(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のグループのうち下位の指定グループは、成形機の成形条件の変更を行う成形担当者がユーザとして属するグループであることを特徴とする請求項1に記載の成形機の操作方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1によって開示される従来技術は、「動作条件(システムパラメータ)」をグループ化することで、所定の動作条件(システムパラメータ)の設定・変更操作に対しては2重(複数)のパスワードを必要とするようにすることで、「動作条件」の設定・変更の操作が誤って行われることを防止するものである(なお、特許文献1では「システムパラメータ」のユーザによる変更は本来できないものであるとされている)。これによれば、誤った操作からの保護というセキュリティの面では優れているといえるが、段階的なグループ化を行うような場合には、パスワードが複数必要となる(例えばグループのランクが5段階とした場合には、最高ランクの操作を行うためには5つのパスワードが必要となる)ため操作性の面では煩雑となってしまう場合があった。
【0005】
また、上記したようなマイコン制御の成形機は、その動作条件の設定・変更の操作の他にも、成形機を稼働させる操作、成形機の保守・管理のための操作などの各種操作が行われるものであり、それぞれの操作に精通した(分業化された)複数のユーザがいる場合が多い。すなわち、各成形品に合わせた成形機の成形条件の設定や変更を行う成形担当者、成形機の初期設定や保守のための基本設定等のセットアップを行うサービスマン、単に成形機の稼働(運転起動/停止)を行う運転担当者、成形機やユーザの管理を行う工場長などの管理者等々、複数のユーザが存在しているが、セキュリティ管理のために、複数のユーザをグループ化し、各グループごとに特定の操作のみ行えるよう操作権限を与えた場合において、例えば、特定の者が、複数のグループにまたがった操作を行おうとすると、その都度、各グループごとのユーザとして、いちいちパスワードを入力してログインしなければ、所望の操作が行うことができないことから、煩雑な操作を要することになってしまったり、必要以上に表示できる画面が増えるために、操作性を悪くしてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、成形機を使用するユーザが複数存在する成形機の操作方法であって、各ユーザに対する成形機への操作制限を行うことによりセキュリティの向上を図りながらも操作性を向上させた成形機の操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本成形機の操作方法の発明は、
成形機を操作するユーザの職種に応じて、該ユーザを
予め上下の階層関係が決められた複数のグループに選別し、各グループに属するユーザに対し、グループごとに付与した特定の操作のみを行えるよう操作権限を付与した成形機の操作方法であって、
上位のグループに属するユーザが複数のグループにまたがった操作を行いたいとき、
当該上位のグループが画面選択を可とされている場合には、当該上位グループのユーザが前記複数のグループのうち下位の指定グループを選択することにより、当該下位の指定グループに付与されている操作項目と画面選択ボタンとを表示部に表示されたメニュー画面上に表示し、
前記表示部のメニュー画面上に表示された前記画面選択ボタンを押下することにより、前記
下位の指定グループにおいて操作できる成形機の全操作項目一覧を表示部の画面選択画面に表示して、該画面選択画面に表示されている操作項目の表示又は非表示の選択にて、前記複数のグループにまたがった操作に対応する操作項目を表示し選択設定することで、前記メニュー画面上に当該選択設定された操作項目を追加表示して、当該追加表示された操作項目に対応する操作を行えるようにしたことを特徴とする。
【0008】
さらに、本成形機の操作方法の発明は、
前記複数のグループのうち下位の指定グループは、成形機の成形条件の変更を行う成形担当者がユーザとして属するグループであることを特徴とする。
【0009】
さらに、本成形機の操作方法の発明は、
前記複数のグループとしては、成形機の成形条件の変更を行う成形担当者がユーザとして属するグループのほか、少なくとも、成形機の基本設定のセットアップを行うユーザの属するグループと、成形機の起動と停止を行うユーザの属するグループと、成形機やユーザの管理を行うユーザの属するグループとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザの職種に応じて複数にグループ分けされ、セキュリティ上の観点からこれらグループに属するユーザの操作制限がなされていても、例えば、
より上位のグループに属する特定のユーザが、複数のグループにまたがった権限の操作を行いたいときに、複数のグループのうち、下位の指定グループを選択して、複数のグループにまたがった操作に対応する操作項目を表示に選択設定し、当該選択項目をメニュー画面上に追加表示し、メニュー画面上に表示された操作項目に対応する操作を行うことが可能となる。すなわち、下位の指定グループでログインし、当該下位の指定グループには操作権限の付与されていない操作であって、当該下位の指定グループ以外の他のグループに操作権限が付与されている操作であったとしても、複数のグループでログインするといった煩雑な作業を行うことなく、単一のグループのログインで簡単に操作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の射出成形機を示す概略構成図である。
【
図2】射出成形機の制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図3】グループ分けされたユーザの職種、作業・操作権限を示す説明図である。
【
図4】「シンプル」のグループでログインしたときのメニュー画面を示す説明図である。
【
図5】「メンテナンス」のグループでログインしたときのメニュー画面を示す説明図である。
【
図6】「成形者」のグループでログインしたときのメニュー画面を示す説明図である。
【
図7】「作業者」のグループでログインしたときのメニュー画面を示す説明図である。
【
図8】同上、射出成形機の表示部に表示される画面を示す説明図であり、「シンプル」でログインしたときの、(a)及び(d)はメニュー画面、(b)及び(c)は画面選択画面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を
図1〜
図8により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0013】
図1に示す本発明の一例の射出成形機1は、粒状の熱可塑性樹脂を原料として成形体を製造するものであり、射出成形機1には機台2を備え、機台2上には、射出ユニット3、型締ユニット4が配設されている。
【0014】
型締ユニット4には、固定ダイプレート5に装着された固定金型6に対し可動ダイプレート7に装着された可動金型8を前進後退させ型締(型閉)及び型開を行う型開閉機構を備えており、本実施形態における型開閉機構としては、図示しないモータの駆動力を駆動源としてトグルリンク機構9を屈曲作動することで、固定金型6に対して可動金型8を繰り返し型開閉する。
【0015】
また、射出ユニット3には、先端に射出ノズル10の装着された筒型の加熱シリンダ11を備え、加熱シリンダ11内に供給された熱可塑性樹脂は、加熱シリンダ11内に設けられたスクリュー12により加熱されながら混練され、計量されたのち、型閉された金型のキャビティに射出される。
【0016】
また、射出成形機1には、
図2に示すように、射出成形機1の各種動作条件などが格納される記憶部16、当該動作条件に従って射出成形機1の動作の制御を行う機構制御部17、射出成形機全体の制御を行う制御部18、ユーザに対する出力インターフェースである表示部20とユーザからの入力を受ける入力インターフェースである入力部21が兼用されたタッチパネル22、表示部20の制御などを行う画面表示処理部23、入力部21からの信号の判別などを行う入力処理部24、計時手段であるタイマ部25などを備える。
【0017】
本実施例の射出成形機1は、当該射出成形機1に対する操作を行うことができる者を制限するため(セキュリティ向上のため)に、予めユーザ登録を行うことができるようになっており、射出成形機1を使用する場合には、先ず射出成形機1に対するログインを必要とし、射出成形機1に対するユーザの設定登録は、タッチパネル22を操作することによって行われる。ユーザの登録は、「ユーザ名」と「パスワード」、及びユーザの職種応じて「グループ」を設定することにより行われ、当該内容は
図3に示すように、「製作者」、「管理者」、「サービス」、「メンテナンス」、「成形者」、「シンプル」、「作業者」のグループに階層的にグループ分けがなされ、「1」の「製作者」が最も上位階層で、「1」〜「7」の順に階層が低くなり、「7」の「作業者」が最も下位階層となっている。そして、こうしたグループ設定を行うことにより、これらの情報が記憶部50に予め記憶される。
【0018】
また、「1」〜「7」の各グループ(「製作者」、「管理者」、「サービス」、「メンテナンス」、「成形者」、「シンプル」、「作業者」)は、射出成形機1に対する操作権限(例えば表示させることができる画面の制限や、射出成形機1の各種設定操作に対する制限など)が割当てられる。当該内容は、本実施例では
図3の「操作権限」の欄に示されるようにユーザの職種に基づき定義づけられ、当該「操作権限」の具体的な例としては、例えば、「6」の「シンプル」のグループの操作権限としては、
図4のメニュー画面に示すように、「射出・可塑化」、「型開閉・EJ」、「温度設定」、「生産管理」、「交換」、「点検画面」、「パスワード」、「画面選択」であり、また、「4」の「メンテナンス」のグループの操作権限としては、
図5のメニュー画面に示すように、「射出・可塑化」、「型開閉・EJ」、「温度設定」、「生産管理」、「射出グラフ」、「モニタ」、「交換」、「点検画面」、「オプション動作」、「パスワード」、「可塑化補助」、「中子」、「ヒータ自動投入」、「動作工程」、「可塑化グラフ」、「モニタ項目」、「10モニタ画面」、「アラーム履歴」、「オプション信号」、「言語切替」、「エア」、「1サイクルグラフ」、「モニタ表示」、「射出圧縮」、「通信ポート設定」、「型開閉オプション」、「設定履歴」、「1サイクルロジック」、「モニタグラフ」、「成形ナビ」、「ゲートカット」、「時刻設定」、「1サイクルグラフ項目選択」、「モニタ予備」、「オプション確認」、「粘土測定」、「単位設定」、「1サイクルロジック項目選択」、「成形条件診断」、「メニュー2」、「画面選択」であり、また、「5」の「成形者」のグループの操作権限としては、
図6のメニュー画面に示すように、「射出・可塑化」、「型開閉・EJ」、「温度設定」、「生産管理」、「射出グラフ」、「モニタ」、「交換」、「点検画面」、「パスワード」、「可塑化補助」、「中子」、「ヒータ自動投入」、「動作工程」、「可塑化グラフ」、「モニタ項目」、「10モニタ画面」、「アラーム履歴」、「言語切替」、「条件一覧」、「エア」、「条件記憶」、「1サイクルグラフ」、「モニタ表示」、「射出圧縮」、「通信ポート設定」、「型開閉オプション」、「設定履歴」、「モニタグラフ」、「成形ナビ」、「ゲートカット」、「1サイクルグラフ項目選択」、「モニタ予備」、「オプション確認」、「粘土測定」、「成形条件診断」であり、また、「7」の「作業者」のグループの操作権限としては、
図7のメニュー画面に示すように、「射出・可塑化」、「型開閉・EJ」、「温度設定」、「生産管理」、「射出グラフ」、「モニタ」、「交換」、「パスワード」、「中子」、「動作工程」、「モニタ項目」、「10モニタ画面」、「言語切替」、「条件一覧」、「エア」、「モニタ表示」、「モニタグラフ」の画面表示のみで設定不可となっている。
【0019】
ここで、
図8により、射出成形機1の表示部20に表示される画面について説明する。射出成形機1に対してログインする場合には、ログインしたユーザの属するグループの種別の判別が行われ、判別されたグループに応じたメニュー画面が表示部20に表示されることになるのだが(例えば、「シンプル」では
図4に示すメニュー画面、「メンテナンス」では
図5に示すメニュー画面、「成形者」では
図6に示すメニュー画面、「作業者」では
図7に示すメニュー画面、となる。)、このような、セキュリティを考慮してグループごとに付与された射出成形機1に対する操作権限(例えば表示させることができる画面の制限や、装置の各種設定操作に対する制限など)に応じたメニュー画面が表示される場合では、例えば、
上位グループに属するある特定のユーザが、複数のグループにまたがった権限の操作を行いたいとき(例えば、「メンテナンス」のグループに属するユーザに操作権限が付与された「オプション動作」と、
より下位のグループの「作業者」
のグループに属するユーザに操作権限が付与された「条件一覧」とをメニュー画面にまとめて表示し操作できるようにして、「射出グラフ」画面等は表示操作したくない場合)には、複数のグループでログインして操作しなければならないといった煩雑な作業が生じ、利便性に欠けるという問題があるが、本実施例では、このような問題を解消するため、
より下位の各グループに付与されているメニュー画面における全ての操作項目を、単一のメニュー画面上に表示できるようになっており、こうした表示設定について、以下に説明する。
【0020】
メニュー画面の遷移の一例を図8(a)乃至(d)を用いて説明する。先ず、予め
上位のグループに登録されているユーザが、指定された操作権限の低い下位の指定グループである「シンプル」でログインを行う。すると、表示部20には、
図8(a)に示すようにメニュー画面
(図4に示す「シンプル」のメニュー画面と同一画面)が表示され、ここで、メニュー画面上に表示されている画面選択ボタン30を押下すると、表示部20には、
図8(b)に示すように、
より下位のグループにおいて操作可能な全ての操作項目が表示された画面選択画面が表示される。
【0021】
次に、
図8(b)に示す画面選択画面に表示されている全操作項目一覧のうち、表示・操作を望む操作項目、ここでは、「オプション動作」と「条件一覧」とであるとすると、その場合には、
図8(c)に示すように、「オプション動作」と「条件一覧」とを非表示(OFF)から表示(ON)へと選択設定を行う。
【0022】
すると、
図8(d)に示すように、メニュー画面においては、
図8(a)で表示されていた操作項目に加えて、「オプション動作」と「条件一覧」の操作項目が追加表示され、これにより、追加表示された操作項目に対応する操作が可能な状態となり、所望していない画面は操作できない状態となる。なお、前記画面選択ボタン30は、
図4、
図8(a)、(d)に示すように、予め指定された下位の指定グループである「シンプル」のほか、上位のグループである「製作者」、「サービス」、「メンテナンス」のグループでログインしたときにのみ表示されるものであり、それ以外のグループである「管理者」、「成形者」、「作業者」でログインしても表示はされない(
図3の「画面選択」の欄に示すように、「可」では画面選択ボタン30は表示されるが、「否」では画面選択ボタン30は表示されない)。
【0023】
以上のごとく、本実施例の射出成形機1の操作方法によれば、射出成形機1を操作するユーザの職種に応じて、該ユーザを階層的に複数のグループに選別し、各グループに属するユーザに対し、グループごとに付与した特定の操作のみを行えるよう操作権限を付与したことにより、グループ化されたユーザに対して各種操作に対する操作権限の有無を予め設定しておくことができるため、各グループ(分業化され、特定の操作に精通したユーザの集まり)に対してそれぞれの業務内容に応じた操作に対する操作権限を付与できる。
【0024】
また、その一方で、
上位のグループに属するユーザが、複数のグループにまたがった操作を行いたいときには、前記複数のグループのうち下位の指定グループ、
例えば、「シンプル」を選択してログインすると、当該下位の指定グループに予め付与された操作項目のほかに、画面選択ボタン30が、表示部20のメニュー画面上に表示され(
図8(a)の状態)、表示部20のメニュー画面上に表示された画面選択ボタン30を押下することにより、
より下位のグループにおいて操作可能な射出成形機1の全操作項目一覧が表示部20の画面選択画面に表示され(
図8(b)の状態)、該画面選択画面に表示されている操作項目の表示又は非表示の選択にて、
より下位の前記複数のグループにまたがった操作に対応する操作項目を表示(ON)に選択設定することで(
図8(c)の状態)、メニュー画面上に当該選択設定された操作項目を追加表示して(
図8(d)の状態)、当該追加表示された操作項目に対応する操作を行えるようにすることができる。よって、セキュリティ上の観点から、これらグループに属するユーザの操作制限がなされていても、例えば、
より上位のグループに属する特定のユーザが、複数のグループにまたがった権限の操作を行いたいときに、複数のグループのうち、下位の指定グループを選択して、複数のグループにまたがった操作に対応する操作項目を選択設定し、当該選択項目をメニュー画面上に追加表示し、メニュー画面上に表示された操作項目に対応する操作を行うことが可能となる。すなわち、下位の指定グループでログインし、当該下位の指定グループには操作権限の付与されていない操作であって、当該下位の指定グループ以外の他のグループに操作権限が付与されている操作であったとしても、複数のグループでログインするといった煩雑な作業を行うことなく、単一のグループである「シンプル」のグループのログインで所望する操作を簡単に行うことが可能となる。