特許第6062325号(P6062325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DMG森精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6062325-工作機械の切屑処理装置 図000002
  • 特許6062325-工作機械の切屑処理装置 図000003
  • 特許6062325-工作機械の切屑処理装置 図000004
  • 特許6062325-工作機械の切屑処理装置 図000005
  • 特許6062325-工作機械の切屑処理装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062325
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】工作機械の切屑処理装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   B23Q11/00 U
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-133764(P2013-133764)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-9282(P2015-9282A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】松山 知義
(72)【発明者】
【氏名】角谷 政英
(72)【発明者】
【氏名】北出 雄平
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉林 拓也
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−247523(JP,A)
【文献】 特開平11−048080(JP,A)
【文献】 特開平07−075933(JP,A)
【文献】 特開2002−361539(JP,A)
【文献】 特開2000−042859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切屑及び切削液が落下貯留される貯留タンクを有する装置筐体と、
該貯留タンクの内,外を周回移動する一対の無端状の駆動部材及び該両駆動部材間に移動方向に間隔を開けて架設された掻き板を有し、前記切屑を貯留タンク内から前記装置筐体の傾斜排出面に沿って貯留タンク外に排出するチップコンベアと、
前記傾斜排出面の、前記貯留タンクの液面より上方部分に設けられ、前記切屑に付着している切削液を分離回収する液切り部と
を備えた工作機械の切屑処理装置において、
前記液切り部は、前記傾斜排出面に続いて設けられ、該傾斜排出面から外方に離れるほど低くなる傾斜角度でもって配置され、第1の前記掻き板により搬送された第1の切屑塊が移載される複数段の載置部を有し、下側の段の載置部ほど前記傾斜角度が大きく設定されており、
各段の載置部上の前記第1の切屑塊は、前記第1の掻き板に続く少なくとも1つの第2の掻き板により搬送された第2の切屑塊に押されて落下するまで前記各段の載置部上を滞留しつつ順次移動し、該滞留している間に前記切屑に付着している切削液が分離回収される
ことを特徴とする工作機械の切屑処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械の切屑処理装置において、
前記液切り部は、前記各段の載置部の下流端に続いて該各段の載置部の下方に位置するように折り返された折り返し部を有し、前記分離された切削液は前記折り返し部を伝って前記傾斜排出面側に移動する
ことを特徴とする工作機械の切屑処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の工作機械の切屑処理装置において、
前記液切り部は、前記載置部及び折り返し部を、階段状をなすように複数組備えており、前記切屑塊は、前記複数の載置部上を滞留しつつ順次移動する
ことを特徴とする工作機械の切屑処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの機械加工により発生した切屑を機外に排出するようにした工作機械の切屑処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の切屑処理装置では、従来からワークの加工部に供給された切削液(クーラント)が切屑とともに機外に排出されるという問題があり、切削液の機外への排出量の低減を図ることが要請されている。例えば、特許文献1では、コンベアにより搬送された切屑を、垂直面に対して約30度の傾斜をなす傾斜面部上に落下させ、この落下時の衝突によって前記切屑に付着した切削液を分離させることで回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3359014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来装置のように、コンベアから切屑を落下させて傾斜面部に衝突させるだけでは、切削液の分離が十分に行われず、切削液が切屑に残ったまま排出されるおそれがあり、切削液の回収率が低いという問題がある。特に切屑が絡み合った塊状の場合には、切削液の付着量が多く、かつ分離しにくいため、この種の切屑が発生する工作機械の場合は、機外への排出量をより一層低減できるように切削液分離構造を改善することが要請されている。
【0005】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、切屑に付着した切削液の分離回収を確実に行うことにより機外への排出量を低減できる工作機械の切屑処理装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、切屑及び切削液が落下貯留される貯留タンクを有する装置筐体と、該貯留タンクの内,外を周回移動する一対の無端状の駆動部材及び該両駆動部材間に移動方向に間隔を開けて架設された掻き板を有し、前記切屑を貯留タンク内から前記装置筐体の傾斜排出面に沿って貯留タンク外に排出するチップコンベアと、前記傾斜排出面の、前記貯留タンクの液面より上方部分に設けられ、前記切屑に付着している切削液を分離回収する液切り部とを備えた工作機械の切屑処理装置において、
前記液切り部は、前記傾斜排出面に続いて設けられ、該傾斜排出面から外方に離れるほど低くなる傾斜角度でもって配置され、第1の前記掻き板により搬送された第1の切屑塊が移載される複数段の載置部を有し、下側の段の載置部ほど前記傾斜角度が大きく設定されており、
各段の載置部上の前記第1の切屑塊は、前記第1の掻き板に続く少なくとも1つの第2の掻き板により搬送された第2の切屑塊に押されて落下するまで前記各段の載置部上を滞留しつつ順次移動し、該滞留している間に前記切屑に付着している切削液が分離回収されることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の工作機械の切屑処理装置において、
前記液切り部は、前記各段の載置部の下流端に続いて該各段の載置部の下方に位置するように折り返された折り返し部を有し、前記分離された切削液は前記折り返し部を伝って前記傾斜排出面側に移動することを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の工作機械の切屑処理装置において、
前記液切り部は、前記載置部及び折り返し部を、階段状をなすよう複数組配設した構造を有し、前記切屑塊は、前記階段状の載置部上を滞留しつつ順次移動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る切屑処理装置では、液切り部を、傾斜排出面に続いて外方に離れるほど低くなる載置部を有するものとし、該載置部上に第1の掻き板により搬送された第1の切屑塊が、前記第1の掻き板に続く少なくとも1つの第2の掻き板により搬送された第2の切屑塊に押されて落下するまで前記載置部上に滞留するようにしたので、前記載置部上に滞留している間に切屑塊に付着している切削液が分離されることとなり、当然前記滞留している時間が長くなるほど切屑塊に付着している切削液が多く分離回収される。このようにして切削液の回収率を高めることができる。
【0010】
請求項2の発明では、前記載置部に続いて下方に折り返された折り返し部を形成したので、分離された切削液はその表面張力により前記折り返し部を伝って傾斜排出面側に流下し、回収される。このように簡単な構造により、分離された切削液を自動的に機内側に回収することができる。
【0011】
請求項3の発明では、前記載置部及び折り返し部を、階段状をなすように複数組設け、切屑塊が各載置部上に滞留しつつ順次移動するようにしたので、切削塊の載置部上での合計滞留時間を大幅に長くすることができ、切削液をより確実に分離回収することができ、切削液の回収量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例による工作機械の切屑処理装置の全体斜視図である。
図2】前記切屑処理装置の断面側面図である。
図3】前記切屑処理装置のチップコンベアの断面側面図である。
図4】前記切屑処理装置の濾過装置の断面図である。
図5】前記切屑処理装置の液切り部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0014】
図1ないし図5は、本発明の実施例による工作機械の切屑処理装置を説明するための図である。本実施例において、前後,左右と記す場合は、機械正面から見た状態での前後,左右を意味する。
【0015】
図において、1は本実施例の切屑処理装置2を備えた工作機械の一例としての横型マシニングセンタを示している(図2参照)。
【0016】
この横型マシニングセンタ1は、機械正面Aから見て、ベッド1aの後側に配設されたコラム1bと、該コラム1bに搭載された主軸装置1cと、前記ベッド1aの中央部に配設された加工テーブル1dとを有し、該加工テーブル1dに載置されたワークWに、前記主軸装置1cに装着された刃具Tにより所定の切削加工を施すように構成されている。
【0017】
前記ベッド1aの加工テーブル1dの下方には、前記ワークWの切削加工により発生した切屑a及び前記主軸装置1cから刃具Tに供給された切削液(クーラント)bを回収する回収凹部1eが形成されている。
【0018】
前記切屑処理装置2は、前記回収凹部1eから落下した切屑a及び切削液bを貯留し、該切屑aを切削液bから分離,除去しつつ機外のチップバケット3に排出するとともに、前記切削液bを濾過して前記主軸装置1cに循環供給するように構成されている。
【0019】
前記切屑処理装置2は、主として、前記切屑a及び切削液bが落下貯留される貯留タンク19を有する装置筐体5と、該貯留タンク19内を通るように反時計回り(矢印c方向)に周回移動するチップコンベア6と、前記貯留タンク19内に配設された濾過装置7とを備えている。
【0020】
前記装置筐体5は、機械正面Aから見て、前記貯留タンク19の後部を囲むように配設された1次クリーン槽10及び2次クリーン槽11を有する。貯留タンク19から1次クリーン槽10に移送された切削液は、サイクロンフィルタ用ポンプ12を介してサイクロンフィルタ(不図示)に移送され、該サイクロンフィルタは切削液から微粒子状の切屑を分離させ、該切屑が分離された切削液は、泡除去槽13に移送されて泡が除去された後、2次クリーン槽11に移送され、ここから主軸クーラント用ポンプ14により前記主軸装置1cに再び供給される。一方、1次クリーン槽10に移送された切削液はシャワー用ポンプ5により加工個所等に供給される。
【0021】
前記貯留タンク19は、前記ベッド1a内の回収凹部1eの下方に配設されており、また該貯留タンク19の後端には搬送ダクト20が後斜め上方に起立するように形成されている。さらにまた該搬送ダクト20の上端部には排出ダクト21が下方に屈曲して延びるように形成されている。前記排出ダクト21の下方に前記チップバケット3が配置されている。
【0022】
前記貯留タンク19は、矩形箱状をなしており、略平坦面をなす底壁部19aと、該底壁部19aの周縁に立設された側壁部19bと、該側壁部19bの上端部に架設された天壁部19cとを有する。この天壁部19cの手前側には開口19dが形成され、該開口19dに前記回収凹部1eが連通接続されている。
【0023】
前記搬送ダクト20は、前記貯留タンク19の底壁部19a,側壁部19b及び天壁部19cに続いて斜め上方に延びる後壁部20a,側壁部20b及び前壁部20cを有する。
【0024】
前記チップコンベア6は、前記搬送ダクト20と排出ダクト21との境界部分に配置された左,右一対の駆動スプロケット33,33と、前記貯留タンク19内の手前側端部に配置された左,右一対の従動スプロケット34,34と、該左,右の従動スプロケット34,34と左,右の駆動スプロケット33,33にそれぞれ巻回された左,右の無端状のコンベアチェーン(駆動部材)35,35と、該左,右のコンベアチェーン35,35間に移動方向cに所定間隔を空けて架け渡して固定された多数の掻き板36とを有する。
【0025】
前記左,右の駆動スプロケット33は、該両スプロケット33,33が固定された駆動軸33aを介して駆動モータ37(図1参照)により回転駆動される。
【0026】
また前記装置筐体5には、前記駆動スプロケット33の近傍に位置するようにリミットスイッチ27が配設されている。このリミットスイッチ27は、前記掻き板36が通過する際に該掻き板36に回動駆動されると共に作動し、該掻き板36の通過タイミングを検知するようになっている。
【0027】
前記左,右のコンベアチェーン35,35は、移動方向cと直交する横方向への移動が拘束されたSローラタイプのものであり、適所に配置された各案内部材38により前記貯留タンク19及び搬送ダクト20に沿って移動するようにガイドされている。
【0028】
前記各掻き板36は、板金製のものであり、横断面大略L字形状のバケット状に形成された掻き板本体40と、該掻き板本体40の左,右側端面に固定された左,右側板部と41,41とを有し、貯留タンク19の底部に沈殿している切屑aを掻き出すのに十分な剛性を有するように構成されている。
【0029】
前記各掻き板36には、スクレーパ50が取り付けられている。このスクレーパ50は、弾性変形可能なばね鋼からなる薄板で構成されており、前記掻き板本体40に固定されている。
【0030】
前記各掻き板36は、左,右のコンベアチェーン35に支持部材43を介して配設された回転軸44,44回りに回転可能に、かつその重心Gが該回転軸44よりコンベアチェーン35の移動方向cの前側に位置するように支持されている。また前記支持部材43の下方には帯板状のストッパ板45が左,右のコンベアチェーン35,35に掛け渡して配設されている。
【0031】
前記掻き板36は、前記貯留タンク19の上部を移動する際には、左,右側板部41の係止部41cが前記ストッパ板45に当接すると共に、ガイド部材61に摺接することにより、前記スクレーパ50が前記濾過装置7の後述するフィルタ本体23の下面を掻きながら移動する上向き姿勢Dに保持される。また前記掻き板36は、前記貯留タンク19の下部に移動する際に、貯留タンク19の底部に設けられたガイド部材61により時計回りに回動されると共に、前記左,右側板部41の後面部41bが前記ストッパ板45に当接することにより、前記掻き板本体40の先端部40aが貯留タンク19の底壁部19aを掻きながら移動する下向き姿勢Eに保持される。
【0032】
前記濾過装置7は、前記貯留タンク19の後部の液面B付近に配置され、前記切削液が下端開口22aから流入するフィルタ槽(フィルタ枠体)22と、該下端開口22aに着脱可能に設けられ、前記流入する切削液から切屑を除去するフィルタ本体23とを有する。
【0033】
前記フィルタ槽22は、矩形箱状をなしており、前記貯留タンク19に固定されている。このフィルタ槽22の底板22bに前記下端開口22aが形成されている。この底板22bの下端開口22aの周縁部には、前記フィルタ本体23との間をシールするシール部材28が配置されている。
【0034】
また前記フィルタ槽22の左側板22cには、前記1次クリーン槽10に連通する連通孔22dが形成されており、前記フィルタ本体23により濾過された切削液は連通孔22dを介して1次クリーン槽10に流入する。その結果、前記貯留タンク19内の切削液の水位は、前記連通孔22の高さに対応する所定水位Bに保持されることとなる。
【0035】
前記フィルタ本体23は、上方及び下方に開口する矩形枠状の枠部材23aと、該枠部材23aの下面に着脱可能にボルト締め固定されたフィルタ板23bとを有する。このフィルタ板23bには、微細孔23cが多数形成されており、該微細孔23cのサイズは、切削液のみの通過を許容し、切屑の通過を阻止するように設定されている。
【0036】
前記枠部材23aの上端開口縁部にはフランジ部が形成されており、該フランジ部の前辺部は係合部23dとなっており、また後辺部は把手部23eとなっている。
【0037】
前記係合部23dは、前記フィルタ槽22の底板22bの前端部に起立形成された係合片22gに前記シール部材28を挟み込むように係合している。また前記把手部23eは、前記底板22bの後端部に取り付けられたブラケット29にボルト30により着脱可能に固定されている。
【0038】
そして前記フィルタ槽22の後板22eには、メンテナンス開口22fが前記フィルタ本体23を取り出し可能の形状,サイズに形成されている。また前記後板22eには、前記メンテナンス開口22fを開閉可能とする蓋板24が複数本のボルト25aにより着脱可能に取り付けられている。
【0039】
前記切屑処理装置2は、前述した貯留タンク19からチップコンベア6により排出される切屑塊に付着している切削液を分離回収する液切り部65を備えている。この液切り部65は、前記貯留タンク19から斜め上方に延びる搬送ダクト20の傾斜排出面20aの上端部に続いて設けられており、詳細には以下の構造を有する。
【0040】
前記搬送ダクト20は、矩形筒状をなし、前記各掻き板36が、該搬送ダクト20の傾斜排出面20aに当接又は近接しつつ上昇することにより、該掻き板36のバケット部42内に回収された切屑塊を上方に押し上げるようになっている。
【0041】
前記搬送ダクト20内の左,右のコンベアチェーン35は、該搬送ダクト20の上端開口20bから前記排出ダクト21内に概略水平をなすよう延びている。前記掻き板36が前記上端開口20bに達するとバケット部42内の切屑塊が液切り部65側に移載開始され、前記コンベアチェーン35の水平部35aに掻き板36が達すると、該掻き板36のバケット部42が下方を向くことにより該バケット部42内の切屑塊aは前記液切り部65に完全に移載される。
【0042】
前記液切り部65は、前記搬送ダクト20の傾斜排出面20aの上端に続いて外方に離れるほど低くなるよう傾斜配置された上段の載置部66と、該上段の載置部66の下方に、該上段載置部66より少し大きく傾斜するように配置された中段の載置部67と、該中段の載置部67の下方に、該中段載置部67よりさらに大きく傾斜するように配置された下段の載置部68とを階段状をなすように配置した構造を有する。
【0043】
前記上段,中段,下段の各載置部66〜68は、これの外端縁に続いて下方に折り返された折り返し部70,71,72を有する。この各折り返し部70〜72は、前記各載置部66〜68の外縁に続いて略垂直下方に屈曲された縦辺部70a〜72aと、該縦辺部70a〜72aの下縁に続いて前記各載置部66〜68の下方に位置するよう内方に屈曲して延びる回収辺部70b〜72bとを有する。
【0044】
前記中段の載置部67は、これの上縁が上段の載置部66の折り返し部70の回収辺部70bの下方に所定隙間をあけて位置するよう配置され、下段の載置部68は、これの上縁が中段の載置部67の回収辺部71bの下方に所定隙間をあけて位置するよう配置されている。また下段の載置部68の折り返し部72には、これの回収辺部72bに続いて下方に延びる下辺部72cが形成されている。
【0045】
前記液切り部65は、前記各載置部66〜68の下方に位置するよう配置され、斜め下方に傾斜する回収通路部73と、該回収通路部73の外端部から内方に傾斜し、前記搬送ダクト20内に連通する戻し通路部74とを有する。
【0046】
前記回収通路部73の外縁部には、切屑塊が落下する部分と切削液が落下する部分とを仕切る堰部73aが形成されており、該堰部73aは前記下段の折り返し部72の下辺部72cの外側に配置されている。
【0047】
前記上段の載置部66の傾斜角度θは、掻き板36から移載された切屑塊が、自重で容易に滑り落ちずに滞留する程度の角度に設定されている。本実施例では、水平面Cに対して20度程度に設定されている。
【0048】
また上述のように、中段の載置部67の傾斜角度は、上段の載置部66の傾斜角度より大きい値に設定され、さらに下段の載置部68の傾斜角度は、中段の載置部67の傾斜角度より大きい値に設定されている。即ち、中段の載置部67は、切屑塊が移載されると該載置部67に滞留しつつ自重で僅かに滑る程度の傾斜角度に設定されており、下段の載置部68は、切屑塊が移載されると該載置部68に滞留しつつ自重で徐々に滑り落ちる傾斜角度に設定されている。
【0049】
これにより前記掻き板36から移載置された切屑塊aは、上段,中段,下段の各載置部66〜68上を順次滞留しつつ移動するようになっている。
【0050】
本実施例装置では、前記切屑塊に付着した切削液は、貯留タンク19から搬送ダクト20内を上昇する際に、その大部分が自重により分離され、その残りの部分が、図5に示すようにして前記液切り部65において分離されることとなる。なお、図5には、第1〜第3の切屑塊a1〜a3が上段の載置部66に移載された状態を示している。
【0051】
まず、第1の掻き板36aにより搬送された第1の切屑塊a1が上段の載置部66に移載されると、該第1の切屑塊a1は、第1の掻き板36aに続く第2の掻き板36bにより搬送された第2の切屑塊a2、あるいは第2の掻き板36bに続く第3の掻き板36cにより順次搬送された第3の切屑塊a3に押されることにより中段の載置部67上に落下するまで上段の載置部66上に滞留する。
【0052】
中段の載置部67に落下した切屑塊aは、該載置部67に滞留しつつ自重でゆっくり滑りつつ、次に落下する切屑塊に押されることにより下段の載置部68上に落下する。下段の載置部67に落下した切屑塊は、該載置部67上を滞留しつつ滑って落下し、排出ダクト21から前述のチップバケット3に回収される。
【0053】
一方、第1〜第3の切屑塊a1〜a3が上段の載置部66に滞留する間に、該切屑塊a1〜a3に付着した切削液bが分離して載置部66から折り返し部70を伝って回収通路部73に流下し、ここから戻し通路部74を介して搬送ダクト20内に戻され、傾斜排出面20aを流下して貯留タンク19に回収される。
【0054】
また中段,下段の載置部67,68に落下した切屑塊bが、前記同様に、各載置部67,68に滞留する間に、切屑塊に残された切削液が分離して折り返し部71,72を伝って回収通路部73に流下し、ここから戻し通路部74を介して搬送ダクト20内に戻される。
【0055】
このように本実施例では、搬送ダクト20の傾斜排出面20aに続いて設けられた液切り部65に、外方に離れるほど低くなるよう傾斜配置された上段の載置部66を設け、上段の載置部66上に第1の掻き板36aにより搬送された第1の切屑塊a1が、第1の掻き板36aに続く少なくとも第2,第3の掻き板36b,36cにより搬送された第2,第3の切屑塊a2,a3に押されることで落下するまで前記載置部66上に留まるようにしたので、該載置部66上に滞留している間に切屑塊a1〜a3に付着している切削液bが分離回収されることとなり、それだけ切削液bの回収率を高めることができ、ひいては機外への排出量を大幅に低減できる。
【0056】
また、本実施例では、前記上段,中段,下段の各載置部66〜68を階段状に設け、切屑塊が各載置部66〜68上を順次滞留しつつ移動するようにしたので、切削塊の各載置部66〜68上での滞留時間を大幅に長くすることができ、それだけ切削液をより確実に分離回収することができ、切削液の回収量を増やすことができる。
【0057】
さらにまた本実施例では、前記上段〜下段の載置部66〜68に、これに続いて下方に折り返された折り返し部70〜72を形成し、該折り返し部70〜72を伝って分離された切削液bを傾斜排出面20a側に回収するようにしたので、分離された切削液bを簡単な構造で、かつ自動的に貯留タンク19に戻すことができる。
【0058】
なお、前記実施例では、載置部を、3段をなすように設けたが、本発明の載置部はこれに限るものではなく、2段、あるいは4段以上設けてもよく、切削液の付着量等に応じて適宜設定することとなる。
【符号の説明】
【0059】
1 工作機械
2 切屑処理装置
5 装置筐体
6 チップコンベア
19 貯留タンク
35 コンベアチェーン(駆動部材)
36 掻き板
36a〜36c 第1〜第3の掻き板
65 液切り部
66〜68 載置部
70〜72 折り返し部
a 切屑
a1〜a3 第1〜第3の切屑塊
b 切削液
c 移動方向
図1
図2
図3
図4
図5