(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062210
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】フィルム剥離装置
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
B65H41/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-240418(P2012-240418)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-88256(P2014-88256A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】武末 功
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 宣幸
【審査官】
冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−104864(JP,A)
【文献】
特開2003−273200(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1908718(EP,A1)
【文献】
特開2005−175384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する基板搬送手段と、該基板搬送手段により搬送されてきた基板に貼付されたフィルムを剥離する剥離手段と、基板が剥離手段の位置に到達したことを検知する検知手段とを備えたフィルム剥離装置において、前記剥離手段を、粘着シートの送出・巻取機構と、該粘着シートの送出・巻取機構から送出された粘着シートをフィルムの全面に亘って貼り付ける貼付機構と、粘着シートに貼着されたフィルムを粘着シートとともに基板から剥離する剥離機構と、貼付機構及び剥離機構を基板に向けて伸張させるための駆動機構とを備え、前記基板搬送を、前記検知手段によって基板が剥離手段の位置に到達したことを検知したときに停止し、駆動機構によって貼付機構及び剥離機構を基板に向けて伸張させて粘着シートの送出・巻取機構から送出された粘着シートを基板に押し付けた後、基板を基板搬送方向に搬送しながら、粘着シートの送出・巻取機構から粘着シートを送ることにより、粘着シートに貼着されたフィルムを粘着シートとともに基板から剥離するようにしたことを特徴とするフィルム剥離装置。
【請求項2】
貼付機構と、剥離機構とを、1つの部材で構成したことを特徴とする請求項1記載のフィルム剥離装置。
【請求項3】
貼付機構と、剥離機構とを、1つのローラ形状部材で構成したことを特徴とする請求項2記載のフィルム剥離装置。
【請求項4】
粘着シートの送出機構に、セパレータの巻取機構を付設してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のフィルム剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板に貼付されたフィルムを剥離するためのフィルム剥離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に貼付されたフィルムを剥離するために、特許文献1に記載されているように、基板からフィルムの前端部を部分的に分離するため剥離用粘着テープを押し付けた状態で、基板を搬送路の下流側に移動させることにより剥離用粘着テープとともにフィルムを捲り上げ、その部分をクランプ部で把持するフィルム把持搬送機構と、基板を挟む圧接ローラとを用いて、基板を搬送方向へ移動させながら剥離する方法や、特許文献2に記載されているように、基板の前部をクランプ部で把持し、剥離用粘着テープを押し付けた状態で、基板を搬送路の下流側に移動させることにより剥離用粘着テープとともにフィルムを捲り上げ、その部分をクランプ部で把持するフィルム把持搬送機構を用いて、基板を搬送方向へ移動させながら剥離する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4779132号公報
【特許文献2】特許第4231018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1及び2に開示された方法では、基板の両面に貼付されたフィルムを基板から分離する際、フィルムが剥離用粘着テープとともに分離されることになるが、この方法では、剥離力に対抗し得るフィルム強度を備えていないフィルムや、レジスト膜が覆い被さっているフィルムでは、剥離時にフィルムが破断して基板上に残る問題があった。
【0005】
本発明は、上記の剥離用粘着テープを用いてフィルムを剥離する際のフィルムの破断の問題点に鑑み、DFSR(Dry Film Solder Resist)等の破断し易いフィルムでも、フィルムを剥離する際のフィルムの破断を防止することにより、基板上にフィルムの破断片が残留することを防止できるようにしたフィルム剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のフィルム剥離装置は、基板を搬送する基板搬送手段と、該基板搬送手段により搬送されてきた基板に貼付されたフィルムを剥離する剥離手段と、基板が剥離手段の位置に到達したことを検知する検知手段とを備えたフィルム剥離装置において、前記剥離手段を、粘着シートの送出
・巻取機構と、該粘着シートの送出・巻取機構から送出された粘着シートをフィルムの全面に亘って貼り付ける貼付機構と、粘着シートに貼着されたフィルムを粘着シートとともに基板から剥離する剥離機構と、貼付機構及び剥離機構を基板に向けて伸張させるための駆動機構とを備え、前記基板搬送を、前記検知手段によって基板が剥離手段の位置に到達したことを検知したときに停止し、駆動機構によって貼付機構及び剥離機構を基板に向けて伸張させて粘着シートの送出・
巻取機構から送出された粘着シートを基板に押し付けた後、基板を基板搬送方向に搬送しながら、粘着シートの送出・
巻取機構から粘着シートを送ることにより、粘着シートに貼着されたフィルムを粘着シートとともに基板から剥離するようにしたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、貼付機構と、剥離機構とを、1つの部材、より具体的には、1つのローラ形状部材で構成することができる。
【0008】
また、粘着シートの送出機構に、セパレータの巻取機構を付設することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルム剥離装置によれば、DFSR等の破断し易いフィルムであっても、粘着シートをフィルムの全面に貼り付けることによって、フィルムを強化し、仮に破断する状況があっても、粘着シートがフィルムの全面に亘って貼り付いていることで、基板上にフィルムの破断片が残留することなく、基板に貼付されたフィルムを剥離することができる。
【0010】
また、貼付機構と、剥離機構とを、1つの部材、より具体的には、1つのローラ形状部材で構成することにより、装置の機構を簡略化することができる。
【0011】
また、粘着シートの送出機構に、セパレータの巻取機構を付設することにより、粘着力が大きいセパレータを有する粘着シートを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のフィルム剥離装置の一実施形態を示す概略構造の平面図である。
【
図3】
図2の実施形態における貼付及び剥離機構の一例を示す部分斜視図である。
【
図4】
図2の実施形態における貼付及び剥離機構の別の一例を示す部分斜視図である。
【
図5】
図2の実施形態における貼付及び剥離機構の別の一例を示す部分斜視図である。
【
図6】
図3〜
図5の実施形態における貼付及び剥離ローラの一例を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のフィルム剥離装置の一実施形態を
図1〜
図3により説明する。
以下の説明において、後述する基板2より上側に位置するものについて引用符号末尾に添字Aを、また、基板2より下側に位置するものについては添字Bを、それぞれ付加し、総称する場合は添字を除くものとする。例えば、基板2より上側に位置する貼付及び剥離ローラを32A、下側に位置する貼付及び剥離ローラを32B、貼付及び剥離ローラを総称して呼ぶ場合は32と記す。
【0014】
図1に示すように、フィルム剥離装置100は、基板搬送ローラ1と、剥離機構30とから、その主要部が構成されている。
【0015】
基板搬送ローラ1は、基板2を搬送するために水平に複数個並べられ、基板2の搬送路を形成している。基板2は、
図2に矢印Aで示すように、フィルム剥離装置100の左側(搬入口)から右側(搬出口)に向かって搬送される。
【0016】
基板2の上面及び下面には、
図3に示すように、レジスト膜2aが接着されており、さらに、レジスト膜2aにはフィルム2bが積層して貼付されている。
この場合、レジスト膜2aは、熱処理により基板2の表面に接着され、フィルム2bはレジスト膜2a自体が持つ粘着性でレジスト膜2aに貼付されている。
ここで、フィルム2bは、基板2が基板製造工程で処理される際にその表面に接着されたレジスト膜2aを保護するためのものである。
【0017】
先に説明したように、複数の基板搬送ローラ1よりなる基板2の搬送路の途中には、剥離機構30が設けられている。
このフィルムの剥離機構30は、
図1〜
図2に示すように、基板2の搬送方向に沿って配置し、上下の分を含めて合計2箇所設けてある。
【0018】
本実施形態において、剥離機構30は、粘着シート60を基板2上のフィルム2bに貼付及び剥離するための貼付及び剥離ローラ32と、この貼付及び剥離ローラ32を、基板2に向けて伸張させるための駆動機構31とから構成されている。
【0019】
ところで、この本実施形態において、粘着シート60は、粘着シートの送出機構40から送出され、粘着シートの巻取機構50に巻き取られるようにされている。
【0020】
そして、粘着シートの送出機構40の近傍には、粘着シート60に用いられているセパレータ61を粘着シート60から分離するセパレータ分離機構42と、分離したセパレータ61を巻き取るセパレータ巻取機構41が設置されている。
このように、粘着シートの送出機構40に、セパレータ分離機構42及びセパレータ巻取機構41を配設することにより、粘着シート60に粘着力が大きいセパレータを有する粘着シートを使用することができる。
なお、粘着シートの送出機構40の配設位置の近傍に、基板2の表面を保護するために配設されていたカバーフィルム等の基板保護材料(図示省略)を予め除去する除去機構(図示省略)を設けることができ、さらに、この除去機構を、上記セパレータ巻取機構41と兼用するように構成することもできる。
【0021】
次に、上記のように構成されたフィルム剥離装置100の動作を説明する。
基板2は、
図2の矢印A方向にフィルム剥離装置100の投入口から基板搬送ローラ1によりフィルム剥離装置100の出口に向かって搬送路上を搬送される。
基板2が基板搬送ローラ1により搬送路上を搬送され、剥離機構30の所定位置に到達すると、図示していない光学式センサにより検知され停止する。
基板2が停止すると、基板2のフィルム2bの前端を基準とした所定位置に、駆動機構31としてのシリンダを作動させることにより、貼付及び剥離ローラ32によって、粘着シートの送出機構40から送出された剥離用の粘着シート60を、基板2に押し付ける。
その後、基板2を基板搬送A方向に搬送しながら、粘着シート60を送ることにより粘着シート60とともにフィルム2bを剥離する。
貼付及び剥離ローラ32で剥離されたフィルム2bは、粘着シート60に貼付された状態で粘着シートの巻取機構50に巻き取られる。
フィルム2bを剥離された基板2は、基板搬送ローラ1でフィルム剥離装置100の後段に設けた洗浄処理工程等を行う装置に搬送される。
【0022】
以上説明したように、本実施形態では、基板2に貼付されたレジスト膜2a上に貼付さられているフィルム2bを剥離する場合に、粘着シート60をフィルム2bの全面に貼付、剥離することでフィルムの破断を防止することができる。
【0023】
ここで、剥離機構の全体構造の一実施形態を、
図4〜
図5に概略斜視図で示す。
また、貼付及び剥離ローラ32の別実施形態を
図6に示す。
図4〜6において、
図1〜
図3に示す実施形態と同符号は同一機能部材を示し、その説明を省略する。
【0024】
図4において、
図3に示す実施形態との相違は、貼付及び剥離ローラ32の機能を、貼付ローラ71と剥離ローラ72の2本のローラに分けて個別に奏するようにした点である。
このように機能を分けることで、貼付動作と剥離動作を個別調整することが可能となり、動作の確実性を増すことができる。
【0025】
図5は、
図4において、粘着シート60の貼付動作を貼付ローラ71で行っていたが、貼付ローラ71を貼付プレート74に置き換えたものである。
この変更により、フィルム2bの先端部への粘着シート60の貼付を強固にし、その後の剥離動作では貼付プレート74を使用せずに剥離ローラ72による円滑な剥離を可能とすることができる。
【0026】
図6は、貼付及び剥離ローラ32のほか、貼付ローラ71や剥離ローラ72に用いられるローラの一実施形態を示す。
本実施形態で使用するローラは、ストレートローラが基本となるが、複数個のリングローラ73を用いて代用することも可能である。
リングローラ73を使用することにより、粘着シート60の貼付時や剥離時に基板2上の製品部分に圧力をかけずに剥離することが可能となる。
【0027】
本発明は、以上の実施形態に限らず、次のように実施してもよい。
(1)貼付と剥離の機能を併せ持つ貼付及び剥離ローラ32を、貼付ローラ71と剥離ローラ72とに分けるようにしてもよい。
(2)貼付ローラ71を貼付プレート74とし、押付動作で粘着シート60を貼り付けるようにしてもよい。
(3)貼付ローラ71や剥離ローラ72が、複数個のリングローラ73を用いた形態でもよい。
(4)リングローラ73を用いる場合、リングローラ73間に粘着シート60を押える目的で空気の吹付機構を設けてもよい。
(5)剥離機構30で、貼付及び剥離ローラ32を基板2に対して移動させる駆動機構31(貼付ローラ71や貼付プレート74の駆動機構75等も同様。)は、シリンダのほか、モータ駆動機構等の任意の駆動機構を用いてもよい。
(6)剥離機構30で貼付及び剥離ローラ32を基板2に対して移動させる駆動機構は、上下で分割せず、1つの駆動系で構成してもよい。
(7)適用する基板2は、ガラス、セラミック、剛性樹脂、半導体、積層板等の各種基板に適用するようにしてもよい。
(8)基板2の上面あるいは下面の片側に貼付されたフィルム2bを剥離させる場合に適用するようにしてもよい。
【0028】
以上、本発明のフィルム剥離装置について、その実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、DFSR(Dry Film Solder Resist)等の破断し易いフィルムでも、フィルムを剥離する際のフィルムの破断を防止することにより、基板上にフィルムの破断片が残留することを防止できるようにしたフィルム剥離装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 基板搬送ローラ(基板搬送手段)
2 基板
2a レジスト膜
2b フィルム
30 剥離機構(剥離手段)
31 駆動機構(シリンダ)
32 貼付及び剥離ローラ(貼付機構、剥離機構)
40 粘着シートの送出機構
41 セパレータ巻取機構
42 セパレータ分離機構
50 粘着シートの巻取機構
60 粘着シート
61 セパレータ
71 貼付ローラ
72 剥離ローラ
73 リングローラ
74 貼付プレート
75 駆動機構(シリンダ)
100 フィルム剥離装置