特許第6062328号(P6062328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6062328排水の処理方法および排水の処理装置、並びに制御方法、制御装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062328
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】排水の処理方法および排水の処理装置、並びに制御方法、制御装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20170106BHJP
【FI】
   C02F3/34 101A
   C02F3/34 101B
   C02F3/34 101C
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-144381(P2013-144381)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-16410(P2015-16410A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】古屋 勇治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏幸
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/148949(WO,A1)
【文献】 特開2010−063987(JP,A)
【文献】 特開2008−221160(JP,A)
【文献】 特開2010−221201(JP,A)
【文献】 特開2005−193236(JP,A)
【文献】 特開2012−135717(JP,A)
【文献】 特開昭56−130299(JP,A)
【文献】 特開2003−033787(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0187173(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/133443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内を流れる窒素含有水に対して硝化反応および脱窒反応による生物処理を、前記窒素含有水の流れに従って前記窒素含有水に含まれるアンモニアが硝酸に硝化され、前記窒素含有水の流れ方向に沿って硝酸が脱窒されるように前記窒素含有水に対して前記流れ方向の略全域に亘って気体を供給する排水の処理方法において、
前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測ステップと、
前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度を計測する硝酸濃度計測ステップと、
前記アンモニア濃度計測ステップにおいて計測されたアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係を比較するアンモニア濃度比較ステップ、および前記硝酸濃度計測ステップにおいて計測された硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係を比較する硝酸濃度比較ステップを含む大小関係比較ステップと、
単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率を算出する変化率算出ステップと、
前記アンモニア濃度比較ステップにおいて前記アンモニア濃度計測値が前記アンモニア濃度目標値より大きく、かつ前記硝酸濃度比較ステップにおいて前記硝酸濃度計測値が前記硝酸濃度目標値よりも大きい場合に、前記変化率算出ステップにおいて算出した前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係を比較する変化率比較ステップと、
前記大小関係比較ステップにおける、前記アンモニア濃度計測値と前記アンモニア濃度目標値との大小関係、および前記硝酸濃度計測値と前記硝酸濃度目標値との大小関係と、さらに前記変化率比較ステップを実行した場合に前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係とに基づいて、前記気体の供給量を制御する気体供給量制御ステップと、
を含むことを特徴とする排水の処理方法。
【請求項2】
前記アンモニア濃度変化率が、前記気体の供給量の増加に対するアンモニア濃度の低下の変化率であり、前記硝酸濃度変化率が前記気体の供給量の減少に対する硝酸濃度の低下の変化率であることを特徴とする請求項1に記載の排水の処理方法。
【請求項3】
前記第1の所定位置と前記第2の所定位置との間隔が、前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽における水理学的滞留時間の1/4以下の間隔であることを特徴とする請求項1または2に記載の排水の処理方法。
【請求項4】
反応槽内において窒素含有水の流れに沿って前記窒素含有水が含有するアンモニアが硝酸に硝化され、前記硝酸が脱窒されるように前記窒素含有水の流れ方向の略全域に亘って気体を供給する散気手段と、
前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測手段と、
前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度を計測する硝酸濃度計測手段と、
前記アンモニア濃度計測手段によって計測されたアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係の比較と、前記硝酸濃度計測手段によって計測された硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係の比較と、単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率の算出と、前記アンモニア濃度計測値が前記アンモニア濃度目標値より大きく、かつ前記硝酸濃度計測値が前記硝酸濃度目標値よりも大きい場合に行う前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係の比較と、少なくとも前記アンモニア濃度計測値と前記アンモニア濃度目標値との大小関係および前記硝酸濃度計測値と前記硝酸濃度目標値との大小関係に基づき、さらに前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係を比較した場合には、前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係にも基づいて、前記散気手段からの気体の供給量の制御と、をそれぞれ実行する制御手段と、
を備えることを特徴とする排水の処理装置。
【請求項5】
窒素含有水の流れに従って前記窒素含有水に含まれるアンモニアが硝酸に硝化され、前記硝酸が脱窒されるように前記窒素含有水の流れ方向の略全域に亘って気体を供給する散気手段に対して、
アンモニア濃度計測手段によって計測された前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係の比較と、硝酸濃度計測手段によって計測された前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係の比較と、単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率の算出と、前記アンモニア濃度計測値が前記アンモニア濃度目標値より大きく、かつ前記硝酸濃度計測値が前記硝酸濃度目標値よりも大きい場合に行う前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係の比較とを実行し、
少なくとも前記アンモニア濃度計測値と前記アンモニア濃度目標値との大小関係および前記硝酸濃度計測値と前記硝酸濃度目標値との大小関係、および前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係を比較した場合に前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係に基づいた気体の供給量の増減の制御と、をそれぞれ実行する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項6】
窒素含有水に対する気体供給量を制御する制御装置による制御方法において、
前記窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測ステップと、
前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度を計測する硝酸濃度計測ステップと、
前記アンモニア濃度計測ステップにおいて計測されたアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係を比較するアンモニア濃度比較ステップ、および前記硝酸濃度計測ステップにおいて計測された硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係を比較する硝酸濃度比較ステップを含む大小関係比較ステップと、
単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率を算出する変化率算出ステップと、
前記大小関係比較ステップにおいて、前記アンモニア濃度計測値が前記アンモニア濃度目標値より大きく、かつ前記硝酸濃度計測値が前記硝酸濃度目標値よりも大きい場合に、前記変化率算出ステップにおいて算出した前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係を比較する変化率比較ステップと、
少なくとも前記大小関係比較ステップにおける、前記アンモニア濃度計測値と前記アンモニア濃度目標値との大小関係、および前記硝酸濃度計測値と前記硝酸濃度目標値との大小関係、および前記変化率比較ステップを実行した場合に前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係に基づいて、前記気体供給量の増減を制御する気体供給量制御ステップと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係を比較するアンモニア濃度比較ステップと、
前記窒素含有水の流れ方向に沿った前記反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係を比較する硝酸濃度比較ステップと、
単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率を算出する変化率算出ステップと、
前記アンモニア濃度計測値が前記アンモニア濃度目標値より大きく、かつ前記硝酸濃度計測値が前記硝酸濃度目標値よりも大きい場合に、前記変化率算出ステップにおいて算出した前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係を比較する変化率比較ステップと、
少なくとも前記アンモニア濃度比較ステップにおける前記アンモニア濃度計測値と前記アンモニア濃度目標値との大小関係、および前記硝酸濃度比較ステップにおける前記硝酸濃度計測値と前記硝酸濃度目標値との大小関係、および前記変化率比較ステップを実行した場合における前記アンモニア濃度変化率と前記硝酸濃度変化率との大小関係に基づいて、前記窒素含有水への気体供給量の増減を制御する気体供給量制御ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有水を処理する排水の処理方法および排水の処理装置、並びに制御方法、制御装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生活排水または工場排水等の下水を処理する下水処理システムとして、標準活性汚泥法によるものや散水ろ床法によるものなど、様々な下水処理システムが実用化されている。
【0003】
これらのうちの標準活性汚泥法による下水処理システムにおいては、反応槽内に処理対象の下水を流入させつつ、この反応槽内に存在する多種類の好気性微生物に対して酸素を供給する曝気処理を行う。これによって、反応槽内の下水中に含まれる有機物は、好気性微生物の作用によって分解され、安定した処理水質が得られる。
【0004】
また、反応槽内での曝気処理においては、曝気を行う散気装置に対して、アンモニア制御を行う方法が知られている(特許文献1参照)。アンモニア制御は、反応槽の流出側の末端に設置したアンモニア計を用いて、反応槽の末端におけるアンモニア性窒素(NH4−N)を所定の濃度に維持するように散気装置に空気を供給する制御である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−199116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のアンモニア制御においては、次のような問題があった。すなわち、アンモニア制御においては、窒素を含有する流入水のアンモニア負荷に応じて適切な量の空気を散気装置に供給できる反面、アンモニア制御を行う前段階での脱窒処理の制御を行うことが困難であった。すなわち、アンモニア濃度が目標とする値になった場合でも、被処理水中に硝酸や亜硝酸が残留してしまい、被処理水全体の窒素量を削減することができないという問題があった。本発明者の知見によれば、このような問題は、曝気量が多い場合や流速が速い場合に、反応槽内において嫌気領域や無酸素領域を形成できないことに起因する。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、曝気を行う反応槽における気体供給量を適切に制御することによって、嫌気領域や無酸素領域を形成して脱窒処理を適切に制御することができ、窒素除去率を向上させて処理水質を改善させることができる排水の処理方法および排水の処理装置、並びに制御方法、制御装置、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る排水の処理方法は、 反応槽内を流れる窒素含有水に対して硝化反応および脱窒反応による生物処理を、窒素含有水の流れに従って窒素含有水に含まれるアンモニアが硝酸に硝化され、窒素含有水の流れ方向に沿って硝酸が脱窒されるように窒素含有水に対して流れ方向の略全域に亘って気体を供給する排水の処理方法において、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測ステップと、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度を計測する硝酸濃度計測ステップと、アンモニア濃度計測ステップにおいて計測されたアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係を比較するアンモニア濃度比較ステップ、および硝酸濃度計測ステップにおいて計測された硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係を比較する硝酸濃度比較ステップを含む大小関係比較ステップと、単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率を算出する変化率算出ステップと、アンモニア濃度比較ステップにおいてアンモニア濃度計測値がアンモニア濃度目標値より大きく、かつ硝酸濃度比較ステップにおいて硝酸濃度計測値が硝酸濃度目標値よりも大きい場合に、変化率算出ステップにおいて算出したアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係を比較する変化率比較ステップと、大小関係比較ステップにおける、アンモニア濃度計測値とアンモニア濃度目標値との大小関係、および硝酸濃度計測値と硝酸濃度目標値との大小関係と、さらに変化率比較ステップを実行した場合にアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係とに基づいて、気体の供給量を制御する気体供給量制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る排水の処理方法は、上記の発明において、アンモニア濃度変化率が、気体の供給量の増加に対するアンモニア濃度の低下の変化率であり、硝酸濃度変化率が気体の供給量の減少に対する硝酸濃度の低下の変化率であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る排水の処理方法は、上記の発明において、第1の所定位置と第2の所定位置との間隔が、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽における水理学的滞留時間の1/4以下の間隔であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る排水の処理装置は、反応槽内において窒素含有水の流れに沿って窒素含有水が含有するアンモニアが硝酸に硝化され、硝酸が脱窒されるように窒素含有水の流れ方向の略全域に亘って気体を供給する散気手段と、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測手段と、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度を計測する硝酸濃度計測手段と、アンモニア濃度計測手段によって計測されたアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係の比較と、硝酸濃度計測手段によって計測された硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係の比較と、単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率の算出と、アンモニア濃度計測値がアンモニア濃度目標値より大きく、かつ硝酸濃度計測値が硝酸濃度目標値よりも大きい場合に行うアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係の比較と、少なくともアンモニア濃度計測値とアンモニア濃度目標値との大小関係および硝酸濃度計測値と硝酸濃度目標値との大小関係に基づき、さらにアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係を比較した場合には、アンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係にも基づいて、散気手段からの気体の供給量の制御と、をそれぞれ実行する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る制御装置は、窒素含有水の流れに従って窒素含有水に含まれるアンモニアが硝酸に硝化され、硝酸が脱窒されるように窒素含有水の流れ方向の略全域に亘って気体を供給する散気手段に対して、アンモニア濃度計測手段によって計測されたアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係の比較と、硝酸濃度計測手段によって計測された硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係の比較と、単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率の算出と、アンモニア濃度計測値がアンモニア濃度目標値より大きく、かつ硝酸濃度計測値が硝酸濃度目標値よりも大きい場合に行うアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係の比較とを実行し、少なくともアンモニア濃度計測値とアンモニア濃度目標値との大小関係および硝酸濃度計測値と硝酸濃度目標値との大小関係、およびアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係を比較した場合にアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係に基づいた気体の供給量の増減の制御と、をそれぞれ実行することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る制御方法は、窒素含有水に対する気体供給量を制御する制御装置による制御方法において、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測ステップと、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度を計測する硝酸濃度計測ステップと、アンモニア濃度計測ステップにおいて計測されたアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係を比較するアンモニア濃度比較ステップ、および硝酸濃度計測ステップにおいて計測された硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係を比較する硝酸濃度比較ステップを含む大小関係比較ステップと、単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率を算出する変化率算出ステップと、大小関係比較ステップにおいて、アンモニア濃度計測値がアンモニア濃度目標値より大きく、かつ硝酸濃度計測値が硝酸濃度目標値よりも大きい場合に、変化率算出ステップにおいて算出したアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係を比較する変化率比較ステップと、少なくとも大小関係比較ステップにおける、アンモニア濃度計測値とアンモニア濃度目標値との大小関係、および硝酸濃度計測値と硝酸濃度目標値との大小関係、および変化率比較ステップを実行した場合にアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係に基づいて、気体供給量の増減を制御する気体供給量制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るプログラムは、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第1の所定位置におけるアンモニア濃度計測値とあらかじめ設定されたアンモニア濃度目標値との大小関係を比較するアンモニア濃度比較ステップと、窒素含有水の流れ方向に沿った反応槽の中間位置より下流側の第2の所定位置における硝酸濃度計測値とあらかじめ設定された硝酸濃度目標値との大小関係を比較する硝酸濃度比較ステップと、単位時間あたりのアンモニア濃度変化率および硝酸濃度変化率を算出する変化率算出ステップと、アンモニア濃度計測値がアンモニア濃度目標値より大きく、かつ硝酸濃度計測値が硝酸濃度目標値よりも大きい場合に、変化率算出ステップにおいて算出したアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係を比較する変化率比較ステップと、少なくともアンモニア濃度比較ステップにおけるアンモニア濃度計測値とアンモニア濃度目標値との大小関係、および硝酸濃度比較ステップにおける硝酸濃度計測値と硝酸濃度目標値との大小関係、および変化率比較ステップを実行した場合におけるアンモニア濃度変化率と硝酸濃度変化率との大小関係に基づいて、窒素含有水への気体供給量の増減を制御する気体供給量制御ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る排水の処理方法および排水の処理装置、並びに制御方法、制御装置、およびプログラムによれば、曝気を行う反応槽に流入する窒素含有水の負荷に応じて気体供給量を適切に制御することができ、反応槽に適正量の酸素を供給することができるとともに、脱窒処理を適切に制御することができ、窒素除去率を向上させて処理水質を改善させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態による排水処理装置を示す構成図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による排水処理方法を説明するためのフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施形態による排水処理装置の反応槽の変形例を示す構成図である。
図4図4は、本発明の一実施形態によるアンモニア計および硝酸計の配置における変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明の一実施形態による排水の処理装置について説明する。図1は、この一実施形態による排水の処理装置を示す。
【0019】
(排水処理装置の構成)
まず、この一実施形態による制御装置を含む排水の処理装置の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態による排水処理装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、この一実施形態による排水処理装置は、最初沈殿池1、嫌気槽2、硝化脱窒槽からなる反応槽3、固液分離槽4、および制御装置の一部としての制御部6を備える。
【0020】
最初沈殿池1には、窒素含有原水(以下、原水)が流入する。最初沈殿池1においては、原水を緩やかに流水させて、比較的粒子の小さいゴミなどを沈殿させる。
【0021】
また、嫌気槽2は、被処理水の流れ方向に沿った最初沈殿池1の後段に設けられている。嫌気槽2は、窒素含有水である被処理水が最初沈殿池1を介して流入する槽である。この嫌気槽2は、嫌気環境下でリン蓄積細菌の作用によって被処理水に対し脱リン処理(嫌気処理)を施すための槽である。そして、嫌気槽2においては、嫌気条件下で被処理水中に含まれる有機物が活性汚泥に取り込まれるとともに、活性汚泥中に含まれるリンが原水中に放出される。また、嫌気槽2内には、外部のモータ2aにより回転可能な攪拌部2bが設けられている。この攪拌部2bが嫌気槽2内の活性汚泥を攪拌する。なお、下水処理場の構成によっては最初沈殿池1が設けられていない場合もある。この場合、窒素含有原水は最初に嫌気槽2に流入する。
【0022】
反応槽3は、単一の好気槽である硝化脱窒反応槽から構成されている。反応槽3には、嫌気槽2から流出した窒素含有水である被処理水が流入する。この流入量は所定の流量計(図示せず)により逐次計測されて制御部6に供給される。ここで、反応槽3における被処理水の流入側においては、BOD酸化領域が生じている場合もある。また、反応槽3には、被処理水の流れ方向に沿って散気手段としての散気部7a,7b,7c,7dが順次設けられている。これらの散気部7a〜7dにはブロア8が接続されている。そして、ブロア8が空気などの気体を散気部7a〜7dに供給することによって、反応槽3内に散気を行い、貯留されている活性汚泥を曝気する。反応槽3においては、主に、好気条件下の好気領域において被処理水中に含まれるアンモニア性窒素が亜硝酸性窒素や硝酸性窒素に硝化されるとともに、部分的に嫌気無酸素領域が生じて脱窒が行われる。
【0023】
また、散気部7a〜7dにはそれぞれ、制御装置を構成する気体供給量制御手段の一部としての気体供給量制御部9a,9b,9c,9dが設けられている。気体供給量制御部9a〜9dはそれぞれ、例えば空気流量制御弁などから構成される。気体供給量制御部9a〜9dは、制御装置を構成する気体供給量制御手段の一部としての制御部6からの制御信号に従って、反応槽3における散気部7a〜7dからの気体供給量をそれぞれ一様または個別に制御する。
【0024】
また、制御装置としての制御部6は、例えばCPU、ROMやRAMなどの記憶媒体、およびハードディスクなどの記録媒体を有して構成されるコンピュータ(PC)などからなる。制御部6においては、記録媒体に、後述する排水の処理方法や制御方法を実行可能な所定のプログラムが格納されている。また、制御部6は、後述するように、入力された硝酸濃度やアンモニア濃度の計測値データなどに応答して、格納されたプログラムに従って制御信号を出力することで、気体供給量制御部9a〜9dを制御して散気部7a〜7dからの気体供給量を制御する。
【0025】
また、この反応槽3の被処理水の流れ方向に沿った中間位置より下流側の所定位置、具体的には、反応槽3の流出位置から被処理水の流れ方向に沿った全長に対して1/2より下流側、好適には1/4より下流側にアンモニア計10および硝酸計11が設置されている。ここで、反応槽3の設計滞留時間は例えば8時間程度であり、硝化速度は1.0〜2.5mgN/gMLSS/hr程度である。この点から、アンモニア計10と硝酸計11とを被処理水の流れ方向に沿ってほぼ同じ位置、かつ水理学的滞留時間(HRT)に換算して1/4より下流側に設置した場合、設置位置におけるアンモニア濃度の制御目標値は0.0〜5.0mg/Lであるが、アンモニア計10の精度を考慮すると制御目標値を1.0mg/L以上にする必要がある。これらの点を考慮すると、アンモニア計10が設置される第1の所定位置と、硝酸計11が設置される第2の所定位置との間隔は、反応槽3におけるHRTに換算して1/4以下、好適には1/5以下とするのが望ましい。
【0026】
アンモニア濃度計測手段としてのアンモニア計10は、被処理水のアンモニア濃度を計測する。アンモニア計10は、第1の所定位置におけるアンモニア濃度を計測して計測結果を制御部6に供給する。硝酸濃度計測手段としての硝酸計11は、被処理水の硝酸濃度を計測する。硝酸計11は、第2の所定位置における硝酸濃度を計測して計測結果を制御部6に供給する。制御部6は、供給されたアンモニア濃度および硝酸濃度に基づいて、散気部7a〜7dの気体供給量(曝気量)を制御する。すなわち、制御部6および気体供給量制御部9a〜9dによって、制御装置である気体供給量制御手段が構成される。そして、制御部6、気体供給量制御部9a〜9d、アンモニア計10、および硝酸計11によって、排水の処理システムが構成されている。なお、制御部6および気体供給制御部9a〜9dによる気体供給量の制御方法の詳細については後述する。
【0027】
なお、本明細書において硝酸とは、硝酸(HNO3)、亜硝酸(HNO2)、硝酸性窒素(NO3−N)、亜硝酸性窒素(NO2−N)、硝酸性窒素と亜硝酸性窒素との集合、および硝酸と亜硝酸とをともに示すNOを含む概念である。また、本明細書においてアンモニアとは、アンモニアおよびアンモニア性窒素を含む概念である。すなわち、本明細書において硝酸濃度は、硝酸、亜硝酸、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素と亜硝酸性窒素との集合、および硝酸と亜硝酸とをともに示すNOの、いずれの濃度であってもよく、アンモニア濃度は、アンモニア(NH3)およびアンモニア性窒素(NH4−N)のいずれの濃度であっても良い。
【0028】
固液分離槽4には、反応槽3から流出した被処理水が流入する。固液分離槽4においては、被処理水が分離液4aと活性汚泥4bとに分離する。固液分離槽4の側壁には、配管(図示せず)が接続されており、この配管を介して分離液4aが消毒処理過程に送られるように構成されている。また、固液分離槽4の底部には汚泥返送経路12が接続されている。そして、この汚泥返送経路12によって、固液分離槽4の底部に堆積した活性汚泥4bが嫌気槽2に返送される。これにより、嫌気槽2および下流側の反応槽3内の生物量を所定量に維持できる。なお、固液分離槽4において生成された活性汚泥4bの残部は余剰汚泥として外部に排出される。
【0029】
(排水の処理方法における気体供給量制御)
次に、反応槽3において行われる排水の処理方法、およびこれに伴う制御方法並びに制御部6が実行するプログラムによる気体供給量の制御について説明する。
【0030】
この反応槽3において行われる排水の処理方法においては、まず、図1に示す最初沈殿池1からの被処理水が、嫌気槽2から反応槽3に順次送られる。反応槽3においては、好気性条件下で活性汚泥中の好気性微生物である硝化菌により、被処理水中のアンモニア性窒素(NH4−N)が、下記の反応式(1)〜(3)のように、亜硝酸性窒素(NO−N)や硝酸性窒素(NO−N)に硝化される。
【0031】
NH+O+2e-+2H→NHOH+HO …(1)
NHOH+HO→NO-+5H+4e …(2)
NO-+0.5O→NO- …(3)
【0032】
一方、反応槽3における被処理水中の酸素量が少ない領域や、場合によって硝化槽などにおいても、酸素量が少ない領域において脱窒菌による脱窒反応(嫌気反応)が発生する。そのため、この脱窒反応を生じる領域(脱窒反応領域)に充分な炭素源を供給すれば、脱窒反応も充分に進行させることができる。その結果、反応槽3において、部分的に脱窒反応が行われる領域が発生する。これにより、下記の反応式(4)〜(10)のように、硝化が不充分であることによって発生した亜酸化窒素(N2O)ガスを分解したり、亜酸化窒素を発生させることなく亜硝酸を還元したりして、窒素と二酸化炭素とに分解させて、窒素除去を行うことができる。
【0033】
NO+3H+2e → 0.5NO+1.5HO …(4)
NO+H+2(H) → 0.5NO+1.5HO …(5)
NO+H+5(H) → 0.5N+3HO …(6)
NO+2H → NO+HO …(7)
NO+H+(H) → NO+HO …(8)
NO+(H) → 0.5NO+0.5HO …(9)
O+2(H) → N+HO …(10)
【0034】
ここで、本発明者は、このような脱窒反応と硝化反応とが並行して進行する場合について、反応槽3の流入側から流出側の方向、すなわち被処理水の流れの方向に沿って、アンモニア性窒素(NH4−N)、亜硝酸性窒素(NO−N)、および硝酸性窒素(NO−N)におけるそれぞれの窒素濃度と、これらを合計した全窒素濃度とを測定した。そして、反応槽3において、硝化反応領域と脱窒反応領域とが存在し、硝化反応領域における硝化処理と脱窒反応領域における脱窒処理とが同時に進行していることを確認した。また、反応槽3の比較的後半側の位置においては、脱窒反応が継続して進行しているとともに、硝化反応が急速に進行していることを確認した。
【0035】
そこで、本発明者は、アンモニア計10および硝酸計11を反応槽3の比較的下流側に設置して、アンモニア計10によってアンモニア濃度を計測するとともに硝酸計11によって硝酸濃度を計測し、これらのアンモニア濃度および硝酸濃度に基づいて、反応槽3内への気体供給量を制御することにより、脱窒反応および硝化反応をともに制御可能になることを想起した。
【0036】
(気体供給量制御方法)
次に、この気体供給量の制御方法について以下に説明する。図2は、この一実施形態による排水の処理方法における気体供給量の制御方法を示すフローチャートである。図2に示すように、この一実施形態においてはまず、制御部6は、反応槽3の下流側の所定位置に設置したアンモニア計10および硝酸計11によりそれぞれアンモニア濃度および硝酸濃度をモニタリングする。具体的には、アンモニア計10が、反応槽3の所定位置におけるアンモニア濃度を計測する(ステップST1)。アンモニア計10は、アンモニア濃度の計測値(アンモニア濃度計測値CA)を制御部6に供給する。これとともに、硝酸計11が、反応槽3の所定位置におけるNO−NおよびNO−Nの合計の硝酸濃度を計測する(ステップST2)。硝酸計11は、硝酸濃度の計測値(硝酸濃度計測値CN)を制御部6に供給する。制御部6は、アンモニア計10および硝酸計11による計測値を、後述するアンモニア濃度変化率mおよび硝酸濃度変化率pの算出のために、制御部6の記録領域に時系列で格納する。また、制御部6の記録領域には、アンモニア濃度および硝酸濃度のそれぞれに関して、あらかじめ設定された目標値(アンモニア濃度目標値SAおよび硝酸濃度目標値SN)が格納されている。これらのアンモニア濃度目標値SAおよび硝酸濃度目標値SNは、反応槽3の形状や寸法などの設計に応じて反応槽3ごとに最適な目標値が設定されるが、この一実施形態においては、アンモニア濃度目標値SAが例えば2mg/Lであり、硝酸濃度目標値SNが例えば1mg/Lである。
【0037】
続いて、制御部6は、アンモニア濃度目標値SAとアンモニア濃度計測値CAとの比較を行う(ステップST3)とともに、硝酸濃度目標値SNと硝酸濃度計測値CNとの比較を行う(ステップST4)。
【0038】
そして、まず、制御部6は、アンモニア濃度目標値SAとアンモニア濃度計測値CAとの比較において、アンモニア計10により計測されたアンモニア濃度計測値CAがアンモニア濃度目標値SA以下であるか否かを判断する(ステップST5)。制御部6が、アンモニア濃度計測値CAがアンモニア濃度目標値SA以下であると判断する(ステップST5:Yes)と、ステップST6に移行する。
【0039】
ステップST6において制御部6は、硝酸計11により計測された硝酸濃度計測値CNが硝酸濃度目標値SN以下であるか否かを判断する。そして、制御部6は、硝酸濃度計測値CNが硝酸濃度目標値SN以下であると判断する(ステップST6:Yes)と、ステップST7に移行する。ステップST7において制御部6は、それぞれの気体供給量制御部9a〜9dによって散気部7a〜7dから供給される空気の気体供給量(曝気量)を維持するように制御した後、ステップST1に復帰する。なお、この時点における気体供給量は制御部6の記録領域に読み出し可能に格納される。
【0040】
他方、ステップST6において制御部6は、硝酸濃度計測値CNが硝酸濃度目標値SNより大きいと判断する(ステップST6:No)と、ステップST8に移行する。ステップST8において制御部6は、それぞれの気体供給量制御部9a〜9dによって散気部7a〜7dから供給される空気の気体供給量を減少させるように制御した後、ステップST1に復帰する。なお、この時点における気体供給量は制御部6の記録領域に読み出し可能に格納される。
【0041】
さて、ステップST5において制御部6は、アンモニア濃度計測値CAがアンモニア濃度目標値SAより大きいと判断する(ステップST5:No)と、ステップST9に移行する。ステップST9において制御部6は、ステップST6と同様に、硝酸計11により計測された硝酸濃度計測値CNが硝酸濃度目標値SN以下であるか否かを判断する。そして、制御部6は、硝酸濃度計測値CNが硝酸濃度目標値SN以下であると判断する(ステップST9:Yes)と、ステップST10に移行する。ステップST10において制御部6は、それぞれの気体供給量制御部9a〜9dによって散気部7a〜7dから供給される空気の気体供給量(曝気量)を増加させるように制御する。その後、ステップST1に復帰する。なお、この時点における気体供給量は、制御部6の記録領域に読み出し可能に格納される。
【0042】
他方、ステップST9において、制御部6は、硝酸濃度計測値CNが硝酸濃度目標値SNより大きいと判断する(ステップST9:No)と、ステップST11に移行する。
【0043】
ステップST11において制御部6は、アンモニア濃度変化率mおよび硝酸濃度変化率pを算出した後、アンモニア濃度変化率mと硝酸濃度変化率pとの大小関係を比較する。
【0044】
次に、これらのアンモニア濃度変化率mおよび硝酸濃度変化率pの算出方法の一例について説明する。この一実施形態においては、気体供給量の増加に対するアンモニア濃度の低下の変化率であるアンモニア濃度変化率mを以下の(11)式によって算出する。
【0045】
【数1】
ここで、Δtは現在の時点と過去の時点との間の経過時間であり、Qは現在の時点における流入水量、Q1は過去の時点から現在の時点までの流入水量の移動平均、Aは現在の時点における気体供給量、A1は過去の時点から現在の時点までの気体供給量の移動平均、CA1は過去の時点から現在の時点までのアンモニア濃度計測値の移動平均、およびCAは現在の時点におけるアンモニア濃度計測値である。なお、過去の時点から現在の時点までの移動平均として算出される、流入水量Q1、気体供給量A1、およびアンモニア濃度計測値CA1は、制御部6によって逐次計算され、記録領域に読み出し可能に格納されている。
【0046】
また、この一実施形態においては、気体供給量の減少に対する硝酸濃度の低下の変化率である硝酸濃度変化率を以下の(12)式によって算出する。
【0047】
【数2】
ここで、CN1は過去の時点から現在の時点までの硝酸濃度の移動平均、CNは現在の時点における硝酸濃度の計測値、および、kは、アンモニア濃度変化率mとの比較における比較均等性を確保するための補正係数である。なお、過去の時点から現在の時点までの移動平均として算出される硝酸濃度CN1は、制御部6の記録領域に読み出し可能に格納されている。
【0048】
また、過去の時点としては、現在の時点から、反応槽3における水理学的滞留時間(HRT)の1/4〜1/5程度だけ遡った時点が望ましい。すなわち、現在の時点と過去の時点との間の経過時間Δtは、HRTの1/5以上1/4以下の範囲、具体的には例えば10〜30分の範囲から選択するのが望ましい。
【0049】
そして、制御部6が、上述した(11)式および(12)式を用いて、アンモニア濃度変化率mと硝酸濃度変化率pとを算出して比較した結果、アンモニア濃度変化率mが硝酸濃度変化率p以上であると判断した場合(ステップST12:Yes)、ステップST10に移行する。ステップST10において制御部6は、それぞれの気体供給量制御部9a〜9dによって散気部7a〜7dから供給される空気の気体供給量を増加させるように制御する。その後、ステップST1に復帰する。なお、この時点における気体供給量は制御部6の記録領域に読み出し可能に格納される。
【0050】
他方、制御部6が、アンモニア濃度変化率mが硝酸濃度変化率p未満であると判断した場合(ステップST12:No)、ステップST8に移行する。ステップST8において制御部6は、それぞれの気体供給量制御部9a〜9dによって散気部7a〜7dから供給される空気の気体供給量を減少させるように制御する。その後、ステップST1に復帰する。なお、この時点における気体供給量は制御部6の記録領域に読み出し可能に格納される。
【0051】
そして、制御部6は、以上のステップST1からステップST12を、排水の処理が終了するまで繰り返し実行する。
【0052】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、制御部6が、計測されたアンモニア濃度および硝酸濃度と、さらに特定の条件下において算出されるアンモニア濃度変化率mおよび硝酸濃度変化率pとに基づいて、それぞれの気体供給量制御部9a〜9dに制御信号を供給して、それぞれの散気部7a〜7dからの気体供給量の維持、増加、および減少を制御することにより、反応槽3内において、脱窒反応と硝化反応とを適切に共存させて、反応槽3の内部において硝化脱窒反応の生成を制御することが可能となる。また、制御部6が気体供給量を最適に制御していることにより、散気部7a〜7dによる気体供給量を必要十分な量に制御することができ、ブロア8の消費電力量を削減して、排水処理における消費電力を削減することも可能になる。
【0053】
(変形例)
次に、上述した一実施形態の変形例について説明する。図3は、この一実施形態の変形例1による反応槽を示す構成図であり、また、図4は、この一実施形態による変形例2による排水の処理装置を示す構成図である。
【0054】
(変形例1)
図3に示すように、変形例1における散気手段としては、複数の散気部7a〜7dの代わりに単体の散気部21から構成しても良い。この散気部21は、制御部6(図3中、図示せず)からの制御信号に基づいて、気体供給量を制御する気体供給量制御部22により制御される。この場合においても、アンモニア計10および硝酸計11は、被処理水の流れ方向に沿って下流側の所定位置に設けられる。なお、散気手段を単体の散気部21から構成した場合であっても、散気部21における反応槽3内での気体の供給部分ごとに気体供給量を制御可能に構成しても良い。そして、制御部6により、散気部21は、時間の経過に従って、順次、交互、または繰り返して曝気を行ったり曝気を行わなかったりするように制御することも可能である。この場合においても、上述した一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(変形例2)
また、図4に示すように、変形例4においては、上述した一実施形態と異なり、アンモニア計10および硝酸計11を、反応槽3と固液分離槽4との間に設ける。そして、アンモニア計10および硝酸計11が、反応槽3から流出した被処理水における硝酸濃度およびアンモニア濃度を計測する。この場合においても、上述した一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 最初沈殿池
2 嫌気槽
2a モータ
2b 攪拌部
3 反応槽
4 固液分離槽
4a 分離液
4b 活性汚泥
6 制御部
7a,7b,7c,7d,21 散気部
8 ブロア
9a,9b,9c,9d,22 気体供給量制御部
10 アンモニア計
11 硝酸計
12 汚泥返送経路
図1
図2
図3
図4