下空間を形成するための大断面トンネル1を例示する。大断面トンネル1は、本線トンネル11および分岐トンネル12を内包可能な大断面覆工体10により形成されている。
本実施形態の大断面覆工体10は、円筒状に並設された複数本のトンネル2,3と、各トンネル2,3内に充填された中詰コンクリートの硬化体4と、複数本のトンネル2,3に跨って配筋された主筋5とを備えている。なお、複数本のトンネル2,3は、必ずしも円筒状に並設されている必要はなく、例えば、角筒状や楕円筒状に並設されていてもよい。すなわち、大断面覆工体10の断面形状は円形に限定されるものではなく、例えば、矩形状や楕円形状等であってもよい。
【0013】
大断面覆工体10は、複数本のトンネル2,3として、間隔をあけて形成された複数本の先行トンネル2,2,…と、隣り合う先行トンネル2,2同士の間に形成された後行トンネル3,3,…とを備えている。
本実施形態の先行トンネル2および後行トンネル3は、同じ外径の円筒状の覆工により形成されている。なお、先行トンネル2および後行トンネル3の断面形状は限定されるものではない。例えば、先行トンネル2と後行トンネル3とが、異なる外径を有していてもよい。
【0014】
隣り合う先行トンネル2と後行トンネル3は、
図2に示すように、一部を重ねた状態(ラップさせた状態)で並設されている。
大断面覆工体10は、先行トンネル2と後行トンネル3との重ね合わせ厚さ(トンネルの覆工同士の地山側交点から内空側交点までの間隔)により構造上必要な覆工厚さを確保している。また、大断面覆工体10の内径は、先行トンネル2と後行トンネル3との重ね合わせ幅(一方のトンネルが他方のトンネルに入り込んでいる長さ)の大きさを変えることで変化させることができる。
【0015】
先行トンネル2の覆工20は、無筋コンクリート製のセグメントを組み合わせることにより形成されている。
本実施形態の先行トンネル2の覆工20を構成するセグメントは鋼繊維補強コンクリートにより形成されているが、先行トンネル2の形成に必要な強度を有し、かつ、シールド掘削機により切削が可能であれば、セグメントを構成する材料は限定されない。例えば、切削可能な補強材(例えば、炭素繊維等)が埋め込まれたコンクリート製セグメントを使用してもよい。
本実施形態では、シールド掘削機により切削が可能な樹脂製ボルトを介してセグメント同士およびセグメントリング同士を接合する。なお、セグメント同士の接合構造およびセグメントリング同士の接合構造は、シールド掘削機により切削が可能であれば限定されない。
【0016】
後行トンネル3の覆工30は、大断面覆工体10の外周側の地山に面するコンクリート中詰鋼製セグメント31と、その他の部分に配設された鋼製セグメント32とを組み合わせることにより形成されている。
コンクリート中詰鋼製セグメント31は、トンネル軸方向の両端に設けられた一対の主桁と、トンネル周方向の両端に設けられた一対の端板と、主桁および端板の外面を覆うスキンプレートとからなる鋼製セグメントにコンクリートが打設されることにより構成されている。コンクリート中詰鋼製セグメント31は、両隣りの先行トンネル2,2により挟まれた範囲に配設されている。
鋼製セグメント32は、トンネル軸方向の両端に設けられた一対の主桁と、トンネル周方向の両端に設けられた一対の端板と、外面を覆うスキンプレートとを備えて構成されている。鋼製セグメント32のうちの両隣りの先行トンネル2,2の内部に配設された部分では、スキンプレートが撤去されて、主桁および端板が残置されている。
【0017】
先行トンネル2の内部の中詰コンクリートの硬化体4(先行中詰コンクリート41)には、凹部(箱抜き)6が形成されている。凹部6は、後行トンネル3に面する位置で、かつ、主筋5の通る位置(大断面覆工体10の外周側と内周側)に形成されている。後行トンネル3の中詰コンクリートの硬化体4(後行中詰コンクリート42)には、凹部6に係合された凸部7が形成されている。なお、本実施形態では、先行トンネル2の内部に充填する先行中詰コンクリート41と後行トンネル3の内部に充填する後行中詰コンクリート42として同じ配合のコンクリートを採用するが、先行中詰コンクリート41と後行中詰コンクリート42には、それぞれ異なる配合のコンクリートを充填してもよい。また、少なくとも先行中詰コンクリート41は、大断面覆工体10に作用する外力に対して十分な耐力を発現するとともに、シールド掘削機による切削が可能な材料であれば限定されるものではない。一方、後行中詰コンクリート42は、大断面覆工体10に作用する外力に対して十分な耐力を発現するものであればよい。
【0018】
主筋5は、大断面覆工体10の周方向に連続するように、内空側と地山側にそれぞれ配筋されている。主筋5は、並設されたトンネル2,3を周方向に貫通している。本実施形態では、主筋5と交差するようにせん断補強筋50が配筋されている。なお、せん断補強筋50は必要に応じて配筋すればよく、例えば、中詰コンクリートとして繊維補強コンクリートを採用した場合には省略してもよい。
【0019】
次に、本実施形態の大断面トンネル1の構築方法について説明する。
大断面トンネル1の構築方法は、先行トンネル施工工程、先行トンネル配筋工程、先行トンネル充填工程、後行トンネル施工工程、止水工程、接続準備工程と、後行トンネル配筋工程、後行トンネル充填工程および掘削工程を備えている。
【0020】
先行トンネル施工工程は、
図3(a)に示すように、複数本の先行トンネル2,2を、間隔をあけて並設する工程である。
先行トンネル2の施工は、図示しないシールド掘削機により地山を切削するとともに、シールド掘削機の後部においてセグメントリング(覆工20)を形成し、このセグメントリングをシールド掘削機の後方に連設することにより行う。先行トンネル2同士の間隔は、トンネル2,3の断面形状、先行トンネル2と後行トンネル3とのラップ長(重ね合わせ幅)および大断面覆工体10の断面形状等に応じて適宜設定する。
本実施形態では、
図3(b)に示すように、覆工20の内面に、トンネル軸方向に沿って、凍結管81を配管する。凍結管81は、大断面覆工体10の外周側と内周側にそれぞれ3本ずつ配管する。なお、凍結管81の本数および間隔は、先行トンネル2の断面形状や地山状況等に応じて適宜決定すればよい。凍結管81を配管したら、外周側の凍結管81の内空側に断熱材82を設置するとともに、防水材83を吹き付ける(
図5参照)。なお、断熱材82および防水材83は、必要に応じて設置すればよく、省略してもよい。また、断熱材82および防水材83は、内周側の凍結管8に対しても設置してもよい。
【0021】
先行トンネル配筋工程は、
図3(c)に示すように、先行トンネル2内に先行鉄筋51(主筋5)およびせん断補強筋50を配筋する工程である。
先行鉄筋51は、大断面覆工体10の外周側と内空側に、覆工20から所定の間隔を空けて配筋する。本実施形態では、先行鉄筋51の両端に予め機械式継手53を設置しておくとともに、機械式継手53の端部を覆う間詰材43を配置しておく。なお、間詰材43を構成する材料はこれに限定されるものではないが、例えば、先行中詰コンクリート41よりも低強度な材料からなる密実部材(例えば、硬質ウレタンフォーム材等)を使用すればよい。
【0022】
先行トンネル充填工程は、
図3(d)に示すように、先行トンネル2内に先行中詰コンクリート41を充填する工程である。
先行トンネル2内への先行中詰コンクリート41の打設は、コンクリートポンプで圧送することにより、先行トンネル2の先端側から行う。先行中詰コンクリート41の打設は、先行鉄筋51およびせん断補強筋50の配筋が完了した先行トンネル2から順に実施する。なお、先行中詰コンクリート41の打設のタイミングは限定されるものではなく、例えば、全ての先行トンネル2,2,…の配筋作業が完了してから実施してもよい。また、先行中詰コンクリート41の打設方法も限定されるものではなく、例えば、先行トンネル2の中間部から打設してもよい。
【0023】
後行トンネル施工工程は、
図4(a)に示すように、隣り合う先行トンネル2,2同士の間に後行トンネル3を構築する工程である。
後行トンネル3の施工は、まず、シールド掘削機(図示せず)を利用して、隣接する先行トンネル2,2の断面の一部を切削しながら掘削孔を形成する。後行トンネル3は、その周囲に充填された裏込め材を介して先行中詰コンクリート41の硬化体4に当接する。
シールド掘削機により所定延長掘進したら、シールド掘削機の後方でセグメントを組み立てて、覆工30を形成する。
【0024】
後行トンネル3を施工するタイミングは、隣り合う2本の先行トンネル2,2が形成され、かつ、両先行トンネル2,2内の先行中詰コンクリートが充填された後であれば限定されるものではない。すなわち、後行トンネル3は、少なくとも2本の先行トンネル2,2が施工された後であれば、施工を開始してもよく、また、全ての先行トンネル2,2,…が完成した後から施工を開始してもよい。
次に、後行トンネル3の覆工30の内面に沿って、凍結管81を配管する。凍結管81は、大断面覆工体10の外周側と内周側にそれぞれ3本ずつ配管する。なお、凍結管81の本数および間隔は、先行トンネル2の断面形状や地山状況等に応じて適宜決定すればよい。凍結管81を配管したら、凍結管81の内空側に、断熱材82を設置するとともに、連続する防水材83を吹き付ける(
図5参照)。なお、断熱材82および防水材83は、必要に応じて設置すればよく、省略してもよい。
【0025】
止水工程は、
図4(b)に示すように、先行トンネル2,2および後行トンネル3の集合体の外周側地山および内周側地山に対して止水対策工を施す工程である。本実施形態では、地山を凍結することで、止水層(凍土)8を形成する凍結工法を採用する。地山の凍結作業は、凍結管81内に冷媒を通流させることにより、トンネル2,3の外側の地山を冷却することにより行う。
止水工程の実施は、少なくとも2本の先行トンネル2,2と、これらの先行トンネル2,2の間の後行トンネル3とが形成された後であれば限定されるものではない。すなわち、止水層8の施工は、全ての先行トンネル2,2,…および後行トンネル3,3,…が形成された後に実施してもよいし、先行トンネル2,2および後行トンネル3が部分的に形成された後に実施してもよい。これにより、全ての先行トンネル2、後行トンネル3の構築を待たなくても部分的に止水工程〜充填工程を実施できるため、工期短縮を図ることができる。また、長期間にわたって大きな範囲を止水する必要がないため、安全性も向上する。
【0026】
接続準備工程は、
図4(c)に示すように、後行トンネル3の覆工30のうち、先行中詰コンクリート41との当接部分に対応する鋼製セグメントのスキンプレートを撤去する工程である。本実施形態では、まず、先行トンネル2と後行トンネル3との接合部において、スキンプレート33の一部を撤去するとともに必要最小限の裏込め材を撤去し、さらに、
図6(a)に示すように、鋼製セグメント32の主桁と先行中詰コンクリート41との間にくさび状のスペーサー9を介設する。この作業を繰り返すことにより必要な数のスペーサー9を介設したら、先行トンネル2と後行トンネル3との接合部に対応するスキンプレート33の残り部分と当該スキンプレート33の背面に充填された裏込め材34も撤去して、先行中詰コンクリート41の表面を露出させる(
図2および
図6(a)参照)。この結果、後行トンネル3は、スペーサー9を介して先行トンネル2の硬化体4に当接する。このように、本実施形態では、スペーサー9を介設する際に、スキンプレート33と裏込め材の撤去範囲を最小限に抑えることで、後行トンネル3の変形を最小限に抑える。本実施形態のスペーサー9は、金属製の部材により構成されている。なお、スペーサー9の形状および材質は限定されるものではない。
接続準備工程では、スキンプレート33と裏込め材34の撤去により露出した先行中詰コンクリート41の表面に対してチッピングを行い、当該表面に凹凸を形成する。また、凹部6内に入り込んだ裏込め材34も除去する。なお、チッピングは必要に応じて行えばよい。
【0027】
スキンプレート33を撤去したら、間詰材43を撤去する。間詰材43を撤去すると、先行トンネル2の硬化体4(先行中詰コンクリート41)に、後行トンネル3側に開口する箱抜き(凹部6)が形成される。凹部6内では、先行鉄筋51(機械式継手53)の端部が露出している。
凹部6(箱抜き)が露出したら、
図5に示すように、先行トンネル2と後行トンネル3との接合部において、先行トンネル2の端部(後行トンネル3に隣接する部分)に後行トンネル3側に突出する鋼板21を固定する。鋼板21は、後行トンネル3の裏込め材34の端面を覆うように配置し、コンクリートアンカー22を介して先行トンネル2の覆工20に固定する。すなわち、鋼板21は、先行トンネル2の覆工20と後行トンネル3の覆工30との間に横架されている。
また、先行トンネル2と後行トンネル3との接合部(後行トンネル3のコンクリート中詰鋼製セグメント31の端面)に対し、断熱材82および防水材83を設置する。
さらに、鋼製セグメント32の端部において、鋼製セグメント32の側面に防水材83を吹き付ける。なお、符号35は水膨張シール、符号36は後行トンネル3のセグメントリング間用シール、符号37はコーキング材である。
【0028】
ここで、先行トンネル2と後行トンネル3との接合部の周辺では、後行トンネル3の裏込め材34として、高強度裏込め材を充填しておくことで、スキンプレート33とその背面の裏込め材34とを撤去した際に、後行トンネル3が変形することを防止する。すなわち、後行トンネル3の変形を抑制するためのスペーサー9を介設する際に、先行して最小限のスキンプレート33と裏込め材34を撤去するが、接合部周辺の高強度裏込め材によって、その時点での後行トンネル3の変形を抑制する。また、スキンプレート33および裏込め材34を撤去することによって後行トンネル3が変形しようとすると、支点となる先行トンネル2のセグメント(覆工30)に挟まれた裏込め材34が圧縮されて後行トンネル3の変形が促進されるが、この支点の周囲の裏込め材34を高強度裏込め材とすることで、裏込め材の変形を抑制し、ひいては、後行トンネル3の変位量を最小限に抑える。ここで、高強度裏込め材とは、通常の裏込め材34と同様に充填初期の可塑性を有し、かつ、硬化後に中詰コンクリート4と同様の強度を発現するものとする。なお、高強度裏込め材の強度は必要に応じて変更させればよい。また、高強度裏込め材は必要に応じて使用する。
【0029】
後行トンネル配筋工程は、
図6(a)に示すように、各後行トンネル3内に後行鉄筋52(主筋5)およびせん断補強筋50を配筋する工程である。
後行鉄筋52は、箱抜き(凹部6)内において、先行鉄筋51(機械式継手53)に接続する。
【0030】
後行トンネル充填工程は、
図6(b)に示すように、後行トンネル3内に後行中詰コンクリート42を充填する工程である。
後行トンネル3内への後行中詰コンクリート42の打設は、コンクリートポンプで圧送することにより、先行トンネル2の先端側から行う。後行中詰コンクリート42を打設すると、後行中詰コンクリート42の一部が凹部6に入り込むことで、凸部7が形成される。なお、後行トンネル3内への中詰コンクリート42の打設のタイミングは限定されるものではなく、例えば、全ての後行トンネル3の施工が完了してから実施してもよいし、施工が完了した後行トンネル3から順に実施してもよい。また、後行中詰コンクリート42の打設方法も限定されるものではない。中詰コンクリート4に所定の強度が発現したら、大断面覆工体10が完成する。
【0031】
掘削工程は、大断面覆工体10(先行トンネル2および後行トンネル3)により囲まれた領域を掘削して大断面トンネル1を形成する工程である(
図1参照)。
本実施形態では、大断面覆工体10の頂部から掘削を行う。なお、大断面覆工体10の内部の掘削方法は限定されるものではなく、例えば、下部(路盤)から掘削してもよい。
【0032】
本実施形態の大断面覆工体10および大断面トンネルの施工方法によれば、後行トンネル施工工程においては後行トンネル3の外面が裏込め材を介して先行中詰コンクリート41に当接し、接続準備工程の後はスペーサー9を介して後行トンネル3の外面がスペーサー9を介して先行中詰コンクリート41に当接しているため、後行トンネル3に変形が生じることを防止あるいは最小限に抑えることができる。後行トンネル3の変位を抑制することで、止水層8に亀裂が生じることを防止し、かつ、後行トンネル3と止水層8とが剥離することを防止できるので、地下水の出水や土砂の流入を防止し、ひいては、安全性が向上し、かつ、周辺環境への影響を最小限に抑えることができ、なおかつ、高品質な覆工体を構築することができる。
なお、後行トンネル3の変位を抑制することを目的として後行トンネル3のセグメントの仕様を大きくすると、不経済であるとともに、セグメントの運搬および組立に手間がかかる。また同様に後行トンネル3に別途支保構造を構築すると、その作業自体に手間がかかるだけでなく、大断面覆工体10の施工時(後行鉄筋52の配筋および後行中詰コンクリート42の打設)においてそれらが作業の支障になり、かつそれらは残置され大断面覆工体10を貫通することになるため、大断面覆工体10の止水性が低下するとともに、費用が増大する。一方、本実施形態では、スペーサー9を利用して後行トンネル3の変位を抑制するため、セグメントの仕様を最小限に抑えることが可能となり、経済的であるとともに施工性および止水性に優れている。
【0033】
また、先行中詰コンクリート41が充填された先行トンネル2を切削するため、先行トンネル2の覆工20を切削した際に先行トンネル2に破損が生じることが防止されており、安全な施工を可能としている。そのため、後行トンネル3を施工する際に、先行トンネル2内に支保構造を構築する必要がない。
また、先行中詰コンクリート41に形成した箱抜き(凹部6)を利用して先行鉄筋51と後行鉄筋52とを接合するため、一体性に優れた大断面覆工体10を簡易に構築することができる。
【0034】
また、スキンプレートの撤去により露出した先行中詰コンクリート41の表面にチッピングを行っているため、先行中詰コンクリート41と後行中詰コンクリート42との一体性が向上する。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では大断面トンネルを構築する場合について説明したが、大断面地下構造物はトンネルに限定されるものではない。
前記実施形態では、道路トンネルを構築する場合について説明したが、大断面トンネル1(大断面覆工体10)の用途は道路に限定されるものではなく、例えば鉄道等、その他のあらゆる地下構造物に適用することができる。
前記実施形態では、大断面覆工体10が、本線トンネル11と分岐トンネル12との2本のトンネルを巻き込む場合について説明したが、大断面覆工体10は、必ずしも2本のトンネルを巻き込んでいる必要はない。
トンネル2,3の形状寸法や本数等は、大断面トンネル1の形状寸法に応じて適宜決定すればよい。
【0036】
前記実施形態では、先行中詰コンクリート41を打設する前に、先行鉄筋51の端部に間詰材43を設置しておく場合について説明したが、箱抜き(凹部6)の形成方法は限定されない。例えば、先行鉄筋51の端部周辺に先行中詰コンクリート41よりも低強度なコンクリートを打設しておき、後行トンネル施工工程において低強度なコンクリートを撤去することにより凹部6を形成してもよいし、先行鉄筋51の端部に箱抜き用の型枠を設置しておいてもよい。
止水層8の施工は必要に応じて行えばよい。例えば、湧水量の少ない地盤の場合には、止水工程は省略してもよい。また、前記実施形態では、止水層8を凍土により形成する場合について説明したが、止水層8の形成方法は限定されるものではなく、例えば、薬液注入により形成してもよい。また、止水層8は、地山状況に応じて凍結工法と薬液注入工法とを組み合わせてもよい。
【課題】高水圧、軟弱地盤などの施工条件が厳しい場所でも安全に施工することができ、かつ、周辺環境への影響を最小限に抑え、なおかつ、容易に高品質な大断面地中構造物を構築することができる大断面地中構造物の構築方法を提案する。
【解決手段】複数本の先行トンネル2,2を並設する先行トンネル施工工程と、各先行トンネル2内に先行鉄筋51を配筋する先行トンネル配筋工程と、各先行トンネル2内に先行中詰コンクリート41を充填する先行トンネル充填工程と、隣り合う先行トンネル2,2同士の間に後行トンネル3を構築する後行トンネル施工工程と、後行トンネル3内に後行鉄筋52を配筋する後行トンネル配筋工程とを備え、後行トンネル施工工程では隣接する先行トンネル2,2の断面の一部を切削するとともに後行トンネル3の外面が先行中詰コンクリート41に当接するように後行トンネル3を構築する。