特許第6062288号(P6062288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062288
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】車両、特に二輪車両または三輪車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/08 20060101AFI20170106BHJP
   B62J 27/00 20060101ALI20170106BHJP
   B60G 17/016 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B62K25/08 A
   B62J27/00 B
   B60G17/016
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-42472(P2013-42472)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-184699(P2013-184699A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】10 2012 203 643.1
(32)【優先日】2012年3月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・リッヒ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ゲオルジ
【審査官】 佐々木 芳枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−154907(JP,A)
【文献】 特開昭57−051584(JP,A)
【文献】 特開平05−147419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/08
B60G 17/016
B62J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前車輪(4)と後車輪(6)と車両ボディ(8)とを有する車両、特に二輪車両または三輪車両であって、前記後車輪(6)が前記車両ボディ(8)に堅固に結合されており、前記前車輪(4)がテレスコピックフォーク(10)によって前記車両ボディ(8)に堅固に結合されており、前記テレスコピックフォーク(10)が危険ブレーキ操作中に、第1の位置から第2の位置へ移動されている形式のものにおいて、
前記テレスコピックフォーク(10)が、前記危険ブレーキ操作中に前記車両(2)が衝突する前に、前記第2の位置から前記第1の位置へ向かって移動されていることを特徴とする、車両、特に二輪車両または三輪車両。
【請求項2】
前記テレスコピックフォーク(10)が、前記危険ブレーキ操作中に前記車両(2)が衝突する前に、前記第2の位置から実質的に前記第1の位置へ移動されていることを特徴とする、請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記テレスコピックフォーク(10)が、蓄圧装置(24)と、前記テレスコピックフォーク(10)と前記蓄圧装置(24)との間に配置され、かつ第1のコントロールユニット(27)によって制御可能な調節部材(26)とを有しており、前記調節部材(26)が、前記第1のコントロールユニット(27)によって閉鎖位置から開放位置へ移動可能であって、前記テレスコピックフォーク(10)が前記第2の位置において第1の圧力を有していて、前記蓄圧装置(24)内の流体が第2の圧力を有しており、該第2の圧力が前記第1の圧力よりも高くなっており、前記テレスコピックフォーク(10)と前記蓄圧装置(24)とが、前記開放位置に移動された前記調節部材(26)によって、流体が前記蓄圧装置(24)から前記テレスコピックフォーク(10)内に流入するように、互いに液密に接続されていることを特徴とする、請求項1または2記載の車両。
【請求項4】
前記調節部材(26)が、着火技術式、電子式、液圧式または空気圧式に操作可能であることを特徴とする、請求項3記載の車両。
【請求項5】
前記調節部材(26)が弁であることを特徴とする、請求項3または4のいずれか1項記載の車両。
【請求項6】
前記第1のコントロールユニット(27)と第2のコントロールユニット(28)とが互いに接続されており、前記第2のコントロールユニット(28)と第1のセンサ(30)とが互いに接続されており、前記第1のセンサ(30)が第1の測定値を検出するように調整されており、前記第2のコントロールユニット(28)が前記第1の測定値を第1の閾値と比較するように調整されており、前記第1の比較結果に応じて前記第1のコントロールユニット(27)が前記第2のコントロールユニット(28)によって、前記調節部材(26)が前記開放位置に移動されるように制御されることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載の車両。
【請求項7】
前記第2のコントロールユニット(28)と第3のコントロールユニット(30)とが、バスシステム(42)によって互いに通信可能に接続されており、前記第3のコントロールユニット(32)と第2のセンサ(34)とが互いに接続されており、前記第2のセンサ(34)が第2の測定値を検出するように調整されており、前記第3のコントロールユニット(32)が前記第2の測定値を第2の閾値と比較するように調節されており、前記第1の比較結果に応じて、前記第2の比較結果が正常であれば、前記第1のコントロールユニット(27)が前記第2のコントロールユニット(28)および/または前記第3のコントロールユニット(32)によって制御可能であることを特徴とする、請求項6記載の車両。
【請求項8】
前記第2のコントロールユニット(28)が、ABSコントロールユニット、シャシーコントロールユニットおよびパッシブセーフティのためのコントロールユニットのグループより成る構成部材であって、前記第3のコントロールユニット(32)が、ABSコントロールユニット、シャシーコントロールユニットおよびパッシブセーフティのためのコントロールユニットのグループより成る別の構成部材であることを特徴とする、請求項7記載の車両。
【請求項9】
前記第1のセンサ(30)が、ブレーキセンサおよびプリクラッシュセンサのグループより成る構成部材であって、前記第2のセンサ(34)が、ブレーキセンサおよびプリクラッシュセンサのグループより成る別の構成部材であることを特徴とする、請求項7記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
モータサイクルの台数はここ数年来著しく増加しており、2008年にはヨーロッパ中にざっと33Mio.(3300万台)の自動二輪車が登録されている。しかしながらそれと同時に、モータサイクルは比肩するもののない最も危険な交通手段であることは明らかである。自動二輪車の運転者の割合は、すべての交通関与者のまさに2パーセントでしかないにも拘わらず、ヨーロッパ中の交通事故による死亡者数の約14パーセントに上る。モータサイクルの運転者は、道路交通において、乗用車の運転者と比較して明らかに高い危険にさらされている。これは何よりも、様々な走行物理学、常に不安定なバランス状態、並びに特にモータサイクル運転者に対する物理的および精神的な要求および制限された視野に起因する。それと同時に、モータサイクル運転者は、天候の影響およびその他の妨害要因、例えば劣悪な道路状態または予測できない交通事情に対して明らかに影響を受けやすい。特に予測できない交通事情においては、多くの場合、危険ブレーキ操作が要求される。危険ブレーキ操作を最適に実施できるようにするために、ブレーキ圧は連続的に上げられる。この場合、テレスコピックスプリングフォークは相応に圧縮され、前車輪はダイナミックに作用するホイール荷重によって道路のアスファルト上に堅固に押しつけられる。それによって高いブレーキ力を伝達することができる。勿論、それによって全重心点は、モータサイクルおよび運転者からテレスコピックスプリングフォークに向かって移動されるので、対象物に衝突したときにロールオーバー(Ueberschlag;横転)する危険性が高くなる。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、シャシーダンピングをそれぞれの道路および/または交通事情にダイナミックに適合させることが公知である。これは例えば、BMW AGにより「ダイナミック・ダンピング・コントロール“Dynamic Damping Control”」、短縮してDDCという用語で公知である。DDCは、制動、加速またはカーブ走行等の走行操作にも、また道路状態にも自動的に反応して、センサにより検出された値を用いて電気的に制御され比例ダンパバルブを介してダンピングを調節するシステムである。したがって、テレスコピックスプリングフォークのダンパ内に専用のバイパスを密封することによって、制動時に高い走行安定性が得られる。しかしながら、DDCによっても、危険ブレーキ操作時に前車輪フォークが沈み込み、全重心点がテレスコピックスプリングフォークに向かって移動することは避けられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、危険ブレーキ操作中における障害物に衝突したときのロールオーバー傾向が低下されるようなモータサイクルを提供する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この必要性は、独立請求項の対象によって適えることができる。本発明のその他の好適な実施態様は従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明の第1の実施例によれば、前車輪と後車輪と車両ボディとを有する車両、特に二輪車両または三輪車両が提供されている。後車輪は車両ボディに堅固に結合されている。前車輪はテレスコピックフォークによって車両ボディに堅固に結合されている。危険ブレーキ操作中に、テレスコピックフォークは第1の位置から第2の位置へ移動されている。テレスコピックフォークは、危険ブレーキ操作中に車両が衝突する前に、第2の位置から第1の位置へ向かって移動されている。
【発明の効果】
【0006】
テレスコピックフォークは、フォークスタンドパイプとフォークガイドパイプとを有しており、フォークスタンドパイプがフォークガイドパイプ内に侵入する。この場合、テレスコピックフォークは、前車輪が少なくとも1つのフォークガイドパイプによってガイドされている旧式なテレスコピックスプリングフォークとして構成されている。この場合、サスペンションはフォーク内またはフォークの外側に配置されていてよい。テレスコピックフォークは、前車輪が実質的に少なくとも1つのフォークスタンドパイプによってガイドされているアップサイドダウンフォークとして構成されていてもよい。第1の位置において、車両は中立な走行状態つまり正常走行状態にある。この場合、フォークスタンドパイプは、所定の第1の程度だけフォークガイドパイプ内に侵入する。第2の位置において、フォークスタンドパイプは最適なブレーキ操作中に、場合によってはABS(アンチロックシステム)ブレーキ装置の補助を受けて所定の第2の程度だけフォークガイドパイプ内に侵入し、この場合、第2の程度は第1の程度よりも大きい。テレスコピックフォークのスプリングは、工業用スプリング、例えば渦巻きばね、油圧圧縮コイルばねまたは空気圧縮コイルばねであってよい。冒頭で述べたように、危険ブレーキ操作中にテレスコピックフォークが圧縮されると、車両とライダーとから成る全重心点はテレスコピックフォークに向かって移動され、車両が障害物に衝突したときにロールオーバーする危険性が高くなる。好適には、テレスコピックスプリングフォークが第2の位置から第1の位置へ向かって移動することによって、全重心点は後車輪に向かって移動し、それによって車両が障害物に衝突した時にロールオーバーする危険性は低下される。理想的な場合、障害物に衝突する前に、テレスコピックフォークは第2の位置から第1の位置へ移動されるので、全重心点は、危険ブレーキ操作中でも正常走行状態の全重心点と同じになる。これによって、ライダーに対するパッシブな拘束構成部品例えば拘束ベルトも、より適切に作用することができる。ABSブレーキ装置が車両に取り付けられている場合、ABSブレーキ装置の制御が例えば2秒より長く作動することによって、例えば車両の差し迫った衝突を検知することができる。勿論、時間パラメータは可変に構成することができるので、テレスコピックフォークが第2の位置から第1の位置へ移動される前に、制御は、1秒より長く、例えば2秒または3秒作動可能である。危険ブレーキ操作中に障害物に衝突する可能性を検知するのに対して追加的にまたは択一的に、先を予見するセンサ(プリクラッシュセンサ)、例えばレーダセンサまたは画像センサを使用してもよい。特に、ABSブレーキ装置のための前車輪のホイール回転数センサとプリクラッシュセンサとが並列的に使用されている場合、2つのセンサによってコントロールユニットに伝達された測定信号のうちの1つが、テレスコピックフォークを第2の位置から第1の位置へ移動させることの妥当性のために使用することができる。
【0007】
本発明の別の実施態様によれば、テレスコピックフォークは、危険ブレーキ操作中に車両が衝突する前に、第2の位置から実質的に第1の位置へ移動されている。
【0008】
この場合、車両は、障害物に衝突する際にその正常走行状態にある。したがって、全重心点は好適な形式で後車輪に向かって移動されていて、障害物に衝突した際に車両がロールオーバーする危険性は低下される。
【0009】
本発明の別の実施態様によれば、テレスコピックスプリングフォークは、蓄圧装置と、前記テレスコピックスプリングフォークと前記蓄圧装置との間に配置され、かつ第1のコントロールユニットによって制御可能な調節部材とを有している。この調節部材は、前記第1のコントロールユニットによって閉鎖位置から開放位置へ移動可能である。テレスコピックスプリングフォークは前記第2の位置において第1の圧力を有している。蓄圧装置内の流体は第2の圧力を有しており、第2の圧力は第1の圧力よりも大きい。前記テレスコピックスプリングフォークと蓄圧装置とは、開放位置に移動された前記調節部材によって、流体が蓄圧装置からテレスコピックフォーク内に流入するように、互いに液密に接続されている。
【0010】
したがって、蓄圧装置から流出する流体によって調節部材が閉鎖位置から開放位置へ移動することによって、テレスコピックフォークは第2の位置から第1の位置へ移動される。この場合、流体は、非圧縮性または圧縮性であってよい。特に流体は液体状またはガス状であってよい。調節部材の開放位置において、蓄圧装置とテレスコピックフォークとの間の圧力調整が得られる。理想的な場合、危険ブレーキ操作によって、正常走行状態におけるよりも高い荷重がテレスコピックフォークにかかるにも拘わらず、テレスコピックフォークによって第1の位置を占めることができる。蓄圧装置とテレスコピックスプリングフォークとの間の接続部の直径を寸法設計することによって、テレスコピックフォークを第2の位置から第1の位置へ移動させるためにどのくらいの時間が必要であるかを規定することができる。
【0011】
本発明の別の実施態様によれば、調節部材は、可逆的または不可逆的に開放位置へ移動することができる。
【0012】
本発明の別の実施態様によれば、調節部材は、着火技術式、電子式、液圧式または空気圧式に操作可能である。
【0013】
特に、調節部材を着火技術式に操作することによって、最短時間内で調節部材を閉鎖位置から開放位置へ移動させることができる。
【0014】
本発明の別の実施態様によれば、調節部材は弁である。
【0015】
この場合、弁は例えば電磁操作式の弁として構成されていてよく、調節部材は電磁石として構成されていてよい。
【0016】
本発明の別の実施態様によれば、調節部材はテレスコピックフォークにまたは車両ボディに配置されている。
【0017】
本発明の別の実施態様によれば、第1のコントロールユニットと第2のコントロールユニットとは互いに接続されている。第2のコントロールユニットと第1のセンサとが互いに接続されている。第1のセンサは、第1の測定値を検出するように調整されている。第2のコントロールユニットは、第1の測定値を第1の閾値と比較するように調整されている。第1の比較結果に応じて第1のコントロールユニットは第2のコントロールユニットによって、調節部材が開放位置に移動されるように制御される。
【0018】
第2のコントロールユニットは、例えばABSコントロールユニットであってよく、この場合、例えば前車輪に配置されたホイール回転数センサとして構成されていてよい第1のセンサによってABSコントロールユニットに伝達された測定値に基づいて、第1のコントロールユニットが、調節部材を開放位置に移動させるために、例えばトリガー信号によって制御され、それによってテレスコピックフォークは第2の位置から第1の位置へ移動される。トリガー信号の伝達は、光学式、電気式または無線によって行ってもよい。択一的に、第2のコントロールユニットは、先を予見するセンサ例えばレーダセンサに接続されていてもよい。
【0019】
本発明の別の実施態様によれば、第2のコントロールユニットと第3のコントロールユニットとが、バスシステムによって互いに通信可能に接続されている。第3のコントロールユニットと第2のセンサとが互いに接続されており、第2のセンサは第2の測定値を検出するように調整されている。第3のコントロールユニットは、第2の測定値を第2の閾値と比較するように調節されている。第1の比較結果に応じて、第2の比較結果が正常であれば、第1のコントロールユニットが第2および/または第3のコントロールユニットによって制御可能である。
【0020】
したがって、調節部材は、第3のコントロールユニットにおける第2の測定値の評価に基づいて、テレスコピックフォークを第2の位置から第1の位置へ移動させる必要があると判断されたときにのみ、閉鎖位置から開放位置へ移動される。したがって、第2のコントロールユニット内において算出された測定値も、また第3のコントロールユニット内において算出された測定値も、第1のコントロールユニットは調節部材を閉鎖位置から開放位置へ移動させるように制御されるべきであることを示す。第2のコントロールユニットと第3のコントロールユニットとを互いに通信可能に接続するバスシステムは、この場合はCANバスシステムであってよい。それによって、これらのコントロールユニットは、簡単な形式で互いに通信可能に接続される。
【0021】
本発明の別の実施態様によれば、第2のコントロールユニットは、ABSコントロールユニット、シャシーコントロールユニットおよびパッシブセーフティのためのコントロールユニットのグループより成る構成部材である。前記第3のコントロールユニットは、ABSコントロールユニット、シャシーコントロールユニットおよびパッシブセーフティのためのコントロールユニットのグループより成る別の構成部材である。
【0022】
パッシブセーフティのためのコントロールユニットは、例えばエアバッグを作動させるためのコントロールユニットであってよく、また将来的に運転者の安全を守るためのシートベルトであってもよい。シャシーコントロールユニットを用いて例えば電動モータによって、シャシーの状態に影響を与えることができる。この場合、例えば後車輪のホイールガイドに影響を与えるために、スイングアームを適合させることができる。
【0023】
本発明の別の実施態様によれば、第1のセンサが、ブレーキセンサおよびプリクラッシュセンサのグループより成る構成部材である。また前記第2のセンサが、ブレーキセンサおよびプリクラッシュセンサのグループより成る別の構成部材である。
【0024】
この場合、ブレーキセンサは、好適には前車輪の回転数を検出する、例えばホイール回転数センサであってよい。プリクラッシュセンサは、画像センサまたはLIDAR(light detection and ranging:光検知測距)−センサであってよい。
【0025】
ここで提案された車両のテレスコピックフォークの前述した機能性は、台形フォークにも適応させることができる。
【0026】
本明細書中において本発明の考え方は、車両特に二輪車両または三輪車両に関連して記載されている、ということを指摘しておく。この場合、当業者にとって、記載された個別の特徴は様々な形式で互いに組み合わせることができ、それによって本発明の別の実施態様を得ることができることは、明らかである。
【0027】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面は概略的に示されているだけであり、縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】正常走行状態における従来技術によるモータサイクルの側面図である。
図2】危険ブレーキ操作中における、閉鎖位置にある弁を備えた、テレスコピックスプリングフォークに液密に接続された蓄圧装置を有するモータサイクルの側面図である。
図3】危険ブレーキ操作中における、開放位置に切り換えられた弁を備えた、テレスコピックスプリングフォークに液密に接続された蓄圧装置を有する、図2に示したモータサイクルの側面図である。
図4】弁を備えた、テレスコピックスプリングフォークに液密に接続された蓄圧装置の、第1の制御を示す原理説明図である。
図5】弁を備えた、テレスコピックスプリングフォークに液密に接続された蓄圧装置の、第2の制御を示す原理説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、従来技術によるモータサイクルとして構成された車両2の正常走行状態を示す。モータサイクル2は、前車輪4と後車輪6と車両ボディ8とを有している。前車輪4は、テレスコピックスプリングフォークとして構成されたテレスコピックフォーク10によって車両ボディ8に堅固に結合されている。テレスコピックスプリングフォーク10は実質的に、フォークガイドパイプ12とフォークスタンドパイプ14とハンドル16とから成っている。この場合、ハンドル16は、テレスコピックスプリングフォーク10に堅固に結合されている。フォークガイドパイプ12は、フォークスタンドパイプ14内に侵入する。走行力学的な状態に応じて、フォークガイドパイプ12とフォークスタンドパイプ14とのオーバーラップが変化するようになっている。ライダー18がモータサイクル2を運転する図示の正常走行状態において、フォークガイドパイプ12に堅固に結合された汚れ防止カバー21の上縁部20と、フォークスタンドパイプ14に堅固に結合された下側のフォークブリッジ23の下縁部22との間に第1の間隔H1が生じる。この正常走行状態において、テレスコピックスプリングフォーク10は第1の位置にある。後車輪6は、ここでは見えていない、車両ボディ8に所属するスイングアームに堅固に結合されている。後車輪6を、車両ボディ8に弾性的に固定するために、スイングアームは、リアスプリングストラット36によって車両ボディ8のリアボディ37に支えられている。この場合、リアスプリングストラット36は、リアボディ37に堅固に結合された第1の懸架点38と、スイングアームに堅固に結合された第2の懸架点40との間に延在している。勿論、前車輪4も後車輪6も、あらゆる状態において車両ボディ8に対して相対的に回転可能である。正常走行状態において、第1の懸架点38と第2の懸架点40との間に第1の間隔L1が延在する。正常走行状態において、ライダー18および車両2の全重心点Sは、ライダー18のほぼ大腿部範囲44に位置する。前車輪4は、接地点Aにおいて道路100と接触している。この場合、厳密に言えば、接地点は接地面であるが、簡略化のために、この接地点A上に面が集約されているものとする。全重心点Sおよび接地点Aを通って直線Rが延在しており、この直線Rは、道路100と第1の角度αを成している。
【0030】
図2は、危険ブレーキ操作中のモータサイクル2を示す。この場合、テレスコピックスプリングフォーク10は、フォークスタンドパイプ14の、フォークガイドパイプ12内への侵入方向Eに沿って第2の位置へ移動されており、この第2の位置において、図1に示された、汚れ防止カバー21の上縁部20と下側のフォークブリッジ23の下縁部22との間の第1の間隔H1が、第2の間隔H2に短縮されている。また、図1に示された、第1の懸架点38と第2の懸架点40との間の第1の間隔L1は、第2の間隔L2に延長されている。全重心点Sは、危険ブレーキ操作中にライダー18の大腿部範囲44からテレスコピックスプリングフォーク10に向かって移動されている。全重心点Sおよび接地点Aと交差する直線Rは、道路100と第2の角度βを成している。第2の角度βは、図1に示された第1の角度αよりも大きい。全重心点Sがテレスコピックスプリングフォーク10に向かって移動されることによって、特に前車輪4が障害物に衝突した時に、車両2がロールオーバーする危険性が高くなる。図1に示した図とは異なり、テレスコピックスプリングフォーク10はそのフォークガイドパイプ12に蓄圧装置24を有しており、この蓄圧装置24は、実質的に非圧縮性のオイルとして構成された図示していない流体で満たされている。蓄圧装置24は、テレスコピックスプリングフォーク10またはフォークガイドパイプ12に液密に接続されている。蓄圧装置24とテレスコピックスプリングフォーク10との間に、第1のコントロールユニット27を備えた弁26が配置されている。ここで選択された図面において、弁26は閉鎖した位置にある。フォークガイドパイプ12がフォークスタンドパイプ14内に侵入することによって、テレスコピックスプリングフォーク10内に第1の圧力が形成されている。しかしながらこの第1の圧力は、蓄圧装置24内に存在する流体の第2の圧力よりも低い。また、モータサイクル2はコントロールユニット28を有しており、該コントロールユニット28は、ABS(アンチロックシステム)・コントロールユニット28として構成されていて、車両ボディ8内に配置されている。この第2のコントロールユニット28は、ホイール回転数センサとして構成された第1のセンサ30に接続されていて、該第1のセンサ30はフォークガイドパイプ12に配置されている。さらに、モータサイクル2は第3のコントロールユニット32を有しており、この第3のコントロールユニット32は、パッシブセーフティのためのコントロールユニットとして構成されていて、車両ボディ8に配置されている。この第3のコントロールユニット32は、レーダセンサとして構成された第2のセンサ34に接続されており、この第2のセンサ34は同様に車両ボディ8に配置されている。ABS・コントロールユニット28によって、危険ブレーキ操作中に少なくとも前車輪4がロックすることは避けられる。第3のコントロールユニット32と連携したレーダセンサ34によって、モータサイクル2の走行方向Fにおける周囲の状況が監視される。
【0031】
図3は、危険ブレーキ操作中における、図2に示したモータサイクルとして構成された車両2を示す。この場合、第3のコントロールユニット32と連携したレーダセンサ34によって、危険ブレーキ操作中にモータサイクル2が障害物110に衝突することが不可避である、ということが探知されている。ホイール回転数センサ30と連携した第2のコントロールユニット28の情報によって、モータサイクル2がブレーキ操作中であることが確認されている。障害物110に衝突した時にモータサイクル2がロールオーバーする危険性を最小限にするために、第1のコントロールユニット27によって弁26が閉鎖位置から開放位置へ切換えられている。これによって、蓄圧装置24から、圧力下にある流体がフォークガイドパイプ12内に導入され、フォークスタンドパイプ14が、フォークガイドパイプ12内へのフォークスタンドパイプ14の侵入方向Eに抗して、図2に示した第2の位置から図1に示した第1の位置へ移動されている。ここで選択された図面において、危険ブレーキ操作にも拘わらず理想的な形式で、図1に示された正常走行状態が生ぜしめられている。全重心点Sが、図2に示した位置から再びリアボディ37に向かって移動されるので、第1の間隔H1,L1が調節されている。これによって、直線Rと道路100とは、再び第1の角度αを成す。ここで選択された図面において、蓄圧装置24とテレスコピックスプリングフォーク10との間で圧力調整が行われていることが分かる。
【0032】
図4は、アップサイドダウンフォーク(Upside-down-Gabel)として構成されたテレスコピックフォーク10に液密に接続された、弁26を備えた蓄圧装置24の第1の制御を示す。電磁弁として構成され得る弁26は、第1のコントロールユニット27によって閉鎖位置から開放位置へ切換えられる。弁26が電磁弁として構成されていれば、第1のコントロールユニット27は例えば電磁石として構成されていてよい。ホイール回転数センサとして構成された第1のセンサ30は、前車輪4の回転運動を検出し、その測定値を、ABSコントロールユニットとして構成された第2のコントロールユニット28に伝達する。すると、ABSコントロールユニット28は5秒(この時間は自由に調節可能である)よりも長くブレーキ圧を制御するので、前車輪4はロックしない。このことは、障害物110に衝突する可能性があることを示唆している。それに応じて、第2のコントロールユニット28は、該第2のコントロールユニット28に伝導可能に接続された第1のコントロールユニット27に、弁26を閉鎖位置から開放位置へ切換えるためのトリガー信号を送信する。その代わりに、トリガー信号を、パッシブセーフティのためのコントロールユニットとして構成された第3のコントロールユニット32によって送信するようにしてもよい。この場合、第3のコントロールユニット32は、レーダセンサとして構成された第2のセンサ34に導電接続されている。この選択的な解決策は破線41によって示されている。この場合も、センサ34によって検出された測定値に基づいてコントロールユニット32が、モータサイクル2が障害物110に衝突することが避けられないと算出した時にはじめて、第3のコントロールユニット32がトリガー信号を第1のコントロールユニット27に送信する。
【0033】
図5は、第1のコントロールユニット27を制御するために、第1のセンサ30と連携した第2のコントロールユニット28も、また第2のセンサ34と連携した第3のコントロールユニット32も使用されるという点で、図4とは異なっている。この場合、第2のコントロールユニット28と第3のコントロールユニット32とは、CANバスシステム42によって互いに通信可能に接続されている。この構成では、第2のコントロールユニット28は、モータサイクル2が危険ブレーキ操作中にあるかどうか、それによってテレスコピックフォーク10が第1の位置から第2の位置へ移動されているかどうかを、算出することができる。第3のコントロールユニット32によって、モータサイクル2が障害物110に衝突することが不可避であるかどうかが、算出され得る。この2つの状況が発生するとはじめて、弁26を閉鎖位置から開放位置へ切換えるための信号が第1のコントロールユニット27に送信される。
【0034】
テレスコピックフォーク10が第2の位置から第1の位置へ向かって移動されることによって、障害物に衝突する前に、二輪車の運転者は座席上で十分な正常走行状態を保つ。それによって、全重心点は後方の位置に留まるので、ロールオーバーの可能性は低くなり、運転者の前方移動は小さくなる。運転者の前方移動が小さくなることは、特に障害物に衝突する際にポジティブな作用をもたらす。むしろ、例えばベルトの形をした拘束システムのようなさらなるセーフティシステムのための前方移動手段を提供する。蓄圧装置をテレスコピックフォーク内に組み込むこともできる。これは、総合的に、二輪車の安全性を高めるための安価な解決策を提供する。
【符号の説明】
【0035】
2 車両
4 前車輪
6 後車輪
8 車両ボディ
10 テレスコピックスプリングフォーク
12 フォークガイドパイプ
14 フォークスタンドパイプ
16 ハンドル
18 ライダー
20 上縁部
21 汚れ防止カバー
23 下側のフォークブリッジ
24 蓄圧装置
26 弁
27 第1のコントロールユニット
28 第2のコントロールユニット
30 ホイール回転数センサ
32 第3のコントロールユニット
34 第2のセンサ、レーダセンサ
36 リアスプリングストラット
37 リアボディ
38 第1の懸架点
40 第2の懸架点
41 破線
42 CANバスシステム
44 大腿部範囲
100 道路
110 障害物
A 接地点
E 侵入方向
L1 第1の間隔
H1 第1の間隔
H2 第2の間隔
R 直線
S 全重心点
α 第1の角度
図1
図2
図3
図4
図5