【文献】
道路トンネル技術基準(換気編)・同解説,日本,社団法人日本道路協会,2002年 1月21日,改訂版第2刷,第128頁−第131頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トンネル天井壁に設けられた側部吊部材と、ジェットファンの側面に設けられた側部支持部材と、前記側部吊部材と前記側部支持部材とを連結する連結部材とを備えたジェットファンの取付構造であって、
前記側部支持部材の位置が異なる予め抽出した複数の種類のジェットファンを、前記側部吊部材を取り替えることなく取り付けた場合に、各々のジェットファンの荷重に対して予め定めた強度を満たすように、前記側部吊部材の強度計算が行われていることを特徴とするジェットファンの取付構造。
【背景技術】
【0002】
従来、道路のトンネル内には、換気及び火災時の排煙を行うために上部からジェットファンが吊り下げられて設置されている。
図11は従来例に係るジェトファンを取り付けたトンネルの正面図(トンネル出入口方向から見た図)、
図12は従来例に係るジェットファンの取付構造を示す正面図、
図13は従来例に係るジェットファンの取付構造を示す側面図である。
【0003】
図11に示すように、トンネル6内のトンネル天井壁7には、上部からジェットファン1,1が吊り下げられて設置されている。ジェットファン1は、円筒状のケーシングの内部にファン本体を備えており、トンネル軸方向(車両の進行方向)に空気を吹き出して、トンネル内の換気及び火災時の排煙を行うようになっている。
【0004】
次に、
図12及び
図13を参照して、従来例に係るジェットファン1の取付構造について説明する。ジェットファン1の円筒状のケーシングの側面の4ヶ所には、逆U字状の側部支持部材2が設けられている。側部支持部材2は、ジェットファン1の側面の両側に各々2つ、所定の間隔を空けて設けられている。一方、トンネル天井壁7には、ジュットファン1を吊り下げるための側部吊部材101,102,103,104が固定されている。側部吊部材101,102,103,104は、ジェットファン1に設けられた4ヶ所の側部支持部材2の各々に対応して、斜め上方に位置している。側部吊部材101,102,103,104と4ヶ所の側部支持部材2とは、それぞれ4本の連結部材100により連結されている。以上により、ジェットファン1は、トンネル天井壁7から4点支持により吊り下げられて設置されている。
【0005】
なお、
図13において本来、側部吊部材102,104はジェットファン1の後側にあるため見えないが、本図面においては説明の都合上、側部吊部材102,104を実線で記載している。以下の図面においても同様である。
【0006】
また、
図13におけるジェットファン1の左右上端部には、頂部支持部材5,5が設けられており、トンネル天井壁7に固定された頂部吊部材3,3と連結部材4,4により連結されている。これらは、ジェットファン1の稼働時における方向性安定のために設けられているものであって、ジェットファン1の荷重支持を目的とするものではない。
【0007】
一方、トンネル内のジェットファンの取付構造に関して、特許文献1には、ファン取付の作業時間を短縮するための、ファン取付金具及び取付方法に関する発明が記載されている。また、特許文献2及び特許文献3には、ジェットファンの運転中の搖動を抑制するための、ジェットファンの支持構造に関する発明が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ジェットファンは、複数のファンメーカーにより製造されているが、各メーカーによりファン本体(電動機、羽根車)の形状や重量は異なる。そのため重量バランスを考慮する結果、円筒状のケーシングが同じ大きさであっても、ジェットファンを取り付けるための側部支持部材の位置はメーカー毎に異なっている。
【0010】
図14は、従来例に係るジェットファンの取付構造を示す側面図であり、側部支持部材の位置が異なるジェットファンを取り付けた状態を示す図である。
図14には、a,b,cの符号が付された6ヶ所の点が示されている。a,b,cの各点は、側部支持部材2の位置に応じて連結部材100の下端部が接続される位置であり、以下において「吊点位置」という。吊点位置a,aの間隔A、吊点位置b,bの間隔B、吊点位置c,cの間隔Cの関係は、A<B<Cとなっている。そして、
図14の点線で示すように、吊点位置が異なると、側部吊部材101,102,103,104と側部支持部材2とを連結する連結部材100の位置がずれることになる。なお、
図14の側部吊部材101,102,103,104は、吊点位置c,cに合わせて設計されている。
【0011】
図15は、4つの側部吊部材のうちの一つである側部吊部材101と連結部材100との接続部分を示す拡大図である。
図15(a)は吊点位置aの場合、
図15(b)は吊点位置bの場合、
図15(c)は吊点位置cの場合をそれぞれ示している。ここで、側部吊部材101は、吊点位置c,cに合わせて設計されているので、
図15(c)においては、連結部材100を取り付けるための側部吊部材101のプレートの向きと、連結部材100の向きとが同じである。しかし、
図15(a)や
図15(b)においては、吊点位置の変化に応じて連結部材100の向きが変化して、側部吊部材101のプレートの向きに対して傾いてしまうため、接続部分に金属疲労等の強度的な問題が生じる。
【0012】
また、側部吊部材の設計にあたっては、
図16及び
図17に示すように、側部吊部材と吊点位置による吊角度θ
1〜θ
4で決まるバランス計算から、個別の設置状態の重量バランスによる強度計算が行われ、側部吊部材の形状等が定められる。ここで、
図16及び
図17におけるF
1は、
図14における側部吊部材101及び103の各々に掛かる力を示しており、θ
1はトンネル横断面方向の吊角度を示し、θ
3はトンネル縦断面方向の吊角度を示している。同様にF
2は、
図14における側部吊部材102及び104の各々に掛かる力を示しており、θ
2はトンネル横断面方向の吊角度を示し、θ
4はトンネル縦断面方向の吊角度を示している。そして、これらの吊角度で決まるバランス計算を無視して吊点位置の異なるジェットファンを既設の側部吊部材に取り付けると、荷重の偏重による過荷重や金属疲労が進行しやすく安全上から問題が生じる。
【0013】
また、ジェットファンは5〜10年毎に工場で分解整備が行われるため、その間は現場から撤去されて、工場整備の完了後に再設置されるのが通常である。その場合トンネル内のジェットファンの台数不足をできるだけ避けるために、整備期間の短縮が余儀なくされることから、整備上の品質低下が問題となる。一方で、同一のジェットファンに替えて吊点位置が異なるジェットファンを設置することも考えられるが、上記のような安全上の問題があるため、吊点位置に適合した側部吊部材の新規設計、製作、アンカー打設が必要となり、コストが増加する。
【0014】
また、近年の自動車排ガス規制の改訂に伴い、換気用のジェットファンの需要は低下傾向にあり、道路管理会社が保有するジェットファンの有効活用も問題となっている。
【0015】
これに対して、上記先行技術文献には、異なる吊点位置のジェットファンを取り付けるための取付構造及び取付工法についての記載はない。そもそも従来は、1つの設置場所には1種類のジェットファンを取り付けることしか想定しておらず、将来的にメーカーの異なるジェットファンを取り付けることまで考慮してジェットファンの取付構造を検討することは行われていない。
【0016】
さらに、従来の側部吊部材は、ジェットファン撤去時の点検により変形や損傷等の問題があれば取り替えるという運用がなされていた。そのため、側部吊部材の設計にあたっては、変形は許容するものの破断には至らないように引張強度を基準とした設計手法がとられているケースがほとんどである。このような手法は、従来のようにジェットファンの撤去時に側部吊部材の点検時間を十分に確保することができ、必要に応じて側部吊部材を取り替えるのであれば問題はない。しかし、既設のジェットファンを取り外す工程と新設のジェットファンを取り付ける工程とを連続して行おうとすると、側部吊部材の点検時間を十分に確保することができず、問題となり得る。またこの問題は、側部支持部材の位置が同一のジェットファンに取り替える場合であっても生じるものである。
【0017】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、側部吊部材を変更することなく、側部支持部材の位置が異なる複数の種類のジェットファンを取り付けることの可能なジェットファンの取付構造及び取付工法を提供し、安全面やコスト面の課題を解決しつつジェットファンの迅速な取替や有効活用を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明のジェットファンの取付構造は、トンネル天井壁に設けられた側部吊部材と、ジェットファンの側面に設けられた側部支持部材と、前記側部吊部材と前記側部支持部材とを連結する連結部材とを備えたジェットファンの取付構造であって、前記側部支持部材の位置が異なる複数の種類のジェットファンを取り付けた場合に、各々のジェットファンの荷重に対して予め定めた強度を満たすように、前記側部吊部材の強度計算が行われていることを特徴とする。
【0019】
また好ましくは、前記連結部材の上端部を中心として、前記連結部材をトンネル軸方向に回動可能としたことを特徴とする。
【0020】
また好ましくは、前記連結部材の上端部をトンネル軸方向に水平移動可能としたことを特徴とする。
【0021】
また本発明のジェットファンの取付工法は、既設のジェットファンを取り外す工程と、前記既設のジェットファンとは側部支持部材の位置が異なる新設のジェットファンを取り付ける工程とを有することを特徴とする。
【0022】
また本発明のジェットファンの取付工法は、既設のジェットファンを取り外す工程と新設のジェットファンを取り付ける工程とを、側部吊部材を取り替えることなく連続して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明におけるジェットファンの取付構造は、トンネル天井壁に設けられた側部吊部材と、ジェットファンの側面に設けられた側部支持部材と、側部吊部材と側部支持部材とを連結する連結部材とを備えている。そして、側部支持部材の位置が異なる複数の種類のジェットファンを取り付けた場合に、各々のジェットファンの荷重に対して予め定めた強度を満たすように、側部吊部材の強度計算が行われている。従って本発明によれば、トンネル天井壁に設けた側部吊部材を変更することなく、側部支持部材の位置が異なるジェットファンを取り付けることができる。
【0024】
また本発明によれば、連結部材の上端部を中心として、連結部材をトンネル軸方向に回動可能としたので、側部支持部材の位置が異なる複数の種類のジェットファンを取り付けた場合に、側部支持部材の位置に応じて連結部材を回動させることにより、側部吊部材と連結部材との間に無理な力が加わるのを抑制することができる。従って、側部吊部材の強度計算上有利となる。
【0025】
また本発明によれば、連結部材の上端部をトンネル軸方向に水平移動可能としたので、側部支持部材の位置が異なる複数の種類のジェットファンを取り付けた場合に、側部支持部材の位置に応じて連結部材を水平移動させることにより、側部吊部材と連結部材との間に無理な力が加わるのを抑制することができる。従って、側部吊部材の強度計算上有利となる。
【0026】
また本発明のジェットファンの取付工法によれば、既設のジェットファンを取り外す工程と、既設のジェットファンとは側部支持部材の位置が異なる新設のジェットファンを取り付ける工程とを有するので、分解整備等のため既設のジェットファンを取り替える場合に、側部吊部材を変更することなく、側部支持部材の位置が異なる新設のジェットファンを直ちに取り付けることができる。
【0027】
また本発明のジェットファンの取付工法によれば、既設のジェットファンを取り外す工程と新設のジェットファンを取り付ける工程とを連続して行い、側部吊部材を取り替えることなく、ジェットファンの取替を迅速に行うことができる。
【0028】
以上本発明によれば、側部吊部材を変更することなく、側部支持部材の位置が異なる複数の種類のジェットファンを取り付けることの可能なジェットファンの取付構造及び取付工法を提供し、安全面やコスト面の課題を解決しつつジェットファンの迅速な取替や有効活用を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態1に係るジェットファンの取付構造及び取付工法について説明する。
図1は、実施形態1に係るジェットファンの取付構造を示す側面図であり、
図2は、実施形態1に係る側部吊部材を示す側面図である。
【0031】
ジェットファン1の円筒状のケーシングの側面の4ヶ所には、逆U字状の側部支持部材2が設けられている。側部支持部材2は、ジェットファン1の側面の両側に各々2つ、所定の間隔を空けて設けられている。一方、トンネル天井壁7には、ジェットファン1を吊り下げるための側部吊部材11,12,13,14が固定されている。側部吊部材11,12,13,14は、ジェットファン1に設けられた4ヶ所の側部支持部材2の各々に対応して、斜め上方に位置している。側部吊部材11,12,13,14と4ヶ所の側部支持部材2とは、それぞれ4本の連結部材10により連結されている。以上により、ジェットファン1は、トンネル天井壁7から4点支持により吊り下げられて設置されている。
【0032】
側部吊部材11,12,13,14には、下方に向けた略三角形状のプレート部が形成されており、連結部材10は、上端部が側部吊部材11,12,13,14のプレート部に形成された孔に軸着されており、上端部を中心としてトンネル軸方向(車両の進行方向)に回動可能となっている。
【0033】
図1は、実施形態1において側部支持部材2の位置が異なるジェットファン1を取り付けた状態を示しており、側部支持部材2の位置に応じて連結部材10の下端部が接続される吊点位置a,b,cが示されている。吊点位置a,aの間隔A、吊点位置b,bの間隔B、吊点位置c,cの間隔Cの関係は、A<B<Cとなっている。そして、
図1の点線で示すように、吊点位置が異なると、側部吊部材11,12,13,14と側部支持部材2とを連結する連結部材10が、その上端部を中心としてトンネル軸方向に回動する。
【0034】
図2は、4つの側部吊部材のうちの一つである側部吊部材11と連結部材10との接続部分を示す拡大図である。
図2(a)は吊点位置aの場合、
図2(b)は吊点位置bの場合、
図2(c)は吊点位置cの場合をそれぞれ示している。ここで、連結部材10は、吊点位置に応じて回動するので、接続部分において金属疲労等の強度的な問題が生じることはない。
【0035】
一方、側部吊部材11,12,13,14の設計にあたっては、側部支持部材2の位置が異なる複数の種類のジェットファンを取り付けた場合に、各々のジェットファンの荷重に対して予め定めた強度を満たすように強度計算を行っておく。強度計算の対象となる複数の種類のジェットファンは、ジェットファンの実際の取付場所に応じて、取り付ける可能性のあるジェットファンを予め抽出しておく。これにより、抽出したジェットファンであれば、どのジェットファンを取り付けても安全上の問題はクリアされる。もちろん、連結部材10についても、予め定めた強度を満たす必要がある。
【0036】
また、強度計算にあたっては、ジェットファンの重量及び
図16及び
図17に示す吊角度θ
1〜θ
4を、各々のジェットファンについて求めて行う。ここでジェットファンの重量をWとすると、側部吊部材101及び103の各々に掛かる力F
1、側部吊部材102及び104の各々に掛かる力F
2、吊角度θ
1〜θ
4の力のつり合いは、次式で表される。
(2F
2cosθ
4)cosθ
2+(2F
1cosθ
3)cosθ
1=W
(F
2cosθ
4)sinθ
2=(F
1cosθ
3)sinθ
1
【0037】
例えば、θ
1=16°、θ
2=26°、θ
3=29°、θ
4=64°、W=2000kgとすると、
F
1=7.40KN
F
2=9.03KN
となる。
【0038】
予め定める強度については、上記強度計算により算出された数値を基に適宜決定すればよいが、例えば、側部吊部材を構成する各部品について、(1)降伏点に対する安全率、(2)引張強度に対する安全率により定めることができる。安全率は通常15倍で設計する。そして、定めた強度を満たすように、側部吊部材を構成する各部品の形状、材質、トンネル天井壁への固定方法等を決定する。なお、より安全性の高い降伏点に対する安全率により強度計算することが好ましい。
【0039】
このように、側部支持部材2の位置が異なる複数の種類のジェットファンの荷重に対して予め定めた強度を満たすようにしておけば、次のような取付工法によりジェットファンの取替が容易になる。
【0040】
まず、分解整備等により取り外す必要のある既設のジェットファンを取り外す。そして、既設のジェットファンとは側部支持部材の位置が異なる新設のジェットファンを取り付ける。またこのとき、新設のジェットファンの側部支持部材2の位置に合わせて、連結部材10を上端部を中心としてトンネル軸方向に回動させながら取り付ける。このようにして、既設のジェットファンの分解整備を待つまでもなく、整備済のジェットファンを直ちに取り付けることができる。もちろん側部吊部材11,12,13,14を取り替える必要はない。このようにして、既設のジェットファンの取り外しと新設のジェットファンの取り付けを連続して行うことができる。なお、既設のジェットファンと側部支持部材の位置が同一のジェットファンを新設する場合であっても、同様に側部吊部材の取替を行う必要がないのはもちろんである。
【0041】
また、予め定める強度を、例えば降伏点に対する安全率により計算するなどして、より安全性の高い強度とすることにより、側部吊部材11,12,13,14の点検時間を短縮することもできる。
【0042】
実施形態1に係るジェットファンの取付構造は、トンネル天井壁7に設けられた側部吊部材11,12,13,14と、ジェットファン1の側面に設けられた側部支持部材2と、側部吊部材11,12,13,14と側部支持部材2とを連結する連結部材10とを備えている。そして、側部支持部材2の位置が異なる複数の種類のジェットファン1を取り付けた場合に、各々のジェットファン1の荷重に対して予め定めた強度を満たすように、側部吊部材11,12,13,14の強度計算が行われている。従って、トンネル天井壁7に設けた側部吊部材11,12,13,14を変更することなく、側部支持部材2の位置が異なるジェットファン1を取り付けることができる。
【0043】
また、連結部材10の上端部を中心として、連結部材10をトンネル軸方向に回動可能としたので、側部支持部材2の位置が異なる複数の種類のジェットファン1を取り付けた場合に、側部支持部材2の位置に応じて連結部材10を回動させることにより、側部吊部材11,12,13,14と連結部材10との間に無理な力が加わるのを抑制することができる。従って、側部吊部材11,12,13,14の強度計算上有利となる。
【0044】
また実施形態1に係るジェットファンの取付工法によれば、既設のジェットファンを取り外す工程と、既設のジェットファンとは側部支持部材2の位置が異なる新設のジェットファンを取り付ける工程とを有するので、分解整備等のため既設のジェットファンを取り替える場合に、側部吊部材11,12,13,14を変更することなく、側部支持部材2の位置が異なる新設のジェットファンを直ちに取り付けることができる。
【0045】
また、既設のジェットファンを取り外す工程と新設のジェットファンを取り付ける工程とを連続して行い、側部吊部材11,12,13,14を取り替えることなく、ジェットファンの取替を迅速に行うことができる。
【0046】
次に、
図3及び
図4を参照して、本発明の実施形態2に係るジェットファンの取付構造について説明する。
図3は、実施形態2に係るジェットファンの取付構造を示す側面図であり、
図4は、実施形態2に係る側部吊部材を示す側面図である。実施形態2に係るジェットファンの取付構造は、実施形態1とほぼ同様の構成であるが、側部吊部材の形状が異なる。
【0047】
実施形態2に係るジェットファンの取付構造における側部吊部材21,22,23,24は、U字状に形成されており、連結部材20は、上端部が側部吊部材21,22,23,24の内側に軸着されており、上端部を中心としてトンネル軸方向(車両の進行方向)に回動可能となっている。
【0048】
図3は、実施形態2において側部支持部材2の位置が異なるジェットファン1を取り付けた状態を示しており、側部支持部材2の位置に応じて連結部材20の下端部が接続される吊点位置a,b,cが示されている。吊点位置a,aの間隔A、吊点位置b,bの間隔B、吊点位置c,cの間隔Cの関係は、A<B<Cとなっている。そして、
図3の点線で示すように、吊点位置が異なると、側部吊部材21,22,23,24と側部支持部材2とを連結する連結部材20が、その上端部を中心としてトンネル軸方向に回動する。
【0049】
図4は、4つの側部吊部材のうちの一つである側部吊部材21と連結部材20との接続部分を示す拡大図である。
図4(a)は吊点位置aの場合、
図4(b)は吊点位置bの場合、
図4(c)は吊点位置cの場合をそれぞれ示している。ここで、連結部材20は、吊点位置に応じて回動するので、接続部分において金属疲労等の強度的な問題が生じることはない。
【0050】
実施形態2においても、実施形態1と同様の取付工法によりジェットファンを取り替えることができる。
【0051】
実施形態2に係るジェットファンの取付構造及び取付工法によれば、実施形態1に係るジェットファンの取付構造及び取付工法と同様の作用効果を奏する。
【0052】
なお、連結部材の上端部を中心として、連結部材をトンネル軸方向に回動可能とするための構成は、実施形態1及び実施形態2の構成に限定されるものではなく、他の構成により実現してもよい。
【0053】
次に、
図5及び
図6を参照して、本発明の実施形態3に係るジェットファンの取付構造について説明する。
図5は、実施形態3に係るジェットファンの取付構造を示す側面図であり、
図6は、実施形態3に係る側部吊部材を示す側面図である。実施形態3に係るジェットファンの取付構造は、実施形態1とほぼ同様の構成であるが、側部吊部材の形状が異なる。
【0054】
実施形態3に係るジェットファンの取付構造における側部吊部材31,32,33,34には、下方に向けた略矩形状のプレート部が形成されており、複数の孔(本実施形態では3つ)が形成されている。連結部材30は、上端部が側部吊部材31,32,33,34のプレート部に形成された複数の孔のいずれかに固定されることにより、上端部がトンネル軸方向(車両の進行方向)に水平移動可能となっている。
【0055】
図5は、実施形態3において側部支持部材2の位置が異なるジェットファン1を取り付けた状態を示しており、側部支持部材2の位置に応じて連結部材30の下端部が接続される吊点位置a,b,cが示されている。吊点位置a,aの間隔A、吊点位置b,bの間隔B、吊点位置c,cの間隔Cの関係は、A<B<Cとなっている。そして、
図5の点線で示すように、吊点位置が異なると、側部吊部材31,32,33,34と側部支持部材2とを連結する連結部材30の上端部がトンネル軸方向に水平移動する。
【0056】
図6は、4つの側部吊部材のうちの一つである側部吊部材31と連結部材30との接続部分を示す拡大図である。
図6(a)は吊点位置aの場合、
図6(b)は吊点位置bの場合、
図6(c)は吊点位置cの場合をそれぞれ示している。ここで、連結部材30の上端部は、吊点位置に応じて水平移動するので、接続部分において金属疲労等の強度的な問題が生じることはない。
【0057】
実施形態3においても、まず、分解整備等により取り外す必要のある既設のジェットファンを取り外す。そして、既設のジェットファンとは側部支持部材の位置が異なる新設のジェットファンを取り付ける。またこのとき、新設のジェットファンの側部支持部材2の位置に合わせて、連結部材30の上端部をトンネル軸方向に水平移動させながら取り付ける。このようにして、既設のジェットファンの分解整備を待つまでもなく、整備済のジェットファンを直ちに取り付けることができる。もちろん側部吊部材31,32,33,34を取り替える必要はない。このようにして、既設のジェットファンの取り外しと新設のジェットファンの取り付けを連続して行うことができる。なお、既設のジェットファンと側部支持部材の位置が同一のジェットファンを新設する場合であっても、同様に側部吊部材の取替を行う必要がないのはもちろんである。
【0058】
また、予め定める強度を、例えば降伏点に対する安全率により計算するなどして、より安全性の高い強度とすることにより、側部吊部材31,32,33,34の点検時間を短縮することもできる。
【0059】
実施形態3に係るジェットファンの取付構造は、トンネル天井壁7に設けられた側部吊部材31,32,33,34と、ジェットファン1の側面に設けられた側部支持部材2と、側部吊部材31,32,33,34と側部支持部材2とを連結する連結部材30とを備えている。そして、側部支持部材2の位置が異なる複数の種類のジェットファン1を取り付けた場合に、各々のジェットファン1の荷重に対して予め定めた強度を満たすように、側部吊部材31,32,33,34の強度計算が行われている。従って、トンネル天井壁7に設けた側部吊部材31,32,33,34を変更することなく、側部支持部材2の位置が異なるジェットファン1を取り付けることができる。
【0060】
また、連結部材30の上端部をトンネル軸方向に水平移動可能としたので、側部支持部材2の位置が異なる複数の種類のジェットファン1を取り付けた場合に、側部支持部材2の位置に応じて連結部材30を水平移動させることにより、側部吊部材31,32,33,34と連結部材30との間に無理な力が加わるのを抑制することができる。従って、側部吊部材31,32,33,34の強度計算上有利となる。
【0061】
また実施形態3に係るジェットファンの取付工法によれば、既設のジェットファンを取り外す工程と、既設のジェットファンとは側部支持部材2の位置が異なる新設のジェットファンを取り付ける工程とを有するので、分解整備等のため既設のジェットファンを取り替える場合に、側部吊部材31,32,33,34を変更することなく、側部支持部材2の位置が異なる新設のジェットファンを直ちに取り付けることができる。
【0062】
また、既設のジェットファンを取り外す工程と新設のジェットファンを取り付ける工程とを連続して行い、側部吊部材31,32,33,34を取り替えることなく、ジェットファンの取替を迅速に行うことができる。
【0063】
次に、
図7及び
図8を参照して、本発明の実施形態4に係るジェットファンの取付構造について説明する。
図7は、実施形態4に係るジェットファンの取付構造を示す側面図であり、
図8は、実施形態4に係る側部吊部材を示す側面図である。実施形態4に係るジェットファンの取付構造は、実施形態3とほぼ同様の構成であるが、側部吊部材の形状が異なる。
【0064】
実施形態4に係るジェットファンの取付構造における側部吊部材41,42,43,44には、下方に向けた略矩形状のプレート部が形成されており、複数の凹部(本実施形態では3つ)を有する長孔が形成されている。連結部材40は、上端部が側部吊部材41,42,43,44のプレート部に形成された長孔の複数の凹部のいずれかに固定されることにより、上端部がトンネル軸方向(車両の進行方向)に水平移動可能となっている。
【0065】
図7は、実施形態4において側部支持部材2の位置が異なるジェットファン1を取り付けた状態を示しており、側部支持部材2の位置に応じて連結部材40の下端部が接続される吊点位置a,b,cが示されている。吊点位置a,aの間隔A、吊点位置b,bの間隔B、吊点位置c,cの間隔Cの関係は、A<B<Cとなっている。そして、
図7の点線で示すように、吊点位置が異なると、側部吊部材41,42,43,44と側部支持部材2とを連結する連結部材40の上端部がトンネル軸方向に水平移動する。
【0066】
図8は、4つの側部吊部材のうちの一つである側部吊部材41と連結部材40との接続部分を示す拡大図である。
図8(a)は吊点位置aの場合、
図8(b)は吊点位置bの場合、
図8(c)は吊点位置cの場合をそれぞれ示している。ここで、連結部材40の上端部は、吊点位置に応じて水平移動するので、接続部分において金属疲労等の強度的な問題が生じることはない。
【0067】
実施形態4においても、実施形態3と同様の取付工法によりジェットファンを取り替えることができる。
【0068】
実施形態4に係るジェットファンの取付構造及び取付工法によれば、実施形態3に係るジェットファンの取付構造及び取付工法と同様の作用効果を奏する。
【0069】
次に、
図9及び
図10を参照して、本発明の実施形態5に係るジェットファンの取付構造について説明する。
図9は、実施形態5に係るジェットファンの取付構造を示す側面図であり、
図10は、実施形態5に係る側部吊部材を示す側面図である。実施形態5に係るジェットファンの取付構造は、実施形態3とほぼ同様の構成であるが、側部吊部材の形状が異なる。
【0070】
実施形態5に係るジェットファンの取付構造における側部吊部材51,52,53,54には、下方に向けた略矩形状のプレート部が形成されており、プレート部に形成された孔に連結部材50が接続されている。そして、側部吊部材51,52,53,54は、トンネル天井壁に固定されたレール部材55に沿って移動し、任意の位置でボルト56,56により固定されるようになっている。これにより、連結部材50の上端部がトンネル軸方向(車両の進行方向)に水平移動可能となっている。
【0071】
図9は、実施形態5において側部支持部材2の位置が異なるジェットファン1を取り付けた状態を示しており、側部支持部材2の位置に応じて連結部材50の下端部が接続される吊点位置a,b,cが示されている。吊点位置a,aの間隔A、吊点位置b,bの間隔B、吊点位置c,cの間隔Cの関係は、A<B<Cとなっている。そして、
図9の点線で示すように、吊点位置が異なると、側部吊部材51,52,53,54と側部支持部材2とを連結する連結部材50の上端部がトンネル軸方向に水平移動する。
【0072】
図10は、4つの側部吊部材のうちの一つである側部吊部材51と連結部材50との接続部分を示す拡大図である。側部吊部材51がレール部材55に沿って左右に移動することにより、連結部材50の上端部は、吊点位置に応じて水平移動するので、接続部分において金属疲労等の強度的な問題が生じることはない。
【0073】
実施形態5においても、実施形態3と同様の取付工法によりジェットファンを取り替えることができる。
【0074】
実施形態5に係るジェットファンの取付構造及び取付工法によれば、実施形態3に係るジェットファンの取付構造及び取付工法と同様の作用効果を奏する。
【0075】
なお、連結部材の上端部をトンネル軸方向に水平移動可能とするための構成は、実施形態3乃至実施形態5の構成に限定されるものではなく、他の構成により実現してもよい。
【0076】
以上本実施形態に係るジェットファンの取付構造及び取付工法によれば、側部吊部材を変更することなく、側部支持部材の位置が異なる複数の種類のジェットファンを取り付けることの可能なジェットファンの取付構造及び取付工法を提供し、安全面やコスト面の課題を解決しつつジェットファンの迅速な取替や有効活用を図ることができる。
【0077】
なお、ジェットファンの種類には口径の異なるものがあり、口径が異なると側部支持部材のトンネル横断面方向の位置も異なる。従って、側部吊部材を変更することなく、口径の異なるジェットファンを取り付ける場合には、連結部材の上端部を中心としてトンネル横断面方向に回動可能とするなどして、側部吊部材と連結部材の接続部分における金属疲労等の強度的な問題を回避することが好ましい。