特許第6062217号(P6062217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062217堆積粒状材の粒径計測方法及びシステム並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062217
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】堆積粒状材の粒径計測方法及びシステム並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20170106BHJP
   G01N 33/24 20060101ALN20170106BHJP
   G06T 7/00 20170101ALN20170106BHJP
【FI】
   G01N15/02 C
   !G01N33/24
   !G06T7/00 C
   !G06T7/00 200Z
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-247964(P2012-247964)
(22)【出願日】2012年11月11日
(65)【公開番号】特開2014-95644(P2014-95644A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504454060
【氏名又は名称】株式会社アプライド・ビジョン・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110711
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100078798
【弁理士】
【氏名又は名称】市東 禮次郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】阿子島 学
(72)【発明者】
【氏名】伊達 健介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕信
(72)【発明者】
【氏名】水口 祐司
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−249553(JP,A)
【文献】 特開2002−099902(JP,A)
【文献】 特開2009−036533(JP,A)
【文献】 特開2000−304511(JP,A)
【文献】 特開2009−276073(JP,A)
【文献】 特開平08−101035(JP,A)
【文献】 特開2012−047613(JP,A)
【文献】 特開2003−035527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/00〜15/14、33/00〜33/46、G06T7/00、7/20〜7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる粒径の粒状材が積み重なった堆積物の一対のステレオ画像を撮影し,前記両画像から堆積物表面全体に分散した複数の離散対応点を選出し且つ各離散対応点の二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルを作成し,前記両画像から各粒状材の輪郭を抽出し,前記両画像から各輪郭上の複数の対応点を検出し且つ前記三次元曲面モデルにより各対応点の二次元座標三次元座標に変換し変換した前記各輪郭上の複数の三次元座標を球状又は楕円状で近似することにより各粒状材の粒径を計測してなる堆積粒状材の粒径計測方法。
【請求項2】
異なる粒径の粒状材が積み重なった堆積物の一対のステレオ画像を撮影し,前記両画像から堆積物表面全体に分散した複数の離散対応点を選出し且つ各離散対応点の二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルを作成し,前記両画像から各粒状材の輪郭を抽出し,前記両画像から各輪郭内の代表対応点及び内接径を検出し且つ前記三次元曲面モデルにより各代表対応点の二次元座標三次元座標に変換すると共に各代表対応点と撮影位置との被写体距離を算出し,算出した前記各代表対応点の被写体距離と各輪郭の内接径と前記ステレオ画像の焦点距離とから各粒状材の粒径を計測してなる堆積粒状材の粒径計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法において,前記堆積物中の各粒状材の粒計から粒径ヒストグラムを作成して粒度分布を求めてなる堆積粒状材の粒径計測方法。
【請求項4】
異なる粒径の粒状材が積み重なった堆積物の一対のステレオ画像を撮影する撮像機,前記両画像から堆積物表面全体に分散した複数の離散対応点を選出し且つ各離散対応点の二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルを作成する曲面作成手段,前記両画像から各粒状材の輪郭を抽出する輪郭抽出手段,前記両画像から各輪郭上の複数の対応点を検出し且つ前記三次元曲面モデルにより各対応点の二次元座標三次元座標に変換する座標算出手段,及び前記各輪郭上の複数の三次元座標を球状又は楕円状で近似することにより各粒状材の粒径を計測する粒径計測手段を備えてなる堆積粒状材の粒径計測システム。
【請求項5】
異なる粒径の粒状材が積み重なった堆積物の一対のステレオ画像を撮影する撮像機,前記両画像から堆積物表面全体に分散した複数の離散対応点を選出し且つ各離散対応点の二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルを作成する曲面作成手段,前記両画像から各粒状材の輪郭を抽出する輪郭抽出手段,前記両画像から各輪郭内の代表対応点及び内接径を検出し且つ前記三次元曲面モデルにより各代表対応点の二次元座標三次元座標に変換すると共に各代表対応点と撮影位置との被写体距離を算出する座標算出手段,及び前記各代表対応点の被写体距離と各輪郭の内接径と前記撮像機の焦点距離とから各粒状材の粒径を計測する粒径計測手段を備えてなる堆積粒状材の粒径計測システム。
【請求項6】
請求項4又は5のシステムにおいて,前記堆積物中の各粒状材の粒計から粒径ヒストグラムを作成して粒度分布を求める粒度分布算出手段を設けてなる堆積粒状材の粒径計測システム。
【請求項7】
異なる粒径の粒状材が積み重なった堆積物中の各粒状材の粒径を計測するためコンピュータを,前記堆積物の一対のステレオ画像を入力する入力手段,前記両画像から堆積物表面全体に分散した複数の離散対応点を選出し且つ各離散対応点の二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルを作成する曲面作成手段,前記両画像から各粒状材の輪郭を抽出する輪郭抽出手段,前記両画像から各輪郭上の複数の対応点を検出し且つ前記三次元曲面モデルにより各対応点の二次元座標三次元座標に変換する座標算出手段,及び前記各輪郭上の複数の三次元座標を球状又は楕円状で近似することにより各粒状材の粒径を計測する粒径計測手段として機能させてなる堆積粒状材の粒径計測プログラム。
【請求項8】
異なる粒径の粒状材が積み重なった堆積物中の各粒状材の粒径を計測するためコンピュータを,前記堆積物の一対のステレオ画像を入力する入力手段,前記両画像から堆積物表面全体に分散した複数の離散対応点を選出し且つ各離散対応点の二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルを作成する曲面作成手段,前記両画像から各粒状材の輪郭を抽出する輪郭抽出手段,前記両画像から各輪郭内の代表対応点及び内接径を検出し且つ前記三次元曲面モデルにより各代表対応点の二次元座標三次元座標に変換すると共に各代表対応点と撮影位置との被写体距離を算出する座標算出手段,及び前記各代表対応点の被写体距離と各輪郭の内接径と前記ステレオ画像の焦点距離とから各粒状材の粒径を計測する粒径計測手段を備えてなる堆積粒状材の粒径計測プログラム。
【請求項9】
請求項7又は8のプログラムにおいて,前記コンピュータを更に,前記堆積物中の各粒状材の粒計から粒径ヒストグラムを作成して粒度分布を求める粒度分布算出手段として機能させてなる堆積粒状材の粒径計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は堆積粒状材の粒径計測方法及びシステム並びにプログラムに関し,とくに異なる粒径の粒状材が積み重なった堆積物の画像から各粒状材の粒径を計測する方法及びシステム並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築分野では,例えば原石を破砕して砕石・砕砂を製造する場合や,地盤の地滑り性や崩落発生の危険性を予測する場合,コンクリート骨材の品質を管理する場合等において,異なる粒径が混在した粒状材(例えば砕石・砕砂,地盤材,骨材等)の粒度分布を計測することが求められる。比較的小さい粒状材については沈降法,レーザー回折散乱法等の多様な粒度分布の計測法が開発されているが,土木・建築分野で用いる比較的サイズの大きい粒状材(例えば砕石材,地盤材料等)の粒度計測には,異なる網目大きさで繰り返し篩い分けして粒度分布を直接的に計測する方法(篩い分け法)を用いることが多い。ただし,サイズの大きい粒状材は人力で簡単に動かせない場合もあり,従来の篩い分け法による粒度分布計測は多大な労力と時間を要する問題点がある。
【0003】
他方,比較的大きい粒状材の粒度分布を画像処理によって計測する方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。例えば図10(A)に示すような粒状材のデジタル画像Gをコンピュータに入力し,陰影等に基づいて画像Gを二値化処理し,必要に応じて図10(B)に示すようなラベリング・パターンマッチング等の手法を用いることにより,図10(C)に示すように個々の粒状材の輪郭(エッジ)を抽出する。次いで,各粒状材の輪郭から粒径dを検出し,粒径d別のヒストグラムを作成することにより粒度分布を求める。必要に応じてキャリブレーションに基づく補正(例えば岩石の種類に応じた補正)を施すことにより,画像処理による粒度分布(ヒストグラム)を上述した篩い分けによる粒度分布に近付けることも可能である。ただし,従来の画像処理による一般的な粒度分布の計測方法は,図10(A)のように計測対象の粒状材を平面状(二次元的)に撒き出し,各粒状材に対する撮影距離(被写体距離)を一定に揃えたうえで画像Gを撮影する必要がある。
【0004】
これに対し,例えば山岳トンネル等を掘削する発破工法(発破掘削)等において,図9に示すように発破によって切羽3の周辺に飛散した砕石2(発破ズリ)の粒度分布を求める要望がある(特許文献4参照)。例えば発破ズリ2をコンクリート骨材等として二次利用する場合に,粒度を二次的に調整する後処理(二次的粉砕)の手間をできるだけ削減し,利用目的に応じた粒度近くに粉砕されるように発破を制御するため,発破ズリ2の粒度分布の計測が必要とされる。また,後処理で発破ズリ2の粒度を二次的に処理する場合にも,その二次的な処理量算出の定量的な証拠とするため,発破ズリ2の粒度分布の管理が有用である。ただし,発破ズリ2は工事進捗の観点からできるだけ迅速に切羽から坑外へ運び出す(ズリ出しする)必要があり,図10(A)のように粒度分布を計測するために平面状に撒き出す時間的・空間的余裕はないので,図9のように相互に積み重なった堆積物1の状態のまま粒度分布を計測できることが望ましい。
【0005】
図9のような堆積物1の状態から粒状材2(発破ズリ)の粒度分布を求める従来方法として,同図に示すように,堆積物1上に複数(少なくとも2つ)の所定大きさのスケール5a,5bを奥行き方向に離して載置し,そのスケール5a,5bを含む画像から堆積物1中の各粒状材2の粒径dを求める手法が開発されている(非特許文献1参照)。奥行き方向に複数のスケール5a,5bを載置しておけば,スケール5a,5bの周辺に存在する粒状材2についてはスケール5a,5bと画素数(ピクセル)を比較して粒径dを求め,スケール5a,5bに挟まれた領域の粒状材2については両スケール5a,5bの画素数(ピクセル)を奥行き方向に内挿して粒径dを求めることができる。スケール5を用いて堆積物1中の各粒状材2の粒径dが求まれば,上述した図10の場合と同様に粒径d別のヒストグラムを作成して粒度分布を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−010726号公報
【特許文献2】特開2006−078234号公報
【特許文献3】特開2009−036533号公報
【特許文献4】特開2012−047613号公報
【特許文献5】特開平8−101035号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】”Split−Desktop rock fragmentation measurement software”,Split Engineering LLC,2012年5月,インターネット(URL:http://www.spliteng.com/split−desktop/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし,図9のようにスケール5を用いて堆積物1中の粒状材2の粒径を計測する方法は,スケール5の周辺やスケール5に挟まれた内側領域の粒状材2の粒径を内挿法によって計測することになるが,スケール設置による単眼手法では内挿入について直線的又は平面的な挿入しかできないため,計測結果の安定性がよくない問題点がある。また,スケールの外側領域(外挿部)において粒状材2の粒径の計測精度が低下する問題点がある。すなわち,図9の方法においてスケール5aの上側,スケール5bの下側,両スケール5a,5bの左右の外側領域の粒状材2は,何れかのスケールの画素数(ピクセル)から奥行き方向又は水平方向に外挿して粒径dを予測することになるが,堆積物1の表面は平面的ではなく三次元的な曲面となっているので,外挿の予測方法が難しく粒径dの誤差が大きくなりがちである。
【0009】
図9において,例えば堆積物1上に載置するスケール5の数を増やすことにより,上述した粒径の計測精度の低下する範囲を小さく抑えることが期待できる。しかし,例えば発破直後の切羽付近の岩盤は不安定となっている可能性があり,発破ズリの堆積物1も不安定な状態で積み重なっているので,堆積物1上に多数のスケール5を載置する作業には危険を伴う。図9のように不安定に積み重なった堆積物1の状態のまま各粒状材(発破ズリ)2の粒度分布を精度よく且つ安全に計測するためには,スケール5を用いずに堆積物1中の各粒状材2の粒径dを計測できる技術の開発が必要である。
【0010】
そこで本発明の目的は,堆積物中の各粒状材の粒径をスケールなしで計測できる方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図2の流れ図及び図7の実施例を参照するに,一側面において本発明は,異なる粒径の粒状材2が積み重なった堆積物1(図3参照)の一対のステレオ画像GR,GLを撮影し,両画像GR,GLから堆積物1の表面全体に分散した複数の離散対応点S(図6(B)参照)を選出し且つ各離散対応点Sの二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルF(図6(C)参照)を作成し,両画像GR,GLから各粒状材2の輪郭2pを抽出し(図2のステップS103,図6(A)及び図7(A)参照),両画像GR,GLから各輪郭2p上の複数の対応点Tを検出し且つ三次元曲面モデルFにより各対応点Tの二次元座標三次元座標に変換し図2のステップS104〜S105,図7(A)〜(B)参照),変換した各輪郭2p上の複数の三次元座標を球状又は楕円状で近似することにより各粒状材2の粒径dを計測してなる堆積粒状材の粒径計測方法を提供する図2のステップS106,図7(C)〜(D)参照)。
【0012】
また,図1のブロック図及び図7の実施例を参照するに,他の側面においては,異なる粒径の粒状材2が積み重なった堆積物1(図3参照)の一対のステレオ画像GR,GLを撮影する撮像機30,両画像GR,GLから堆積物1の表面全体に分散した複数の離散対応点S(図6(B)参照)を選出し且つ各離散対応点Sの二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルF(図6(C)参照)を作成する曲面作成手段21,両画像GR,GLから各粒状材2の輪郭2pを抽出する輪郭抽出手段22(図6(A)及び図7(A)参照),両画像GR,GLから各輪郭2p上の複数の対応点Tを検出し且つ三次元曲面モデルFにより各対応点Tの二次元座標三次元座標に変換する座標算出手段23(図7(A)〜(B)参照),及び各輪郭2p上の複数の三次元座標を球状又は楕円状で近似することにより各粒状材2の粒径dを計測する粒径計測手段26(図7(C)〜(D)参照)を備えてなる堆積粒状材の粒径計測システムを提供する
【0013】
また更に他の側面において本発明は,図4の流れ図及び図8の実施例に示すように,異なる粒径の粒状材2が積み重なった堆積物1(図3参照)の一対のステレオ画像GR,GLを撮影し,両画像GR,GLから堆積物1の表面全体に分散した複数の離散対応点S(図6(B)参照)を選出し且つ各離散対応点Sの二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルF(図6(C)参照)を作成し,両画像GR,GLから各粒状材2の輪郭2pを抽出し(図2のステップS103,図6(A)及び図7(A)参照),両画像GR,GLから各輪郭2p内の代表対応点C及び内接径Rpを検出し且つ三次元曲面モデルFにより各代表対応点Cの二次元座標三次元座標に変換すると共に各代表対応点Cと撮影位置との被写体距離Lを算出し(図4のステップS204〜S205,図8(A)〜(B)参照),算出した代表対応点Cの被写体距離Lと各輪郭2pの内接径Rpとステレオ画像GR,GLの焦点距離fとから各粒状材2の粒径dを計測してなる堆積粒状材の粒径計測方法を提供する(図4のステップS206,図8(C)参照)。
【0014】
更に他の側面において本発明は,図4の流れ図及び図8の実施例を参照するに,異なる粒径の粒状材2が積み重なった堆積物1(図3参照)の一対のステレオ画像GR,GLを撮影する撮像機30,両画像GR,GLから堆積物1の表面全体に分散した複数の離散対応点S(図6(B)参照)を選出し且つ各離散対応点Sの二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルF(図6(C)参照)を作成する曲面作成手段21,両画像GR,GLから各輪郭2p内の代表対応点C及び内接径Rpを検出し且つ三次元曲面モデルFにより各代表対応点Cの二次元座標を三次元座標に変換すると共に各代表対応点Cと撮影位置との被写体距離Lを算出する座標算出手段23(図8(A)〜(B)参照),及び各代表対応点Cの被写体距離Lと各輪郭2pの内接径Rpとステレオ画像GR,GLの焦点距離fとから各粒状材2の粒径dを計測する粒径計測手段26を備えてなる堆積粒状材の粒径計測システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による堆積粒状材の粒径計測方法及びシステムは,堆積物1の一対のステレオ画像GR,GLからその堆積物1中の各粒状材2の輪郭2pを抽出し,両画像GR,GLから堆積物1の表面全体に分散した複数の離散対応点Sを選出し且つ各離散対応点Sの二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルFを作成し,画像GR,GLから各輪郭2p上の複数の対応点T又は各輪郭2p内の代表対応点Cを検出し且つその対応点T又はCの二次元座標を三次元曲面モデルFにより三次元座標に変換すると共に各代表対応点Cと撮影位置との被写体距離Lを算出し,各輪郭2p上の複数の三次元座標又は各代表対応点Cの被写体距離Lから各粒状材2の粒径dを計測するので,次の有利な効果を奏する。
【0016】
(イ)ステレオ画像GR,GLを用いて堆積物1中の各粒状材2の輪郭上又は輪郭内の三次元座標を算出し,その三次元座標から各粒状材2の粒径dを計測するので,各粒状材2の粒径dと対比するためのスケールを必要としない。
(ロ)スケールと対比する従来方法のように堆積物1の奥行き方向又は水平方向にスケールを外挿して粒径dを予測する必要がなく,ステレオ画像GR,GLに写り込んだ全ての粒状材2の粒径dを精度よく計測できる。
(ハ)スケールを載置する手間が省けるので,堆積物1のスレテオ画像GR,GLを撮影家するだけで各粒状材2の粒径dを短時間で計測することができ,例えば時間的制約があって撮影時間が限られているような堆積物1中の粒状材2の粒径計測に適している。
(ニ)また,堆積物1中の粒状材2が不安定な状態で積み重なっている場合でも,スケールを載置する危険作業を必要としないので,各粒状材2の粒径dを安全に計測できる。
(ホ)堆積物1の表面全体の三次元曲面モデルFを作成しておけば,何れかの一方の画像GR又はGLから検出した二次元座標を曲面モデルF上へ割り付けることにより三次元座標に変換することができ,一方の画像に写っている粒状材が他方の画像に写らない隠蔽(オクルージョン)が生じた部分の三次元座標も求めることが可能となり,ひいては粒状材の粒径計測精度を高めることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下,添付図面を参照して本発明を実施するための形態及び実施例を説明する。
図1】本発明による粒径計測システムの一実施例のブロック図である。
図2】本発明による粒径計測方法の処理を示す流れ図の一例である。
図3】ステレオ画像GR,GLを撮影する撮像機の一例の説明図である。
図4】本発明による粒径計測方法の処理を示す流れ図の他の一例である。
図5】本発明により求めた粒状材の粒径の粒度分布を示すグラフの一例である。
図6】粒状材の堆積物表面の三次元曲面モデルFの一例の説明図である。
図7】各粒状材の輪郭上の対応点Tから粒径dを計測する原理の説明図である。
図8】各粒状材の輪郭内の代表対応点Cから粒径dを計測する原理の説明図である。
図9】スケールを用いて堆積物中の各粒状材の粒径を計測する従来技術の説明図である。
図10】粒状体の輪郭から画像処理により粒径を計測する他の従来技術の説明図である。
図11】従来のステレオ画像法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は,発破工法によるトンネル掘削工事で発生する発破ズリ(粒状材)2の粒径計測に適用した本発明の粒径計測システムの実施例を示す。上述したように発破工法では,発破により粉砕された岩石が切羽3の前方に堆積して発破ズリ2となるが(図9参照),発破直後の切羽付近にはガスや粉塵が充満しているので,通常は発破ズリ2の坑外への運び出し(ズリ出し)をガスや粉塵が消えるまで待ち合わせる。図1のシステムによれば,この発破直後からズリ出しまでの待ち合わせ時間を利用して,堆積物1中の各発破ズリ2の粒径dを短時間のうちに計測することが可能であり,工事の進捗を妨害することなく発破ズリの粒度分布を求めることができる。ただし,本発明は発破ズリ2への適用に限定されるものではなく,堆積物1となって積み重なった粒状材2の粒径を計測する場合に広く適用可能であり,とくに堆積物1上にスケールを載置することが安全上その他の理由で難しい場合,堆積物1の撮影に時間的制約があって時間が遅れると撮影できなくなってしまう場合等に有効である。
【0019】
図示例の粒径計測システムは,粒状材(発破ズリ)2の堆積物1のステレオ画像GR,GLを撮影する撮像機30と,そのステレオ画像GR,GLを入力して粒状材2の粒径を計測するコンピュータ10とを有する。図示例の撮像機30は,例えば図3に示すように一対のデジタルカメラ31R,31L(以下,ステレオカメラということがある)を所定間隔・所定向きで固定し,三脚33等により堆積物1と対向させて支持したものである。望ましくは,両カメラ31R,31Lを焦点距離その他の内部構造が一定のものとし,後述するステレオ画像法において内部構造の相違による未知数の増加を防ぐ。また,撮像機30を赤外線カメラ又は近赤外線カメラによって構成することも有効である。赤外線又は近赤外線を用いたステレオカメラにより,例えばガスや粉塵が充満している切羽周辺等の環境下でも,各粒状材2の輪郭が識別できるステレオ画像GR,GLを撮影できる。
【0020】
図示例のコンピュータ10は,ステレオ画像GR,GLからステレオ画像法を利用して粒状材2の輪郭上又は輪郭内の三次元座標を算出する。ステレオ画像法は,図11に示すように,地上座標系(例えば図3の撮影位置Oを原点とする座標系)の対象点Pと,撮像機30のカメラ中心Ga,Gbと,画像GR,GL中の像点Pa,Pbとが同一直線上に存在する幾何学的原理に基づくものである。この幾何学的原理は,図11のように対象点Pの三次元座標を(X,Y,Z)とし,画像GR,GL上の像点Pa,Pbの二次元座標を(Xa,Ya),(Xb,Yb)とすると,式(1)及び式(2)のような対象点Pと像点Pa,Pbとの関係式として表わすことができる(特許文献5参照)。ここで(X,Y,Z,1),(Xa,Ya,1),及び(Xb,Yb,1)は,それぞれ対象点P,像点Pa,及び像点Pbの同次座標系表現による座標である。
【0021】
【0022】
ステレオ画像GR,GLから対応する像点Pa,Pbの二次元座標(Xa,Ya),(Xb,Yb)を求めて式(1)及び式(2)に代入し,式(3)及び式(4)で表わされるHa,Hbを用いて式(1)及び式(2)を展開すると,式(5)及び式(6)で定義される行列Q,Eを用いて式(7)のような関係式(E=QP)が得られる。また,逆行列Q−1の存在を条件として,(撮影位置Oを原点とする座標系における)対象点Pの三次元座標(X,Y,Z)を式(8)により算出することができる。すなわち,図11に示すスレテオ画像法によれば,式(8)の画像処理パラメタ(Q−1E)を用いることにより,両画像GR,GL中の対応点Pa,Pbの二次元座標(Xa,Ya),(Xb,Yb)から,その対応点Pの三次元座標(X,Y,Z)を算出することができる。
【0023】
式(8)の画像処理パラメタ(Q−1E)は,撮像機30のカメラ31R,31Lの相対的向き,焦点距離その他の内部構造に応じて変化するが,例えば焦点距離が一定のカメラ31R,31Lを用い,図3のように一対のカメラ31R,31Lの向きを固定することにより,計測前に撮像機30の画像処理パラメタ(Q−1E)をキャリブレーション(同定)してコンピュータ10に記憶しておくことができる(図1の画像処理パラメタ41参照)。なお,撮像機30に3台以上のカメラ31を含めてステレオ画像法を実現することも可能であり,その場合はカメラ台数に応じて行列Q,Eの行数が増える。
【0024】
図示例のコンピュータ10は,上述したステレオ画像法の画像処理パラメタ41等を記憶する記憶手段11と,キーボード等の入力装置13と,ディスプレイ等の出力装置15とを有する。また,撮像機30や入力装置13から堆積物1のステレオ画像GR,GLその他のデータを入力する入力手段12と,その両画像GR,GLから堆積物1中の各粒状材2の輪郭(エッジ)2pを抽出する輪郭抽出手段22と,各粒状材2の輪郭上又は輪郭内の三次元座標をステレオ画像法により算出する座標算出手段23と,各粒状材2の三次元座標から粒径dを計測する粒径計測手段26と,計測した各粒状材2の粒径dその他を出力装置15へ出力する出力手段14とを有している。輪郭抽出手段22,座標算出手段23,粒径計測手段26の一例は内蔵プログラムであるが,ハードウェアとすることも可能である。図示例のコンピュータ10は,計測した各粒状材2の粒径dから粒径ヒストグラムを作成して粒度分布を求める粒度分布算出手段27を有しているが,粒度分布の計測は本発明に必須のものではない。また,両画像GR,GLから堆積物1の表面の三次元曲面モデルFを作成する曲面作成手段21を有しているが,三次元曲面モデルFの作成も本発明に必須のものではない。
【0025】
図2は,図1のシステムを用いて堆積物1中の各粒状材2の粒径dを計測する本発明の計測方法の流れ図の一例を示す。以下,図2の流れ図を参照して図1のシステムを説明する。図2のステップS101は,上述した撮像機30により堆積物1のステレオ画像GR,GLを撮影してコンピュータ10に入力する処理を表わす。ステップS102については後述する。ステップS103において,ステレオ画像GR,GLをコンピュータ10の輪郭抽出手段22へ入力し,上述した図10の場合と同様に各画像GR,GLを陰影等に基づいて二値化処理し,必要に応じてラプラシアン等のエッジ抽出手法,ラベリング等の領域分割手法を用いることにより,図6(A)に示すように各画像GR,GL中の各粒状材2の輪郭2pを抽出した二値化輪郭画像を作成する。
【0026】
図2のステップS104において,輪郭抽出手段22で抽出した各粒状材2の輪郭2p(図6(A)の輪郭画像)を,ステレオ画像GR,GLと共に座標算出手段23へ入力し,図7(A)に示すように,座標算出手段23の輪郭座標算出手段24において,両ステレオ画像GR,GLから各輪郭2p上の複数の対応点Tを検出する。例えば,何れか一方の画像GR(又はGL)から特定の画素位置の像点Tを選択し,その像点Tの周囲の輝度パターン(例えば画素数n×nの輝度パターン)を他方の画像GL(又はGR)上で移動させながら輝度相関(例えば画素数n×nの輝度差)が最も小さい点をピンポイントで検索することにより,他方の画像GL(又はGR)に対応する像点Tを検出する(輝度相関法)。また,一方の画像GR上の画素位置に対応する他方の画像GL上の画素位置は,画像GR上の画素位置から作成される画像GL上のエピポーラ線上に存在するというエピポーラ幾何の原理を利用して,画像GL上のエピポーラ線上(近傍)を探索範囲として輝度相関をとることにより,両画像GR,GLの対応点Tの検出精度を高めることができる。更に,ステレオ画像法のパラメータ(例えば最大/最小距離)を利用して探索範囲を絞り込むことも可能である。この方法により,図7(B)に示すように,両画像GR,GL中に存在する各輪郭2p上にそれぞれ複数(好ましくは3以上)の対応点Tを精度よく検出することができる。
【0027】
図2のステップS105において,ステップS104において両画像GR,GLから検出した各対応点Tの二次元座標をスレテオ画像法の画像処理パラメタ41(例えば式(8)のQ−1E)へ代入することにより,その対応点Tの(撮影位置Oを原点とする座標系における)三次元座標を算出する。次いでステップS106において,座標算出手段23の輪郭座標算出手段24において算出した両画像GR,GL中の各輪郭2p上の複数の三次元座標を粒径計測手段26へ入力し,粒径計測手段26において各輪郭2p上の複数の三次元座標からその輪郭2pに対応する粒状材2の粒径dを計測する。例えば図7(C)に示すように粒状材2を球体で近似する場合は,その球状表面(輪郭)上の3以上の三次元座標から粒径dを求めることができる。また図7(d)に示すように粒状材2を楕円体で近似する場合は,その曲面状表面(輪郭)上の4以上の三次元座標から粒径d(又は短径d1・長径d2)を求めることができる。
【0028】
図2のステップS103〜S106により,両画像GR,GLに共通に写り込んだ粒状材2の粒径dを精度よく計測できるが,何れか一方の画像GR(又はGL)に写っている粒状材2が他方の画像GL(又はGR)に写らない隠蔽(オクルージョン)が生じた部分については粒径dを求めることができない。また,ステップS103〜S106の処理は計算量が非常の多いため,両画像GR,GL中に多数の粒状材2が写り込んでいる場合に,各粒状材2の粒径dを計測する演算処理に時間がかかる。隠蔽(オクルージョン)が生じた部分の粒径dをも考慮する必要がある場合や,各粒状材2の粒径dを迅速に確認する必要がある場合は,以下に説明する堆積物1の表面の三次元曲面モデルFを利用することにより,ステップS103〜S106において一方の画像GR又はGLから粒状材2の表面(輪郭)の三次元座標を算出して粒径dを計測することも可能である。
【0029】
図2のステップS102は,コンピュータ10の曲面作成手段21にステレオ画像GR,GLを入力し,図6(B)に示すように堆積物1の表面全体に分散した複数の離散対応点Sの二次元座標を選出し,ステレオ画像法によって各離散対応点Sの三次元座標を求めることにより,図6(C)に示すような堆積物表面の三次元曲面モデルFを作成する処理を示す。複数の離散対応点Sは例えば一方の画像GR(又はGL)を出力装置15に表示しながら入力装置13経由で適宜にn点を選び出し,上述した輝度相関法によって他方の画像GL(又はGR)から画像GR中の離散対応点Sと対応する点Sを検出し,両画像GR,GL中の対応点Sの二次元座標から画像処理パラメタ41により各離散対応点Sの三次元座標を算出することができる。算出した各離散対応点Sの三次元座標を相互連結する(例えば三次元座標から二次曲面の方程式を求める)ことにより,図6(C)のように堆積物表面に沿った三次元形状を表わした曲面モデルFを作成する。例えば図6(D)のようなメッシュ状の離散対応点パターン40をコンピュータ1の記憶手段11に記録しておき,その離散対応点パターン40を一方の画像GR(又はGL)と重畳することにより像点Sを選出する方法も考えられる。
【0030】
ステップS102において堆積物表面の三次元曲面モデルFを作成しておけば,ステップS104〜S105において,上述した両画像GR,GLの輪郭2p上の対応点Tの三次元座標をステレオ画像法によって求める処理に代えて又は加えて,図6(E)に示すように,座標算出手段23の輪郭座標算出手段24によって,何れか一方の画像GR(又はGL)から輪郭2p上の像点Tを選択し,その像点Tの二次元座標を三次元曲面モデルF上へ割り付けることにより三次元座標に変換することができる。例えば,図6(E)における輪郭2p上の像点T1は,離散対応点S1,S2,S5,S6で囲まれた区画内に存在するから,各離散対応点S1,S2,S5,S6の三次元座標を内挿して像点T1を三次元曲面モデルF上へ割り付けることにより,像点T1の三次元座標が求まる。同様に,図6(E)における輪郭2p上の像点T2は,離散対応点S3,S4,S7,S8で囲まれた区画内に存在しているから,それらの三次元座標を内挿することにより像点T1を三次元曲面モデルF上へ割り付けて三次元座標を求めることができる。輪郭2p上の像点T1の三次元座標が求まれば,上述したステップS106において,粒径計測手段26により輪郭2pに対応する粒状材2の粒径dを計測することができる。
【0031】
図2のステップS107は,必要に応じて粒径計測手段26で計測した各粒状材2の粒径dを粒度分布算出手段27へ入力し,各粒状材2の粒径ヒストグラムを作成して粒状材2の粒度分布を求める処理を示す。例えば図5に示すように,発破による堆積物1中の各発破ズリ2の粒径d毎に,その粒径d以下の発破ズリ2の累積数を計算して粒径ヒストグラム(累積ヒストグラム)を作成する。図5は,同じ発破による堆積物1中の各発破ズリ2から従来の篩い分け法により求めた粒度分布(粒径加積曲線)を併せて示しており,図2の流れ図によって従来の篩い分け法とほぼ同程度の精度の粒度分布が求まることを表わしている。更に必要な場合は,図2の流れ図に沿って求めた粒度分布(粒径ヒストグラム)に対して適当な補正を施すことにより,篩い分けによる粒度分布(粒径加積曲線)に更に近付けることも可能である。
【0032】
図2のステップS101〜S107により粒状材(発破ズリ)2の粒径d及び粒度分布を求めたのち,ステップS108において粒径dの計測を終了するか否かを判断する。計測を継続する場合はステップS101に戻り,例えば次回の発破により生じた発破ズリ2の堆積物1のステレオ画像GR,GLを入力し,ステップS102〜107を繰り返すことにより次回の発破ズリ2の粒径d及び粒度分布を求める。図2の流れ図によれば,ステレオ画像GR,GLから堆積物1中の各粒状材2の粒径dを計測できるので,各粒状材2の粒径dと対比するためのスケールを必要としない。従って,従来のスケールと対比する計測方法のようにスケールを外挿して粒状材2の粒径dを予測する必要がなく,堆積物1中の全て粒状材2の粒径dを精度よく計測できる。また,堆積物1中の粒状材2が不安定な状態で積み重なっている場合でも,スケールを載置する危険作業を必要としないので,各粒状材2の粒径dを安全に計測できる。
【0033】
こうして本発明の目的である「堆積物中の各粒状材の粒径をスケールなしで計測できる方法及びシステム」を提供することができる。
【実施例1】
【0034】
図4は,図1のシステムを用いて堆積物1中の各粒状材2の粒径dを計測する本発明の他の計測方法の流れ図を示す。図4のステップS201〜S203は,上述した図2の流れ図のステップS101〜S103と同様の処理である。ステップS204において,座標算出手段23により,図7(A)のように両画像GR,GLから各輪郭2p上の対応点Tを検出する処理(輪郭座標算出手段24)に代えて,図8(A)のように両画像GR,GLから各輪郭2p内の代表対応点C及び内接径Rpを検出する処理(代表座標算出手段25)を行う。またステップS205において,各代表対応点Cの二次元座標をスレテオ画像法の画像処理パラメタ41へ代入することにより,その代表対応点Cの(撮影位置Oを原点とする座標系における)三次元座標を算出すると共に,その代表対応点Cと撮影位置Oとの間の被写体距離(又は撮影距離)Lを算出する。
【0035】
例えば図4のステップS204〜S205において,図8(B)に示すように,何れか一方の画像GR(又はGL)から特定の輪郭2pから抽出岩石の重心位置(岩石を構成する領域の重心位置)及び内接円の直径を代表像点C及び内接径Rpとして選択し,上述した窓相関法によって他方の画像GL(又はGR)から中心像点Cと対応する像点Cを検出し,両画像GR,GLの像点Cの二次元座標と画像処理パラメタ41とから代表対応点Cの三次元座標及び被写体距離Lを算出することができる。抽出岩石の代表像点Cを内接円の中心ではなく全体のバランス中心である重心位置とすることにより,例えばひょうたん型や細長い形状など異形な岩石であっても,岩石の粒径を精度よく求めることが期待できる。ただし,岩石の異形性を問題としない場合は,抽出岩石の輪郭2pから内接円の中心を代表像点Cとして選択することも可能である。
【0036】
次いで,図4のステップS206において,座標算出手段23の代表座標算出手段25において算出した各輪郭2p内の代表点Cの被写体距離Lを粒径計測手段26へ入力し,粒径計測手段26において図8(C)に示すように,各輪郭2p内の代表点Cの被写体距離Lと各輪郭2pの内接径Rpと撮像機30の焦点距離fとから各粒状材2の粒径d(=Rp×L/F)を算出する。撮像機30の焦点距離fは,上述した画像処理パラメタ41と共に予め同定してコンピュータ10の記憶手段11に記憶しておくことができる。
【0037】
図4のステップS203〜S206においても,両画像GR,GLに共通に写り込んだ粒状材2の粒径dを精度よく計測できるが,隠蔽(オクルージョン)が生じた部分の粒径dを求めることができない。そのためステップS202において,上述した図4のステップS102と同様に堆積物表面の三次元曲面モデルFを作成しておき,ステップS204〜S205において上述した輪郭2p内の代表対応点Cの三次元座標をステレオ画像法によって求める処理に代えて又は加えて,図6(F)に示すように,座標算出手段23の代表座標算出手段25によって,何れか一方の画像GR(又はGL)から輪郭2p内の代表像点Cを選択し,その像点Cの二次元座標を三次元曲面モデルF上へ割り付けることにより三次元座標に変換することができる。例えば,図6(F)における輪郭2p内の代表像点Cは,離散対応点S2,S3,S6,S7で囲まれた区画内に存在するから,その離散対応点S2,S3,S6,S7の三次元座標を内挿して像点Cを三次元曲面モデルF上へ割り付けることにより,像点Cの三次元座標が求まる。輪郭2p内の代表像点Cの三次元座標が求まれば,上述したように代表対応点Cと撮影位置Oとの間の被写体距離(又は撮影距離)Lを算出し,ステップS206において粒径計測手段26により各粒状材2の粒径d(=Rp×L/F)を計測することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…堆積物 2…粒状材
2p…輪郭 3…切羽
5a,5b…スケール
10…コンピュータ 11…記憶手段
12…入力手段 13…入力装置
14…出力手段 15…出力装置
21…曲面作成手段 22…輪郭抽出手段
23…座標算出手段 24…輪郭座標算出手段
25…代表座標算出手段 26…粒径計測手段
27…粒度分布算出手段
30…撮像機 31R,31L…カメラ
33…三脚
40…離散対応点パターン 41…画像処理パラメタ
C…代表対応点 d…粒径
F…三次元曲面モデル G…カメラ中心
f…焦点距離 L…被写体距離
O…撮影位置 P…対象点(対応点)
Rp…輪郭2pの内接径 S…離散対応点
T…輪郭上対応点
G…デジタル画像 GR,GL…ステレオ画像
図1
図2
図4
図6
図7
図8
図11
図3
図5
図9
図10