【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度〜平成24年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池システム要素技術開発 実用性向上のための技術開発 超効率運転のための高圧運転技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記停止動作決定手段は、不活性ガスの循環が不可能な前記運転状態の場合、前記停止動作として、前記燃料電池への燃料ガスの供給の停止と共に燃料ガスの封じ込め、及び前記内燃機関の停止を行う請求項1記載の複合発電システムの運転制御装置。
前記停止動作決定手段は、不活性ガスの供給が可能な前記運転状態の場合、前記停止動作として、前記燃料電池への燃料ガスの供給を停止し、前記内燃機関を停止した後に前記燃料電池を減圧し、不活性ガスによるパージを行う請求項1又は請求項2記載の複合発電システムの運転制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また従来、SOFCの異常発生による停止動作は、異常内容に応じて処理ステップが一意に決定されている。しかしながら、複合発電システムでは、各機器の状態に応じた操作判断が複雑であり、異常時に適切な停止動作の制御方法の確立が望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃料電池の停止を必要とする異常が発生した場合に最適な停止動作を行える、複合発電システムの運転制御装置、複合発電システム、及び複合発電システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の複合発電システムの運転制御装置、複合発電システム、及び複合発電システムの運転方法は以下の手段を採用する。
【0008】
本発明の第一態様に係る複合発電システムの運転制御装置は、燃料電池及び前記燃料電池から排出される燃料ガスを用いて運転される内燃機関を組み合わせた発電を行う複合発電システムの運転制御装置であって、前記複合発電システムの異常を検知する異常検知手段と、前記異常検知手段が前記燃料電池の停止を必要とする異常を検知した場合、異常の状態及び前記複合発電システムの運転状態の組み合わせに応じた停止動作を決定する停止動作決定手段と、を備える。
【0009】
本構成に係る運転制御装置は、燃料電池及び前記燃料電池から排出される燃料ガスを用いて運転される内燃機関を組み合わせた発電を行う複合発電システムの運転の停止を制御する。
本構成は、複合発電システムの異常を異常検知手段によって検知する。そして、燃料電池の停止を必要とする異常が検知された場合、異常の状態及び複合発電システムの運転状態の組み合わせに応じた停止動作が停止動作決定手段によって決定される。
すなわち、本構成は、複合発電システムに異常が検知された場合、単に異常に応じた停止動作をするのではなく、異常が検知された際の複合発電システムの運転状態に応じた停止動作を行うので、燃料電池の停止を必要とする異常が発生した場合に最適な停止動作を行うことができる。
【0010】
上記第一態様では、前記停止動作決定手段が、前記運転状態として、
前記運転状態として、前記燃料電池から排出される不活性ガスを前記燃料電池へ戻す循環の可否に応じた停止動作を行うことが好ましい。
【0011】
本構成によれば、不活性ガスの供給が可能な運転状態であれば、不活性ガスを循環させることで複合発電システムを迅速に冷却可能なので、より最適な停止動作を行うことができる。
【0012】
上記第一態様では、前記停止動作決定手段が、不活性ガスの循環が不可能な前記運転状態の場合、前記停止動作として、前記燃料電池への燃料ガスの供給の停止と共に燃料ガスの封じ込め、及び前記内燃機関の停止を行うことが好ましい。
【0013】
本構成によれば、不活性ガスの循環が不可能な運転状態の場合、より最適な停止動作を行うことができる。
【0014】
上記第一態様では、前記停止動作決定手段が、不活性ガスの供給が可能な前記運転状態の場合、前記停止動作として、前記燃料電池への燃料ガスの供給を停止し、前記内燃機関を停止した後に前記燃料電池を減圧し、不活性ガスによるパージを行うことが好ましい。
【0015】
本構成によれば、不活性ガスの供給が可能な運転状態の場合、より最適な停止動作を行うことができる。
【0016】
上記第一態様では、前記運転状態が、前記燃料電池から排出されるガスを前記燃料電池へ循環させる再循環ブロワの運転の可否、及び不活性ガスの供給の可否であることが好ましい。
【0017】
本構成によれば、不活性ガスを用いた燃料電池の冷却の可否を簡易に判定できる。
【0018】
上記第一態様では、前記停止動作決定手段が、前記再循環ブロワの運転が可能な場合、前記停止動作において前記再循環ブロワを運転することで不活性ガスを循環させることが好ましい。
【0019】
本構成によれば、燃料電池の冷却が迅速に行われる。
【0020】
本発明の第二態様に係る複合発電システムは、燃料電池と、前記燃料電池から排出される燃料ガスを用いて運転される内燃機関と、上記記載の運転制御装置と、を備える。
【0021】
本発明の第三態様に係る複合発電システムの運転方法は、燃料電池及び前記燃料電池から排出される燃料ガスを用いて運転される内燃機関を組み合わせた発電を行う複合発電システムの運転方法であって、前記複合発電システムの異常を検知する異常検知工程と前記燃料電池の停止を必要とする異常を検知した場合、異常の状態及び前記複合発電システムの運転状態の組み合わせに応じた停止動作を決定する停止動作決定工程と、を含
み、前記停止動作決定工程は、前記運転状態として、前記燃料電池から排出される不活性ガスを前記燃料電池へ戻す循環の可否に応じた停止動作を行う。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃料電池の停止を必要とする異常が発生した場合に最適な停止動作を行える、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る複合発電システムの運転制御装置、複合発電システム、及び複合発電システムの運転方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る複合発電システム10の構成図である。
複合発電システム10は、燃料電池及び燃料電池から排出される燃料ガスを用いて運転される内燃機関を組み合わせて発電を行う。なお、複合発電システム10は、常時監視が行われている。
【0026】
燃料電池であるSOFC12は、空気極に酸化性ガス(本実施形態では空気)が供給されるとともに燃料極に燃料ガスが供給されることにより発電を行う。SOFC12は、圧力容器14に覆われている。また、SOFC12は、圧力容器14内の圧力を計測する圧力センサ15A及び圧力容器14内の温度を計測する温度センサ15Bが備えられる。
【0027】
内燃機関は、一例として小型のガスタービン(以下、マイクロガスタービン、「MGT」という。)16である。
MGT16は、圧縮した空気をSOFC12の空気極に供給するコンプレッサ18、空気極から排出された排出空気及び少なくとも燃料極から排出された燃料ガスが供給され、高温の燃焼ガスを生成する燃焼器20、燃焼器20から排出された燃焼ガスにより回転駆動するタービン22が設けられる。
【0028】
SOFC12には、燃料供給ライン24を介して、還元性ガス(本実施形態では水素ガス)、水蒸気、不活性ガス(本実施形態では窒素ガス)、及び燃料ガス(本実施形態では都市ガス)が供給可能とされる。また、各ガスに対応してガスの流量を調整する流量調整弁(以下、「流調弁」という。)28A〜28Dが設けられている。
燃料ガスとしては、例えば、液化天然ガス(LNG)、都市ガス(CNG)、水素(H
2)および一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)などの炭化水素ガス系ガス、石炭など炭素質原料のガス化設備により製造したガスが用いることが可能である。なお、燃料ガスは、燃料予熱器26で余熱された後に、SOFC12へ供給される。
【0029】
SOFC12から排出された燃料ガスは、冷却器30で冷却され、燃料再循環ライン32によって燃焼器20へ供給されると共にSOFC12へ戻される。燃料再循環ライン32には、SOFC12内の差圧を制御する制御弁34、及びSOFC12から排出されるガスをSOFC12へ循環させる再循環ブロワ36が備えられる。
【0030】
また、燃料再循環ライン32におけるSOFC12へ燃料を戻すラインには流調弁38が備えられ、燃焼器20へ燃料を供給するラインには遮断弁40が備えられる。
燃料再循環ライン32は、分岐され、排出ライン42によって燃料ガスをパージ可能とされている。排出ライン42には、減圧弁44が設けられている。すなわち、複合発電システム10内の燃料ガスは、減圧弁44が開かれるとパージされる。
【0031】
また、SOFC12は、コンプレッサ18で圧縮され、空気予熱器(再生熱交換器)48で予熱された空気が空気供給ライン46を介して供給される。空気供給ライン46には、コンプレッサ18からの空気の流量を調整する流調弁50が備えられる。空気供給ライン46は、分岐されたバイパスライン54によって一部の空気をSOFC12へ供給せずに、排出空気供給ライン56を介して燃焼器20へ供給可能とされている。バイパスライン54にはバイパスライン54を通過する空気の流量を調整する流調弁58が備えられている。
SOFC12から排出された空気は、排出空気供給ライン56によって燃焼器20へ供給される。排出空気供給ライン56には、循環させる空気の流量を制御する制御弁60が備えられる。
排出空気供給ライン56は、分岐され、排出ライン62によって空気をパージ可能とされている。排出ライン62には、減圧弁64が設けられている。すなわち、複合発電システム10内の空気は、減圧弁64が開かれるとベントされる。
【0032】
図2は、本実施形態に係る運転制御装置80の電気的構成を示すブロック図である。運転制御装置80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
【0033】
運転制御装置80は、異常検知部82、停止動作決定部84、及び停止指示部86を備える。
【0034】
異常検知部82は、複合発電システム10の異常を検知する。具体的には、異常検知部82は、複合発電システム10の複数の計測点の計測結果(以下、「常時監視データ」という。)が入力され、常時監視データに基づいて異常を検知する。なお、常時監視データは、例えば、各箇所の圧力、SOFC12の燃料極と空気極との差圧、各箇所の温度、各箇所のガス濃度、各箇所のドレンポットレベル、各箇所のガス流量、及びSOFC12の発電電流等である。
【0035】
停止動作決定部84は、異常検知部82がSOFC12の停止を必要とする異常を検知した場合、異常の状態及び複合発電システム10の運転状態の組み合わせに応じた停止動作を決定する。
【0036】
具体的には、停止動作パターン記憶部88が、記憶されている異常の状態及び運転状態の組み合わせに応じた停止動作パターンを記憶している。そして、停止動作決定部84は、異常の状態及び複合発電システム10の運転状態の組み合わせに応じた停止動作を停止動作パターン記憶部88から読み取る。なお、停止動作パターンは、詳細を後述するトリップ状態B、トリップ状態A、トリップ状態A’に基づいて複数パターンに設定されている。トリップ状態とは、複合発電システム10が異常検知することで発電を停止する状態のことを示している。
【0037】
停止指示部86は、停止動作決定部84で決定された停止動作を行うための制御指示を各種機器へ出力する。
【0038】
図3は、複合発電システム10を異常停止させる場合の判定処理(以下、「異常停止判定処理」という。)の流れを示すフローチャートである。異常停止判定処理は、運転制御装置80によって複合発電システム10の運転開始と共に行われる。
【0039】
まず、ステップ100では、常時監視データの入力を受け付ける。
【0040】
次のステップ102では、入力された常時監視データに基づいて複合発電システム10の状態(以下、「システム状態」という。)を確認する。具体的には、常時監視データにより示される計測点毎の値と、計測点毎に予め定められている許容範囲とが比較される。
【0041】
次のステップ104では、許容範囲外となった計測点があるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ106へ移行し、否定判定の場合はステップ100へ戻り、常時監視データの入力及びシステム状態の確認が定期的に繰り返される。
【0042】
ステップ106では、許容範囲外となった計測点の値が、SOFC12の停止を必要とする重異常であるか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ110へ移行し、否定判定の場合はステップ108へ移行する。なお、ステップ108へ移行する場合は、異常が複合発電システム10の停止を必要としない軽異常の場合である。なお、重異常の場合は、複合発電システム10の停止を必要とする。
【0043】
ステップ108では、軽異常であるので警報を発令し、ステップ100へ戻るが、その過程で、運転員等により軽異常内容の確認と軽異常の解消が行われる。
【0044】
ステップ110では、運転監視データの入力を受け付ける。
運転監視データは、複合発電システム10の運転状態を監視するためのデータであり、本実施形態では、再循環ブロワ36の運転可否を示す再循環ブロワ運転データや窒素ベントを行うために窒素ガスの連続供給(以下、「窒素連給」という。)の可否を示す窒素連給データである。
【0045】
ステップ112では、運転監視データに基づいて運転状態を確認する。本実施形態に係る運転状態は、再循環ブロワ36の運転の可否及び不活性ガスである窒素の供給の可否である。これにより、運転制御装置80は、窒素ガスを用いたSOFC12の冷却の可否を簡易に判定できる。
【0046】
ステップ114では、運転監視データに関連する制御機器の動作が正常か否かを判定し、肯定判定の場合はステップ116へ移行する。否定判定の場合はステップ110へ移行するが、その過程で制御機器が正常に動作するように対応し、再び運転監視データ基づいて運転状態を確認する。
【0047】
ステップ116では、システム状態及び運転状態に基づいて、SOFC12に対する停止動作を行い、異常停止判定処理を終了する。
このように本実施形態に係る運転制御装置80は、複合発電システム10に異常を検知した場合、単に異常に応じた停止動作をするのではなく、異常を検知した際の複合発電システム10の運転状態に応じた複合発電システム10の停止動作を行う。従って、運転制御装置80は、SOFC12の停止を必要とする異常が発生した場合に最適な複合発電システム10の停止動作を行うことができる。
【0048】
なお、ステップ100からステップ114は異常検知部82の機能に相当し、ステップ116は停止動作決定部84及び停止指示部86の機能に相当する。
【0049】
また、上述した異常停止判定処理では、許容範囲外となった計測点があった場合に、異常の発生を検知する形態について説明したが、これに限らず、警報の発令等によって、異常の発生を検知する形態としてもよい。
【0050】
次に、システム状態の重異常と運転状態との組み合わせに応じた停止動作について表1から表4の例を参照して説明する。
表1から表4は、停止動作をトリップ状態に基づいて、「A」,「A’」,「B」と表示する。なお、表1から表4に示されるシステム状態の重異常は、一例である。また、表1から表4における再循環流路の運転の可否は、再循環ブロワ36の運転の可否である。
【0051】
トリップ状態Bは、複合発電システム10の運転が困難だが、再循環ブロワ36が動作可能な場合(運転継続困難状態)に、SOFC12の燃料極側に対して行われる通常停止である。具体的には、トリップ状態Bは、複合発電システム10の補機の停止、SOFC12へのガスの供給の停止と共にガスの封じ込めを一時的に行った後に、MGT16の停止を行い、SOFC12の圧力容器14内を含む複合発電システム10内を減圧する。そして、トリップ状態Bは、再循環ブロワ36を用いて燃料ガスを窒素ガスで通気(パージ)し、温度が十分低下した後にパージに用いた窒素ガスの供給を停止する。
【0052】
トリップ状態Aは、複合発電システム10の運転ができない場合(運転不可状態)に、SOFC12の燃料極側に対して行われる至急停止である。具体的には、トリップ状態Aは、複合発電システム10の補機の停止、SOFC12へのガスの供給を停止と共にガスの封じ込めを一時的に行った後に、MGT16の停止を行い、SOFC12の圧力容器14内を含む複合発電システム10内を減圧する。そして、トリップ状態Aは、再循環ブロワ36を用いずに燃料ガスを窒素ガスで通気(パージ)し、温度が十分に低下した後にパージに用いた窒素ガスの供給を停止する。
このように、トリップ状態Bとトリップ状態Aとは、再循環ブロワ36の運転可否の差異によって選択される。トリップ状態Bでは、再循環ブロワ36を用いることで、トリップ状態Aに比べて少ない窒素ガスでパージが可能となる。
【0053】
トリップ状態A’は、運転不可状態であり、再循環ブロワ36の運転と共に窒素連給が不可能な場合、すなわち窒素ガスによるパージができず、至急停止よりも緊急性が高い場合に、SOFC12の燃料極側に対して行われる緊急停止である。具体的には、トリップ状態A’は、複合発電システム10の補機の停止、SOFC12へのガスの供給の停止と共にガスの封じ込めを行った後に、MGT16の停止を行い、ガスを封じ込めたままとする。
【0054】
このように、トリップ状態B、トリップ状態A、及びトリップ状態A’の選択は、運転状態として、不活性ガスである窒素ガスの循環の可否、すなわち、再循環ブロワ36の運転可否及び窒素連給の可否に基づく。窒素ガスの循環が可能な運転状態であれば、窒素ガスを循環させることで複合発電システム10を冷却可能なためである。特に、トリップ状態Bでは、再循環ブロワ36を用いて窒素ガスを循環させるため、SOFC12の燃料極側の冷却が迅速に行われることとなる。
【0055】
表1は、異常の原因がMGT16の異常の場合であり、検知された異常を、MGT制御盤の異常、燃焼器20入口の空気温度の異常、及びコンプレッサ18の元圧の異常に細分化した例である。
MGT制御盤の異常及び燃焼器20入口の空気温度の異常は、その他の装置に重大な影響を及ぼすことから、再循環ブロワ36の運転が可能かつ窒素連給が可能であってもトリップ状態Aによって停止動作が行われる。
また、表1〜表4において「−」と表示されている場合は、運転状態として再循環流路の運転可否や窒素連給可否という運転状態以外の、SOFC12に直接関与しない要因との組合せを考慮して判断するものを一括して「―」と表記していて、停止動作を行わないことを示してはいない。運転状態の例示件数が増加することによる、トリップ状態の判断状況が混乱しないよう説明を省略しているものである。
例えば、表1にて、システム状態としてMGT制御盤異常を監視し、運転状態として窒素連給が不可能な場合の判断において、表示されていない運転状態としてはMGT16の運転可否があり、MGT16の運転が停止している場合には、空気の供給ができないので、トリップ状態A’の停止動作が行われる。また、異常の原因が複数による場合として、例えば、複合発電システム10の制御異常(表3参照)及び停電や原料の異常(表4参照)の組合せにより生じるものは、表3や表4に示される異常原因の組み合わせに対応する判断を行い、トリップ状態A’の停止動作が行われる。
【表1】
【0056】
表2は、異常の原因がSOFC12の異常の場合であり、検知された異常をSOFC12の空気入口/出口温度の異常、空気流量の異常、燃料入口/出口温度の異常、燃料流量/濃度の異常、圧力の異常、及び電圧の異常に細分化した例である。
【表2】
【0057】
表3は、異常の原因が制御の異常の場合であり、検知された異常を制御弁34,60等の制御不能、複合発電システム10の制御装置(例えば、Distributed Control System:DCS)の制御不能に細分化した例である。制御装置による制御が不能となると、SOFC12とMGT16間の温度及び圧力等といったSOFC12の故障につながるパラメータを制御することができなくなる異常であるため、トリップ状態A’に基づいた停止が行われる。
【表3】
【0058】
表4は、異常の原因が停電又は原料の供給異常の場合である。
停電が発生すると制御装置は、バックアップ電源により動作状態を維持する。一方、再循環ブロワ36及び制御弁34,60等の補機は、電力供給が遮断され、動作が停止する。従って、停電が発生すると制御装置が分電盤において電力供給の停止を検知し、再循環ブロワ36が使用できない状態での最適な停止動作としてトリップ状態A’による停止動作が行われる。なお、停電には、手動による非常停止も含まれる。
原料の供給異常は、水素ガス、空気、及び窒素ガス等の主原料の供給が途絶えることである。原料の供給異常は、各装置に重大な影響を及ぼすことから、トリップ状態A’による停止動作が行われる。
【表4】
【0059】
次に、システム状態の異常毎の停止動作について詳細に説明する。
上述した例では、MGT16の異常を、MGT制御盤の異常、燃焼器20入口の空気温度の異常、及びコンプレッサ18の元圧の異常としている。
SOFC12とMGT16がコンバインドサイクルで運転されている場合、SOFC12及びMGT16の何れかの装置の異常が他の装置に重大な故障を及ぼす可能性があるため、迅速な異常の検知による停止動作を必要とする。
【0060】
MGT制御盤の異常は、例えば、MGT16に対する警報やMGT16の非常停止の実行が検知された場合に検知される。MGT制御盤の異常が検知され、窒素連給が可能な場合はトリップ状態Aによる停止動作が行われる。
【0061】
燃焼器20入口の空気温度の異常は、所定値(例えば650℃)以上の空気が供給された場合に検知される。燃焼器20入口の空気温度の異常が検知され、窒素連給が可能な場合はトリップ状態Aによる停止動作が行われる。
【0062】
コンプレッサ18の元圧の異常は、MGT16の空気吸込み温度から導かれる定常時の指定圧力値と検出値とが所定値以上乖離した場合に検知される。コンプレッサ18の元圧の異常が検知され、窒素連給が可能な場合はトリップ状態Bによる停止動作が行われる。
【0063】
なお、MGT16の異常が検知され、窒素連給が不可能な場合はトリップ状態A’による停止動作が行われる。
【0064】
また、上述した例では、SOFC12の異常を、SOFC12の空気入口/出口温度の異常、空気流量の異常、燃料入口/出口温度の異常、燃料流量/濃度の異常、圧力の異常、及び電圧の異常としている。
【0065】
SOFC12の空気入口温度又は空気出口温度が所定値(例えば750℃)よりも高い場合に異常が検知される。なお、所定値は、SOFC12に用いられている金属部材の耐久温度を超える温度とすることが好ましい。そして、異常とされる所定温度の検知が、所定時間(例えば3秒)継続した場合に、停止動作が行われることが好ましい。運転状態として窒素連給が可能な場合は、トリップ状態Bによる停止動作が行われ、窒素連給が不可能な場合は、トリップ状態A’による停止動作が行われる。
【0066】
また、SOFC12における空気流量の異常、燃料入口/出口温度の異常、燃料流量/濃度の異常、圧力の異常、及び電圧の異常についても、各々に対応した所定値を超える状態が所定時間継続した場合に、停止動作が行われることが好ましい。この場合も、運転状態として窒素連給が可能な場合は、トリップ状態Bによる停止動作が行われ、窒素連給が不可能な場合は、トリップ状態A’による停止動作が行われる。
【0067】
また、上述した例では、制御異常を、制御弁34,60等の制御不能及び制御装置の制御不能としている。
制御弁34,60等が制御不能で窒素連給が可能な場合、トリップ状態Aによる停止動作が行われる。
【0068】
より具体的に、制御弁34,60等が制御不能で窒素連給が可能な場合における、トリップ状態Aによる停止動作について説明する。
【0069】
まず、運転制御装置80は、複合発電システム10と電力系統との解列、MGT16の停止、都市ガスの停止、及び窒素パージによりコンバインド運転を停止させる。その後、運転制御装置80は、SOFC12の圧力を低下させながら蒸気ラインを立ち上げて、都市ガスと水蒸気をSOFC12へ供給することで、SOFC12の内部改質反応により還元性ガスである水素ガスを生成しながら、内部改質の吸熱反応とガス流通による除熱によりSOFC12の発電室の降温を行う。
【0070】
そして、発電室が、例えば4時間で容器内温度において700℃に達した後に、燃料供給ライン24に窒素ガスが供給され、さらに温度が400℃に低下した後に、都市ガスと蒸気の供給が停止され、水素ガスが供給される。さらに、温度が100℃に達した後、ガスの供給が停止され、排出ライン42,62に備えられる減圧弁44,64が開かれ、燃料供給ライン24及び空気供給ライン46等が大気開放される。なお、異常の検知によってコンバインド運転が停止されるので、MGT16からの圧縮空気は、SOFC12をバイパスして燃焼器20に直接供給される。
【0071】
また、SOFC12の燃料極側と空気極側との差圧は、所定値(例えば0.5kPa)となるように減圧弁44が制御される。差圧が大きくなりすぎ、SOFC12内の構成層の損傷を防止するためである。そして、燃料供給ライン24に都市ガス、水蒸気、又は水素ガスが供給され、空気供給ライン46に空気が供給されながら大気開放が行われることにより、燃料極側に酸素成分が混入しないように、燃料極側の圧力を空気極側より高く保った状態で停止動作を実行しながら、発電室の冷却が行われる。
このように、制御弁34,60等が制御不能で窒素連給が可能な場合におけるトリップ状態Aでは、SOFC12の発電室内温度に応じて、都市ガス、蒸気、及び水素ガスの流量を制御することで、SOFC12をより安全に停止させる。
【0072】
なお、制御弁34,60等が制御不能で窒素連給が不可能な場合、トリップ状態A’による停止動作が行われる。
【0073】
一方、制御装置が制御不能となった場合、空気ベント、SOFC12とMGT16との間の温度降下及び圧力降下等のSOFC12の停止に要するパラメータを制御ができなくなるため、より迅速な停止動作が行われることが好ましい。
この場合、運転制御装置80は、再循環ブロワ36を停止し、トリップ状態A’による停止動作を行う。
トリップ状態A’による停止動作では、SOFC12のガスの通気を遮断すると共にガスの開放も行わないことから、定格運転時の温度及び圧力で発電室内が保持されることとなる。そして、定格運転時の発電室内は、燃料極と空気極との差圧制御が行われているが、トリップ状態A’ではガスの通気も開放も行わないため、この差圧が保たれる。
【0074】
また、停止動作の信頼性を高めるために、外部冷却手段によって発電室の冷却が行われてもよい。外部冷却手段としては、例えば、水冷、空冷、水の噴霧等である。なお、停電や制御装置の制御不能時の冷却であるため、動力を不要とする冷却が好ましい。動力を不要とする冷却の具体例としては、例えば容器内に貯蔵したガス(空気や窒素等)で水を流す、噴霧させるという手段がある。
【0075】
トリップ状態A’を行った場合における冷却について詳細する。
空気によるベントが不可能な場合、コンバインド運転が解除され、SOFC12の空気極側の空気が封じ込められ、新たな空気の供給と排出が遮断される。この場合、燃料供給ライン24の安全が確認された後、再循環ブロワ36を再起動して、不活性ガスである窒素ガスを供給しながら、燃料再循環ライン32(燃料排出空気供給ライン)による通気を行うことで、差圧を保ちながら燃料極の冷却が行われてもよい。
また、窒素ガスによる通気が不可能な場合、燃料供給ライン24及び排出ライン42が閉じられ、SOFC12の燃料極側のガスの供給と排出が遮断されている。このような場合は、上述したような外部冷却手段による発電室の冷却が行われることが好ましい。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る運転制御装置80は、SOFC12及びSOFC12から排出される燃料ガスを用いて運転されるMGT16を組み合わせて発電を行う複合発電システム10の運転の停止を制御する。そして、運転制御装置80は、複合発電システム10の異常を検知する異常検知部82と、異常検知部82がSOFC12の停止を必要とする異常を検知した場合、異常の状態及び複合発電システム10の運転状態の組み合わせに応じた停止動作を決定する停止動作決定部84と、を備える。
従って、運転制御装置80は、複合発電システム10に異常が検知された場合、単に異常に応じた停止動作をするのではなく、異常が検知された際の複合発電システム10の運転状態に応じた停止動作を行うので、SOFC12の停止を必要とする異常が発生した場合に最適な停止動作を行うことができる。
このように、運転制御装置80は、SOFC12の停止を必要とする異常が発生した場合に検知した異常の状態に基づいて最適な停止動作を行うことで、SOFC12の保護するための停止動作が可能となる。
【0077】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
また、上記各実施形態で説明した異常停止判定処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。