特許第6062318号(P6062318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062318
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】特装車
(51)【国際特許分類】
   B65F 3/00 20060101AFI20170106BHJP
   E01H 1/08 20060101ALI20170106BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20170106BHJP
   E01H 1/10 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
   B65F3/00 L
   E01H1/08
   B60P3/00 Q
   E01H1/10
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-102287(P2013-102287)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-221686(P2014-221686A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2015年10月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年12月15日 千葉日野自動車株式会社に販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】巻幡 晃一
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 聡
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−259537(JP,A)
【文献】 特開2012−201481(JP,A)
【文献】 特開2011−225311(JP,A)
【文献】 特開2010−202344(JP,A)
【文献】 特開2007−191289(JP,A)
【文献】 特開2012−77548(JP,A)
【文献】 特開2012−125685(JP,A)
【文献】 特開2006−130352(JP,A)
【文献】 特開平10−207367(JP,A)
【文献】 実開昭62−168006(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00−3/28
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行用のエンジンと、
前記エンジンに付設されるエンジン制御ユニットと、
前記エンジンの駆動力にて動作される作業装置と、
前記作業装置の動作中に前記エンジン制御ユニットへ回転制御信号を送るアクセル制御部であり、前記エンジンの回転数を手動で調整可能な調整部を有するアクセル制御部と、
前記作業装置をシーケンス制御させるシーケンス制御部であり、前記作業装置の作動状態を表示するための状態表示部と、前記作業装置の作動モードを切り換えるためのモード切換スイッチ部とを有するシーケンス制御部と、
前記アクセル制御部と前記シーケンス制御部とが共に収納され、前記アクセル制御部に不正操作を防ぐためのセキュリティラベルが前記調整部を覆うように貼付された制御ボックスと
を備えた特装車。
【請求項2】
前記アクセル制御部は、電子基板と、前記電子基板に取り付けられるとともに前記調整部を有するボリュームとを有し、
前記セキュリティラベルは、前記電子基板および前記ボリュームの境界部と、前記調整部とを覆うように貼付されたものである
請求項記載の特装車。
【請求項3】
前記制御ボックスは、運転室外の車台横に配設され、車両外側方側にメンテナンス用扉を備えたものである請求項1または2に記載の特装車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集装置や高圧洗浄装置等の作業装置を搭載した特装車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車台に塵芥収集装置や高圧洗浄装置等の作業装置を搭載する、いわゆる特装車は、動力取出装置(PTO)を介して車両走行エンジンの駆動力を作業装置に伝達するようになっている。エンジンに付設されたエンジン制御ユニット(ECU)には、作業装置の動作中、作業装置のアクセル制御部から回転制御信号が送られるようになっている。このことで、作業装置の動作中にエンジン回転数が所定値に保たれるようになっている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
また、作業装置は、シーケンス制御部としてのPLC(プログラマブルロジックコントローラ)基板を有し、このPLC基板からの制御により、作業装置の各アクチュエータに所定の動作を行わせるようになっている。PLC基板はPLCボックスに納められ、このPLCボックスはキャブ(運転室)内に配置されている。PLCボックスはメンテナンス時にメンテナンス業者が内部をチェックできるようになっている。
【0004】
一方、前述のアクセル制御部は、キャブ内のPLCボックスとは別にキャブ外に配置されている。アクセル制御部には作業装置動作中のエンジン回転数を調整するためのボリュームが設けられており、このボリュームを調整することで作業装置の動作速度を変更できるようになっている。しかしながら、例えば塵芥収集車では、法律により積込1サイクルの最短時間が規定されているため、ユーザやメンテナンス業者等(以下、「ユーザ等」と称す。)が自由に作業装置の動作速度を変更できるのは好ましくない。そこで、従来、特装車の製造メーカが工場出荷前にボリュームを調整した後、専用のアクセル制御ボックスにアクセル制御部を納めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−77548号公報
【特許文献2】特開2012−125685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のようにキャブ内にPLCボックスを配置する構造では、キャブ外の作業装置側から配線を引いてこなければならず、架装性が悪い。また、仮にPLCボックスをキャブ外に配置しようとしても、上述のようにアクセル制御ボックスはユーザ等が作業装置の動作速度を不正に調整できないように専用のものとなっているため、アクセル制御ボックスとPLCボックスとを一体化することができず、架装性の向上が限定されている。
【0007】
そこで、本発明においては、作業装置の動作速度を不正に調整することを抑制するとともに架装性に優れた特装車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特装車は、車両走行用のエンジンと、エンジンに付設されるエンジン制御ユニットと、エンジンの駆動力にて動作される作業装置と、作業装置の動作中にエンジン制御ユニットへ回転制御信号を送るアクセル制御部と、作業装置をシーケンス制御させるシーケンス制御部と、アクセル制御部とシーケンス制御部とが共に収納され、アクセル制御部に不正操作を防ぐためのセキュリティラベルが貼付された制御ボックスとを備えたものである。
【0009】
本発明の特装車によれば、アクセル制御部とシーケンス制御部とが共に制御ボックス内に収納されるため架装性に優れ、かつ、アクセル制御部にはセキュリティラベルが貼付されているため、不正操作が抑制される。
【0010】
ここで、アクセル制御部は、エンジンの回転数を手動で調整可能な調整部を有し、セキュリティラベルは、調整部を覆うように貼付されたものであることが望ましい。これにより、ユーザ等が調整部を使ってエンジンの回転数を調整することを確実に抑制できる。
【0011】
また、アクセル制御部は、電子基板と、電子基板に取り付けられるとともに調整部を有するボリュームとを有し、セキュリティラベルは、電子基板およびボリュームの境界部と、調整部とを覆うように貼付されたものであることが望ましい。これにより、電子基板からボリュームを取り外して新しいものと交換する場合にも、セキュリティラベルを剥がす必要があり、確実に証拠を残すことができる。
【0012】
また、シーケンス制御部は、作業装置の作動状態を表示するための状態表示部と、作業装置の作動モードを切り換えるためのモード切換スイッチ部とを有することが望ましい。これにより、状態表示部の確認およびモード切換スイッチの操作を行う際、アクセル制御部にはセキュリティラベルが貼付されているため、誤ってアクセル制御部を操作することが抑制される。
【0013】
また、制御ボックスは、運転室外の車台横に配設され、車両外側方側にメンテナンス用扉を備えたものであることが望ましい。これにより、作業装置の操作装置から制御ボックスまでの配線作業が従来よりも楽になり、架装性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
(1)車両走行用のエンジンと、エンジンに付設されるエンジン制御ユニットと、エンジンの駆動力にて動作される作業装置と、作業装置の動作中にエンジン制御ユニットへ回転制御信号を送るアクセル制御部と、作業装置をシーケンス制御させるシーケンス制御部と、アクセル制御部とシーケンス制御部とが共に収納され、アクセル制御部に不正操作を防ぐためのセキュリティラベルが貼付された制御ボックスとを備えたことにより、架装性に優れ、作業装置の動作速度が不正に調整されることを抑制することが可能な特装車が得られる。
【0015】
(2)アクセル制御部が、エンジンの回転数を手動で調整可能な調整部を有し、セキュリティラベルが、調整部を覆うように貼付されたものであることにより、作業装置の動作速度が不正に調整されるのを確実に抑制することが可能となる。
【0016】
(3)アクセル制御部が、電子基板と、電子基板に取り付けられるとともに調整部を有するボリュームとを有し、セキュリティラベルが、電子基板およびボリュームの境界部と、調整部とを覆うように貼付されたものであることにより、電子基板からボリュームを取り外して新しいものと交換する場合にも、セキュリティラベルを剥がす必要があり、確実に証拠を残すことができるため、作業装置の動作速度が不正に調整されるのを抑制することが可能となる。
【0017】
(4)シーケンス制御部が、作業装置の作動状態を表示するための状態表示部と、作業装置の作動モードを切り換えるためのモード切換スイッチ部とを有することにより、状態表示部の確認およびモード切換スイッチの操作を行う際に誤ってアクセル制御部を操作することが抑制され、メンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0018】
(5)制御ボックスが、運転室外の車台横に配設され、車両外側方側にメンテナンス用扉を備えたものであることにより、架装性が向上するとともに、従来のようにキャブ内に乗り込まなくてもシーケンス制御部をチェックできるので、メンテナンス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における特装車の側面図である。
図2】制御ボックス内の配置構成図である。
図3】アクセル制御部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本発明の実施の形態における特装車としての塵芥収集車1は、車台2上に、車両走行用のエンジン3と、運転室(キャブ)4と、塵芥収容箱5とが搭載されたものである。エンジン3には、エンジン3の回転数を調整する電子ガバナ3aと、電子ガバナ3aに制御電圧を送出することによりエンジン3を電子制御するエンジン制御ユニット(ECU)3bとが付設されている。
【0021】
塵芥収容箱5の後方開口部5aには塵芥投入箱6が連設されている。塵芥投入箱6の後部には、塵芥を投入する後方投入口6aが開口されている。この後方投入口6aの左側方には、塵芥積込装置7の操作装置8が設けられている。塵芥投入箱6の内部には動力取出装置(PTO)(図示せず。)を介してエンジン3の駆動力にて動作される作業装置としての塵芥積込装置7が装備されている。塵芥積込装置7は、塵芥投入箱6内に後方投入口6aを通じて投入された塵芥を圧縮して、塵芥収容箱5内に積み込むためのものである。また、運転室4外の車台2横には制御ボックス10が配設されている。制御ボックス10の車両外側方側には、メンテナンス用扉11が開閉可能に備えられている。
【0022】
図2に示すように、制御ボックス10には、操作装置8が操作された際に塵芥積込装置7に行わせる各動作および順序のプログラムを実行してシーケンス制御させるシーケンス制御部20と、塵芥積込装置7の動作中にエンジン回転数が所定値に保たれるようにエンジン制御ユニット3bへ回転制御信号を送るアクセル制御部30とが共に収納されている。アクセル制御部30には、不正操作を防ぐためのセキュリティラベル31が貼付されている。
【0023】
シーケンス制御部20は、リミットスイッチ等の入力機器の信号のオン/オフ状態に応じてソレノイドバルブ等の出力機器のオン/オフを制御することにより、塵芥積込装置7に一連の動作をさせるシーケンス制御を行うものである。シーケンス制御部20は、塵芥積込装置7の作動状態を表示(本実施形態においては、入力機器および出力機器の入出力状態をLED等の点灯または消灯により表示)するための状態表示部21と、塵芥積込装置7の作動モード(プログラム書き込みまたは動作)を切り換えるためのモード切換スイッチ部22とを有する。
【0024】
アクセル制御部30は、図3に示すように、電子基板32と、エンジン回転数を手動で調整可能な調整部33を有するボリューム(可変抵抗器)としてのトリマーボリューム(半固定抵抗器)34とを有する。トリマーボリューム34は電子基板32に取り付けられており、調整部33を回転させることでアイドリング時および塵芥積込装置7の作動時にアクセル制御部30からエンジン制御ユニット3bへ送られる回転制御信号(電圧)を調整することが可能となっている。
【0025】
セキュリティラベル31は、少なくとも調整部33を覆うように貼付されたものであり、本実施形態においては電子基板32およびトリマーボリューム34の境界部35と、調整部33とを覆うように貼付されている。セキュリティラベル31は、上から順に表面基材、粘着剤および剥離材からなる。表面基材は非常にもろいぜい質性を有するため、剥離材を剥離して表面基材が粘着剤により一旦貼付された後は、セキュリティラベル31を剥がそうとすると表面基材が破壊され、綺麗には剥がれないようになっており、セキュリティラベル31を剥がそうとしたことが一目で分かるようになっている。
【0026】
上記構成の塵芥収集車1では、アクセル制御部30とシーケンス制御部20とが共に制御ボックス10内に収納されるため架装性に優れており、かつ、アクセル制御部30の調整部33にはセキュリティラベル31が貼付されているため、セキュリティラベル31を剥がそうとしたことが一目で分かり、ユーザ等が調整部33を使ってエンジンの回転数を調整することを確実に抑制することが可能である。
【0027】
特に、本実施形態におけるアクセル制御部30は、電子基板32と、電子基板32に取り付けられるとともに調整部33を有するトリマーボリューム34とを有し、セキュリティラベル31は、電子基板32およびトリマーボリューム34の境界部35と、調整部33とを覆うように貼付されたものであるため、電子基板32からトリマーボリューム34を取り外して新しいものと交換する場合にも、セキュリティラベル31を剥がす必要があり、確実に証拠を残すことができる。
【0028】
また、シーケンス制御部20は、塵芥積込装置7の作動状態を表示するための状態表示部21と、塵芥積込装置7の作動モードを切り換えるためのモード切換スイッチ部22とを、アクセル制御部30と同じ制御ボックス10内に有しており、メンテナンスを容易に行うことが可能である。このとき、状態表示部21の確認およびモード切換スイッチ22の操作を行う際、アクセル制御部30にはセキュリティラベル31が貼付されているため、誤ってアクセル制御部30を操作することが抑制される。
【0029】
また、制御ボックス10は、運転室4外の車台2横に配設され、車両外側方側にメンテナンス用扉を備えているため、塵芥積込装置7の操作装置8から制御ボックス10までの配線作業が従来よりも楽になり、架装性が向上するとともに、従来のように運転台4内に乗り込まなくてもシーケンス制御部20をチェックできるので、メンテナンス性に優れている。
【0030】
なお、上記実施形態においては、特装車として塵芥収集車を例にとって説明したが、本発明は高圧洗浄装置等のその他の作業装置を搭載した特装車にも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、塵芥収集装置や高圧洗浄装置等の作業装置を搭載した特装車として有用であり、特に、作業装置の動作速度を不正に調整することを抑制するとともに架装性に優れた特装車として好適である。
【符号の説明】
【0032】
1 塵芥収集車
2 車台
3 エンジン
3a 電子ガバナ
3b エンジン制御ユニット
4 運転室
5 塵芥収容箱
5a 後方開口部
6 塵芥投入箱
7 塵芥積込装置
10 制御ボックス
11 メンテナンス用扉
20 シーケンス制御部
21 状態表示部
22 モード切換スイッチ部
30 アクセル制御部
31 セキュリティラベル
32 電子基板
33 調整部
34 トリマーボリューム
35 境界部
図1
図2
図3