特許第6062310号(P6062310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062310
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20170106BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20170106BHJP
   C08L 25/14 20060101ALI20170106BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20170106BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20170106BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20170106BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   C08L53/02
   C08L9/06
   C08L25/14
   C08L67/00
   C08L63/00 A
   C08L91/00
   C08L23/26
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-83968(P2013-83968)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-205781(P2014-205781A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】角田 泰規
(72)【発明者】
【氏名】伊達 憲昭
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−227760(JP,A)
【文献】 特開2001−279067(JP,A)
【文献】 特開平03−043433(JP,A)
【文献】 特開2011−084654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/00
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性スチレン系エラストマーAと軟化剤Bとを、25/75〜95/5の量比(A/B)で含有してなり、さらに、前記AとBの合計量100質量部に対して、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCを75〜1000質量部、骨格にスチレン構造を有し、スチレン及び/又はスチレン誘導体を30質量%以上と、(メタ)アクリル酸グリシジルからなるエポキシ基含有単量体を15〜70質量%含む単量体単位から構成される重合体であるエポキシ化合物Dを前記C 100質量部に対して0.1〜15質量部含有してなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
エポキシ化合物Dの重量平均分子量が1,000〜100,000である、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
軟化剤Bが、動粘度10〜1,000mm2/sのパラフィンオイルを含有してなる、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
さらに、相溶化剤Eを含む、請求項1〜いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
相溶化剤Eが、酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーE2である、請求項4記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
さらに、ポリオレフィンFを含む、請求項1〜いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
請求項1〜いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物を構成する原料を、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCが溶融する条件下で混合して得られる反応生成物からなる熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
反応生成物の形状が、ペレット、粉体、又はシートである、請求項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
請求項1〜いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体。
【請求項10】
請求項1〜いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着してなる、複合成形体。
【請求項11】
請求項1〜いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物を構成する原料を混合し、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCとエポキシ化合物Dの少なくとも一部を反応させる、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な材料に優れた接着性を有し、自動車、電子材料、家電、電気機器、医療用具、包装資材、文具・雑貨用品等の各種成形品に有用であり、さらにはグリップ、チューブ、パッキン、ガスケット、クッション体、フィルム、シート等の各種部材に用いられる熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法及び該組成物を用いて得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、変性ポリフェニレンエーテルの群から選ばれた少なくとも1種の樹脂層と特定の成分を含有するスチレン系熱可塑性エラストマー層とからなる複合成形体が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物系共重合体、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び/又は熱可塑性ポリアミドエラストマー、並びにビニル芳香族化合物−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体、あるいはα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの共重合体を配合した熱可塑性重合体組成物が開示されている。
【0004】
特許文献3には、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックからなる、特定のブロック共重合体、及びエポキシ化合物を含む熱可塑性エラストマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2886114号公報
【特許文献2】特開平3−43433号公報
【特許文献3】特許第2782773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3には、ポリエステル系エラストマーとスチレン系エラストマーの両者の特長を生かした熱可塑性エラストマー組成物が開示されているが、柔軟性、極性樹脂との熱融着性、耐摩耗性及び成形性の全てを満足する組成物は未だ得られていない。
【0007】
特許文献1に記載の組成物は、柔軟性があるが、熱融着強度が十分ではなく、また相溶化剤を含んでいないため、耐摩耗性が不十分である。
【0008】
特許文献2に記載の組成物は、相溶性は改善されているものの、スチレン系エラストマーとポリエステル系エラストマーとの反応性が乏しいため、さらなる相溶性の改善が求められる。また、柔軟性及び成形性も不十分である。
【0009】
特許文献3に記載の組成物は、スチレン系エラストマーとポリエステル系エラストマーのカルボキシル基との反応により、相溶性が改善されているが、十分なレベルとは言えない。また、柔軟性及び成形性も不十分である。
【0010】
本発明の課題は、ポリエステル系エラストマーとスチレン系エラストマーの相溶性が高く、柔軟性、極性樹脂との熱融着性、耐摩耗性及び成形性のいずれにも優れた熱可塑性エラストマー組成物、その製造方法及び該組成物を用いて得られる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
〔1〕 熱可塑性スチレン系エラストマーAと軟化剤Bとを、25/75〜95/5の量比(A/B)で含有してなり、さらに、前記AとBの合計量100質量部に対して、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCを75〜1000質量部、骨格にスチレン構造を有し、スチレン及び/又はスチレン誘導体を30質量%以上と、(メタ)アクリル酸グリシジルからなるエポキシ基含有単量体を15〜70質量%含む単量体単位から構成される重合体であるエポキシ化合物Dを前記C 100質量部に対して0.1〜15質量部含有してなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物、
〔2〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物を構成する原料を、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCが溶融する条件下で混合して得られる反応生成物からなる熱可塑性エラストマー組成物、
〔3〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体、
〔4〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着してなる、複合成形体、並びに
〔5〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物を構成する原料を混合し、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCとエポキシ化合物Dの少なくとも一部を反応させる、熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ポリエステル系エラストマーとスチレン系エラストマーの相溶性が高く、優れた柔軟性、極性樹脂との熱融着性、耐摩耗性及び成形性を有するという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性スチレン系エラストマーA、軟化剤B、熱可塑性ポリエステル系エラストマーC及びエポキシ化合物Dを含有するものである。
【0014】
スチレン系エラストマー相とポリエステル系エラストマー相は非相溶系であり、相溶化剤による相溶性の向上は各種検討されているものの、未だ十分ではない。また、従来のポリエステル系エラストマーは溶融時の粘度が比較的低く、さらに押出混練時に熱、水分による粘度低下が起こりやすいことから、スチレン系エラストマー相との粘度乖離が起こりやすく、微分散が困難であるという課題がある。また、低硬度のポリエステル系エラストマーでは射出成型時にヒケが発生しやすく、離型性も低いという課題もある。これに対し、本発明では、骨格にスチレン構造を有する特定のエポキシ化合物を配合することにより、スチレン系エラストマー相とポリエステル系エラストマー相の相溶性が劇的に改善することを見出した。
【0015】
熱可塑性スチレン系エラストマーAは、柔軟性と成形性の観点から、スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s1)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b1)とからなるブロック共重合体(Z1)であることが好ましい。
【0016】
ブロック単位(s1)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0017】
ブロック共重合体(Z1)は、ブロック単位(s1)からなる硬い部分(ハードセグメント)と、ブロック単位(b1)とからなる柔らかい部分(ソフトセグメント)とからなり、全体の物性を決定する観点から、ブロック共重合体(Z1)におけるスチレン系単量体の含有量は、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましい。
【0018】
ブロック単位(b1)を構成する共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。
【0019】
ブロック共重合体(Z1)は、水素添加することにより不飽和結合が減少し、耐熱性、耐候性及び機械的特性が向上することから、その一部又は全部が水素添加されていることが好ましい。水素添加率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。本発明において、水素添加率は、ブロック共重合体中の共役ジエン単位に由来する炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、1H-NMRスペクトルなどによって測定し、該測定値から求めることができる。
【0020】
ブロック共重合体(Z1)の水素添加物の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン−ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリイソプレン−ポリ(α-メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−クロロプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、原料調製及び作業性の観点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
熱可塑性スチレン系エラストマーAは、さまざまな特性のものが工業的に大量に生産されていて入手しやすい観点から、酸変性されていないことが好ましい。
【0022】
熱可塑性スチレン系エラストマーAの重量平均分子量は、耐熱性や機械特性の観点から、10,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、100,000以上がさらに好ましく、200,000以上がさらに好ましい。また、加熱時の流れやすさ、つまり製造時における成形性の観点から、500,000以下が好ましく、400,000以下がより好ましく、350,000以下がさらに好ましい。これらの観点から、水添熱可塑性スチレン系エラストマーAの重量平均分子量は、10,000〜500,000が好ましく、50,000〜400,000がより好ましく、100,000〜350,000がさらに好ましく、200,000〜350,000がさらに好ましい。
【0023】
本発明における軟化剤Bとしては、例えばパラフィンオイル、ナフテンオイル、芳香族系オイル等のゴム用軟化剤が挙げられるが、これらのなかでは、水添熱可塑性エラストマーとの親和性が良好で、ブリードが起きにくいという観点から、パラフィンオイルが好ましい。
【0024】
軟化剤の40℃での動粘度は、高い方が、加熱溶融時の揮発を防ぎ、耐ブリード性も良くなることから、10mm2/s以上が好ましく、20mm2/s以上がより好ましく、25mm2/s以上がさらに好ましく、30mm2/s以上がさらに好ましい。また、低い方が取扱いが容易であることから、1000mm2/s以下が好ましく、700mm2/s以下がより好ましく、500mm2/s以下がさらに好ましい。これらの観点から、軟化点の40℃での動粘度は、10〜1000mm2/sが好ましく、25〜700mm2/sがより好ましく、30〜500mm2/sがさらに好ましい。
【0025】
本発明の組成物における熱可塑性スチレン系エラストマーAと軟化剤Bの重量比(A/B)は、軟化剤の含有量が少なすぎると、各種配合成分の分散性が低下することから、95/5以下であり、67/33以下が好ましく、65/35以下がより好ましく、62.5/37.5以下がさらに好ましい。また、軟化剤の含有量が多すぎると、オイルブリードが生じ、物性等の劣化にもつながることから、25/75以上であり、26/74以上が好ましい。これらの観点から、本発明の組成物における熱可塑性スチレン系エラストマーAと軟化剤Bの重量比(A/B)は、25/75〜95/5であり、好ましくは25/75〜67/33、より好ましくは26/74〜65/35、さらに好ましくは26/74〜62.5/37.5である。
【0026】
熱可塑性ポリエステル系エラストマーCは、ハードセグメントとして芳香族ポリエステルブロックを有し、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテルブロックを有するポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体であることが好ましく、ソフトセグメントである脂肪族ポリエーテルブロックは主としてポリアルキレンエーテルグリコールからなることがより好ましい。
【0027】
ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体のソフトセグメントである脂肪族ポリエーテルブロックの質量平均分子量は、通常400〜6000であり、前記脂肪族ポリエーテルブロックの含有量は、60〜90質量%が好ましい。脂肪族ポリエーテルブロックの含有量は、原料仕込み組成から換算される。
【0028】
ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体のハードセグメントである芳香族ポリエステルブロックは、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-又は2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルの1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4’-ジヒドロキシジビフェニル、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン等のジオールの1種又は2種以上との重縮合体であることが好ましい。市販品としては、例えば、「ペルプレン」(東洋紡績株式会社製、商品名)、「ハイトレル」(東レ・デュポン株式会社製、商品名)、「フレクマー」(日本合成化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0029】
熱可塑性ポリエステル系エラストマーには、様々な硬度のものがあることが知られており、本発明ではいずれでも用いることができるが、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCのD硬さは、10〜80が好ましく、20〜70がより好ましく、20〜50がさらに好ましい。
【0030】
熱可塑性ポリエステル系エラストマーCの含有量は、多いほど極性樹脂との融着性が良くなることから、スチレン系エラストマーAと軟化剤Bの合計量100質量部に対して、75質量部以上であり、好ましくは80質量部以上、より好ましくは100質量部以上である。また、少ない方が柔軟性に優れることから、スチレン系エラストマーAと軟化剤Bの合計量100質量部に対して、1000質量部以下であり、好ましくは800質量部以下、より好ましくは500質量部以下である。これらの観点から、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCの含有量は、スチレン系エラストマーAと軟化剤Bの合計量100質量部に対して、75〜1000質量部であり、好ましくは80〜800質量部、より好ましくは100〜500質量部である。
【0031】
エポキシ化合物Dは、骨格にスチレン構造を有するものであり、エポキシ価は、高いものの方が反応性が高くなることから、0.10meq/g以上であり、好ましくは0.50meq/g以上である。また、製造が容易なことから、5.0meq/g以下であり、3.0meq/g以下が好ましい。これらの観点から、エポキシ化合物Dのエポキシ価は、0.10〜5.0meq/gであり、好ましくは0.5〜3.0meq/gである。
【0032】
エポキシ化合物Dは、(メタ)アクリル酸グリシジルとスチレン及び/又はスチレン誘導体とを含む単量体単位から構成されるものであることが好ましい。
【0033】
(メタ)アクリル酸グリシジルは、ポリエステル系エラストマーの末端官能基との反応性が非常に高く、所定量以上の(メタ)アクリル酸グリシジルを含むエポキシ化合物Dを配合することにより、熱可塑性ポリエステル系エラストマー相が高粘度化され、混練時に、ポリエステル系エラストマー相とスチレン系エラストマー相の両相の粘度比が縮まり、より細かく分散化を図ることができ、磨耗性等の機械強度の改善をすることができる。これらの観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルの含有量は、単量体単位中、15〜70質量%が好ましく、17〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%がさらに好ましい。なお、本発明において、単量体単位中の含有量とは、その重合体を構成する全単量体単位中の当該単位の含有量を意味する。
【0034】
スチレン誘導体としては、スチレンのアルファ位、オルト位、メタ位又はパラ位が炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数1〜4の低級アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子等の置換基で置換された化合物が好ましい。該置換基の分子量(原子量)は60以下が好ましく、50以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。スチレン誘導体の具体例としては、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。
【0035】
スチレン及び/又はスチレン誘導体の含有量は、単量体単位中、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル酸グリシジル、スチレン及びスチレン誘導体以外の単量体単位としては、共重合しやすく、製造が容易であることから、(メタ)アクリル酸グリシジル以外の(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
【0037】
(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等が挙げられる。
【0038】
エポキシ化合物Dにおけるエポキシ基の個数は、ポリエステル系エラストマーとの相溶性の観点から、1分子中に平均2個以上が好ましく、2.5〜20個がより好ましく、3〜10個がさらに好ましい。
【0039】
エポキシ化合物Dの重量平均分子量は、大きい方が高温下での揮発を抑えることができることから、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。また、低い方が反応性が高くなることから、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。これらの観点から、エポキシ化合物Dの重量平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、3,000〜80,000がより好ましく、5,000〜50,000がさらに好ましい。
【0040】
エポキシ化合物Dの市販品としては、東亞合成(株)製のアルフォンUGシリーズ、日油(株)製のマープルーフGシリーズ、BASF製のジョンクリルADRシリーズ等が挙げられる。
【0041】
エポキシ化合物Dの含有量は、多い方が耐摩耗性に優れることから、ポリエステル系エラストマー100質量部に対して、0.1質量部以上であり、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、少ない方が成形性が良好になることから、ポリエステル系エラストマー100質量部に対して、15質量部以下であり、10質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。これらの観点から、エポキシ化合物Dの含有量は、耐摩耗性と成形性のバランスの観点から、ポリエステル系エラストマー100質量部に対して、0.1〜15質量部であり、0.5〜10質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。
【0042】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、相溶化剤Eを含有していることが好ましい。
【0043】
相溶化剤Eとしては、耐摩耗性と融着性に優れることから、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーE1、酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーE2、及びスチレン系エラストマーとウレタン系エラストマーのグラフトポリマーE3からなる群より選ばれた少なくとも1種のエラストマーが好ましい。
【0044】
酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーE1としては、スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s2)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b2)とからなるブロック共重合体(Z2)の水素添加物を酸変性させたものが好ましい。
【0045】
ブロック単位(s2)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0046】
ブロック単位(b2)を構成する共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。
【0047】
ブロック共重合体(Z2)は、ブロック単位(s2)からなる硬い部分(ハードセグメント)と、ブロック単位(b2)とからなる柔らかい部分(ソフトセグメント)とからなり、全体の物性を決定する観点から、ブロック共重合体(Z2)におけるスチレン系単量体の含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%がさらに好ましい。
【0048】
ブロック共重合体(Z2)の水素添加は、一部であっても、全部であってもよいが、水素添加することにより不飽和結合が減少し、耐熱性、耐候性及び機械的特性が得られる。それらの観点から、水素添加率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0049】
ブロック共重合体(Z2)の水素添加物の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン(スチレン制御分布)−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン−ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリイソプレン−ポリ(α-メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−クロロプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、原料調製及び作業性の観点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−ブチレン(スチレン制御分布)−スチレンブロック共重合体(SEB(S)S)及びスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0050】
ブロック共重合体(Z2)の水素添加物の酸変性は、特に限定されるものではないが、例えば、水素添加物にカルボキシル基又は酸無水物基を導入することによって行うことができる。上記のカルボキシル基又は酸無水物基の導入は、それ自体公知の方法に従って行うことができる。具体的には、例えば、水素添加物と、アクリル酸、メタクリル酸等で例示される不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマール酸、ハイミック酸、イタコン酸等で例示される不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水イタコン酸等で例示される不飽和ジカルボン酸の無水物とを、有機過酸化物の存在下に、溶媒の存在下又は非存在下に加熱して、グラフト反応させることにより得ることができる。また、商業的に入手することもできる。
【0051】
酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーE1の酸変性量は、相溶性及び作業性の観点から、0.5〜5質量%が好ましく、0.7〜4.0質量%がより好ましく、1.0〜3.0質量%がさらに好ましい。
【0052】
酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーE1の重量平均分子量は、耐熱性の観点から、50,000以上が好ましく、溶融物の流動性及びゴム弾性の観点から、400,000以下が好ましい。これらの観点から、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーE1の重量平均分子量は、50,000〜400,000が好ましく、70,000〜350,000がより好ましく、80,000〜300,000がさらに好ましい。酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーE1は、1種のみが用いられていてもよく、重量平均分子量や1,2-ビニル結合量等が異なる2種以上が併用されていてもよい。2種以上が併用されている場合は、それらの加重平均値が上記範囲内であることが好ましく、それぞれが上記範囲内であることがより好ましい。
【0053】
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーE2としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα−オレフィン共重合体エラストマー、これらと非共役ジエンとの共重合エラストマー、これらの2種以上の混合物等が挙げられ、これらのものの少なくとも一部が酸変性されたものである。これらの中では、エチレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の酸変性物が好ましい。
【0054】
酸変性処理は、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーE1と同様に行うことができる。
【0055】
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーE2の酸変性量は、相溶性及び作業性の観点から、0.5〜5質量%が好ましく、0.7〜4.0質量%がより好ましい。
【0056】
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーE2のA硬さは、95以下が好ましく、10〜90がより好ましく、20〜90がさらに好ましい。
【0057】
スチレン系エラストマーとウレタン系エラストマーのグラフトポリマーE3としては、1個のスチレン系エラストマーブロックと1個のポリウレタンエラストマーブロックを有するジブロック共重合体であっても、スチレン系エラストマーとポリウレタンエラストマーブロックが合計で3個又は4個以上結合したポリブロック共重合体であってもよいが、耐熱性に優れ、加熱溶融時に悪臭を放出しない観点から、1個のスチレン系エラストマーと1個のポリウレタンエラストマーブロックが結合したジブロック共重合体が好ましい。市販品としては、(株)クラレ社製のクラミロン(登録商標)TUポリマー等が挙げられる。
【0058】
相溶化剤Eの含有量は、耐摩耗性と他素材への融着性を良好にする観点から、スチレン系エラストマーAと軟化剤Bの合計量100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、1〜60質量部がさらに好ましい。
【0059】
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性の観点から、ポリオレフィンFを含有していることが好ましい。
【0060】
ポリオレフィンFとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0061】
ポリオレフィンは酸変性されていてもよい。変性に用いられる酸としては、マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸、イタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンド−シスービシクロ(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸等のジカルボン酸及び該ジカルボン酸の無水物、エステル、アミド、イミド等、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸及び該モノカルボン酸のエステル、アミド等が挙げられる。
【0062】
ポリオレフィンFの含有量は、少ない方が柔軟性を保つことができることから、スチレン系エラストマーAと軟化剤Bの合計量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0063】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。
【0064】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、極性樹脂の改質を目的として、極性エラストマーが含有されていてもよい。極性エラストマーとしては、特に制限されないが、例えばNBR(ニトリルゴム)、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0065】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤;炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、マイカ等の充填剤;滑剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0066】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性スチレン系エラストマーA、軟化剤B、熱可塑性ポリエステル系エラストマーC及びエポキシ化合物D、さらに必要に応じて相溶化剤E等を含む原料を混合し、冷却により固化させて得られる。
【0067】
本発明でいう「混合」とは、各種成分が良好に混合される方法であれば特に限定されず、各種成分を溶解可能な有機溶媒中に溶解させて混合してもよいし、溶融混練によって混合してもよいが、本発明では、熱可塑性エラストマー組成物を構成する原料を混合し、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCとエポキシ化合物Dの少なくとも一部を反応させることが好ましく、かかる観点から、原料の混合は、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCが溶融する条件下で行うことが好ましい。エポキシ化合物と、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCの末端官能基との反応により、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCの分子量が増大し、粘度が高くなることによって、熱融着時に必要な圧力がかかりやすくなり、融着強度がアップし、ヒケの成型性の問題も改善される。従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、組成物を構成する原料を、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCが溶融する条件下で混合して得られる反応生成物からなることが好ましい。
【0068】
熱可塑性ポリエステル系エラストマーCが溶融する条件下とは、例えば、粘弾性測定によって決定できる熱可塑性ポリエステル系エラストマーCの融点を基に定義することができ、静置状態で融点以上であれば溶融する条件であるが、溶融混練法では必ずしも静置状態で測定された融点ではなく、融点よりも低い温度で溶融することもあり、温度が高いほど溶融粘度が小さくなって混合しやすくなるが、あまり高いと熱分解が起きる恐れがある。これらの観点から、混練を伴うときの好ましい溶融温度範囲は、融点に対して-30℃〜+100℃であり、より好ましくは融点に対して-20℃〜+50℃である。
【0069】
溶融混練する場合には、一般的な押出機を用いることができ、混練状態の向上のため、二軸の押出機を使用することが好ましい。押出機への供給は、予めヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて各種成分を混合したものを一つのホッパーから供してもよいし、二つのホッパーにそれぞれの成分を仕込みホッパー下のスクリュー等で定量しながら供してもよい。
【0070】
熱可塑性エラストマー組成物を構成する原料を、熱可塑性ポリエステル系エラストマーCが溶融する条件下で混合して得られる反応生成物は、用途に応じて、ペレット、粉体、シート等の形状とすることができる。例えば、押出機によって溶融混練してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状などのペレットに切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形によって所定のシート状成形品や金型成形品とする。また、溶融混練物をルーダー等でペレットにし成形加工原料とすることもできる。シート状の熱可塑性エラストマー組成物に、台紙等を貼付した中間製品としてもよい。
【0071】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のA硬さは、柔軟性の観点から、90以下であり、好ましくは10〜90、より好ましくは20〜90、さらに好ましくは30〜75である。
【0072】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の230℃、21.2Nでのメルトマスフローレイトは、接着性及び流動性の観点から、0.1〜10g/10minが好ましく、1〜8g/10minがより好ましい。
【0073】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、常法に従って、適宜加熱成形することにより、成形体が得られる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体の用途は、特に限定されるものではなく一般的なスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマーやポリエステル系エラストマー等が用いられる分野に用いることができる。
【0074】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体の製造に用いられる装置は、成形材料を溶融できる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
【0075】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、複合成形用材料としても用いることができ、様々な材料に溶着するため、異種材料からなる部材の張り合わせにも好適に用いることができる。例えば、金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材に溶着させるために用いられ、特に極性樹脂等に対して良好な接着性を示す。
【0076】
金属としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、鉄、銅、亜鉛めっき鋼、マグネシウム、マグネシウム合金等、また各種めっき処理品等が挙げられる。
【0077】
オレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合樹脂等が挙げられ、溶融混練されたものでも、重合機中で混合されたリアクター型熱可塑性オレフィン(TPO)でもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーが、動的に架橋されたものであってもよい。
【0078】
極性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリプロピレンオキサイド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、LCP(液晶ポリマー)、アイオノマー等の極性樹脂、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0079】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材に溶着させた場合、該部材からの剥離強度は、接着特性の観点から、100N/25mm以上が好ましい。
【0080】
本発明において、溶着は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の融点以上の熱を加えて、融液にした後、融点以下の温度にして固化することで、溶着対象の界面に固着する現象をいう。熱を加えるには、熱プレス機、加熱ロール機、熱風発生機、加熱蒸気、超音波ウェルダー、高周波ウェルダー、レーザー等を用いることができる。従って、溶着部の界面が複雑な立体形状であっても、複雑な立体形状にうまくなじみ成形一体化することができる。
【0081】
従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、部材の張り合わせだけでなく、部材と一体となって複合成形体とすることもできる。これにより、複雑な接合面を有する部材や、互いに異なる形状の接合面を有する部材の貼り合わせも可能となる。
【0082】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着した複合成形体は、射出成形、射出圧縮成形、インサート成形、多色成形、真空成形、圧空成形、ブロー成形、熱プレス成形、発泡成形、レーザー溶着成形、押出成形等の方法により、成形加工して得ることができるが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、接着剤のように自身が粘着性を有するものではなく、取り扱いが容易であるため、射出成形にも適用することができる。
【0083】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着した複合成形体としては、熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体に金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材がインサートされたインサート成形体、熱可塑性エラストマー組成物と、オレフィン樹脂又は極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材とを多色成形して得られる複合成形体等が挙げられる。
【実施例】
【0084】
実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0085】
1.熱可塑性スチレン系エラストマーA
〔スチレン系単量体の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
【0086】
〔重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
【0087】
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光株式会社)製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工株式会社製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工株式会社製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/分
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工株式会社製ポリスチレン
【0088】
2.軟化剤B
〔パラフィンオイルの動粘度〕
JIS Z 8803に従って、40℃の温度で測定する。
【0089】
3.熱可塑性ポリエステル系エラストマーC
〔脂肪族ポリエーテルブロックの重量平均分子量(Mw)〕
熱可塑性スチレン系エラストマーAと同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
【0090】
〔D硬さ〕
JIS K 6253で規定される方法に準拠して測定する。
【0091】
〔融点〕
示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、JIS K 7121で規定される方法に準拠して10℃/minで昇温して得られる融解ピークの温度を融点とする。融解ピークが複数表れる場合は、より低い温度で表れる融解ピークを融点とする。
【0092】
4.エポキシ化合物D
〔エポキシ価〕
エポキシ価は、樹脂100gに含まれるエポキシ基のモル数を意味し、JIS K 7236の方法で測定されるエポキシ当量が、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量と規定されていることに基づき、エポキシ価(meq/g)=1000/エポキシ当量で算出する。
【0093】
〔エポキシ化合物1分子当たりに含まれるエポキシ基の平均個数(Fn)〕
1分子の数平均分子量にモノマー組成を掛け、GMAにエポキシ基が1個として算出される。
【0094】
〔(メタ)アクリル酸グリシジル(GMA)の含有量〕
エポキシ化合物Dに、GMA以外にエポキシ基を有する化合物が含まれない場合は、エポキシ価と同じく、JIS K 7236に規定する方法で測定されるエポキシ基の濃度からGMAの含有量を算出する。GMA以外にエポキシ基を有する化合物が含まれる場合は、核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)によって、プロトンNMR測定を行い、GMAの特性基の定量を行うことによってGMAの含有量を決定する。
【0095】
〔スチレン及び/又はスチレン誘導体(スチレン系単量体)の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)によって、プロトンNMR測定を行い、スチレンの特性基の定量を行うことによってスチレン及び/又はスチレン誘導体の含有量を決定する。
【0096】
〔質量平均分子量(Mw)〕
熱可塑性スチレン系エラストマーAと同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
【0097】
5.酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーE1
〔スチレン系単量体の含有量〕
核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
【0098】
〔重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
【0099】
測定装置
・ポンプ:JASCO(日本分光株式会社)製、PU-980
・カラムオーブン:昭和電工株式会社製、AO-50
・検出器:日立製、RI(示差屈折計)検出器 L-3300
・カラム種類:昭和電工株式会社製「K-805L(8.0×300mm)」及び「K-804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K-G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/分
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工株式会社製ポリスチレン
【0100】
〔A硬さ〕
JIS K 6253で規定される方法に準拠して測定する。
【0101】
〔酸変性量〕
変性する前のベース材料と有機酸のブレンド物を0.1mmのスペーサーを用いてプレスしIRを測定し、特徴的なカルボニル(1600〜1900cm-1)の吸収量と有機酸の仕込量から検量線を作成し、酸変性体のプレス板のIR測定(IR測定器:堀場製作所製FT-210)を行い、変性率を決定する。
【0102】
6.酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマーE2
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
JIS K 6922-2に準拠し、190℃、21.2N荷重の試験条件で測定する。
【0103】
〔A硬さ〕
JIS K 6253で規定される方法に準拠して測定する。
【0104】
エポキシ化合物Aの製造例
オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、200℃に保った。
一方、スチレン(St)38質量部、アクリル酸ブチル(BA)8質量部、メタクリル酸グリシジル(GMA)25質量部及びメタクリル酸メチル(MMA)29質量部からなる単量体混合液を、キシレン15質量部、ジターシャリーブチルパーオキサイド0.3質量部と混合し、原料タンクに仕込んだ。一定の供給速度(48g/分、反応器内平均滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に単量体混合液を連続供給し、反応器の内容液質量が約580gで一定になるように反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の反応器内温は、約210℃に保たれた。
反応器内部の温度が安定してから36分経過した後から、抜き出した反応液を減圧度30kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機により連続的に揮発成分除去処理して、揮発成分をほとんど含まない共重合体を回収した。180分かけて約7kgの共重合体(エポキシ化合物A)を回収した。
エポキシ化合物Aの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)と、エポキシ化合物1分子当たりに含まれるエポキシ基の平均個数(Fn)を表1に示す。
【0105】
エポキシ化合物Bの製造例
表1に示す組成からなる単量体混合液を使用し、ジターシャリーブチルパーオキサイドの使用量を0.5質量部に変更した以外は、エポキシ化合物Aと同じ方法により、エポキシ化合物Bを得た。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例1〜19及び比較例1〜8
(1) 熱可塑性エラストマー組成物(ペレット)の作製
パラフィンオイル以外の表2、3に示す材料をドライブレンドし、これにパラフィンオイルを含浸させて混合物を作製した。その後、混合物を下記の条件で、押出機で溶融混練して、ストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって、直径3mm程度、厚さ3mm程度に切断し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。
【0108】
〔溶融混練条件〕
押出機:KZW32TW-60MG-NH(商品名、(株)テクノベル製)
シリンダー温度:180〜220℃
スクリュー回転数:300r/min
【0109】
実施例及び比較例で使用した表2、3に記載の原料の詳細は以下の通り。
【0110】
〔熱可塑性スチレン系エラストマー〕
SEBS-A:G1651(クレイトンポリマー社製)、スチレン系単量体の含有量33質量%、Mw29万
SEBS-B:G1641(クレイトンポリマー社製)、スチレン系単量体の含有量32質量%、Mw24万
SEEPS:SEPTON4055(クラレ社製)、スチレン系単量体の含有量30質量%、Mw30万
【0111】
〔軟化剤〕
パラフィンオイル:PW90(出光興産社製)、動粘度(40℃)95.54mm2/s
【0112】
〔熱可塑性ポリエステル系エラストマー〕
TPEE-A(ポリエステルポリエーテルブロックコポリマー):ペルプレンP-30B(東洋紡社製)、テトラメチレングリコール・ポリブチレングリコール・テレフタル酸重縮合物、D硬さ29、融点160℃
TPEE-B(ポリエステルポリエーテルブロックコポリマー):ペルプレンP-75M(東洋紡社製)、テレフタル酸・イソフタル酸・テトラメチレングリコール・ポリテトラメチレングリコール共重合体、D硬さ39、融点155℃
【0113】
〔エポキシ化合物〕
エポキシ化合物A:合成物、エポキシ価1.8meq/g、St-MMA-GMA共重合体、GMA含有量25質量%、スチレン系単量体含有量38質量%、Fn5.1、Mw10,800
エポキシ化合物B:合成物、エポキシ価1.4meq/g、St-GMA共重合体、GMA含有量20質量%、スチレン系単量体含有量74質量%、Fn4.5、Mw9800
エポキシ化合物C:マープルーフG-0250SP(日油社製)、エポキシ価0.32meq/g、St-GMA共重合体、GMA含有量50質量%、スチレン系単量体含有量50質量%、Mw2万
エポキシ化合物D:マープルーフG-1010S(日油社製)、エポキシ価0.06meq/g、St-GMA共重合体、GMA含有量10質量%、スチレン系単量体含有量90質量%、Mw10万
エポキシ化合物E:ボンドファーストE(住友化学社製)、エポキシ価0.08meq/g、Et-GMA共重合体、GMA含有量12質量%、Mw26万、MFR(190℃×21.2N)3g/10min
【0114】
〔相溶化剤〕
酸変性SEBS:FG1901X(クレイトンポリマー社製)、無水マレイン酸変性SEBS、スチレン系単量体含有量30質量%、A硬さ71、無水マレイン酸含有量1.7質量%
酸変性エチレン-α-オレフィン共重合体:アンプリファイGR216(ダウケミカル社製)、無水マレイン酸変性エチレン−α-オレフィン共重合体、A硬さ77、無水マレイン酸含有量0.5〜1.0質量%
TPS(スチレン系エラストマー)/TPU(ウレタン系エラストマー)グラフトポリマー:クラミロンTU-S5265(クラレ社製)
【0115】
〔その他〕
PP(ポリプロピレン):PX600N(サンアロマー社製)、曲げ弾性率1650MPa
酸変性PP:ユーメックス1010(三洋化成工業社製)、マレイン酸変性、Mw3万、酸価52
【0116】
(2) 熱可塑性エラストマー組成物の成形体の作製
ペレットを、下記の条件で射出成形し、厚さ2mm×幅125mm×長さ125mmのプレートを作製した。
【0117】
〔射出成形条件〕
射出成形機:100MSIII-10E(商品名、三菱重工業(株)製)
射出成形温度:200℃
射出圧力:30%
射出時間:3sec
金型温度:40℃
【0118】
〔評価1〕
実施例1〜19、比較例1〜8のそれぞれについて、下記の評価を行った。なお、結果を表2、3に示す。
【0119】
(1) A硬さ
厚さ2mmの成形体試料を3枚重ね(合計6mm)としたものについて、JIS K 6253に準拠した測定時間1秒のA硬さ(試験開始から1秒後の値)を測定した。測定は温度23℃、湿度50%の室内で1日状態調節の後、実施した。
【0120】
(2) 熱融着性
厚さ4mm×幅25mm×長さ125mmの金型内に下記の極性樹脂をインサートし、下記条件で、実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、短冊状の溶着試験片を作製した。
【0121】
〔インサート材(極性樹脂)〕
(1) サイズ:厚さ2mm×幅25mm×長さ120mm
(2) 種類
PC(ポリカーボネート):三菱エンジニアリングプラスチック社製、ユーピロンH-3000
【0122】
〔射出成形条件〕
射出成形機:三菱重工業(株)製、100MSIII-10E
射出成形温度:240℃
射出圧力:30%
射出時間:2sec
金型温度:40℃
【0123】
JIS K 6854に準拠した方法により、上記溶着試験片を用い、雰囲気温度23℃で熱可塑性エラストマー層と極性樹脂層とを180°方向に50mm/minで引張試験を行い、表皮材層と基材層の剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。
【0124】
◎:剥離強度が140N/25mm以上
○:剥離強度が100N/25mm以上、140N/25mm未満
△:剥離強度が50N/25mm以上、100N/25mm未満
×:剥離強度が50N/25mm未満
【0125】
(3) 耐摩耗性(テーバー摩耗試験)
射出成型したプレート(125mm角プレート)を用い、JIS K 7204に準拠し、23℃、摩耗輪;H-22、回転速度;72r/min、回転回数;1,000回、荷重;1000gで摩耗損失量(mg)を測定した。
【0126】
◎:摩耗損失量が300mg未満
○:摩耗損失量が300mg以上、400mg未満
△:摩耗損失量が400mg以上、500mg未満
×:摩耗損失量が500mg以上、600mg未満
××:摩耗損失量が600mg以上
【0127】
(4) メルトマスフローレイト(MFR)
ASTM D1238に準拠して230℃×21.2Nの条件で行った。
【0128】
(5) 成形性
成形性は、射出成形にて極性樹脂との熱融着性用試験片作製時のヒケ・フローマークや離型性問題について評価した。
○:問題無し、△:いずれかの不具合が若干発生、×:いずれかの不具合が発生
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
以上の結果より、実施例1〜19の熱可塑性エラストマー組成物は、比較例1〜8と対比して、柔軟性、極性樹脂との熱融着性、耐摩耗性及び成形性のいずれも良好であり、射出成形による成形材料としても有用であることが分かる。
【0132】
〔評価2〕
実施例1及び比較例5について、インサート材として、PC(ポリカーボネート)の代わりに、PMMA(ポリメチルメタクリレート)又はABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)を用い、評価1と同様にして、熱融着性を評価した。結果をPCの結果と合わせて表4に示す。
【0133】
〔インサート材(極性樹脂)〕
(1) サイズ:厚さ2mm×幅25mm×長さ120mm
(2) 種類
PMMA(ポリメチルメタクリレート):旭化成ケミカルズ社製、デルペット80N
ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂):ダイセルポリマー社製、ゼビアンV500SF
【0134】
【表4】
【0135】
実施例1において、極性樹脂として、PC(ポリカーボネート)の代わりに、PMMA(ポリメチルメタクリレート)及びABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)を用いた熱融着性試験の結果は、PCよりも若干低い数値を示している。しかしながら、比較例5の結果と比較すると、実施例1の熱融着性(剥離強度)/比較例5の熱融着性(剥離強度)の比率は、PCよりもPMMAとABS樹脂の方が高く、実施例1の熱可塑性エラストマー組成物は、むしろPMMAやABS樹脂に対して、より優れた熱融着性を示していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車、電子材料、家電、電気機器、医療用具、包装資材、文具・雑貨用品等の各種成形品に有用であり、さらにはグリップ、チューブ、パッキン、ガスケット、クッション体、フィルム、シート等の各種部材に用いられる。