(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062280
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】ロックボルト用防錆キャップ及びその防錆キャップを使用したロックボルトの頭部の防錆方法
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
E21D20/00 J
E21D20/00 W
E21D20/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-29889(P2013-29889)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159678(P2014-159678A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴之
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−239300(JP,A)
【文献】
特開2012−140985(JP,A)
【文献】
特許第5132009(JP,B1)
【文献】
特開平08−081956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に埋設されその表面から突出するロックボルトの頭部に被せる筒状で先端部が閉塞したロックボルト用防錆キャップであって、外側フィルムと少なくともその外側フィルムよりも破れ易い内側フィルムとの2重構造からなり、かつ、その外側フィルムと内側フィルムとの間には適宜間隔で接着され仕切られた密閉空間部が形成されており、それらの密閉空間部の全てまたはそれらの密閉空間部のうち少なくともロックボルトの周面に形成されたネジ節面に対応する密閉空間部に防錆材が封入されていることを特徴とするロックボルト用防錆キャップ。
【請求項2】
請求項1記載のロックボルト用防錆キャップにおいて、
密閉空間部は、外側フィルムと内側フィルムとが、少なくともロックボルトの周方向に交互に設けられているネジ節面と平面との境界部に沿って接着され仕切られていることを特徴とするロックボルト用防錆キャップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のロックボルト用防錆キャップにおいて、
防錆材は、内側フィルムが破れ、密閉空間部からロックボルトの頭部に流れ出した後に硬化する特性を有した樹脂であることを特徴とするロックボルト用防錆キャップ。
【請求項4】
ロックボルトの頭部に、請求項1〜請求項3のいずれか一の記載のロックボルト用防錆キャップを被せると共に、そのロックボルト用防錆キャップの上からナットを螺合し、そのナットを最後に締め付けることにより、ロックボルト用防錆キャップの少なくとも内側フィルムを破り、密閉空間部内に封入された防錆材を流れ出させてロックボルトの頭部を防錆することを特徴とするロックボルトの頭部の防錆方法。
【請求項5】
請求項4記載のロックボルトの頭部の防錆方法において、
ロックボルトは、少なくともその頭部に、ロックボルト用防錆キャップの密閉空間部に封入された防錆材が予め被覆されたものであることを特徴とするロックボルトの頭部の防錆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山等に埋設されてその表面から突出し、ナットが螺合するロックボルトの頭部に被せるロックボルト用防錆キャップ、及びその防錆キャップを使用したロックボルトの頭部の防錆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロックボルトの防錆方法としては、例えば、ロックボルトの頭部の外周面にハケ等で防錆材を塗る方法や予め、樹脂等の防錆材を被覆させたロックボルトを用いる方法がある。また、ロックボルトの頭部にグリスを塗布し熱収縮性のフィルムを被せて、グリス層とフィルム層を形成させる防錆方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4173511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロックボルトの頭部にハケ等で防錆材を塗る方法は、ナットを螺合する前に、防錆材を乾かす必要があり、作業工程が遅れてしまうという問題がある。また、予め、防錆材を被覆させたロックボルトを用いる方法では、ロックボルトの頭部にナットを螺合し、最後にトルクをかけてナットを締め付けた際に、被覆された防錆材がナットによって剥がれてしまい、ロックボルトの頭部において防錆効果が期待できない箇所ができてしまうという問題がある。これは、ハケ等で防錆材を塗る方法においても同様の問題が生じる。
【0005】
一方、ロックボルトの頭部にグリス層とフィルム層を形成させる防錆方法は、ロックボルトの頭部防食部の外周面にハケ等によってグリスを塗布し、熱収縮を有するチューブ状のフィルムを被せて、そのフィルムに熱湯をかける等して熱収縮させることにより、ロックボルト本体に密着させてグリス層を保護するものであるが、隣り合うネジ節間にグリスが存在するために、必ずしものネジに沿ってチューブ状フィルムが密着するとは限らない。それにより、グリスが流れて被覆されていない部分が生じ、結果的にこの方法についても、防錆効果が期待できない箇所ができてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ロックボルトの頭部における締め付け等の作業工程を遅らすことなく、その頭部を防錆材で被覆できると共に、予め防錆材を被覆したロックボルトの頭部にナットを螺合させた場合や最後にトルクをかけてナット締め付けた場合であっても、確実に防錆材が被覆され、防錆効果が期待できない箇所を生じさせないようにしたロックボルト用防錆キャップ、及びその防錆キャップを使用したロックボルトの頭部の防錆方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るロックボルト用防錆キャップは、地山に埋設されその表面から突出するロックボルトの頭部に被せる筒状で先端部が閉塞したロックボルト用防錆キャップであって、外側フィルムと少なくともその外側フィルムよりも破れ易い内側フィルムとの2重構造からなり、かつ、その外側フィルムと内側フィルムとの間には適宜間隔で接着され仕切られた複数の密閉空間部が形成されており、それら密閉空間部の全てまたはそれら密閉空間部のうち少なくともロックボルトの周面に形成されたネジ節面に対応する密閉空間部に防錆材が封入されていることを特徴とする。
ここで、密閉空間部は、外側フィルムと内側フィルムとが、少なくともロックボルトの周方向に交互にネジ節面と平面との境界に沿って接着され仕切られていると良い。
また、防錆材は、内側フィルムが破れ、密閉空間部からロックボルトの頭部に流れ出した後に硬化する特性を有する樹脂であるとさらに良い。
また、本発明に係るロックボルト用防錆キャップを使用したロックボルトの頭部の防錆方法では、ロックボルトの頭部に上述のいずれかのロックボルト用防錆キャップを被せると共に、そのロックボルト用防錆キャップの上からナットを螺合し、そのナットを最後に締め付けることにより、ロックボルト用防錆キャップの少なくとも内側フィルムを破り、密閉空間部内に封入された防錆材を流れ出させてロックボルトの頭部を防錆することを特徴とする。
ここで、ロックボルトは、少なくともその頭部に、ロックボルト用防錆キャップの密閉空間部に封入された防錆材が予め被覆されたものであると良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るロックボルト用防錆キャップ及びその防錆キャップを使用したロックボルトの頭部の防錆方法によれば、外側フィルムと内側フィルムの間には適宜間隔で接着されて仕切られた密閉空間部が形成され、それら密閉空間部の全てまたはそれら密閉空間部のうち少なくともロックボルトのネジ節面に対応する密閉空間部に防錆材が封入されているため、ロックボルトの頭部に被せその上からナットを螺合して、最後に締め付けた際に少なくとも内側フィルムが破れて、密閉空間部からロックボルトの頭部全体に防錆材が流れ出すことから、防錆材を乾かすことなくナットが締め付けられ、作業工程を短縮することができる。さらに、予め防錆材を被覆したロックボルトであっても、その頭部にロックボルト用防錆キャップを被せてナットを螺合していくと、密閉空間部内でのみ防錆材が移動して、密閉空間部の端部に防錆材が溜まり、最後にトルクをかけてナットを締め付けることで内側フィルムが破れ、少なくともロックボルトのネジ節面に流れ出すことから、その締め付けの際に予め被覆されていた防錆材が剥がれてしまう箇所に流れ出した防錆材が被覆されるため、ロックボルトの頭部を確実に防錆することができる。
また、ロックボルト用防錆キャップは、筒状で先端部が閉塞されているため、ロックボルトの頭部に被せた状態でナットを螺合しても、ロックボルト用防錆キャップがナットに押されてずり下がることなどなく、常にロックボルトの頭部に被さった状態であることから、確実に防錆効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)〜(e)それぞれ本発明に係るロックボルト用防錆キャップの一例を示す正面図、側面図、平面図、底面図、A−A線拡大断面図である。
【
図2】頭部を突出させた状態で地山に埋設したロックボルトの状態を示す断面図である。
【
図3】地山から突出したロックボルトの頭部にロックボルト用防錆キャップを被せた状態を示す断面図である。
【
図4】地山から突出したロックボルトの頭部にロックボルト用防錆キャップを介してナットを螺合させた状態を示す断面図である。
【
図5】ロックボルトにナットを螺合した際の防錆材の溜まり状態等を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る実施形態のロックボルト用防錆キャップ1、及びその防錆キャップ1を使用したロックボルトの頭部の防錆方法について図面を参照して説明する。
【0011】
まず、本発明に係る実施形態のロックボルト用防錆キャップ1について、
図1を参照して説明する。
【0012】
本発明に係るロックボルト用防錆キャップ1は、
図1(a)〜(e)に示すようにロックボルト2の頭部に被せる筒状(チューブ状)でかつ先端部が閉塞したもので、外側フィルム11と内側フィルム12の2重構造からなっている。そして、内側フィルム12は、少なくとも外側フィルム11よりも破れ易くなっている。また、その外側フィルム11と内側フィルム12との間を適宜間隔で接着することにより複数の接着部13を設け、接着部13によって仕切られた密閉空間部1a〜1eを設けている。
【0013】
ここで、ロックボルト用防錆キャップ1は、後述する
図2や
図3に示すように長手方向にネジ節が設けられた一対のネジ節面2a,2cと面一な一対の平面2b,2dとが周方向に交互に設けられたネジ節鉄筋からなるロックボルト2の頭部に被せる。そのため、ロックボルト用防錆キャップ1の接着部13は、ロックボルト2のネジ節面2a,2cと平面2b,2dとの境界部に沿って接着され、
図1(e)に示すように密閉空間部1a,1cがロックボルト2のネジ節面2a,2cに対向するように密閉空間部1a〜1eを設けている。また、ロックボルト用防錆キャップ1を筒状にするため、その左右どちらか一方の端部を接着して接着部14を設けている。なお、ロックボルト2は、その表面に予め防錆材が被覆されたもので、また被覆されていないものでもどちらでも良く、特段、限定されるものではない。
【0014】
そして、防錆材7は、少なくともロックボルト2の一対のネジ節面2a,2cにそれぞれ対向する密閉空間部1a,1cに封入している。これは、後述するように防錆材8が被覆されているロックボルト2の場合、そのロックボルト2の頭部にナット6を螺合し、最後にトルクをかけてナット6を締め付けた際に、ロックボルト2のネジ節面2a,2cのネジ山とナット6のネジ溝とが押し潰されて締め付けられることで、ネジ節面2a,2cに被覆された防錆材8が剥がれる箇所を防錆材7で被覆するためである。なお、防錆材8が被覆されていない場合には、最後にナット6を締め付けた際でも予め被覆された防錆材8が剥がれるようなことは起きず、ロックボルト2の頭部全体が防錆材7で被覆されれば良いため、防錆材7は、ロックボルト2の一対のネジ節面2a,2cにそれぞれ対向する密閉空間部1a,1cに封入するだけでなく、全ての密閉空間部1a〜1eに封入したほうが良い。また、ロックボルト2のネジ節面2a,2cに確実に防錆材7を被覆させるため、ロックボルト用防錆キャップ1の長手方向の長さLは、少なくともナット6の内側の雌ネジ穴の長さ(奥行き)とほぼ同等にすることが望ましい。
【0015】
防錆材7の種類は、特にこだわらないが、ロックボルト用防錆キャップ1の内側フィルム12が破れ、密閉空間部1a,1cからロックボルト2の頭部に流れ出した後に空気に触れて硬化する特性を有した樹脂が最適であり、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)やエポキシ樹脂を使用する。また、防錆材7は、ロックボルト2に予め被覆された防錆材8が剥がされた箇所を被覆することから、その防錆材8と同じ種類が好ましい。
【0016】
また、ロックボルト用防錆キャップ1の外側フィルム11と内側フィルム12の材質としては、最後にナット6を締め付けるまで破れないものであれば何を採用しても構わないが、ポリプロピレン等の樹脂が強度的にもコスト的にも好ましい。なお、内側フィルム12を外側フィルム11よりも先に破れ易くするためには、厚さが薄いものや強度が弱い材質などを用いれば良い。これにより、ロックボルト2の頭部に被せその上からナット6を螺合している時には、外側フィルム11によって、ロックボルト2のネジ節面2a,2cとナット6のネジ溝との間に挟まれた状態であっても内側フィルム12が破れるのを防ぎ、最後にトルクをかけてナット6を締め付けた際に、ネジ節面2a,2cとのナット6のネジ溝とが押し潰されることによって内側フィルム12が外側フィルム11よりも先に破れ、ナット6のネジ溝ではなくロックボルト2の一対のネジ節面2a,2cのほうに流れ出し、確実に防錆材7を被覆することができる。なお、外側フィルム11と内側フィルム12を同じ材質、同じ厚さにしても、最後にナット6を締め付けた際にそれら両方フィルムが同時に破れ、ネジ節面2a,2cにも防錆材7が被覆されることから、少なくとも外側フィルム11が内側フィルム12よりも先行して破れなければ良い。
【0017】
次に、本発明に係るロックボルト用防錆キャップ1を使用したロックボルト2の防錆方法について説明する。なお、この実施形態では、
図2に示すように、長手方向に一対のネジ節面2a,2cと、面一な一対の平面2b,2dとが周方向に交互に設けられたネジ節鉄筋で、少なくともその頭部には予め、防錆材8が被覆されたロックボルト2を用いる方法を一例に説明する。
【0018】
まず、ロックボルト2は、例えば、
図2に示すように地山3に形成された穿孔31に挿入され、その周囲に注入されたグラウト材32によって地山3に埋設されている。
【0019】
そのため、地山3から突出するロックボルト2の頭部(突出部分)に、
図3に示すようにロックボルト用防錆キャップ1を被せる。
【0020】
その際、本発明に係るロックボルト用防錆キャップ1は、筒状で先端部が閉塞されているため、ロックボルト2の頭部に被せた状態でナット6を螺合しても、ロックボルト用防錆キャップ1がナット6に押されてずり下がることがなく、ロックボルト2の頭部に被さった状態であることから確実に防錆効果を発揮することができる。また、ロックボルト用防錆キャップ1の密閉空間部1a,1cの中に封入された防錆材7を予めロックボルト2の頭部に被覆された防錆材8と同じものにすることでロックボルト2の頭部を確実に被覆することができる。
【0021】
その後、
図4に示すようにロックボルト用防錆キャップ1を被せたロックボルト2の頭部を支圧板4および座金5を介してナット6を螺合させて締めていく。
【0022】
ここで、ロックボルト2にはネジ節鉄筋を用いるため、その面一な一対の平面2b,2dとナット6の雌ネジ穴の内周面との間には空間が形成され、ネジ節とネジ溝との間にはガタ(間隔)が存在する。よって、ロックボルト用防錆キャップ1をロックボルト2の頭部に被せその上からナット6を螺合させていくと、空間やガタ(間隔)にロックボルト用防錆キャップ1が入り込んでいく。そして、ロックボルト用防錆キャップ1の密閉空間部1a,1cの中に封入されている防錆材7は流体であるため、
図5に示すように、ロックボルト2にナット6を締め付けていくとロックボルト2のネジ節面2a,2cがナット6のネジ溝との螺合によって一方側に寄って行く。しかし、防錆材7はロックボルト2の一対のネジ節面2a,2cにそれぞれ対向する密閉空間部1a,1c内に封入されているため、ロックボルト2の一対の平面2b,2dにそれぞれ対向する密閉空間部1b,1d,1eまで移動することはなく、密閉空間部1a,1cの一方側の接着部分13の周囲にほぼ集まって、
図5の網掛け部分15に示すように溜まることになる。
【0023】
そして、最後に作業者がトルクをかけてナット6をロックボルト2に強固に締め付けた際には、ロックボルト2のネジ節面2a,2cとナット6のネジ溝によってその間にあたる密閉空間部1a,1cが押し潰されることで、防錆材7が溜まった箇所(
図5の網掛け部分15)を破裂させて内側フィルム12が破れる。
【0024】
すると、密閉空間部1a,1c内の接着部分13の周囲に集められ溜まっていた防錆材7や、接着部分13の周囲に集まらず密閉空間部1a,1c内に分散していた防錆材7がその破れた内側フィルム12から流れ出して、ロックボルト2の一対のネジ節面2a,2cを被覆する。
【0025】
そして、防錆材7は、空気に触れて硬化する特有を有しているため、被覆された防錆材7がそれら螺合部分で硬化しナット6を締め付けた際に防錆材8が剥がれてしまったネジ節面2a,2cを確実に被覆して防錆する。
【0026】
なお、従来技術の問題点として示した、最後にトルクをかけてナット6を締め付けた際に被覆されていた防錆材8が剥がれる部分とは、主にロックボルト2のネジ節面2a,2cにおけるネジ節の谷底からネジ山に向かう境界部とその境界部からネジ山に向かう面である(
図5における太点線部分16)。しかし、本実施形態の防錆材7は、ロックボルト用防錆キャップ1から流れ出して空気に触れて硬化する特性を有しているため、防錆材8が剥がれるこの太点線部分16にも内側フィルム12が破れるのと同時に防錆材7が被覆される。よって、従来技術では防錆材8が剥がれ易い部分であっても、本発明のロックボルト用防錆キャップ1によれば、確実に被覆して防錆することができる。
【0027】
以上説明したように、このロックボルト用防錆キャップ1及びその防錆キャップ1を使用したロックボルト2の頭部の防錆方法によれば、ロックボルト用防錆キャップ1には外側フィルム11と内側フィルム12の間には適宜間隔で接着されて仕切られた密閉空間部1a〜1eが形成されており、それらの密閉空間部1a〜1eのうち少なくともロックボルト2のネジ節面2a,2cに対応する密閉空間部1a,1cに防錆材7を封入したため、ロックボルト2の頭部に被せその上からナット6を螺合し、最後にトルクをかけてナット6を締め付けた際に、内側フィルム12が破れ、ロックボルト2のネジ節面2a,2cに流れ出して、締め付けの際に予め被覆されていた防錆材8が剥がれてしまった箇所などに確実に防錆材7を被覆させて防錆することができる。また、ロックボルト2の頭部にハケなどを使用して防錆材7を塗ることなく簡単に被覆することができる。
【0028】
また、このロックボルト用防錆キャップ1では、筒状で先端部が閉塞しているため、ロックボルト2の頭部に被せた状態でナット6を螺合しても、ロックボルト用防錆キャップ1がナット6に押されてずり下がることなどがなく、常にロックボルト2の頭部に被さった状態であることから、防錆材7を被覆するべき箇所において、内側フィルム12が破れ、ロックボルト2のネジ節面2a,2cに確実に防錆材7を被覆して防錆効果を発揮させることができる。
【0029】
また、防錆材7として、密閉空間部1a,1cからロックボルト2の頭部に流れ出した後に空気に触れて硬化する特性を有したポリビニルブチラール樹脂(PVB)やエポキシ樹脂等を使用しているため、少なくともロックボルト2の頭部のネジ節面2a,2cを確実に被覆して防錆することができる。
【0030】
なお、上記実施形態の説明では、ロックボルト2として、一対のネジ節面2a,2cと面一な一対の平面2b,2dとが周方向に交互に設けられたネジ節鉄筋を一例に説明したが、本発明では、これに限定されるものではなく、外周面の全周に亘ってネジ節が形成されたネジ節鉄筋でも適用可能である。なお、この場合には、ロックボルト用防錆キャップ1の全ての密閉空間部1a〜1eに防錆材7を封入することになる。
【0031】
また、上記実施形態では、新設されたロックボルト2の頭部にロックボルト用防錆キャップ1を被せて、その上からナット6を締め付ける例を挙げて説明したが、既設のロックボルト2の頭部にも本発明を適用させることが可能である。この場合、既に締め付けられているナット6を取り外して、ロックボルト2の頭部を露出させた状態にしたうえで本発明のロックボルト用防錆キャップ1をその頭部に被せ、再度取り外したナット6を締め付ければよい。
【符号の説明】
【0032】
1…ロックボルト用防錆キャップ、1a〜1e…密閉空間部、11…外側フィルム、12…内側フィルム、13,14…接着部、2…ロックボルト、2a,2c…ネジ節面、2b,2d…平面、3…地山、31…穿孔、32…グラウト材、4…支圧板、5…座金、6…ナット、7,8…防錆材。