(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6062372
(24)【登録日】2016年12月22日
(45)【発行日】2017年1月18日
(54)【発明の名称】二塩化マグネシウム・エタノール付加物とそれから得られる触媒成分
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20170106BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20170106BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-545227(P2013-545227)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公表番号】特表2014-504327(P2014-504327A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】EP2011073117
(87)【国際公開番号】WO2012084735
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】10196980.6
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/427,139
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】コリーナ,ジアンニ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンゲリステ,ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】フスコ,オフェリア
(72)【発明者】
【氏名】ガッディ,ベネデッタ
【審査官】
渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/146072(WO,A1)
【文献】
特開平03−062805(JP,A)
【文献】
特表2005−521730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化マグネシウムとエタノールを含む固体付加物であって、1モルの塩化マグネシウム当たりのエタノールのモル数が2〜5の範囲であり、水銀空隙測定法で求めた前記付加物の1μm以下の孔による平均空孔半径(Å)と、1モルの塩化マグネシウム当たりのエタノールのモル数の比率が500より大きい固体付加物。
【請求項2】
エタノールのモル数が2.2〜4.5の範囲であり、これに対応して上記の付加物の平均空孔半径とエタノールのモル数の比率が600より大きい請求項1に記載の固体付加物。
【請求項3】
水銀気孔率が0.05〜0.2cm3/gであり、空孔の平均空孔半径が0.18〜0.35μmである請求項1又は2のいずれか一項に記載の固体付加物。
【請求項4】
請求項1に記載の固体付加物を部分的に脱アルコール化することによって得られ、及び1モルのMgCl2に対して0.1〜3モルのエタノールを含むことを特徴とする固体付加物。
【請求項5】
Hg法によって測定して、0.2〜1.5cm3/gの気孔率を有し、及び平均空孔半径が0.14〜0.3μmの孔を有することを特徴とする請求項4に記載の固体付加物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の固体付加物を一種以上の遷移金属化合物と反応させて得られるオレフィンの重合用の固体触媒成分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化学的物理的性質を特徴とする二塩化マグネシウム/エタノール付加物に関する。本発明の付加物は、オレフィン重合用触媒成分の前駆体として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
MgCl
2・アルコール付加物とこれらのオレフィン重合用触媒成分としての利用は先行技術によく知られている。
【0003】
WO98/44009には、改善された特性をもち、また2θ回折角が5°〜15°の範囲において、3本の主な回折ラインが、回折角2θが8.8±0.2°と9.4±0.2°、9.8±0.2°にあり、そのうちで最大強度の回折ラインが2θ=8.8±0.2°のものであり、他の二本の回折ラインの強度がこの最大強度の回折ラインの少なくとも0.2倍であるという独特のエックス線回折スペクトルを特徴とするMgCl
2・アルコール付加物が開示されている。これらの付加物は、式MgCl
2・mEtOH・nH
2Oで表わされる。なお式中で、mは2.2〜3.8であり、nは0.01〜0.6である。これらの付加物から得られる触媒成分は、高い重合活性をもつ。
【0004】
しかしながら、これらの付加物とこれらから得られる触媒は一定の形状不安定性を示し、このため触媒の製造または重合中に触媒またはポリマーが破損することがある。この破損は、その粒子の一定の機械的脆弱性に関するものであると考えられる。
【0005】
形状安定性を改善する方法として、得られる触媒の気孔率が増加させるために、この付加物をチタン化合物との反応の前に脱アルコール化処理にかける。このような処理で、この付加物とそれに由来する触媒粒子の安定性が改善されるが、その触媒活性は大きく低下する。
【0006】
WO2004/026920では、多量のアルコールを含み特定のエックス線回折スペクトルを特徴とする付加物が提案されている。これらの付加物は、もしそのまま触媒成分に変換されると、より大きな活性をもつ触媒を与えることができる。他方、もしこれらの付加物がTi化合物との反応の前に部分的に脱アルコール化されると、製造で直接得られたもので脱アルコール化されていない同一量のアルコールを持つ付加物と比べてより大きな気孔率をもつ触媒を与える。しかしながら、これらの付加物の形状安定性は未だに不満足なものであり、大規模な設備中で触媒製造に用いられると、多量の触媒粒子が破砕されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO98/44009
【特許文献2】WO2004/026920
【発明の概要】
【0008】
本出願人は、特異的な化学的物理的性質を有し高活性で高形状安定性の触媒成を与えることのできる新規なMgCl
2・mEtOH付加物を見いたした。
【0009】
特に、本発明の付加物は、同アルコール含量の従来の付加物と比べると機械的耐性が増加していることに特徴がある。この機械的耐性の増加は、超音波処理下での粒子の破損に対する耐性の増加として現れる。
【0010】
また、この付加物を部分的に脱アルコール化することで、従来の触媒でのポリマーより気孔率が高いポリマーを与える触媒成分の製造が可能となる。
【0011】
したがって、本発明の目的は、塩化マグネシウムとエタノールを含む付加物であって、1モルの塩化マグネシウム当たりのエタノールのモル数が2〜5の範囲であり、上記付加物の、水銀気孔率により求めた平均空孔半径(Å)とエタノールのモル数との比率が500より大きなものを提供することである。
【0012】
上記比率は、540より大きいことが好ましく、より好ましくは600より大きく、このため、大きなエタノールモル数の2.2〜4.5が好ましく、2.5〜4.2がより好ましい。
【0013】
上述の特徴をもつ付加物は、以下の方法で製造可能である。第一の工程では、MgCl
2とエタノールと適当な量の水を接触させ、この系をMgCl
2・アルコール付加物の溶融温度以上で加熱し、その条件に維持して完全に溶融した付加物を得る。特にこの付加物を、攪拌条件下で溶融温度以上の温度で2時間以上、2〜50時間、より好ましくは5〜40時間維持することが好ましい。
【0014】
MgCl
2とEtOHはともに吸湿性が高いため、上記の標準作業を用いると一定の量の水、通常約0.4〜0.5重量%の水が、最終の付加物中に存在することとなる。本方法によれば、水の含量が、MgCl
2とエタノールと水の混合物の総重量に対して少なくとも0.8%に、好ましくは少なくとも1%に、より好ましくは少なくとも1.5%に、特に少なくとも2%となるように水を添加することで、上述の付加物平均空孔半径とエタノールモル数の比率を得ることができることが明らかとなった。ある特に好ましい側面では、この水の量が、付加物の総重量に対して1〜5重量%である。MgCl
2に対する水のモル数は、0.1〜0.5の範囲であってよい。
【0015】
次いで、上記の溶融付加物を、それに対して非混和性であり化学的に不活性である液状媒体中に乳化させ、最後にこの付加物を不活性な冷却液体と接触させ急冷させて、付加物を固化させる。固体粒子の回収の前に、粒子をこの冷却液体中に−10〜25℃の温度で1〜24時間放置することも好ましい。この方法の特徴のため、最終付加物の組成は、実質的に供給時組成と同じとなる。
【0016】
この乳化用の液状媒体は、溶融付加物に非混和であり化学的に不活性であるならいずれの液体であってもよい。例えば、脂肪族、芳香族または脂環式炭化水素が使用でき、またシリコーン油が使用できる。ワセリン油などの脂肪族炭化水素が特に好ましい。
【0017】
この急冷液体は、−30〜30℃の範囲の温度で液体である炭化水素から選ばれることが好ましい。中でも、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0018】
上記方法の変例では、二塩化マグネシウムの粒子を、溶融付加物に非混和で化学的に不活性である不活性液体に分散させ、この系を形成される付加物の溶融温度以上の温度で加熱し、次いで所望量のエタノール/水混合物を気相で加える。温度は付加物が完全に溶融するように維持する。溶融状態で得られた後は、本方法は上述の工程と同じである。MgCl
2が分散される液体は、上述の乳化液体と同じ種類のものである。
【0019】
これらの方法は、実質的に球状の形状を持ち平均径が5〜150μmである固体付加物を与え、この固体付加物は、球状のオレフィン重合用触媒成分の製造に、特に気相重合プロセス用の触媒成分の製造に非常に好適である。なお、この「実質的に球状の形状」は、長軸と短軸の間の比率が1.5以下、好ましくは1.3以下である粒子を意味する。
【0020】
このようにして得られる付加物の水銀気孔率は0.05〜0.2cm
3/gの範囲であり、その空孔の平均空孔半径は0.18〜0.35μm、好ましくは0.2〜0.3μmである。このようにして得られる付加物は、同アルコール含量であるが空孔半径/アルコールモル数比率が低い従来の付加物に比べて、よりよく超音波処理に耐える。実際、下に示す条件下で5分間処理した後の平均粒度(P50)の低下率は、本発明の付加物の方が従来の付加物に比べてはるかに小さい。特に、処理後の本発明の付加物のP50は元の約75%であるが、従来の付加物のそれは約50%にまで低下する。また、本発明の付加物の粒度分布(SPAN)は、従来の付加物より、ずっとよく保持される。超音波処理の後では、先行技術付加物の粒度分布が、本発明の付加物のものよりはるかに大きく広がる。
【0021】
本発明の付加物が遷移金属化合物と反応すると、オレフィンの重合に好適な触媒成分を形成する。
【0022】
これらの付加物は、そのままで遷移金属化合物と反応させることができが、
これらを前もって脱アルコール化にかけてもよい。
【0023】
遷移金属化合物の中で好ましいのは、式Ti(OR)
nX
y−nのチタン化合物である。なお、式中で、nは、0〜yであり;yは、チタンの価数であり;Xは、塩素であり、Rは、炭化水素基、好ましくは1〜10個の炭素原子を持つアルキル基であるかCOR基である。中でも特に好ましいのは、少なくとも一個のTi−Cl結合を持つチタン化合物であり、例えば四塩化チタンまたはクロロアルコラートである。好ましい具体的なチタン化合物は、TiCl
3とTiCl
4、Ti(OBu)
4、Ti(OBu)Cl
3、Ti(OBu)
2Cl
2、Ti(OBu)
3Clである。好ましくは、この反応を、付加物を冷TiCl
4(一般的には0℃)に懸濁させて行ない;次いで、このようにして得られた混合物を80〜130℃に加熱し、この温度で0.5〜2時間維持する。その後で過剰のTiCl
4を除き固体成分を回収する。TiCl
4での処理は、1時間あるいは数時間行うことができる。
【0024】
特に立体特異的なオレフィン重合触媒を製造する場合には、上記の遷移金属化合物と付加物との間の反応を、電子供与体化合物(内部供与体)の存在下で行うこともできる。上記電子供与体化合物は、エステルとエーテル、アミン、シラン、ケトンから選ばれる。特に、モノカルボン酸またはポリカルボン酸のアルキルエステルやアリールエステルが好ましく、安息香酸エステルやフタル酸エステル、コハク酸エステルが好ましい。このようなエステルの具体例には、n−ブチルフタレートやジイソブチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジエチル2,2−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル2,2−ジシクロヘキシルサクシネート、エチルベンゾエート、p−エトキシエチル−ベンゾエートが含まれる。また、次式の1,3−ジエーテルも好ましく使用できる。
【0026】
式中、RとR
I、R
II、R
III、R
IV、R
Vは、相互に同じであるか異なり、水素または1〜18個の炭素原子をもつ炭化水素基であり、R
VIとR
VIIは、同じであるか異なり、R〜R
Vと同じ意味を持つが、水素ではない;R〜R
VII基の一つ以上が結合して環を形成してもよい。R
VIとR
VIIがC
1−C
4アルキル基から選ばれる1,3−ジエーテルが特に好ましい。USP7,388,061に開示されているジオールエステル供与体も使用可能である。
【0027】
この電子供与体化合物は一般的には、マグネシウムに対するモル比が1:4〜1:20の範囲で存在している。
【0028】
固体触媒成分の粒子は、上に説明した固体付加物粒子を再現するものであることが好ましく、したがって実質的に球状の形状を持ち、その平均径が5〜150μmであることが好ましい。
【0029】
上述のように、遷移金属化合物との反応の前に、本発明の付加物を、アルコール含量を低下させこの付加物の気孔率を増加させるための脱アルコール化処理にかけることができる。この脱アルコール化は、既知の方法で、例えばEP−A395083に記載の用法で行うことができる。脱アルコール化処理の程度に応じて、エタノール含量が通常、1モルのMgCl
2に対して0.1〜3モルのアルコールであり、気孔率(以下に述べるHg法による気孔率)が0.15cm
3/gより大きい、好ましくは0.2〜1.5cm
3/gであり、空孔の平均空孔半径が0.14〜0.3μm、好ましくは0.15〜0.3μmである部分的に脱アルコール化された付加物が得られる。
【0030】
これらの中で、特に興味あるのは、1〜3モルのアルコールを含み、気孔率が0.15〜1.5cm
3/gの範囲である脱アルコール化付加物である。脱アルコール化処理の後、これらの付加物を遷移金属化合物を上述の方法で反応させて固体触媒成分を得る。この脱アルコール化処理を熱的に行う場合、水は除かれないか、除かれるとしてもほんの少量である。したがって、最終の部分脱アルコール化付加物中の水の量は、元より大きくなることがある。
【0031】
上述のように、本発明の固体触媒成分の気孔率(Hg法で測定)は0.2cm
3/gより大きく、好ましくは0.25〜2cm
3/gである。
【0032】
驚くべきことに、本発明のMgCl
2・アルコール付加物を部分的に脱アルコール化させて得られたものと遷移金属化合物からの反応生成物を含む触媒成分が、脱アルコール化された従来の付加物から製造された触媒成分と比べて、重合活性や立体特異性、形状安定性(ポリマーの破損が少ないこと)、ポリマー気孔率に関する性質のバランスで優れている。特に興味あるのは、遷移金属化合物を1〜3モルのアルコールを含む脱アルコール化付加物と反応させて得られる触媒である。このようにして得られる触媒は、一般的には、WO2004/026920に記載の付加物から得られる触媒より高い活性と立体特異性を示し、気孔率や低分解率(形状安定性)などのポリマーの性質のバランスがよくなる。
【0033】
本発明の触媒成分は、アルキルAl化合物との反応により、α−オレフィンCH
2=CHR(式中、Rは水素または1〜12個の炭素原子をもつ炭化水素基である)の重合用の触媒を形成する。このアルキルAl化合物は、トリアルキルアルミニウム化合物から選ばれることが好ましく、具体的にはトリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムから選ばれることが好ましい。必要なら上記トリアルキルアルミニウム化合物と混合して、アルキルアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウム水素化物、あるいはAlEt
2ClやAl
2Et
3Cl
3などのアルキルアルミニウムセスキクロリドを使用することもできる。
【0034】
Al/Ti比は、1より大きく、一般的には20〜2000である。α−オレフィン、例えばプロピレンや1−ブテンの立体規則性重合の場合、an電子供与体化合物(外部供与体)(内部供与体として用いられる化合物と同じであっても異なっていてもよい)を上記触媒の製造に用いてもよい。内部供与体がポリカルボン酸のエステルである場合、特にフタール酸エズテルである場合、外部供与体は、少なくとも次式で表わされるSi−OR結合を持つケイ素化合物:R
a1R
b2Si(OR
3)
c、(式中、aとbは、0〜2の製数であり、cは、1〜3の整数であり、(a+b+c)の合計は、4であり;R
1とR
2とR
3は、1〜18個の炭素原子をもつアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)から選ばれることが好ましい。特に好ましいのは、aが1で、bが1で、cが2で、R
1とR
2の少なくとも一つが、3〜10個の炭素原子を持つ分岐アルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選ばれ、R
3がC
1−C
10アルキル基、特にメチルである
ケイ素化合物である。これらの好ましいケイ素化合物の例は、メチルシクロヘキシルジメトキシシランやジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランである。また、aが0で、cが3で、R
2が分岐アルキルまたはシクロアルキル基で、R
3がメチルであるケイ素化合物も好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシランやt−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランである。
【0035】
また、上記式の1,3−ジエーテルを外部供与体として使用することもできる。しかしながら、1,3−ジエーテルが内部供与体をして使われている場合、触媒の立体特異性がすでに十分に高いため、外部供与体の使用を避けることができる。
【0036】
上述のように、本発明の成分とこれから得られる触媒は、式CH
2=CHR(式中、Rは水素または1〜12個の炭素原子を持つ炭化水素基である)のオレフィンの(共)重合に用いられる。
【0037】
本発明の触媒は、いずれの既存のオレフィン重合プロセスでも使用可能である。これらは、例えば希釈剤として不活性炭化水素系溶媒を用いるスラリー重合で、あるいは液体モノマー(例えばプロピレン)を反応媒体として用いるバルク重合で使用できる。また、これらは、一台以上の流動化されたあるいは機械攪拌された反応器内で気相操作で行われる重合プロセスで使用することもできる。
【0038】
この重合は、一般的には20〜120℃の温度で、好ましくは40〜80℃の温度で行われる。重合を気相で行う場合、その操作圧力は一般的には0.1〜10MPaであり、好ましくは1〜5MPaである。バルク重合では、操作圧力は一般的には1〜6MPaであり、好ましくは1.5〜4MPaである。
【0039】
本発明の触媒は、広範囲のポリオレフィン製品の製造に非常に有用である。製造可能なオレフィン系ポリマーの具体例には、高密度エチレンポリマー(HDPE、密度が0.940g/ccより大)であって、エチレンホモポリマーと、エチレンと3〜12個の炭素原子をもつα−オレフィンとのコポリマーを含むもの;線状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度が0.940g/cc未満)と極低密度と超低密度ポリエチレン(VLDPEとULDPE、密度が0.920g/cc未満と0.880g/cc未満)であって、エチレンと一種以上の3〜12個の炭素原子を持つα−オレフィンのコポリマーであり、エチレン由来単位のモル含量が80%を超えるもの;アイソタクチックポリプロピレンと、プロピレンとエチレン及び/又は他のα−オレフィンの結晶性コポリマーでプロピレン由来単位の含量が85重量%のもの;プロピレンと1−ブテンのコポリマーであって、1−ブテン由来単位の含量が1〜40重量%であるもの;結晶性のポリプロピレンマトリックスとプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンのコポリマーを含む非晶性相を含む異相コポリマーとなる非晶相が含まれる。
【0040】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0041】
特性評価
窒素での気孔率と表面積:B.E.T.法(使用装置:ソープトマチック1900、カルロエルバ社製)で測定。
【0042】
水銀での気孔率と表面積:「パスカル240」シリーズのポロシメーター、カルロエルバ社製を使用して測定を行った。
【0043】
気孔率は、加圧下での水銀の浸透により測定した。この測定のために、水銀貯めと高真空ポンプに繋がっている校正後の膨張計(毛細管直径:3mm)CD3P(カルロエルバ社製)を使用した。評量後の試料を膨張計に入れた。次いで、この装置を高真空(<0.1mmHg)下におき、これらの条件で20分間維持した。次いで、この膨張計を水銀貯溜めにつなぎ、水銀を膨張計の高さが10cmにマークされたレベルに達するまで流入させた。この膨張計と真空ポンプをつなぐバルブを閉じ、次いで窒素で水銀圧力を徐々に140kg/cm
2にまで上げた。圧力の作用で水銀が空孔に浸入し、レベルが材料の気孔率に応じて低下する。
【0044】
気孔率(cm
3/g)(最大1μmの空孔による、最大10μmのポリマーの担体と触媒)と空孔分布曲線は、水銀の体積減少量と印加圧力の関数である積分空孔分布曲線から直接的に計算される(これらのデータのすべてが、カルロエルバ社から供給される専用のパスカル・ソフトウェアを備えたポロシメーター付属のコンピューターにより与えられ計算される)。
【0045】
平均孔径は、曲線の範囲内の各空孔画分の相対体積に上記画分の平均空孔半径を掛け、このようにして得られた合計を100で割ることにより得られるすべての数値を合計する空孔分布曲線にから加重平均として決められる。
【0046】
超音波による機械的安定性の試験
超音波による担体と触媒試料の形状評価のために、モルバーン・マスターサイザー2000装置を使用した。マスターサイザー2000粒子径分布測定装置は、通常は三つのユニットに分けられる:
1)光学ユニット;二つのレーザー光源(赤のHe/Neレーザー、出力:5mw、波長:633nm.、青色(ダイオード)レーザー、波長:450nm)を備えた、
0,02〜2000μの大きさの固体の測定に適した光学的コア単位
2)サンプリングユニット;内部キャパシティーと遠心器ポンプ、攪拌器、40W出力の超音波プローブを備えた、体積が50〜120ml用のヒドロ2000S自動サンプリングユニット、
3)PCコンソール;ウインドウ2000用またはNT用のモルバーン・プロフェッショナルソフトウェアを用いる、ポータブルLGペンチアムシリーズ。ミー光学理論を用いるデータ計算方法(試料の屈折率:1.596;n−ヘプタンの屈折率:1.39)。
【0047】
方法
測定では、n−ヘプタン(+2g/lの静電防止スパン80)を分散剤として使用した。測定セルに分散剤をいれ、ポンプ/攪拌器速度を2205rpmに設定した。次いで、バックグラウンド測定を行った。次いで、専用の固体供給装置またはスラリー供給装置を用いて試料を加えた。次いで、分散をモニター上で検討した。一定の分散に達した後で、10秒間超音波プローブの強度をフル(自動調整系の100%)として試料を超音波に暴露した。次いで、試料の安定性をMalvern装置でのPSD測定で測定した。獲得したデータを保存し、さらに他の超音波処理を全体として5分間行った。同じ試料に超音波を当てながらPSDデータを異なる時間で保存し、データ計算を所望の分析回数行った。5分間の試験の完了後、スラリー試料を集めて光学観察に使用して写真を撮り、超音波の試料の形状安定性に与える効果を検討した。
【0048】
付加物と触媒の平均粒度と粒度分布
これらは、機械的安定性の試験で記載したものと同じ装置で、また同じ方法で測定した。唯一の差は、PS測定を行う前に、試料に30秒間超音波処理したことである。
【0050】
粒度分布(スパン)は、式(P90−P10)/P50で計算される。なお、式中、P90は、粒子全量の90%の直径がこの数値より小さい直径となる値であり、P10は、粒子全量の10%の直径がこの数値より小さい直径となる値であり、P50は、粒子全量の50%の直径がこの数値より小さい直径となる値である。
【実施例】
【0051】
触媒成分の製造の一般的な方法
攪拌器を備えた1lのスチール反応器に、0℃の500cm
3のTiCl
4を投入した。室温で攪拌しながら、30gの上記付加物を、ある量の内部供与体であるジイソブチルフタレートとともに添加して、Mg/供与体モル比を8とした。全体を90分間かけて100℃に加熱し、これらの条件に60分間維持した。攪拌を停止して15分間後に、温度を100℃に維持しながら液相を固体沈降物から分離した。500cm
3のTiCl
4を添加し、混合物を110℃にまで10分間かけて加熱し、攪拌条件(500rpm)下で上記条件を30分間維持して、この固体のさらに処理した。次いで攪拌を停止し、30分後に温度を110℃に維持しながら、液相を沈降した固体から分離した。500cm
3のTiCl
4を添加し、10分かけて混合物を120℃に加熱し、攪拌条件(500rpm)下で上記条件を30分間維持して、この固体をさらに二回処理した。次いで攪拌を停止し、30分後に温度を120℃に維持しながら、液相を沈降した固体から分離した。その後、60℃で三回、500cm
3の無水ヘキサンで洗浄し、室温で500cm
3の無水ヘキサン室温で三回洗浄した。次いで、得られた固体触媒成分を、真空下窒素環境下で40〜45℃の範囲の温度で乾燥させた。
【0052】
重合試験のための一般的な方法
攪拌器と圧力計、温度計、触媒供給システム、モノマー供給ライン、保温ジャケットを備えた4リットルのスチール製オートクレーブを使用した。この反応器に、0.01gの固体触媒成分と0.76gのTEAL、0.06gのシクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3.2lのプロピレン、2.0lの水素を供給した。この系を攪拌下で10分かけて70℃に加熱し、これらの条件で120分間維持した。重合終了後に、未反応モノマーを除いてポリマーを回収し、真空下で乾燥した。
【0053】
実施例1
−8℃の1062gの無水EtOHの入った、IKA−RE166攪拌器を備えた容器反応器に、攪拌下で547gのMgCl
2と11gの水を加えた。MgCl
2の添加終了後、温度を108℃に上げ、この温度で20時間維持した。その後、温度を108℃に維持しながら、225ml/minに設定された定量ポンプから送られるOB55油とともに、この溶融物を、62ml/minに設定された定量ポンプセットにて、2800rpmで作動している乳化装置に供給し、この油中の溶融物のエマルジョンを生成させた。溶融物と油は連続的に供給しながら、約108℃の混合物を連続的に22リットルの冷ヘキサンを含む容器に排出した。なお、この容器は攪拌されるとともに、最終温度が12℃を超えないように冷却されていた。24時間後、回収された付加物の固体粒子をヘキサンで洗浄し、40℃で真空下で乾燥させた。組成分析の結果、この粒子が63質量%のEtOHと、1.0%の水を含み、残りがMgCl
2であることがわかった。1μmまでの空孔による気孔率は、0.106cm
3/gであり、平均空孔半径は2204であった。その平均粒度(P50)は67.8μmであった。SPANは1.6であった。
【0054】
次いで、上記付加物を、一般的な方法での触媒成分の製造に用いた。その性質を表1に示す。次いで、この触媒を上述の方法での重合試験にかけた。その結果を表2に示す。
【0055】
また、このようにして得られた付加物粒子の一部を、上述の方法による超音波による機械的安定性試験にかけた。5分間処理後に、P50が52.5μmとなったが、SPANは変わらなかった(1.6)。
【0056】
実施例2
実施例1で説明した方法を繰り返した。唯一の差は、20gの水を供給したことである。
【0057】
組成分析の結果、この粒子が63.5質量%のEtOHと1.9%の水を含み、残りがMgCl
2であることがわかった。1μmまでの空孔による気孔率は0.152cm
3/gであり、平均空孔半径は2610であった。その平均粒度(P50)は71.1μmであった。SPANは1.8であった。次いで、上記付加物を、一般的な方法での触媒成分の製造に用いた。その性質を表1に示す。次いで、この触媒を上述の方法での重合試験にかけた。その結果を表2に示す。
【0058】
また、このようにして得られた付加物粒子の一部を、上述の方法による超音波による機械的安定性試験にかけた。5分間処理後に、P50が53.8μmとなり、SPANは2.0となった。
【0059】
比較例3
実施例1の方法で調整したMgCl
2−EtOH付加物を使用した。違いは、少量の水を使用したことである。
【0060】
組成分析の結果、この粒子が64.4質量%のEtOHと0.5%の水を含み、残りがMgCl
2であることがわかった。1μmまでの空孔による気孔率は0.115cm
3/gであり、平均空孔半径は1640であった。その平均粒度(P50)は67.3μmであった。SPANは1.6であった。次いで、上記付加物を、一般的な方法での触媒成分の製造に用いた。その性質を表1に示す。次いで、この触媒を上述の方法での重合試験にかけた。その結果を表2に示す。
【0061】
また、このようにして得られた付加物粒子の一部を、上述の方法による超音波による機械的安定性試験にかけた。5分間処理後に、P50が33.8μmとなり、SPANは2.6となった。
【0062】
実施例4
実施例2の方法で製造した付加物を、EtOH含量が54.3%となるまで窒素流下で熱的に脱アルコール化させた。水分率は1.8%であった。このようにして脱アルコール化された付加物の気孔率は0.258cm
3/gであり、平均空孔半径は1774であった。次いで、上記の脱アルコール化された付加物を、一般的な方法により触媒成分の製造に用いた。その性質を表1に示す。次いで、この触媒を上述の方法での重合試験にかけた。その結果を表2に示す。
【0063】
実施例5
実施例2の方法で製造した付加物を、EtOH含量が55.6%となるまで窒素流下で熱的に脱アルコール化させた。水分率は1.8%であった。このように脱アルコール化された付加物の気孔率は0.237cm
3/gであり、平均空孔半径は1807であった。次いで、上記の脱アルコール化された付加物を、一般的な方法により触媒成分の製造に用いた。その性質を表1に示す。次いで、この触媒を上述の方法での重合試験にかけた。その結果を表2に示す。
【0064】
実施例6
実施例2の方法で製造した付加物を、EtOH含量が57.5%となるまで窒素流下で熱的に脱アルコール化させた。水分率は1.8%であった。このように脱アルコール化された付加物の気孔率は0.151cm
3/gであり、平均空孔半径は2065であった。次いで、上記の脱アルコール化された付加物を、一般的な方法により触媒成分の製造に用いた。その性質を表1に示す。次いで、この触媒を上述の方法での重合試験にかけた。その結果を表2に示す。
【0065】
比較例7
比較例3の方法で製造した付加物を、EtOH含量が57.2%となるまで窒素流下で熱的に脱アルコール化させた。水分率は0.4%であった。このように脱アルコール化された付加物の気孔率は0.229m
3/gであり、平均空孔半径は1069であった。次いで、上記の脱アルコール化された付加物を、一般的な方法により触媒成分の製造に用いた。その性質を表1に示す。次いで、この触媒を上述の方法での重合試験にかけた。その結果を表2に示す。
【0066】
比較例8
比較例3の方法で製造した付加物を、EtOH含量が54%となるまで窒素流下で熱的に脱アルコール化させた。水分率は0.4%であった。このように脱アルコール化された付加物の気孔率は0.249cm
3/gであり、平均空孔半径は1155であった。次いで、上記の脱アルコール化された付加物を、一般的な方法により触媒成分の製造に用いた。その性質を表1に示す。次いで、この触媒を上述の方法での重合試験にかけた。その結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】